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風小僧さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 261
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自己紹介 現在の技術で作られた映画を観る目線で過去の映画を見下すようなことは邪道と思っている。できるだけ製作当時の目線で鑑賞するよう心掛けている。

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201.  レッド・オクトーバーを追え!
東西冷戦を背景に、ソ連原潜艦長たちの亡命をめぐって米ソが繰り広げる虚々実々の駆け引きを描く。アメリカ礼賛映画ではあるが、テンポがよく見ごたえ十分。ラミウス艦長役S・コネリーがロシア人に見えないのは先入観のせいか。ライアン役はA・ボールドウィンだが、CIAとしてはひ弱でちょっと頼りない印象だ。 ソ連艦長の亡命か攻撃かの判断は重要なポイントで、緊迫感あるギリギリの決断を描けばもっと盛り上がったのでは?それを決断したダラス艦長役S・グレンは好演。亡命意思を確認するため、ダラスとレッド・オクトーバーがモールス信号で会話するシーンは記憶に残る名場面だ。 潜水艦ダラスの海面浮上シーンはクジラを連想させる映像で面白い。他の動物を助けるような行動をとるといわれるザトウクジラのダイブを模したか? 魚雷発射され危機になっても艦長たちは冷静すぎの印象であるし、ソ連艦でのコックの銃撃はやや盛り上がりに欠けると思うが、最後は亡命に成功し、めでたし、めでたし。 冷戦時代は他人事でなかった。何せ「プロレタリアート独裁」を職場で語る輩が多数いたんだから・・・。そんな連中はソ連崩壊後、誰も「独裁」賛美に加担した謝罪や反省をしやしない。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2016-02-14 15:34:19)
202.  はじまりのみち
 木下恵介への尊敬が随所にみられる作品だが、一番心に残ったのが「陸軍」のラストシーンで、田中絹代が出征兵士を見送る場面というのは皮肉な結果だ。  節々で見られる雲の移ろいは主人公や家族の心象風景を感じさせる。木下恵介役の加瀬亮は涙を流す場面で鼻水も垂らしているが、そこまでしなくてもいいよ。また、いろいろな映画で儲け役を見かけることがあり、本作では便利屋役(濱田岳)がそれにあたる。特に「エア食事」とでも言いたくなる、食べるふりのシーンは戦争中だけに印象深い。  ラストの木下作品の引用は作品数・時間ともに多すぎで、もっと数を絞って短時間にまとめ、その分(時間)を自作の表現に充てた方がよかった。それだけに作品の独自色が薄まったように思う。  全体の印象として、木下映画にも通じる戦争に翻弄される庶民の姿、その中で貫かれる家族愛を見つめることができた。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2016-02-07 16:22:29)
203.  キングコング対ゴジラ
ゴジラ勝つかキングコング勝つか、世紀の肉弾戦実現成る!これぞ怪獣プロレスエンタメの極致。おーっと、加えてわが日本の“笑撃波怪人”多胡部長の乱入!で面白くないわけがない。コマーシャリズムに対する風刺も上等! 序盤はゴジラ優勢でコング実力を発揮できず押され気味。だが中盤、雷撃を受けパワーアップのコング猛然とラッシュしてゴジラを圧倒。終盤は両者もつれ合いリング下ならぬ海中に没す。プロレス常道の両者リングアウトうやむや決着?はたまた最後、海上に浮上したコングの優勢勝ち?ラストシーンのこの謎には議論ありか。 後の怪獣バトル路線を確立した本作。さすがのゴジラも先輩怪獣のコングに一目置かざるを得ない結末だ。強豪同士の対決はお互い死力を尽くして両リン引き分けか反則がらみで試合終了、というプロレスのお約束と同様の展開で、予想通りドローながら内容は十分満足。コメディー的展開もまた満足。
[映画館(邦画)] 8点(2016-01-31 17:20:17)(良:1票)
204.  最強のふたり
「たまたま組み合わせ・相性が良かったふたり」というべきか。富豪だが不自由な生活の偏屈者、自由はあってもお金がないチンピラ、対照的なふたりがお互いの不足を補い合って最強の友人になったというお話。実話がモデルとはいえ、この障害者は経済的に恵まれているからこそ我儘を通せるというもの。ドリスだって高級車を乗り回したり、パラグライダー乗りやオペラ鑑賞といった非日常的体験は相手が富豪だから可能なのである。 事故で障害を負い、子供に恵まれず妻に先立たれた大富豪が貧乏青年を雇い、価値観の衝突を繰り返しながらも互いに影響しあって友情を育む。この過程が見どころであるが、ふたりさえ良ければ周りの人はどうでもいいの?素朴な疑問として、かの国では障害者に熱湯をかけても問題ないの? ふたりの友情とともに、障害者への接し方が重要なポイントであるだけに介護士達の立場を考えると違和感がある。フィリップの内心を理解できず型通りの介護しかできないプロ介護士は偽善で失格?障害者扱いせず対等に付き合って(ただし長期ではない)友情を育むドリスだけが合格?前任介護士が何人雇っても辞める(辞めさせられた?)原因はフィリップの気難しい性格であり、後任者さえ気に入らずドリスがいいというのは身勝手であり対話不足だ。後任介護士は白人だが、仮にドリスと同じような境遇で誠実な黒人が替えられたならば印象は大きく変わるだろう。 ドリス役は北アフリカ系(旧仏領のアルジェリア等)の俳優が演じればよりリアルに感じられたのではないか。えっ?そうなったら感動は薄まる?人種を絡めて感動を得ようという下心はなかったか。実話を強調している割にはねえ・・・。ふたりの心の交流は理解するが、共感できる内容ではない。
[CS・衛星(吹替)] 2点(2016-01-17 16:08:26)
205.  砂の器
暗い過去を背負うため殺人を犯してしまう天才音楽家の宿命を主題とする人間ドラマであり親子の物語である。 捜査が難航し、迷官入りかと思われる殺人事件を二人の刑事が執念で追及する。美しい日本の四季の風景を織り交ぜながら捜査の過程を叙情豊かに描く。特に日本海沿岸の荒涼たる冬の風景が親子の心情と重なり印象深い。 父の難病により故郷を追われ、親子は巡礼に旅立つ。行く先々で迫害され過酷な運命に翻弄される父子の絆・愛の強さが描かれる。その後の離別から息子(和賀)が犯罪を犯すに至る経緯は、宿命から逃れられない親子の姿を映すとともに人間の業の深さが表される。音楽家として名を成し、良家との婚姻を控え前途洋々たる和賀は、ハンセン病の父親の存在を隠すために恩人・三木を殺す。動機として弱いが、差別を受けた者にしかわからない苦悩が和賀を犯行に追い詰めたと考えられよう。 終盤、和賀の指揮によるコンサート会場での演奏シーン。ピアノ協奏曲「宿命」は、まさしく彼の芸術家としての高揚感・まばゆい未来への渇望と、対照的に暗い過去を抱える複雑な内面を表現するものであった。 人権にも関わる深く重いテーマを描き、美しい映像と圧倒的な音楽の力で情緒に訴える手法だが、後味は悪くない。
[映画館(邦画)] 8点(2016-01-10 12:46:36)(良:1票)
206.  桐島、部活やめるってよ
観た人それぞれに解釈を楽しむ映画だと思う。自分なりに考えると・・・。 桐島、桐島と何回も聞いていると、「カリスマ」の暗示かと感じる。同様に、吹奏楽部長のサックスもサックス、サックス・・・ん?「部活オンリーの童貞とセックスしまくりの帰宅部、どっちがいい」のセリフ。サックス奏者・亜矢が宏樹たちを見ている前で交わされる、男子たちのこの会話も意味深かな? 成績優秀でバレー部のキャプテン、彼女もいる学園の“カリスマ”桐島が、突然退部するという噂が流れる。序盤は多視点反復で登場人物の相関が描かれる。 運動部・文化部・帰宅部別にモテ系・非モテ系の属性を階層区分し、外見は類型的だが内面は個性豊かな等身大の高校生像、その複雑な心情をきめ細かく描く青春群像劇。暴力系(?)やガリ勉が登場しないのは母集団を絞り込むためか。この舞台設定には納得。 ひどく悪意のある人物はいないが、善人同士でも些細なことで傷つけあうことがあり、ちょっとした波紋で動揺する思春期の人間関係のナイーブさが滲み出ている。 桐島不在のため風助に特訓を強いるバレー部孝介は前近代的な精神主義を象徴。対照的に、野球部キャプテンは宏樹に対し部活復帰を無理強いせず自然体で接し好感。また、下位同士と思しき剣道部員の部室出入りシーンはなぜか微苦笑を誘う。さらに、女子3人で話している最中、梨紗が実果に「いま笑った?」の詰問や、かすみが竜汰に交際を秘密にするよう話す「大変なんです女子は」のセリフはリアルな怖さ。げに女同士の葛藤は恐ろしい。 桐島不在で右往左往する人達に対し、映画部員はひたすら我が道を行く。ゾンビ映画を作りたい部長と青春映画こだわりの映画部顧問の関係は、世代間のギャップや価値観の相違をさりげなく描く。 終盤、屋上で展開する映画部員による上位カーストへの逆襲劇(妄想劇)は、耐えに耐えた弱者が強者に一矢報いる勧善懲悪劇を彷彿させる。 屋上での騒動後、8mmカメラを向けられた宏樹が「いいよ俺は…」と涙を流したのは、前田のように打ち込めるものがない空疎感のせいか?エンドロールのクレジット「菊池 宏樹( )」に、彼の所在なさが表れている。2人は好対照だが、逆の視点で見れば、前田と会話して自分を直視しカメラのレンズを通して外の世界へ視野が開けた宏樹に対し、前田は最後までタコツボくんだったな。ラストの展開は、暗闇の中を彷徨っていた宏樹にも微かな光が差してくるような余韻があった。 桐島という偶像は不在の存在というべきか。周囲の人たち(映画部員等を除いて)の意識が偶像として祭り上げたものであり、実体以上に神格化された虚像でしかないのだろう。その意味で、偶像崇拝の怖さも内包した映画といえる。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-12-27 11:17:38)
207.  プラトーン
ベトナム戦争に従軍した1兵士の視点から、戦争の実態がリアルに描かれる。ジャングルでの過酷な行軍、疑心暗鬼、服従、裏切り、狂気・・・。さらに、村人の虐殺、焼き討ち、部隊内での殺人、誤爆などこれでもかというほど暗部を暴く。麻薬汚染はいかにもアメリカ的ではある。 製作当時のアメリカ映画としては異色の力作だが、過酷な戦場を描いたら(作品名を挙げるまでもなく)太平洋戦争を題材にした日本映画の方がはるかに説得力があるのではないか。本作と決定的に違うのは、日本映画の場合、物資の補給不足による悲惨な飢えが加わること。時には人食いさえも描かれる。その点は所詮アメリカ映画。エリアス軍曹が最後に両手を上げるシーンは神への祈りなのか戦争への怒りなのか?印象的な場面だが、このポーズでさえ「カッコつけ」に思えてしまうほどヒロイズムを感じる。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2015-12-20 14:09:11)
208.  青春デンデケデケデケ
 団塊の世代を主人公に、全編通じて淡々と60年代の青春を描いたという印象。高校生の活き活きとした日常生活が描かれ、何よりローカル色満載が良い。  地方に住む若者たちが高校入学後ロックバンドを結成し、演奏に明け暮れる毎日を送る。その過程で彼らは友情を育み、地域社会にもまれ着実に成長する。大学受験を控えながらも音楽に熱中できる主人公、当時としては経済的に恵まれた方だろう。ちっくん役の林泰文は自然体の演技で好演。  この映画を自身の体験と重ね合わせて観られる人がちょっと羨ましい。自分の場合、クラシックギターを数年間練習したことがあるが、指先が少々変形した。その経験から「お前の手、フリッツ・フォン・エリックの手みたいだな」のセリフには敏感に反応した。ギター練習でエリックほどのスパンにはならんだろうがね…。セリフの上での特別出演、鉄の爪に乾杯!
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-12-06 15:36:35)
209.  2001年宇宙の旅
宇宙空間の壮大さをゆったりした映像で表現し、音楽と一体化して見せる一大叙事詩。セリフが極力抑えられており、環境映像のような見方で画面に集中できる。製作当時は米ソ冷戦真っ只中であり、宇宙開発にしのぎを削っていた時代。監督の前作「博士の異常な愛情・・・」からの流れで見れば、対立から協調を経て、宇宙開発における米ソの協力を織り込んでいる。先見性という点で、本作の評価には直結しないが21世紀におけるソ連の存在は、映像の完成度が高いだけにイタかったなあ。HALの予測ミスをあたかも証明したかのようだ。セリフはもっと厳選してもよかったろう。また、木星探査計画での女性・非白人のクルーがいない描き方も物足りない(同時期に製作の「スタートレック」と対照的)。オープニングからHALの叛乱あたりまでは完璧な画面作りに挑み、宇宙船の窓の人影が動く描写など緻密だ。最後の「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」の章は、あえて明快な描写をせず、観る人にそれぞれの解釈を委ねる演出だが、これは諸刃の剣だろう。観終わってから、ある人がAという解釈をすれば別の人はしたり顔でBと反論するような議論百出の問題作。進化をめぐるモノリスやスターチャイルドの姿を見ると、科学・哲学と宗教のごちゃ混ぜ感は否めない。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2015-11-29 16:46:06)
210.  運が良けりゃ
時代劇はチャンバラを楽しんだり戦国武将の生き方を味わうもよし。そして、この映画のように市井の人々や農民の日常に思いを巡らすもよし。「幕末太陽伝」同様、落語を元ネタに江戸時代の庶民の生活ぶりが皮膚感覚で描かれ、面白い。貧乏長屋を舞台にさまざまな生業の人物が登場して悲喜劇を展開するが、その中で肥汲み屋の吾助は重要な役割を果たす。当時は人糞を農作物の肥料として売買するリサイクルが成立した。汲み取りの時など臭うのが当たり前で、画面全体から臭気が漂うような画作りは見事に当時の生活感を醸し出している。昔、ある俳優が人糞を肥料にして作物を栽培し「うまい(栄養価の高い)ものを食べた人の排泄物は肥料の効きが良い」と語っていたが、劇中でも吾助の「最近は肥えが薄くなった」のセリフがあり、景気低迷による食生活の悪化(=肥効性の低下)をにおわせている。終盤、主人公・熊五郎の妹は輿入れ相手として奉公先の大名ではなく、かねてより惹かれていた肥汲み屋を選ぶという痛快さ。裕福な生活より愛情が大事、と人情味あふれる展開で締めくくる。自分なりの考えをふたつ。「熊さん」「八つぁん」の名前ではモロに落語なので別名がよかった。また、タイトルは「ウンが良けりゃ」の方がよい。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-11-22 11:21:23)
211.  モスラ対ゴジラ
俗に「怪獣王ゴジラ」というが、60年代においてキングコングに引き分け(or判定負け)、キングギドラには単独で勝利していない。そして本作では2対1のハンディキャップマッチながらモスラに敗れている。海岸に漂着するモスラの卵は「虹の卵」(パゴスではない)と形容したくなる幻想的な造形美であり、殊に卵を取り巻く群衆の場面は絵画的な趣を感じる。巨大生物を見世物にしてひと儲けを企む業者の姿は「キングコング」の昔から定番だが、悪徳業者を演じる佐原健二や田島義文がちょっぴり愛嬌があるのは東宝流。ゴジラが自衛隊の高圧電流攻撃に苦しむ場面は、安易に強いだけでなく弱点もある生物という描き方で、それに耐えるタフネスぶりがモスラとの戦いに凄みを加える。親モスラが余命わずかで、最後の力を振り絞って戦うシーンや幼虫モスラが双子で誕生する設定など、実に工夫された脚本だ。激戦の末、幼虫モスラが糸を吐いてゴジラをがんじがらめにするという平和的な手法(?)で勝利する展開は何度観ても感動する。藤木悠の「卵のオバケ?」はコメディリリーフの面目躍如、こじつけに見えるが当時としてはありがちなものと思う。体験談だがこの映画から○年後、仕事で訪問の都度、茶菓子代わりにゆで卵を出してくれるところがあった(!)。よれよれコート姿で葉巻を燻らすロス市警刑事さんもなぜかゆで卵が好物だったな。
[映画館(邦画)] 8点(2015-11-15 16:03:17)(良:1票)
212.  戦火の馬
第1次世界大戦を背景に、軍用馬として徴用されたサラブレッドを主人公とし、その数奇な運命と、戦時下における人間と馬の交流を絡めて描くロードムービー。故に長い。全体的に感動要素テンコ盛りで少々ゲップが出る。逆光を活かした撮影は絵画的画面の連続で、時には影絵のような効果も。特に室内シーンはフェルメールの絵画を思わせる。ヨーロッパの牧歌的な時代を舞台にしてヴィスコンティを意識したか?塹壕内での毒ガスによるアルバートの目の負傷は終盤への伏線であり、口笛を吹いてジョーイと再会する場面へと繋がる。クライマックスは鉄条網に絡まれた馬の救出をめぐる英独の休戦シーン。敵味方を超えての会話やカッターを一斉に投げるシーンなど出来過ぎの美談の感もあるが、第2次世界大戦におけるリリー・マルレーンの例もあり、決してメルヘンとも言い切れない。特筆すべきは馬の表情の豊かさで、擬人的な演出が随所にみられる。ラストの帰郷シーンは、遠景ショットのシルエットが印象的な、余韻の残る場面だった。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2015-11-08 14:54:40)
213.  ウエスト・サイド物語(1961)
今に通じる“差別と貧困”や“不寛容による対立”をテーマに、「ロミオとジュリエット」を下敷きにして現代の若者の群像劇を描いたミュージカル映画の傑作。G・チャキリス、R・モレノ、R・タンブリン等の芸達者な踊りに比べ主役二人(R・ベーマー、N・ウッド)は霞んで見えるが、音楽やダンスと芝居の融合という点で、これも計算のうちなのだろう。 躍動的なダンスで若者の活力を謳った「アメリカ」、対立して熱くなった時こそ“頭を冷やせ”のメッセージを込めた「クール」、甘いラブソングの「マリア」等々、名曲が華を添える。お気に入りは「クール」だ。A・パーキンスをワイルドにしたようなT・スミスをメインに、彼らが歌い踊るシーンは「静」から「動」への流れが見事! ラストはトニーが殺され悲劇的な結末だったが、「ロミオとジュリエット」と異なり、生き残ったマリアの叫びは、不毛な対立を越えて微かな救いを残す余韻があった。 フィンガースナップの流行やM・ジャクソンのミュージックビデオへの影響、日本でもジャニーズ少年野球団が芸能界を志すきっかけになった等々、この作品は多くの方面に影響を与えた。そして「サイボーグ009」。ジェットの登場シーンにおけるオマージュは忘れがたい。 共同監督のR・ワイズとJ・ロビンスは作品の完成後決別したとか。2人の才能と情熱が化学反応を呼び起こし、この名作を生んでくれたことに感謝。
[映画館(字幕)] 10点(2015-10-24 20:59:24)
214.  シェルブールの雨傘
 全編セリフを歌で表現する斬新な手法。洒落たオープニングや色使いが見事な画作り。M・ルグランの主題曲は物語の情感を的確に表現し、一度聴いただけでメロディーを口遊める名曲だ。  2年間とはいえ、若い恋人同士の“かくも長き不在”は重い。妊娠したジュヌヴィエーヴの決断は切なく辛い選択だろう。兵役から帰ったギイは荒々しく変貌し、戦争の過酷さを物語る。ギイとマドレーヌの恋もお互い傷口を舐め合うような切なさは残るが、健気なマドレーヌの存在に救いがある。  かつて愛し合った2人がガソリンスタンドで再会した時、やけぼっくいに火がつくかなと思わせる展開。だが、それぞれ家庭を持っており、ラストは複雑な思いを抱きながらも別れていく。何事もなかったかのごとく妻子を迎えるギイの姿が余韻を残す。  恋愛経験について「男は別名で保存し、女は上書き保存する」だとか。言い得て妙だが、この映画ではどちらも「上書き保存」、これでいいのだ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-10-17 14:37:43)
215.  禁断の惑星
テンペストを土台にして宇宙空間をヴィジュアル化し、人間の深層心理を描いたSF映画の金字塔。白黒SFが中心の時代に、哲学的な内容を含んだ奥深い構想力でカラー映像を製作したことは高く評価できる。ロボット・ロビーの登場は画期的で、その後のフライデー等を経て現代まで脈々と受け継がれる、言わばゆるキャラの先駆者といえる。ハニー・ウエストを演じる前のA・フランシスがキュートな魅力全開。惑星に生き残った博士の潜在意識が生んだ“イドの怪物”のアニメ処理はご愛嬌で、獣性はあるものの全然怖くない。が、自然界では恐ろしい風貌の動物ほど弱い小さな生物であることが多く、怖い姿形は身を守るためということもある。「本当に怖いものは優しい顔をしてやってくる」というくらいだから、案外これでいいのかも。その正体は示唆に富んでおり、現代に目を転じれば、いわゆる「神の見えざる手」の世界にも、まるでイドの怪物が棲んでいるかのような強欲が存在する。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2015-10-11 20:29:05)(良:2票)
216.  眼下の敵 《ネタバレ》 
前半から中盤にかけてはアメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦内の人間模様が描かれ、終盤は神経戦を交えた緊迫感あふれる攻防が続く。お互い死力を尽くし、ドイツ側勝利!と思ったら最後は駆逐艦が潜水艦に体当たりし相打ちとなる。R・ミッチャム、C・ユルゲンス演じる艦長の的確なリーダーシップとともに細やかな人間性を描いており、前者は兄貴分的な、後者は父親的なリーダー。特に、ナチスに対する批判的な思いを抱きながらも任務として戦うという、複雑な心情を表すユルゲンスの演技が光る。両艦の衝突後、海上では敵味方の区別なく乗員たちが助け合う。ラスト、潜水艦に残ったドイツ艦長とその部下をアメリカ艦長が救い出す。アメリカ艦長「次はロープを投げんぞ」のセリフに、救出されたドイツ艦長が「いや、君なら投げるね」と返すシーンは名場面だ。海の男ならこのような展開もありえるかなと思わせるリアリティがあり、敵味方の枠を超えた物語としては「戦場にかける橋」より数段上だ。ケネディが乗った魚雷艇109と日本海軍の駆逐艦「天霧」もひょっとして・・・気づいていたら・・・???と思わせるような?・・・なんてね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-09-27 12:40:53)
217.  星のない男 《ネタバレ》 
私評として文句なしに西部劇のベスト1だ。オープニングは機関車の疾走に合わせF・レインの歌声が響く。飄々としながらも影が漂う主人公のガンマンを演じるK・ダグラスの演技は絶品。流れ者のガンマン(ダグラス)が惚れた女性から「何が欲しい」と聞かれ、帳簿に「you」と書くシーンは粋な演出だ。主人公を慕う若者との交流・師弟愛が心地よい。若者に拳銃の扱い方を教えるシーンはガンマンの真骨頂、軽快に銃を捌いて凄腕ぶりを見せつける。その後銃の腕を上げた若者が人を殺してしまった時、主人公はそれまでの飄々とした態度から一変、鬼気迫る表情で軽はずみな行動を窘める。牧場に雇われた彼には、有刺鉄線で傷ついた苦い記憶がある。やがて牧草地の有刺鉄線をめぐって牧場同士の対立が起り、主人公を巻き込むことになる。この過程で描かれる、スタンピートを織り交ぜた銃撃シーンは躍動感が溢れている。終盤、有刺鉄線をバックに繰り広げられる決闘シーンは、拳銃を使わず殴り合いで決着というのもメッセージ性がある。ラストはトラブルを解決し、「俺に境界は無用だぜ」とばかりに去ってゆく流れ者・・・星を持たない、放浪する男の美学。この映画では「有刺鉄線」という境界(しかも人を傷つけるもの)を問題事の象徴として描いている。現実に境界なしで社会は成り立たないものだが、それがために争いの元でもある。宇宙飛行士が地球へ帰還後に語る「宇宙から見れば国境はない」の精神を連想した。
[地上波(吹替)] 10点(2015-09-23 15:52:54)(良:1票)
218.  野菊の如き君なりき(1955)
「野菊の墓」とせず、「・・・如き君なりき」と題名をつけたセンスの良さ。また、楕円形のフレームを使用した撮影は、古いアルバムをめくるような画面作りで郷愁を駆り立て、叙情性豊かな名作となった。今では考えられないことだが、「次郎物語」というテレビドラマを観て育ったせいか、映画に描かれた時代背景(家父長制等による「家」の重み)は認識できる。回想画面における笠智衆の静謐な語り(短歌の朗読)は、遠い日の物悲しい記憶を美しいまでに描写している。
[地上波(邦画)] 9点(2015-09-13 13:39:54)(良:1票)
219.  硫黄島からの手紙
硫黄島二部作の1本、評価は2作トータルで7点だ。こちらの方は日本側からの視点で製作とあったが、栗林中将と西中佐の描き方を見ると「知米派=部下思いのいい上官」的な描き方で、単調なアメリカ目線を感じる。爆撃を受けて馬をいち早く心配するのもどうかと思う。戦闘場面は迫力十分だが、記録映像を見慣れたせいか、リアルに見せようとすればするほど「技術が発達し表現方法が進化しました」という作り物感が出てしまう。戦場では負傷者の血しぶきが顔に当たるどころか、肉片や内臓がもろに飛んでくることもあるのだろう。仮にそこまで描写されたとしても心に響くだろうか。音声も気になる。音の遠近感(奥行)を出す思惑があるのだろうが、小声でセリフをしゃべられても何を言っているのか不明。リアリズムは結構だが、観る(聴く)人を意識して作ることは大事だ。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2015-09-09 11:28:41)
220.  長い灰色の線
長い灰色の映画だったなあ。・・・時間が。とにかくJ・フォードのアイリッシュ愛と愛国者ぶりがよくわかった、てだけの映画。軍人の一代記に特に感じるものはない。T・パワーが終戦直後、進駐軍の一員として来日したとか。その点では適役だったな。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2015-09-09 11:12:37)
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