1. 落下の王国
《ネタバレ》 面白かった。物語を物語の中の人物に語らせるのはかなりの力量が必要だと思うが、軽やかにやってみせるあたりにそれを感じる。 悪意を原動力に作られた心地よいロイのお話に、少女だけでなく不覚にも観ている私まで思わずワクワクしてしまう。その心地よい都合の良さともったいぶらされ感に確かに続きが観たくなる。その計算された陳腐さは妙に後を引く。 ところが中盤以降、ロイの心が病むことでその心地よさは徐々になくなり融通の効かなさを感じさせる。とうとうロイが現実に対して折れてしまうと、すべてが破綻する。それは、そこにあるロイの願望がロイ自身の、心からの望みであることに気がついてしまうと言うことだった。 しかし、生きようというかすかな思いが彼とその物語の結末を文字通りの終わりから、少しだけ押しとどめた。その後、不可避な現実にどのように折り合いを付けていったのはは分からないが、本人も知らずのうちに寓意を込めたその物語はときには幼稚に、ときには陳腐に、ときには他愛のない空想にも映ることだろう。しかしそれは美しい映像をまとった紛れもない冒険であり心躍る物語だ。ちょっぴり厳しいエールがのっかった物語は彼の心をギリギリ踏みとどまらせた。 映画の中のキャラクタが映画の中で物語の中のキャラクタを演じ、見ている私はその映画の中に入りこんでその話をせがんだ一人になったように感じることが出来た。見終わって、アレキサンドリアと一緒にさんざん励ました自分の背筋がちょっとだけ伸びたような気がした。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2010-05-13 23:31:47) |
2. ランド・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 ロメロ補正で楽しく観られました。 やっぱこの緩慢なゾンビたちが、のんびりと不可避におそってくるってのが良いですよ。怖いですから。ゾンビに知恵がついちゃうっていうのはどうなのそれ?って最初思いましたけどね、なんか慣れちゃうんですよ。 ロメロ以外が知恵付けたりしちゃうとかなり厳しいと思うんですけど、本人がやる分にはまぁいっか。アリアリ。って感じられるのが不思議。あの戦闘トラックとか絶対NGのはずなんですけどね、まぁ良いです。 というわけで、もしかしたらいまいちなんじゃないのこのB級ムービーは・・・というきがしないでもないんですが、ロメロだから気にしない。っていう人多いかもしれません。 [映画館(字幕)] 7点(2009-08-16 22:13:49) |
3. LOVERS
《ネタバレ》 テレ朝でやってたらとりあえず見とこうかなって感じ。 絵の豪華さは面白いけど、話も悪くないけど、なんか変。 余った時間をそれなりに楽しめる。そういう使い方を想定してるのかな。 意外とイケる。そういう感じでは。 [地上波(吹替)] 6点(2009-04-19 18:23:32) |
4. ラスト サムライ
グッとくる要素もあるし、物語の良さや雰囲気の良さもある。 日本人からすると違和感を禁じ得ないんだけれど、日本人が観るということをあまり考慮していないのだろうとおもう。 実際の日本的な時代考証やセットを取り入れると、アメリカ人にとってアジアの異世界にしか見えない訳で、はじめて観るそれをアジアの他国の原風景と区別することは出来ないだろうと思う。 そういう意味で、我々現地人からするとここが違う、あそこが違うと言う風な違和感に、物語への集中力をややそがれてしまうのは仕方ないか。 トムクルーズが「サケーサケー」と叫ぶシーンとかアレレ、みたいな感じだ。 ただ、これはたとえば都内私鉄の駅周辺に昔住んでいたとして、それが10年前というドラマ設定に使われた時のようなものでそんなに重要なことでもないのかも知れない。 あの駅のあの時代はあんなに開けていない、あんな交差点はない、あの地域の人たちはそんな風に思ってない。と言うような相違点があったとしても、そういったバックグラウンド的な部分はドラマ本編の品質にはほとんど影響せず、むしろリアルにすると話の良さをそぐと言うことも十分にあり得ると思う。 受け手のほとんど全員に分からないものを細かく検証しても、10年前のそこにいた人にしか伝わらないだろうし、今そこにいる人にすらスルーされることも出てくるだろう。 逆に「池袋ウェストゲートパーク」というドラマが昔あったが、当時の池袋が分からないのでいまいち分からない、という感じにも似ているのではないかと思う。 我々日本人がこういう日本物を観るときは、ぶらり途中下車の旅やアド街ック天国で自分の街が出てきたときのように、その取り上げ方の正確性にはあまり目を向けない方が良い。 普段はその街のカタログ的なエッセンスを楽しめていたのに、なじみの街が出てくると突然合致度チェックになってしまう。 分かってはいても、どうしてもそういう目で見てしまうのが私たち現地人で、こんな風に冷静に分析でもしないとアメリカ人が楽しんだようにはこの映画が楽しめない。 こんだけ理屈をつけときながら結局まぁ面白かったけどさ、と言う感想になってしまい残念。 日本人以上にアメリカ人が好きな、刹那的な最終決戦とか見所があったのにその都度心のどこかでつっこんでしまっていた。 [DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2009-04-04 17:41:44) |
5. ランボー/最後の戦場
《ネタバレ》 リアルすぎる映像技術が取り上げられがちだけれどメッセージ性の強いストーリーも良かった。 イラン戦争以降、現地と無関係な人が制止を押し切るようにボランティアに行って、信じられないような方法で虐殺されるという形で命を落としています。そう言った事に多くの人が抱いていた正直なところを描いています。 80年代の第1作では先進国の中にある実体を伴わない悪というものと、何がそうなのかよく分からない悪にされてしまった者の感情を代弁していました。20世紀が終わったとたんもう時代がはっきりしない悪というものを見極めるのが上手になったのか、はっきりしない部分は民間人ではなく司法で裁くべきという心理が正常に働き始めているからか、ランボーも保安官もそれに荷担した人間達も事情があろうと悪は悪だし、きちんと司法に任せなきゃ、という方向のストーリーが非常に増えました。 本作はそこを行き着くところまで行ってみたという設定でしょうか。言葉が全く通じない狂気丸出しの現実世界に存在する悪。事情のあるなしに関係なく悪。危ないから近づかない。殺人は狂気でしか行えない。しかるべき人間でない者がしかるべき理由もなく余計なことをしてはいけない。 これをリアルな映像で表現したら、見事に反テロリズム意識の強い映画になった。ラストの銃撃戦は気持ち悪すぎて爽快感ゼロですが、あえて狙ったのでしょう。現実世界では、身勝手な人たちのためにこんなに人がミンチみたいに死んで、無関係な人間がたまたま解決して、無機質なものです。 こんなものは実際は英雄じゃないよ彼らは職業としか考えていないんだ。という至極まっとうな主張が感じられました。 [映画館(字幕)] 8点(2008-08-16 14:41:35)(良:1票) |