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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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21.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
現在のような猛暑の最中に観る映画じゃないよね(笑)、刑事二人が下着姿にまでなって苦労しての佐賀までの列車行から始まって、いくら昭和三十年代と言っても扇風機ぐらい置くもんじゃない?と呆れる旅館での張り込み、とにかく二人の刑事の汗まみれの姿を延々と見せられるのはちょっとしんどい。冒頭でラジオから聞こえる佐賀の天気予報で「本日の最高気温は35度の見込み」といっているけど、昭和三十年代にそんな猛暑があったとはサプライズです。この予報自体はもちろんフィクションでしょうけどね。 この映画のほぼ三分の二はヒッチコックの『裏窓』を彷彿させるいわば“覗き”のシーンの連続。対象者の家の真ん前に丸見えできる旅館があるなんて笑っちゃいますけど、あんだけ堂々と窓から身をさらしたら気づかれそうなものですけどね。拳銃を所持している可能性がある強盗殺人犯が逃走中なら、ふつうは大々的に指名手配されるのは間違いなしですしね。でも何も起こらない日常を飽きもせずに観させてくれる橋本忍の脚本もですが、一時間半あたりまでほとんどセリフもない高峰秀子の使い方にも驚かされます。そこからの二十五分はまるで別人のような情念を見せてくれるのですけど、この激しいギャップが幸薄い女としての高峰秀子のキャラを強調しているんじゃないでしょうか。 東京に出てきた青年が貧困から抜け出せなくて犯罪に走るといういかにも松本清張らしい今となっては古臭いプロットであるのは否めませんけど、昭和三十年代という中途半端に近代化しつつある東京と地方の世相が丁寧に撮られているのは高評価です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-07-02 21:58:58)
22.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
今観ても、アフリカ・ロケの映像は一見の価値ありです。何度も急流に翻弄されるアフリカの女王号はホントに船を流してなかなかの迫力ある映像ですが、もちろんボギーやヘプバーンはもちろんスタントも乗っていない無人船なのはミエミエです。これらは名カメラマンであるジャック・サーティースの匠の技なんですが、肝心のジョン・ヒューストンは現場をほったらかしてハンティング三昧のご乱交、つまりこれがイーストウッドの『ホワイトハンター ブラックハート』の元ネタというわけです。 序盤は割とシリアスに始まるけど、ボギーとヘプバーンの女王号での河下りが始まるとたちまち大人のラブコメになっちゃうのが面白い。ボギーは本作でオスカー受賞したわけですが、やはり彼は『カサブランカ』みたいな気障なキャラより粗野で豪快だけど気の良い漢を演じた方が合っています。でも彼のフィルモグラフィには、このパターンの役を演じた例は意外と少ないんです、まさに本作でのアフリカの女王号船長こそが彼のベスト・アクトだったのかもしれません。ヘプバーンも宣教師の器量の悪い妹というのは、彼女にはうってつけだったんじゃないでしょうか。でも気位の高い英国女がボギーのような酒浸りの男に惚れちゃうのはまあイイとしても、ほとんど揉めることもなくまるでJKのラブコメみたいにラストまでイチャイチャするというのは、なんか甘い脚本のような気もします。まあ原作が、ホーンブロワー・シリーズで有名なセシル・スコット・フォレスターの小説だというところも驚きですがね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-11 20:46:31)
23.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54)
24.  眼には眼を 《ネタバレ》 
設定は地名や通貨名からレバノンあたりみたいですね。とある町の病院に勤務する外科医バルテル=クルト・ユルゲンス、有能だけどいかにも傲岸不遜という感じです。このフランス人医師を、どこから見ても典型的なドイツ人のクルト・ユルゲンスが演じているというのがミソです。この人物の背景説明はいっさい無いんですけど、最近赴任してきたばかりなのか現地の言語や地理を皆目理解していなく、これが後ほど彼を地獄に落とす上手い設定なんです。この物語には圧倒的に多数派である現地人と少数派のフランス人およびイタリア人が登場しますけど、民族間の交流や良好な人間関係は存在しない異様に冷たいコミュニティであるのが特徴です。 前半は短いシークエンスを繋いでゆくストーリーテリングになっていますが、劇伴音楽をいっさい使わず徐々に高まってゆく緊張感は息詰まるほど。西洋文明とアラブ社会の対立・反目という視点を持って撮っている感じが濃厚ですけど、ボルタクの妻の死は不幸な偶然が重なった不可抗力としか言いようがなく、こういうアクシデントは人種・宗教とは関係なく誰にも降りかかる可能性があるものです。この映画の様にアラブと西欧の対立に持ってゆかなくても成り立つお話しですが、遠隔の村でのエピソードなんかには監督・製作者の西欧人らしい視点というか偏見すら感じてしまいます。まあまるでエイリアンのように通じあえないバルテルとアラブ人という図式が、サスペンスを究極まで高めているのは確かですけどね。 そしてあの“世界一怖いロープウェイ”を二人が降り立ってから、ガラリと雰囲気が変わり、そして“映画史上最凶のロードムービー”が始まります。この延々と続く荒涼とした砂漠というか荒地の風景には戦慄させられますが、実はこれはスペインでロケされたそうです。60年代にさまざまなマカロニ・ウエスタンや『アラビアのロレンス』のロケ地になりますが、スペインにこんな土地があるとはサプライズでした。バルテルが颯爽と着こなしていたライト・ブルーのスーツがどんどんズタボロになってゆくのがリアルです。そして鳥瞰で見せられる永遠に続くかのような荒地、 “絶望というものを画にしたらこうなる”という映画史に残る残酷なラストシーンです。 ここまで徹底的に人間不信というものを見せてくれる映画は、滅多にあるもんじゃないです。私の中では、本作はサスペンスじゃなくホラーです。
[DVD(字幕)] 9点(2021-12-03 21:25:55)(良:1票)
25.  翼よ!あれが巴里の灯だ 《ネタバレ》 
傑作揃いの50年代ビリー・ワイルダー映画の中で、もっとも影が薄いのが本作、たしかに言われなければワイルダー監督作と気が付かないほど他作品とは毛色が違う気がします。これはひとえにワイルダーがプロデューサーではなく、いわゆる雇われ監督だったからかもしれません。そして25歳だったリンドバーグを48歳のジェームズ・スチュワートが演じているというちょっと無理くりなキャスティングによるところも大でしょう。でも、実際に飛行機操縦技能を持ちB-24爆撃機を操縦して大戦に参戦して大佐にまで昇進したスチュワートぐらい、ハリウッドでリンドバーグを演じるのに相応しい俳優はいなかったんじゃないでしょうか(年齢には眼をつぶるとしてね)。ちゃんと“スピリット・オブ・セントルイス”の飛行可能なレプリカまで製造してるし、航空映画としては観るべきところが多いと思います。 ストーリーテリングは離陸してからは地上の関係者たちの反応はいっさい見せず、独り言をひっきりなしに呟いているリンドバーグと彼の過去の回想が続き、中年のリンドバーグを延々と見せられるところに評価が下げられる所以があるのかな(笑)。まあこれはスチュワートが主演なんだからしょうがないんですけどね。噂では本来はジェームズ・ディーンが主演する構想だったけど、彼の事故死で実現しなかったとのこと。たしかに興味深い話だけど、リンドバーグを演じるにはディーンの身長がちょっと足りないんじゃないかな、その点のっぽで有名なスチュワートはうってつけだったのかもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-10-23 22:54:39)
26.  情婦 《ネタバレ》 
どんなジャンルを手掛けても傑作をモノにしちゃうビリー・ワイルダーがアガサ・クリスティーのミステリーに挑戦。まるでヒッチコックが撮った様な極上の英国法廷劇になったわけですが、意外にもヒッチコック自身はアガサ・クリスティー原作を映画化したことはありません。チャールズ・ロートンを始め英国俳優が顔を揃え、おまけにマレーネ・ディートリッヒまで出てくるととてもハリウッドで製作された作品だとは思えません。唯一のハリウッド・スターと言えるのはタイロン・パワーですが、彼は次作の『ソロモンとシバの女王』を撮影中に急死していますから、本作が実質的に遺作なわけです。しかも死因が心臓発作だったというところは、本作からの因縁を感じてしまいます。彼は単なるイケメン・アクション俳優としてしか認知されていなかったけど、本作で見せた演技は演技開眼と呼べる好演だったので惜しまれるところです。因みに、ヴォールがフレンチ夫人と二度目に邂逅する映画館で上映されていた映画は、タイロン・パワーがジェシー・ジェームズを演じた『地獄への道(39年)』で、いかにもワイルダーらしい楽屋オチです。 そりゃあワイルダー映画ですから脚本は完璧で、チャールズ・ロートンと看護婦エルザ・マンチェスターの掛け合いは実生活でも夫婦だけあって傑作です。マレーネ・ディートリッヒもさすがの貫禄、例のシーンでの彼女の演技は完璧ですっかり騙されてしまいました。まああんまり詳しくは書けませんけど、50年代の作品としてはかなり強烈などんでん返しだったんじゃないでしょうか。 この映画の唯一最大の欠点はやはり『情婦』という邦題で、どこからこのワードを思いついたのか謎でしかありません。自分はこの邦題のおかげで長いこと敬遠してしまいましたが、同じような経験の人も多いんじゃないでしょうか。“内容が伝わらない悪センス邦題ランキング”があるのなら、間違いなくベスト3以内にランクインするでしょう。
[ビデオ(字幕)] 8点(2021-09-30 23:32:03)
27.  現金に手を出すな 《ネタバレ》 
古いモノクロ映画と敬遠するなかれ、ギャング映画好きなら絶対見逃してはならない一本です。わたし、恥ずかしながら “グリスピ”というのはジャン・ギャバン=マックスのファミリーネームだとずっと思っていましたが、実は“カネ・あぶく銭”みたいな意味の仏語スラングなんだそうです。これを“現ナマ”とルビ付きで邦題にした配給会社の担当者のセンスはたいしたもので、水野晴郎とは偉い違いです。貫禄を擬人化したようなジャン・ギャバンは渋いだけじゃなく女性に対する洒脱さがまた魅力的で、これでモテないはずがないじゃないですか。弟分リトンを隠れ家に招き入れてラスクを肴にワインを飲んで、二人ともお行儀よくパジャマに着替えて歯を磨いて寝るところまで丁寧に見せるリアリズムは、さすが名匠ジャック・ベッケルです。一部の隙もなく抜け目ない暗黒街の大物なのに相棒のヘマで窮地に陥るというのは、この後のジャン・ギャバンの演じるキャラの一つのパターンとして定着した感があります。こういうエスプリが効いたキャラは、ハリウッドのギャング映画や日本の任侠ものではまずお目にかかれない、フランス映画ならではのお楽しみなのかもしれません。リノ・ヴァンチュラは本作がデビュー作だし、ジャンヌ・モローも日本ではスクリーン初登場、そういう歴史的意義もある一編です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-30 23:32:19)
28.  深く静かに潜航せよ 《ネタバレ》 
『Uボート』登場以前に製作された潜水艦映画の中ではかなりの良作、まるで『白鯨』のパロディのような荒唐無稽な展開ではあるが、ロバート・ワイズが職人の腕で見どころのある作品に仕上げています。 海軍全面協力でガトー級潜水艦の実物が使われて、意外と高速で海上を疾走する姿や内部の細かいメカなんかも丹念に見せてくれます。このクラスはとっくに米海軍では現役引退した骨とう品ですけど、他国では戦後に供与されたまだ第一線で配備されていたころですね。船員室や食堂などが狭いながらもきちんと整備されていて、さすがUSネイヴィー、同時期のUボートや伊号潜水艦とはえらい違いです。そして日本じゃどうあがいてもモノにできなかったレーダーを装備、波間に先っぽだけ出ている潜望鏡でも探知できたっていうから、そりゃ日本が勝てるわけありません。対する帝国海軍の駆逐艦アキカゼ、豊後水道で米潜を四隻屠ったという触れ込みですが、VFX用プロップなのに艦影がフレッチャー級駆逐艦と同一なのはお粗末。またソナーで米潜を追い詰めますけど、情けないことに帝国海軍には水中聴音機しかなく最後までソナーを開発できなかったというのが史実です。だいいち、直進してくる駆逐艦のような細い船体に真正面から魚雷を発射しても、相手が進路を変えない限りまず命中しないし、命中しても角度が浅すぎて魚雷が弾かれてしまう確率が高い。つまりクラーク・ゲイブルの必殺技は昔の少年漫画に出てくるようなレベルのお話しなんですが、それをここまで説得力あるというかもっともらしいお話しにできたのは、ひとえにロバート・ワイズの力量の賜物と言えるでしょう。人間ドラマとしては艦長と副長の対立という『ケイン号の叛乱』に通じる緊迫感があるテーマですけど、なんかゲイブルは意外とまともでランカスターもほとんど艦長に逆らわないし、拍子抜けさせられた次第です。そしてなんか物足りないなと感じてましたが、本作だけでなくハリウッド製の潜水艦映画には潜水艦特有の密室性や閉塞感が感じられないんですね。それもお国柄かな?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-06 22:32:37)
29.  憲兵と幽霊 《ネタバレ》 
中川信夫と天知茂の初顔合わせ作。二人はこの後新東宝倒産までの三年で数々のプログラム・ピクチャーでタッグを組みますが、その中には『東海道四谷怪談』のような傑作もあります。 怪談映画のマエストロである中川信夫ですのでちょっと意外ですが、本来は憲兵隊を舞台にした硬派スパイミステリーとしてスタートした企画に、お約束の社長・大倉貢からの無理強いで怪談要素が詰め込まれることになったそうです。たしかになんか怪談風味が薄いなあと観てて感じましたので、「そういうことか」と納得した次第です。天知茂の悪徳漢ぶりは彼のフィルモグラフィ中でも屈指のレベルです。でも後半で霊に苦しめられるようになってからの演技は、これぞ『東海道四谷怪談』の伊右衛門の原型なのかと感じます。その天知にハメられて刑死するのが中山昭二なんですが、兄の無実を晴らすべく同じ憲兵隊に志願する弟役まで中山昭二が演じるというのがいかにも新東宝らしい、お前ら双子だったのかよ! とは言ってもローアングルに拘る映像や不安定な構図のカット割りなど中川信夫らしさは堪能できます。ラストの墓場のシークエンスも、やっと中川怪談らしくなったなという感じでした。でも、やはり天知の軍事スパイ・シークエンスと怪談噺とのまとまりがイマイチなのは否めないところです。まあ当時の新東宝・プログラム・ピクチャーとしては標準以上の出来だったかなと思います(これでも)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-06-03 22:25:54)
30.  OK牧場の決斗 《ネタバレ》 
“OK牧場の決闘”といえばジョン・フォードの『荒野の決闘』はじめ数々の映画の題材となった、言ってみればアメリカの“忠臣蔵”みたいなもんでしょう。そして本作は50年代を代表する二大ハリウッド・スター、バート・ランカスターとカーク・ダグラスの生涯で二本しかなかった共演作の一つでもあります。現代で言えばジョージ・クルーニーとブラッド・ピットの共演、いやこの例えはちょっと微妙ですね、ニューシネマ時代のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの共演に匹敵すると言った方が適切でしょう。もっと共演作があった様なイメージがありますけど、二人とも独立プロを主宰する身の上で協力しあうのはなかなか難しかったのかもしれません。 フランキー・レインが唄う主題歌は全西部劇で一二を争うぐらい有名で、よく聞くと歌詞がナレーションの役目も持っているところが面白い。ジョン・スタージェスの演出はケレン味たっぷりでテンポも良いのですが、ドク・ホリディとケイトの関係以外はけっこう人間関係の描写は飛ばし気味で、ワイアット・アープと結婚寸前までゆくローラなんか前半に登場する女賭博師とは思えない、全然別人かと思っちゃいますよ。まあOK牧場の決闘と言ってもヤクザ同士の果し合いみたいなものなんですけど、決闘の朝に決戦の場に向かう四人の姿が惚れ惚れするほどカッコイイのは事実。このシーンは、よく考えると『ワイルドバンチ』のあのシーンの元ネタなんですね。 そしてランカスターを完全に喰ってしまったダグラスのドク・ホリディの哀愁に満ちたカッコよさ、これこそカーク・ダグラス生涯最高の当たり役だったと言えるでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2021-04-09 22:23:57)(良:1票)
31.  大怪獣出現 《ネタバレ》 
本作に登場するモンスターはその独特な姿形で古くからファンには知られている存在ですが、設定は古代に生存した巨大軟体動物=カタツムリが蘇ったとしています。でもあの巨大な両眼はガチャピンにしか見えないのは自分だけかしら? 主人公が軍人将校でモンスターと戦う以外はヒロイン役のナンパに励むという50年代ハリウッド製SF・モンスター映画の定石はきちんと踏まえています。今までこのモンスターは海から出てきたんだと思っていましたが、舞台設定はソルトン湖という琵琶湖の1.3倍というカルフォルニアの塩水湖でした。この湖は20世紀初頭に低地に洪水が流れ込んで形成されたそうですが、現在では環境破壊と塩分濃度の上昇で消えゆく湖となり“北米大陸のアラル海”“絶対に行かないほうが良いリゾート”“カルフォルニア州の最貧地帯”などと呼ばれる悲惨な状態になっているそうです。50年代まだリゾートとして賑わっていたころの貴重な風景であるわけですが、岸辺なんかどう観てもどっかの海岸で撮影したろ!という映像があるのはまあご愛敬ってことで。保安官が湖の周囲の宿に遊泳禁止を告げて回るところなんか、『JAWS』の原型を観たような気がしました。 ところがこの映画期待に反して(?)意外ときっちり撮られているんです。主演のティム・ホルトは『駅馬車』や『黄金』などの名作に出演していた名脇役ですし、ヒロインのオードリー・ダルトンも『旅路』なんかにも出ていたしっかりしたキャリアの女優です。二人の恋愛噺は必要最小限に抑えて、発見された怪物が塩水湖から運河を通って拡散してゆくのを防ぐ闘いがシステマティックに展開されるのを、テンポよく見せてくれます。運河の水門に怪物の殻が挟まれて割れてゆくところなんか、他人事(?)ながら生理的にゾワッとくるものがありました。オールドミスの電話交換手が映るたんびに実家の母親に電話しているなど、50年代のこの手の映画にしては珍しくギャグっぽいところもあります。とはいえ所詮は巨大なカタツムリで、爆薬で吹き飛ばされ銃で殺され蒸気を吹きかけられて退散、要はちっとも強くないんです。『大怪獣』なんてのは誇大広告もいいところで、そこがこの映画の最大の弱点です。原題なんて直訳すると『世界に挑戦したモンスター』ですからね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-03-12 20:57:09)(良:1票)
32.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 
確かにニトロを積んだトラックが動き出すまでが長い長い、でもそれだけの尺を使って決死行に挑む四人と酒場にたむろする食い詰め男たちのキャラをじっくりと見せていると考えることもできます。イブ・モンタンほか四人のドライバーたちの出自も仏・独・伊と別れ、中でも独・伊のコンビはこの映画でだんだんと感情移入できるようになる唯一のキャラなんじゃないでしょうか。半面モンタン・バネルの仏コンビは、どっちもパリの裏社会で飯を喰っていたという連帯感と兄弟分感覚があったのにバネルの本性がむき出しになって関係がどんどん崩れてゆき、最後には立場が逆転してしまいます。モンタンだって単純なヒーロー像とはほど遠く、重油の池でバネルを轢くところなんかはどう観たって冷酷な男で、当時のハリウッド映画では決してお目にかかれないキャラでしょう。 まあとにかくも緊張感だけはそりゃ半端なく、50年代と言わずオールタイム仏映画の中でも三本の指に入るサスペンス度だと思います。撮影もトリックを一切使われていなく、あの落石の爆破や張り出し足場の崩落などはもうそのまんまを見せていますって感じ、油田火災のシーンだってどこかで本当の火災現場を見つけてフィルムに収めたとしか思えない迫力です。そして酒場で踊る人々と蛇行するトラックがオーバーラップするラスト、『美しき青きドナウ』の使い方としては『2001年宇宙の旅』と双璧をなす強烈さだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-02-18 20:02:47)
33.  めまい(1958) 《ネタバレ》 
子供のころTV放映で観ていて、ジェームズ・スチュワートが幻覚でうなされるシーンで怖さのあまりそこで観るのを止めた強烈な記憶があります。この歳で見返して観ても、怖さはともかくそのシュールさはなかなかのものです。 ストーリー展開は『レベッカ』を彷彿させるホラーというかオカルチックで、やっぱゾクゾクさせてくれます。マデリンが転落死してからのジェームズ・スチュワートはもう廃人状態、予備知識なしで観ていたらこの「お話しはどこへ行ってしまうんだろう?」と不安になるでしょう。ところがここからが原作のせいか大味な推理小説の謎ときみたいな感じになってしまうのが残念なところです。ヒッチコック自身がこの作品の出来には満足していないのは、意中の女優ではなくキム・ノヴァクを起用せざるをえなかったということだけではないでしょう。だいたいからして、マデリンの身代わりを首尾よくこなしたジュディが犯行後もスチュワートの行動範囲でウロチョロしているってのは、あまりにご都合主義が過ぎるって。主人公を助けるために登場させているキャラとしか思えないミッジが、中盤以降姿を見せないってのもどうなんでしょうか。そしていちばん納得がいかないのは、スチュワートが出会って恋したのはマデリンのふりをしたジュディであって、マデリンとは一面識もないはずだってことです。ジュディ=マデリンと思い込んでいた彼がジュディの正体を知ったあと、ジュディと会ったこともないマデリンの区別がつかなくなってしまったと解釈するしかないですね。ここで彼の精神は完全に崩壊してしまっており、もしエンドマーク後も物語が続くとしたら、今度は本当に廃人になって病院送りというお話しになるんじゃないかと妄想してしまいました。そう考えると、この映画の幕の閉じ方にはけっこう怖い意味があるような気がしてなりません。 私が鑑賞したのは修復されたレストア版でしたが、復元されたカラー映像の美しさには驚嘆しました。とくに原色のカラー設計が秀逸で、前半で金髪のキム・ノヴァクの背景には深紅を配するところなんかが素晴らしい。金髪に赤は映えるんだってことは、さすが金髪フェチのヒッチコックは判ってらっしゃったみたいです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-15 20:17:17)
34.  最高殊勲夫人 《ネタバレ》 
増村保造・若尾文子コンビのコメディと言えば、やはり本作が代表作(ていうか、このコンビでほかにコメディってあったっけ?)。若尾はまだ伸び盛りの若手女優で、増村は洋行帰りの若き大映のエース監督、60年代増村作品のドロドロ風味は微塵もなく、スクリューボールと呼べるほどのスピーディーな展開のラブコメであります。この頃の若尾様は演技力よりも輝く個性が持ち味でして、本作のキャラみたいな因習にこだわらない合理的で活発な女性を演じられたら観る方はメロメロにされてしまいます。脇を固める役者たちがその分それぞれの持ち味を出して若尾様をサポートしていて、とくに船越英二と宮口精二は好演でした。川口浩も若尾様と共演すると彼の魅力が最大限に引き出され、育ちの良さをこれほど自らの個性にできた俳優は彼のほかに見当たらないでしょう。舞台となるオフィスは丸の内という設定で、デートや会食の場面が何度も出てきますがそこは丸ビル地下街を彷彿させます。この地下街の風景は撮影された昭和34年ではまさに最先端だったでしょうけど、その雰囲気や活気は現代でも通用するモダンな撮り方だと感じます。ストーリー自体は「そんなアホな…」と突っ込みたくなるところですが、観客にそれを許さないスピーディーなストーリーテリングが重要なんだとさすが増村は良く理解しておいでです。彼にはもっとコメディを撮って欲しかったな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-05-31 21:14:48)
35.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
いくら晩の19時といったって、パリのど真ん中であんなに明るい時分にロープでビルをロッククライミングしたら目撃者が続出でしょ。 というわけで“エレベーターに閉じ込められる”というプロットはあまりに有名で多数のフォロワーを生みましたが、サスペンス・スリラーの視点で観ると本作はあまりにユルユルな映画なんです。社長を自殺に見せかけて射殺するモーリス・ロネの計画も、同時刻に在社していることが社員にばれていてアリバイ工作にもなっていないなんて、犯罪としては雑極まりないところは否めません。というよりも本来は無関係な二組のカップルがひょんなことから接点ができ、それぞれが違う動機で殺人を犯して破滅してゆく過程をマイルス・デイビスの即興演奏がムーディに彩った映画だと言うのが正解でしょう。でもマイルス・デイビスの演奏は鳥肌が立つぐらい映像とシンクロしているし、この手法を考えたルイ・マルの才気には脱帽です。ルイ・マルはジャンヌ・モローの魅力・ポテンシャルを引き出すことにかけては名人で、モローは本作では単純な悪女ではなく最後までモーリス・ロネを追いかける情念の塊みたいな存在で、まさに彼女の本領発揮でした。ロネの車を盗みアホの限りを尽くすバカップルの無軌道ぶりは引いてしまいますが、ラストで同じフィルムから印画紙に焼き付けられる両カップルの画像には、社長夫人と戦争英雄のカップルにしても若いバカップルと同じ穴の狢だったんだよと語っているようでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-19 23:18:32)
36.  マックィーンの絶対の危機(ピンチ) 《ネタバレ》 
タイトル・ロールでもちろん主役はスティーヴ・マックイーンだが、“Steven”マックイーンとなっていてアレっと感じますが、“Steven”が本名なんだそうです、まあどうでも良いことですけど。それより驚かされるのはそこで流れるキューバン・スタイル(?)の妙にノリノリの主題歌で(実はバート・バカラックが作ったという説あり)、まるでエルヴィス・プレスリーの映画を観ているような気にさせられます。マックイーン当時28歳で初主演、でも役柄は高校生で友人の級友たちと大活躍(?)するという内容なのでまあ製作者としては青春映画のノリだったのかもしれません。いちおうパラマウントというメジャーが関わっていますが配給関係だけだったみたい、プロデューサーのジャック・H・ハリスは典型的なB級映画屋だったからドライブインシアターなんかで上映するために製作されたのかな。おまけに低予算ですから手を抜けるところは徹底していて、肝心の人喰いアメーバがお食事するところやダイナーが炎上するシーンはどこにもなし、最初観たときは放映時にカットされたのかと思いましたよ。最後のオチも「えっ、ほんとにそれでいいの?」と愕然でしたが、ラストの“?”マークはまさか製作側の自虐ネタなのかもしれませんね。けっきょくこのお話しは一晩の出来事だったわけで、映画史上もっとも短時間で撃退されたモンスターという称号が与えられるんじゃないでしょうか。 ちなみにラストが“?”マークで終わる映画を他にも観た記憶があって「なんだったかな~」と頭をひねったら、思い出しました、ピーター・イエーツの『大列車強盗団』でした。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-04-24 17:20:12)
37.  見知らぬ乗客 《ネタバレ》 
ヒッチコック映画の殺人シーンと言えば『サイコ』のジャネット・リー刺殺がもっとも有名だけど、実は彼のフィルモグラフィ中で刺激的で登場回数が多い殺人手段は絞殺ではないかと思います。やはりファーリー・グレンジャーが出演した『ロープ』は絞殺がファースト・カットだったし、『ダイヤルⅯを廻せ!』でのグレース・ケリーが絞殺されかけるシーンのねちっこさは官能的ですらある。そりゃ極めつけは『フレンジー』ですが、ここまで来るとヒッチコックの変態性がもうバレバレです。本作でもブルーノがミリアムやカニンガム夫人の首を絞めるときの表情や演出には時代を感じさせない凄みがあるし、個人的にはノーマン・ベイツよりブルーノ・アントニーの方がよっぽど怖い。演じたロバート・ウォーカーは実生活でも酒乱で奇行がひどかったそうで、撮影終了直後にそれが原因で急死しているという事実もまたゾッとさせられます。プロット自体はヒッチコックお得意の“巻き込まれもの”であるけどそこに“交換殺人”というこれまた推理小説のテーマとしてはありふれた要素をぶち込んでいるのに飽きさせない見せ方、凡庸だったパトリシア・ハイスミスの原作を見事に再生しています。偶然入手したガイのライターを殺害現場に残しておくのが普通ですが、交換殺人のつもりだからガイが疑われてしまっては意味がないので持ち帰ってしまうブルーノ。ところが思惑が外れて今度はガイを逮捕させるために現場に戻ってライターを置きに行くのに大変な苦労をしてけっきょく破滅する、なんとも見事なストーリーテリングであります。映像的にも有名なテニス場観客席のシーンやワシントンで豆粒のような遠景でガイを見つめるところなど、ブルーノの異常性が強調される絵造りが上手い、やはりブルーノ・アントニーはヒッチコックが産み出したキャラでもトップクラスのサイコ野郎です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-04-21 18:17:57)
38.  第十七捕虜収容所 《ネタバレ》 
舞台劇の映画化ではありますが、「今まで捕虜収容所が舞台の映画なんて撮られたことがなかった」という冒頭のナレーションの通り、本作がハリウッドで戦後初めて製作された捕虜収容所映画みたいです。捕虜収容所ものというと普通は“脱走”がテーマですが、この映画は“スパイ・裏切り者”がコンセプトということになります。どちらかというと陰湿になりがちですが、そこを思いっきりコメディ仕立てにしてるのがビリー・ワイルダーらしいところです。この映画ではキャスティングなどに小ネタを仕込んでいて、収容所長にドイツ系だけどユダヤ人である映画監督オットー・プレミンジャーを引っ張て来ています。この人は名匠ですけどその現場でのパワハラ親父ぶりは鬼レベルで、キャスト・スタッフから恐れられていました。いわばセルフ・パロディみたいなキャラなんですが、彼に「どういう風に演技したらいいんだ?」と尋ねられたワイルダーは「あなたが撮影現場でやってる通りでいいんですよ」と答えたそうです(笑)。所長の出番は意外と少なかったですが、けっきょく尊大ではあるけどどこか愛嬌も感じられるキャラで、ちょっと拍子抜けでしたが。他にも元俳優でハリウッド・スターの物まねが得意という捕虜もいましたが、この物まねは当時の観客にはウケたんでしょうね。ウィリアム・ホールデンの商売熱心な捕虜役は彼の生涯の当たり役みたいな感じで、後の『戦場にかける橋』でも本作を彷彿させるような捕虜キャラを演じていました。ちょっと不満だったのは誰がスパイかのネタ晴らしが少し早い感じがするところで、これは原作舞台劇があるのでしょうがなかったかもしれません。できればもっと引っ張って『情婦』みたいなどんでん返しのような展開もアリだったかなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-04-18 20:21:33)(良:1票)
39.  世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す 《ネタバレ》 
いきなり主人公の科学者カップルが車を運転しながらイチャつきますが、この手の50年代ハリウッドSF映画のとはちょと設定が違って二人は前日に結婚したばかりのアツアツ・カップルでこれはナンパでも不倫でもないのでご安心を(笑)。このお熱い車にいきなり空飛ぶ円盤が急接近してきて「おおっ」とさせられます。ハリーハウゼンお得意のコマ撮りUFOですけど、ちょっとカクカクした動きはなんか味があります。この映画のエイリアンはバリアを張ったりロボットみたいなスーツを着用したりで時代的には進んだ映画表現かなと思いますけど、チラッと見せるエイリアン本体はちょっと前に話題になったあのインチキ・エイリアン解剖フィルムのエイリアンとそっくり、というか本作のエイリアンこそが元ネタなんでしょうね。 ストーリー自体はお約束の好戦的な“アメリカ万歳!”なわけで、特に語るような要素はありません。戦闘シークエンスでは実写フィルムが多用されていますが、編集は雑です。UFO迎撃にB29が出動してきますが、時期的にはとっくに退役してるけどまだ州空軍あたりにはストックされていたかもしれません。ところが次の撃墜されるシーンになるとB17に変わっちゃってます、それも大戦中に撮影された有名な映像です。ジョージ・パルがオール特撮で『宇宙戦争』を何年も前に世に出しているというのにこの体たらく、ハリーハウゼン特撮の無駄遣いと言いたくもなります。こういう志の低い製作者が駄作を量産してくれたおかげで、ハリウッドのSF映画の進歩が停滞してしまったのは残念なことです。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-04-09 20:01:52)
40.  地球へ2千万マイル 《ネタバレ》 
ハリーハウゼン御大が生み出したモンスターの中でも最も怪獣・特撮ファンから愛されているのが、この映画の主役・金星竜イーマだろうと思います。たしか自分が子供のころには“イミール”という表記だった記憶もあります。頭部を除く上半身は生物学的には人類というか猿人に近い構造を持ちながら異様に長い尻尾を持ち、半魚人よりもさらに魚類に近い顔つきのまるで神話世界の創造物といった感じです。まさにハリーハウゼンのイマジネーションが産み出した傑作造形なわけですが、これが金星に生息する生物で押し通しちゃうところはご愛敬です。変な卵から孵化したと思ったらどんどん成長して巨大化してゆくイーマ君、初期のころは怪異な容貌ながらも実は温厚そうな性質なのに地球の生き物と人間から虐められてどんどん性格が悪くなる感じが上手く表現されています。やはりラストのゾウとイーマ君のガチンコ勝負は、これがコマ撮り撮影とは信じられないまさにハリーハウゼンの匠の成せる技と言えるでしょう。ただ、ちょっとゾウのサイズが大きすぎるように感じるところもありましたが。 と褒めてきましたが、イーマ君以外の特撮とドラマ部分はもうメロメロです。ハリーハウゼン特撮は生物以外の円盤やロケットなどもすべてコマ撮りで表現するのが特徴ですが、これが生物の様には上手く表現できないのが欠点なのです。本作でも冒頭の金星探査船墜落のシークエンスでは、ちょっと粗が目立ちすぎでした。そして、これはハリーハウゼンには責任ないのですが、ストーリーがあまりに酷い。いくらアメリカが超大国だった時代といっても、世界に内密に宇宙船を建造して金星探検だなんて、そんなことあり得るか!強いドルにモノを言わせてイタリアでロケというのは判りますが、あまりにイタリア人をバカにした設定は酷いと思いますよ。イーマ君が地球で誕生してしまったのは一人の悪ガキのせいということになりますが、せめてガメラ・シリーズみたいに最後までストーリーに絡ませて汚名挽回させても良かったんじゃない?また50年代ハリウッド怪獣映画の約束の主人公(大抵は科学者か軍人)がひたすらヒロインのナンパに励むというパターンを本作も踏襲していますが、それすらも中途半端な取ってつけたようなストーリーテリングとは、処置なしです。監督しているのが『妖怪巨大女』のネイザン・ジュランだから、まあしょうがないか(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-04-06 22:58:15)
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