21. リトル・ロマンス
大人から見ればまだまだ子どもですが、もう僕らは子どもじゃない、なんて思う年頃が誰にでも訪れる。そんな年頃の二人の幼さと時折見せる大人っぽさ、そしてそんな二人の恋がとても上品に微笑ましく描かれた作品です。 そんな二人のリトル・ロマンスと共にローレンス・オリヴィエが素晴らしい。彼の存在とその演技、発する一つ一つの台詞は作品に実に味わい深いユーモアと意味をもたらす。自らの代表作である「明日に向って撃て!」や「スティング」の名シーンが登場するのもジョージ・ロイ・ヒルの映画が好きな者にはたまらなく嬉しい。 これがデビュー作であるダイアン・レインの可憐な魅力や義父の優しさ、美しいジョルジュ・ドルリューの音楽と旅先の風景も心に残る愛すべき映画であるとともにジョージ・ロイ・ヒルの優しさと映画作りの上手さをあらためて感じる作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2010-08-28 21:28:30) |
22. リバー・ランズ・スルー・イット
レッドフォードらしさが随所に感じられるいい映画でした。最初から最後まで兄の語りによる回想を基にあまりにも淡々と描かれる兄弟と家族の物語。しかし清流の美しさ、山の緑の美しさ、自然の陽の光を捉えた美しい映像と控えめだが美しい音楽、そして釣りをしている兄弟と父の姿、様々な表情を見ていると、それだけで十分と思えるような映画でした。そして本作のブラッド・ピットを見ていると、若かりし頃にまるでジョージ・ロイ・ヒルの映画にでも出ているレッドフォードの姿を見ているようでした。監督・レッドフォードも彼の姿に若かりし頃の自分を思い出していたのではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-16 21:17:22)(良:1票) |
23. リトル・ヴォイス
LV役のジェイン・ホロックスの演技力と歌唱力には驚かされた。内向的な女の子、恐らく年齢の設定としては20歳前後か。この時彼女は30代半ばなんですよね。驚くほど違和感が無く、たった一度だけでしたが観客を魅了したステージの歌は本当に素晴らしかった。もう一人、内向的な男を演じたのはユアン・マクレガー。彼もまたこんな役を演じると見事にはまりますね。さらにはイカれた母親にはずっと頭にきましたがこの役が実によく効いていて言うまでも無くマイケル・ケインはどんな役を演じてもやはり上手い。(特に“it‘s over”の彼は絶品!)成功を掴む大ハッピーエンドもありかもしれませんが本作のラストもあの2人にとってのハッピーエンドなのでしょう。最後の鳩を放つ、LVの本作で見せた最も生き生きとした表情がそれを見事に表しています。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-13 21:18:56)(良:1票) |
24. 旅情(1955)
《ネタバレ》 何故か今まで見る機会が無かった作品ですが、これはいい映画でした。 僕は特にキャサリンが一人旅をする前半に強く惹かれました。水の都ヴェネチアの街並みや空と水の青の美しさを捉える映像の美しさ。そんな街を観光する彼女をカメラが捉える。運河からキャサリンが街並を見上げる。カメラのファインダーをのぞく。橋の上やホテルの窓から運河や街並みを見下ろす。その度にカメラは彼女の目線でヴェネチアの街を映し出す。 ヴェネチアの街の遠景、彼女の視線のすぐ先にあるヴェネチアの街、そんな素晴らしいカメラワークに、異国の地で自由な時間を満喫する表情、一人旅の淋しさを感じさせる物憂げな表情。キャサリンもまた自由に思うがまま演じているかのごとく表情を変え卓越した素晴らしい演技を披露してくれます。 台詞なんていらない、彼女の表情を観ているだけで十分と思えるほどでした。 中盤以降2人がサンマルコ広場で初めて出会うシーン、店での再会、そしてまたサンマルコ広場で。この出会いと再会の見せ方が見事で高揚する気持ちや心の揺れを演じる後半の彼女の演技もやはり素晴らしい。そんな彼女の魅力を存分に引き出し、実によく計算された演出をみせる巨匠リーンも見事です。 僕にとっての大切な映画がまた一つ増えました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-01-08 18:37:47)(良:1票) |
25. 緑茶
《ネタバレ》 見合いをした相手にあっさりと断られ、その後も付きまとうがどうしてもその女の心を掴めない。そんな日々を過ごすうちにその女と瓜二つの女が現れる・・・という恋愛サスペンスの定番の展開なのですが、恋愛サスペンスのようでどこか違う、かと言ってよくある男と女のロマンスとも違う。そんな不思議な雰囲気が実に魅力的な映画でした。撮影はこの人が撮影を担当するとその作品の監督や主演する俳優に匹敵する存在感を出すクリストファー・ドイル。薄暗い雰囲気の中に用いられる赤が時には強烈な印象を与え、時には柔らかな印象を与える。陰と赤、そのコントラストが絶妙で美しく見入ってしまいます。監督・脚本のチャン・ユアンという人の作品は初めて観ましたが、撮影のドイルに主演もチアン・ウェンという大物を起用し、一つ一つのシーンも作品全体もゆったりとした雰囲気ながらも90分足らずのコンパクトな尺にまとめ独特の世界観を見事に作り上げていると思います。チャン・ユアン。この名前は是非とも覚えておきたいと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-11-23 18:03:01) |
26. リリィ、はちみつ色の秘密
《ネタバレ》 時は1964年。アメリカで公民権法が制定された頃。リリィという14歳の少女が母親の死に責任を感じ、父ともうまくいかず、自分の中で両親から愛されていたのかという疑問が膨らみ、姉のように仲が良かった黒人の家政婦と家を飛び出し、「愛」について学び成長していく過程が優しく描かれた佳作。そんな多感な思春期の女の子を演じた天才子役、ダコタの爽やかな好演が印象に残ります。また、彼女と家政婦が家を飛び出し駆け込んだ黒人の3姉妹が営む養蜂場。この3姉妹が個性豊かで素晴らしかった。母のように優しく大らかで姉御肌の長女オーガスト、気が強く自立心が強い次女ジューン、繊細で傷つきやすい三女メイ(名前の付け方が渡る世間は鬼ばかり風でちょっと可笑しかったです)や養蜂場で働く黒人の青年男性とリリィとの関係を通して公民権法が制定されたとはいえまだまだ地位の低かった黒人の自立、女性の自立、そして少女の自立が優しく爽やかに描かれ、登場人物が皆本当に魅力的な映画でした。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-04 08:31:25)(良:1票) |