ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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プロフィール
口コミ数 626
性別 男性
自己紹介  「監督の数ではなく、観客の数だけ映画が有る」という考えでアレコレ書いています。
 洋画に関しては、なるべく字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くというスタンスです。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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201.  小悪魔はなぜモテる?! ネタバレ 
 色んな映画や小説のオマージュが散りばめられており、それらの答え合わせというか「元ネタ探し」をするだけでも楽しい映画ですね。   (あぁ、ここはあの作品が元ネタなんだな)とニンマリ出来ますし、そういう意味では「映画好き」よりも「映画マニア」ってタイプの人が喜びそうな内容に思えました。  それでいて「元ネタを知らないと楽しめない」っていう訳でもなく、きちんと万人向けの娯楽映画として仕上げている辺りも、実にお見事。   個人的には「緋文字」や「ジョン・ヒューズの映画」だけでなく「グリース」(1978年)の影響も色濃いというか「してもいない性体験を自慢する主人公」「強がって悪ぶってみせる自分と、本当の自分との葛藤で悩む主人公」って意味で、かなり参考にしているんじゃないかと思えたので、劇中で「グリース」の曲を流すだけでなく、もっとハッキリ言及してくれると、より嬉しかったかも。   黒人の義弟に、色んな経験談を語ってくれる両親など、主人公家族が「良いキャラ」揃いな事。  主演のエマ・ストーンが非常に可愛らしい事。  噂が広がる様をテンポ良く描いてみせる演出や、音楽の使い方が良かった事。  その他にも、数々な長所が備わっている映画なのですが……   ちょっと終盤のまとめ方が雑というか、色々と曖昧なまま終わった感じなのが残念でしたね。  なんていうか「主人公が誤解を受けて迫害されていく」までの流れは上手いし「この後、彼女はどうなってしまうの? どうやって救われるの?」と観客を釘付けにするまでは良かったんだけど、その解決法に説得力が無かった気がします。  ビデオ越しに主人公が真相を一方的に語るだけじゃあ、殆どの人には信じてもらえないと思うし「たとえ信じてもらえなくても、私には最高の彼氏が出来たから平気」って結論を出すなら、わざわざ真相を暴露するような真似しなくても良かったじゃんと思えるしで、どうも中途半端なんですよね。  同情の余地はあるにせよ、嘘を吐く見返りとして男達から代金(ギフト券)を受け取っている訳だから、それを「困ってる人を見捨てられないので、嘘を吐いてあげた」って感じに、まるで善行みたいに描かれるのも、ちょっと違和感。  「じゃあ代金を受け取ったりするなよ」とツッコむしか無かったです。  あと、親友のリーやマリアンヌとは和解出来たのか、グリフィス先生夫妻は今後どうなってしまうのかってのも気になるし……どうもカタルシスに欠けていた気がします。   主演のエマ・ストーンは好きな女優さんなので、最後の最後で疑問符が付いちゃう終わり方になったのが、返す返すも残念。  祖母からの贈り物であるメロディーブック「ポケットに太陽を」をすっかり気に入って、シャワーを浴びながら唄ったり、着メロに設定したりしている様もキュートだったし、彼女が画面の中でアレコレしているのを眺めるだけでも楽しかったので、それなりの満足感は得られたんですが……   観ている間だけでなく、観終わった後も「映画の続き」が気になってしまうという、そんな物足りなさも残る一品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-28 00:40:39)(良:2票)
202.  空飛ぶペンギン ネタバレ 
 家族の絆が再生する様を描いた映画なんだけど、そのキッカケとなるのが「ペンギン」っていうのが珍しいですね。   主人公は離婚した身であり、今は別居中な子供達の気を引く為にペットのペンギンを飼う流れとなるのですが、そんな「子供達と上手くやる為の道具」に過ぎなかったはずのペンギンに対し、愛着を抱くようになる流れも、ちゃんと描かれている。  高級な家具に囲まれていた部屋を、ペンギン達の為に雪まみれにする流れは微笑ましいものがあったし、公園でペンギンや息子達と一緒にサッカーして盛り上がる場面なんかも良かったです。  邦題の通り「空飛ぶペンギン」という、ビジュアル的に派手な見せ場も用意されているし「餌の魚ではなく、主人公を選ぶペンギン達」という場面によって、息子達だけでなく、ペンギン達も主人公の家族になったんだと示して終わる辺りも、上手かったと思います。  そういった「ファミリー映画」「動物映画」としての魅力を感じさせる場面がしっかり用意されてあった点は、文句無しで素晴らしかったです。   ただ、この映画は色々と気になる点も多かったりして……  一概に傑作とは言えない出来であったのが、非常に残念ですね。  基本的には好きな作風の品なので、それらの点も「愛嬌の内」と捉えたいところなんですが、ちょっと気になる点が多過ぎて、許容量をオーバーしてしまった気がします。   まず、根本的な話になってしまうんですが、ペンギン達を可愛いとは思えなかったりしたんですよね。  アップになると顔も怖いし、鳴き声だって、耳に心地良い響きとは言えない。  おまけに糞をするシーンをギャグとして何度も描いたりするもんだから、これには正直ゲンナリです。  ペンギンが主軸となる映画において、その可愛さを殆ど感じられなかったっていうのは、致命的なマイナスポイントでした。   主人公の部屋から聞こえる鳴き声や足音に迷惑している隣人に、元嫁の現恋人である男性など、主人公にとって都合の悪い存在の影がやたら薄いし、悪人っぽく描かれている点なども、何だか偏っている気がして、観ていて居心地が悪くなりましたね。  白頭鷲はアメリカの象徴であり、主人公の父親のニックネームも白頭鷲であるとか「アメリカは勝負に勝った者を逮捕するような国じゃない」って台詞だとか、やたらアメリカって国を意識した作りなのも、どうもノリ切れない。  こういうファミリー映画兼動物映画にまで、そういう愛国心みたいものを持ち込んで欲しくないなって、つい思っちゃいました。   で、最後に、これは短所ではなく長所に分類される事だと思いますが……  実は本作において一番キュートに感じられたのが、子供達でもペンギン達でもなく、脇役である「パ行が好きな秘書」のピッピだったりもしたんですよね。  単純に女優さんのルックスも愛らしいし、パ行の言葉ばかり好んで用いるというギャグキャラなのに、秘書としては意外と有能っていうアンバランスさも、非常に魅力的だったと思います。  彼女にスポットを当てた続編なり外伝なりが存在するのであれば、是非観てみたいものです。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-03-22 21:54:44)(良:1票)
203.  ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 ネタバレ 
 ゾンビを主人公にした映画は何本もありますが、自分にとっての「ゾンビ主人公映画」初体験がコレだった気がします。   正確には「半分ゾンビ」という設定であり、主人公は「人間を食べたい」という欲望は全く抱いていない為「食人鬼の苦悩」的な物は描かれていなかったりするので、その点については拍子抜けでしたね。  他にも「途中で死んだ仲間のクリフはゾンビ化しないの?」「ラストで主人公はヒロインと結ばれたけど、子作りとかは可能なの?」と気になる点が多く、本作における「ゾンビの生態」があまり説明されずに終わってしまうのは、かなり残念。  せっかく劇中にて「ゾンビを研究する集団」まで登場させているのだから、彼らの口を通して、もっと詳しく説明して欲しかったです。   監督であるピアース兄弟の父親は、あの名作「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)にスタッフとして参加していたとの事であり、その縁もあってか、劇中のドライブインシアターにて「The Evil Dead」を流したりと、過去のゾンビ映画に対するオマージュ描写が散見される辺りは、同じゾンビ映画好きとして嬉しかったですね。  「主人公はゾンビである」という設定が、劇中でキチンと活かされており「ゾンビを退治しようとする人間達から逃げる主人公」という、通常とは真逆の面白さが味わえる辺りも良かったです。   普通のゾンビ映画であれば、如何にも主役になりそうな黒人青年がゾンビハンターと化して主人公達を追ってくるって点も、面白くて好きですね。  この辺り、主人公のマイクが「冴えない眼鏡のモブ顔」って感じなのに対し、黒人青年は「精悍な二枚目」っていうビジュアル面の対比もあって「普通なら主人公のはずのキャラクターが敵役」「普通なら無数にいるゾンビの中の一人に過ぎないはずのキャラクターが主役」という設定の妙味を、より深く楽しめるようになっていたと思います。   同じ「半分ゾンビ」仲間である相棒のブレンドが、頭の軽いチャラ男と思わせておいて、要所要所で名台詞を吐いてくれるという意外性も、実に心地良い。  ゾンビになった事を悲観する主人公に対し「そりゃあ個性っていうべきだ」と元気付けたり「彼女の気持ちは分からなくたって良い。でも、お前の気持ちは確かなんだろう?」と告白を後押ししてくれたりする様が、凄く良かったんですよね。  彼の他にも、半分ゾンビではない完全にゾンビなチーズに、元軍人のクリフなど、道中で一緒になる仲間達が三人とも魅力的だったりするもんだから、ゾンビ映画としてだけでなく、青春ロードムービーとしても、しっかり楽しむ事が出来ました。   途中までは苦みを含んだ展開が多く(これは主人公とヒロインが結ばれずに終わる可能性もあるかな……)と思わせておいて、意外なハッピーエンドで終わってくれるって辺りも、嬉しかったですね。  上述の通り、細かい点について考え出すと(半分ゾンビの主人公と、人間のヒロインとで、本当に上手くいくんだろうか?)って疑念も湧いてきたりするんですが、そんな野暮な観客に対し「愛さえあれば大丈夫だよ」と言わんばかりに、それまで敵だった人間達にまで二人を祝福させて、有無を言わさず終幕させている。  その強引さと、能天気なほどの人間賛歌&ゾンビ賛歌っぷりに、初見では戸惑う気持ちもあったんですが……  (この映画は、そこが良いんだ)と、今ならそう思えちゃいますね。   明るく、和気藹々としたNG集に至るまで、ゾンビ映画らしからぬ陽性な魅力を味わえた、とても貴重な一本でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-03-21 17:22:21)(良:1票)
204.  アイアン・スカイ ネタバレ 
 これは面白いっていうよりは、観ていて楽しい映画ですね。   月の文明を発見する件や、宇宙船同士の戦いを描いた場面なんかは純粋にワクワクさせられるし、各所にシニカルな笑いも散りばめてある。  円盤型の宇宙船に、ハーケンクロイツを模った月面建造物など、魅力的なビジュアルが次々に飛び出す辺りも良かったです。  一歩間違えば「正義のアメリカ」VS「悪のナチス」な映画になっていてもおかしくなかったのに、ちゃんとアメリカ側も悪役っぽいバランスで描いているので、違和感無く観賞出来たのも、非常にありがたい。  軍服姿の金髪美人に、眼鏡の女性大統領(サラ・ペイリンがモデル)など、オタク心をくすぐる女性キャラクター達まで登場しているので、所謂「萌え映画」として楽しむ事も可能なんじゃないかな、って気がしました。   チャップリンの「独裁者」を効果的に活用し「月世界の住人は偏った教育を受けている」と分かり易く説明している点も上手いですね。  120分以上もある反戦映画が大幅にカットされ、月世界ではヒトラーを称える十分間の短編映画として扱われているとの事なのですが、その十分間バージョンの「独裁者」も是非観たいなぁ……なんて思っちゃいました。  他にも、手を震わせながら眼鏡を外す「ヒトラー 最期の12日間」のパロティ描写など、クスっとさせられる場面が多かったです。   ただ、どうせ「独裁者」と「最期の12日間」を劇中で扱うなら、いっそヒトラー本人を復活させても良かったんじゃないかとも思えたんですが……  まぁ、そちらのネタに関しては続編の「アイアン・スカイ:ザ・カミング・レース」に持ち越し、という事なんでしょうね。  でも、映画単体として考えると「この流れならヒトラーも出るんじゃないかと思ったのに、結局出ない」って辺りの肩透かし感は、欠点になってしまうかも。   その他にも……  1:地球のスマホに驚いたりして、文明レベルは月の方が劣る描写があったのに、軍事力では互角に近いバランスだと終盤明らかになるのは違和感がある(せめて、もっと早めに説明しておいて欲しい) 2:国家を流すとナチス兵達は敬礼してしまう習性を利用して形成逆転する流れを、二度もやるのは流石に白ける。 3:ヴィヴィアンとアドラーの因縁を描いておきながら、両者を対決させずに終わるのは残念。   といった具合に、色々気になる点や、不満点も多かったりするんですよね、この映画。  黒人の主人公が白人に改造されてしまう件はショッキングだったけど、終わってみれば(別に白人に改造されなくても、話としては成立したのでは?)と思えちゃうしで、どうにも消化不良。  この辺りは正直、設定倒れというか、面白い設定を思い付いたら全体のバランスなど考えずに詰め込んじゃうという、オタク映画の悪い部分が出ちゃってる気がします。   あとは「女性大統領が、ナチス式の演説を取り入れて支持率をアップさせる」って件が一番シニカルで面白かったですし、月育ちのアドラー准将と婚約者のリヒター伍長が大統領の側近となり、月と地球のカルチャーショックに戸惑いつつ馴染んでいくという「三ヵ月」の件も、出来れば省略せずに描いて欲しかったですね。  ナチス兵達が地球のヌード雑誌に興奮する件なんかも良かったですし、もっと「月と地球のギャップの面白さ」を押し出した脚本にしてくれていたら、より楽しめたかも。   ラストも「博士の異常な愛情」のパロディっていうのは分かるんですが、世界中で核戦争が起こっている様を描いて終わりっていうのは、ちょっと微妙でしたね。  「月と地球との戦争によって、月の住民は大変な目に遭った」→「それでも主人公とヒロインは力を合わせ、月を復興させる」という、悲劇からのハッピーエンドの流れが心地良かっただけに、その後に更に「悲劇」を上乗せするブラックユーモアなどは付け足さず、あのまま気持ち良く終わって欲しかったです。   それこそ、続編に繋がるような「ヒトラーは生きていた!」という衝撃を与える終わり方でも良かったかも知れませんね。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-13 17:26:18)(良:3票)
205.  映画ドラえもん のび太の月面探査記 ネタバレ 
 自分には「アニメのドラえもんは原作漫画に敵わない」「原作大長編の存在する映画の方が、原作無しのオリジナル映画より面白い」という偏見があったのですが、前者を「恐竜2006」が、後者を本作が徹底的に打ち砕いてくれた気がしますね。   オリジナル映画としては間違いなく一、二を争う出来栄えですし、ドラ映画全体で考えても、これより上と言えるのは「恐竜2006」「新・鉄人兵団」「新・大魔境」「新・日本誕生」の四つくらいになるんじゃないでしょうか。  しかも「南極」「宝島」という傑作が二つ続いた後に、またまた凄いものを拝ませてもらった訳なのだから「映画ドラえもんは、オリジナルでも面白いものを作れるようになった」と潔く認め、脱帽する他無かったです。  本当にもう、作り手の皆さんに「参りました」「ありがとう」という言葉を送りたい気分。    小説版を読んだ際に一番の懸念となっていた「定説バッジの効果を、小さい子供でも分かるように描くのは大変じゃないか」って部分を、視覚的に分かり易く、面白く描いてクリアしている辺りなんか、特に見事でしたね。  「月世界旅行」に「キングコング」などの古典映画や「恐竜2006」「緑の巨人伝」のオマージュ描写が散見される辺りも、ニヤリとさせられるものがあって、良かったです。  他にも、教室に勢揃いしたクラスメイトの顔触れに、まさかのペロ登場など、ドラえもん好きなら嬉しくなっちゃう描写が多くて、本当に観ていて楽しい。  月世界にて、異説バッジが外れた途端に無音になる演出がゾクッとしたとか、出木杉くんとルカが話す場面が凄く特別感があって良いとか、細かい部分の「良かった探し」を始めたら、止まらなくなっちゃうくらいです。   それでも、これだけは書いておかずにはいられないという意味では、やはり気球での旅立ちの場面が挙げられます。  もう二度と帰ってこられないかも知れないという恐怖を乗り越え、友情が芽生えたエスパル達を救う為、約束の場所に皆が集まる流れだけでも感動しちゃうし、ここのジャイアンとスネ夫の描き方が、本当に素晴らしいんですよね。  スネ夫は来ないのかと諦めかけている他の面子に対し「頼む。もうちょっとだけ待ってくれ」と訴え、最後までスネ夫は来ると信じているジャイアン。  そんな信頼に応えるかのように、時間ギリギリでやって来て「前髪が決まらなくてさ」と照れ隠しを口にするスネ夫。  (あぁ、良いなぁ……こいつら、良い仲間だなぁ)って思えたし、それから(良い映画だな)って、しみじみ感じ入る事が出来ました。  月に向かって気球で旅立つという浪漫溢れる景色に、微かな寂寥感を伴ったBGMも最高で、本当に忘れ難い、特別な場面だったと思います。   じゃあ、そこが本作のクライマックスなのかというと、然に非ず。  ディアボロとの最終決戦や、ルカ達を「普通の人間」にして別れを交わす場面も、同じくらい素晴らしかったというんだから、本当に参っちゃいますね。  モゾは宇宙一硬い甲羅の持ち主、ノビットは「あべこべ」な道具を作る天才、という伏線を、ギャグシーンで笑わせつつ張っておいたのか、という驚き。  ムービットや怪獣達という「月からの援軍」で形成逆転する痛快さ。  空気砲ラストシューティングの迫力。  あえて涙は見せず「もう一度会える日が、きっと来る」と笑顔でルカと別れるのび太の、強さと優しさ。  そのどれもが心地良くて、観ていて幸せな気分に浸る事が出来ました。   一応難点というか、気になった点を挙げるなら「いつか、月へ行く事が当たり前になる、その日まで」という台詞でルカ達と別れるのは、なんていうか、勿体無い気持ちに襲われましたね。  これって、勿論良い台詞なんだけど、原作における「のび太の息子ノビスケは、新婚旅行で月に行く」って設定を知っていると「良い台詞」から「凄く良い台詞」に昇華されるんです。  つまり「のび太とルカは、再会するんだ」「何時かまた会えるという言葉は、嘘じゃなかったんだ」と分かって感動する形になっている訳で、凄く上手いんだけど、凄く勿体無い。  ここは、もうちょっと分かり易く描いて、原作を読んでいる人が受ける感動を、読んでいない人にも伝わるようにして欲しかったなぁ……って思わされました。   ちなみに、予告の映像からすると、来年は今井監督。  内容は「新・竜の騎士」か、あるいは恐竜を題材としたオリジナル映画となりそうで、これまたワクワクさせられましたね。  また一年、あれこれと想像力を働かせながら、楽しく過ごす事が出来そうです。
[映画館(邦画)] 9点(2019-03-01 13:31:14)(良:2票)
206.  ロード・キラー マッド・チェイス<OV> ネタバレ 
 かなり間を置いて作成された「ロード・キラー」(2001年)の続編。   ただ、自分が前作で好きだったのは主に主人公兄弟の方であり、ラスティ・ネイルという殺人鬼キャラには魅力を感じなかったもので……  「あのラスティ・ネイルが帰って来た!」と言わんばかりの内容にされても、今一つノリ切れなかったのが残念でしたね。  「雨が好き」という台詞に「顎を外す」という所業など、前作との繋がりを感じさせるシーンも出てくるんだけど、あんまり物語上の必然性みたいなのは無くて「とりあえずファンサービスでやっておきました」感がありました。    「ソウ」(2004年)や「ホステル」(2005年)の後追いをした形なのか、やたら拷問描写をしつこく描いてるのも困り物。  この辺りは「前作よりもショック描写がパワーアップした」と褒める事も出来そうなんですが「ロード・キラーは血生臭い描写が控えめであり、ライト層の観客でも楽しめるように作ってある点が良い」と感じていた自分にとっては、どうも受け入れ難いのですよね。  観る側の好みの問題でしかないのですが、本作に関してはパワーアップどころか、前作にあった長所を投げ捨てたように感じられました。   また、前作のフラー同様「余計な事をやらかして殺人鬼に狙われるキッカケを作る」枠として、ニックというキャラが登場しているんだけど、どうにも憎めなかった前作のフラーと違って、本当に(なんだコイツは)と思ってしまうくらい憎たらしいキャラであった点なども、観ていて辛かったです。  人が誘拐されている緊急事態なのに「これ買うのに二日も並んで待ったんだ」と携帯電話が壊れるのを嫌がったりする姿とか、本当にゲンナリしちゃったんですよね。  ラスティ・ネイルも「娼婦や窃盗犯に天罰を下す、カリスマ性のある殺人鬼」みたいに描かれているのが気になるし、どちらか片方ならともかく、主人公側にも悪役側にも観ていて嫌悪感を抱くようなキャラがいるってのは、流石にキツかったです。   それでも脚本がしっかりしているとか、演出が上手いとかなら観ていて楽しめたのでしょうが、そちらに関しても褒められず仕舞い。  例えば「死体の指を切り取る為に、遺体安置室に潜入する」パートでも、主人公が見つかりそうになってハラハラさせるだけさせておいて「職員と鉢合わせするかと思ったけど、たまたま上手くタイミングがズレて見つからずにすみました」なんて形で済ませちゃうもんだから、どうにも物足りないんですよね。  こういう場合は「主人公が機転を利かせて、上手く隠れる」とか「仲間が物音を立てて気を引いている隙に、その場を離脱する」とか、そういう要素があっても良いんじゃないかと思えました。   トラックが爆発炎上しながら崖を落下するクライマックスなんかは中々迫力があって良かったし「正当化が許される悪事は無い」という台詞には感心するものがあったりとか、一応長所も見つかるんだけど、短所の方が多かった気がします。  最後にはお約束の「実は殺人鬼は死んでないオチ」になるというのも、ひたすら後味が悪いだけで、爽快感無し。   ちなみに、本作には「ロードキラー デッド・スピード」(2014年)なる続編もあるのですが「今度はワイルド・スピードをオマージュして、カーチェイス要素増し増しにしてみたよ。残虐描写も更にパワーアップさせたよ」って感じの内容であり、これまた好みとは言い難い品だったのだから、困っちゃいますね。  もしかしたら「ロード・キラー」(2001年)が物足りなかった人の方が、スプラッター映画としての続編二つを、素直に楽しめるのかも。   いずれにしても、自分の好みとは言い難い、残念な一品でした。 
[DVD(吹替)] 3点(2019-02-27 21:51:34)
207.  ロード・キラー ネタバレ 
 ポール・ウォーカー主演作品なのですが、彼がスターのオーラを全く漂わせておらず「等身大の若者」を演じ切っている点が素晴らしいですね。  同年には「ワイルド・スピード」でタフガイの刑事を演じているはずなのに「寮住まいの大学生」「精神的には、まだまだ子供」っていう主人公像にも、自然と馴染んでみせている。  彼の他作品を考えれば「こんなストーカー紛いの殺人鬼なんて、ポールに掛かればイチコロじゃん」「酒場でポールに因縁付けるとか……たったの三人じゃあ、どうせアッサリ撃退されて終わりでしょ?」となってもおかしくないのに、殺人鬼に怯える姿や、何とか喧嘩せずに場を切り抜けようとする臆病な若者としての姿に、しっかり説得力があったんだから、これは凄い事じゃないかと。  彼の人気の要因は「何処にでもいそうな、気の良い兄ちゃん」という独特の雰囲気にあったのでしょうが、演技力においても確かなものを持っていたんだなって、再確認させられた思いです。   相方となるスティーヴ・ザーンも良い味を出してあり「傍迷惑な兄貴なんだけど、憎めない」って、主人公だけでなく観客にも思わせているんだから、お見事でしたね。  本作は明らかに「激突!」(1971年)が元ネタの作品なのですが、オリジナルの魅力を感じられたのは、彼らが演じる主人公兄弟の存在あってこそ、って気がします。  中年男の孤独な戦いを描いた「激突!」に対し、本作は若い兄弟の掛け合いが主となっているし、ヒロインであるヴェナとの三角関係を交えた「青春映画」としての味わいもありましたからね。  自分としては、この「車での三人旅」になる中盤の件が凄く好きなもんで(殺人鬼とかもう出て来ないで、このまま青春ラブコメ物として進めて欲しいな)と思えたくらいです。   久し振りに再会した兄が「弟のルイスと、ヴェナの関係をあれこれ詮索する」という形で、主人公ルイスとヒロインのヴェナの関係性を、観客にも分かり易く伝えている点。  そして、精神的な恐怖に訴えかける演出であり、血生臭い描写が殆ど無い点など、ライト層の観客に配慮した作りとなっているのも、嬉しい限りでしたね。  本作を初めて観賞したのは、スプラッター映画などに全く耐性の無かった十代の頃だったんですが、それでもしっかり楽しめたのは、作り手側がちゃんと「そういう層の観客でも楽しめるように」と、色々計算した上で作ってくれたお蔭なんだと思います。   今になって改めて観返すと、元カレが「危ない感じ」という冒頭の台詞が伏線じゃなかった事が肩透かしとか、犯人が逃げ延びて終わるのでカタルシスに欠けるとか、欠点も目についちゃうんだけど……  それよりは、色褪せぬ魅力の方を強く感じ取る事が出来ましたね。   感動するとか、強烈な衝撃を受けるとか、そういう類の作品じゃありませんが「軽い気持ちで楽しめる一本」として、オススメです。
[DVD(吹替)] 7点(2019-02-22 20:21:58)(良:1票)
208.  ナーズの復讐 集結!恐怖のオチコボレ軍団 ネタバレ 
 劇中にて「ナーズにも人権がある」という演説が行われるのですが、それが大袈裟でも何でもないくらい、彼らが迫害されている事に吃驚。   観ていて可哀想になりますが、基本的にはコメディタッチの作品なので、陰鬱になり過ぎる事も無く、程好いバランスに仕上げてありましたね。  「いじめ問題」を中心とした、堅苦しい作品となっていてもおかしくなかったのに、娯楽作品であるという線引きを忘れず「ナーズの青春」を感じさせるような、良質な学園ドラマとして完成させている辺りは、本当に見事だと思います。   最初の体育館暮らしの時点で「飛び級してきた男の子」「ゲイの黒人」「不良」「日本人」などの、後にメインとなる面子が、しっかり目立っていた辺りも良いですね。  主人公二人が眼鏡を掛けていて、見分けるのが難しいコンビであったのに比べると、この四人組は視覚的にも分かり易いし、脇役として絶妙なバランスだったんじゃないかと。   如何にも学園のマドンナといった感じのブロンド美女に、地味な眼鏡娘という二種類のヒロインを用意している辺りも、心憎い。  個人的な好みの話をすると、前者のブロンド美女には魅力を感じなかったりしたのですが……  「互いの眼鏡の度の強さが同じという事に、運命を感じる場面」など、後者の魅力はしっかり伝わってきたし、主人公の一人であるルイスと彼女との恋を、素直に応援出来たんですよね。  こういう具合に、観客の好みに合わせて選べるような形で、タイプの違うヒロイン二人を用意してくれたっていうのは、嬉しい限りです。   学生達だけじゃなく、学長とコーチにも「文化系」と「体育会系」という個性を与えている辺りなんかも、上手かったですね。  それまでコーチの言いなり状態だった学長が、主人公達の演説を受けて奮起し、コーチより精神的に上に立って、見返してみせるという形。  これによって「虐待や阻害やイジメを経験した人は、皆さんの中にもいるはず」という主人公の訴えにも説得力が出るし、最後の「逆転」の構図が分かり易くなっているしで、本当に感心させられました。   そして何と言っても……  皆がボロ家を大掃除するという「住処作り」の場面が、実に楽し気で良い!  無事に完成させた後の、共同生活している描写(主人公が二階から降りてくると、男の子達が見よう見まねでエクササイズしていたり、ポーカーしたり、本を読んだりしている)も、凄く好みでしたね。  こういうの、青春って感じがして良いなぁ~って、憧れちゃうものがありました。   間抜けな感じの効果音が、今となっては流石に古臭いとか、復讐の一環とはいえ女子寮を盗撮するのには引いちゃったとか、色々と気になる点もあるにはありますが、まぁ御愛嬌。  冴えない主人公の学園物という意味では「ロイドの人気者」(1925年)などから通じる王道路線のストーリーだし、この映画自体が後世に与えた影響もあってか、今となっては「どこかで見たような展開」が多い点に関しても、短所ではなく長所なんじゃないかって思えましたね。   「こいつらはメインキャラだな、と思ったら本当にメインキャラだったという展開」「最後は皆に認められるという、お約束のハッピーエンド」など、予想通りではあるんだけど、それが心地良い。  「先が読めて退屈な映画」ではなく「こうなって欲しいな、という観客の願いを叶えてくれる映画」って感じがして、観ていて楽しい一品でした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2019-02-19 21:56:40)
209.  マイノリティ・リポート ネタバレ 
 さながらオーケストラの指揮者のように、空中に浮かんだ情報の数々を整理する主人公の姿が印象的。   他にも「エレベーター式で上下にビルを移動する車」「次々に新しいニュース映像が表示される為、紙一枚分の薄さで事足りる新聞」など、近未来的なギミックが次々に飛び出すもんだから、それらを眺めているだけでも退屈しないし、面白かったですね。  裏路地のトンネルや、シリアルの箱にまで忙しなく映像が表示されるという「情報過多社会」を描いており、ディストピア的な雰囲気を醸し出す一方で「風船売り」の存在だけは今と変わらぬ等身大のまま描いてるってバランスなのも、実に興味深い。  この辺りは、たとえ世相がどれほど変質しようとも「夢を売る商売」だけは変わらずにいて欲しいという、作り手側の願いが込められているんじゃないかな、って思えました。   独特の粗い画面処理も魅力的だし、それらの「視覚的な面白さ」は満点に近いものがあったのですが……  ストーリーの方はといえば(何で?)と思える部分が多かったりして、残念でしたね。   まず、主人公の息子ショーンを誘拐した犯人が最後まで分からず仕舞いって事には、ひたすら唖然呆然。  こう言ってはなんですが、全体的にかなり無理のある展開を重ねている訳なんだし、ここも適当に「知り合いの誰かが犯人だった」って事にして、決着を付けても良かったんじゃないかって思えました。  あるいは、単なる事故死だったのをラマー局長が誘拐殺人に偽装して、主人公のジョンを「殺人の被害者代表」「犯罪予防局の象徴」として担ぎ上げたとか、何でも良いので、観客に「答え」を提示して欲しかったですね。   ジョンの眼球が便利アイテム過ぎて「とにかくID認証システムさえ突破すれば、セキュリティを無効化して自由に侵入出来る」って形になっているのも、流石に不自然。  「システムに頼り切って警戒を怠っている人間」の迂闊さを描いているのかも知れませんが、作中で二度も同じ手を使っているとなると(いや、ジョンは指名手配されてるし、その後に捕まってるんだから出入り禁止にしておけよ)とツッコんじゃいます。  ラストにて、主人公と妻が復縁するハッピーエンドになるのは歓迎なんだけど、さながら失った息子の代価のように「妻が妊娠した」というオチを付け足しているのも、ちょっと即物的過ぎて、興醒めしちゃいました。   勿論(ここは上手い脚本だな……)と感じる部分もあって「どれだけ息を止めていられるか」「片目でも見える奴がキング」などの台詞が伏線になっている辺りは、素直に感心させられましたね。  「殺人は予知されるもの」という先入観ゆえに、銃を突きつけられても平然としていた男が、警報を耳にした途端に怯えを示す展開なんかも、この設定ならではの妙味があって、面白い。   元部下に追われる展開になるんだけど、その際に「二分待ってから警報を鳴らすよ」「お願い、チーフ。抵抗しないで」などの台詞を挟み、主人公に信望があった事を示している辺りなんかも、妙に好きです。  それによって主人公が「良い奴」なんだって事が伝わってくるし(部下達が同情的だからこそ、追撃を何度も振り切る事が出来たんだ)って思えて説得力があるしで、二重の意味で効果的だったんじゃないかと。    それと、予知通りにリオ・クロウを殺すのかと思われた中で、ギリギリで踏み止まり「君には黙秘権がある」と。怒りと悲しみを押し殺して逮捕しようとする場面が凄く良かっただけに、その後「実はリオは犯人ではない」という陰謀色の強い展開になるのは、失敗だったんじゃないかって思えちゃいましたね。  これなら「ショーンを誘拐して殺した犯人は、リオ・クロウである」「主人公は彼を殺さずに逮捕し、プリコグの殺人予知システムは絶対ではないと証明してみせた」って形で終わる方が、ずっと綺麗に纏まっていた気がします。   ちなみに、本作には直接の続編となるテレビドラマ版「マイノリティ・リポート」(2015年)なる代物が存在しているのですが、そちらでもショーン誘拐事件の真相は明かされず仕舞いで、しかもドラマ自体も物凄く中途半端に終わってしまう為、あまりオススメ出来ないのが残念ですね。   ビジュアル面、ガジェット面の面白さは「傑作」と呼ぶに相応しいのでしょうが……  映画として総合的に判断すると「中々良い映画」くらいの評価に落ち付きそうな、そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-02-15 12:35:11)(良:2票)
210.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012) ネタバレ 
 凄腕のCIA捜査官である男二人が、一人の女性を奪い合うという御話。   こういった粗筋の場合、最終的には男側が二人とも振られてしまうか、明確な結論を出さぬまま女性にとっての両手の花的なエンドを迎えるパターンが多いように思えますが、本作は明確に片方を選んで終わる為、驚きましたね。  大体映画の三分の二くらいの段階で(これはFDRの方と結ばれるな)と観客に分からせる形になっており、この辺りの時間配分も良かったと思います。   それと、タックには元妻と息子がいるのに対し、FDRは完全に独り身って時点で後者の方が有利なんですが、本作に関しては「最初にローレンスとデートしたのはタックの方である」というアドバンテージを与えて、二人のスタートラインが互角になるよう、上手く調整してあるんですよね。  これによって二人の内、どちらがヒロインと結ばれるのか読めなくなっているし、結果的にFDRとローレンスが結ばれた後も「タックは元妻と復縁する」って形で、主役の三人誰もが幸せになる結末へと着地する事にも成功している。  この手の三角関係で明確に答えを出すと、どうしても一人あぶれ者が生まれて、可哀想になってしまうものですが……  本作に関しては、そんな感情を全く抱かずに観終わる事が出来たし、ここは上手かったんじゃないかと。   男側の二人がCIAである事を活かした会話のギャグや、アクション場面も適度に盛り込まれており、特に後者に関しては「流石マックG監督」と思わせるような仕上がりとなっているんだから、嬉しい限りでしたね。  タックの息子が、父親から教わった技で柔道の組み手に勝つ場面も爽快感があったし、個人的にはココが一番好きな場面です。   そんな具合に、良いところも色々ある映画なんだけど……  残念ながら、欠点もそれと同じくらい見つかっちゃうというんだから、困り物。   まず、ヒロインのローレンスに、どうしても魅力が感じられなかったんですよね。  それは演じているリース・ウィザースプーンが老けていて、美女とも言い難いとか、そんな外面的な理由じゃなくて、もっと深い内面的な理由で(嫌な女だなぁ……)と思ってしまったんだから、キツかったです。   決定的だったのが、FDRと初エッチを済ませた後の展開。  FDRの方は、それまでプレイボーイ気質であったにも拘らず「彼女が出来たから」と他の女の誘いを断っていたのに、ローレンスの方は悩みつつもタックとデートしたり、キスしたりしていたというんだから呆れちゃいます。  自分だって二股を掛けていたくせに、彼らが友達同士と知った途端に「騙された被害者」全開に振る舞うっていうのも酷い。  そこは三者共「ごめんなさい」するところだろうに、何で彼女だけが怒って男達が謝らなきゃいけないんだと、理不尽なものを感じちゃいました。   他にも、意味ありげな「バケツを頭に被って回る少年」は何か重要な役割を果たすのかなと思ったら、本当に単なる小ネタに過ぎなかったのが残念とか「バルカン超特急」(1938年)を「二流の作品」と断じる場面があったので、後でフォローが入るかなと思ったら貶したままで終わっちゃったとか、細かい不満点も色々多いんですよね。  自分は、この監督さんと主演の三人が好きなので、それらも含めて(まっ、良いか)とばかりに、一定の満足感は得られましたが……  そういった思い入れが無かったら、かなり厳しかったかも。   好きな顔触れが揃っているだけに、勿体無く思える一品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-02-04 10:12:15)(良:2票)
211.  俺たちダンクシューター ネタバレ 
 ウィル・フェレル主演作の中では本作が一番好き……と言いたいのですが、ウディ・ハレルソン演じるエドの方が実質的な主人公に思える内容な為、ちょっと困っちゃいますね。   とはいえ「途中で主役交代しちゃう出鱈目な映画」ではなく「ギャグパートの主人公はウィル演じるジャッキー・ムーンであり、シリアスパートの主人公はエドというダブル主人公物」だと解釈すれば、良く出来た品だと思います。  バスケシーンも意外と本格的だし「観客を増やす為に色んなショーを行う主人公達」という場面が、試合の合間の良いアクセントになってる。  チャンピオンリングを掴んだベテラン選手だけど、優勝の際にはずっとベンチウォーマーだったというエドの設定も良いですね。  彼が「試合に出てなくても、俺はプロとして戦った」と演説し、チームの意識改革を行うシーンはグッと来たし、完全なギャグ路線かと思って観ていた自分に、心地良い不意打ちを与えてくれました。   そんなエドと、チームで一番才能がある若者のクラレンスとの衝突と和解が描かれ、次第に二人が師弟関係のようになっていく展開も良い。  クライマックスではリーグの首位チームであるスパーズに勝利する訳だけど、当時は戦術として確立されていなかったであろうアリウープを駆使したお蔭で勝利出来たって形になっているのも、上手かったですね。  1970年代の世界を2000年代に描くという利点をフル活用している感じで、ちょっとズルいけど説得力がありました。   クラレンスがスパーズの誘いを振り切る形で、主人公チームのトロピックスを選ぶ場面を劇的に描いたのに、試合後には結局スパーズを選ぶのは拍子抜けとか「背の低い人々には、この世に生きてる理由がない」なんて曲を楽しそうに唄う場面は引いちゃったとか、欠点と呼べそうな場面もチラホラあるんだけど……  「おふざけギャグ映画かと思ったら、意外としっかりしたバスケ映画だった」というサプライズも含めて、満足度は高めでしたね。  劇中曲の「ラブ・ミー・セクシー」も、最初に聴いた時には何とも思わなかったはずなのに、エンドロールにて流れた際には(もしやコレって、名曲なのでは?)と思えたんだから、全くもって不思議。   それと、ラストの台詞「どこかな、クマちゃん?」は最初意味が分からなかったんだけど、今になって考えるに、あれは映画館だからこその「映画館の中に、劇中で逃げ出したクマがいるかも知れないよ」という、上映中の暗闇に包まれた観客に対しての、恍けたメッセージだったんでしょうね。  その辺も含めて(これは、出来れば映画館で観たかったなぁ……)と思えた、意外な掘り出し物の一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-01-30 11:02:20)(良:1票)
212.  コン・エアー ネタバレ 
 アクション俳優としてのニコラス・ケイジの代表作といえば、本作になるんじゃないでしょうか。   とにかく主人公のポーが強くて恰好良くて、初見だったとしても「この俳優さんは要チェックだな」と感じさせるような力がある。  ニコラス・ケイジの存在を知っている上で観たパターンでも、他の映画では中々見かけない長髪なので物珍しさがあるし(こんなに肉体派な俳優だったのか……)という驚きを味わえるしで、掘り出し物に思えるんじゃないかと。   ヒロインとなる奥さんと娘さんが両方美人で可愛らしいものだから「早く刑務所を出て、家族の許に帰りたい」と思っている主人公に感情移入しやすい点も良かったですね。  捕まった経緯に関しても「こんなの完全に正当防衛じゃん」と思えて、応援したくなる形になっている。  刑務所で黙々と身体を鍛えつつ娘と文通しているシーンも良かったし、囚人仲間のオーと仲良く話す場面も微笑ましくて、仮釈放に至るまでの流れが非常にスピーディーに纏められている点も、上手かったと思います。  この手のアクション映画は、やはり導入部が大事なんだなと、再確認させられましたね。   敵となる凶悪犯達も「濃い」面子が揃っており、特にジョン・マルコヴィッチ演じるサイラスの存在感は、圧巻の一言。  他の連中だってかなりの面構えの持ち主なのに、もう登場した時から(こいつがラスボスだな……)と直感させるだけのオーラを放っていましたからね。  凶暴なのに知的さを漂わせる悪党って、演じるのはとっても難しいと思うし、正に「怪優」たるマルコヴィッチの本領発揮といった感がありました。  ハイジャックした飛行機で何処を目指すのかと問われた際に「勿論ディズニーランドさ」と切り返す場面なんかを魅力的に演じられたのは、この人だからこそだって思えます。   そんなサイラスに主人公のポーが気に入られ、仲間の振りをしつつもポーは何とか人質を殺さないようにサイラスを誘導していく辺りも、さながら「潜入捜査官物」のような面白さがあって、良かったですね。  飛行機内に裏切り者がいると敵も気付いて、それを探っていく流れになるのは緊迫感があったし、そんなシリアスな魅力の一方で「飛行機から突き落とされた死体が地上の車に激突する場面」をユーモラスに描いたりして、必要以上に肩に力が入らないよう配慮しているバランスなんかも、ありがたい。  ベガスに不時着したら、スロットからコインが溢れ出すシーンを挟んでいるのも「お約束を分かってる」感があって、観ていて嬉しかったです。   で、そんな本作の不満点としては……やっぱり、スティーヴ・ブシェミ演じる「殺人鬼ガーランド」の肩透かし感が挙げられそうですね。  如何にも大物っぽく登場したのに、主人公側にも敵側にも与しないまま、飄々と一人だけ脱獄に成功しちゃうだなんて、流石に予想出来なかったです。  彼に関しては「予想を裏切られた快感」よりも「期待外れだったという失望感」の方が大きくて、今こうして文章を書きながらも(結局なんだったんだ、アイツは)と答えが出て来ないくらい。  「幼い少女の死体とドライブした」という台詞があり、その後に少女と二人きりになる場面を用意して、観客に(女の子が殺されちゃうんじゃないか?)とドキドキさせておきながら、特に何の理由も無く殺さずに別れて終わりってのも(何じゃそりゃ!)って戸惑うばかりだったんですよね。  ベタではありますが「こんなに優しくされたのは、生まれて初めてだ」的な台詞でも言わせておけば、少女を殺さなかった理由も納得だし、一人勝ちする結末に関しても「さりげなく主人公達を助けてあげた」的なシーンを挟んでおけば、それに対するご褒美のような形で逃げ延びる事が出来たって事で納得だしで(もっと、こうすれば良かったのに……)と思わされる部分が多かったです。   ちなみに、本作の小説版においては、そんなガーランドが捕まる場面まで描かれているのですが……それがまた非常にアッサリした逮捕劇なので「映画の続きが気になった人にはオススメ」とも言い難いのが辛いところですね。  キャラとしては独特の魅力があって嫌いになれないだけに、こんな事を書くのは心苦しいけれど、正直彼は登場させなかった方が、シンプルなアクション映画として完成度が高まっていたんじゃないかって思えました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-01-24 21:20:12)(良:2票)
213.  カオス(2005) ネタバレ 
 ジェイソン・ステイサムとウェズリー・スナイプスといえば、ヒーローも悪役も貫禄たっぷりに演じられるのが強み。   そんな二人の悪役っぷりを同時に堪能出来るという、非常に貴重な一本なのですが……  改めて観返してみると、二人が同じ画面に映っているシーンが殆ど無かったりしたもんだから、ちょっと寂しかったですね。  この後「エクスペンダブルズ3」にて本格的な共演が果たされた訳だけど、あちらでは二人ともヒーロー側だった訳だし、出来れば本作にて「悪役同士」ないしは「刑事と犯人の対決」という形での共演を、じっくり披露して欲しかったものです。   とはいえ、映画単品としては手堅く纏まっており、変に期待値を上げたりしないで観賞すれば、充分楽しめる出来栄えじゃないかと思えましたね。  粗野な中年刑事と、大学出のスマートな青年刑事によるバディムービーかと思いきや、片方が途中退場して真の黒幕だったと明かされる展開なんかは、この手の刑事物を沢山観ている人ほど騙され易く、新鮮に感じられるんじゃないでしょうか。  とにかくステイサム演じるコナーズが周りから悪口ばかり言われるもんだから、普通なら彼が強盗事件を解決し、周りを見返してやる結末になるはずなのに、本作に限っては全く逆で「彼を非難していた連中の見解が正しかった」と言わんばかりの結末を迎えるんだから、実に皮肉が効いています。  1:犯人が人質を殺した事を、コナーズが責める。 2:コナーズの出した紙幣をシェーンが財布に仕舞う。 3:押収品の紙幣には、特殊な香りが付けられている。   といった場面が印象的に描かれており、それらが伏線だったと明かされる流れも気持ち良い。  本作は「主人公が犯人だった」という叙述トリックを用いているのですが、バディムービーという体裁を取って、自然な形で主人公格を二人用意し、観客が感情移入させる対象をコナーズから青年刑事のシェーンへと自然に移行させた辺りも、上手かったですね。  バイクでトラックを追いかけるカーチェイス場面なんかも良かったし「観客を楽しませよう」という意思が伝わってくる、丁寧に作られた一品だったと思います。   不満点としては、コナーズが逮捕されずに逃げ延びて終わってしまうので、後味が悪い事。  事前に見せておいた爆破シーンと、その後の種明かしシーンとで、それぞれの時間経過に差があるのは(ズルいなぁ……)と感じちゃう事。  人質を誤射してしまった元刑事のローレンツが、今度は自らが人質を取るような悪党となってしまったのを自嘲し「お前ならどうする?」とシェーンに問い掛ける場面が劇的で良かっただけに、それに対する答えを示す場面が無いのは片手落ちに思える事とか、その辺りが該当するでしょうか。   バッドエンドである事も含めて、観賞後はモヤモヤも残ってしまうんだけど……  とりあえず観ていて退屈はしなかったし、途中経過は楽しめたので、自分としては一応満足です。
[DVD(吹替)] 6点(2019-01-18 20:34:09)(良:2票)
214.  ホーム・アローン4<TVM> ネタバレ 
 原点回帰を果たし、再びケビン少年が主人公となったシリーズ第四弾。   役者は変更されている為、ケビンとバズの背が縮んで幼くなっている事に違和感があったりもするんだけど、自分としては直ぐに慣れて、楽しむ事が出来ましたね。  他にも「TVMなので低予算が丸分かりな作り」とか「3とは対照的に罠が地味」とか、色々と欠点が目に付くんだけど、ちゃんと良い部分もあったと思います。   まず、自分が「ホーム・アローン」を好きな理由である二大要素「主人公の少年が親の監視から解放されて好き勝手やる」「偏屈な大人と仲良くなる」という場面を、しっかり用意してくれた辺りが嬉しい。  しかも「家出して別居中なパパの新しい家に転がり込んだ」「最初は敵役かと思われた人物と和解し、共闘する」って形で、過去作をそのままなぞるだけでなく、上手い具合に変化を付けてくれているんですよね。  この辺りは、上記二つの要素が希薄だった代わりに罠の仕掛けが凝っていた3とは、好対照な作り。  それでいて「音声認識システムで管理された家」「その家を自由に動き回る為に必要なハウスキー」など、3で登場した「ハイテク要素」という新機軸も柔軟に取り入れているんだから、過去作の良いとこ取りをしたなって思えました。   父の新しい恋人なナタリーは、悪い人じゃないんだけど、主人公一家とは壁があるって関係性なのも、リアルで良かったですね。  彼女を決定的な悪役にはせず「好きな映画は何度も観る」タイプなケビン父と「どんな映画でも一度観れば充分」なタイプのナタリーって描写によって、この二人は上手くいかないだろうなと、自然と観客に納得させる辺りも見事。   かなり早い段階で家の中に内通者がいると明かされる為(ケビンに優しいモリーが犯人で、如何にも怪しいプレスコットは潔白ってオチなんでしょう?)と、そこまでは簡単に読める作りになっているんだけど「実はモリーはマーヴの母親」「疑いが晴れたプレスコットと仲良くなって、共闘展開になる」って形で、程好いオマケ要素を付け足してくれているのも、良かったと思います。  ファミリー映画ならではの「予想は裏切らないけど、ちょっとした驚きも与えてくれる」バランスが心地良かったです。   ケビンのお気に入りだという「テディ」が登場する場面では(そんなの、1や2に出てきたっけ?)と戸惑ったけど、改めて観賞したら1の屋根裏部屋のベッドに、しっかり熊のぬいぐるみが置いてあったもんだから(ちゃんと過去作を研究しているんだなぁ……)と、感心させられたりもしましたね。  「スポーツカー」の喩え話で、大人もドキッとするような真理を語る辺りも、ケビンらしくて良い。  役者が変更しても受け入れる事が出来たのは、そういった細かい部分がしっかりしていたのが大きかった気がします。  「ママはハッピーエンドに弱いのよ」との言葉通り、離婚の危機にあった両親も和解して、家族揃ってのクリスマスというハッピーエンドを迎える辺りも、良い意味で予定調和的。   勿論、最初に語った通り、欠点も多いです。  特に、マーヴの妻と母親を登場させておきながら、その存在をあまり活かせていないのは、何とも勿体無い。  せめて「夫婦円満の秘訣をケビン父に語るマーヴ」とか「アンタは母親の器じゃないとナタリーに説教するモリー」とか、そういうシークエンスがあっても良かった気がしますね。  あるいは、ずっと一緒だった相棒のハリーと別れてしまったのを後悔しているマーヴが、両親の離婚危機に落ち込んでるケビンに同情しちゃうとか、そんなベタな展開でも良かったんじゃないかと。   ナタリーが決定的な悪人として描かれていないのは長所だと思いますが、それゆえに「妻と復縁する事を選ぶケビン父」という結末にて、ナタリーが可哀想に思えてしまった辺りも、痛し痒しな感じがしましたね。  脚本的には、ケビン達の存在を無視して「子供はいません」と言ってしまったナタリーに対するお仕置きのようなものなんでしょうが、ちょっと納得し難いです。  ショックを受けた彼女を嘲笑うようなテイストが感じられたのも、ハッピーエンドに影を落とす形になっており(それで良いのか?)と思えて、どうもスッキリしない。  ここの終わり方をもっと上手くやってくれていたら「1や2ほど目立たないけど、意外な良作」と、自信を持ってオススメ出来ていた気がします。   いずれにしても、シリーズのファンであれば、一応チェックしておいても損は無いかと。  外伝的要素が濃い3と5とは違って、2と同じ「ケビンを主人公にした続編」ではある訳だし、なるべくハードルを低くした上で観賞してもらいたいものです。
[DVD(吹替)] 5点(2019-01-09 01:28:19)
215.  ホーム・アローン3 ネタバレ 
「悪い大人と、家に仕掛けた罠で迎え撃つ子供との攻防戦」を楽しみたいのであれば、本作がシリーズ中で最も適しているかも知れませんね。   主人公の少年が科学好き、機械好きという事もあって、仕掛けも非常に凝っている。  敵側も銃を持った殺す気満々の連中なので、彼らを可哀想と思ったりする事もなく、純粋に少年側を応援出来た気がします。   ……ただ、自分が1と2を好きだった理由はそんな攻防戦にあるのではなく「一人ぼっちになった子供が、親を気にせず好き勝手にやって楽しんでみせる」「偏屈な大人と心温まる交流をして、幸せな結末に導いてみせる」部分にあったもので、その二つが希薄な本作に関しては、どうしても楽しめず仕舞いでした。  一応、後者に関しては「意地悪なご近所のヘスさんを救出して、感謝される」という形で描かれているのですが、主人公が一方的に彼女を助けて、それで仲良くなって終わりってだけなので、如何にも寂しい。  空港にて、袋を間違えて持ってきたのはヘスさん当人なのに「どこかの馬鹿に袋を間違えられてね」と発言するシーンがあるなど、ヘスさんに対しては「嫌な人」という印象しか抱けず、最後までその印象を払拭出来なかったのも痛かったです。  やはりこの辺に関しては「怖い大人、嫌な大人かと思ったけど、実は良い人だった」という、ギャップの魅力を感じさせるような場面が欲しかったですね。   他にも「主人公の少年が登場するまで十分近く掛かるので、感情移入し難い」「悪党にトドメを刺すのがペットのオウムという形なのは、カタルシスに欠ける」など、細かい不満点ばかり目についてしまうのも、全くもって困りもの。  主演のアレックス坊やに関しても、カルキンとはまた違った可愛らしさがあって良かっただけに「意地悪な兄と姉がいる」「悲鳴を挙げる仕草が似ている」など、前作までの主人公と同じ属性を盛り込んでいる形なのが、残念に思えちゃうんですよね。  これなら、もっと「機械が好き」って属性を強調して、前作までとは全く違った主人公像にしても良かったんじゃないかな、って気がします。    あえて言うなら「敵が銃を持っており、過去作よりも遥かに危険な存在」「美女のアリスもいるので、視覚的に楽しい」って部分が本作独自の長所と言えそうなんですけど、前者に関しては「銃を持ってるなら、さっさと撃てばいいのに」と思えちゃうし、後者に関しても「別に敵は全員男でも問題無い展開だったな」と思えちゃうしで、イマイチ褒めきれないんですよね。  せっかく敵役に女性がいるなら、それを活かし「彼女が母性に目覚め、寝返る事になる」とか「主人公の父や兄に色仕掛けして、篭絡しようとする」とか、もっとやりようがあったんじゃないかと。   「泥棒を目撃したのに、周りの大人が信じてくれない」→「見事に泥棒を退治し、周りに認められる」って流れは、起承転結がしっかりしていて良かったですし「アレックス・プルイットの科学実験」のシーンなど、ところどころ好きな部分も見つかっただけに、勿体無かったですね。  「観て損した」「失望した」って程に酷い訳じゃないけど、自分としては物足りない一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2019-01-09 01:17:38)
216.  ホーム・アローン2 ネタバレ 
 前作と立て続けに観賞したのですが「バズ君、キャラ変わってない?」と、その事が真っ先に気になっちゃいましたね。  作中で一年経過しているので、思春期の盛りを迎えてより狡猾で気障っぽい性格になったとも考えられますが、主人公のケビンが殆ど変っていないように思えただけに、ちょっと違和感がありました。   とはいえ、そんな「前作と続けて観たからこその違和感」もあった一方で……  1:今度はケビンが置いてけぼりを食らわずに、無事に車に乗り込む。 2:バールをワイングラスの乾杯のようにぶつけ合う泥棒二人組。 3:既に通報した後なのに「警察を呼ぶよ」と挑発するケビン。   などの「前作を観ていればニヤリとする部分」も沢山あったりしたもんだから、やっぱり続けて観て正解だったなと、嬉しくなっちゃいましたね。  ビデオカメラやロケット花火などの小道具を「これ、後で使いますから」とばかりに、序盤にて分かり易く登場させている点も好印象。  たとえ舞台が豪邸から高級ホテルに変わったとしても「映画を観ながらアイスを頬張るシーン」は、しっかり用意されていた辺りも、自分としては大いに評価したいです。   また、前作には無かった本作独自の面白さもプラスされており、中でも空港での「ケビンはいない」という伝言ゲームの件なんかは、かなり好きですね。  カメラワークの巧みさと、大人数のキャストが揃っているからこその、映画的な面白さがある。  ニューヨークを一人で観光する楽しさも描かれていたし、高級リムジンでピザとコーラを味わう場面なんかも、凄く印象的。  中盤には「夜のニューヨークの怖さ」が伝わってくる場面も用意されており、観ているこっちまでケビンと同じように不安になり、ケビンが襲われたり攫われたりしないかと心配になってしまったんだから、この辺の「子供が主役だからこその緊迫感の出し方」は、やはり上手かったと思います。   前作のシャベルおじさん同様「主人公と心温まる交流をする大人」枠もしっかり用意されており、個人的には、その鳩おばさんとの会話シーンが本作の白眉だった気がしますね。  「ハートもローラースケートと同じ。仕舞い込んでいないで使わないと」の例え話には感心させられたし「人間っていうのは誰でも、自分を認めてもらいたいと願っている」というおばさんの言葉が、ラストにて家族の皆から認められるケビンというオチに繋がっている辺りも、凄く綺麗な流れでした。   一度は彼女と別れ「もう二度と会えないかも知れない」と言わせていたくせに、土壇場で彼女が助けてくれたり、最後に再び出会ったりと、二回もサプライズを与えてくれた点も良かったですね。  結果としては前回と同じような展開になった訳ですが、ここは(前回と同じ展開にはすまい)と観客に思わせる誘導の仕方が巧みで、見事に驚かされちゃいました。  シャベルおじさんと違って、鳩おばさんは武器を持ってないから助けてくれる場面が想像し難いってのも、良い煙幕になっていたんじゃないかと。   そんな中「子供病院に寄付する為のお金を盗もうとしたので、懲らしめる」っていう大義名分があるせいか、前作より罠の威力がアップしており、泥棒達が可哀想で笑うに笑えなかったって部分は、欠点だと感じてしまうのですが……  それよりも、長所の方がずっと多かったと思いますね。   前作はひたすら可愛いだけだったケビンが、ちょっと成長して男の子らしい恰好良さを身に付けている辺りなんかも、成長を見守る親のような気分になれて、嬉しくなっちゃう。  「第二次クリスマス大戦、開始」と宣言する姿には、少年兵士のような凛々しさすら漂っていた気がします。   「ニューヨークで一人ぼっち」な寂しさを味わったケビンだからこそ、同じように一人ぼっちな鳩おばさんと友達になれて「もう一人じゃないよ」と伝える事が出来た……  そんな素敵なハッピーエンドに至るまで、楽しい時間を過ごせました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-12-25 23:59:55)
217.  ホーム・アローン ネタバレ 
 クリスマスの定番「何も考えずに観ても面白いし、観賞後は幸せな気分に浸れる」というタイプの映画なのですが、此度久し振りに観賞して、その丁寧な作りに驚かされました。   観客側が「何も考えずに楽しめる映画」を完成させる為には、作り手側は考えに考え抜いて作る必要があるのだと教えられたようであり、本当に頭が下がる思いでしたね。  特に感心させられたのが、状況設定の上手さ。  停電が原因の朝寝坊とか、人数の数え間違いとか、二台ある車とか「幼い男の子が一人ぼっちで家に取り残される」状況への持って行き方に、ちゃんと説得力があるんです。  脚本だけでなく、演出も冴えており、とにかくスピーディーに描き切って、すんなり観客が受け入れられるよう仕上げているんだから、これは凄い事だと思います。    序盤の会話にて「蜘蛛」や「ミニカー」が伏線として張ってある辺りも上手いし、人が沢山いて騒がしい家と、誰もいなくなって静かになった家とを対比させるシーンも良いですね。  意地悪かと思われた姉のミーガンが、置き去りにされたケビンを心配しているギャップなんかも、心地良い意外性、ツンデレなキャラクターの魅力を感じられて、実に自分好み。   恐らく本作は、殺人鬼のサンタと主人公の少年が豪邸の中で戦う「ウォンテッド Mr.クリスマス」(1989年)が元ネタの作品であり、しかも内容をマイルドに調整しているもんだから、普通なら物足りなく思えちゃうはずなんですよね。  でも、そこをしっかり「本作独自の魅力」が感じられるよう仕上げてある。  それは勿論、主演のマコーレー・カルキンの力に因るものなのでしょうが……  自分としては「一人きりになった家の中で、好き勝手やる楽しさ」が描かれている点も大きかったんじゃないかな、と思っています。  勝手に部屋に入って、家族の秘密を暴いちゃうという陰性の楽しみ方から、アイスを山盛りにして食べながら映画を見るという陽性の楽しみ方まで、丁寧に描いてあるんですよね。  特に後者のシーンに関しては(あぁ、子供の頃にコレを観て、何時かは自分も山盛りアイスクリーム食べてやるんだと思ってたなぁ……)(でも、気が付けばその夢を叶えないまま、子供の頃ほどアイスが好きじゃない大人になってたな)と思えたりして、妙にしみじみしちゃいました。   また、本作は少女を観て愛でる「ロリコン映画」と同じように、少年を観て愛でる「ショタコン映画」としての魅力を備え持っている辺りも、重要なポイントじゃないかと思えましたね。  今更言うまでもなく、主演のマコーレー・カルキンは美少年だし、その仕草や、物事に対する反応なんかが、凄く可愛らしい。  劇中で映画(しかも恐ろしい怪物が出たりする訳ではない、単なるギャング映画)を観て怖がる演技なんかは特に秀逸で「生意気で口も悪いけど、意外と可愛い奴だ」と思わせてくれるんだから、お見事です。  家に人が沢山いると見せかける為、音楽のリズムに合わせて人形を動かすシーンも楽し気で良かったですし、サンタの恰好をした男に対し「アンタが偽者なのは分かってる。ボクはもうガキじゃない。でもサンタに雇われてるんでしょう?」と話したりする、絶妙なマセ具合も可愛かったですね。  彼が一世を風靡した名子役となったのも、大いに納得。   そんなカルキンの存在に頼り切り、ひたすら子供目線の「キッズ映画」となっていてもおかしくなかったところを踏み止まって「我が子を想い、何とか家に帰ろうと奮闘する母親の物語」という側面を付け足し、大人目線でも楽しめる「ファミリー映画」に仕上がっている点も、これまた素晴らしい。  「地下室の怪物」の恐怖を乗り越えるエピソードも(確かに子供の頃は、ああいう謎の恐怖心みたいなのがあったなぁ)と思えて説得力があったし、近所の老人との心温まる交流も、如何にもクリスマス映画らしく思えて、ほのぼのさせられました。   一応、難点も挙げておくと、元ネタでは殺人鬼だったのを泥棒に変えた事による弊害か、諸々のトラップに「やり過ぎ」感があり、悪役である泥棒達が可哀想になってしまうって点が該当しそうなんですが……  まぁ、これに関しては「勧善懲悪」の枠内に収まる範疇だし、ギャグっぽく描かれているのでギリギリセーフ、と思いたいところ。   ラストシーンにて、再会した家族には「一連の泥棒退治」について話さず秘密にしておく辺りも「ケビンと観客だけの秘密の共有」感があって、好きですね。  ベタな表現になりますが「クリスマスが来る度に観返したくなる」という、そんな愛着のある映画です。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-12-25 23:59:03)(良:2票)
218.  コネクテッド ネタバレ 
 「セルラー」(2004年)ほどのスタイリッシュな魅力はありませんが、アジア映画らしい泥臭さが濃密に盛り込まれており、あちらに負けず劣らずの傑作に仕上がっていますね。   勿論、全編に亘って改良が施されているという訳ではなく(ここは「セルラー」の方が良かったなぁ……)と思える部分もチラホラ見つかってしまうのは、非常に残念。  恐らく「セルラー」で不自然だった箇所を、なるべく自然にしようと改変を行ったのだと思いますが、それによってテンポが悪くなっていたり、逆に説得力が失われていたりもするんですよね。  この「悪くなっている部分」さえ無ければ、あの「セルラー」を越える傑作だと、胸を張って紹介出来た気がします。   中でもキツかったのが「監禁中のヒロインの手枷を解いてあげる犯人達」という場面。  確かに「セルラー」に対しても「なんでヒロインの手を縛っておかなかったんだよ」というツッコミは成立する為「最初は縛っておいた」という形にするのは分からないでもないんですが……それによって「わざわざ一度縛ったものを、何故解いた?」という、より強いツッコミ所が生まれているんだから、本末転倒じゃないかと。  無理矢理に推測するなら「手枷を解いてやる事によって飴を与え、自白させやすくする」という効果を狙ったのかも知れませんが、ちょっと分かり難かった気がします。  「セルラー」では「犯人達が手を縛る事を思い付かなかっただけ」という事で、ギリギリ納得出来る形だった訳だし、ここは変えなくても良かった気がしますね。   と、そんな具合に冒頭部で(こりゃあダメじゃないかな……)と失望させられたりもした訳ですが、その後にどんどん挽回。  気が付けば画面に釘付けになっていたんだから、やはり凄い映画なんだと思います。   先程は「セルラー」に比べて悪くなっている部分を述べましたが、それと同じか、あるいはそれ以上に良くなっている部分も多かったんですよね。  まず、主役格の「青年」「女性」「警官」の三人が、不自然な程に有能過ぎない、等身大な存在となっている点が好ましい。  中でもヒロインのグレイスが「教師だから色んな事に精通していて、何でも出来てしまう」という万能属性を取っ払われて「設計士だから電話を直す事が出来た」「男との揉み合いで勝利出来たのも、偶々刃物が血管を傷付けたから」といった感じに改変されており、これは凄く良かったと思います。  警官に関しても「これまでロクに銃を撃った事も無いはずなのに、何故か物凄く有能」というキャラから「性格に難があって降格させられている元敏腕刑事」という設定になっており、グッと説得力が増している。  極めつけはルイス・クー演じる主人公の青年であり「如何にも頼りない眼鏡姿」「でもやる時はやるという精悍な顔立ち」「経理関係の仕事をしており、頭も良い」「これまで息子に嘘を吐き続けていた為、今度こそ約束を守ろうと奔走する」というキャラクターになっていて、実に自分好みでしたね。  小道具として「バットマン」を巧みに活用し「ヒーローに憧れているはずなのに、現実と妥協して情けなく生きてきた主人公が、今度こそ本物のヒーローになる」というカタルシスを生み出している辺りなんて、見事としか言いようがないです。   誘拐犯のリーダーも貫禄があって良かったし、香港映画らしいカーアクションが盛り込まれている点も、嬉しい限り。  空港での犯人達との駆け引きも緊迫感がありましたし「一件落着かと思いきや、実は……」という、どんでん返しのやり方も上手かったと思います。   ヒロインは人妻ではなくシングルマザーなので、この後に主人公と結ばれる未来が示唆されているんですが、それも直接そうとは描かず、あくまで「結ばれるかも?」と思わせる程度に留めている辺りも、上手いバランスでしたね。  最後に息子に理解してもらえて、親子で抱き合うハッピーエンドになるのも、実に気持ち良い。  人質の命を救う為、止むを得ず息子との約束を破ってしまう主人公の姿が切なかっただけに、この「和解」のシーンは、本当に心に響くものがありました。  (あんなに約束を守ろうと頑張ったのに……)というやるせなさが強かっただけに、約束を破ってでも他人の命を救ってみせた主人公の恰好良さと、それが息子に伝わって仲直りする事が出来たという感動も、更に際立つという形。   「バットマンに転職したら?」との言葉通り、この後の主人公は、貧乏な家族を泣かせるようなヤクザ紛いの仕事なんて辞めちゃって、警官になっていたりもしそうですよね。  あるいは息子をロビン役にして、クライムファイター的なヒーローになるかも?  なんて妄想まで出来ちゃう、実に面白い一本でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-19 21:30:31)
219.  セルラー ネタバレ 
 「別れのワイン」もそうでしたが、ラリー・コーエン関連作だと彼が「脚本」を担当した品よりも「原案」を担当した品の方が、傑作が多い気がしますね。  根本となるアイディアを思い付く能力と、それを形にする能力とは別なのだと示す好例であるように思えます。   実際、本作においても「携帯電話が紡ぐ物語」を魅せる演出が、アイディアに負けず劣らず素晴らしかったですからね。  とにかく展開が早くて、映画が始まって三分程でヒロインの女性が拉致される様を描く辺りなんて、実に気持ち良い。  本作は「ある日突然、謎の連中が家に押し入って来て監禁された」というヒロインと「ある日突然、謎の電話が掛かって来た」というヒーローの二人によるダブル主人公制になっているのですが、この二つの導入部を立て続けに見せられると、普通ならダレちゃうはずなんです。  なんせ「一人の主人公」「一つの導入部」に比べて、単純計算で二倍の時間が必要になるし(さっき導入部やったのに、また別の主人公でやるのかよ)という観客の苛立ちだって、無視出来ませんからね。  にも拘らず、本作はとにかくスピーディーな演出で乗り切って、観客に余計な事を考えさせず、そのまま映画の世界に引きずり込んじゃう訳だから、見事という他ないです。   主演がクリス・エヴァンスにキム・ベイシンガーと、アメコミ映画好きには嬉しい顔触れが揃っている事。  更に、ジェイソン・ステイサムやウィリアム・H・メイシーまでいて、脇役陣に至るまで非常に豪華な事も、嬉しい限り。  本作は主役側の「青年」「女教師」「警官」の三人が、揃いも揃って有能という、都合が良過ぎる内容なんですけど、それに対する違和感が少なくて済んだのは、演者さんの力が大きかった気がします。   それと、普通ならエヴァンス演じる青年に視点を絞り「ある日突然、謎の電話が掛かって来た。受話器の向こうにいる彼女は何者だ? 監禁されてるというのは本当なのか?」という謎解きの物語にするところだろうに、ダブル主人公制にして、事前に答え合わせを済ませてある辺りも、本作の凄いところですよね。  「謎解きの魅力」は潔く振り切って「事件を解決しようと奔走する面白さ」を重視した作りになっており、それゆえに新鮮で、十五年近く経った今でも古臭さを感じさせない。    「携帯切れよ、運転に集中しろ!」と言いつつ、自分も携帯電話とハンドルを手放せない主人公の姿とか、非常事態ゆえのギャップの面白さを描いている点も良いですね。  大変な事件が起こっているのに、それを知っているのは主人公だけで、周りは理解してくれないというシチュエーション。  だからこそ「すれ違いコント」のような笑いがあるし、孤軍奮闘している主人公の事を、観客も応援したくなるという図式。   携帯のバッテリーを調達する為、止むを得ず店から強盗する際のカメラワークなんかも、凄く良いですね。  あえてシンプルに、画面を左から右へと移動させ、その後にまた右から左に戻すという形で「車に行って銃を取り、店に戻って来る」という主人公の動きに、完璧にシンクロさせている。  主題歌の使い方も抜群に上手くって、視覚的に印象に残る場面と、聴覚的に印象に残る場面、その両方が揃っているってのは、かなり凄い事なんじゃないでしょうか。   そんな中でも特に好きなのは、人質を取られているのを承知の上で「交渉決裂だな」と一度電話を切り、犯人側が再交渉を持ち掛けてくるのを、祈りながら待つ主人公という場面。  とにかくエヴァンスの演技が素晴らしくて、本当に感情移入させられるし、犯人側が折れる電話を掛けてくるまでの「間」も完璧で、緊迫感が凄かったです。  敵側が悪徳警官である事を活かした「(人質には)手を出さないと誓う」「市民を守ると誓ったように?」というやり取りも、皮肉が効いていて素敵でしたね。  クライマックスにおいても、アラームを駆使して敵の位置を知らせたり、ビデオ録画で証拠を押さえたりと、最後まで「携帯電話」というアイテムをフル活用している辺りも、実に見事。   ヒロインは人妻なので、ロマンスに発展したりはしないんだけど、最後は感謝を込めたキスで終わって、ハッピーエンドとなる辺りも好みですね。  携帯電話の画面を使ったスタッフロールに至るまで、とことん楽しむ事が出来た、満足度の高い一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-17 03:30:50)(良:2票)
220.  ソルジャーズ・アイランド ネタバレ 
 この映画、結構好きです。  好きなんだけど……それを差し引いても欠点の多さが気になっちゃいましたね。   金持ち連中が自慢のタネを得る為、節税の為にレジャー感覚で軍隊に参加するという「富豪部隊」の設定は面白いのに、それを活かし切れていない。  例えば冒頭、如何にも「普通の戦争映画っぽい場面」から始まって、それがあんまり面白くなかったりするもんだから、気勢を削がれる形になっているんです。  しかも、後に映画のラスボスとなる相手が冒頭にて主人公に一度倒されていたりするもんだから、緊迫感も失せてしまうという形。  これなら冒頭の部分はカットして、主人公が「富豪部隊」の護衛役に雇われる場面から始めた方が良かったんじゃないかな、って思えます。   主人公が「伝説の軍人」って割には「弾を避ける為に、ジグザグに走って逃げるべき」ってアドバイスを武器商人からされたり、内通者がいると分かっているのに基地を移動させようとしなかったりと、その能力に疑問符が付いてしまう辺りも残念。  物語を面白くする要因なはずの「内通者の正体」に関しても、どうも扱いが下手だった気がしちゃうんですよね。  作中で特にヒントも出していないから「犯人探し」を楽しむ事も出来ないし、犯人のキャラ付けに関しても「嫌味な金持ちその1」という没個性的な代物でしかなかったので「良い奴だと思っていたのに、裏切り者だったのか……」という意外性も無し。  そんな裏切り者を殺す際に「クソ銀行屋め」と言わせたりするのも、如何にもって感じがして、ノリ切れませんでしたね。  この手の「皆もサブプライムローン問題には怒ってるでしょ? だから映画の中で銀行屋を懲らしめておいたよ」というパターンは流石に食傷気味で、ちょっと興醒めしちゃったくらいです。   そんな欠点の多さに比べると、良かった部分を探すのは大変だったりするのですが……その数少ない「良かった部分」が、かなり自分好みなんですよね。  主人公が戦友と交わす会話「国のために戦ったのに報われない」「金のために戦おう」にはグッと来ちゃったし「今はトレーラーハウス暮らしの無精髭な主人公が、実は伝説の軍人だった」って設定も、男の浪漫をくすぐるものがあります。   ナイフを用いての決闘で、敵にトドメを刺すシーンも恰好良く決まっていたし、水上バイク同士を衝突させて爆発させるとか、アクション映画として見栄えの良い場面がしっかり詰まっているのは、文句無しで長所だと思いますね。  ラストシーンにて、花火を打ち上げたり、争いの種となっているレアメタルを海に投げ捨てたり、水鉄砲で子供達と遊んだりしている光景を描き「島を独裁者の手から解放した」喜びを感じさせて終わる辺りも、ハッピーエンド感があって良かったです。   そういった具合に、確かな魅力も秘めている映画であるだけに(ここは、もっとこうすれば良かったのに……)って、歯痒くなっちゃいますね。  せめて「富豪部隊」の面々が善意に目覚めていく流れだけは、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったです。  例えば、事前に島民の子供との交流を描き、この子達を救いたいと思って金持ち連中が立ち上がるとか、そういう展開にしておけば、もっと感動出来たろうし、胸を張って「隠れた傑作」と言えた気がします。   「クリスチャン・スレイターが主演で、彼の恰好良い場面がちゃんとある」というだけでも、自分にとっては「良い映画」なのですが……中々他人には薦めにくい一品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2018-12-04 14:43:17)
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