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ミスター・グレイさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 565
性別 男性
自己紹介 三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。
※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。
※管理人様、お世話になっております。
※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。

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341.  誓いの休暇(1959) 《ネタバレ》 
若者の通過儀礼のように人生の酸いも甘いもつまった旅中の一つ一つの挿話が印象的である。松葉杖の負傷兵の行く末を見届けたくなってしまう展開と最後の最後で片足だと分かる巧さ。戦時に青春真っ盛りで、見ているこっちまで顔が赤くなってしまいそうな二人の若い男女関係は瑞々しく描かれ、どうしたって温かく見守りたくなってしまう。さらに人生の苦味の部分では石鹸を持ち去る抵抗をみせ若者の純潔さを実に爽やかに描出している。しかし一番のクライマックスはやはり母親が畑を疾走するシーンであり、その姿の感動的なことといったらない。しかも〝戦地に赴き二度と戻らぬ息子を持ち続ける母〟という最初からネタバレされたこの哀しみ最上級の設定に涙腺が刺激され、主人公に肩入れせざるを得なくなるところが憎い。そのうえ様々な出来事で明るみに出てくる彼の人物像ときたら好感度抜群なのである。そして何よりこの物語はヒューマニズムの極致であるにもかかわらず、決して感動の押し売りをしていないところが良いところだ。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-04-18 18:15:56)(良:2票)
342.  パサジェルカ
アンジェイ・ムンク監督の遺作と聞いていたのですが、どうやら完成前に既にお亡くなりになったようで撮れなかったシーンはスチール写真やナレーションで構成されています。それも含めて、と言うよりそれのおかげもあってか?極めて秀逸な出来映えとなっているのですが、ナレーションによる説明は中立的に聞こえる一方、明確に問題提起への誘導をしているようにも聞こえムンク監督の意向と同じものかは分らない感じもします。それでも、収容所の場面を観る限りではナチスとポーランド政治犯という図式にさして重要性はなく、あくまでマルタとリザという普遍の人間性を主にした支配する者とされる者の関係を追及することで、人間の内面を抉り出しているように思います。それも特に会話するわけでもなく佇まいだけで伝わる雰囲気が絶妙です。最後も本当にあれで終りにするつもりだったのか続きを作るつもりだったのか分りませんが、先を見なくとも既に十分に人間の本質に迫っています。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-04-13 18:13:27)
343.  剣鬼 《ネタバレ》 
花造りの名人にして走れば脱兎の如しという漫画チックな主人公の物語は、いささか精密さや盛り上がりには欠けますが、なかなか良いシーンが多いです。まるでその場に居合わせているかのように肩ごしから撮られた噂話をしているシーンや登城途中の風説で状況を伝える巧さ。そしてラストの幻想的な花畑での怨念渦巻く壮絶な斬り合いは圧巻です。美しいロマンスの花畑が一変してバイオレンスに血塗られる凄さ。さらに、一見、幻のように現れる居合抜きの達人などの素晴らしい構図も随所に見られます。また哀しくも不気味な斑平を演じる市川雷蔵さんが良いです。飄々としていながらも心情をしっかり感じさせてくれます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-11 18:39:04)
344.  大いなる河の流れ
儲け主義の人間が顧みずに行ってきた自然破壊に対して警鐘を鳴らすような痛烈で教訓的な内容ですが、詩情豊かに描かれた大自然の画の美しさはそれだけの説得力を十分に有しています。誇張表現でも何でもなく一枚一枚の画がアートとして成り立ち、その連続はまさに河の流れのように滑らかで優しくもとても力強く、息衝いているようで生命を匂わせます。ナレーションが入っていますが画だけでも問題無く理解できますので、字幕を追ったり聞き耳立てたりせずBGMとして楽しむぐらいの感じで画面を見る事をお勧めします。
[DVD(字幕)] 8点(2007-04-05 17:48:47)(良:1票)
345.  ナック
白黒ですし雰囲気からかなり以前の作品だと分るのですが実験的な作りは意外なまでに新鮮であり、予備知識ゼロですが当時としては前衛的で斬新だったのではないでしょうか。英国の香り漂っていてファッショナブルですし。ところで本筋とは少しズレますが、製作年から逆算するとハジケタ若者であった登場人物たちも今や初老を向かえているはず…いつの時代も社会と若者の位置付けは同じなんですね。むしろ年配者が若者を狂っていると思う方が健全な状態なのかもしれません。それは時代の変化から自然と生まれる世代間の差であり、両世代が理解し合っていたら素晴らしいのかもしれないけれど、そんな時が来たら社会が異常をきたしているのかもしれません。
[ビデオ(字幕)] 6点(2007-04-02 18:06:02)
346.  アンビリーバブル
ともすれば未来という設定も忘れてしまいそうな近い将来が舞台ですが、これはシュールレアリスムをやりたい監督が冒険し過ぎる危険性を回避して、観客に歩み寄り少しでも物語性を備わせようとしている印象を受けます。なんせ既成概念無視の不可解な現象の連発。説明無し、物語の関連性無しにウガンダ人が空を飛びますし、異常気象を装い夏に雪が降りますし、水が凍結します。この不合理さは未来科学的と言うよりも完全に超現実的であり、同時にその画は詩情的なのです。ですから物語としては不親切と言いますかイイカゲンなのですが、私は何だかとっても惹きつけられるのです。まず最初の異変としてエスカレーターに死体が当たり前のように転がっていてホアキンと共にミステリアスな世界へと誘われる。そして錯覚のようにクレアのそっくりさんが登場するシーンにドッキっとさせられる。この奇妙な謎の数々の答えは提示されませんが、これは〝無人島に行くなら何を持って行く?〟みたいな極論に過ぎず意味など無く、愛についての追求なのだと思います。ショーン・ペンをストーリーテーラーとして使ったのは少々ズルい気がしますが、解り易さも提供してくれるしオトボケ学者キャラは味があります。ホアキンとクレアも役にはまっていますし、特にホアキンの無口で少し困惑気味の表情のアップが良いです。ただこの〝アンビリーバブル〟って邦題はどうなんでしょう?風船の如く空飛ぶウガンダ人だけに捧げられたようで、この題をつけたことがアンビリーバブルです。
[DVD(字幕)] 8点(2007-03-30 18:20:48)(良:1票)
347.  ブラックブック
いやぁ~凄かった。実話を基にしているみたいですが、政治的なことより単純に娯楽として面白かったです。何が凄いって回想シーンから導入していくので主人公の無事が完全に保証されているのにもかかわらず、劇中ハラハラドキドキしっぱなし。ポール・ヴァーホーヴェンが「女王階下の戦士」以来、正統派の映画も撮れるんだという事を見事に証明してくれました。もちろんエロもグロも要所でしっかり見せますが人間模様、殊に女性の描写がやっぱり良いです。内容についてはネタバレしてしまうとつまらないので控えますが、ヴァーホーヴェンの新しきファム・ファタール、カリス・ファン・ハウテンの美しいこと美しいことっ!歌声も素敵なんですが、彼女の素晴らしさはニコール・キッドマンのような気品が良い意味で無いこと。自由奔放と言いますか、あけすけと言いますか早い話がエロいんですねぇ。女性はどう思うか知りませんが男はああいう女性に弱いんですよ。鏡の前で下の毛を染めるシーン、汚れた足を便器の水で洗うシーン、もうやりたい放題で参っちゃいましたよ。それから彼女の友人となるロニーもまた凄いキャラクター。強いと言うか、しぶといと言うか、まぁたくましいんですね。もう生命力が溢れ出ているのです。この魅力的な女性たちと取り巻く多種多様な男たちとの妙、最後まであっという間に時間が過ぎてしまいました。
[映画館(字幕)] 9点(2007-03-28 18:47:40)(良:2票)
348.  heat after dark ヒート・アフター・ダーク 《ネタバレ》 
冒頭の足しか映らないシーンと写真の連続だけで現場へと向かうシーン、一部の作り過ぎのキャラクターは狙い過ぎの感が否めませんが、一つの舞台、数人による劇画チックな銃撃戦はなかなかカッコイイ。普通の人はそんな色のシャツ着ないでしょと思っていたら、突如暴れだした渡部篤郎さん。やっぱり普通じゃないのね。二丁拳銃のうえに口にまで銃を咥えて額に血を滴らす姿がとってもクール。しかもその行動ときたらフィルムノワールかってほどの〝漢〟なのです。まぁ全体的にノリと勢いで作られた感じもしますが、お経のような妙なBGMも慣れてくると何だかあっているような気がしてきますし、ネットリとした雰囲気も良いです。
[ビデオ(邦画)] 6点(2007-03-26 18:30:43)
349.  フランティック
ストーリー自体は格別面白いわけでもないですし些か冗長な感じもしますが、これが実に惹きつけられるのです。例えば屋根の上をスーツケースを持って歩くシーン、リチャードの心情の表われや靴がスッーっと落ちていく巧さ、鳩の存在までもがとても良い。それから犯人との取引きシーンの緊張感、赤いドレスの妻と赤いスカートのミシェルの交差などなど、どの場面をとっても取り分け派手なシチュエーションではないのに一つ一つに気分が高揚させられます。それに大の男三人が痴漢撃退スプレーでやられて慌てふためくところなんてユーモアも感じさせます。謎めいた女の怪しげな雰囲気も良いですし、大スターハリソン・フォードも役者ハリソン・フォードとして良いのです。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-03-22 18:54:21)
350.  パパにさよならできるまで 《ネタバレ》 
アポロの月面着陸という科学的、つまり現実的な事物で父の存在という幻想を打ち破るプロットや、手紙やチョコレート、髭剃り道具などの小物の使い方、ラストに一人で船を漕いでいくシーンはなかなか良いです。しかし、全体的に見ると腑に落ちない印象の方が強いのです。まずほとんどの登場人物たちがある種の腹立たしさを感じさせます。人間誰しも欠点はあると思いますが、その面を描いている割りには人物の掘り下げが妙に浅いのです。そしてその負の面のリアリティさとは対照的に部屋などの色彩は統一性がありファンタジックに描かれているのが違和感があるのです。言うなればコーヒーとミルクを混ぜてカフェオレを作ろうとしたら分離してしまって何じゃコリャという状態です。まさかそこに子供の視点からの矛盾性なんて潜んでないでしょうし;。しかし何より問題なのは主人公の子供に可愛げというものが欠如していることです。もちろん可愛かったら良いといものでもありませんが、この手の物語ではある程度の愛嬌が無いと付き合いきれませんよ。
[映画館(字幕)] 5点(2007-03-20 18:09:12)(良:1票)
351.  2番目のキス
ファレリー兄弟の作品にしては下品ではなく、男女のおバカな特性を面白おかしく見事に描いている。…何ていう真面目な感想はやめにして、何を隠そう私も10年来のレッドソックス党!現在、世間で話題騒然の松坂投手より巨額の投資をしてしまった自分とは一切関係の無いレッドソックスの懐具合が心配というバカっぷりです。ですから耳の痛い話に苦笑してしまった;。私の一大危機は日本では最も応援している松井秀喜選手があろうことか宿敵ヤンキースに入団してしまったこと!こりゃどっち応援すりゃいいんだ~というジレンマに陥りながらも、何時の間にか純粋にこの黄金カードを楽しめるようになったのは我ながら進歩です。殊に本作の舞台である前年のリーグ優勝決定戦は凄かった。最終戦はビデオ録画しつつも気になりちょくちょくネットで確認していたがクレメンスを打ち砕いた時は勝利を確信していた。なんせこっちはペドロだし~。…なのに有り得ない敗戦(松井選手がホームで珍しくガッツポーズしている姿は覚えている方もいるでしょう。あの試合です)。それがあっての翌年の同じ舞台、同カードでの有り得ない逆転劇!3連敗後、九回ビハインドで、それもあのM・リベラを相手に逆転してみせるなんて有り得ない!しかもその後3連勝をきめヤンキースを破るなんて奇跡も奇跡だっ~!…でもバンビーノの呪いが解けちゃってちょっぴり寂しくもあった。だってもう夢が叶ってしまったのだから(次は松井選手がチャンピオンになれること願ってます、はい。)。…ねっ、興奮して映画とは関係ないこと書いちゃってファンってのはきっとバカな生物なんです。だからあんな可愛らしくて寛容な女性に愛されるのも奇跡に近いぞ;。・・・ところで死ぬまでに一度はレッドソックス対ヤンキース戦をフェンウェイ・パークで観戦したい…できればポストシーズンの試合を。それと球場移転してしまう前に〝ベーブルースの建てた家〟でも観戦したい…できれば松井選手のいる間に。全くバカの夢は尽きませぬ。
[DVD(字幕)] 7点(2007-03-16 17:54:16)
352.  メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 《ネタバレ》 
本作の何よりの見所はその見事な景観であり、トミー・リー・ジョーンズなるイカツイおっさんが失礼ながら予想を遥かに上回る美的感覚の持ち主だったことに驚く。しかもこのイカツイおっさんはやっぱり一筋縄ではいかない。けっこう単純なお話の時間をバラし構成を複雑にし注意力を引きつける、それでも気が緩むものならドーンと迫力万点のおばさんの裸や腐乱した死体を映しガードが下がったところへパンチを見舞ってくる。まったく油断も隙もならない。さらに、複雑で濁った現代社会で失われつつある友情に原点回帰する物語は、単純で純粋なヒューマニズムが溢れており温かさを感じる。自分本意のマイクが最後の最後で「一人で大丈夫か?」と声をかける。他者への関心があらわれ出し彼を救っているようであり、イカツイ風貌とは裏腹にトミー・リーの優しい一面を垣間見た気がする。・・・ところで、「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」という題名ほど中味は凝ったものではないが、「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」という題名は近頃の映画の中では群を抜いてかっこいい。だって何度も口ずさみたくなる。メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬、メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬、メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬・・・・・長いのにあまり噛まないで言えるところが実に良い。
[DVD(字幕)] 8点(2007-03-09 18:08:48)(笑:1票)
353.  影(1956) 《ネタバレ》 
何とも奇妙な謎の事件から導入し好奇心を掻き立て、勢いのみに留まらず三本の興味深い話で次々と魅せ、最後には数本が絡まったように見えた糸が一本に解ける面白さがある。三つの不可解な事件が一つに繋がるのはあまりにも偶然が過ぎるのだが、そんなことを気にさせないほど、すんなりとそれぞれの過去の回想に入っていき結末を知りたくなってしまう話の聞かせ方がとにかく巧い。特に二話目は緊張感があってドキドキさせられる。虎穴で仲間の足を蹴った時のあの反応、たった一人のところ狂気に駆られた表情で「手を出すんだ!」と凄まれる恐怖。計算尽でさり気なく事の結末である義足を見せるのも見事だ。作中に漂う空気も暗澹としており、白黒映画ならではかもしれないが物語のキーとなっている陰影のつけ方も不安を呼び起こすようで良い。もちろん1956年製作のポーランド映画であり政治的な内容だが、単純にスパイサスペンスとしても十分に楽しめる。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-03-05 18:49:52)(良:1票)
354.  オズの魔法使
オズの国へ移行するとモノクロから一変して色彩が豊かになり幻想的な世界へ足を踏み入れた雰囲気が一気に高まる。遠くの風景は絵で構成する舞台装置のようでありながら映画と見事に融合させられており、イマジネーション全開のファンタジックな世界は何とも素晴らしい。そのうえ突飛なキャラクターたちも子供騙しに留まらず驚くほどの説得力を備えている。見た目はけっこう不気味であるがユニークで愛らしいライオン。青い空を真っ黒く切り裂く魔女の恐さ。無駄なシーンは見られず、音楽はパワフルで明るくてとことん楽しい。そしてチョコチョコと付いて来る犬のトトの可愛らしいことと言ったら無い。
[DVD(字幕)] 9点(2007-03-02 18:17:01)(良:3票)
355.  間諜最後の日 《ネタバレ》 
ボタンで犯人割り出しや山での望遠鏡と犬の様子、ぐるぐる回るコインなどの緊張感や心情を表す場面は巧みで、個性溢れる登場人物たちとユーモアの利き具合は良かったのですが、結果オーライみたいなラストはどうなんでしょう?好みが分かれそうですが、私は汽車の事故で解決してしまう幕引きはあまりにも都合が良過ぎると思ってしまいます。殺人を犯さねばならぬアシェンデンと良心からそれを阻止しようとするエルサ。任務か?それとも良心か?はたまた愛か?二人のその葛藤を事故で終わらせ、幸せそうな姿が映るだけでは少々拍子抜けなのです。やはりスパイ業と愛の間で揺れるアシェンデンの男っぷりな決意を見たかったです。それと無関係な人の好さそうな老夫婦が被害に遭うのも後味が良くありません。ヒッチの中では死が重い印象です。
[ビデオ(字幕)] 6点(2007-02-28 18:10:46)
356.  アメリカ,家族のいる風景 《ネタバレ》 
もうのっけから良い。西部劇を匂わせながら現代に突入し徐々に本題へと入っていく。情報量が少なく主人公と共に物語を紐解くように進み興味が湧いてくる。一貫してカウボーイルックのハワードは時代に取り残されているようで孤独を感じさせる。他の登場人物たちもまた同じであり遺灰を胸に抱くスカイの姿や路地裏で泣くドリーンの姿、部屋を破壊するアールの姿、TVで野球を観戦する母の姿、ハワードを追跡するサッターの姿にそれぞれの孤独を感じさせる。また、舞台である寂れた町の景観も抜群であり一つ一つのカットが芸術的であることに驚かされる。作中に漂う雰囲気も素晴らしくその世界観にただただ引き込まれてしまうばかりである。ただ後半は少々展開が早い、と言うか甘い。短時間でハワードは目的を達し満足するし、アールともけっきょく簡単に和解する、町は淋しくも画面も決して寒々とはしていない。最後にティム・ロスに厳しい台詞を言わせるが変わり者であるサッターは観察者であるからして学者の戯言にしか聞こえないし、大局的過ぎる視点は現実味が薄い。そんなところにヴェンダース監督の温かさや優しさを感じる。まぁ結局のところこれもこれで好きなのだが、個人的には同時期に似通ったテーマ性で撮られたジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」の方が若干好みである。
[DVD(字幕)] 8点(2007-02-20 18:07:54)
357.  パンと植木鉢 《ネタバレ》 
珍しい手法、面白い切り口なのでついつい作品の世界に引き込まれます。テーマは慈しみの心と実践が大切ということでしょうか。個人レベルでの手を差し伸べ合いが人類救済の第一歩であり、そこに可能性を見出しまています。こう文章に起こしてみるとかなり気恥ずかしいテーマなんですが、正面から熱く訴えるのではなく距離を置き時に笑いも交えながら嫌味なしにサラっと流しているので好印象。言うなれば撮影秘話のようなメイキング映像を観ているような感じなのです。もう本当なのか演技なのか線引きできないくらい自然であり、監督の答えをそれぞれの代役である爽やかな青年たちによって違和感なしに提示するあたり巧妙な構成です。それにしても本作を撮り、自分の若き頃の役に壮大な希望を持つ青年を選んだ監督は今でもきっと夢追い人なのでしょうね。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-02-19 18:06:27)
358.  10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス
カウリスマキとジャームッシュ、スパイク・リーに画的にヴェンダース、役者が中国人だからチェン・カイコー、あとは観ただけでは判断できず…。まだまだ修行が足りませぬ;。個人的に言えば、好きなのは相も変わらず無口なカウリスマキ作品。中でも出来が良いと思うのは、素人でも無駄なしと思えるほど濃密で完璧に10分間を使ったエリセ作品。中では不出来と思うのはやや反則技のように10分間を使ったヘルツォーク作品。でも一番気になったのはそのヘルツォーク作品。フィクションかノンフィクションか分らぬが浦島太郎のごとく僅かな時間で何千年もの進歩を余儀なくされた一民族の、時間に置き去りを食った姿はあまりに哀しい。人間の有るべき姿を問われたようで哲学的な気分にさせられます。
[DVD(字幕)] 7点(2007-02-14 18:35:18)
359.  ピエロの赤い鼻
〝笑う〟というのはとても大切なことだと思うが、人を笑わせるというのは泣かせるよりも難しい。まして道化を演じる者はプライドもかなぐり捨ててある種のバカにならなければならないし、それでいてユーモアというようなある種の知性がないと観客を魅了することはできない。つまりピエロになるということは相当な勇気がいることである。本作は戦時下、しかも処刑待ちという絶望的な状況で対照的なそのピエロの必要性を明確に説いている。悲劇を喜劇に変えてしまう素敵なドイツ兵の登場にどうしたって拍手を送りたい気分になる展開は見事であり、寓話チックな珠玉の心温まる物語は素晴らしい。・・・しかし、もう完全に個人的な問題なのだが私はピエロを面白いとは思えない。だからゾゾがいくら頑張ってくれても笑えなかったのだ。つまるところ何が言いたいのかというとピエロに笑う人々が嘘臭く見えてしまうことにより作品との間に壁ができてしまったのがマイナス点である。何しろこれから処刑されるってのに神経のピリピリをピエロで抑えられるかって思うし、平穏な時は平穏な時で大の大人たちがピエロだけであんなに笑えるかって思ってしまう。もちろん当時のフランスでピエロがどれだけ笑いをとれたか知らないので、現代日本人でピエロに笑みがこぼれない者の感想ですけど。
[DVD(字幕)] 7点(2007-02-13 18:26:29)(良:1票)
360.  そして誰もいなくなった(1945) 《ネタバレ》 
原作との比較はナンセンスだと思いますが、原作と異なるこのハッピーエンドはいただけません。もちろん敢えて同じオチで勝負する必要性など何処にも無いのですが、アメリカ的なオチとしたことで作品の簡潔さが損なわれています。そればかりかそれにより全体のムード自体の変更も余儀なくされ、シリアスさは影を潜めコミカルになり道化役まで登場し、カップルで楽しむような作品となり本作の真の面白さは消え失せてしまっているのです。引っくり返った足先や電気傘で顔を隠すなどの洒落たシーンは随所に見られますが、原作を面白がった読者としては甚だ期待を裏切られた思いなのです。・・・もっとも、原作を読んでいなければストーリーの後追いなどしなかったでしょうから楽しめたような気もするのですがね。
[ビデオ(字幕)] 6点(2007-02-08 18:36:32)
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