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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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381.  ショコラ(2000) 《ネタバレ》 
 こういった内容の映画である以上、観賞後に「チョコレートを食べてみたい」と観客に思わせる事が出来れば成功なのだと思います。   自分はといえば、事前に買い込んでおいたチョコレート菓子の包装を解いて、美味しく頂かせてもらったので、まず満足。  基本的に優しい映画であり、作中の人物殆どが幸せな結末を迎えてくれるので、後味も良かったですね。   特に感心させられたのが主人公の扱いで、こういった御話では 『主人公は癒しを与える天使のような存在なので、心の弱さを見せて取り乱したりしない』 『村の人々が幸せになるのを見届けた後、主人公は次の村に幸せを運ぶ為に風のように去っていく』  という不文律が存在しているにも関わらず、本作は意図的にそれを覆しているのです。  終盤に北風が誘い掛けるシーンでは(あぁ、やはり立ち去ってしまうのか……)と寂しく思っていただけに、それを否定して窓を閉め、街に留まる事を選択する姿に驚き、安堵もさせられましたね。  遺灰を撒いて、それが北風に運ばれる描写もあったとなると、次の「幸せを運ぶ旅人」の役目は、あのお婆ちゃんにバトンタッチされたのかな? とも推理出来て楽しかったです。   ちょっと気になったのは、作中で唯一「救われない」人物として、セルジュが存在している事。  彼の扱いが完全なハッピーエンドとなる事を妨げているので、そこをもう少し上手くやってくれていたら、より満足出来たんじゃないかと思えましたね。  女性目線の映画なのだから「家庭内暴力」を振るった以上は許されるべきではないという判断なのかも知れませんが、一応彼なりに妻を愛していて、反省し、許しを乞うていたのだから、復縁するのは無理としても、もうちょっと救いを感じさせる顛末にしても良かったんじゃないかなぁ、と。  火事の件など、物語の進行上に必要な悪事は全て彼に押し付けて、村から追放したという形だったのが、どうにも居心地が悪かったです。  意地悪な見方かも知れませんが、村長の妻だって浮気という罪を犯しているのに、そちらは全く罰せられる描写が無しというのも、何だか女性に都合の良い世界観に思えてしまいました。  いっそ次の「幸せを運ぶ旅人」の役目を、セルジュに担わせても良かったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。   そんな本作の中で自分の一番のお気に入りは、倦怠期に陥っていた夫婦が「情熱を呼び戻すカカオ豆」を通じて、仲睦まじい夫婦に変わっていくシークエンス。  ちょっと下世話な描写でしたが、お風呂掃除中の妻のお尻に欲情してしまう件なんかが、非常に共感を持てたのですよね。  その後に、妻の荷物を「持つよ」と優しく提案する姿など、些細な描写の中にも「不器用ながらも、妻想いな旦那様」に変わった事が窺えて、微笑ましかったです。   断食の果てにチョコレートに貪り付く村長の姿からは、一種のカタルシスが感じられたし 「人間の価値は何を禁じるか、何を否定するか、誰を排除するかではなく、何を受け入れ、何を創造し、誰を歓迎するかで決まる」  というアンリ神父のお説教も、心に沁みるものがあって良かったですね。  娘の友達であるカンガルーの存在も、物語の寓話性を高める程好いアクセントになっていたと思います。   ゆったりと身を委ねたくなるような甘みと、微かな苦み、両方を味わえた映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-03 05:58:00)(良:3票)
382.  恋とニュースのつくり方 《ネタバレ》 
 冒頭のシーンにて(シニアプロデューサーには昇格出来ず、当てが外れて落ち込むんだろうな)と思っていたら、まさかのクビ宣告。  失意のスタートとなった主人公なのですが、とにかく明るさと元気に満ちており、観ている側としても「彼女なら、きっとハッピーエンドを迎えてくれるはず」と、安心して見守る事が出来ましたね。   今は亡き父は彼女の夢を応援してくれており、それとは対照的に、存命の母は現実主義者という家族構成も良かったと思います。 「八つの時なら可愛い夢。十八の時には胸も躍った夢。でも二十八の今は、正直言って困った夢よ」  と諭す母の言葉には説得力がありましたし、いつもの出社時刻に目覚まし時計が鳴るも、それを止めてから何もする事が無く途方に暮れる主人公の描写なんかも、味わい深くて良い。  そういった「ドン底」をキチンと描いてくれたからこそ、その後のサクセスストーリーにも共感し、応援出来た気がします。   新しい職場に採用された後、早回しで引っ越しをするシーンや、初めての会議で矢継ぎ早に質問を浴びるも、ちゃんと一つずつ回答するシーンなんかも、スタイリッシュな魅力がありましたね。  こういった具合に、働く楽しさが感じられる映画って好きです。  陳腐な表現となってしまいますが、明日への活力を貰える気がします。  この辺りは監督が同じである「ノッティングヒルの恋人」よりも、脚本が同じである「プラダを着た悪魔」に近い魅力かも。   今や大統領となっているドナルド・トランプの名前が飛び出すのもニヤリとさせられたし、男性キャスターと女性キャスターの子供っぽい対立、そしてラストにて二人が和解し、恋仲となった事を匂わせる演出なんかも、オシャレな感じ。  唯一の難点はクライマックスに関してで、事前に料理の伏線を張っておいたのは分かるのですが、オチに使うには弱いネタだな……と思えましたね。  演出に関しても、あんな大袈裟に感動的な場面に仕上げる必要があったのか疑問。  「主人公を引き止める為に、傲慢なキャスターがささやかな、彼にとっては精一杯の誠意を見せてくれた」というストーリーな訳だから、もっとさりげなく、小さな感動を与えるような形にした方が良かったんじゃないかな、と。   一応ラブコメ要素もあるのですが「別に無くても良かったなぁ……」と思えるくらいに、彼氏役の存在が希薄な辺りも、不満と言えば不満。  あくまでも「仕事に生きる女」に特化させた方が、主人公のキャラクターも際立ったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。  そんなのは男性的な価値観であり、やはり女性からすると恋と仕事を両立させてもらわないと、観ていて嬉しくないのかも……とも考えられるし、難しいところですね。   とはいえ、その後の「これでもか!」とばかりに、次々と笑顔が咲き乱れるハッピーエンドっぷりは、本当に好きです。  母親が新聞記事を切り抜いたりして、実は娘の活躍をずっと見守っていた事を示す描写にもグッと来ましたし、冒頭の職場にて仲良しだった女性と再会し、また一緒に働ける事を喜んで、ハグしてみせる姿なんかも良い。  主人公達が頑張って幸せになる姿を見届けられる、気持ちの良い映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-01 11:59:10)(良:1票)
383.  クライムダウン 《ネタバレ》 
 映画「エラゴン」で主演を務めたエド・スペリーアスの数年後の姿を拝めるという、非常に貴重な一品。   自分としては、劇中で彼がどんな活躍をしてくれるのかに期待していたのですが……良い役とは言い難いものがありましたね。  一応、副主人公に近いポジションなのですが、どうにも憎まれ役というか「主人公の好感度を下げない為に、マイナスな言動を代わりに行うキャラクター」って感じなのです。  最後も(えっ? 死んだの?)って戸惑うくらいにアッサリ撃たれて退場するし……  何だか凄く不憫で、応援したくなりますね、エドさん。   それで映画本編の方はといえば、これが中々面白い佳作。  登山を楽しむ主人公達が、地中に女の子が埋められている事に気が付き、慌てて掘り起こして木箱を開けるシーンのドキドキ感なんて、凄く良かったですね。   その後に少しずつ謎が解き明かされていくのかと思いきや、かなり早い展開で「彼女は誘拐され、ここに閉じ込められていた」「誘拐犯の二人組は、すぐ近くにいて、銃を手に主人公達を追跡している」と分かるので、これにも吃驚。  謎解きを放棄した、追いかけっこに特化した作りだったとは、完全に予想外でした。   舞台が山の為か、危険な崖を降りるシーンもあるのですが、そこに関しては「急がなければいけないのに、危険だから慎重に、ゆっくり降りなければいけない」というのが何だかチグハグで、緊迫感を削いでいたように思えて、残念。  そんな崖のパートを過ぎて、河の急流に差し掛かる辺りからは、ようやく演出もスピーディーになり、以降はノンストップで楽しめたように思えます。   「追ってくる奴らの狙いは、その子だけだ」と言い出し、女の子を犠牲にして助かろうとするかと思われた男が、自ら囮になって他の皆を逃がしてあげる展開なんかも(そう来たか!)という感じで、実に好み。  誘拐犯の一人が「以前、人質の男の子と仲良くなってしまった事がある」と語り出し、その子が苦しまないように後ろから頭を撃ち抜いてやったと話す件なんかも、彼の恐ろしさと人間味を同時に感じられて、良い場面だったと思います。   最終的には、主人公と女の子の二人は何とか助かるので、ハッピーエンドと呼ぶ事も出来そうな本作品。  でも「実は女の子の父親が悪どい権力者であり、誘拐犯は彼の手によって無残に殺される」というオチまで付いているのは、ちょっと蛇足に感じられましたね。  誘拐された側が絶対的な正義ではない、という深みを持たせたかったのでしょうが(後味が悪くなっただけじゃない?)というのが正直な感想。   どちらかといえば、楽しめた場面の方が多いのですが(ここ、もうちょっと何とかなったらなぁ……)と細部が気になってしまう。  そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-01-31 13:20:15)(良:1票)
384.  エラゴン/遺志を継ぐ者 《ネタバレ》 
 冒頭「ドラゴンに乗った人間」の目線で戦いが描かれる演出に興奮。  飛行速度なども程好くスピーディーだし、戦闘場面には「自分もドラゴンに乗って戦ってみたい」と思わせるような魅力がありました。   ……とはいえ、根本的に「これ一本では完結していない」と思えるストーリーであり、満足度が高かったとは言い難いです。  従兄弟のローランの旅立ちなどは中々情感を込めて描かれていたのに、彼はそれ以降全く出て来ないし、最後もラスボスというよりは中ボスを倒して一段落、という感じ。  わざわざ主人公に「期待外れだ、弱いな」なんて言わせているくらいなので、恐らく作り手としても意図的に「今回倒した相手は、単なる手下の一人に過ぎない」という演出にしたのでしょうね。  それは次なる相手の強大さを予見させる一方で「本作単体ではカタルシスを得られ難い」という結果にも繋がってしまった気がします。   とかく展開が早くて、サフィラの成長速度も凄過ぎて、主人公との間に絆を感じられない辺りも、困り物。  空を飛んだと思ったら、いきなり大きくなって、いきなり喋れるようになっちゃいますからね。  飛べるようになる為の訓練を行うとか、早く大きくなれるように餌を食べさせるとか、言葉を教えるとか、そういうイベントにも尺を取った方が良かったのではないかと、つい思っちゃいます。  サフィラ自体は「えっ、メスだったの?」という意外性、熱くなりがちな主人公とは対照的に落ち着いた性格に、青い宝石のようなデザインと、魅力的なキャラクターであっただけに、実に勿体無い。   馬で先行しているお姫様に、ドラゴンに乗って簡単に追いつくシーンなど「ドラゴンに乗れる事の素晴らしさ」は、ちゃんと伝わってくる作品なだけに、もどかしい思いがありますね。  粗削りながらも、夢のある映画だと思うので、出来ればもう少し丁寧に作って、続編も拝ませてもらいたかったところです。
[DVD(吹替)] 5点(2017-01-30 06:57:58)(良:1票)
385.  ドラゴンハート 《ネタバレ》 
 王道のファンタジー映画として、綺麗に纏まっていますね。  何よりもドラゴンに存在感があって、彼が動き、喋り、飛ぶ姿を見ているだけでも楽しい。   ただ、主人公の設定が「凄腕のドラゴンハンター」というわりに、全然凄みが感じられないというか、ハッキリ言うなら強く見えないせいで、今一つ没頭出来なかったように思えます。  血生臭い発想ですが、彼がドレイコと出会う前の段階「凄腕のハンターとして各地のドラゴンを狩りまくる」話の方が面白くなるんじゃないか、なんてついつい考えてしまいました。   ストーリーの流れとしては「ドレイコと組んで村人相手に詐欺行為を働くほどに堕落していた主人公が、本物の騎士になる」という形でカタルシスを生み出そうとしているのは分かるのですが、その「詐欺行為」のパートが非常に楽しそうで、あんまり悪事を働いているようには見えなかった辺りも残念。  最後にドレイコが死ぬ自己犠牲展開になるのも、事前に「死んだら星座になりたい」と語られた通り、星座になってハッピーエンドというのが分かり切っており、完全に予定調和の内であるように思えて、ノリ切れませんでしたね。  この辺りは「王道の魅力」と褒める事も「先が読める退屈な内容」と貶す事も出来そうな、難しい部分。  そもそもドレイコが「心臓を分け与えて瀕死の王子を救う」理由が「善行を積めば死後に星座になれるから」というのだから、本作は非常に宗教的な話なのでしょうね。  その辺りが、信仰心の薄い自分の心には響かなかったのかも。   視覚的には十分に楽しめるし、キャラクター造形なども悪くない。  ハッピーエンドなので後味も良い。  色々と魅力的な要素は揃っているだけに、肌に合わない事が勿体無く思えた映画でした。
[DVD(字幕)] 5点(2017-01-30 03:37:17)(良:1票)
386.  アローン・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
 この手の「モンスターと戦うアクション映画」って好きです。  そして主演がクリスチャン・スレーターとくれば、否応なくテンションは高まるのですが……  冒頭のナレーションで「長いよ!」とツッコみ、その後「モノローグで自己紹介やったのに、何で台詞でも自己紹介するの?」とツッコみ、以降はもう何かを諦めた境地で、ただただ画面を眺めるだけでしたね。   物凄く退屈だとか、観ていて不愉快になったとか、そういう訳じゃないんだけど……  とにかく盛り上がりに欠けており、気が付けばエンディングを迎えてしまったという形。  自分は主演の俳優さんが好きなので、彼が主人公というだけでもある程度は楽しめたんですが、もし魅力を感じない人が主演だったらと考えると、空恐ろしくなりますね。   一応(おっ)と思わされる場面もあって、拳銃から発射された弾丸を追いかけるスローモーション演出なんかは悪くないし、無人と化した都市の風景も「現実では中々体験出来ない、映画ならではの味わい」があって、良かったです。  ラストシーンに関しても「あぁ、サム・ライミの『死霊のはらわた』をオマージュしているんだなぁ……」と分かって、微笑ましい。   ウーヴェ・ボル監督の作品って、観賞済みの中では「ザ・テロリスト」(2009年)と「ウォールストリート・ダウン」( 2013年)が例外的に面白く、それ以外は全滅だったりするんですが……  それでも何か愛嬌があって、憎めないから不思議ですね。  聞くところによれば、映画を酷評した評論家と、ボル監督とがボクシングで戦うドキュメンタリーもあるそうなので、機会があれば観賞してみたいものです。
[DVD(吹替)] 4点(2017-01-29 11:39:02)
387.  恋するベーカリー 《ネタバレ》 
 大好きな「ホリデイ」と同じ監督さんという事で、期待を込めて観賞。   女性目線で男二人と三角関係になるという、感情移入しにくいストーリーなのに、しっかり楽しむ事が出来て嬉しかったですね。  特に感心させられたのが、高齢の主人公に対し 「俺達、一緒に歳取るべきだ」 「年齢も君の魅力も一つだよ」  と男達が口説いてみせる件。  (うわぁ、これは言われたら嬉しいだろうなぁ……)と思えたし、普通なら負い目に感じそうな部分を肯定してあげるという、優しい作風である事が伝わってきて、ほのぼのとさせられました。  「元旦那がセックスフレンド」と笑いながら女友達に話す件なんかも、女性の逞しさと、姦しさまで感じられて、好きな場面です。   そんな具合に「これは良い映画だな」と途中までは思っていたのですが「元旦那とヨリを戻すのは止めにして、新しい恋人と良い感じになる」という結末には納得がいかず、全面的に肯定は出来なかったのが残念。  そもそも新しい恋人と急接近したのが「今の妻を優先させる元旦那への当てつけ」という動機にしか見えなかった時点で、あまり二人を応援出来なかったのですよね。  結果的に「元旦那は、今の妻と子供と別れる」「父と母が復縁すると思っていた我が子達を失望させる」という、二重の悲劇が起こってしまった訳で、それまでのコミカルな作風とのギャップが大き過ぎたように思えます。  元旦那が別れを告げてきた妻と子供の姿が、終盤には全く出て来ないというのも、何だかズルい気がして、受け入れ難い。  「傷付いた母子の姿が描かれたら、主人公が嫌な女に思われてしまうから」という理由なのは分かるのですが、だからこそ、そこは逃げずにやって欲しかったなぁ、と。   それでも後味が悪くなかったのは、やっぱりナンシー・マイヤーズ監督の演出が、自分の好みに合っていたからなのでしょうね。  登場人物全般に、何とも言えない愛嬌があって、妙に憎めない。  娘婿となるハーレイの存在なんて、特にお気に入りです。  一人だけ主人公達の不倫に気付いてしまい、他の家族にバレないようにと右往左往する姿が、実に愉快で、応援したくなる。  最後に、家族が分かり合えた事を喜び「僕も入れて」と一緒になって抱き合う姿も、微笑ましくて、温かい気持ちに浸れました。  本作のMVPには、彼を推したいところです。
[DVD(吹替)] 6点(2017-01-27 13:03:58)(良:1票)
388.  包帯クラブ 《ネタバレ》 
 監督が堤幸彦で、原作が天童荒太。  「この組み合わせ、上手くいくのかな?」と不安に思っていたのですが、杞憂に過ぎませんでしたね。   どうしてもコメディタッチな作風になってしまうんじゃないかという不安は「鬱屈とした展開が続いても、どこか可笑しみがあって、重苦しくならない」という形で、良い方向に昇華されていましたし、真面目な場面はキチンと真面目に撮るという切り替えが、しっかり行われている事にも感心。  職人監督と呼ぶに相応しい、手堅い仕事ぶりだったと思います。   幾つか不満点もあったのですが、その一つとして主人公達の身勝手さ、まだ未熟ゆえの「厨二病」っぽさが挙げられて、そこは観ていて痛々しく感じられましたね。  青春映画には付き物な話だし、だからこそリアルなのだとも考えられるのですが 「上から見下ろしてモノ言ってんじゃねぇよ」 「アンタが世間の何を知ってるって言うんだよ」  と不良娘が金持ちの友達に説教するシーンでは、どう見ても不良娘の方が「上から目線」で「世間知らず」じゃないかと思えたりして、感情移入し難いものがありました。  学校側に包帯クラブの活動がバレた際に、自分達がやった事じゃないとしらばっくれて「私達のこと信じてくれないんですか?」と泣き真似する件なんかは、正直言ってドン引き。  騒動を巻き起こして警察に捕まった後に「親父さんが偉い人だから釈放してもらえた」というオチが付く辺りも、凄く恰好悪かったです。  また、原作者の著作に関しては「家族狩り」と「永遠の仔」くらいしか読んでいないのですが、その二つに続いて子供の性的虐待が扱われていたものだから「またかよ」と、少々食傷気味になってしまう気持ちもありましたね。   それらに対し、良かった点はと言えば、まず「包帯クラブ」の活動を行う姿が、とても楽しそうであった事が挙げられます。  ともすれば「癒し」「許し」「救い」などのイメージばかりが先走って、宗教的な画面にもなってしまいそうなのに、あくまでも「若者達のクラブ活動」である事を忘れておらず、観ていて「自分もやってみたいな」と思わされるような魅力がありました。  特にお気に入りの「鉄棒に巻き付けた包帯を逆上がりさせる」件が、実は伏線であり、ラストシーンにて鮮やかに回収される流れなんて、凄く嬉しかったですね。  飲食店に皆で集まって、美味しそうに料理を頬張りながら「将来の夢」を語り合うというのも、微笑ましくて良い。   「誰も知らない」で抜群の存在感を放っていた柳楽優弥が、立派に成長した姿を見せてくれるのも嬉しかったですね。  彼が演じるディノが経験した事件と、その後の顛末に関しては「被害者だけでなく、加害者も、難を逃れた第三者さえもが、傷を負っている」という形になっており、色々と考えさせられるものがありました。  罪悪感を乗り越えて、久し振りに再会した男友達と交わす会話の内容が「包帯クラブに所属している女の子達は可愛いかどうか」なんていう下世話な内容である辺りも、実に良い。  「包帯も自分で巻けるようになった」という台詞によって、彼が自力で立ち直ったのだという事を、端的に示す辺りも上手かったと思います。   包帯そのものには傷を治す力なんてなかったとしても「自分の事を想って、包帯を巻いてくれた人がいる」という事実によって、人が癒される事もあるのだなと、しみじみ感じられる。  ちょっぴり痛みも伴うけれど、それ以上に優しい映画でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-01-25 13:30:07)(良:1票)
389.  パコと魔法の絵本 《ネタバレ》 
 「大人向けの絵本」という、一見すると矛盾した表現が似合う作品。   中島監督作といえば「下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も、現代の寓話、大人の為の絵本というフレーズが似合いそうな趣きがありましたからね。  本作においても、感動と笑い、対話と活劇、それぞれの要素がバランス良く詰め込まれていたように思えます。   印象深いのは、人間としての「強さ」に拘っていた主人公の大貫が 「強くなきゃ、会社も興せなかったし、財産だって……」  と言いかけてから、手に入れた二つが絶対的な価値を持つものではないと悟ったように、言葉を詰まらせるシーン。  正直、ここに至るまでは (いくらなんでもオタクっぽさが濃過ぎる) (テンションの高いギャグシーンにも付いていけないし、この映画とは相性が悪い)  と、少々うんざりしながら観賞していただけに、ここでハッとさせられた感じでしたね。  劇中の大貫が「周りを見下していた傲慢な人間から、心を入れ替えて誠実になる」という変化を遂げる流れと、観客として、上手くシンクロ出来た気がします。   この手の「主人公の改心話」というのは王道ネタであり、決して目新しくはないのですが 「急に良い人ぶりやがって」 「今更善人ぶったって手遅れなんだよ」  という批判が、作中で行われている辺りも面白かったです。  人生という枠組みで考えてみた場合、晩年に良い人になったとしても、それまでの長い年月を悪人として過ごしたのだとすれば、彼を一概に「善人」という括りでは語れないでしょうからね。  物語としては、悪人から善人に転身した者の方が輝いてみえたりもしますが、実際は「一度も悪人にならず、生涯を善人で通した人」の方が、ずっと立派だよなぁ……なんて考えが浮かんできたりもしました。  こういった道徳的な側面というか「観る者に考えさせる」描写を挟んでいる辺りは、実に絵本らしくて良かったと思います。   個人的に最も好きなのは、落ちぶれた元子役と、彼のファンだった看護婦とのやり取り。 「その子は、ろくでなしの親と二人暮らしで、貧乏で、馬鹿で、不良で、生きてても、何にも良い事なくて……」 「だけど、その男の子を観ている時だけは、凄く幸せで……」 「アンタは、その子の夢だった」  という独白から、彼に「俳優」としての再起を促す件は、本当に良かったですね。  この映画におけるクライマックスは、ここだったんじゃないかと思ってしまうくらい。   それが影響しての事なのか、終盤にたっぷりと尺を取って描かれる「ガマ王子VSザリガニ魔人」の劇については(ちょっと、長過ぎじゃない?)と思えたりもして、残念。  「皆で劇をやろう!」と決意して、それぞれ稽古したりする件が一番盛り上がっていたと思うので、劇そのものは、もっと短く、アッサリ済ませた方が良かったんじゃないでしょうか。   それと、本作の特徴としては、感動と笑いを交互に提供するような演出が挙げられるのですが、劇の中でザリガニ王子を倒す件で「笑い」の方を選択し「ドリフかい!」で倒しちゃうのも、ちょっと好みとは違っていましたね。  それまで充分に笑いは取っていた訳だし、敵役を倒す場面はシリアスに、感動の方で〆て欲しいと願っていただけに(あぁ、そっちを選んだのかぁ……)と嘆息させられた形。   劇の最中、発作を起こして死んだと思われた大貫が、実は生きていたというオチの後 「死んだ方が良かったかにゃ?」 「そっちの方が感動的だし……」  なんて会話を交わして、笑いを取ったのに、大貫を改心させたパコの方が死んでしまうという「感動的」な展開に移行するのも、ちょっと悪趣味に思えてしまい、ノリ切れず。   最初は白け、途中からは大いに没頭し、終盤にて再び白けてしまったという形の為、何とも評価が難しいですね。  「観客をふるいにかける映画」なんて言葉がありますが、この映画で最後まで落ちる事なく楽しめた人にとっては、凄まじい傑作と思えるんじゃないでしょうか。  自分は残念ながら脱落してしまった訳ですが……  付いていけずに落とされた後にも、魅力の余韻が残る一品でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-01-25 06:39:11)(良:1票)
390.  ギャング・オブ・ニューヨーク 《ネタバレ》 
 序盤の乱闘シーンにて、白い雪が赤い血で染まっていく凄惨な演出は、流石スコセッシといった感じ。  少年院を出所する際に渡された聖書を、主人公が川に投げ捨てる場面なんかも、鮮烈な印象を与えてくれましたね。  これは傑作ではないか……と大いに期待が高まったのですが、その後は何だか尻すぼみ。   思うに、この映画の主軸は「主人公アムステルダムとビルの疑似親子めいた関係」のはずなのですが、その描き方が少し単調というか、シンプル過ぎるのですよね。  例えば、映画の中盤にて、主人公の父親である神父を殺したビルが「アイツは凄い奴だった」という調子で、神父を褒め称えるシークエンスがあるのですが、正直言って観客は、そんな事とっくに分かっているんです。  それは主人公も同様で、この告白を聞いても決定的なショックを受けたりしていない。  序盤の殺害シーンの時点でビルは神父に敬意を表しているのが明らかになっている訳だから、全く意外性が感じられないのです。   ベタな考えかも知れませんが、こういう話の場合は「親の仇と思って心底から憎んでいた相手が、実は良い奴だったと分かり、苦悩する」「ビルが神父に敬意を払っていたのだと知って、衝撃を受ける」という展開にした方が良かったんじゃないかなぁ、と。  本作の場合は「ビルは悪党ではあるが、一貫して憎み切れない魅力的な人物として描かれている」「最初から最後まで神父に敬意を払っているので、ビルには親の仇としての存在感が弱い」という形になっているのですよね。  主人公が最も動揺するのは「好きになった女の子がビルのお手付きだった」と知った時な訳ですが、これすらも「ビルは、その女の子に強い執着を抱いていない」と直ぐに判明する為、三角関係にすらなっていない。  咄嗟にビルの命を救った後に「ちくしょう、何で俺はあんな奴を助けてしまったんだ……」って感じに主人公が苛立つシーンさえも、観ているこちらとしては(いや、この関係性なら助けても全然おかしくないじゃん)とツッコんでしまう。  「親子」「宗教対立」「古い都市と新しい都市の対比」などといった様々なイメージが両者に投影されている事は分かるのですが、そんな代物を取り払って考えてみるに、根本的に二人が戦う理由が弱過ぎたように思えます。   だからこそ、最後の決戦も互いの想いをぶつけ合うような直接対決には成り得ない訳で、史実であった暴動や軍隊による鎮圧を絡めて、有耶無耶にしてしまったのではないでしょうか。  大砲の着弾の後に二人が倒れている姿なんて、ギャグにしか見えなかったりしますし「盛り上げて、盛り上げて、最後に肩透かし」という、一種の笑いを狙った構成なのでは……とさえ思ってしまったくらいです。   そんな本作で光るのは、やはりビル役のダニエル・デイ=ルイスの熱演。  ナイフ投げのシーンでは、惚れ惚れするような恰好良さを見せてくれましたし、一つの街を牛耳るギャングの親玉として、充分な説得力を備えていましたね。  「ビルが魅力的過ぎて、良い奴過ぎて、敵役や悪役として成立していない」と自分が感じてしまったのも、ひとえに彼の存在が強過ぎたせいかと。  戦いが終わった後に、無数の死体を見下ろして政治家が吐く「たくさんの票を失った」という台詞も、彼らにとって人命は「数字」でしかないと思い知らせてくれる効果があり、印象深い。  最後には、何だかんだで愛する彼女と一緒になってハッピーエンドという着地点な辺りも、安心感があって良かったです。   作り手としては色々考えて、力も注いで完成させた品である事は分かりますし、画面作り等のクオリティは高いと思うのですが「面白かった」とは言い切れない……勿体無い映画でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2017-01-20 06:58:44)
391.  最後の忠臣蔵 《ネタバレ》 
「忠臣蔵の話というよりは、父娘の絆を描いた話だったのか」 「父娘の絆を描いた話じゃなくて、曽根崎心中のような悲恋譚だったのか」  と二度に亘って驚かされた本作品。   期待していた内容とは違っていた、という失望もあってか、どうしても満足感が得られず終いだったのですが……  それを差し引いても、細かい部分が気になってしまう映画でしたね。  例えば中盤のシーンにて「昭和三十三年」なんて書かれている墓石が、思いっきり画面に映っていて、それも主人公の立ち位置より前に鎮座していたりするものだから、これはもう完全に興醒め。  この映画の作り手全員がそこに気付かなかったとも思えないし、ちゃんと慎重に撮れば回避出来る類のミスでしょうから、何というか「作り手に誠意が欠けているのではないか」なんて疑念が生じてしまい、映画そのものに対して不信感を抱く形となってしまったのです。   普通の忠臣蔵映画であればクライマックスとなる「吉良邸討ち入り」の場面を序盤に持ってくる構成は良かったのですが、結局あそこが一番面白かったのでは……と思えてしまう辺りも残念。  その代わりに用意されている山場が「可音の嫁入り」というのは、如何にも寂しかったです。   「死んだら、あきまへん」と言われたのに切腹するラストに関しても、忠義だの美学だのよりも主人公の身勝手さを感じてしまったのだから、自分とは相性の悪い映画だったのでしょうね。  主演である役所広司の貫録、ただ画面に映っているだけで漂ってくるような哀愁は、流石と思わせるものがあっただけに、共感出来なかった事が勿体無く感じられた一品でした。
[DVD(邦画)] 4点(2017-01-17 22:19:57)
392.  忠臣蔵外伝 四谷怪談 《ネタバレ》 
 「赤穂浪士になれなかった男」の物語として、興味深く観賞する事が出来ました。   深作監督の忠臣蔵といえば「赤穂城断絶」という前例がありますが、あちらが予想以上に真っ当な作りだったのに比べると、こちらはもう「全力で好き勝手やらしてもらいました」という雰囲気が漂っていて、痛快なものがありましたね。  手首は斬り飛ばすわ、生首は斬り落とすわで、そこまでやるかと呆れつつも笑ってしまうような感じ。  当初は「俺達の手で時代を変えるのだ」と熱く語っていた若者達が、浪人として困窮する内に現実的な思考に染まってしまい「時代の方が俺達を変えちまった」と嘆くようになったりと、青春ドラマとしての側面まで備えているのだから、本当に贅沢な映画なのだと思います。   とはいえ、基本的なジャンルとしては「怪談」になる訳であり、そこの描写がキチっとしている辺りが、お見事。  あれもこれもと詰め込んだ闇鍋状態なのに、芯がブレていないというか、観ていて落ち着かない気持ちになる事も無く、エログロ濃い目の味付けなのに、不思議と尾を引かないんですよね。   お岩さんが超常的な力で討ち入りに助太刀するというのは、ちょっとやり過ぎ感もありましたが、中盤くらいで「やり過ぎ」な演出の数々にも慣れてしまうので、違和感という程には至らず。  どちらかというと「顔の白塗り」演出の方が良く分からなくて(死相を映像的に分かり易く表現したのか? あるいは悪人であるという証?)と軽く混乱させられましたね。  あれに関しては、もう少し説明が欲しかったところです。   人の良い親父さん風の津川内蔵助に関しては、実に魅力的で、好感触。  1990年版の「忠臣蔵」と同じように「本当は討ち入りをしたくない」という立場であるのも、自分としては嬉しいポイントでした。  自らが義士として称えられる未来を予見し、伊右衛門には「可哀想な男だ」と同情する姿からは、歴史に名を残した男としての、凄みのようなものが漂っていたと思います。   とにかくパワーを感じさせる一品で、高岡お岩さんの巨乳を拝んだり、琵琶の音色に聞き惚れたりするだけでも楽しめるのですが、上述のように「やり過ぎ」に感じられる場面も多々あり、そこを受け入れられるかどうかでも、評価が変わってきそう。  例えば、主人公の伊右衛門は、金策の為に辻斬りを行ってしまった事が負い目となり、赤穂浪士ではなくなる訳だけど「堀部安兵衛だって同じ事をしたのに、あちらだけが義士として英雄視されるのか」というやるせなさを伴った展開である為「義士としての赤穂浪士の偶像を否定する」描写だとしても、ちょっと理不尽で、納得いかないものがあったりするんです。  また、清水一学が伊右衛門のフトモモを撫で回す件などは、同性愛描写には免疫があるはずの自分でも(気色悪いなぁ……)と思うものがあり「フトモモの奥にある何かまで触っている」と気付いてしまった時には、流石に後悔。  最後は綺麗なお岩さんに戻って、伊右衛門と和解し、夫婦仲睦まじく幽霊となって終わりというのも、急展開過ぎるというか、主人公に都合が良過ぎるようにも思えましたね。   それら全てをひっくるめて、この映画特有の味であり、全てが好みである人にとっては、もう凄まじい傑作に感じられそうな……そんな作品でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-16 20:47:47)
393.  赤穂城断絶 《ネタバレ》 
 深作監督の描く「仁義なき忠臣蔵」と聞き及び、さぞやバイオレンスな内容なのだろうなと予想していたのですが、思っていた以上に王道な作り。   吉良邸討ち入りのシーンでは血生臭さ全開だし、小林平八郎(渡瀬恒彦)と不破数右衛門(千葉真一)というファン感涙の戦いも用意されてはいるのですが、全ては「忠臣蔵」というオーソドックスな物語の枠に収まっている印象でしたね。  それだけ、この題材は器が大きいという事なのだろうなと納得し、安心感も覚える一方で「どうせなら、もっと破天荒な内容にして欲しかったなぁ」という物足りなさもあったりしました。   思うに、赤穂城にて「すわ籠城戦か」と盛り上がる件や、上述の討ち入りの件では確かに「この映画だからこその、荒々しい魅力」を感じられたのですが、吉良殺害を成功させた後の切腹までのシーンが妙に長く、そこで平坦な演出が続く関係上「結局は、数ある忠臣蔵映画の中の一つ」という印象に繋がってしまった気がしますね。  勿論、内蔵助の切腹シーンは迫力があったし、深作監督の面目躍如といった感じでしたが「討ち入りから切腹までの時間を、もっと短く纏めていれば、より鮮烈な印象を与えられたのではないかな……」と思ってしまったのも事実です。   それと、橋本平左衛門のエピソードは単体で観れば面白いのですが、メロドラマ的な悲劇となっており、この映画の中では浮いているように感じられたりもして、ちょっと残念。  浅野大学による御家再興が認められそうになっても、あまり嬉しそうな素振りを見せず、そちらよりも「吉良を討って浅野家は武門の家柄である事を示す」のに拘っていそうな武闘派な内蔵助に期待感が高まっていただけに、中盤以降どんどん出番が減ってしまうのが、何だか拍子抜けだったのですよね。  一時的に橋本が主役格となり、彼が死んで再び内蔵助に主点が戻るという構成なのが、どうも落ち着かない印象を受けてしまいました。   最後は、ともすればバッドエンドにも感じられそうな空気の中で「時代と共に人の心も変ったが、今もなお(赤穂四十七士に)香華を手向ける人が絶えない」というテロップを挟んだ辺りには、作り手の優しさが感じられましたね。  後味も悪くないし、印象に残る場面も多いという、中々の満足感が味わえる一品でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-01-12 23:45:55)
394.  9デイズ 《ネタバレ》 
 主人公が双子の兄弟に成り済ます為、チェコ語を習得したり、葉巻の吸い方やワインの飲み方を学んだりするパートが面白かったですね。  黒人男性版の「マイ・フェア・レディ」「プリティ・ウーマン」といった趣があるし、実際に劇中で後者の曲が流れたりするのだから、作り手としても意図した演出であったように思えます。   観賞前の期待通り、安心して楽しめる娯楽作品なのですが、ちょっと細かい点が気になったりもして、そこは残念。  例えば、高層ホテルにて刺客に襲われた主人公が、咄嗟に窓の外に逃げるというシーンがあるのですが、ここの件って、どう考えても窓の外の方が室内より危なかったりするんです。  何せ、足場が自分の靴ほどしかない訳で、実際に主人公は落ちそうになりながら、おっかなびっくり移動しているんですからね。  対するに、室内にいる刺客なんて全く強そうじゃなくて、主人公もガラス瓶で殴って撃退したはずなのに、わざわざ危険な窓の外に逃げたのだから、どうにも不自然。  恐らくは、その後の屋外での追いかけっこに繋げる為の脚本なのでしょうが、それならもっと自然にやって欲しかったなぁ……と、つい思ってしまいました。   「別人に成り済まして危険な取引を行う」という王道ネタを扱っているわりに「正体がバレそうになってドキドキさせられる」展開が無かった辺りも、不満ですね。  そういったベタな面白さを避けた以上は、他に何か目新しい面白さを提供してくれるのかなと思ったけれど、それも無し。  結果的に、映画の後半においては「主人公が別人に成り済ましている」という設定が忘れられてしまったかのようで、観ていて居心地が悪かったです。   そんな本作の白眉としては、主人公の母親の存在を挙げる事が出来そう。  最初は厳しい人なのかなと思ったら、実は息子に無償の愛を注いでいるのだと分かり、グッと来ちゃいましたね。  自分は、どうもこういうギャップのある描写に弱いみたいです。  息子の為に都合してあげたお金が「ビンゴの賞金250ドル」という辺りも、絶妙な塩梅。  「この母ちゃんの為にも頑張ってくれよ」と、主人公を応援する気持ちにさせられました。   それだけに、報酬の一部を母親に渡すラストシーンでは「一万ドルじゃなくて、九万ドルの方を母親にあげれば良いのに」と思わされたのですが……  実際にそうしようとしたら「私は一万で良い。九万は結婚資金に使いなさい」と叱られちゃう気もしますね。  最初は仲が悪かった堅物の相棒が、慣れないジョークを口にして祝福してくれたという、結婚式での風景も素敵。   後味が良い結末のお蔭で、なんだかんだ言っても満足出来た一品でした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-01-10 12:54:20)(良:2票)
395.  矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~ 《ネタバレ》 
 新年一発目の映画という事で、楽しい気分に浸れそうな作品をチョイス。   元々とんねるずが大好きという事も相まってか、充分に満足のいく内容でしたね。  これまでレビューしてきたタイトルの中には「クオリティが高いのは分かるけど、どうも好きになれない」というタイプの品もありましたが、これはその逆をいく一品。  どう見ても安っぽい「アニメ的な世界観を実写で大真面目に演じてしまう作品」のはずなのに、それが妙に面白かったりしたんです。   理由は色々あると思うのですが、その一つとして「内輪ネタ」が挙げられて「細かすぎて伝わらないモノマネ」でお馴染みの方が端役が出演していたり、ノリダーとチビノリダーとのやり取りが描かれていたりするのが、元ネタを知っている身としては、もう嬉しくって仕方なかったのですよね。  こういう「分かる人には分かるネタ」って、興醒めになったり、疎外感を抱かされたりする事も多いのでしょうが、自分としては正にドストライク。  「間違いなく、この映画の世界観を共有している」「観ている自分も、この映画の仲間なんだ」という感覚に浸らせてくれました。   全体的にはコント調の作風の為、ちょっと中弛みするというか、九十八分は長過ぎたようにも思えましたが、終盤にて「ソフトボールの試合」という山場をキチンと用意してくれている為、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えます。  「友情より恋愛が大事」「だって、恋愛はすぐに壊れちゃう。大切にしなきゃ」「友情は永遠。滅多な事じゃ壊れない」という台詞の数々も、非常に好みでしたね。  燃えるボールを燃えるバットで打ち返すというベタな演出も良かったし、最後は元気良く皆で唄って、笑顔で終わるのも気持ち良い。   父親との再会は描かれなかった事や「この借りはパート2で必ず返す」という台詞など、続編が存在しないのが寂しくなってしまう部分もありましたが……まぁ、それらも「ネタ、ギャグの一種」と受け止められるような大らかさ、笑い飛ばせるような馬鹿々々しさが備わっていたのではないかな、と。   期待通りの、楽しい映画でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-05 16:15:30)(良:1票)
396.  県庁の星 《ネタバレ》 
 これは面白い。  失礼ながら期待値は低かっただけに、嬉しい不意打ちを食らわせてもらった気分です。   劇中においても、こういった気持ち良い「不意打ち」が幾つかあって、特に印象深いのは主人公が婚約者に振られてしまう場面。  ここは観客の自分としても、主人公の気持ちとシンクロして「出世コースから外れたので振られてしまった」とばかり思っていたのですよね。  けれど、実際はそうじゃない。  「私の事を見てくれなかった」のが破局の理由であり、思い返せば、確かに伏線(=主人公は仕事について考えてばかりで、彼女のウェディングドレスを選ぶ際にも上の空)が張られていたのですよね。  これが「理不尽な裏切り」ではない「心地良い意外性」となっており、自分としても、この場面をキッカケとして(これは思っていたような映画とは違うぞ……)と襟を正して観賞する事が出来たように思えます。   潰れそうなスーパーを主人公が再生させる話といえば「スーパーの女」という先例が存在しており、あまり目新しさは望めないだろうと覚悟していたのですが、そんな予想も覆される事になりましたね。  あちらの作品は、ちょっと意地悪に解釈すれば「絶対的に正しい主人公が、間違っているスーパーを改革する話」という、やや一方的な内容であったのに対し、本作では公務員の主人公と店で働くヒロイン、それぞれに「正しい部分」「間違っている部分」が存在しており、対立を経て互いに認め合い、欠点を補完し合っていくという内容なのです。  それが非常に好ましいというか、自分の感性に合っていたように思えますね。   他にも「水で手を洗おうとしたら、蛇口が汚くて躊躇する主人公」という些細な描写で、その性格を端的に示してみせる辺りも好みでしたし「プライドの高さゆえ僅かなお辞儀しか出来なかった主人公が、研修期間を終えて店を立ち去る際には深々と頭を下げる」というベタな演出を挟んでくれる辺りも心地良い。   最後の最後で、店を守る決め手が「カンニング」という辺りには幻滅しかけましたが、そこで、またまたサプライズ。  それまで役立たずとして描かれていた店長が、意地を見せて店を守る形となっているのも嬉しかったです。   現実的な題材であるにも拘らず、そこかしこにリアリティの乏しい部分が見受けられる事。  主人公とヒロインが恋愛関係になる必然性は無かったように思える事。  そして、店のパートと行政パートが、あまり密接に絡んでいない辺りなど、色々と粗も目立ってしまうのですが、それでも全体としては長所の方が多かったかと。   研修を通して主人公が学んだのは「素直に謝る事」「素直に教わる事」「何かを成し遂げるには、仲間が必要だという事」と語る件も良かったですね。  完全無欠のハッピーエンドとはいかず、女性知事の狡賢さ、強かさを見せ付けるシニカルなテイストも備えており、それで後味が悪くなるかと思いきや、主人公は全て承知の上であり、前向きな姿勢と共に終わってくれたのも素晴らしい。  「そう簡単には通らないはずだ」「でも、諦めない」という、一時的な努力だけで済まさない、努力を継続する決意の恰好良さが伝わってきました。  その第一歩が、県庁におけるエスプレッソの有料化という、非常に小さなものであった辺りも、ユニークな落としどころだと思います。   面白い、楽しめたというのは勿論ですが、それ以上に「気持ちの良い映画」でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2016-12-29 08:20:51)(良:2票)
397.  陽気なギャングが地球を回す 《ネタバレ》 
 導入部では、中々スタイリッシュな犯罪ドラマになりそうだと期待させられたのですが……どうもノリ切れない内容でした。   とてつもなくクオリティが低いという訳ではないと思うのですが、何かチグハグなんですよね。   例えば、カーチェイスをCGで描くシーンとか「おっ、これはそういう悪ふざけ演出で楽しませてくれる映画なのか?」と期待したのに、以降はそういうノリがあまり感じられないせいで(あれは意図的な演出ではなく、予算の都合でCGにしただけだったんだなぁ……)と、観ていて落胆させられちゃう訳です。  また、主役のギャング達には特殊な能力があり、ルックスも良くてと、魅力的に描こうとしているのは伝わるのですが、そのやり方が「周りの人間を恰好悪く描いて、相対的に恰好良く見せようとしている」ように思えてしまい、違和感が大きかったですね。  冒頭の警官をからかう件とか、自分達以外を見下している空気が伝わって来て、彼らが単なる「嫌な奴ら」にしか思えないという形。  その結果、馬鹿にされている警官やら他の強盗やらの方が「みっともないけど、必死に頑張っている」感じが伝わって来て応援したくなるものだから、主人公達が見事に強盗を成功させても、観客としては、ちっともカタルシスを得られない。  恐らくは黒幕を徹底的に嫌な奴として描く事で、主人公達を応援させようとしていたとは思うのですが「同じ犯罪者なのに、何で片方だけがさも善人であるかのように扱われているの?」と白けてしまったくらいです。   同監督の「極道めし」は結構楽しめただけに、非常に残念。  恐らく、この監督さんはスタイリッシュな犯罪アクション物などよりも、コメディ、人情物の方が得意なのでは? と思えましたね。  本作においても「象を冷蔵庫に入れる為に必要な、三つの条件は?」というクイズを、シュールに映像化させてしまうセンスなどは良かったです。  劇中で「映画の終わり方に関する演説」が始まると共にスタッフロールを流し、これで終わったと見せかけて、ちょっとだけ続けてみせる辺りも好み。  クイズの答えを伏せたまま終わるような意地悪をせず、最後の最後に、きちんと答え合わせしてくれた事からも、作り手の誠実さが伝わってきました。   一応は仲間であったはずの地道こそが、黒幕の神崎であると本性を曝け出す場面にて口にする 「神崎なんて存在しなかった。いや、地道が存在しなかったのかな?」  という台詞なんかも、あぁ「真実の行方」が元ネタなんだと分かって、ちょっと微笑ましかったですね。   オシャレな恰好良さ、というものは感じられなかったけど、オシャレな面白さの断片のようなものは窺えた一品でした。
[DVD(邦画)] 4点(2016-12-29 04:13:16)
398.  予告犯 《ネタバレ》 
 この映画、面白いです。   面白いんですけど……序盤の拷問シーンで「悪趣味だなぁ」と思い、終盤の感動シーンで再び同じ感想を抱いてしまったので、どうも手放しでは褒められない内容。  「良い話にしようとしているのは分かるけど、無理あるよね?」という思いが浮かんで来てしまい、中々それが消え去ってくれなかったのです。   結局のところ、本作を楽しむ上でのキーポイントは「外国人の友達が死んでしまった」→「彼は死ぬ前に父親に会いたいと願っていた」→「自分達で探しても父親は見つからない」→「日本で一番捜査力が高いのは警察。死んだ友人の名前を騙って事件を起こし、彼らを動員して父親を探させよう」という、犯人達の行動を受け入れられるかどうかに尽きるのではないでしょうか。  自分としては「死んだ友人の名前を騙って」の部分が、ちょっと受け入れられなくて、本当に友達想いの奴なら、そんな事はしないだろうと白けてしまい、残念でしたね。  作中のテーマとしては「理由があって、頑張れない奴もいる」という、社会的弱者の存在を肯定するような意図があったのだと思われます。  けれど、就職活動はともかく、父親探しにおいて主人公達が「頑張れない」理由がハッキリしなくて、真っ当な方法では探せないと諦めて、死んだ友達に犯罪者の汚名を着せるのを承知の上で、楽な手段を選んだだけとしか思えないのです。  せめて「何年もかけて自力で探したけど手掛かりすら掴めなくて、止むを得ず最後の手段を選んだ」という形なら納得も出来るのですが、そういった過程を経ていないので、主人公達が努力を放棄したようにしか見えない。  酷く典型的な台詞になってしまうのですが「そんなやり方を、本当に生前の友人は望んでいたのか?」という疑問も浮かんできます。   それらの罪を償う為の自殺オチだったのでしょうが、終盤やたらと主人公を賛美する展開になっているものだから、どうも作り手との価値観のズレを感じました。  主人公と対峙し、その思想を否定する立場だった美人女刑事にまで「全てを予告し、やり遂げた」と嬉しそうに言わせたりしたのは、ちょっとやり過ぎだったんじゃないかなと。  生き残った犯人グループの仲間が、罪を全部主人公に被せて自分達だけ助かる件も、シニカルに描くのではなく「主人公の自己犠牲の美しさ」を強調するような演出だったりするものだから(えっ、そこで感動させようとするの?)と驚いてしまったくらい。   その他、主人公が会社での陰口に気が付く件なんかも、あまりにも非現実的な「周りの人間は皆、嫌な奴」過ぎて(これ、現実なの? それとも主人公がそういう被害妄想を抱いているって描写なの?)と戸惑ってしまったし、女刑事と犯人の追跡シーンでも(どうして応援を呼ばないんだ? 刑事なら何らかの連絡手段は確保しておくべきでは?)と集中力が削がれてしまった形でしたね。  そういった諸々が伏線なのかと思いきや、全然そんな事は無かったという意味も含めて、終盤の展開が本当に残念。   「作中で明かされた真相に納得がいかなかった」というパターンの為、ついつい文句を並べてしまいましたが、以下は良かった点を。  まず、導入部から展開がスピーディーで「異常な犯人、シンブンシの目的は何か?」と観客にも推理させていく流れは、とても楽しかったですね。  映画の構成としては、序盤は刑事側の目線で事件を追いかけていく形であり、中盤以降に主人公=犯人へと視線転換して、その背景が明かされる訳ですが、順番が逆だったら冗長な話になっていたでしょうし、この導入部には「掴みが上手い」と感心。  主演の生田斗真の力によって、新聞紙で覆面をして犯行予告するシーンでも、ダークヒーロー的な恰好良さが醸し出されており、作中で彼らの賛同者が生まれていく展開に、さほど不自然さを感じさせなかった辺りも有難かったです。  ここのハードルをクリアしてくれないと、作中の世界観が根底から崩れかねないので。   犯人グループが仲良くなっていく過程も、短いながらも丁寧に描かれており、青春ドラマとしての魅力も備えている形。  主人公の「友達が欲しい」という夢が叶っていたのを示す、和気藹々としたやり取りを、最後の最後に持って来て、カタルシスを与えて終わらせた辺りも、上手かったですね。  ここで「良い友達を持つ事が出来て、幸せだ」などと口に出しては言わせず、主人公の表情や音楽などで伝えてみせる演出は、本当に好み。  決してハッピーエンドではないはずなのに、それに近い味わいがありました。   色々と気になる点は多かったのですが、それらを差し引いても面白かったし、良い映画だったと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-12-28 12:09:22)(良:1票)
399.  ライフ・オブ・デビッド・ゲイル 《ネタバレ》 
 クオリティの高さは分かるのだけど、どうにも作中の価値観やらメッセージやらが肌に合わなくて「面白い」と素直に言えないタイプの映画があります。  残念ながら本作もそんな一つとなってしまったみたいで、脚本の騙しのテクニックやら演出やらに感心させられつつも、観賞後は「うーむ」と腕を組んで考えさせられる破目になりました。   まず、この映画の最大のオチに関しては「無実の人が死刑された確かな証拠があれば、死刑停止に追い込める」という台詞をデビッド・ゲイルが耳にするシーンがある以上、多くの人が途中で気が付かれたのではないかな、と思います。  自分も、この台詞が飛び出す時点(映画が始まってから三十分程)でオチは読めていたので、衝撃という意味では薄かったのですが、ラストに長々と説明せず「デビッド・ゲイルも彼女が自殺であると承知の上であり、一連の計画の協力者であった」と映像で示すだけで、スパッと終わらせる演出は見事でしたね。  こういうパターンの場合、つい「こんな分かり易い伏線があるんだから、気が付くに決まっている」と作品を見下してしまいそうにもなりますが、ラストの演出で説明を最低限に済ます以上、このくらいのバランスで丁度良かったのではないでしょうか。  観客に対して、きちんと「推理する材料」を提示するという意味でも、非常に誠実な作りであったと思います。   で、上述の「肌に合わない」部分に関してなのですが……これ、どう考えても「死刑制度の問題点」を指摘しているとは思えないのですよね。  自分で死刑になるように行動しておいて「実は冤罪なのに殺されちゃいました」って、自業自得としか思えないし、この場合に明らかになった問題点とは「自ら積極的に死刑になろうと色々と工作した人間を死刑にしてしまう可能性がある」という話でしかない訳だから、台詞の通りに「死刑停止に追い込める」とは考えられないのです。   デビッド・ゲイルの動機としては「取材を受ける報酬として手にした大金を、別居中の妻と息子に贈りたい」「もうじき病死してしまう恋人と心中したい」という想いの方が強かったのではないかな、とも思えますが、劇中ではそれらの感情的な動機よりも、あくまで「死刑制度の是非」という点に重きが置かれている為、やっぱり「そんなやり方で死刑制度を廃止出来る訳ないじゃん」という結論に至ってしまう訳で、何とも中途半端。  本当に死刑制度の問題点を指摘したいなら、倫理的に許されないのを承知の上で「無関係な第三者を犯人に仕立て上げ、彼が必死に無実を訴えても死刑が宣告されるのを見届けてから、執行の直前に全てを自白する」という作戦を取った方が、よっぽど効果的だったのではないかと。   そんな困った人物である彼を、過度に美化する事は無く「公開討論番組で、知事に言い負かされた仕返しをしたかっただけ」「権力者を馬鹿にして、自分の方が利口だって証明したかっただけ」と示す描写も挟むなど、作り手の器の大きさというか、公平な視野を感じさせる辺りは、好ましく思えます。  それだけに、話の核となる部分から説得力が伝わってこなかった事が、実に勿体無く思える一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 10:36:31)
400.  パラサイト・バイティング 食人草 《ネタバレ》 
 面白いんだけど、それ以上に「痛い」映画。   特殊な植物の蔦が体内に侵入し、それを取り出そうと自らの身体を切り刻む女性のシーンなんて、もう画面から目を背けたくなるし、仮に背けたとしても嫌ぁ~な声と音がして容赦なく「痛み」を連想させてくるしで「そんなに丁寧に描写しなくても良いよ! 観客に痛みを伝えたりしないでよ!」と訴えたくなります。  そんな具合に、ともすれば不快感だけを味わう事になりそうな内容なのですが……  これが案外、しっかり楽しむ事が出来たのですよね。   まず、冒頭「災難に見舞われる前の、楽しい旅行風景」がキチンと描かれているのが好印象。  そして舞台となる遺跡を訪ねる際に、現地人から「あそこだけは止めておけ」という類の、お約束の台詞が飛び出す辺りが、何だかニヤリとさせられるのです。  作り手に対し「おっ、分かってるね」と拍手を送りたくなるような演出。    麻酔無しで脚を切り、これで何とか助かったかと思われたのに、その後に口から蔦が入り込んだ時の絶望感なんかも良かったですね。  じわじわと追い詰められていく描写が丁寧なので(あっ、これハッピーエンドは無理だな……)と、観客にも自然と受け入れさせてくれます。   そうして全滅も覚悟したところで、ヒロインだけは何とか遺跡からの脱出に成功するという結末は意外性がありましたし、途中(プレッシャーに押し潰されて、嫌な奴と化してしまうのでは?)と不安になったりもした一同のリーダー格、医学生のジェフが最後まで良い奴のまま、自ら囮になってヒロインを逃がしてみせるという展開も好みでした。  とにかく観ていて「痛い」と感じる場面が強烈なので、再見したくなる映画とは言い難いのですが(観て良かったな……)と、素直に思えましたね。   なお、DVD収録の別エンドでは、ヒロインも結局は死んでしまうという救いの無い結末なのですが、自分としては「何とか一人だけは助かった」という、本編の終わり方を支持したいところです。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 06:52:49)(良:1票)
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