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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1871
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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441.  イン・ザ・トール・グラス 狂気の迷路 《ネタバレ》 
うだるような熱気に包まれたアメリカ南部のとある町外れ。そこでは大人の背丈ほどもある草むらが、見渡す限り何処までも鬱蒼と茂っていた。兄の運転で偶然その地を通りかかった妊娠中の女性ベッキーは、不意に酷いつわりに襲われる。兄に頼んでいったん車を停めてもらい、草むらの陰で水分補給を図るベッキー。すると生い茂る草の向こうから、その声が聞こえてくるのだった――。「誰か、助けて!迷子になっちゃって、僕はもう何日もここで過ごしてるんだ!」。明らかに切迫したそんな少年の悲痛な叫びに、ベッキーはすぐさま兄とともに助けに向かうのだった。だが、何処をどう探しても少年の姿はない。そればかりか、一緒に入った兄ともはぐれてしまう。不安に駆られ、取り敢えず車まで戻ろうと走り出すベッキー。だが、同じようなところをぐるぐると巡るばかりで、いつまで経っても草むらの外へと出ることは出来なかった。パニックに襲われる彼女に、更なる異常事態が訪れる……。鬱蒼と茂る草むらが作り出した、そんな狂気の迷路へと迷い込んでしまった男女を描く不条理系サスペンス・スリラー。監督はかつて『キューブ』と言う作品で、不条理な立方体の迷宮に捕らえられた男女を描き、シュチュエーション・スリラーと言うジャンルを確立したヴィンチェンゾ・ナタリ。数々の罠が仕掛けられた立方体から、何処までも生い茂る草むらへと舞台を変えたそんな本作、まあいかにも彼らしいアイデア一発勝負な内容でしたね、これ。でも、いくら低予算でも独自のアイデアとセンス溢れる演出力さえあればいくらでも面白い映画を創れると証明した『キューブ』とは違い、こちらはどうにも……。草むらの中というずっと同じような絵面の舞台で、数人の登場人物たちがずっと同じような押し問答を繰り返すだけなので、僕は開始30分ほどで早々に飽きちゃいました。原作はスティーヴン・キングの短編らしいですけど、とにかくこの全編を覆う無理やりな引き延ばし感が半端ないです。魅力に乏しい登場人物たちの禅問答のようなやり取りが延々と続いて、最後までさっぱり面白くない。急に出てくるあの謎の植物怪人たちも意味不明で、さして怖くありませんし。ナタリ監督もさすがに歳なのか、あの頃のようなソリッドなセンスはもう枯渇しちゃったってことですかね。うーん、なんとも残念な作品でありました。
[インターネット(字幕)] 4点(2020-05-11 23:05:24)
442.  ビースト・オブ・ノー・ネーション 《ネタバレ》 
神様、今日僕は人を殺しました。人として最も許されざる罪です。でも、僕はこうも思うのです。きっとこれは正しい行いだと――。舞台は西アフリカの何処とも知れぬとある小国。そこに暮らす年端もいかない少年アグーは、貧しいながらも心優しい両親や兄弟たちと充実した日々を過ごしていた。だが、そんな彼にも徐々に戦火の波が近づいてくる。数年前から始まった内戦により、国は真っ二つに分断されていたのだ。突然やって来た政府軍によって、スパイの疑いを掛けられた家族はアグーの目の前で銃殺されてしまうのだった。身寄りのない孤児となったアグーは、行く当てもなくただ森の中を彷徨い歩くことに。近いうちに彼も天国へと召されることになるだろう。そんな時、たまたま通りかかった反政府軍により、彼は〝幸運にも〟拾われることに。「お前の家族を殺した政府の人間に復讐する手伝いをしてやる」――。その日から、アグーは反政府ゲリラの少年兵として銃を手に戦場へと駆り出されるようになる。来る日も来る日も殺し合いの手伝いをさせられた彼は、やがて立派な兵士へと成長してゆく……。内戦に揺れるアフリカの貧しい国を舞台に、そこで過酷な運命に翻弄されるある少年兵の悲劇を描いた戦争ドラマ。一時期、静かなブームを呼んだ、いわゆるアフリカ内戦ものの一つですが、本作はその中でもトップクラスを誇る生々しいリアルさに満ちたものだと思います。まさに〝国家なき野獣ども〟のモラルや倫理など欠片もない残虐行為の数々。冒頭から、主人公の家族が彼の目の前でゴミのように殺されるシーンに始まり、その後少年兵となった彼が最初の殺人を強要されるまで、まさに目をそむけたくなるほど血腥い空気に満ちています。極めつけは、レイプされる村人の若い女の悲鳴が気にくわないからと急に主人公が射殺するシーン。レイプしている当事者や順番を待っている兵士が、彼に「まだ終わってないのに、何するんだ!」と悪態をつくところなんて本当に反吐が出そうになります。でも、それが戦場の現実。ゲリラの司令官に見いだされ、訓練を受けて成長し、やがて仲間と友情を育んでゆく主人公の姿は、日本に居る普通の子供と何ら変わらない。環境や周りの大人たちによってこれほどまでに人は変わってしまうものなのかと、改めて戦慄させられてしまいました。主人公を兵士として導く、ゲリラのカリスマ的司令官を演じたイドリス・エルバの鬼気迫る役作りにも圧倒されます。最後、主人公はこの司令官の洗脳を乗り越え、国連軍に保護されるのですが、それでもこの悲惨な過去を変えることなど出来ない。人間の愚かさと戦争の恐ろしさを改めて考えさせられる、非常に優れた戦争ドラマでありました。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-05-11 13:14:52)
443.  マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版) 《ネタバレ》 
気難しい彫刻家の家長を中心に、一癖も二癖もあるマイヤーウィッツ家の人々の悲喜こもごもを時に辛辣に、時にちょっぴりほろ苦く描くファミリー・ドラマ。プライドだけは超一流で何かというと悪態ばかりつく売れない彫刻家のじいさんを演じるのはベテラン、ダスティン・ホフマン。妻に捨てられた冴えない長男役にアダム・サンドラー。会社の経営者として社会的に成功した立場に居る次男には、ベン・スティラー。他にもアダム・ドライバーやシガニー・ウィーバーと言った豪華な面々がちょい役で出演しております。監督は、僕とはどうにも相性の良くないノア・バームバック。確かにところどころ笑える部分もあるし、個性豊かな登場人物もそれぞれに憎めない魅力を持っているし、何より家族の関係をほろ苦いユーモアを交えて見つめる暖かな目線がとても心地よい作品だったとは思います。でも、やっぱり僕は個人的に好みじゃないんですよね、これ。なんか、赤の他人の思い出ホームビデオを延々見せられてるような感じがして、僕はそこまで嵌まれませんでした。うーん、完成度はかなり高いことは認めますけど、こればっかりは感性の問題なので如何ともしがたい。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-05-09 02:02:18)
444.  失くした体 《ネタバレ》 
切断された右手が、自らの〝失くした体〟を求めて夜の街を彷徨い歩く姿を独創的なタッチで描いたシュルレアリスム・アニメ。という設定を聞いて、川端康成の晩年の傑作短編『片腕』のように、切断された美少女の片腕を愛でるみたいなフェティッシュな妄想に溢れたものか、あるいは『アダムス・ファミリー』のようにシニカルな笑いに満ちたブラック・コメディだと思って今回鑑賞してみたのですが、そのどちらとも違うなんだかよく分からない作品でしたね、これ。切断された右手のシュールな冒険譚と、宿主である根暗青年が一方的に恋した女性をストーカーしてゆく過程が交互に描かれるのですが、これが正直微妙。とにかくこの主人公の鬱屈した愛情表現が気持ち悪すぎて、もう見られたもんじゃありません。何故に右手に魂が宿ったのかも最後まで明らかにされず、かといってそんなことどうでも良くなるくらいぶっ飛んだ展開があるわけでもなく、また癖になるほど強烈な世界観を有しているわけでもない。いったい何を楽しめばいいのか最後まで分からず、なんとも居心地の悪い作品でした。肝心の右手を切断するシーンもちょっと意味不明でしたし。うーん、監督の独り善がり感が際立つ残念な作品でありました。
[インターネット(字幕)] 3点(2020-05-08 19:53:24)
445.  7月22日 《ネタバレ》 
2011年、7月22日。それはノルウェーの人々にとって、忘れられない悪夢の一日となった――。ネオナチに感化された一人の極右青年によって、凄惨極まりないテロが実行されたのだ。まず首相官邸の近くで車爆弾を爆発させた犯人は、現地の混乱を尻目にそのまま保養地として有名なウトヤ島に向かった。そこではちょうど労働党青年部によるキャンプが開催されており、多くの若者たちで賑わっていた。島に辿り着いた犯人は持っていた自動小銃を構えると何の躊躇いもなく、たまたまそこに居合わせただけの若者を次々と襲い始める。数十分にも及ぶ凶行の結果、77名もの何の罪もない市民が犠牲となるのだった…。本作は、そんな実際にあったテロ事件を背景にその日、その島でいったい何が起こったのか、犯人は何故そんな残虐な犯行を実行したのか、そして事件はノルウェーの人々にどのような影響を与えたのかを丹念に描いたものである。監督は臨場感あふれるリアルな作風で知られるポール・グリーングラス。かつて911同時多発テロで唯一自爆攻撃を阻止した旅客機の乗客たちを描いたこの監督らしく、冒頭のリアルなテロ描写には目を見張るものがある。全く躊躇することなく、目に付いた若者たちをただ淡々と銃殺し続けるこの犯人の底なしの狂気には戦慄させられるほかない。いったい何があれば、ここまでの憎しみを心に宿すことが出来るのだろう。物語はその後、この犯人の裁判の過程と彼を弁護することになった弁護士の心の葛藤、そして事件によって瀕死の重傷を負い一生消えない後遺症を負わされた青年のドラマを丁寧に描いてゆく。そこで炙りだされるのは、犯人の思想の脆弱性である。大言壮語なだけで中身は空っぽ、自身の不幸な境遇を全て社会のせいにして、テロを実行した自身を英雄視する気持ちの悪いナルシズム。見れば見るほど反吐が出そうになるこの犯人の薄っぺらい実像とは対照的に、次第に明らかとなる弁護士と生存者である青年のその信念の強さには心揺さぶられるものがある。特に最後、犯人の前で自らの想いを力強く述べる被害青年の言葉には思わず涙してしまった。「僕は生き残った。だから、生きる。仲間や家族のため、そして殺された親友たちのために」――。世界に蔓延する憎しみの連鎖はこれからも続いてゆくのだろう。不寛容の精神は、これからも人々の心に壁を築き続けるのだろう。だが、彼のような言葉があればこの世界に絶望することなく生きていける。そう思わせずにはいられない、切実な希望に満ちた秀作であった。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-05-07 01:44:10)
446.  ザ・ランドロマット -パナマ文書流出- 《ネタバレ》 
社会を震撼させた、パナマ文書流出事件――。多くの政治家や大企業が違法すれすれの手法を駆使し、多額の納税を免れていたのだ。幾多のペーパーカンパニーを介した迂回融資や資金洗浄によって、巨万の富を貪っていた世界の金持ちたち。あろうことか、彼らの金の流れは中国の人権弾圧や汚職、事件を追及していたジャーナリスト殺害にまで繋がっていた。そしてそれは、アメリカの片田舎でセカンドライフを楽しんでいた老夫婦のささやかな幸せまで奪ってゆく……。実際にあったそんな経済事件を背景に、メリル・ストリープ&ゲイリー・オールドマン&アントニオ・バンデラスという豪華俳優陣を揃えて映画化したというそんな本作、監督がスティーブン・ソダーバーグと言うこともあり今回鑑賞してみました。なるほど、これは最近流行りのこっち系の映画だったのですね。いわゆる、「難しい経済問題を庶民の皆様にも分かりやすく解説みました」的な感じ。アカデミー賞を受賞した同じような経済ドラマに『マネーショート』がありましたが、正直、僕はこういう感じの映画は苦手です。登場人物がカメラ目線で観客に話しかけてくるという、ね。なんだか軽く馬鹿にされてるような感じがするのは僕だけなのかな?「すんませんねぇ、僕たち庶民は不勉強なもんで。でも、あんたらセレブに言われたくねー」なんて思ってしまった自分は卑屈すぎ?うーん、そんなわけで僕は全く嵌まれませんでした。4点!
[インターネット(字幕)] 4点(2020-05-04 21:31:34)
447.  1922 《ネタバレ》 
1922年、あの時代、男の誇りと言えば自らの土地と息子だった――。アメリカ南部の田舎町で農家を営むジェイムズ一家。家長であるウィルフレッドはいま、とある問題に頭を悩ませていた。この肥沃な農地を父から相続した妻が、この地を売り払って都会暮らしを望んでいるのだ。権利は全て相続人の妻にあり、拒否すれば離婚も辞さないという。だが、ウィルフレッドの望みは一人息子であるヘンリーにこの土地を引き継がせ、これからもここで農家として暮らしてゆくことだった。次第にギクシャクし、諍いが絶えなくなるジェイムズ一家。悩んだ末に、ウィルフレッドはある一つの決断を下す。それは、自らの妻を殺してしまうことだった――。綿密に計画を練り、息子の手を借りて完全犯罪を実行に移すウィルフレッド。裏庭の井戸に妻の死体を隠し、それまでと変わらぬ生活を営もうとする父と息子だったが、その日から少しずつ日常が歪み始める…。ネブラスカの広大な田舎町を舞台に、妻を殺した父と息子が辿る悲劇をダークに描いたサスペンス・スリラー。原作は泣く子も黙るモダン・ホラーの大家、スティーヴン・キング。いかにも彼らしい、全編に渡っておどろおどろしい空気が濃密に漂う、こってり濃厚な作品でしたね、これ。もう見ているだけで汗が滲んできそうな暑苦しい田舎町を舞台に描かれる、ある一家族の愛憎渦巻く犯罪劇は見応え充分でした。特に、井戸に捨てた妻の死体を次の日覗いてみるとネズミが大発生していたというシーンは夢に出てきそうなくらいエグい。物語はそこから、この親子の因果応報とも言うべき破滅への過程を丹念に辿ってゆくのですが、こちらもいちいち観客の神経を逆撫でするエピソードばかりで大変グッド。天井からいきなり血が滴り落ちてきたり、大量のネズミがパイプを伝って溢れ出てきたり、血だらけの妻がちょっとずつ迫ってきたり……と、ベタながらもツボはちゃんと押さえられていたのでけっこう怖かった。ここらへんはさすがスティーヴン・キング原作って感じです。ただ、さすがにオーソドックス過ぎるのが本作の弱いところか。あまりに王道過ぎて、こちらの想定した範囲を一切越えてこないんですよ。もう少しこの作品ならではと言う突出した部分が欲しかったかな。結論。まあぼちぼち面白かったですけど、一か月後にはきれいに内容を忘れてしまいそうな作品でありました。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-05-03 22:08:45)
448.  6アンダーグラウンド 《ネタバレ》 
ゴーストたちはお互いの名前すら知らない――。自らの存在を死んだものとして表舞台から消し去り、裏の世界で暗躍する6人のプロフェッショナル集団。その目的は、法で裁けぬ巨悪を人知れず打ち倒すこと。彼らは安全のために、それぞれの詳しい経歴はおろか名前すら知らず、お互いを数字で呼び合っていた。皆のリーダーで億万長者のワン、諜報活動の専門家で元CIA職員のトゥー、銃器のプロフェッショナルで遠く離れた目標でも一撃必殺のヒットマン・スリー、超人的な身体能力でどんなに高いビルでも素手で昇ってゆく通称スカイウォーカー・フォー、医学の専門家でいくら危険な現場でも仲間の命を救うために最善を尽くすドクターのファイブ、そこに道があればその超絶ドライビング・テクニックで何処までも逃げとおすドライバーのシックス。彼らの今回の任務は、東アジアの小国で独裁者として猛威を振るう大統領を失脚させること。だが、作戦の途中でドライバーのシックスが帰らぬ人となった。それでも目的を諦めるわけにはいかない。新たな仲間候補として元軍人に目を付けたワンだったが……。自らの正義のために、世界で暗躍するプロフェッショナルたちの活躍を怒涛のような勢いで描くアクション・エンタメ。監督を務めるのはこの分野の巨匠?マイケル・ベイ。冒頭の激しいカーチェイスから文字通りノンストップで最後まで突っ走る、もういかにも彼らしい脳筋映画のそんな本作。まあ観る前からおおよそ分かってはいましたが、それでもさすがにこれは中身スカスカ過ぎちゃいまっか。ストーリーなんてあってなきが如し、登場人物も潔いくらいステレオタイプ(だって名前すらないんですから!笑)で、ただひたすらアクションに次ぐアクション。だいたいこんなことを言うのは野暮かもしれませんけど、独裁者の弟で民主化リーダーのあの薄っぺらい演説だけで国の体制を変えるようなクーデターが起こるなんてあり得ませんて!!あまりにも大味すぎて、最後の方はもういいから早く終わってくれーー!!と半ば呆れながら観てましたわ。まあこればっかりは好みの問題と言ってしまえばそれまでなんだろうけど、僕はもうちょっと中身のある映画が観たいっす。お金を存分に掛けたであろう冒頭のカーチェイス・シーンだけはさすがの迫力だったので、+1点!
[インターネット(字幕)] 5点(2020-05-02 00:46:24)(良:1票)
449.  ROMA/ローマ 《ネタバレ》 
政情不安に揺れる1970年代のメキシコを舞台に、とある裕福な家族に雇われた家政婦の苦難に満ちた人生を描いたヒューマン・ドラマ。監督は前作『ゼロ・グラビティ』でアカデミー賞の栄誉に輝くアルフォンソ・キュアロン。全編白黒で描かれた映像は、いかにもこの監督らしく芸術性に富んだ素晴らしいものでした。長回しを多用したその構図は緻密に考えられており、そこに映る役者陣も皆いい仕事をしています。特に子供たちの生き生きとした、とても演技とは思えないナチュラルな表情には目を見張るものがあります。お話の方も、男に振り回される貧しい家政婦の目を通して、歴史の巨大なうねりの中で犠牲にならざるを得なかった名もなき人々の想いを掬い取ることに成功しています。最後、海岸の巨大な波にさらわれ溺れそうになった子供たちを救い出そうと我が身を省みずに飛び込む主人公の姿は、なかなか象徴的です。男社会の身勝手な論理に押し潰されそうになりながらも、それでも目の前の子供たちを必死になって救おうとする彼女に思わず心揺さぶられてしまいました。この監督の過去の作品を髣髴とさせるような映像が何度か差し挟まれるのも遊び心があって、この淡々と進む物語にいいアクセントを与えています。ただ、犬の糞を何度も大写しにしたり、素っ裸の男が性器を振り回しながら暴れまわったりする映像があるのには若干辟易してしまいました。特に後者は果たして本当に必要であったのかどうか?そこらへんに不満はありますが、僕はおおむね満足。女性が子供を産み育てることによって歴史は作られてきたという普遍的な事実を改めて考えさせられる、なかなか完成度の高い秀作でありました。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-04-30 22:01:12)
450.  バード・ボックス 《ネタバレ》 
それは本当に世界の終末なのか――。突如として全世界に拡がった謎の伝染病。その病気に感染した人々は急に狂いだし、自ら死を選ぶ衝動に駆られるようになるのだった。運転していた車のアクセルを限界まで踏み込み、手にしたハサミを自分の首元へと突き立て、自ら火の中へと飛び込む感染者たち。さらに恐るべきことには、その疾病は発病者の姿を〝見る〟ことによって感染するのだ。瞬く間に増殖する感染者によって、社会は暴力と死に支配された絶望的な世界へと変貌を遂げる。そんな破滅の淵に瀕する世界を生き延びるため、現在妊娠中のマロリーはある一軒の豪邸へと逃げ込むのだった。強固なセキュリティに守られたその家の中には、同じく逃げ延びた何人かの人々がすでに籠城していた。外には多くの感染者が徘徊し、しかも食料は残り僅か。マロリーとお腹の中の赤ちゃんは無事に生き延びることは出来るのか?恐ろしいディストピアと化した世界で、なんとしても生き延びようともがくそんな母子の姿を描いたサバイバル・スリラー。冒頭からいきなり始まるパンデミックの絶望的な描写に摑みはばっちり。死への衝動に駆られた感染者たちが、次々と自ら死を選ぶさまはかなり怖いです。物語はその後、一軒の豪邸内に籠城する彼女たちと、五年後、大きくなった二人の子供たちとともに河を下って脱出しようとする彼女の姿を交互に描いてゆきます。まあこういう不条理系パニック・スリラーの名作『ミスト』の一亜流と言ってしまえばそれまでですけど、この閉じ込められた人々の極限の心理劇はなかなか良く出来ている。感染者の姿を見てはいけないという設定も荒唐無稽ながらけっこう効いています。一時期大流行りした〇〇してはいけない系のはしりみたいな感じですね。目隠ししたまま幼い子供たちと貧弱なボートで激しい川を下ってゆくシーンは緊迫感もあって大変グッド。ただ、脚本に突っ込みどころ満載なのが本作の惜しいところ。感染者たちが全員すぐに死を選ぶのかと言ったらそんなこともなく、何故か非感染者を襲う者も居るというのはおかしい。また姿を見ても感染しない人もいて、その人たちは心に闇を抱えているからという謎の説明だけで済ませちゃってるのも納得いきません。目指していた安全地帯が実は盲学校だったという最後のオチもいまいち腑に落ちない。目が見えない人たちはそもそも見ることが出来ないから感染しないというのであれば、全員そうじゃないとおかしいのですが、ちゃんと目が見える人もそこに混ざってますし。主人公親子も最後、生き延びるために自ら盲目になるくらいのオチがないと説得力がありませんって。前半はパニック・スリラーとしてはなかなか頑張っていただけに、ここら辺の詰めの甘さがなんとも残念。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-04-29 00:36:10)
451.  2人のローマ教皇 《ネタバレ》 
2012年、全世界に10億人以上の信徒を有するカトリック教会は揺れていた。資金洗浄や聖職者による信者への性的虐待などスキャンダルが相次いで発覚したのだ。教会の頂点に位置するローマ教皇ベネディクト16世は、事態を打開するため異例ともいえる決断をする。それは、生前退位――。数百年に及ぶカトリックの歴史の中でも前代未聞の異例の事態だった。密かに呼び寄せられたアルゼンチンのベルゴリオ枢機卿は、ローマ教皇のその決断に断固として反対の立場を表明する。誰も居ないバチカンの密室で今後のことについて話し合う二人。すると、いつしかベルゴリオ枢機卿の心に過去の思い出が交錯しはじめる。神父になると決意した若かりし日々、当時付き合っていた恋人との哀しい別れ、常に神の存在を身近に感じていた聖職者としての人生、そして軍事独裁政権下の過去に犯した自らの過ち……。お互いの思いを述べあううちに、枢機卿はローマ教皇の本当の真意を知ることに。実話を基に、生前退位と言う前代未聞の決断を下したベネディクト16世と彼の跡を引き継ぐことになる後のフランシスコ教皇を描いた対話劇。監督は『シティ・オブ・ゴッド』や『ナイロビの蜂』などで貧困に喘ぐ第三世界の真実を見つめ続けるフェルナンド・メイレレス。実在した二人のローマ教皇を貫禄たっぷりに演じるのは名優、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライス。正直、この二人の爺さんの宗教的な話し合いが延々と続くという、おおよそ面白くならなさそうな題材なのに、最後までちゃんと興味深く観られたのは、この二人の演技力による部分が大きい。健康に気を遣って万歩計を手放せなかったり、過去の確執から最初は一緒に食事をしなかったり、お互いの趣味を薦め合ったり、最後はピザ片手に一緒にサッカーを観て盛り上がる…。おおよそ宗教家らしくないそんな二人の人間的な部分に思わずほっこりしちゃいました。いくらローマ教皇でも、プライベートはそこらの定年退職した親父と大して変わらないんですね(笑)。二人揃ってアカデミー賞ノミネートも納得です。また、二人の対話劇の背景となる、バチカンの壮大な建物や美麗な装飾品の数々も歴史と伝統を感じさせて見ていて飽きさせません。そして後半、この枢機卿が過去に犯した過ち――軍部に目をつけられた信徒を救えなかったという事実に目を向ける視点はいかにもメイレレス監督らしい。歴史の巨大なうねりの陰には、常に名もなき人々の犠牲がある――。そんな普遍的な事実を改めて考えさせられる、ヒューマン・ドラマの秀作でありました。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-04-27 18:36:37)
452.  オクジャ/okja 《ネタバレ》 
スーパーピッグ――。それはアメリカの大企業ミランド社がチリの農場で偶然発見した新種の豚だ。最小限の食料で何処までも大きく育ち、しかも排泄物は少量、何より「美味しい」その豚は、世界の食糧危機を救う奇跡の豚として世間の注目を集める。将来の安定供給を目指すミランド社は、発見された27頭の子豚を世界各国に配布し、どの国の飼育方法がもっとも優れているかをなんと10年間モニターする計画を立てる。そして、10年後…、ミランド社が世界に配られた27頭のスーパーピッグを調査してみると――。韓国の人里離れた山の中で、小さな女の子ミジャに育てられたオクジャ。丸々と太っただけでなく、豊かな自然の中で伸び伸びと育ったその豚は誰が見ても見事な豚だった。ニューヨークで大々的に発表されることになったオクジャは、ミランド社のトラックに乗せられ、そのまま首都ソウルへと搬送されることに。だが、幼いころから家族同然に暮らしてきたミジャは到底納得いかない。何としてもオクジャを取り戻すため、すぐさまソウルへと向かうミジャ。そこにミランド社を敵視する過激な動物愛護団体も現れ、ソウルは大混乱へと陥ってしまう。果たしてオクジャとミジャは無事に再会を果たすことは出来るのか?韓国映画界を牽引するポン・ジュノ監督が、豪華キャストを揃え、そんな愛くるしい食用豚を巡るバトルをノンストップで描いたエンタメ大作。とにかくこのオクジャと言う巨大豚のフォルムがとても魅力的でした。となりのトトロとクマのプーさんとダンボを足して割ったような愛くるしい見た目でありながら、ちゃんとリアルさも感じられる絶妙な匙加減で大変グッド。そして、この豚と友情を育む女の子もその素朴な見た目とは裏腹に行動力抜群で、こちらも負けず劣らず魅力的。彼女がオクジャのためにソウルの街を疾走する前半部分はテンポも良く、演出もキレッキレで普通に面白かった!トラックの天井に摑まった女の子がトンネルにぶつかりそうになるシーンなんて手に汗握っちゃったし。途中からこのチェイスに参加する動物愛護団体のメンバーもなんだかとぼけた味があり、オクジャを乗せたトラックを運転する若者が変にクールなのも見ていて楽しい。そして舞台がニューヨークに移ってからは一転、一気にシリアスさが増すのも素晴らしい演出でした。何処かアウシュビッツを髣髴とさせる暗い飼育場で、ただ屠殺されるために並ぶ豚たち――。食べられるために生まれてくる命は自然の摂理として正しいのか?激しいカーチェイスやオクジャの愛くるしい造形で前半はたっぷりと楽しませ、後半は他の生物の命を頂いてその生命を維持する人間の業についてちょっぴり考えさせられる、素晴らしいエンタメ作品でありました。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-04-26 00:30:46)
453.  ショート・ターム 《ネタバレ》 
ショート・ターム12――。それは、短期滞在型の児童福祉施設だ。そこでは、家庭に問題を抱えた様々な子供たちが暮らしている。育児放棄や児童虐待、家庭内暴力や貧困などそれぞれに深刻な問題を背負った子供たち。彼らの世話や健康管理を担当する施設職員グレイスは、そんな子供たちが日々巻き起こす問題に忙殺されていた。彼らの切実な思いに満足に応えられないというジレンマに悩むグレイス。彼女の唯一の心の支えとなっているのは、同僚で一緒に暮らしている恋人メイソンの存在だった。そんなある日、グレイスに予期せぬ妊娠が発覚する。だがグレイスは、素直に喜ぶことが出来ない。何故なら彼女自身もまた、幼いころ実の父親に虐待を受けていたというトラウマを抱えていたから。そこに同じく父親から虐待を受けていると思しき女の子、ジェイデンがやってきて…。小さな児童福祉施設を舞台に、そこに暮らす様々な子供たちや職員たちの心の葛藤を描いたヒューマン・ドラマ。自傷行為やドラッグ、衝動的な暴力や精神疾患等々、ここで取り上げられる子供たちの実態はかなり深刻で、ともすれば非常に暗い作品になりそうなのだが、そうさせない魅力がこの作品にはある。きっとそれは、登場人物誰一人として希望を失っていないところだろう。親からの虐待やネグレクト、中には実の父親からの性的虐待などと言う心が挫けそうになる深刻な事態に陥りながらも、それでも彼らは明日を見つめることを止めない。それはグレイスをはじめとする施設職員も同じで、ここで暮らす誰もが時に反発しあいながらも絶えず前を向こうと努力している。そんな彼らを、この監督はまるでこの施設に一緒に暮らしている一員かのような目線で見つめている。物語の進行とともに、観客はいつしか彼らの仲間の一人となっているかのような感覚に陥ってくるのだ。この監督の豊かな才能のなせる技なのだろう。主人公を演じたブリー・ラーソンもそんなトラウマに悩む施設職員を等身大に演じていて、とても魅力的だった。彼女と父から虐待を受ける少女ジェイデンとの間に芽生える友情には心揺さぶられるものがある。特にジェイデンが創作した童話「友達のサメのために足を差し出すタコ」という哀しいお話に、彼女がじっと耳を傾けるシーンには思わず涙してしまった。この世は辛く悲惨なことばかりだけど、それでも前を向いて生きていこう。自分のことを理解してくれる仲間のために――。そう思わずにはいられない、とても優れた物語だった。
[DVD(字幕)] 8点(2020-04-23 00:01:10)
454.  ガラスの城の約束 《ネタバレ》 
ニューヨークの高層マンションでセレブな生活を送る雑誌記者ジャネット。金融マンの婚約者とともに何不自由なく暮らしていた彼女はある日、街の片隅でゴミを漁るホームレスの夫婦を目撃する。眉を顰め、すぐに立ち去るジャネット。だが、そんな年老いたホームレスの姿は、幼かったころの悲惨な思い出を彼女に蘇らせるのだった。何故なら、そのホームレスこそジャネットの実の両親だったから――。酒浸りでロクに働かない父親と夢見がちで生活能力が皆無に等しい自称画家の母親。彼らとともに借金取りから逃れ全米各地を転々とするかつての日々。ほとんど学校にも行かせてもらえず、ろくに食べるものもない悲惨な状況で、ジャネットは幼い姉弟たちとぎりぎりの生活を強いられていたのだった。成長とともにこんなどん底生活から抜け出そうともがくジャネットだったが、親子という絆は彼女を簡単には開放してくれない…。親としての責任を放棄した両親の元、過酷な生活を余儀なくされた子供たちのどん底の日々を実話を基に描いたヒューマン・ドラマ。そんな典型的な毒親を演じるのはウディ・ハレルソン&ナオミ・ワッツと言う個性派コンビなのですが、まあとにかくこの両親、これまで色んなダメ親の映画を観てきましたが、その中でもトップクラスの最低夫婦でしたね。無計画に4人も子供を作りながら、ろくに働かず飢えた子供たちをほったらかして一日4箱の煙草と2リットルの酒と言う自らの欲望にだけは忠実な父親。金にもならない絵ばかり描いて幼い子供たちに家事を強要させた挙句、小さな女の子に大やけどを負わす母親。もう徹底的に反吐が出そうになるほど最低の両親なのですが、それでもときおり見せる子供たちへの愛情が本物なのがまた厄介。行政が出てきて強制的に保護されるぎりぎり手前のラインなので、ある意味、こいつらが一番最低な両親とも言えます。そんな彼らの姿が、成長し今や成功した次女ジャネットの目線で描かれるのですが、その愛憎相半ばする葛藤が凄くリアルなんです。最低で悲惨なことばかりだったけど、それでも楽しかった思い出もたくさんあった。そう、まるでガラスの城のように――。「死んだら誰も悪うに言わんからはよう死ね!」。これは無頼派漫画家、西原理恵子が作品中でよく親に使っていた言葉なのですが、それと通じる屈折した想いがここにはある。どんなに最低でも親は親、死と時間がいつか解決してくれる。深い諦めにも似た、そんな境地で最後、家族とともに過去の思い出を楽しそうに語るジャネットの姿に思わず涙してしまいました。この監督の作品は初めて観ましたが、この貧困の現実を冷徹に見つめるスタンスは素直に素晴らしい。かなり重たい作品でありますが、親と子の関係に悩む多くの人に是非観てもらいたい優れた良作でありました。
[DVD(字幕)] 9点(2020-04-18 00:31:45)
455.  Mr.&Mrs.フォックス 《ネタバレ》 
マフィアの女ボスのヤバい金をポーカーですっかりスッてしまった詐欺師夫婦。「このままじゃ殺される!」。追い詰められたそんな彼らが思いついた方法。それは、とある映画監督が妻にプレゼントした高価な指輪をこっそりいただいちゃおうというものだった。すぐさま映画監督の家へと乗り込んだ彼らだったが、一癖も二癖もある豪邸の住人達に逆にどんどんと振り回される羽目に……。果たして指輪のゆくえは?おとぼけ詐欺師夫婦が高価な指輪を盗むために悪戦苦闘するする姿をスラップスティックに描いたクライム・コメディ。ユマ・サーマン&ティム・ロスがキャストを務め、そんなダメダメ詐欺師夫婦〝Mr.&Mrs.フォックス〟を演じてるということで今回鑑賞してみました。なんですけど、いやー、これが近年稀に見るダメ映画でしたね。もうほんとつまんない。冒頭からさっぱり笑えないギャグと意味不明な演出が延々と繰り返され、最後まで観るのが拷問に近いくらい辛かったです。どうしてこんなクソ映画にこんな豪華キャストが揃っているのかホント疑問。最初から最後までここまで一ミリたりとも面白くないと、逆にある意味凄い作品なんじゃないかとさえ思っちゃいます(笑)。どうしても自分は時間を無駄にしたいんだ!と言う方以外にはお薦めできません。
[DVD(字幕)] 2点(2020-04-17 06:16:43)
456.  キング・オブ・コメディ(1982) 《ネタバレ》 
マーティン・スコセッシ監督&ロバート・デ・ニーロ主演、この黄金コンビの映画ほぼ全て観てきたつもりだったけれど、その中でも意外に見落としていた本作を今更ながら今回鑑賞してみました。どうして今まで手を出していなかったかというと、このド直球なタイトルから、才能あふれるコメディアンの卵が努力と下積みの末にトップに成り上がるサクセス・ストーリーだと僕が勝手に思い込んでいたせいでいまいち興味を惹かれなかったから。でも、意外や意外、これって全然そんな話じゃなく、むしろ『タクシー・ドライバー』のブラック・コメディ版のようなかなりイタいおっさんの妄想炸裂映画じゃないですか!本作の魅力は、もうとにかくこのロバート・デ・ニーロ演じるルパート・パプキンの強烈な印象に尽きると思います。勝手に自分に才能があると思い込んで、夜な夜な自分がスターになる日々を妄想し、師事するコメディアンにストーカーまがいの付き纏いを続けた挙句、最後はあり得ないほど暴走しちゃうというとにかく全てがイタイ奴。いやー、でもなんか嫌いになれないんですよね、この人。きっと何処かでこのおっさんの気持ちに共感しちゃってる自分が居るからなんでしょうね。ここらへんはやはり名優ロバート・デ・ニーロの類稀なる演技力による部分が大きい。特に、勝手にスター・コメディアンの別荘に乗り込んじゃうシーンは、そのイタさ爆発という点で出色の出来でした。後半のキチ〇イ金持ち女との名コンビぶりなんてかなりキレッキレで、もう爆笑。スコセッシってコメディを撮る才能もあるんですね。そしてこの主人公、なんだかんだやらかした挙句に最後は好きな女にええかっこして本懐を遂げる……。スコセッシ、こういうモテない男の気持ちがよく分かってらっしゃる(笑)。うん、『タクシー・ドライバー』より断然こっちの方が面白かった!8点!!
[DVD(字幕)] 8点(2020-04-14 22:01:06)(良:1票)
457.  リヴァプール、最後の恋 《ネタバレ》 
ジュリエットを演じるには、私は歳を取り過ぎてる?――。1981年、リヴァプール。長い下積み生活を続ける売れない役者ピーターの元にある日、一本の電話が掛かってくる。過去にオスカーを獲得したこともある、かつての人気女優グロリア・グレアムが公演中の劇場で突然倒れたというのだ。何故か彼女は病院でも家族の元でもなく、ピーターのアパートに運んでほしいと訴えたらしい。戸惑いつつも彼は、両親や弟夫婦も住む自らのアパートへと彼女を連れてきてもらう。胃にガスが溜まっただけですぐに良くなるというグロリア。彼女との再会は、この数年間のともに過ごした濃密でかけがえのない日々を彼に蘇らせるのだった。運命的な出会いと初めてのデート、還暦に近い女性と28歳の自分との歳の差を越えて過ごした幸せな月日、そして愛に満ちた情熱的なセックス――。だが、いつまで経ってもグロリアに回復の兆しは見られない。主治医と連絡を取ったピーターは、彼女の本当の病名を知ってしまう…。実話を基に、往年の名女優と売れない役者との30歳もの歳の差を乗り越えて紡いだ愛の日々をドラマティックに描いたラブ・ストーリー。いつまでも女としての誇りを失わなかった、そんなかつての人気女優を演じるのは同じく還暦に近い名女優アネット・ベニング。本作の最大の見所は、いつまでも若々しい彼女のチャーミングな魅力に尽きると思います。確かに四人も子供がいる年相応の見た目なのですが、やはり女優と言う職業柄なのか、終始凛とした彼女の美しさに思わず惚れ惚れしちゃいました。そして、二人の大胆なラブシーンにちょっとびっくり。でも、きっと撮り方もあるのでしょうけど、終始上品で美しく、また実に官能的で大変良かったです。普段は若い子のばかり見てる僕でも、たまには熟女ものも見てみようかななんて思ってみたり(笑)。また回想シーンへの入り方も凄く凝った撮り方をしているのも印象的でした。と、ラブストーリーとしてはすこぶる王道で充分及第点ではあるのですが、その分物足りなさを感じたのも事実。あまりにもオーソドックス過ぎて、こちらの想定した範囲を一切越えてこないんですよね、これ。まあ原作がこの青年の回想録と言うことで、かなり思い出美化フィルターが掛かっているからなんでしょうけど、ちょっとあまりにキレイごと過ぎたのが僕的にはちょっぴり不満でした。もう少しこの青年の打算的なずるい部分(恐らく経済的な)にも踏み込んで欲しかったですかね。そしたらこのきれいごとなお話にピリリとした隠し味が利いて、より深みのある物語になったと思うのですが。まあでもそこは好みの問題。どんなに歳を取っても男と女でありたいと思わせる、なかなか美しいラブストーリーでありました。
[DVD(字幕)] 6点(2020-04-10 23:42:36)
458.  トラジディ・ガールズ 《ネタバレ》 
「トラジティ・ガールズ(惨劇少女たち)」がサイコーだと思ったら、いいね!してね――。サディとマッケイラはいつも一緒に居る大の仲良し女子高生コンビ。目立ちたがり屋で楽しいことが大好きな二人には、最近ちょっぴり不満なことがあった。それは、二人で始めたブログのフォロアーがほとんど居ないこと。「プロムまでに10万人に増やしたい!」。そう決意した彼女たちは、とっておきの方法を思いつく。最近世間を騒がせている連続殺人鬼をこっそりと捕まえ、なんと自らの手で人を殺しちゃおうというのだ。そして連続殺人鬼の正体を探る自分たちの動画を作って、世間の注目を集める。完全に自作自演のヤバい方法だが、目立つことが大好きな彼女たちは無事に?殺人鬼を捕まえることに成功する。そして彼の犯行と見せかけ、人を殺しまくるのだった。見事に推理を的中させ、被害者の第一発見者となった彼女たち「トラジティ・ガールズ」はどんどんとフォロワー数が増えてゆくのだったが……。シリアルキラー女子高生コンビの血と汗に塗れた青春の日々をキュート&グログロに描いた青春ホラー。目立つことならなんでもあり、危険な殺人鬼を監禁するわ、次々と人を殺しまくるわという、完全にイッちゃってるそんな二人なのですが、これが見事に振り切れててなかなか面白かったっすね。罪悪感のかけらもなしに、気に入らない同級生を殺してバラバラにしちゃうとこなんてかなり血みどろでグロいのですが、それを一切感じさせないとこがまた凄い。もうひたすらポップで陽気。こういうぶっ飛んだ青春ものは昔から好みなので僕は普通に楽しめましたが、まあ人によっては眉をひそめちゃうかも。主役を演じた女優二人もそれぞれビッチ感満載で大変グッド。後半、片方に良い感じの男子が出来て友情にヒビが入るというのも面白い。人を殺しまくっといて何を今さら青春しとんねん(笑)。ただ残念だったのは、ストーリーの見せ方が幾分か雑なところ。肝心のこの二人のブログがどんなものか具体的に見せてくれないので、二人がネット上で有名人になってゆく過程にいまいち説得力がないんです。それに殺人鬼を監禁するくだりもストーリー的にうまく活かしきれていない。ここらへん、凄く勿体ないです。とはいえ、全編に散りばめられたホラー映画のパロディもなかなか通好みだったし(最後のプロムはもう完全に『キャリー』で思わず笑った!)、ちょっぴり百合っぽい主役二人も充分魅力的だったし、ぶっ飛んだ青春ドラマとして僕はけっこう楽しめました。少しおまけして7点!
[DVD(字幕)] 7点(2020-04-10 00:02:13)
459.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
彼の名は、オスカー・グラント。まだ22歳のどこにでも居るような平凡な若者だ。カリフォルニアの小さなアパートにまだ籍は入れていないが優しい恋人と一緒に暮らしている。そして、二人にはかわいい盛りの幼い娘タチアナもいる。愛する家族のためにも、オスカーはこれからますます頑張らなければいけない。でも、現実は厳しく、彼自身の遅刻によりスーパーの仕事は2週間前に首になったばかり。過去にちんけなヤクの取引でムショに入った経験もあり、先行きは厳しいがそれでもオスカーは愛する娘のために真人間になろうと誓ったのだ。恋人も母親もそんな彼を精いっぱい支えてくれている。周りに誘惑も多いが、それでも一歩ずつ人生を立て直そうと必死に頑張っていた。そう、あの日あの時に、〝フルートベール駅〟で降りるまでは――。大晦日の夜、オスカーはたまたま乗った電車で過去に因縁のあった知り合いと乱闘騒ぎを起こしてしまう。通報を受けてやってきた白人警官に彼は無理やり電車から降ろされ、ホームで拘束されることに。何も悪いことはしていない。俺が黒人だからか。当然のように抗議するオスカー。騒然としていく駅のホーム。やがて、興奮した警察官によって……。実際にあった、無抵抗の黒人青年を警察が駅のホームで射殺したという事件を基に、彼の人生最後の1日を丹念に追ったヒューマン・ドラマ。のちに幾つものハリウッド大作を手掛けることになるライアン・クーグラー監督らしく、ことさら人種差別の問題を強調しなかったところにまず好印象。お互いに相手のことをそこまで敵視していたわけではないのに、ちょっとした思い込みから起こった悲劇として事件を捉えている。きっとこの監督のスタンスは、人種差別に「怒っている」のではなく、「哀しんでいる」のでしょうね。人種間の対立を必要以上に煽る作品が巷に溢れる昨今、この冷静な視線は素晴らしい。そして、この完璧なまでのストーリーテリングの巧みさ。オスカー・グラントと言う平凡な若者の人となり、そしてこれまで歩んできたであろう人生を過不足なく観客に伝えることに成功している。確かに若さゆえの過ちは幾つも犯してきただろう。仕事をクビになったのも彼の自業自得。でも、だからと言って駅のホームでたくさんの乗客が見守る中、射殺されるほどの罪は犯していない。ある日突然、理不尽にもその人生を絶たれることになった若者の哀しみが静かに伝わってきて、胸が締めつけられそうでした。よくテレビのニュースで流れるようなありふれた事件の一つ一つにも彼のような人生があり、哀しむ人たちがいる。そんな普遍的な事実に改めて思いを馳せられる、良質の人間ドラマでありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-04-07 00:01:06)
460.  ハングマン(2017) 《ネタバレ》 
ある日、街の学校の敷地内で凄惨な猟奇殺人事件が発生。被害者は庭の大きな木に首を吊るされ、胸にはナイフでえぐられたとみられる「O」の文字。さらに遺体の近くには、絞首刑の絵と空白の文字列を示す白線が。そう、犯人は子供の定番ゲーム〝ハングマン〟をなぞり、警察へと挑戦状を叩きつけてきたのだ――。謎の犯人から警察のバッジ番号で名指しされた殺人課のルイニー刑事は、同じく名指しされたかつての相棒で今は定年退職したアーチャー元刑事とともに捜査に乗り出す。そこに彼らを取材する犯罪ジャーナリストのクリスティも加わり、懸命に捜査を続けるルイニーたち。だが、そんな彼らを嘲笑うかのように第二、第三の首吊り死体が発見される……。古典的な文字当てゲームをなぞり、次々と犯行を繰り返す猟奇殺人犯〝ハングマン〟と刑事たちとの息詰まるような攻防を描いたサイコ・サスペンス。名優アル・パチーノが主演を務めているということで今回鑑賞してみました。冒頭から、この分野の名作『セブン』を髣髴とさせるような(てか、そのまんまとも言えますが笑)重厚でおどろおどろしい世界観に摑みはばっちりでした。欧米では定番の文字当てゲーム〝ハングマン〟に見立てた首吊り殺人も大変グロテスクで、アル・パチーノの渋い魅力とも相俟って、「お、これはなかなか面白くなりそうじゃん!」と僕の期待は高まるばかり。でも…、そんな期待も虚しく中盤からものの見事に失速しちゃいましたね、これ。まさに、「ザ・竜頭蛇尾」。そもそもこんな大事件なのに、捜査してるのはほぼこの刑事二人のみで、しかも片方は定年でリタイアした今や普通の一般人ってのがおかし過ぎます。しかも取材してるだけの女性記者がばんばん犯行現場に付いてくるというのもあり得ません。対する犯人も何故にこんな面倒臭い方法で人を殺すのかも説得力に欠け、しかもわざわざ毎日11時ちょうどに首を吊るすという謎の自分ルール。肝心の犯人の正体なんて、「え、こいつ誰やねん」と思わず突っ込んじゃうほど、唐突感が半端ありません。文字当てゲームの回答も、「ここまで引っ張っといてそれかよ!!」と言うもので全く腑に落ちない。「犯行はまだまだ続く」と言わんばかりの最後のオチに至っては、蛇足以外の何者でもありません。あ、ここで訂正。「竜頭蛇尾」じゃなくて「竜頭蛇尾蛇足」な映画でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-04-04 01:04:59)(良:1票)
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