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プロフィール
コメント数 542
性別 男性

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【製作年 : 1930年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  嵐ケ丘(1939) 《ネタバレ》 
物語が重いし、おまけに画面が暗い。いつの時代の話かはわかりませんが、身分や家柄が絶対という世の中で起こる雇い主の娘キャシーと使用人ヒースクリフの恋愛物語。 物心付く前は身分だの家柄だのという基準なんて当然気にするわけもなく、純粋に相手の人柄や外見のみが判断基準となるため、身分違いのままお互いが成長すれば当然周囲から反発を食うことになってしまったり同じ身分の異性に魅かれていったりという事が起こりそうですが、そういった部分の葛藤の気持ちだったり、またはお互いに乗り越えていく様をどのように描くのかというのが、古今東西いつの時代も変わらぬ“身分違いの恋愛モノ”における重要な部分になってくると思います。 自分がこの映画を好きなところは、幼少期と青年期の描き方が素晴らしく、それがストーリーのバックグラウンドにしっかりと根を張っているところです。 丘の上にある大きな岩を城に見立てて、王様とその僕(しもべ)のような台詞回しで愛を誓い合うシーンが非常に美しく、そのため、エドガーと結婚する際やパーティー会場のテラスのシーンなど、心が離れてゆくような描写があっても違和感なく最後まで観る事ができました。 また、パーティー会場にヒースクリフが入ってきてキャシーと出会う瞬間のキャシーの表情の絶妙、そして極めつけの最後、ベッドで寝ているキャシーの元にヒースクリフが現れた時、キャシーがゆっくりと目を開いていく表情は、他にどんな映画を探しても決してあのような印象深いショットはお目にかかれないと思います。 映画の終盤になって回想シーンが終わった後も、依然として暗い雰囲気でありながらもとてもロマンティックな雰囲気で締めくくられ、岩に向かって歩く二人の後姿で幕を閉じるラストシーンが凄く良かったです。
[映画館(字幕)] 9点(2011-04-21 23:28:59)(良:2票)
2.  テンプルちゃんの小公女 《ネタバレ》 
テンプルちゃんの映画は初めて観ましたが、さすが天才子役と言われているだけあって演技から踊りからみんなお上手。 父親と別れるときの悲しげな表情、女校長にビンタされそうになった時の毅然とした表情、父親と再会した時の涙もみんな絵になってます。 また、脇を固めるキャスト陣も秀逸で、隣に住むインド人や小間使いのベッキー、同級生の背の高いイヤミな女の子からビクトリア女王まで、どの役もみんなキャラが立っていて見応え十分。しかも、ビクトリア女王が画面に映っている時はバックにイギリス国歌が流れていたりする細かい仕事振りも良い感じです。 ストーリーも、戦争によって自分の身に降りかかる不可避の災難にも希望を捨てず、健気にそして前向きに困難に立ち向かい“信じるものは救われる”というごくオーソドックスな物語に胸を打たれました。 最後の方で、テンプルちゃんが病院に駆けつけ、将軍に案内してもらっているところで一度すれ違いのシーンを出すことによって、クライマックスの前に落差をつける演出もさすがですし、父親の姿を見て再会というのではなく自分の名前を呼ぶ声にハッと気づくというのがベタなんですけど好きです。 余談ですが、自分が観たのは日本語吹替えver.なんですが、エンディングソングが流れる中で日本語ver.製作スタッフの紹介があり、テンプルちゃん役に大杉久美子さん、そして製作に水野晴郎の名前がクレジットされていて、しみじみと感動の余韻に浸っているところに軽い驚きがあった。 まさか、こんなところでヤツの名前を見るなんて・・・。
[映画館(字幕)] 9点(2011-04-14 00:20:20)
3.  私の殺した男 《ネタバレ》 
凄ぇ・・・としか言いようがない。言葉が出てきません。 自分のつたない文章でこの映画を語るのもおこがましいですので、気になった箇所を書くに留めますが、まず、登場人物の演技が素晴らしい。それぞれの感情表現の巧みさ、特に、感情を堪え忍ぶ様の描写テクニックが素晴らしい。他のルビッチの作品でも見られますが、抑えきれない感情を描くことに関してルビッチの右に出る者は恐らくいないのでは。 演技だけではない。例えば、墓地で鞄の中からハンカチを取り出す。もう、これだけで夫人の悲しみが伝わってくる。 冒頭の、失った片足の隙間から抜いた兵隊が行進するワンショットも同様。戦争の悲劇を何と雄弁に語ったひとコマだろう。 極めつけはラスト。鍵を使って鍵盤の蓋を開ける。これだけで、それまで癒えることのなかった心の傷の深さが非常によく分かる。 そのときの、二人の演奏を聴く老夫婦の幸せそうな表情といったらもう・・・。 一方のポールも、それで罪滅ぼしが出来るのだからきっとそれでいいのだと思う。 生涯をかけてエルザを愛しワルターの両親を守っていけばいい。 ワルターを死に追いやったのは全てポールのせいではないけども、嘘をついてそれを押し通し続けるのは心苦しいけども、こういう人生もあるのだという一つの御伽噺のような映画でした。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-21 01:14:24)
4.  モダン・タイムス 《ネタバレ》 
「街の灯」との2本立てで鑑賞しました(2本立てはキツい)。 まだ、1回しか見ていないので大まかなレビューになってしまいますが、チャップリンが目隠しをしてローラースケートをするところが凄かった!本当にこの人はいろいろと凄い人だ。 そして、この映画の最大の見せ場であるティティナを唄うシーンがこれまた凄い。踊っている間に袖が取れてしまい、笑いと不安が入り混じった状態でドキドキしながら見ていると、見事すぎるくらい見事な唄いっぷりを披露してくれるではありませんか。何が凄いかって、このシーンが映画のクライマックスとしてしっかりと機能を果たしているということ!途中までサイレントと思わせておいて、いきなり本当に唄い始めてしまうので、度肝を抜かれます。このシーンはマジでビックリした!本当に格好良すぎる!!映画のクライマックスとしてこれほどインパクトのあるクライマックスはそう簡単にはお目にかかれないでしょう。映画の途中でも機械の音とかがたまに聞こえてきたりしていたから、完全なサイレントじゃないんだなぁと思っていたので、生声で唄うことはある程度予測できていた部分はありますけども、それでも十分過ぎるくらいの衝撃でした。 こういう映画の作り方をするチャップリンって、本当に凄い人だなぁと改めて(もう何回目かワカラン)実感しました。 また、このクライマックスの衝撃を味わえるのは、チャップリンの過去のサイレント作品を既に何作か見たことがある人だけだと思うので、そういう意味では本作が自分にとってのチャップリンデビュー作でなくて本当に良かったです。 他にもいろいろと面白い場面がいくつもあるので、近々書き直したいと思います。それまでは、点数アップの可能性を込めて9点とさせて頂きます。※
[映画館(字幕)] 9点(2005-05-03 00:00:53)(良:1票)
5.  クリスチナ女王 《ネタバレ》 
観終わってからグレタ・ガルボのプロフィールを見て初めて、彼女がスウェーデン出身だと知ったのですが、これはまさにガルボ入魂の一作と言えるのではないでしょうか。 序盤の、彼女の政治信念を語り国民の幸福を願うシークエンスが実に格好良く、この時点でこの映画は最後まで絶対面白いと確信。 一番の見どころは、クリスティナ女王演じるガルボの演技に尽きると思うのですが、酒場での堂々とした立ち振る舞いや、朝の読書の後その辺に積もっていた雪でゴシゴシと顔を洗うスギちゃんばりのワイルドさを見せたと思いきや、スペイン大使に同じ部屋に泊まらせてくれと言われた辺りからのおどおどした雰囲気、寝る前にお互いに服を脱ぎ彼女が上着を脱いで弱々しく佇む姿を見せる一連の変貌ぶりが素晴らしい。 極めつけは翌朝、部屋の中のあらゆる物に触れ愛し合った記憶を留めんとするこなしの端麗さ! 酒場でのアントニオ「南国でないと愛は生まれない」など、何処ぞと言わんばかりのラブシーンでしょう。 更には、宮殿に来た男の方が再会に驚くという“逆ローマの休日”をやっているのも楽しい。 また、彼女の表情のクローズアップをラストを含め要所要所で用いるなど、メリハリのあるカメラワークも効果的。 ラストは悲しい結末になってしまいましたが、亡くなる前に聞いていた目指すべき場所へ船首を向けるクリスティナ。もはや女王ではなくなってしまいましたが、その直前の王冠を外す姿も、船頭に立って一点を見つめる眼差しも非常に印象深く、最初から最後までグレタ・ガルボに魅了され存在感に圧倒されっぱなしの100分間でした。
[映画館(字幕)] 8点(2012-07-29 17:25:13)
6.  マヅルカ 《ネタバレ》 
場末の飲み屋のステージで唄うちょっと陰りが出てきた感じの女歌手と、音楽学校に通う母子家庭に育った女学生との交差を、大胆かつドラマティックに描いたストーリー。 一番驚いたのは、映画序盤で女学生リサが母親に届いたドレスを鏡に向かって合わせてみたり母親に着てみるように勧めているシーンが、ヴェラの回想シーンの時にヴェラの立場から全く同じそのシーンが回想の中に組み込まれているというストーリー構成。 1つのシーンを後に違う角度から再度用いることによって、2人のそれぞれの物語を繋げているわけなのですが、この手法って映画全盛期といわれる1960年台くらいから使われるようになってきたとばかり思っていたので、これにはかなり衝撃を受けました。 しかも、ヴェラの語る回想が、映画を観ている我々までが彼女に同情してしまうほどのシリアスな過去で、ラストの別れのシーンは、ヴェラが実の娘を思いやる気持ちで一杯で、涙が出そうになってくるほどです。 序盤の軽いコメディタッチな所も面白く、素直に感動できるストーリーですし、何といっても全体的に物語が非常によく練られていて予想外に楽しめたのが良かったです。
[映画館(字幕)] 8点(2008-09-06 16:26:47)
7.  獣人 《ネタバレ》 
オープニングの蒸気機関車を操縦する2人の阿吽の呼吸を見せるシーンから早くも傑作の予感がしてきます。 古今東西、現代の日本にいたっても新幹線を舞台に推理小説が書かれるほど、電車というのはサスペンスの香りが漂うもの。トンネルの黒と蒸気機関車の黒。機関車の重厚感、威圧感にはただただ圧倒されます。 さて、映画序盤、助役ルボーが砂糖王の倅に対し職務を忠実にこなしているシーンが出てくる。この一幕で彼の生真面目な人間性が描かれているのがわかるのですが、妻セヴリーヌとのふとした会話がきっかけで、その人間性が一変。彼は殺人鬼となり、妻に対しても乱暴を振るうようになってしまう。 自分の愛する妻の過去を知ったルボーは殺人行為に及びますが、これは妻のためにと思っての殺人ではなく、ルボー自身の怒りに因るところが大きい。その結果、夫婦仲は険悪なものになってしまう。 その一方、ギャバン扮するジャックも、夜の停車場で待ち伏せ殺人を試みるシーンが出てきますが、こちらはあと一歩のところで思い留まってしまう。これは、ジャック自身がルボーに対しての憎しみやいなくなってほしいといった気持ちに因るものではなく、彼女のためを思っての行為である。 殺意の動機が自分自身の憎しみか、はたまた愛する人のためかで、その後の状況が変わってくるところが面白い。 もっとも、ジャックの方は発作が起きてしまって、それがまた新たな悲劇をもたらしてしまいましたが。 物語が重くて、非常に深い。いかにも古典的で今の時代には合わないような映画かもしれませんが、自分はこういうの好きです。 余談ですが、ルボー殺人の容疑をかけられ取り調べを受ける男はこの映画の監督ジャン・ルノワールですが、演技の上手さもさることながら、自虐的なキャスティングが大変面白く、妙に唸らされてしまいました。
[映画館(字幕)] 8点(2008-02-17 00:56:32)
8.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
「んもぅ~」、「お父さんのばかッ!」、「アナタなんて嫌いよ」・・・などのような、お春さんの愛嬌たっぷりに喋るところも可愛らしいですが、片思いの彼が他に婿養子として行ってしまうと言われた時、涙を流し袖のふちで涙を拭う仕草がとても可愛くて、普段洋画しか観ない自分としてはあの仕草にコロッとイってしまいました(^_^) 外国じゃ絶対あんなふうに泣かないですもんね。 歌を唄っているシーンも、コミカルで楽しいシーンばかり。序盤の、傘が画面いっぱいに広げられているシーンでの歌(傘を作る者あれば使う者あり…って歌)と、大名が自分の家来のことを“ガラクタばかり”と言っているシーンの歌が特に好きです。 そして、ラストの大乱闘。コメディということもあってか、やや“作った感じ”のする戦いぶりでしたが、なかなか迫力があり見ごたえ十分のシーンでしたので、こちらもしっかり楽しめました。 一点だけケチを付けさせて頂くとすると、オフレコであるところがハッキリとわかってしまう部分がちょっと多かったため、少し減点させていただきます。俯瞰で撮ったところに歌を入れるとちょっとキビシイか・・・。
[映画館(字幕)] 8点(2006-01-28 17:47:58)(良:3票)
9.  街の灯(1931) 《ネタバレ》 
サイレント映画の、特に映像作家チャップリンの人物描写の上手さに見事に感服させられました。 まず、冒頭のシーン。「目が見えない」というセリフを一言も喋らずに盲目であることを見る側に伝えきったその描写力に座布団10枚!しかも、完璧に盲目であることをを伝えきってからチャップリンに水をかけるという丁寧さ。盲目であることがハッキリと解ってからのシーンなのでちゃんと笑いが成立するのですが、あやふやなままであのシーンが出てきたら、もちろんコメディとして成り立たないわけなのです(当たり前)。 そして、この映画を見た全ての人の心の中に刻まれるであろうラストシーン。このシーンを見たとき、女の表情が、助けてくれた人の顔を見れて本当にうれしいと思っているようには見えなくて、そんなに感動するかなぁ?とやや疑問だったのですが、家に帰ってきてみんなのレビューを見てみると、自分が見て感じ取った女の表情がやっぱり間違ってなかったとわかってホッとしました。みなさんの仰る通り、これは完全なハッピーエンドではない筈です。チャップリンが、目が治ってよかったね~、と純粋無邪気に喜んでいるのに対し、女の方は「お金持ちの紳士な方かと思っていたのに、ズタボロのルンペンじゃない。けど、治療費をカンパしてくれたし、私の目が治って喜んでくれてるから私もヘンな顔できないわ。それにしても、この人本当にイイヒトそうねぇ・・・」という表情です。これは、相当な人間観察力と描写力とがなければ成し得ぬ業で、私はここにチャップリンの偉大さを見ました。 〔'05.8.27追記〕上記レビューは映画館で1回観ただけで書いたものなのでかなり曖昧なレビューだったようです。 ラストの再会のシーンについてですが、目が治った女の子の方の表情は読み間違いはなかったと思うのですが、チャップリンの表情を読み違えてしまっていました。あのシーンでのチャップリンは女の子の目の手術の成功を心から喜んでいる顔ではありません。あの時のチャップリンは「マズイ!こんなズタボロの出で立ちで見つかってしまった。どうしよう・・・しゃーない、とりあえず笑ってごまかしとけ(笑)」という表情です(けど、うまく笑えてない)。 といった感じで、私の読み間違えがありましたが、いずれにしろチャップリンが鋭い眼光と描写力を持っている偉大な映像作家であることには変わりはないということで、まぁ良しとしましょう(笑)
[映画館(字幕)] 8点(2005-05-02 20:56:52)(良:1票)
10.  望郷(1937) 《ネタバレ》 
1937年の映画だけあって、いかにも古典的な雰囲気が滲み出ています。序盤のカスバの街の解説シーンからして、早くも古典的な感じがして妙に嬉しくなってしまいました。 DVDで再度鑑賞してみて感じたのは、音楽の使い方が上手いということ。この映画で終始バックに流れているアラブ系の民族っぽい音楽や、おばさんが昔歌手だった頃の歌を唄うシーン、ラストのあの映画史上に残るといわれる名シーンのBGMなど、全てにおいて文句のつけようがないくらいのシーンにマッチした音楽ですが、中でもレジスを始末する時の音の使い方が特に印象的でした。 ジュークボックスで銃声をかき消す演出(確かに古臭い?)も私は好きなのですがその後に、ペペが、力尽きたピエロに寄り添うシーンまであの音楽が流れていて、すごく悲しいシーンの筈なのにBGMにあのような派手な音楽が鳴り響いていて、この時代でこんな斬新な音楽の使い方をしていることに衝撃を受けました。 また、終盤でペペがカスバを降りていくシーンも、中盤で一度怒り狂って降りていった時との対比があって実に趣のあるフランス映画らしい穏やかなクライマックスで、このシーンも妙に好きです。波止場まで追いかけてきたイネスが「行かせてやって!」でグッときてしまいますが、その後の「ペペ、許して・・」が本当に切ない。泣けます。アナタは全く悪くない!!!
[映画館(字幕)] 8点(2004-10-10 15:53:33)(良:1票)
11.  不思議なヴィクトル氏 《ネタバレ》 
映画全体で無駄がなく大変良く出来た作品という印象。ちょっとした一場面も後に生きてきたりする秀逸なシナリオが非常に良いです。 冒頭でムッシュー・ヴィクトルに子供が出来たというのが、単に善良な市民像を印象付けるだけでなく7年後のストーリーの中でその子供がしっかりと役割を与えられていてストーリーの一端を担っているところが面白いですし、靴屋の主人が三人組の一人と口論している場面を序盤で組み込んでいたり、彼の奥さんが美人で他の男に簡単に流れていきそうなキャラクターである事もストーリーを構成する上での一要素となっていて、よく練られていると思いました。 また、靴屋の仕事道具である錐が優れたキーアイテムとして活用されていることも注目すべきポイントで、子供のおもちゃとして遊びで扱えるような物が子供の手を介して大人の手に渡り凶器に転じてしまうというのも唸らされます。 また、ムッシュー・ヴィクトルのキャラクターが非常に良く、この役を演じたレイミュという俳優さんは初めてお見かけしましたが、一人で二役を演じているかのように昼の顔と夜の顔を完璧に演じ分けているのが素晴らしいです。 夜のシーンでの目つきが鋭い怪訝な表情はまさに本格ノワールそのものといった雰囲気が出ていますし、昼のシーンもまた、家族や友人たちと語らう場面は勿論のこと、殺人を犯して家に帰って来た時のオドオドした様子や嘘を隠そうとしてひたすらまくし立てる滑稽じみた姿などかなり熱の入った演技で非常に楽しませてくれます。 彼の出演作はわずか4,5本ほどしかないようですが、是非とも他の作品でも彼の好演を見てみたいと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2014-02-16 12:16:54)
12.  白鳥の死 《ネタバレ》 
描かれているテーマがとても良く、教訓じみた話にする意図があるのかわかりませんが、ちょっと心に刺さってくるものがありました。 一番目を引いたのが人物描写で、特に子供の描き方に卓越したものを感じたのですが、同世代の子供同士の会話や親子のやりとりのシーンでは、女の子特有の少し大人びた感じで描いている一方で、地下に走って逃げたシーンではただのネズミに怖がる場面もあったりと、一面的でない見方で描いていたように思え、また、噂が広まった先で(噂が広まっていく時の描写が良い)手紙を書いて本人に送りつけるという全く意味のない馬鹿げた行為をする大人がいるのに対し、真実を正直に打ち明ける子供という対比も印象的に感じました。 真実を知って最初は怒った先生も、最後にはちゃんと良識ある大人としてエンディングを迎えるというのがとても感動的で、それまで主人公のローズから「母さん」と慕われていた女性があっさりバレエを辞めて結婚してしまった事もあってか、何か子供の時の道徳の授業で感じた感覚が舞い戻ってくるような思いがしました。 また、古いフィルムだったのでよく見えない個所があったものの、地下に逃げ込むシーンの暗闇の雰囲気や奈落の底を駆け抜けるローズを捉える横移動のカメラ、そして子供の目線を意識した低い位置からのショットなど、撮影に関しても良い出来栄えであったと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2014-01-27 23:02:49)
13.  襤褸と宝石 《ネタバレ》 
冒頭、借り物競争のシーンで上流階級社会の堕落した生活が描かれ、更に家の中での言動や振る舞いにまで彼らに対する侮蔑の念が感じられます。 ただの借り物競争ではなく忘れられた人や物を取ってくるなんて、この時代の映画でよく見られる仮装パーティーなんかもそうですが、夜ごとに遊び呆け普通のパーティーでは飽き足らなくなってこんな馬鹿げた遊びをしているわけですから、ゴミの山に住む人間を対比させるまでもなしに、上流を風刺している事がわかります。 その一方で、「仕事があれば人は人間らしく生きることができる」という労働を尊ぶゴドフリーの台詞や、最後に浮浪者に職を与える彼の行動など、社会的にも優良な映画と言えると思います。 襤褸を纏い無精髭をたくわえていても、ただの浮浪者ではないことはちょっと見ただけで分かってしまうようなウイリアム・パウエルですが、後のバトラーを演じる彼を見るにこれはベストなキャスティングと言えるでしょう。 監督や脚本のグレゴリー・ラ・カーヴァも自分にとっては初めて拝見する作家さんですが、物語の至る所にユーモアを交えた台詞が多くて楽しめますし、またカメラにおいても、バトラーが朝食を立て続けに運ぶシーンを長回しで撮っていたりするところなんかを見ても、きちんと映像にまでこだわりを持つ人なんだなぁと感じさせてくれます。 最後、ゴドフリーが半ば無理矢理結婚させられていたところでは、出来れば求婚を上手くかわして自分の道を突き進んでいってほしい所でしたが、監督が女心を汲むことに長けた懐の深い人物だった、と解釈します。 蛇足ですが、タイトルの襤褸という字は「ぼろ」ではなく「つづら」と読むそうです。
[映画館(字幕)] 7点(2013-12-30 15:11:53)
14.  駅馬車(1939) 《ネタバレ》 
西部劇の金字塔と名高いこの映画。クラシック映画に興味を持った者なら一度は目にするこの「駅馬車」という映画は、ジョン・フォードという名前同様に崇高なイメージを抱いていたのですが、馬車を走らせながらのインディアンとの対決がメインだと思って期待して観ると、意外にも人間ドラマの方に多くの時間が費やされていて、完全に読みを誤ったというか何というか、要らぬ予備知識というのは邪魔にしかならないという事を再確認させられた映画でした。 この意外と重要な(失礼!)馬車の中の群像劇ですが、先に書いた通り、あまり面白いとは思えず、やや冗長に感じてしまったり、ローズバーグに辿り着いた後も一気に畳み掛けるようにエンディングに向かってくれれば良かったのですが、少しダラダラした感じに思えてしまい、最後に保安官が見せた粋な計らいも余り心に響くものはなかったです。 ジェロニモとの対決は、それまでに彼らの描写が皆無だっただけに、追われているからただ戦うというだけで、どうも安っぽさが出てしまうシーンのようになってしまいがちですが、そこは流石ジョン・フォードというべきか、片側の視点のみで撮ってもあのような素晴らしいシーンが出来てしまう。移動撮影による馬の躍動感や疾走感と地面からのフィックスによる蹄の迫力、馬に飛び乗るスタント、銃撃戦の絶妙のカッティングなどは、もはや芸術の域でしょう。 人間ドラマにはさほど魅力を感じなかったと書きましたが、ジェロニモに襲われている時に馬車の中で赤子を抱きしめるヒロインには、何かここだけはグッと来るものを感じました。
[映画館(字幕)] 7点(2011-12-24 01:07:56)
15.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
吹替版で観たのですが、序盤の土人との会話のシーンに違和感がなさすぎて笑ってしまいました。 まぁ、それはそれとして、この映画の主題ってなんだろう。自然や動物好きの自分としては、どうしても手放しで称賛できない映画なんですよね。 人間が興味本位で相手のテリトリーに勝手に踏み込んで生態系を荒らした挙げ句、コングを生け捕りにしてニューヨークまで持ち帰って商売の道具として使い、手に負えなくなると殺してしまう。確かにヒロインが連れ去られて助けなきゃいけないのだけど悪いのは人間の方だし・・・とか考えたりしているうちに、自分が旅をした時の事を思い出した。 観光に来た人間が野生の動物に餌を与えた事によって人間に馴れ始め、そこから悲劇が起きてしまうという。そこまで来たらもう人間側に犠牲者が出るか、そうなる前に駆除するかの二者択一となってしまい、この映画で語られている事と同じ事態が起きてしまう。 自分は、文明社会に対する皮肉や警鐘、自然に対する畏怖の念を勝手に感じ取りましたが、映画の最後に発せられた台詞をどう解釈してもそのようなメッセージがあるようには思えなかったので、単なる勘違いをしただけだと思いますが、特撮を含めた映画自体の出来が良かったので、怒りや不満などのような感情は不思議と湧いてこなかったです。 ひとつ、面白かったのが、コングがニューヨークの劇場で拘束されて脱出する時、足枷を外すのが力ずくではなく丁寧に両手を使って外していたところは、萌え~なシーンです。
[映画館(吹替)] 7点(2011-12-23 23:33:17)(笑:1票)
16.  俺は善人だ 《ネタバレ》 
ジョン・フォードといえば「わが谷は緑なりき」や「駅馬車」など、質実で重厚な作品の監督というイメージがあったのですが、この作品で見事にその固定概念が覆されました。 最初の一幕からして、とてもおしゃれ。 8年間無遅刻無欠勤の社員に昇給辞令を渡すべく席まで行くと、なんと入社以来初の遅刻ときた。 その後も軽快なテンポで喜劇は進むのですが、それよりも特に印象に残ったのは最後のマニヨンが撃たれるシーン。 小心者のジョーンズが銀行に入らずに戻ってくると、マニヨンの子分たちはマニヨンが戻ってきたものと勘違いし、ジョーンズ(本当はマニヨン)を殺すかどうか聞いてくる。その時の、自分の身や世間の人々を守るか人の命を奪うかのジレンマと格闘し悩みに悩みぬいた末に出た「撃て」の一言が、いかにもマニヨンが言ったかのような表情・雰囲気だったところが面白かったと思う。 あぁ~、もう一回観たい・・・
[映画館(字幕)] 7点(2008-05-21 01:03:03)
17.  大いなる幻影(1937) 《ネタバレ》 
素直に面白いです。 かつてチャップリンが言った「昔の戦争は良かった。核も毒ガスもなかったし。」というのを体現したような映画ですね。 まず、登場人物一人一人に皆個性があり、皆それぞれに境遇があって、それを丁寧に描いている所が好印象。ただの群像劇と言ってしまえばそれまでだけど、皆さんの仰る通り“格調高い”という言葉がピタリと当てはまる、まさにそんな映画。 いろいろと細かいところを見ていくと、敵と味方で友情が芽生えたり、ラ・マルセイエーズを大合唱したり、逃走先での恋愛があったりと、いかにもクラシック映画らしいベタ~~なシチュエーションが至るところに出てきて、こういう所もこの映画の魅力でしょう。 また、第17捕虜収容所とか、床下に穴を掘って余った砂を庭に撒くというアイディアなど、某有名映画のオリジナルを発見できたという時点で、もう十分に満足してしまうのです。
[映画館(字幕)] 7点(2008-04-19 02:04:04)
18.  グランド・ホテル 《ネタバレ》 
“●●グランドホテル”なんていう名のホテルは日本に、いや世界中に星の数ほどありますが、その起源と思わせるかのような、いかにもといったこのクラシカルなタイトルは実はかなり好きです。 豪華な配役、と当時は結構もてはやされていたそうですが、そのほとんどの役者が馴染みのない人たちばかりで“5大スターの競演”とか言われてもイマイチありがたみが出てこない・・・(涙)。 私は、5人全員のエピソードに繋がりを持たせる必要はないと思いますが、もう少しそれぞれの話に面白味があればもっと楽しんで観れたことだと思います。 映画の序盤に出てくるエントランスホールの長回しもホテルの格の高さを醸し出していますし、劇中で殺人が起きてもその直接的な描写はせず、男爵の横たわる姿すら見せないのは、ホテルの豪華さや客層の良さに決して引けをとらない非常に上品な演出だと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2007-10-07 10:16:21)(良:1票)
19.  吸血鬼(1931) 《ネタバレ》 
他の方も仰っている通り、影が凄い。影が役を演じているかのよう。 また、影にも負けず、その本体である役者のチョイスもまた凄い。「ノスフェラトゥ」ほどではないが、登場人物の雰囲気が女性も含めて皆アヤシイのだ(笑)。 この映画が面白いのは、吸血鬼が人間を襲うという、恐怖心を煽るシーンがほとんどないにもかかわらず、ストーリーが完全に成り立ってしまっているという点だと思う。 再度観れば点数アップの可能性が十分にありそうな作品なので、今の時点では7点に留めておきます。 あと、毒薬が入った瓶にドクロマークが描かれていたが、“いかにも”という感じで笑ってしまった(^_^)
[映画館(字幕)] 7点(2007-09-30 02:33:04)
20.  ワルツ合戦 《ネタバレ》 
訳あって(-_-;)後半のあたりしか覚えてないのですが(マイナス1点)、法廷での討論の際にランナーが指を叩いて出来たリズムをヒントにシュトラウスがピアノを弾いて、それをランナーも一緒になって曲を奏でるシーンが特にいいです。 エンディングもまた序盤の伏線もあってか、実にお洒落な締めくくり方で、これがまたイイ! 是非、機会があればもう一度観てみたいです。※
[映画館(字幕)] 7点(2006-03-05 00:55:29)
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