421. 哀愁の花びら
《ネタバレ》 この映画はジャクリーヌ・スーザンの小説「人形の谷」を映画化したものです。ストーリーは、ブロードウェイのショウビジネス界で生きる三人の女性が成功して転落する生きざまを描いたメロドラマです。巷ではマンソン事件で殺害されたシャロン・テートのこの映画での大根演技が伝説となっていますが、ちょっとそれは可哀そうです。はっきり言わせていただくと、あとの二人(バーバラ・パーキンス、パティ・デューク)もひどい演技で、シャロン・テートばかりが話題になるのは不公平でしょう。アメリカではこの映画は「史上もっとも陳腐な映画」という称号が与えられているそうですが、確かにお昼のメロドラマで半年かけて放送する様な波乱万丈のストーリーを2時間余りで見せようとしていますから、ほとんど大映テレビものを観ているような感覚です。ただこれでもかこれでもかと続くキッチュな展開は、観ているうちに麻痺してきて快感を覚えるほどです。スーザン・ヘイワードが大御所ミュージカルスター役で出ていますが、彼女の公演シーンの舞台装置のショボイのには口あんぐりでした。まあディオンヌ・ワーウィックが歌う主題歌が良かったので、プラス2点としておきます。 [DVD(字幕)] 3点(2009-05-05 00:47:47)(良:1票) |
422. 何という行き方!
《ネタバレ》 他愛のないストーリーなのですが、ほとんどジョークと言えるほど豪華な男優陣キャストで見せるシャーリー・マクレーンのコスプレ映画です。マクレーンが結婚する4人の旦那が始めは貧乏だが(3人目のロバート・ミッチャムを除く)、成功して金持ちになるが不運に見舞われて死んでしまう。未亡人になるたびにマクレーンに遺産が転がり込みますが、亡き夫の苗字をミドルネームにするので、マクレーンの名前がどんどん長くなってゆくのが傑作です。見どころは、イーディス・ヘッドが手がけたマクレーンの衣装で、特にロバート・ミッチャムと結婚しているときのドレスのとっかえひっかえはすごいです。ポール・ニューマンの珍しいおバカ演技も見ものです。こんな楽しい作品があるので、1960年代の映画は目が離せません。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-24 22:58:30)(良:1票) |
423. スイート・チャリティ
《ネタバレ》 ミュージカル映画には疎い私ですが、ボブ・フォッシーの振り付けは昔からストライクです。この映画では、60年代とは思えない切れの良いダンスに目を見張ります。シャーリー・マクレーンがNYの街中で踊るシーンの躍動感は、何度観ても素晴らしい。いろいろ意見はありますが、私はこのアンハッピーエンドのラストの方が、チャリティの健気さが出ていて好きです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-04-20 23:41:16)(良:1票) |
424. 戦う翼
《ネタバレ》 「戦うことしかできない男」をスティーブ・マックイーンが好演しています。ただこの機長バズはストイックなところは全然なくて、酒と女が大好きで同僚の副操縦士の恋人にまで手を出そうとするとんでもない奴なのです。そのあたりはマックイーンが他の映画で演じる役のイメージと違って結構面白かったです。B-17爆撃機の実機を使った撮影は結構見れますが、いかんせん特撮場面が1960年代にしてもショボ過ぎるのが難点です。 [DVD(字幕)] 5点(2009-04-18 11:54:17) |
425. ビーチレッド戦記
《ネタバレ》 1950年代に活躍した性格男優コーネル・ワイルドが監督・主演した戦争映画です。物語は日本軍が占領する架空の島に上陸した米海兵隊を描いています。冒頭の上陸シーンは、製作年度からするとスプラッター描写がきつくて、一説ではスピルバーグが「プライベート・ライアン」のノルマンディー海岸上陸シーンを撮る参考にしたと言われています。確かに、片腕がもげて戦士する兵士の描写は当時の映画では珍しいのではと思います。日本軍の描き方はおおむね良心的で、日本兵役のしゃべる日本語は明瞭です(指揮官の訓示に、『楠公』なんていう言葉が出てくるのにはちょっと驚きました)。この映画の特徴は、登場人物の心象風景をストップモーションで見せることで、戦争映画でありながらメルヘンチックな味わいがあります。本業監督ではないコーネル・ワイルドならではで、プロの監督はあまり使わない演出手法です。ただ、回想場面でコーネル・ワイルドの演じる主人公の奥さんが出てくるのですが(夫人のジーン・ウォレス)、彼女の髪型や服装がどう見ても1960年代で違和感があります。中盤までは結構いい雰囲気で進むのですが、ラスト日本軍が米軍の軍服を着用する作戦で反撃するという展開になり、ストーリーがぶち壊しになってしまいます。「撮影にフィリピン軍が協力した」ということですが、エキストラに着せる日本軍の軍服が足りなかったのでしょうか。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-04-18 11:51:41) |
426. ショック集団
《ネタバレ》 B級映画の巨匠サミュエル・フラーの「呪われた傑作」です。この映画は新聞記者が狂ったふりをして入院して精神病院の中で起こった殺人事件を調査するサスペンス・スリラーですが、「狩人の夜」の名手スタンリー・コルテスが陰影の濃い不気味な映像を作り上げています。精神病院の廊下が主要な舞台になりますが、キャラがたった精神病患者が低予算を逆手にとった工夫を凝らした廊下のセットを歩き回ります。中でも、自分はKKK(クー・クラックス・クラン)メンバーだと思い込んで、「アメリカは白人のものだ!」とアジる黒人青年には度肝をぬかされました。主人公の記者は電気ショック治療(短いですがこのシーンが怖い!)を受けたりして本当に狂気の世界に入ってしまいます。殺人事件の新犯人を探り当てながらも、ラスト完全に狂って廊下に立ちすくむ記者の姿が強烈です。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-04-13 21:16:04)(良:1票) |
427. ラブド・ワン
《ネタバレ》 「好きな題材を自由に撮っていいよ」とMGMにまかされたトニー・リチャードソンが、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」でオスカーをとった勢いで作った怪作です。ヒースロー空港で1000万人目の見送り客になり航空券をもらった英国青年バーロウは、ハリウッドの撮影所で美術の仕事をしている伯父(ジョン・ギルグッド)を訪ねてロスにやって来ます。ところが撮影所をクビになった伯父は首をつって自殺してしまいます。伯父は独身だったので葬儀はバーロウが喪主になりますが、怪しげな教団が運営する霊園で葬儀を行ったことからおかしな世界にまきこまれていく……というのがストーリーです。その後の展開はグロテスクな英国的ブラックユーモアに彩られた登場人物が画面を賑わすのですが、肝心なブラックユーモアの切れが悪くて残念な出来になってしまいました。テリー・サザーンが脚本を書いていますが、トニー・リチャードソンはこの脚本をこなし切れていないので風刺の対象がなんなのかイマイチ伝わらないのです。トニー・リチャードソンの作家性は英国の階級社会に対する反発ですが、本作での米国文明批判では彼はちょっと力み過ぎて持ち味が出せなかったという感じです。出演者は結構豪華ですが、中でもロッド・スタイガーが見たこと無いような怪演をしているのでびっくりしました。彼が演じる死体防腐処理係ジョイボーイがジョン・ギルグッドの遺体の顔をいじくりまわすシーンはバッド・テイストの極みです。あと、「ファントム・オブ・パラダイス」のポール・ウィリアムスが少年役で出演していて、彼の子役時代の貴重な演技が見れます。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-04-05 12:05:02) |
428. 将軍たちの夜
《ネタバレ》 ピーター・オトゥールとオマー・シャリフという「アラビアのロレンス」の二人が第二次世界大戦中のドイツ軍将校を演じています。そういやプロデューサーのサム・スピーゲルと音楽のモーリス・ジャールも一緒ですね。お話は戦争映画と言うよりはミステリーサスペンス映画と思った方が正解です。ピーター・オトゥールが演じる将軍が犯す売春婦殺人事件を、戦中はオマー・シャリフが演じるドイツ軍将校、戦後はフィリップ・ノワレが演じるフランス警部が追い詰めていくというのがストーリーです。特筆すべきはピーター・オトゥールで、変態将軍を実に不気味に演じています。その反面オマー・シャリフはどう見てもミス・キャストで、ドイツ軍将校らしくないのが残念です。大量殺人が横行している戦時中に売春婦殺しを執拗に追いかけるオマー・シャリフは、この脚本では雑すぎて観客を納得させられません。オマー・シャリフが属する国防軍と、武装親衛隊の将軍ピーター・オトゥールとの対立という見方もできなくはありませんが。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-04-03 22:27:54) |
429. 何がジェーンに起ったか?
《ネタバレ》 映画史上に残るベティ・デイビスの怪演に圧倒されますが、ベイビー・ジェーンの心理が細やかに描かれていて、上質な心理劇を見させていただきました。ジェーンのメイクや髪形はベティ・デイビスが自ら提案したものだそうで、彼女の女優根性には頭がさがります。ラスト海岸でジョーン・クロフォードから事故の真相を聞かされてからは憑きものがとれたように落ち着き、なんか美しく見えてくるから不思議です。そして映画の展開からは予想もしなかったあの哀しいラストシーンでした、それにしても、あのメインディッシュがネズミのシーンは強烈でした。 [DVD(字幕)] 8点(2009-04-03 22:26:08)(良:3票) |
430. ひとりぼっちの青春
《ネタバレ》 70年代以降大作メロドラマを作るシドニー・ポラックがこんな異色作を撮っていたとは驚きですが、本作は間違いなく彼のベストフィルムです。でも、公開時にこの映画を観たら、きっとトラウマになったと思います。大恐慌時代のアメリカが舞台ですから、参加者には食べ物は確保できるという利点がありますけど、1か月以上続くダンスマラソンなんて想像を絶しています。すごい話です。参加者はダンスをしながら(みんな疲労困憊して体をゆすっているだけですが)バンド演奏、司会者付きで、自分たちの人生を観客に見せているような感覚におちいります。そしてレッド・バトンズは心臓発作で死んでしまうは、スザンナ・ヨークは発狂するは、最後にはジェーン・フォンダは自殺(?)してしまいますが、それでも競技は決着がつかずダンスマラソンは続くのです。“They Shoot Horses Don't They?(廃馬は射ち殺すんでしょ?)”は、マイケル・サラザンが最後に言うセリフですが、現在の社会情勢に通じるものがありませんか。悲しいことに、本作で名演技を見せてオスカーをとったギグ・ヤングは、その後史上唯一の自殺したオスカー受賞俳優になりました。 [DVD(字幕)] 9点(2009-04-02 21:26:34) |
431. アラビアのロレンス
《ネタバレ》 実際のロレンスとは違うという批判があることは承知していますが、歴史上の特異な人物をここまで説得力を持って描いたデヴィッド・リーンの手腕は見事です。なんと言って良いのか迷うとこですが、この映画にはオーラのような迫力があることは確かです。どのシーンも切り取れば一幅の絵画になるような素晴らしい映像の乱れうち、後半のダマスカスで開かれるアラブ国民会議のシークエンスは何度観てもルネッサンス期の宗教画のごとき濃密な映像に感嘆します。ピーター・オトゥールの演じるロレンス像は、歴史上の人物としてはジョージ・C・スコットのパットン将軍、ケイト・ブランシェットのエリザベス1世と並ぶ「他の俳優が演じることが考えられない」名演技だと思います。ロレンスは現在の中東情勢には直接責任はないのですが、イスラエルで彼はどの様に評価されているか興味があります。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-29 13:28:44) |
432. 史上最大の作戦
《ネタバレ》 この映画は、第二次世界大戦の一つの作戦をテーマに作られた初めての映画で、実はこの映画以前のハリウッド戦争映画は、意外と製作費をかけた大作がないのです。制作後40年以上たち、その後同じノルマンディー上陸作戦がテーマの「プライベート・ライアン」が作られたりして影が薄くなっていますが、戦争映画の金字塔であることは間違いないでしょう。監督が国別パートで3人(実際にはプロデューサーのザナックもメガホンをとっているので4人)いるのでタッチが異なるところはありますが、各シークエンスがそれぞれ一つの映画にできるほど素晴らしい映像です。街中に降下してしまって全滅する空挺部隊を、教会の屋根に宙づりになったレッド・バトンズの視点で描く「サンメールエグリーズの虐殺」は、この映画でも屈指の名場面です。出演者が多くて各自の登場時間が少ないのですが、かえって大きな歴史事件を目撃しているようで良いのではないでしょうか。当り前のようですが、ドイツ語・フランス語で演技していることは評価できます。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-29 13:27:02) |
433. 戦艦バウンティ
1789年に起こった史上名高いバウンティ号反乱事件の3度目の映画化です。バウンティ号反乱事件は1933年に「In the Wake of the Bounty」(日本未公開)、1935年「南海征服」、1984年「バウンティ/愛と反乱の航海」と4回も映画化されています。英国庶民にはこの事件は人気があるそうで、日本人の「忠臣蔵」好きと共通するものがあるそうです。監督は「西部戦線異状なし」のルイス・マイルストンで、この作品が彼の最後の監督作です。大作だけあって、史実に基づき建造されたバウンティ号とかタヒチでロケとか見るべきものがあります。ドラマはブライ艦長とクリスチャンの葛藤が軸になって展開するのですが、キザな伊達男という設定のクリスチャンが艦長の暴虐に怒りをおぼえ、性格がかわったように反乱の指揮をとるようになるのが面白いです。二人の関係は、吉良上野介と浅野内匠頭と言えば分りやすいですね。リチャード・ハリスが水夫ミルズを好演して盛り上げています。この作品撮影時のマーロン・ブランドはわがまま放題で、監督・プロデューサーの苦労は伝説になっています。そしてすっかりメジャーから嫌われて、この後マーロン・ブランドは「ゴッド・ファーザー」まで大作には声がかからなくなりました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-03-19 11:39:13) |
434. 未知への飛行
《ネタバレ》 2時間近く上映時間があるのに、全く音楽を使わずに創られた映画というのは珍しいでしょう。それは徹底していて、ほとんど全編が会話と会議の場面ということもあって、効果音としてすら音楽がないのです。そして水爆の爆発を表現した「キーン」という電話回線が熔ける音は、映画史上に残る効果音です。とにかく緊張感が半端じゃない。ヘンリー・フォンダのアメリカ大統領演技は、鳥肌がたつほど素晴らしかったです。私が今まで観た中で一番怖い映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-07 20:18:21)(良:2票) |
435. フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
《ネタバレ》 私が初めて封切時に映画館で観た東宝特撮映画で、いまだに軽いトラウマが残っています。ゴジラシリーズ以外の東宝特撮怪獣映画は、ハードな物語設定で怪獣の恐怖を追及する作品が多いのですが、本作はその中で最高傑作と言えるでしょう。東宝特撮怪獣映画があえて避けてきた「捕食者」としての怪獣をテーマにしたことが観る者の本能的な恐怖心を刺激します。前作で地底怪獣バラゴンに「捕食者」的なキャラクターを持たせていますが、直接描写は見られませんでした。ところが本作では、人間型怪獣フランケンシュタインがヒトを貪り食うというカニバリズム的な映像を見せてくれるわけで、これはガイラの造形と相まって実に怖いです。特筆すべきは自衛隊の対怪獣戦で、軍事作戦としてリアルな演出で見せてくれます。メーサー殺獣光線車が逃げるガイラを追って光線を放射すると、ガイラの前方の木が光線に当たってと激しく吹き飛ぶシーンは、現在の眼で観ても興奮させられます。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-07 11:51:54)(良:1票) |
436. ワイルドバンチ
《ネタバレ》 時代背景を考えると、この映画は1913年の出来事なのです。1913年という年は、あのタイタニックが沈んだ年で、翌年には第1次世界大戦が勃発する様な時代です。パイクたちが使う武器も軍用拳銃コルトガバメントやライアットガンなど20世紀の武器で、米軍から奪った重機関銃まで登場します。ラストでソーントンがパイクの腰から西部劇でお馴染みのコルトピースメイカーを取り上げますが、パイクは劇中でこの銃は一度も抜きませんでした。ペキンパーは、パイクのコルトピースメイカーを消滅したフロンティア、19世紀を象徴させていると思います。ペキンパーのこだわった殺戮描写は、もはや西部劇というより戦争映画のレベルです。何度も観ましたが、6人がエンジェルの村を出てゆくのを村人が見送るシーンが抒情的で大好きです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-02-06 00:22:14) |
437. まぼろしの市街戦
昔はTVで吹き替えで見れたのに、「言葉狩り」が厳しくなるにつれて放映されなくなり、すっかり「まぼろしの大傑作」になってしまいました。一部には熱狂的な支持者がいる(かく言う私もそのひとり)カルトムービーの名作です。3年前にDVDが発売されていることを知り狂喜しました。この映画について書きだしたらきりがないのですが、一人でも多くの人に見てもらいたいですね。私のオールタイム・フェバリットワン・ムービーです。 [DVD(字幕)] 10点(2008-12-19 23:45:30) |