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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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201.  地獄のモーテル 《ネタバレ》 
噂には聴いていたけど、期待に違わずメタメタなトンデモ映画でしたね。“人肉を混ぜて隠し味とした世にも美味な燻製”をウリにして商売繁盛のサイコ兄妹、アメリカB級ホラーでは定番のジャンルである“モーテルもの”でございます。でもこの映画、登場するキャラがみな頭のねじが外れていて善玉を含めて行動がほとんどシュールです。ヒロインといちおう位置付けできる女性にしても、普通に考えれば半ば拉致されたような境遇なのに、危ない目になんども逢いながらも緊張感がまるで欠落している。挙句には弟の保安官からのモーションを振ってサイコな兄貴になぜか惹かれていって、ついにはマジで結婚しようとする。もっと判らんのは食材の“畑”で、声帯を切って呻くことしかできない人間を首だけ出して埋めるって、こりゃなんの意味があるんだい?脚本も酷いけど監督が超怪作『ゴースト・イン・京都』のケヴィン・コナーですからこうなるのは必然だったのかもしれない、ほんと『ゴースト・イン・京都』がまともに感じるほどです。ラストが唯一の見せ場であるチェンソーでのチャンバラですが、ブタの生首を被った兄貴のビジュアルはさすがに強烈でした。インパクトがある絵面でスプラッター映画のアイコンみたいな扱いをされていて自分も知ってはいましたが、まさかこの映画のキャラだったとは… ラストの兄貴の死に際での衝撃の告白、たしかにこれはこの映画をコメディにカテゴライズする唯一の要素かもしれませんね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2022-08-25 22:52:18)
202.  レフト・ビハインド 《ネタバレ》 
この映画は“携挙”という「この世の終末にあたり、真のキリスト教徒は神によって不死の体を与えられて地上から天国に引き揚げられる」というプロテスタントのカルト宗派が唱えるヨタ噺のプロパガンダです。“携挙”は『ノウイング』のオチでも使われていましたが、どっちもニコラス・ケイジが主演だというのがミソ。彼は熱狂的なオタク・サブカル趣味の人として有名ですけど、ひょっとしてこっちの方も守備範囲なのかな、としたら危ない危ない。原作者はプロテスタントの牧師ですが全十二巻の大河小説、なんと日本でも教会系出版社から全巻翻訳出版されているみたいで、本作はその第一巻の映画化です。 世界中で一部の大人とすべての子供が突然着ていた服を残して消失するというプロットは、予備知識なしで観始めたら「おっ、これは新手の不条理系ホラーか」と引き込まれたかもしれませんが、「信心深い人(キリスト教徒オンリー)たちが神に選ばれて天国に瞬間移動していったんだよ」とネタバレした瞬間に、観ている人の八割が「こりゃトンデモないババを引いちゃったな」と後悔し三割の人が観続けるのを放棄しちゃったかもしれませんね。そりゃツッコミどころが満載ですけど、世界中で熱心なキリスト教徒が消えたと言っても、日本じゃほとんど影響ないですね(子供が消えるのも全世界共通なら、少子化に悩む日本には痛手ですけど)。それよりも熱心なキリスト教徒が地球から消え去ったなら、きっと世界は平和…以下自主規制させていただきます(笑)。でもこの映画でいちばん解せなくて腹立たしいのは、なんで新生児を含む子供までが携挙されるのかということです。まあ子供と言っても何歳までが対象なのかは不明ですけど、だいたいからして、産まれたばかりの新生児が信仰を持つはずがないでしょ。親がキリスト教徒かどうかは問わずに世界中の子供を連れ去ったとすると、なんでキリスト教の神様にそんなことする権利があるの?こういうポイントに無頓着な製作姿勢には、最近我が国で問題になっているカルト宗教二世問題が思い浮かんできて嫌な気分になります。 ストーリーは後半になると燃料切れ寸前に追い込まれるニコジー機長の旅客機を巡るサスペンスになりますが、これはもう多すぎてどこを突っ込んだら良いかと悩むぐらい。携帯や空港との無線が都合よく繋がったり切れたり、ここまでご都合主義が過ぎるともう清々しいぐらい。そして娘の誘導で道路に着陸するラスト、こりゃまるっきり『ダイ・ハード2』のパクりじゃないかい!監督のヴィク・アームストロングは有名なスタント・コーディネーターだけど映画監督は初体験、よっぽど監督の引き受け手がなかったんじゃないでしょうか。 久しぶりに思う存分ツッコめる映画に出逢いました、私にとっては『ベルリン陥落』以来かな(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 1点(2022-08-22 20:48:22)
203.  モーテル 《ネタバレ》 
タイトルバックは懐かしのヒッチコック風というかソウル・バス風味が濃厚で監督の意気込みは伝わってきます。アメリカの田舎の寂れたモーテルで宿泊客が怖い目に遭うという山ほど製作されたプロットですが、とても21世紀に書かれた脚本とは思えない捻りのない展開は、ここまで来るともう斬新の域に達しています。前半はとくにヒッチコック的な心理的なゾワゾワ感が良い雰囲気なんですが、壁が叩かれるところがピークでそこからは捻りのない追っかけっこになってしまうのが残念です。でもあの壁やドアが叩かれるところは映画館で観ていたら椅子から跳びあがってしまいそうですね。でも後半はほんと伏線も張らないストレートな展開、あのスタンドで会った修理工が普通は一味だというのが王道ですけど、けっきょくその後は全く筋に絡まず只の気の良いあんちゃんでした、という結末だったのはある意味で意表を突かれました。犯人一味三人もたいがいなおバカ揃いで危機を迎えるたびに部屋に戻ってくるカップルを捕まえることができない。最期もお約束の復活もなくあっさり弾を喰らって終わり、こうなるとかえって新鮮ですね(笑)。これもお約束ですけど警官も役立たず、でも緊急通報で現場に警官が一人で来るってありえますかね?テンポは良くてまあ退屈はしない典型的なB級映画、しかしスナッフビデオに映っている人数の方が本編の登場人物より多かったんじゃないのかな(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-08-19 21:35:34)
204.  弾丸ランナー 《ネタバレ》 
あの『ラン・ローラ・ラン』のプロットに影響を与えた(ホンマか?)という三人の男がただひたすら走る物語。SABU氏の初監督作品でもあるわけですが、田口トモロヲはじめ当時のサブカル界隈の曲者たちに加えて大杉漣や友情出演の堤真一までも登場するなかなか豪華なキャスティングであります。いまや伝説のAV女優白石ひとみも出ています。コンビニで万引きした田口トモロヲを追いかける店員のダイアモンド☆ユカイ、この二人はまったく無関係の間柄ではあるが、そこに両者と因縁があるヤクザ堤真一が参戦してくる。やはり見どころは三人の走りっぷりで、そこにそれぞれの身のうちや妄想をオーバーラップさせるのが特徴。でもそのパワーは警察が加わってくると萎んでしまったように感じるのは残念なところです。ラストにかけてヤクザ+警察の三勢力と三人のランナーが鉢合わせてお馴染みの三すくみ状態からの全滅、いやはやここにもタランティーノ風味の影響が色濃いですね。田口トモロヲやダイアモンド☆ユカイといったロック・ミュージシャン人脈を起用したんだから、ストーリーテリングとしてはもっとパンキッシュでオフ・ビートなら面白かったんだろうけどな。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-08-16 23:11:43)
205.  ミュージックボックス 《ネタバレ》 
原作および脚本はジョー・エスターハス。この人は本作以降の90年代に『氷の微笑』で有名になって『硝子の塔』や『ショーガール』でラジー賞の常連にまで堕ちてしまった脚本家ですが、ハンガリー人移民の子で実はアーミン・ミューラー=スタールが演じるミシュカは自分の父親がモデルです。戦犯に問われるようなことをしたのかまでは定かではないですが、当然のごとく父親から絶縁されたそうです。監督は政治的映画の巨匠コスタ=ガヴラスですが、やはり本作はガヴラスじゃなくエスターハスのストーリーだと言えるでしょう。80年代までのエスターハスは割と正統的なミステリーを書く人だったんですが、あの『ショーガール』の人がこんなに素晴らしい脚本を書いていたとは驚きです。間違いなく彼の最高傑作です。 刑事事件のような裁判で肉親が弁護人になれるのかという制度上の疑問はありましたが、冒頭の遣り取りを見た感じではアメリカでも問題とまではいかないまでもレアケースみたいですね。でもこれはハンガリー移民の自分が、男手一つで娘を弁護士にまで育てたことを判事に印象づけたいという、計算づくの自己アピールに過ぎないんだという事が後々判ってくるんですね。ジェシカ・ラングも名演でしたが、アーミン・ミューラー=スタールの演技にも底知れない心の闇を見せられたようでゾッとさせられました。少しずつ明らかにされてゆくミシュカの過去、渡米してからも過去の闇とは縁を切ることが出来ずに新たな罪を犯してしまう、そしてミュージック・ボックス=オルゴールがついに暴く父親の真の姿、ほれぼれする見事な脚本です。孫のマイキーをポニーに乗せて調教する荒々しい言動にはすっかり本性が露呈してしまったような感じがしました。個人的な感想ですけど、できればここで映画の幕を閉じて欲しかったかなと思います。その後のジェシカ・ラングのとった行動は弁護士としての職業倫理からは逸脱しちゃっている感があるし、なんか後味が余計に悪くなった感じがするんです。いかがでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-13 22:51:58)
206.  ウィリーズ・ワンダーランド 《ネタバレ》 
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ニコラス・ケイジがとにかくヤバいんです。なんせ彼の映画人生でもたぶん初だと思うけど全編で一言もセリフなし、数か所で唸り声を漏らすだけ。『ドライブ・アングリー』や『ゴースト・ライダー』のときのような風貌のキャラで黒づくめのグラサン・髭面・革ジャン姿できめているのに、サイコキラーの霊が支配する廃テーマパークに閉じ込められるとキャラクター・デザインのTシャツに着替えて真面目に清掃に励む。タイマーが鳴ると悪霊と対峙していても必ず冷蔵庫の缶ドリンクを一本飲み干してなぜかピンボール・マシーンで遊ぶ。悪霊が憑依したイタチやカメやワニのキャラクター・ロボットと死闘を繰り広げるわけですが、こいつらがみなほぼ秒殺、というかニコジーが異様に強すぎです。その倒し方もほぼ“惨殺”というレベルで、返り血ならぬ返りオイルを浴びてドロドロになるニコジー、でもそのあとはきちんとTシャツを着替えるところがなんか可笑しい。最後までこの男の素性は不明のまま映画は幕を閉じるのですが、こういう不条理極まりないストーリーは好きです。なかなか有能な清掃員でした。この呪われたテーマパークと因縁があるヒロインがニコジーと絡むわけですが、彼女が連れてきた若造たちがあまりに死亡フラグを立てすぎでもう笑うしかない。中には怖い目に遭ってる最中にエッチし始めるカップルまでいるんですけど、あまりにホラー映画の定番通りでなんか微笑ましい。 ここ10年に借金返済のため山のような数のB級作品出まくっていた彼のフィルモグラフィ中でも、出色の出来なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-10 21:41:06)(良:1票)
207.  レインマン 《ネタバレ》 
障害やハンディキャップのあるキャラを演じてオスカーを受賞した俳優しては、他にはジョン・ミルズ、ダニエル・デイ=ルイス、ジェフリー・ラッシュがいるけど、本作のダスティン・ホフマンの凄いところはメイクも全くなく素の表情だけで自閉症患者を演じきったところでしょう。とくに前半なんかは「この人はホントに自閉症なんじゃないか」と思えてくるほどに迫真の演技でした。サヴァン症候群はこの映画ですっかり世間に知れ渡りましたが、ホフマンが映画で見せる驚異の能力は取材に基づいているそうです。でもなんでこんなことが出来るのかは、私には理解の範疇を超えています。分厚い本でもペラペラとめくるだけで内容が把握できるという速読術の達人がBOOKOFFのCMに出演していましたが、どれだけ肝心の中身を理解しているのかは謎だとしてもこれもサヴァン症候群なんでしょうね。トム・クルーズはまだ若手俳優からビッグ・スターに成長過程のころ、貫禄のないヤカラみたいなキャラが良く合ってます。でもこの人の凄いところは、ポール・ニューマン、ジャック・ニコルソン・ダスティン・ホフマンといったレジェンドたちと共演して彼らから得るものを得て成長していったところでしょう。彼が演じた愛情表現が下手な父親との関係がトラウマになっているキャラは、振り返ってみれば同じような葛藤があった自分には心に響きます。けっきょくこの父親は、レイモンドにもチャーリーにも愛情があったのだろうかという疑問を感じてしまいます。公開当時はあまり意識しなかったけど、父が物故した現在に観直して気づかされたことでした。脚本も良く練られていて、煎じ詰めるとこのストーリーはシンシナティからカルフォルニアまでのロードムービーですけど、飛行機だと三時間で済む旅がなぜ一般道を車で一週間かけることになったのかが考え込まれた脚本じゃないでしょうか。画的にも名シーンやカットが多く、チャーリーがレイモンドを療養所から連れ出すカットがこの映画のアイコンになっていますけど、個人的にはベガスのホテルでチャーリーがレイモンドにダンスを教えるシーンが大好きです。“レインマン”が“メインマン”を見つけたわけですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-07 22:48:12)
208.  カリガリ博士 《ネタバレ》 
中世ドイツで流布していた民間伝説を基にして舞台設定を近代(?)に持ってきた脚本、「夢遊病者がフランケンシュタインの怪物みたいに恐れられている」という世界、その不安定な世界線には何となく違和感を覚えますが、オチを知ると納得してしまいます。でも良く考えると、百年以上前の作品だということには戦慄を覚えます。 この映画を語るときにはアイリス・ショットの多用が取り上げられますけど、当時の映画撮影技術としては良く使われていてさほど珍しくもない。真に凄いのはやはりアヴァンギャルドなその美術やセットで、まさにこれこそ“ドイツ表現主義”の誕生した瞬間と言えるんじゃないでしょうか。またカリガリ博士やツェザーレのメイクが毒々しいほどで、「メイクも俳優の演技の一部」というような製作者の主張すら感じさせられます。また当時の撮影技術では闇を映すことが出来なかったので、逆手をとったようなホワイトバックでの闇表現がまさに“白い闇”という感じで禍々しさが強調されている感すらあります。「実はすべて精神病院入院患者の妄想だった」という当時のハリウッド映画では考えられないような身も蓋もない幕の閉じ方も、いかにもドイツ映画らしいと言えるでしょう。脚本にはフリッツ・ラングも係わっていたそうですが、このストーリーテリングも後世に多大の影響を与えていることも見逃してはいけないでしょう。 DVDは字幕が英語なので英米向けバージョンだったんでしょうけど、劇中で映されるカリガリ博士の日記なども英語で綴られていました。これって言語バージョンごとに撮っていたのかな、オリジナルは当然ドイツ語でしょうし、とすれば芸が細かいことです。
[DVD(字幕)] 7点(2022-08-04 21:27:03)(良:1票)
209.  カメラを止めるな!スピンオフ「ハリウッド大作戦!」<TVM> 《ネタバレ》 
まああれだけオリジナルがバカあたりしたんで、調子というか勢いに乗ってこういうお遊びをしたくなる気持ちも、判らなくはない。本当にこんなんでどこが面白いと言ったらよいか悩むところですが、ラストのHOLLYWOODの人文字の件だけは、不覚にもクスっとしてしまいました。でも冒頭のシークエンスではHOLLYのパネルだけだったのはどう解釈すれば良いの?ネタバレさせたくないというのが意図だったんでしょうが、あまりに映画文法を無視しすぎです。まあこのいい加減さがらしいと言えばらしいところなんだけど。 こんな緩い企画がおフランスのオスカー受賞監督にウケて、リメイクされたってのが未だに信じられない。あの竹原芳子も出てるんですからねえ…
[CS・衛星(邦画)] 3点(2022-07-31 21:43:49)
210.  カンパニー・マン 《ネタバレ》 
みんなヴィンチェンゾ・ナタリの『CUBE』に続く第二作と聞けば、そりゃ期待しちゃうよね。序盤から不条理臭がプンプンの怪しい展開で、だいたいからして、デジコープ社とサンウエイズ社が何を生業としている企業なのかはさっぱり判らん。シェイビング・クリームやらチーズといったありふれたというかしょうもない商品がテーマのカンファレンスのために産業スパイを送り込むところからして、ジョークというかまさに不条理極まりない。カンファレンスの聴衆を『時計じかけのオレンジ』でアレックスに使われたような装置で一斉に洗脳するところなんかは、もうシュールすぎでしょ。デジコープから送り込まれた主人公がサンウエイズに見抜かれて二重スパイみたいな感じになってくると、もう彼がどっちの側として行動しているのか非常に判りにくくなってくるし、そこにルーシー・リューの組織(?)が絡んでくるのでもう“トリプルクロス”状態です。オチについては確かに意外性はあったけど、まさかこのストーリーが『ミッション・インポッシブル』まがいの展開になるとは悪い意味でサプライズでした。 こんだけ世間の期待を集めたのに、全米ではなんと劇場未公開のビデオスルーだったというのは、なんとなく納得できます。『CUBE』以降現在に至るまでヴィンチェンゾ・ナタリの作品は微妙な出来のものばかりでヒットもしない。やっぱこの人も一発屋だったんでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-07-29 22:41:23)
211.  デストラップ/死の罠 《ネタバレ》 
「世の中でもっとも殺人を犯す可能性が高いのはミステリー作家である」という警句(?)を昔なんかの本で読んだ記憶があるが、じっさいフィクションの中では殺人に手を染めるミステリー作家は後を絶たずという感じ。ミステリー作家が主人公でほぼ密室劇だしマイケル・ケインが主演となればどうしても『探偵[スルース]』が思い出されてしまいますが、本作の方がブラック風味は濃厚。ダイアン・キャノンの死からは何となく展開が予想された通りになるけど、お約束通りのどんでん返しの連続とマイケル・ケインの芸達者ぶりが光っていてさほど飽きさせられることはなかったです。そして監督が名匠シドニー・ルメットなのでそつなくまとまっているけど、こういう題材は凡庸な監督だと大惨事になってしまうので注意が必要。まあ監督が全盛期のビリー・ワイルダーだったら、そりゃ傑作と呼ばれる映画になっていたかもしれないけどね。あとケインが主役のせいだけでなく、全体の雰囲気が英国が舞台のようになっているのが面白い。最後に美味しいところを全部霊媒のおばさんが持っていっちゃうオチは、ブラックで個人的には好みです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-26 23:06:17)
212.  日本以外全部沈没 《ネタバレ》 
原作は、筒井康隆が本家『日本沈没』の出版直後にパロディとして数時間で書き上げたという短編小説、それが三十年以上たって突然の映画化、まあこれは草彅剛のあの『日本沈没』に悪ノリというか便乗して撮られた企画らしい。監督はそのセンスの悪さで撮る作品がことごとく酷評されるという特殊能力を持つ河崎実、本作でもその特技を遺憾なく発揮しています(笑)。 筒井康隆のブラックな持ち味は低予算パロディには相性がよさそうなもんだけど、あまりにエピソードがつぎはぎだらけ状態なのでほとんど笑えない。稲川素子事務所バックアップの甲斐あって無名の外人タレントが大挙出演、エキストラも含めると日本人出演者より数が多かったんじゃないかと思うぐらいです。まあその中でも印象に残ったのはオスカー俳優役だった人で、なんか若き日のエドワード・バーンズみたいでカッコよかったな。でも全編に満ち溢れる外人をコケにするギャグは“どこまで本気なの?”と心配になるぐらいで、こりゃ地上波じゃ絶対に放送できないレベルですな。そして妙なところで特撮に凝ったりしていて、ほんとこの監督のセンスにはついてゆけない。最後には日本も沈没して人類滅亡となるわけですが、なぜか穏やかな夫婦生活が何度も挿入されるTVプロデューサー夫婦が、線香花火を二人で愉しむカットにはなんかホロリとさせられました。せっかく子宝を授かったのに、産まれてくる子の顔も見ないでみんなとともに滅びてしまうんですからね。でも人類がけっきょく滅亡する筒井康隆の作品なら、『霊長類南へ』を映像化して欲しいものです、監督は河崎実以外でね。 田所博士役の寺田農は樋口真嗣版の『日本沈没』でも同役でのオファーがあってどっちに出演するか迷ったそうです、迷った挙句に出たのがこっちかよ!このチョイスは理解不能です(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2022-07-23 22:38:20)
213.  黒い絨氈 《ネタバレ》 
50年代に流行ったハリウッド製B級モンスターものを期待(?)して観たら、ものの見事に肩透かしを喰らいます。アメリカ南部からアマゾンの奥地に単身移住して農園を開拓した男が、写真ぐらいは見ていただろうけど会ったこともない女性と結婚。呼び寄せてみたら妻は美人だけど未亡人だった。南部人らしく貴族的で超頑固な彼は、いわば傷物を妻にできるかと早々に離婚して送り返そうとするけど、マラブンタと現地人が恐れる軍隊アリの大移動に彼の15年かけて築いた農園は破滅の危機に瀕するわけです。 ジョージ・パルとバイロン・ハスキンという『宇宙戦争』のコンビが製作・監督なので誤解されがちだけど、どう見てもSFじゃあない。『十戒』や『ベン・ハー』でブレイク直前のチャールトン・ヘストンとエレノア・パーカーが主演だし、スタッフも一流で衣装担当にはイーディス・ヘッドまで動員しています。三十四歳にもなってまだ童貞という堅物マッチョなのがヘストン、前半の冷徹極まりない男が実はスカーレット・オハラの様に根性のある妻にだんだんと人間的にほぐされてゆく過程を丁寧に見せてくれる脚本も良くできています。本来みんなが期待したであろう軍隊アリの大群はクライマックスでようやく登場ですが、ここはアニメーションもVFXも使わず実写というか記録映像でちょこっと映るだけなので軍隊アリの恐ろしさはイマイチ伝わっては来ません。でも集合体恐怖症の人はビビるかもね。ラストの洪水がヘストンの農場を押し流すところだけはスペクタクルなんですが、このVFXはジョージ・パルだけあって良い仕事をしています。 この映画はモンスター・パニック的な物語じゃなく、ジャングル秘境で繰り広げられる男女が入れ替わった『風と共に去りぬ』だと思えば間違いはないです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-20 23:10:36)(良:1票)
214.  ミッドサマー 《ネタバレ》 
この映画は知ってる人にはすぐ判ると思うけど、明らかにあのカルト映画『ウィッカーマン』のリストラクション・再構築なんですよ、どっちかというとニコラス・ケイジ主演のリメイク版の方に近いかな。“コミューンの外部から種馬を連れてくる”というオリジナル版にはなくてニコジー版で採用されたプロットも引き継いでいるからね。クマの着ぐるみを着せられて…という衝撃のラストも一緒です。明らかに違うのは、コミューンに迷い込んだカップルのうち女性の方は完全にその異世界に取り込まれてしまうところ、そして異文化の衝突だけでなくアメリカ人と北欧人という異民族の対立的な要素も盛り込まれているでしょう。社会人類学を専攻して論文を書こうとしているアメリカ人学生たちもヒロインを含めて感情移入できるキャラは一人もおらず、中には住民が大切にしている神木みたいなものに小便を引っ掛けて「こんな枯れ木にションベンして何が悪い?」と開き直るサイテーな奴までおる。監督があの『ヘレデタリー/継承』のアリ・アスターだから、観客を不安・不快にさせる術はお手の物。耳に聴こえるか否かの重低音が基調の不気味な音楽や、エンド・ロールになると懐かしのポピュラーソングを流すところなんかも『ヘレデタリー/継承』と一緒(今回はフランキー・バリが歌う『太陽はもう輝かない』でした、もう渋い!)。グロいところやエロいところも確かにありましたが、クリスチャンが種付けをさせられた後で素っ裸のうえ股間を隠して戸外を駆けまわる絵面は、正直笑ってしまいました。 ラストにかけて、女王に選ばれたヒロインが感情を爆発させると、周囲の住民たちが同じようにトランス状態になるのにはゾッとしました。彼女もまた何かを“承継”したんですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-17 23:25:16)
215.  アレキサンダー大王 《ネタバレ》 
項羽やリチャード獅子心王やナポレオンと並ぶ人類史上に於いて理屈抜きに戦に強かった最強の男の筆頭、アレキサンダー大王。オリヴァー・ストーンの『アレキサンダー』と本作しか彼のことを真正面から描いた映画を私は知らないけど、かなりハードルが高い題材なのは確かです。 50年代半ば、強いドルを背景にしてイタリアやスペインでハリウッド大作が撮られていたころの製作です。なぜか監督が『ハスラー』や『オール・ザ・キングスメン』のロバート・ロッセンというのが私には最大の?で、フィルム・ノワールっぽい小品が得意ジャンルの感じの人で、こういう歴史大作を手掛けたというのは意外。案の定この映画の弱点は彼の起用だった感じが濃厚で、いっそのこと後に途中まで『スパルタカス』を撮ったアンソニー・マンなんかの方が適役だったんじゃないかな。主演はリチャード・バートン、アレキサンダー大王を演じるにはちょっと老けてるんじゃないかという気もするし、それっぽく見せるためのアレキサンダー大王トレードマークの髪形がまた似合ってないんだなあ。この映画の最大の失敗は、シェイクスピア劇のような感覚で書かれた脚本でもともとその分野が出身のバートンには合っていたかもしれないが、観客が求めているのはそういう映画じゃなかったと思うんです。父王ピリッポスが暗殺されて後を継ぐまでの尺が一時間強、それまで延々と父子の葛藤を見せられるわけです。肝心のアジア遠征に出征してペルシャのダレイオス王を滅ぼすまでは、駆け足状態。見せ場のイッソスの合戦も思ったより小スケールで、やはりロッセンはアクション・シーンの演出には向いていなかったと思います。美術や衣装にはそれなりに力を入れているのは判るけど、バビロンの宮殿などはいかにも野原に最低限のセットを組みましたという感じで、奥行きが全然ないのは痛い。 オリヴァー・ストーンの『アレキサンダー』では母親オリュンピアスとの関係が縦軸だったけど、本作ではオリュンピアスの存在感は希薄で父王ピリッポスとの確執がメイン・テーマであるところが特徴です。ここら辺には製作時代の違いを感じてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-07-14 22:12:03)
216.  地獄の警備員 《ネタバレ》 
92年の製作、もう三十年も前の映画なんですね。この頃はまだバブルが残っていたころ、そういや商社なんかではいわゆる絵画ビジネスなんて代物が流行っていましたね。「セザンヌを85億円で落札出来たら安い買い物か?」なんて会話があって、時代を感じさせられます。そして警備員に電源を落とされて外部に電話して助けを求めることが出来なくなる、そうかまだこの頃は携帯もPHSもメールもない頃、せいぜいポケベルが最先端ツールで、現代の若者には絶対理解できないシチュエーションだと思います。 松重豊が演じる元力士という設定の警備員はいわばジェイソン的なサイコキラー、というよりなぜか赤いロングコートらしきもの着ていて『帝都物語』の嶋田久作みたいな感じ。彼の登場シーンはすべて薄暗いシーンなのではっきりした姿形を認識しづらいけど、どう見ても“身長が2mちかい元力士”にはほど遠い感じがするのが難点。それこそ嶋田久作をキャスティングした方が正解でしょう。殺しの手口も巨漢という設定を活かしたあまり凶器に頼らない工夫が認められます。まあキ〇ガイのすることですから理屈が通らなくても全然かまわないんですけど、終盤でヒロインが唐突に警備員を説得というか対話を始めるのは黒沢清映画らしいところです。あと大杉漣がヒロインを個室に連れ込んでいきなりズボンを脱ぐところや、ラストで長谷川初範の奥さん(?)として洞口依子がワンカットだけ登場するところなんかもね。 怖いか、面白いか、と問われれば「微妙です」としか答えられないけど、不条理劇のようなものを好む方にはお奨めできるかも。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-07-11 23:03:01)(良:1票)
217.  サボテンの花 《ネタバレ》 
女遊びをずっと続けたくて付き合う女たちには「自分は妻帯者で三人子供がいるんだ」と嘘をつきとおす、誰しも男なら憧れる(?)モテ男を演じるのがポール・ニューマンでもロバート・レッドフォードでもなくウォルター・マッソーだというところが面白い。どう見ても美男子とは言い難い男だけど、こうやってじっくり眺めると愛嬌があってなかなかイイ男に見えてくるから不思議なもんです。冒頭でヒロインが自殺しようとするところなんかは同じだけど、町山智浩氏いわくこの映画は『アパートの鍵貸します』の裏返しのようなストーリーで、これは納得です。脚本を書いたのがI・A・L・ダイアモンドだからですからねえ。まあ普通は妻帯者が独身男と偽って浮気するものですから、ある意味で逆転の発想なのかもしれません。この映画のゴールディ・ホーンはその愛くるしいピクシー・カットもあいまって、男だけでなく周囲の人間をみな幸せにするのに自分を犠牲にするのも厭わないまさに妖精みたいなキャラです。彼女はこの映画が素人からのデビュー作、とくに初期はこの映画のト二のキャラを使い回しみたいにしている感もありますが、どれもキューティクル感が爆発なので許してしまいます。かたやお相手になるのが大女優イングリッド・バーグマン、でもこんな大御所がコミカルな芸を軽やかに見せてくれるのは愉しい限りです。とくにミンクのコートを着てからのヘンなダンスは抱腹絶倒で、彼女のフィルモグラフィ中で最高のコメディ演技じゃないでしょうか。考えればほとんど六人の登場人物で回すストーリーですが、途中のこんがらがり具合は予想を超えるところがあります。でも最後には中年と若者のカップルにきちんと落ち着くところは心地よいです。
[ビデオ(字幕)] 7点(2022-07-08 23:50:48)
218.  おかしな二人 《ネタバレ》 
ジャック・レモンとウォルター・マッソーのコンビと言えばすぐにこの映画が思いつくものですが、いわゆる典型的なシット・コムでいかにも連続TVシリーズにはうってつけの題材です、じっさいにTVシリーズ化されましたけどね。舞台劇の映画化だけあって延々とレモン&マッソーの掛け合いが披露されるわけですが、さすが芸達者な二人なので安心して愉しませてくれます。もっともこのユダヤ的なしつこくて濃ゆいダイアローグが苦手という方には拷問みたいなものかもしれませんけどね(笑)。けっきょくこの二人はホモではないけど模擬夫婦みたいな関係で、生真面目だけど料理上手で異常に潔癖症なレモンといかにも無頼派で享楽的なマッソーが角突き合わせることでお互いの奥さんが彼らに愛想を尽かせたのが、観ている観客には良く理解できるようなストーリーテリングなのです。この別れた女房達を画面に登場させず、電話だけでやり取りさせるところが面白い。「人の振り見て我が振り直せ」じゃないけど、さんざんやり合ったけどハッピーエンドのような形のラストではどう見てもその性根は治っていない、つまりまったく進歩していないようなのがツボなのです。いろんなエピソードを重ねて多少なりとも人間的成長をという王道的なストーリーにするには、やはりシリーズ化するのが最適なんでしょうね。まあそれがコメディとして面白いかというのは、別問題ですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-05 22:43:56)
219.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
現在のような猛暑の最中に観る映画じゃないよね(笑)、刑事二人が下着姿にまでなって苦労しての佐賀までの列車行から始まって、いくら昭和三十年代と言っても扇風機ぐらい置くもんじゃない?と呆れる旅館での張り込み、とにかく二人の刑事の汗まみれの姿を延々と見せられるのはちょっとしんどい。冒頭でラジオから聞こえる佐賀の天気予報で「本日の最高気温は35度の見込み」といっているけど、昭和三十年代にそんな猛暑があったとはサプライズです。この予報自体はもちろんフィクションでしょうけどね。 この映画のほぼ三分の二はヒッチコックの『裏窓』を彷彿させるいわば“覗き”のシーンの連続。対象者の家の真ん前に丸見えできる旅館があるなんて笑っちゃいますけど、あんだけ堂々と窓から身をさらしたら気づかれそうなものですけどね。拳銃を所持している可能性がある強盗殺人犯が逃走中なら、ふつうは大々的に指名手配されるのは間違いなしですしね。でも何も起こらない日常を飽きもせずに観させてくれる橋本忍の脚本もですが、一時間半あたりまでほとんどセリフもない高峰秀子の使い方にも驚かされます。そこからの二十五分はまるで別人のような情念を見せてくれるのですけど、この激しいギャップが幸薄い女としての高峰秀子のキャラを強調しているんじゃないでしょうか。 東京に出てきた青年が貧困から抜け出せなくて犯罪に走るといういかにも松本清張らしい今となっては古臭いプロットであるのは否めませんけど、昭和三十年代という中途半端に近代化しつつある東京と地方の世相が丁寧に撮られているのは高評価です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-07-02 21:58:58)
220.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
ナチ・ドイツが実行した史上最大の通貨偽造事件と言われるベルンハルト作戦、第二次大戦中に英国の外貨準備高の四倍ものポンド紙幣を偽造したというから呆れます。戦後に真贋を問わずすべての5ポンド紙幣を回収して破棄しなければならなかったそうですから、英国財政は相当なダメージを喰らったのは間違いないです。この偽札づくりは強制収容所のユダヤ人使ったので成功したわけで、ユダヤ人をただ虐殺するだけでなくとことん利用しつくすドイツ人気質には肌寒くなるものがあります。偽造に成功したのが敗戦の一年前とかなり煮詰まってからだったのが、英国には不幸中の幸いでしたね。トルコの英国大使館でスパイとして活躍したコードネーム・キケロに支払われた三十万ポンドは実はすべてこの偽札だったそうで、ドイツ人のセコさには失笑するしかないです。 ある意味で、数あるナチスのユダヤ人強制収容所を題材にした映画の中でも、かなり珍しい部類になるんじゃないでしょうか。なんせ作業につくユダヤ人たちは特別待遇、白衣すら着用するような清潔な服装、そしてちゃんとマットレスつきのベッドで寝れて、仕事に成功すればご褒美として卓球台までプレゼントされる。敗戦時に囚人たちが蜂起したときに偽造に従事していた者たちが親衛隊員と疑われて射殺されそうになるエピソードには納得です。収容所の中でも完全に隔離されたエリアで作業していたわけで、痩せこけてボロボロの囚人たちには清潔な服装で栄養状態が良好な彼らが同じユダヤ人囚人だとは見えるはずないですね。また主人公のソロヴィッチが善良な市民ではなく、暗黒街でもブイブイ言わせていたアウトレイジだというのも珍しいパターンです。ソロヴィッチはもと犯罪者らしく生き残ることが正義で、共産主義者で大義のためにサボタージュして成功を遅らせようとするブルガーとは対立しますけど、ブルガーを含めて仲間を裏切らず守ろうとする姿勢はまさにアウトレイジの仁義です。実はこのブルガーは実在の人物で、しかも自らの体験を基にした原作著書の作者なんですよ。つまりこのブルガー視点の物語であっても不思議ではないのに、あえてアウトレイジのソロヴィッチが主人公だというのは面白いところです。そんなしぶとい男であるソロヴィッチですけど、終戦直後にモンテカルロで持ち出したドル札で豪遊しますが、収容所の体験がフラッシュ・バックして全部カジノでわざと溶かしてしまうところには、彼の心中の善が噴き出してきたのを見せられたように感じました。そしてラストの「カネはまた造ればいいさ」というソロヴィッチの呟き、カッコいいじゃありませんか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-30 23:03:28)
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