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かわまりさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 296
性別 女性
ホームページ kawamari7.hatenablog.com (質問と建設的な指摘をお待ちしています。JTNEWSに届けてあるほうでは文字化けします。)
自己紹介 取り締まる法律が必要な(1)XX中毒。生まれた場所のせいで3歳で兆候が現れ、13歳で表彰状物の重症に、今ではより強い刺激を求め(2)X屋の中だけではなくこのサイトに出没、ネットで(3)XXXXXXがないかと探し回るのに誰も助けてくれません。KW = 「かわまり」「はてなブログ」で原子力開発関連の「プロメテウス達よ」と19世紀ヨーロッパを夢と詩で描いた「黄昏のエポック」を公開しています。  (Xの数に文字数が一致する言葉を入れてください。)

空欄の答え:(1)XX=「言語」、「活字」も可、(2)X=「本」、(3)XXXXXX=「読める外国語」、キリスト教国際病院で生まれ、宗教は仏教。

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21.  十戒(1956)
むかしむかしあるところに… ヘブライ人という人々が住んでいました…。とお話を始めるのが本来なら適当かと思います。本作品はエジプトナイル川のほとりで「ファラオ(王)がわたし達ヘブライ人の男の子を皆殺しにする命令を出したけれどこの子だけは。。。」と母と娘が生まれたばかりの男の子(後のモーゼ)をバスケットに入れて川に流すシーンから始まります。ヘブライ人(ユダヤ人)はナイル川の恩恵で生産性が上がったエジプトに労働力として移住してきたようですが、この民族は他民族と異なり、原始多神教ではなく唯一絶対神を信仰し、後年世界宗教となるキリスト教とイスラム教の間接的な始祖、ひいては法律や科学の基礎を築く民族になるのです。さて、お話しはほとんど終盤までユル・ブリンナー演じるファラオがこれでもかこれでもか、と言わんばかりにモーゼとヘブライ人を弾圧する内容に終始しますが、その過程でモーゼの杖が毒蛇に変わったり、モーゼが神の声に導かれたり等々、それはモーゼとヘブライ人達が「そうだ。われわれは神に選ばれている。われわれは世界の創造者たる唯一絶対神を敬う民なのだ!」と民族の自覚を獲得していく過程なのです。そして最後近くで神からの十ヶ条の戒めを与えられたモーゼが「規則なくして自由はない!」と宣言しますが、これこそ現在、宗教を問わず国家の基本となっている法治主義の起源なのです。数々の奇跡のスペクタクルが目を楽しませてくれる作品ですが、現在先進国に住むわたし達が当然と受け取っている考え方の源流を探ってみると面白いです。
[DVD(字幕)] 8点(2020-03-29 01:17:12)(良:2票)
22.  赤い靴(1948)
巻頭から鍛錬されたバレーダンスに目を奪われます。2回見ると主人公ヴィッキーと踊っているプリマが別人だということが分かる様になるのですが、初見ではそこまではいかないでしょう。初期テクニカラー時代に製作された視覚的にも楽しませてくれる作品です。ストーリーの上では舞台とダンサーたちをを自分の持ち物のように考えている支配人レルモントフの存在感が光っています。ただ、婚約を発表した直後に解雇されてしまったプリマは練習に40分以上遅れてくるなど、自分の力量に驕っていたきらいがありました。ここでヴィッキーの表情を大写しにする必要はあったのか。。。彼女も作曲家ジュリアンとの恋愛で同じ轍を踏むのだという暗示だったのか。。。現代では往年のプリマが政治家と結婚したり、あるいは自分でバレー学校やバレー団を運営したりと踊ることだけに束縛されない自由な人生自分で選択しもちろん結婚によって受ける制約も柔軟にかわすどころか人生の糧としているので古今の感があります。
[DVD(字幕)] 8点(2020-03-28 09:59:21)
23.  めまい(1958)
男性と女性の脳の働きで最も異なるのは男性は思考に当たって右脳と左脳を別個に使用するのに対して女性は左右の脳の連携プレーに長けているとのことです。そのせいか女性が「彼こそわたしの運命の人!」と思って追いかける相手は大体ハズレのことが多いとか(笑)。左脳データベースに貯まっている「こういう人は誠実」とか「こういう人がわたしのタイプ」という客観的(?)情報が情動を司る右脳に影響するからだからだとか。。。 そういう目でこの作品の高所恐怖症の主人公スコティを見るとかなり女性的な感性の持ち主のような気がします。そして依頼人の妻マデリンの尾行を開始した後に彼女を追って入場した美術館で彼女そっくりな女性の肖像画の前のベンチに打ち捨てられた、肖像画の女性が持つのと同じピンクの薔薇のブーケと肖像画の前でたたずむマデリンの美しく結い上げられたプラチナブロンドの髪の渦巻。。。 監督のヒッチコックは「何の意味もなく打ち捨てられたものに恐怖が感じられるように映画を撮影する」と言ったそうですが、確かに黒猫や髑髏や短刀などのうわべだけの怖さを与えるものよりも一層恐ろしい世界が再現されていました。モノクロ映画を卒業してテクニカラーの時代に入ったモノクロの巨匠の面目躍如たるものを見ることができます。でも恐怖の源泉をカッコで括ってマデリンを追うことに専念するスコティの行動は男性的でやはり元犯罪捜査官です。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2020-03-26 11:41:00)(良:1票)
24.  昼下りの情事
- [ ] 数年前にDVDを購入して直ぐに見て、オードリー・ヘップバーンが演じる若い音大生の女の子が奥さんと上手くいっていないらしい金持ちのおじさんに弄ばれているのか弄んでいるのかわからない展開をくだらないと思い感想のかきこみははほったらかしになっていました。そして多くの名作・秀作・佳作・駄作を見た後に再び本作を見てストーリーのくだらさを通常投稿としてクソみそに書いてあらすじも投稿しようとして「あれ!」ということになったわけです。この作品に2度目に接するまでに見た映画の中で一番影響したのは例のアカデミー賞四冠の韓国映画「パラサイト」と直前に見た「市民ケーン」だったのです。本作をもうご覧になった方で「パラ」と「市民」のどちらか若しくは両方をご覧になった方は似ても似つかない作品だとおっしゃるでしょう。その通りです。「パラ」の方は主人公が手にした風水の石がどうの、「市民」の方は薔薇のつぼみがどうので正直言って疲れました。「パラ」の石に至っては3回見たというYouTuberの動画で指摘されてやっと存在自体に気付いた始末です。そして今回の本作品の鑑賞では、白状しますが、原作者のクロード・アネという人が気になってタブレットでアマ◯ンのサイドを見たりする間に聞こえる素晴らしいBGM、そして時々顔を上げる度に画面に展開するモノクロの美しい構図の画像。。。これぞちまちました小道具に意味を持たせて解説者を頼りにする必要もない、映画が総合芸術である由縁だと感じ入ったので当初の予定より高い点数を献上。。。 ただ原作のタイトルは「ロシア少女アリアーヌ」になっていたのにどこがどうロシアなのかわからなかったのが減点ポイントです。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2020-03-25 07:53:13)
25.  蜘蛛巣城
巻頭の蜘蛛巣城跡の史跡と背後に流れる能の謡(うたい)が純日本的な雰囲気が醸し、画面は一気にタイムスリップして蜘蛛巣城があった頃の迷路の様な原始林を駆ける二人の武将の騎馬の姿に焦点を合わせる。。。ここまでを事前の情報なしに見たならばこれがシェイクスピアの戯曲に基づいていた物語だとは誰も思わないでしょう。でもわたしが読んだシェイクスピアの「マクベス」の解説書には本作品が「マクベス」の映画化作品、しかも英語圏で作られたどの舞台・映画作品よりも原作のテーマと雰囲気を再現しているといる作品として紹介されているのです。そして二人の武将が運命のお告げを聞くシーン、原作では荒野で邪教のぎしきを行う魔女、本作品では原始林で系を紡ぐ山姥。。。どちらもイギリス(スコットランド)と日本の風土と文化を反映した設定ですが魔女はヨーロッパの原始宗教の産物でイングランド人はもちろんカトリックに染まった近代スコットランド人は「おやおや、こんなのが言うことを信じたらまずいのでは。。。」と思うはず。。。でも清教徒の天地だったアメリカでも魔女狩りが行われたほど土着の異教は英語国文化の根底に巣食っているのです。かたや山姥は日本古来のアニミズムの象徴的存在です。近代の自意識や秩序への信頼感と潜在意識に巣食う原始宗教のせめぎ合いが伏線として提示され、物語は武将鷲津(マクベス)と主君との関係に象徴される近代的秩序と山姥に象徴される原始的野望のせめぎ合い、そして運命をテーマとして展開していきます。舞台を前近代のスコットランドから戦国時代の日本に移したからこそシェイクスピアが意図した人類共通の真実がより効果的に炙り出されたのかもしれないと思った次第です。
[DVD(邦画)] 9点(2020-03-13 05:18:19)(良:1票)
26.  天国と地獄
韓国映画の「パラサイト」がアカデミー作品賞などを受賞し、インド映画がパクリ元の名乗りを上げ、思わず「こちらこそがパクリ元ではないか?」とSNS上に投稿したので数年、もしかしたら十年以上の時を隔ててもう一度鑑賞することと相成りました。ただしこちらは「パラ」のポン・ジュノ監督が黒澤明監督の影響を受けたことを隠しもしていないしまた本作品が娯楽作品(推理作品、あるいは警察もの)として押しも押されもしない作品なので当事者によるパクリ元の主張はあり得ないでしょう。「パラ」と本作品に共通するのは高台と下町に象徴される富者と貧者の格差、そして小道具などにも神経を行き届かせている緊密な構成です。ただし、両作品の世界観や社会観は非常に異なっています。本作品に於いては富は勤勉と献身の対価として与えられるものであり、「パラ」の富豪はなぜか裕福、また本作品での貧者は正当な努力を拒む異常者、「パラ」の半地下一家は社会の波に乗り切れずに凋落した社会の犠牲者です。社会における人間についてこれだけリアルに描きながら他の黒澤明作品ほど人間性の奥底に切り込んでいるわけではない本作品にはわたしが娯楽作品につけることにしている最高点の8点しかつけられないのですが、本作品と韓国映画「パラ」を比較することは高度経済成長期の入口に立っている日本の倫理観とイギリスのEU離脱になぞらえてKOREXITとも呼ばれる韓国の自由主義陣営からの離脱を予見させる社会観や正義観を対比させてみると面白いかもしれません。
[DVD(邦画)] 8点(2020-03-08 09:36:42)
27.  パラサイト 半地下の家族
えらく評判がよくていろんな国際映画祭の賞をいくつか受賞していることと昨今の日韓の軋轢を理解し、隣国をより良く理解する一助にならないかと思って映画館に出向きました。結果は完成度という点ではかなり高得点をつけてもいいけれど、隣国を理解できるかという点においてはほとんど得るものがなありませんでした。それになんと言っても後味の悪さ、胸糞の悪さは半端ではありませんでした。このままで行けば本作品はオスカーの外国語部門にノミネートされるのではないかと思いますが、今まで日本の作品でノミネートされたり受賞に漕ぎ着けた作品は全て、多かれ少なかれ、日本をアピールするものでした。そうでない場合は、アニメ作品に顕著ですが、「魔女の宅急便」のように外国を舞台にしたりしています。でも本作品で韓国を写しているところだあるとしたらそれは階級格差なのか、作品の中盤で登場する多重債務男なのか。。。 鑑賞中半ばで隣に座っていた中年のアメリカ人男性が席を立ちました。エンドロールの時に後ろに座っていた若いカップルが「良かった!」と言ったので「ハリウッド映画のコピーじゃない。だったら字幕のないハリウッド映画を見た方がいい。」と言ったら納得していました。家に帰ってから「おくりびと」の巻頭の部分を見ましたが、やはりのっけから仏教の様式美とチ〜〜ンの音。。。本作品をあえて劣化コピーとは呼びませんが、監督も製作者もハリウッド映画を見まくって「こうでないといけない」という型を学んで模倣しているとしか思えませんでした。本作品の完成度に高得点を付けるのは構いませんが、世界の知られざる文化を紹介しているかいないかという点においてはオスカー受賞は別の作品であって欲しいです。過去に7点をつけた韓国作品の「シュリ」も同じで最近減点しようと思っていたのであらかじめ低い点をつけておきます。暴力と流血がダメな方にはお勧めしません。
[DVD(字幕)] 5点(2020-01-24 02:35:40)
28.  2人のローマ教皇 《ネタバレ》 
雲ひとつない晴天なのにローマ教皇が ベルゴリオ大司教と散歩する時に白い雨傘をステッキ代わりにしていたり、新旧の教皇がシークレットサービスが買ってきたピザにパクついていたり…くらいしか笑えるところはなかったですが周囲のアメリカ人は結構笑っていました。これはわたしの英語力の無さよりは仏教徒であるわたしのキリスト教の信仰心の無さに起因するもの…と言いたいですが実は本作品では英語、イタリア語、スペイン語が同じ程度使われていて最後に出てくるドイツ語の横断幕「DANKE!(ありがとう!)」を入れると4ヶ国語が使用されていて、字幕のない英語は英語圏に○十年住んだので問題ないけれど、他の3カ国語は旅行前の付け焼き刃から長くて数年かじったことのある言語ばかりなのでなまじチンプンカンプンの人より字幕に対する反応が遅い上に字幕の色が白だったので教皇の白い法衣と重なると読みにくいことこの上ありませんでした。この点を声を大にして糾弾したいです。日本語では黄色の字幕だといいですね。  全般的に「聖職者はどこまで人々の不幸に対して責任があるか…」みたいな重いテーマが描かれているのですが、ベルゴリオ大司教の「Entiendo? (わかったか?)」の掛け声とともにサッカーが始まったり、「僕たちは聖職者である前に人間なんだよね。」と新旧2人の教皇が一緒にピザを頬ばって許し合い、自分たちの弱さを認め合ったりとか、ほのぼの系の友情物語と言った方が適切です。2人とも深い心の傷を抱えていて、だからこそ人々の痛みがわかるローマ教皇たることができるのです。さて、フランシスコ教皇の次はルワンダの大量殺戮を目撃した黒人の大司教がローマ教皇かな? 不幸が起きることは望みませんが少しでも人々と痛みを共有したことのあるカトリック司祭によってこの地位は引き継がれていくことでしょう。
[映画館(字幕)] 9点(2020-01-08 11:32:28)(良:1票)
29.  HACHI/約束の犬
アメリカにいくつもある大都市それぞれの周辺にこれまたいくつもありそうなベッドタウンが舞台のお話しで1987年の日本映画「ハチ公物語」のリメイクですが飛行機の貨物として送られてきた高価な秋田犬の子犬がケージが壊れて受取人の住所を書いた紙とも泣き(?)別れになってあっさりとリチャード・ギアが演じる教授に引き取られるという話の始まりも嘘っぽいけれどもっと嘘っぽいのは教授の死後に野良犬の道を選んだ主人公ハチは狂犬病の注射は受けたのか、鑑札はどうしたとかの問題もなく、銀行口座を開設できたり信託責任者(ホットドッグ屋のおっちゃんと肉屋さん?)が任命されて野良犬を続けているんですよね。まっいいです。とてもアメリカ的です。作品の撮影は4頭の秋田犬俳優を使い、動物俳優虐待されないよう愛護協会の監視のもとで行われました。ワンちゃんたちの可愛さに免じてオリジナルからの減点は1点だけにしておきます。
[ビデオ(字幕)] 8点(2019-12-10 08:49:24)
30.  この世界の片隅に(2016)
アニメとコメディーには8点以下しかつけないことにしているわたしがこの点数というのはつまり満点でもないので申し訳ないのですが、もっと強烈なものをリアルな映像や本で読んでしまい、いちいちそちらと対比してしまったのでこの点数です。暮らしの手帖社から出ている「戦争中の暮らしの記録」でこの本は暮らしの手帖社がある限り絶版にならないし同社がなくなったら他社が版権を引き継ぐべき書籍です。かいつまんで言えば、この映画作品の中で主人公のすずがしている食べ物の工夫が書かれた分量にして何倍も掲載されている上に衣料、美容など、暮らしの手帖社の雑誌「暮らしの手帖」に網羅されている生活の工夫が戦時中にはいかにしてなされていたかが詳細に描かれているのがこの書籍です。この映画作品の原作者もおそらくこの本を手にして漫画作品中にどれを取り込もうか考えあぐねたと思います。一般の人々からの投稿による同書は映画作品中のすずと同じく戦時中の人々の生きるための精一杯の努力が描かれているのと同時にB29による空襲によって必死で支えた生活があえなく瓦解するさまも描かれています。そして本作品ですが、舞台は原爆が投下された広島の隣に位置する造船の街、呉市ですが、1945年8月の初め、「広島の実家に帰ろうか。」というすずを観客は皆、声に出しても出さなくても止めることでしょう。ここまで強く生きてきたすずの命が決してここで終わってはいけないと誰もが思うのです。これから広島と長崎への原爆投下を経て終戦に至るすずの生活は決して100%幸せではありません。これはもう、強い人間には神は耐えられるだけの試練を与えるとしか言いようがありません。でも、終戦の日を迎える前に国の内外であえなく命を落とした人も大勢いることを忘れてはならないと思います。
[映画館(邦画)] 7点(2019-08-25 05:06:35)
31.  ハチ公物語(1987) 《ネタバレ》 
動画サイトで断片を見て迷わず中古のDVDを購入しました。わたしは断然オリジナル派です。何が良かったかというとストーリーとその演出よりもなにも、江戸情緒が漂う大正から昭和初期の東京の風情がモノクロの当時の写真に色をつけて蘇らせてているように感じられたことです。流れる音楽も秀逸でした。作品の時代は日本にとって激動の時代だったのですが製作者たちは第一次世界大戦や世界恐慌など抜きにこの時代を描きたかったので犬を主人公にした映画を作ったのではないかと思うほど街のたたずまいから立て看板、人々の服装、地方から人々を受け入れて今では落語の中くらいでしか聞けず東京弁としては死滅しているのではないかと思われるべらんめい調東京弁などを楽しみました。そしてこの時代に現存した有名な犬と言えばもちろんハチ公です。こういう観点から作品を評価すればハチが死ぬ前に見た幻想シーンで秋田犬俳優が仲代達也に投げつけられて撮影されたシーンをリチャード・ギアの胸に犬俳優が背伸びして両前脚をのせるよく出来て自然な演技と比較してどうのなんて言えません。リメイクの舞台はアメリカ人の大半が知っているアメリカにはどこにでもある現代の都市郊外のベッドタウンです。よく知られているストーリーにも言及しておきましょう。上野教授が最後となる授業に出かける前に人間は感じない異変を感じて異常を知らせる行動を取ったり教授の通夜で位牌の前で泣き声を立てたりしたことからもハチは上野教授が亡くなったことを知っていたとわかります。人間にでさえ「この家にいると主人がまだ生きているような気がして。。。(妻)」や「ハチを見るとお父さんを思い出す。(娘)」のように自分にとって心地よい幻想を現実だと信じたい願望があります。ただ人間は「ご臨終」の意味を知っているし納棺から通夜、告別式、四十九日などの儀礼を経て好ましかった過去から自分を引き離して好ましくない現実に向き合って適応することを強いられます。犬や狼のように社会的な動物にはきっと同胞の「ご臨終」を意味する仕草か合図があってそれをハチに提示すればハチは未亡人のおじさんの家に収まったはずなのですが、悲しいことにハチには敬愛するボスである上野教授の死を犬語でもって知らされず、近親者の死に際しての犬式通過儀礼も無かったので「上野先生は亡くなったかもしれないけれどそうじゃないといい。」という思いが高じて「先生はきっと生きている。だって先生のご遺体も犬式葬儀も見てないもん。」という感じで上野教授の死の現実を受け入れずに9年間の渋谷駅通いをしたのです。ハチの愚かさではなく人間には許されない幻想を生き抜いた姿が涙を誘うのです。それにしても犬はやはり人間の最良の友人、そして秋田犬俳優とトレーナーの皆様、時代考証と美術担当の皆様、ご苦労様でした。
[DVD(邦画)] 9点(2018-05-29 04:35:49)
32.  ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 《ネタバレ》 
機密文書の内容は「3政権に渡って国民は騙されていた」というだけで最後まで詳しく明かされないません。地味な作りの作品という印象でした。というか、真面目に歴史を勉強したアメリカ人なら機密文書の内容は言われなくて知っているので必要ないのでしょう。表現や出版の自由は英語圏の国々では国家体制の根幹をなすもので、その意味では政府 v.s.ニューヨーク・タイムズ紙と政府 v.s.ワシントン・ポスト紙の法廷での争いも最初から結果は見えていました。でも同じ訴訟が日本で起きたらどうなるのか、あるいは法廷が支持率の高い政権や蝋燭デモの主張を忖度するような国でははどうなのか、考えさせられます。日本では本作のケイ・グラハムやベン・ブラッドリー、反戦主義者たちや終わり近くで登場する兄を戦場に送った若い女性のように人が死なないことが国益だということが明々白々すぎてこんな訴訟は今のところ起きそうにありませんが、日本政府がこのまま軍事装備を増強していけば遅かれ早かれ仮想敵国には絶対秘密の軍備の内容などを巡って機密漏えいが国益に反するか国民の知る権利のほうが大切だとかの議論は起きるでしょう。それにしても権力の奢りというものは怖いです。それから、ニューヨーク・タイムズ紙のすっぱ抜きのエピソードはワシントン・ポスト紙から見ると「なぜか」ですが映画の視聴者から見れば経緯は明らかで記者クラブ制のない国ではこんなことも行われるのだと驚きました。メリル・ストリープは年を重ねても色っぽくて相変わらず理知的だし、仕事人間の役では右に出る者のないトム・ハンクスが演じる編集主幹のベン・ブラッドリーが自宅の一室にこもって部下と仕事をしている時に「一杯25セントです。」と言ってレモネードを差し入れた小学生の娘に「50セント払うぞ!」と言うシーンが微笑ましかったです。
[映画館(字幕)] 8点(2018-02-01 11:45:02)(良:1票)
33.  インフェルノ(2016)
点数少し甘めかな。原作を読んであまり好きになれなかったけれど、フィレンツェ、ヴェネチア、イスタンブールと世界の名所で贔屓にしているトム・ハンクスが活躍するとあっては見ないわけにはいきませんでした。原作を好きになれなかった理由は視点がころころ変わるせいで誰が誰の味方なのか敵なのかわからなくなったからです。わたしはワトソン博士によって語られるシャーロック・ホームズのように視点が固定したオーソドックスな推理物が好きなのですが、この点、映画は登場人物の頭の中を通常は描けず、カメラと台詞という客観でしかストーリを語ることができないので、それだけでも原作を超えていると言えます。それから原作にはない二組の恋愛も時間の制約があるため謎解きトリックを割愛せざるを得ない映画に導入して成功しているように感じました。(ラングドン教授=トム・ハンクスは007ではないので今後は恋愛できませんよ。)原作では一組だけをきわめてあっさりと描いています。というわけで、原作・映画のそれぞれの利点に納得しながら世界的な名所旧跡で展開する冒険にある程度満足しました。ただ、トム・ハンクスのイテテや出血の場面は見たくなかったです。
[DVD(字幕)] 7点(2017-01-26 13:53:09)
34.  風立ちぬ(2013)
わたしは人間と人間の手足頭脳の延長としてのメカとの関係を描いた作品(例えば「アポロ13号」や「ハドソン河の奇蹟」)に高得点をつけることにしていますが、堀辰雄のセンチメンタルな私小説と同じタイトルのせいでずっとこの作品は恋愛物だとばかり思い込み、長らく鑑賞をサボっていました。あるきっかけで零戦戦闘機というメカを追求した技術者の話だと知って即レンタルしましたが、やはりタイトルに沿った恋愛の脚色が邪魔に感じられました。実際の堀越二郎は作品の中の同姓同名の人物と違って愛妻との間に多くの子宝に恵まれ、戦前には貴族にも列せられて公私ともに恵まれた人生を送ったようですが、ただ一点、心血を注いで作った零戦戦闘機が特攻隊の若者を乗せて敵の軍艦を百発百中で撃沈する道具に使われ、つまり破壊されることが目的で使用されてしまったという、実際の堀越二郎がおそらく抱いていたのに違いないやり場のない怒りや悔いを恋愛抜きでもっと掘り下げて描いてくれていれば良かったのに、と思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-10-12 13:20:39)
35.  愛を読むひと
ケイト・ウィンスレットのアカデミー賞主演女優賞受賞の後でDVDを借りて見た時にはあまり感慨がなかったのに、原作の日本語訳「朗読者」を読んだ時には相当の感慨があってDVDを借り直しました。  法律運用の上では文盲は処罰の相当な軽減理由になるはずですが、おそらく言語もドイツ語ではない現在のルーマニア領から未成年の時にドイツ流れてきてどの職場でもそれなりに評価されながら管理職に抜擢されそうになると転職してきたハンナの意地は「文盲だということがバレればわたしはこの国の下層階級の人々かそれ以下。」という国民のほぼ全員が読み書きができる島国日本に住む日本人には想像を絶する事実から来ているようです。これに対するマイケルの反応もこれでしかありえない、ハンナが読み書きできるようにするというものでした。でも、多民族がひしめき合うヨーロッパで国境を越えて流れてきた者がお隣の国の言葉を何とか喋れても読めないのは不思議でも何でもなく、マイケルが教授(原作では裁判官)に事実を言って情状酌量の可能性を尋ねなかったのは。。。やはり日本人の理解を越えているのでしょうか? その後にマイケルは贖罪のような行為を取りますが、ということはやはりドイツにおいても相談してみるべきだったということなのでしょうか?  遡及効というのはある事件に事件発生後に制定された法律が適用されて効力を持つことで、大多数の事件については原則として遡及効はありませんが、敗戦によって第三帝国が滅んで全く新しい政府が発足したドイツでは戦犯や戦後処理に絡んでかなり哲学的な議論が生じたはずです。哲学者を父とし、ハンナとの満たされない関係によって心理的に思春期に留まっているマイケルが学究を口実に大学に残り、裁判官として現実社会を歩む妻と離婚してハンナに尽くすようになる内面の過程は映画では描ききれていないのでこの点数です。
[DVD(字幕)] 7点(2016-09-26 13:18:03)
36.  ハドソン川の奇跡 《ネタバレ》 
町の映画館で見た後、見逃したエンドロールを見にIMAX劇場に行って来ました。こういう話は大好きです。素手だと本当に弱い動物の人間と人間の手足や頭脳の延長としてのメカとの関係、特にメカと共に未曾有だの想定外だのに直面した際の人間の優れた判断や決して諦めずに事態を打開しようとする勇気の話というのはたまらないです。東電福島第一原発の誰かの話も作って欲しいです。同じような基準でかつて「アポロ13号(これもトム・ハンクスが主演です。まだ見ていない方は必見!)」に満点をつけたのでこの作品も、と言いたいのですがどなたかが指摘してくださっているように邦題に問題があるのでマイナス1点にします。クリント・イーストウッドさんごめんなさい。それから2度目の鑑賞では、悪役視される政府当局者から、どんな事件からも後世のパイロットが教訓にできる内容を引き出そうとするプロ意識を感じました。  エンドロールの本物のサリー機長とその夫人を含むオールスター登場ですが、撮影チームが購入した1549便と同型の廃機に映画撮影用のお化粧が施され、その前で撮影されたようです。同便に搭乗していた旅客にはニューヨークからシャーロットに行く人、帰る人、乗り継ぎの人等がいたと思いますが、その中の多くが乗客役として映画撮影に協力することとサリー機長に再会するために自腹を切って出演料なしでも駆けつけたそうで心が温まります。それから救助に一番乗りで駆けつけたNY WATERWAYの太った船長は実際に一番乗りで駆けつけた船の船長で乗客と同様の友情出演だそうです。  監督クリント・イーストウッドは浪花節調や演歌調の作品(例えば「マディソン郡の橋」や「ミリオンダラーベービー」)が得意なのかと思ったらこういうノンフィクション作品も作れるんですね。でもどんなサクセスストーリーや本作品ような「終わりよければ全て良し」の英雄譚も事実を掘り下げることによって浪花節調ではなくても真のヒューマンドラマ、例えばプロフェッショナリズムなどが浮き彫りになってくるものなのですね。今後もできる限りこういう作品を作り続けて欲しいです。  NYPD(ニューヨーク市警)、FDNY(ニューヨーク消防)、NY WATERWAY(短距離旅客運搬の商業ライン)などがこぞって不時着した旅客機を目指して救助に駆けつけるシーンは圧巻でしたがNY-NJ Commuter Ferryが現場近くで航行していたはずなのに一隻も見えず、当時ニュージャージー州に住んでいたわたしとしては不満です。でもこれは減点対象ではありません。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2016-09-26 06:24:45)
37.  陰陽師 《ネタバレ》 
視覚的にはかなり楽しませてもらいました。でも平安宮中と貴族の装束と館以外の視覚効果、例えば視覚化された悪霊などは余計です。陰陽の頭(真田広之)、陰陽師(野村万斎)、龍笛の名手の貴公子(伊藤広明)、この三人は脚本さえよければ怪獣映画ばりの視覚化なしに人と悪霊が共存していた平安朝の雰囲気を出せるだけの実力がある俳優だと思います。それにしても真田広之は時代劇に出たらチョンマゲ姿だけではなく平安貴族でも悪霊の使者のざんばら髪でも、どんな格好をしても素敵です。彼を主演にできる良い脚本を待っています。この作品の役柄では今でいう厚生労働大臣が地下鉄にサリンを撒いているようでわけがわからないです。わけがわからないのは野村萬斎が演じる安倍晴明も同じで時代は違っても陰陽寮勤務の公務員なんだから公務員らしい言動をして欲しいです(安倍晴明は自分の上司に勝てる自信がなかったので言っただけなのかもしれませんが言のほうにかなり問題あり)。三人の男優の中で言動ともに地位・身分と整合性がある役を演じたのは伊藤広明だけだったように思われます。主役ではありませんが芸術(笛)の才あり、恋した女性に対する思いやりあり、最後には武勇も見せるといういい役回りだったです。今の世なら安倍晴明の発言はメディアに叩かれて関連ブログが炎上し、陰陽の頭の件は人事院では済まずに総理大臣(平安時代の太政大臣)が採用責任を問われる事態です。藤原道長よりも百年ほど前の話らしいですが、凝った映像とキーになっている美しい龍笛の音はさておき、ストーリーに関しては「一体何やってんねん。」が偽らざる感想です。今昔物語にあるとかだったら評価を変えるかもしれませんが。
[DVD(邦画)] 5点(2016-01-18 12:25:39)(良:1票)
38.  インビクタス/負けざる者たち 《ネタバレ》 
わたしが見た映画案内では人種融和のためではなく、負けに負けていたナショナルラグビーチームを大統領が掛け声をかけて立て直した話しと紹介していたので最初からそのつもりで鑑賞しました。何れにしてもネルソン・マンデラの不屈の精神が核であることは確かでしょう。「これが敗北の味だ。乾杯しようぜ。」と言う破れかぶれの主将フランソワがマンデラ大統領との会見を経てチームメートと訪れた離れ小島の刑務所で収監時のマンデラの幻影を垣間見、その精神の一端に触れ、一念発起頑張るという物語はまさにクリント・イーストウッド節です。この映画で語られる話があったのは1990代ですが、あれから様々なことがありました。その中でも筆頭に挙げることができるのは日本のナショナルチーム(と言おうか日本に縁がある人々からなるチーム)が負けざるチームだった 南アフリカのチームを下して世界中から「大金星」との賞賛を受けたことでしょう。そのマンデラ氏も既に故人です。さらに1998年の長野オリンピック開会式で小澤征爾氏の指揮による五大陸合唱の一拠点だった南ア喜望峰で白人と黒人が黎明の中で肩を並べて歌っている象徴的な場面を衛星中継で見たわたしとしては古今の感を覚えます。
[DVD(字幕)] 7点(2015-12-20 13:01:34)(良:1票)
39.  オーケストラの少女 《ネタバレ》 
いかにもアメリカ的な能天気な作品です。社会のどこかに眠っている本来なら輝く才能をもった人材が適材適所で活躍して人々賞賛を得ることができれば経済恐慌も不景気もなんのその、という考え方は本当にそうあってほしい理想です。結局、現実では大恐慌後のアメリカはルーズベルト大統領のさしがねで暗号を解読してあらかじめわかっていた日本軍による真珠湾攻撃看過して戦争へ突入することによって失業問題などを解決するしかなかったのですが。。。失業音楽家たちが大指揮者ストコフスキーの家に忍び込んで体当たりで演奏を披露してストコフスキーを否応なしにとりこにしてしまうというようなおとぎ話で何もかもうまくいけばいいですよね。この曲(リストの「狂詩曲(ラプソディー)第4番」)もパトリシアが最後に歌うヴェルディのオペラ「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」のアリアも難曲中の難曲のようで、正式のコンサートマスターや声楽専門の教師なしに演奏したり歌ったりできるというのも正におとぎ話です。現実と正反対の夢を見させてくれた指揮者ストコフスキー(本人)とパトリシア役の女優さんに喝采!
[DVD(字幕)] 10点(2015-12-14 14:00:11)
40.  容疑者Xの献身
「石神は人を殺さない。殺す前に殺さなくてもいいように解決策を見つけるだろう。」という湯川。一見幾何の問題に見える関数の問題にはまってしまったんですね。全編を通じて堤真一の演じる不器用な数学者の演技にはまってしまいました。でももし石神が数学者ではなく、昨今の法律家大量生産のせいで仕事にあぶれて安アパートに住むしかない弁護士だったら落ち着いて「靖子さん。あなたがやったことは正当防衛。それが立証されれば無罪。悪く転んでも過剰防衛で微罪ですよ。」とアドバイスしたはずなんですけれどね。こんなこと法律の素人のわたしでも言えるけれど数学者には言えないのでしょうか?どんなに好きな相手でも正当防衛以外で人殺しをしたら百年の恋も冷めるし、逆を言えば恋が冷めないのなら優秀な弁護士に依頼して無罪を勝ち取る余地が十分にあるはずです。最初のニュースと爆発現象を説明する湯川のかっこよさ、雪山から見る広大なパノラマ、そして堤真一の好演のせいで点数は甘めです。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-22 07:02:47)
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