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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2001
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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201.  マーシュランド 《ネタバレ》 
猟奇事件は田舎で起きる。今作の舞台はスペインはアンダルシア地方であります。アンダルシアにはこんな湿地帯があったのか、と瞠目しました。両サイドに延々と広がる沼地の中を走る一本道。走り抜ける車に覆いかぶさるような水鳥の群れ。しっとりしつつ、広々したロケーションはなんとも目に新しく、映画全体が陰鬱ながらも目を引く美しさがあります。少女たちは美しい娘ばかり。彼女らが殺害されてしまった事を、撃たれて血を流している水鳥のショットとだぶらせていたり、隠喩のセンスもなかなかです。 殺人犯の真相はかなりあっさりしているといえます。何故ならこの話は、事件の犯人が分かったところで結、としていないからです。 信頼していた同僚に対して生まれた黒い疑惑。打ち消したい、との思いは証拠写真を破らせる。けれど若き刑事ペドロに生まれた疑念はおそらく一生晴れることは無いと思われます。 思えば最初からフランコ政権の爪あとを所々差し挟んでいたのでした。 このラストの衝撃はおそらく日本人の私よりスペインの人たちに、よりダイレクトに伝わるものでありましょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-24 00:02:15)
202.  イット・フォローズ 《ネタバレ》 
口コミで全米ヒット、の煽り文句には眉唾つけたくなるのが習性なので期待値はさして高くなかったんだけど、これがなかなかでした。画の見せ方が独特で、しーんと冷たいのです。冒頭の、定点カメラで撮ったようなシーンとかデパルマを彷彿とさせるぐるぐる回転カメラには引力がありますし、かと思えば思わぬタイミングで場面が切り替わったりもする。そこはかとなく不気味な思わせぶりな描写も多い。これは一体?と考える間もなく話は進むあたり、リンチにもちょっとだけ似てます。 POVでもないのに、一連の事件をその場で傍観しているようなリアリティがあり、その要因のひとつとしてアメリカの地方都市に住む現代の若者の生態をとても正確に写していることがあります。主人公ジェイはいつも仲良しの友人らとつるんでいる。幼なじみや妹らで、世界はとても狭い。バイト先は地元のアイスクリームショップ。ひまを持て余して友人の家でだらっと見るでもなくDVDを流す。(これがかなり昔の白黒特撮とかで、チョイスも微妙)親がいる時はバルコニーでカードゲームしながらビール。ぱっとしない。20年前ならばアメリカの若者にはマストだったであろう自動車は、もはや持てない時代。娼婦が街路に立つおっそろしく寂れた郊外。この荒れ果てぶりは絶句するレベルで、トランプが大統領になぜ当選したのかなんとなく分かります。 まさに「今」を切り取った画のなかに、音楽や絶叫を極力入れずひたひたとしつこく「それ」を置く。並みのホラーなら「それ」の弱点を探ったり、起源を遡ったりするところだが、超絶リアルな今作は、そんな手間も知恵もジェイとその仲間には出せません。感電作戦も失敗。 ”新感覚ホラー”という使われすぎな言葉が、これにこそぴったりな低予算な意欲作。お時間があればぜひ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-20 18:14:08)
203.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 
オスカー女優とカンヌ女優賞、二人の競演はとても見ごたえがありました。そしてなんと番狂わせなことに、ケイトを抑えてルーニー・マーラに軍配が上がりました、ワタシの中では。ケイトが押されている・・?とびっくりしました。 だって、テレーズはもう完全にキャロルに惚れている。彼女を追う時の目線の熱っぽさや、頬が自然と上がるときめき、恋する人間の発する独特の甘い空気。ルーニー・マーラすげえ。 一方、ケイトはルーニーよりハンデがありまして、なにしろ忙しいのです役が。我が子を思う母親であり、愛の冷えた夫とその家族に疲弊する妻でもあり、元カノに弱みをさらす一人の女性でもあって、ケイト・ブランシェットだからこそこんなに沢山のタスクをこなせたとも思うのですが、恋に身を焦がすほどの想いをばんばん放出してきたルーニーの方が印象強かったです、はい。
[映画館(字幕)] 7点(2017-09-15 00:19:51)(良:1票)
204.  ミケランジェロ・プロジェクト 《ネタバレ》 
第二次大戦中の、ナチからの美術品奪還物語。こんなこともあったのですね。 戦時の物語ではあるけど、時期がほぼ戦局が見えてきた頃でもあり、どう見ても兵役の上限年齢を越えたオジサンたちが「新兵」として奮闘するくだりがコミカルだったりで、凄惨なシーンは無くおおむねのどかです。“モニュメントメン”の面々がそうそうたるベテラン揃いでコメディタッチな軽さは彼らのキャスティングによるところも大きいと感じます。 とはいえ、事実に基づき殉職する者も出てしまう。彼らへの敬意を込めて制作したのでしょう。大げさな演出を避けてはいるけど、記憶に長く留まるような描写でありました。 ナチスとついでにソ連を悪役に回して、実に志の高い誇り高きアメリカ人の皆さんである。今時ちょっと珍しいくらい、てらいなく「アメリカ万歳」を言っているかのようで、アメリカの人がこれを観て気分を良くするのは別に構わない。 でも占領していた日本から引き上げる際、占領軍の一部はわが町からも勝手に接収施設の調度品を持って行っちゃってるよな?返してくれ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-10 01:08:00)
205.  ドラフト・デイ
絶頂期にはもう見飽きるほど、当たり作続きだったケビン・コスナー。水映画でコケてから、長い低迷期に入るとは人生分からないものだなあと思っていた。今作、「どれどれ」の気分でナメてかかって観ましたら、おやこれがなかなか”見せる”ドラフトドラマなのでした。コスナー復活の狼煙となるか。 プロスポーツの経営ドラマといえば、ブラピの「マネーボール」が記憶に新しいし、評価も高い。二番煎じというハードルもなかなか高いぞ、と思ったのですがこちらはアメフトのドラフトの一日に絞ったのが功を奏しました。 ライバルチームの腹の探りあいや、旧知の選手とのわだかまり、オーナーやファンからの圧力といったマネージメント業のストレス要素をみごとドラマに変換し、さらに一人の目玉選手について「マイナス点の有無」を観る者にも投げかける引っ張り方も巧い。 コスナー個人の恋愛ネタがちょっとうるさかったですが。ここ職場だよ。 苦悩しつつ、毅然と考えを貫くGMにコスナーが久々にかっこよくハマりました。長らく御無沙汰でもスクリーン映えするその姿。きちんと容姿をキープしているプロ根性に、ケビン・コスナーやるなあとちょっと感動しました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-08-09 00:45:26)(良:1票)
206.  シンデレラ(2015)
誰もが知ってるおとぎ話を、”清き者がハッピーエンドを迎える”の大原則に沿って、キャラを上手にふくらませました。CGはうるさ過ぎず、でも「ここだけは外せない」馬車・ドレス・ガラスの靴といったシンデレラ定番のアイテムにはしっかりと精力を注入した美麗さであります。 シンデレラ役のリリー・ジェームズは世界中の先入観に晒されての大役をしっかり果たしています。自然で素朴な笑顔は魅力的で、意地悪をされた時の表情は「怒る」「むかつく」でなく「戸惑い」であるところが上手いです。 そして演技力といえばケイト・ブランシェット。もともとクールな顔立ちですから継母メイクをしたその迫力たるや。大げさな身振り、表情、もうノリノリでヒール役を務めるケイト、楽しそう。 継母の人物造形も既出の作品より作り込まれており、ケイト母は娘らのように単なる愚鈍な意地悪ではない。シンデレラの美質をきちんと見抜くキレ者として描かれ、だからこそ手強くおっかない。 対するシンデレラも運命に翻弄されてめそめそするお嬢さんではないのでした。悪意とは立派に闘える意志の持ち主であり、故に「ヒロインvs継母」の構図が成り立って見ごたえのあるお話になりました。終盤エラが継母に切る啖呵は毅然として爽快です。 もはやシンデレラでなくゴッドマザーエイジのワタクシ、しみじみエラの幸せを祈る気分で観終わりました。 [うらわっこ]さん きっとあなたはスーツを着たシンデレラなのですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-17 00:12:35)(良:2票)
207.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 《ネタバレ》 
トム・ハーディのあっぱれな一人芝居。登場人物一名、場所は車中、交わされる電話の会話のみでストーリーを構築してゆく脚本は舞台劇のよう。目に映るのはひたすらトムの正面顔と横顔か、車内電話の着信画面。この単調さにも関わらず、ただならぬ展開を見せるのでもらい緊張でどきどきした。もう口が乾いて。 アイヴァン・ロックは困ったことになったもんだ。反父親という思いが骨の髄まで沁み込んでしまってて、「奴のようにはならない」「俺はきちんと責任を取る」を信条に生きてきた。その生き様は仕事においては非常に有能で、家庭も円満だったのだ。彼がいかに仕事のデキる男かは、この数十分でつまびらかに伝わる。ああその律儀さが、まじめさが、父への反発心が、築き上げてきた人生を葬り去ろうとは。 ロックに言いたい。間違ってるよ。「誰に対しても等しく責任を取る」なんてことはできないのだよ。仕事のように段取りを正確にこなして、突発的なトラブルにも的確に対処してゆけば事が運ぶのとはフィールドが違うんだ、こればかりは。 突然大仕事を丸投げされた同僚のパニックも、打ちのめされた妻の気持ちも手に取るように分かる。「悪気のない」ロックは大好きなトム・ハーディだしで、もう困っちゃったなああ、とワタシまで頭を抱えるシマツだ。この後をいろいろ想像するが、私の技量では誰も良いことにならないんだどうしましょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-02 00:15:09)(良:1票)
208.  ヴェルサイユの宮廷庭師 《ネタバレ》 
2016年はたくさん偉大なアーティストを失った辛い年でした。アラン・リックマンも逝ってしまった一人。長い演劇活動の最後に彼自らがメガホンを取った作品は、上品で格調高いラブストーリーでした。 17世紀のフランスにおいての女性造園家の奮闘が描かれているのかと思いましたが、公式サイトによるとサビーヌ・ド・バラは架空の人物だそうで、恋愛ドラマの主人公をわざわざベルサイユに持ってきた意味はといえば、やはり絢爛豪華な舞台装置が欲しかったんでしょうな。狙い通り、映像がとても美しい。豪奢な宮殿も、フランスの緑濃い森や田舎の一本道も。なんと英国での撮影も混じっているとのことですが、輝く陽光の下での庭園などは美術品のようです。 マダム・サビーヌについては資料も残っていないそうですし、あの時代に未亡人が誰の弟子でもなく、援護も受けず庭園技師として独り立ちしていたとはちょっと考えづらいなあと思ったのだけど、K・ウィンスレットが、芯の強い聡明な当時のキャリア・ウーマン像を見事に作り上げています。庭仕事イコール力仕事。ケイトの立派な二の腕やかっちりした肩幅なんかも、女性造園家の設定に説得力を持たせているような。 フランス貴族社会のお約束などろどろ恋愛模様もちゃんと織り込みつつ、マダム・サビーヌとル・ノートルの互いの想いはあくまで奥ゆかしく、英国人監督の感性を感じさせます。 名優アラン・リックマン、美しい作品を残してくれました。改めて合掌の思いです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-09 17:23:22)
209.  跪く女 《ネタバレ》 
近年社会問題となっている恋人間のDVのひとつですね。変形バージョンといいますか。イダとクリステル、世の中にはいろんなカップルがいるものだ。 男がやってることは完全なDV。この人のは「支配したがり型」。自分だけのものでないと安心できないので、とことん相手を洗脳、束縛し、卑怯なことに泣き落としまで使う。自己愛炸裂の中年男である。唾棄するほど嫌いだ。そんな私の心境を代弁してくれるのがイダの友達リンダ。痛いところを次々突かれるので顔色を変えてキレるクリステル。一歩も引かないリンダがしゃっきりと正しく健康で素敵だ。 しかしこの話、実は最も隠れ複雑な人格がイダだったりする。クリステルに無理やり従わされるうち、どんどん顔色が悪くなる彼女。観てるこちらはああやばいやばい、彼女壊れる、と心配がピークに達する頃合でなんとも予想のはるか斜め上のはじけ方をするイダ。あまり伏線らしい伏線は無いので、正直こちらはぽかんとするばかり。 虚言癖や特殊性癖嗜好、と突如開陳されてびっくりだ。”生の”自分を出し尽くしたので我に返った、ということなのか?あのラストは。なんとも感想の持ちようの無い、初めて観るタイプの映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-08 17:00:12)
210.  ヘイトフル・エイト
何作作ってもテンションの衰えないタランティーノ、ほんとに偉大な映画バカですね。ヘイトに血しぶきに腹の探りあい。またかよー、ではあるものの、タランティーノリピーターをもってして170分釘付けにする話力の凄いことよ。タラ監督作はすべて観ている当方、血しぶきが上がるのは分かっているが、そのタイミングはいつも分からない。いつ誰が引き金を引くのか毎回度肝を抜かれる。 今作は密室ものであるので、狭い空間に充満する”ヤバイ空気感”は相当のもんである。いわば「イングロリアス・バスターズ」の地下居酒屋だけで120分、君は耐えられるか。 殺伐とした中に挟まるピアノや、しみじみ聞かせるジェニファーのギターソングなど、こちらの心を懐柔するやり口も巧い。 難を言うと、演技達者揃いの中ティム・ロスが「ジャンゴ」のクリストフ・ヴァルツの真似をしてるんじゃないのかと見えてしまうのが惜しかった。だって似てるよお?
[DVD(字幕)] 7点(2017-05-29 16:57:17)
211.  SHAME -シェイム- 《ネタバレ》 
性交シーンが多く、しかもどぎつくて不道徳とも感じかねないけれども、この話の根っこにあるのは心の飢餓に苦しむ男の孤独である。心が不安定だと依存症になる場合がある。人により、アルコールだったりギャンブルだったり。この男はセックスだった。 キャスティングが容姿端麗なM・ファスベンダーで正解だった。画が生臭くならずに済むし、見た目とのギャップの大きさも強く印象に残る。かなりきわどい性描写もこなし、X-MEN俳優で終わるまい、というあっぱれな役者根性の持ち主とみた。 妹シシーを配した脚本が巧いと思う。シシーは男の映し鏡。欠落しているものが同じなので、自分を見ているみたいでイライラするのである。二人とも孤独で、空っぽだ。 男にとってセックスは渇望を満たすための行為。愛の行為ではないので、好きな女のことはどう抱けばいいのか分からない。この場面は深刻だ。深刻さを解消できぬまま、後半には彼のセックスは自己破壊にも近くなる。 兄妹の生い立ちがどういったものなのか描かれず、つらいまま話は終わってしまう。 男にはセラピーが絶対に必要だ。まだ希望はあると思う。妹が死にかけた時、初めて人間らしく動揺し、男は泣いた。なんとかして、彼が苦しみから抜けられますように。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-07 00:22:27)
212.  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 《ネタバレ》 
ジャームッシュ健在、を印象付ける一本。気だるくて美しくてちょっとエスプリも効いていて。 タンジールの異国情緒も、デトロイトの廃れた佇まいもどちらも夜のショットの中に耽美的に切り取られていて魅力的だ。 ストーリーは淡々と、何世紀もの生を生きるヴァンパイアらの”日常”をつづり、一編の詩のよう。 静かな湖面に石を投げ込んだような、異端児エヴァの存在も光る。 主役二人が本物の吸血鬼っぽくてリアリティ有りまくり。いや本物は見た事ないけど。 あそれとドクター・ストレンジ・ラブの血を買ってましたね。ははは。大丈夫かな あんな風にイカレたら耽美どころじゃなくなっちゃうよね。
[DVD(字幕)] 7点(2017-03-14 00:28:23)(良:1票)
213.  ザ・ベイ 《ネタバレ》 
POV形式のパニック・ムービーものとしては、今まで観た中でも出色の出来。「手ブレ」もそこそこ抑えられてるし、各映像の繋ぎ方もなめらかで話がブツ切れにならず展開する。これって結構技量が要るんじゃないのかな。 いや怖かったです。寄生物のグロテスクなシーンも多い。海洋汚染と海水ろ過装置の不完全さ。鶏糞に含まれるステロイドによる異常発育とか、ノンフィクションとはいえ妙に説得力のあるワードが並び、ワタシは膝を抱えてがたがた震えました。 こういうディザスターものは幽霊ホラーと違って「こういうことが起こったらどうする?」と突きつけてくるので答えがみつからない限り動揺してしまう。竜巻とか大雪とかは自分なりに切り抜ける手段を見出しているけど(ほんまかいな)水はなあ。どうしよう怖いよう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-23 00:24:46)(笑:1票)
214.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
アイヒマンを”解り易く”糾弾しなかったことで世間から袋叩きにされるハンナ。60年当時であれば、ナチの禍々しい爪あとはまだ記憶に新しい頃だろう。ナチの幹部など吊るし上げて当然の風潮の中、ユダヤ人でありながら冷静にアイヒマン個人を観察し、悪というものの構造をひも解いた彼女の知性に驚嘆する。 ハンナが、世間がヒステリックに決め付けたような「冷酷な人間」ではないこともきちんと描かれた。病に倒れた夫を献身的に看病し、友人を失ったことには傷つく。読者からの抗議の手紙にも「傷つけたことを詫びる」ために返事を書く誠実さもある。 バルバラ・スコヴァの熱演もあって、ハンナ・アーレントという哲学者の生き様と当時の世相がとてもよく伝わった。 今の時代のブログ炎上どころの騒ぎではなかっただろう。しかし彼女はそんじょそこらの男たちが束になって悪口を言ってきても、ひるまずりりしく、勇者のごとく一人立つのだった。 信念を曲げないこと、発言する勇気と結果を引き受ける責任感。 こんな人がいたのだと、教えてもらった圧巻の120分であった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-05 00:54:04)(良:3票)
215.  殺し屋チャーリーと6人の悪党
人物ごとに描く時間をずらして、時系列を行ったり来たりするタイプのやつです。(正確にはなんという名称なのかなすいません)話が進むにつれて関係性が分かってきて、ああなるほどとなるアレ。今作の脚本も破綻無く、すべての案件を回収して締めていて上手いです。この手のプロットはすでにたくさん世に出ているので、またこれかと思うか面白いと思うかは人それぞれ。私は楽しめました。 かなり容赦なく人が死ぬけど、そこはコメディなので暗くも痛くもならない。一因としてはなんと言っても殺し屋をS・ペッグが演ったのが大きいです。非情なキャラクターなのに、彼独特のすっとぼけた面相と、培ったコメディアン演技の賜物で”ライトなたくさん死ぬ映画”となっています。 それと、オーストラリアのロケーションが内容に反して大変明るく綺麗なので、これまた人を食った印象を残します。なんでそんなに観られてないんだろ。おすすめですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-12-18 17:52:32)
216.  フランシス・ハ 《ネタバレ》 
フランシス、27歳。大柄、金髪、大股歩きのアメリカンガール。この、がさつで社交的で一生懸命夢を追う女の子は等身大のアメリカ女子なんだろうな。口コミでヒットする作品というのは、こういう「あるある」な魅力があるものです。生活環境は違えど、画面からあふれ出るリアリティに親近感わきまくり。 もうダンサーとしての可能性を探るにはほぼ期限が切れている年なのにあきらめきれない彼女。見てるこちらは「ああ~それは」とダメ出しの気分。聞かれてもいないのに恋愛観なんか披露しちゃったり、無駄遣い以外の何物でもないパリ旅行に思いつきで行っちゃったり、イタイとこ満載のフランシス。けれどキビシイ現実になんとか折り合いを付けながら、せっせと生きる彼女は”起き上がりこぼし”のようで、だんだん彼女を応援する気分になってくるのです。 必要以上にめげない。友人の助けで元気になれる。「メンタルがレズビアン」ぽいフランシスなので、ありきたりな結婚、家庭持ちみたいな展開は無さそう。私は彼女の幸せを祈る。 アメリカ映画のヒロインが「彼氏を作る」ことへの位置づけが低いってタイプは初めて観た。これがヒットしたというんだから、アメリカって国は裾が広い。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-12-13 18:28:46)
217.  ビッグ・アイズ 《ネタバレ》 
実話ものながら、夫の素性を小出しにしてゆく脚本が物語をサスペンスフルにしてて巧いと思いました。一組の夫婦がいて、絵の才能は妻が上で夫の方はプロモーションに長けていた。中盤までのこの視点が一気にひっくり返る、キャンバス上書き署名発覚の場面。真相に気づくエイミー・アダムスの「まさか」の表情は真に迫っており、私も震撼しました。留学どころか画家ですらなかったとは、まじかーと声に出ましたね。 夫は正真正銘の詐欺師だったわけだけど、とにかく社会が夫唱婦随の時代だもんなあ。教会の神父すら「夫に従え」とアドバイスするんだもんなあ。ダンナを疑うなんて夢にも考えなかったんだろうなあ。色々考えさせられる事件であります。 そしてクリストフ・ヴァルツが安定の仕事ぶりを発揮してます。実態がばれてからは、顔つきが山師そのもの。序盤の感じの良い友人~やり手のプロモーター、そして詐欺師の顔。一人の個人を演じながら、雰囲気だけを変えてゆく。見ごたえのあるベテランの名演技でありました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-12-05 17:20:54)
218.  フォックスキャッチャー 《ネタバレ》 
生まれつきお金がありあまる環境で育つのって良くないな。”何でも手に入る”ということは”何も得られない”のと同じこと。 この富豪の男が真に欲しかったのは母親の承認だもの。レスリングへの。翻って自分自身への。でも彼女の死によって永遠に手に入らなくなってしまった。 模型機関車に続き、きっとレスリングにもまた飽きるだろう。欲しい欲しい、自分への承認が。お追従ではなく真の人間関係が。鉄仮面のような無表情の下で、しかしジョンは確かに叫び続けていて、S・カレルの怖く哀れな名演だった。 自分の欲するものを全て持っているデイヴ。人望もレスリングの技術も。心の奥底で煮えるような嫉妬心はモーツァルトに対するサリエリのよう。もう少し、物語に起伏があったらスポーツ版アマデウスとも呼ぶべき名作になったかな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-10-02 00:49:53)(良:1票)
219.  ミッドナイト・ガイズ 《ネタバレ》 
オスカー俳優のオジサン(じいちゃん)たちが、揃いも揃って良い仕事をしています。もうさすがの一言。 なにしろ役の掴み方が的確だ。特にアル・パチーノ。彼の輝かしいキャリアは言うに及ばず、裏社会のボスや、一匹狼刑事や熱血弁護士等、次々とかっこ良い役を思い出せる。なのにああなんてこった、役者人生ここまで来てこんな役も引き受けるのだね。ちょっとくどいとも感じる下ネタも軽々とこなし、「人生の大半を裏社会の底辺でやってきました」という明るい開き直りの表情で、ただでさえ大きい目をけろりと見開いて「頭を撃ってくれよな」とウォーケンに頼む。バイアグラを一掴み飲んじゃうって、馬鹿にも程がある。(しかもなんか情けない)しかしこれが上手いんだー。アル・パチーノ!マイケル・コルレオーネなのに。 で そんなナサケない友人を見守るいぶし銀ウォーケンもまた巧い。パチーノに破天荒はまかせて、一歩引いた所で彼もまた窃盗の腕の一流なところを披露しちゃったりするわけですが。 ストーリーの流れ的に、ラストは大体予想通り。 「明日に向かって撃て」の哲学はじいちゃんになってやってもかっこ良くてシビレるものがあるのでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-09-18 18:08:27)(良:2票)
220.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
二作目以降長らく続いてきた「ゴジラ=怪獣映画」の流れを断って、初作品の哲学に立ち戻った21世紀版ゴジラであります。現代社会に破壊神が降り立ったら、のシチュエーションのもと描かれるのは主に人間ドラマ。今作では指揮トップに立つ役人や政治家の右往左往がメインで、硬直した組織の縛りっぷりであるとか、首相の暴走発言による混乱とか、やたら長い役職名とか現日本国民である我々は肌でデジャブを感じるリアリティである。前半のどたばたっぷりはとても面白い。私はくどくど会議が展開中の中盤までの方が好きである。 邦画の常として、主人公クラスは人気先行のタレントをおいて脇をベテランで固めるパターンにはもう慣れてはいる。本作もしかり。長谷川のおぼつかなさを支える柄本明であったり、特に巨災対チームの面々がそれはもう素晴らしい芝居っぷりで心躍らせて観ていたのだが、突然冬のオホーツク海並みの冷や水を浴びせられるのだった石原さとみに。米国政府のブレーンというよりイキった日本人にしか見えない。この人が口を開くたび下を向いてしまった。つらくて。未曾有の有事に際しているのに毎日髪をきっちり縦ロールにしてくる人材は大統領にはなれないと思う。ヒラリー・クリントンだって国務長官時代は髪なんかにかまっていられなかったと言っていた。 とはいえゴジラの造型は素敵でした。ゴジラサイドに立つ人間がいなかったことが残念でしたが。あ、そして生活に根ざした圧倒的な恐怖感という意味ではやはり一作目には及ばないような。映像が綺麗でシステマティックだからでしょうか。
[映画館(邦画)] 7点(2016-08-28 18:47:26)(良:4票)
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