21. 自転車泥棒
《ネタバレ》 多分、100人がこの映画を観たとして、97人位は主人公とストーリーを共にするうち「ああーっ自転車盗んだ奴許せねえっ」と憤慨し、ヤケクソで高い食事をする父親の切なさに「わかる、わかるよ」と心寄り添い、ラストに一台ぽつりとそこにある他人様の自転車に良からぬ考えを抱いて心がざわざわしてしまうはずなのだ。人にみな共通の心の弱さだったり、人生の理不尽さが無慈悲に展開し、ワタシの心はすっかりかき乱された。チキショー、つらいなあ、お父さん。飲みに行きましょう、おごりますよ。 [地上波(字幕)] 8点(2014-04-12 00:27:15)(良:1票) |
22. チャップリンの殺人狂時代
後味が奇妙なことこの上ない、なんとも咀嚼し難い作品。コミカルな場面は真正喜劇、でも並行して恐い恐い企みも進行しているので、この男をどう捉えたらよいやら混乱しっぱなしでした。いろんなメッセージが窺い知れるけど、ストレートには伝わりづらいような。この程度で追放とは、当時のアメリカは赤狩りヒステリーの絶頂だったのだなあ。殺さずにいた彼女が軍需産業の豊かさにあずかっている皮肉な展開、このチクリとした感じはとてもチャップリンぽいと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-20 23:29:35) |
23. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 若いアメリカの道徳感がまっすぐに作品を貫いてる。人生に必要なのは家族愛と善行。これにて全てが報われる。あまりにまっとう過ぎて青臭いけど、それでもこの種の健全さは生きていくうえでやはり必要だとは思う。天からの計らいが“二級”天使だというのが可笑しいし、自分のいない世界というアイディアも斬新。作品の残り4分の一部分がこの映画のキモ。うまいこと乗せられて、検査役人までもが献金してしまう場面ではうっかり涙ぐんでたりもする。まあ私がもしも存在しなかったとしても世の中いっこうに変わりはないだろう、と心が冷え冷えする想像はしない方が吉ですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-05-31 00:27:39) |
24. カサブランカ
男はダンディで女は美しく、愛し合う二人が社会情勢に翻弄されて・・、ってこれは主演二人がボガートとバーグマンだから見られるメロドラマ。100%ハードボイルドなボギーの渋いこと。正面切って吐かれたら赤面もののクサイ台詞もこの人が言うと言葉が宙に浮かずにすむ。これでもかと美貌を強調のバーグマンのアップの多いこと。つー、と頬を流れる一筋の涙、こらえきれずにふいっと後ろを振り返る演技。いやあクサいのなんの。しかし見入っちゃうんだな。ボギーの低い声に酔い、バーグマンキレイだあっと伝説級の美貌にくらくらするんだな。スターが手の届かないほんとのスターだった時代の、スターの資質を全て備えたおふたり、見事です。 [地上波(字幕)] 7点(2012-05-23 14:14:04) |
25. 安城家の舞踏会
《ネタバレ》 台詞回しの古さとか屋外のセット等に時代を感じてしまうけれど、観終わって後じわじわと余韻がきた。もはや絶滅言語のような日本語を話す原節子。なんとまあたおやかな。それでいて賢くて芯が強くて、もう安城家の姉兄方は家の今後のことは敦子さんに丸投げだ。どうしようもなく不安なくせに強がるばかりの長男に、特権階級プライドが富士山より高い長女、やんごとなき殿様育ちで人を疑うことすら上手くできない当主。そんな中敦子さまはひとり顔を上げ、前を向くのだった。「安城家の美しい思い出」を刻むために催した舞踏会だったけれど、この家の真の美しさはゴシップ乱れ飛ぶ虚ろなパーティーなどに無く、ラストのダンスシーンに結晶している。お父様と敦子さんが踊るダンス。上質な暮らしに守られてきた上品な二人が踏むステップのしなやかで美しいこと。ついに長男の虚勢が削がれ、彼が号泣するに至るのもわかるってもんです。下々な私に別世界の輝きを見せていただいた、そんな気持ちになる作品。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-09 11:23:14)(良:1票) |
26. 市民ケーン
いつ震えるような感動が訪れるのかと期待しながら見てるうちに終わってしまった。あれ、これって かの市民ケーンだよね?評価が凄まじく高いのは時代を超越した撮影技法云々によるものらしい、と後で知った。孤独な男の人生の描き方も、謎のオチも後世の作品を散々見てきた身には手垢のついた展開にしか感じられず残念。(こっちが先なのにね)もはや映画史料として別枠で評価すべき作品なんだろうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-08-17 12:48:52) |