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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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461.  トリハダ -劇場版2- 《ネタバレ》 
ホリプロ所属タレントを主に使ったオムニバスホラーである。前回見てくだらないと思ったにも関わらずまた見るというのもどうかとは思うが、女優目当てで見ているわけなのでやむを得ない。 今回も個別エピソードが6話のほかに全編通しの石橋杏奈編があり、これが他エピソードとも関連付けられた形になっている。超常現象に頼らないというわりに荒唐無稽で絶対ありえない話になっているのも前回と同じで、おそらく「今回はラブホ」「今回はキャバクラ嬢」といった設定が先行でストーリーは後付けだろうが、どうせ作り物ならラブホの話のように小噺的なオチを付けた方が単純に面白い。また似たような構成要素を繰り返し使うのが惰性的に見え、せめて劇場版一つの中で複数回使うのはやめてもらいたいと言いたくなる。 ただし今回は石橋杏奈さんが全編の主役のため、自分としてはどうしてもこの人の姿に目を引かれてしまって見るのを途中でやめられない。前回の主役が悪いわけではないが、個人的にはこれでかえって今回の満足感の方が高かった。また今回は笹野鈴々音さんの「がまんできないよー」というのに笑った。そのほか、佐津川愛美さんが前回よりかなり細身に見えたのが少し意外だったが、こっちの方が本来あるべき姿なのかも知れない。
[インターネット(邦画)] 4点(2016-09-12 20:14:19)
462.  ドロメ【女子篇】 《ネタバレ》 
一つのストーリーを男子、女子それぞれの視点から二本の映画にした「青春ダブルアングル・ホラー」のうちの【女子篇】である。 男子篇と異なり、この女子篇は少なくとも最初のうちは普通のホラーに見えるはずとのことで、確かに普通に怖い場面もなくはないが、やはり男子篇を見てからではネタバレ状態で驚きがない。ただ男子篇同様にコメディとして見れば、男子のいない場所での女子のやり取りがかなり可笑しい。男子が聞くと引いてしまう類の話は含まれていないので、純粋に女の子連中のおふざけが楽しく、ガールズラブ寸前のじゃれ合いも微笑ましい。比嘉梨乃さんのメイド服アピールなども結構笑った。  ところでこの女子篇の個人的な見どころは、森川葵さんのスリーハンドレッド(2007米)まがいの大活劇である。劇中唯一死んでもらいたい人物をこの人が殴りつけていたときに、最初は黒いものが飛び散っていたのが最後は赤い液体になっていたのは大笑いした。ここでの罵声は「女子ーズ」(2014)で有村架純が吐いた暴言を思わせるものがあり、傲慢で滑稽な演出家を揶揄するのが共通していたようでもある。 そのほか、個人的に見たい女優が集中的に出ている点でも意義のある映画だった。自分としては三浦透子さんが映っているだけで注目してしまう性癖があり、特に怒った顔は好きだ(他の表情もいい)。またお色気担当の遊馬萌弥(ゆうまめいや)という人は初めて見たが、この時16歳くらいで最年少だったらしく、本人の性格とは違うとのことだが可愛いお色気をみせていて大変よかった。 ちなみに舞台挨拶によると監督は森川葵さんをメンヘラ女優の代表のように思っていたようだが、それはさすがに思い込みが過ぎると言いたい。  なお余談として、主人公の親友が主人公を「オスメント颯汰」と呼んで盛り上がっていたのは意味不明だったが、ここは自分だけでなく他の登場人物も実は何のことかわかっていなかったようである。「シックス・センス」(1999)の子役の名前など、よほどのホラーファンだけが覚えていればいいことだったようで安心した。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-25 22:08:30)
463.  ドロメ【男子篇】 《ネタバレ》 
一つのストーリーを男子、女子それぞれの視点から二本の映画にした「青春ダブルアングル・ホラー」のうちの【男子篇】である。男女篇が互いに不明部分を補完し合っているところがあるが、主に女子篇での謎を男子篇で解く形になっているため、順番としては女子篇を先に見るのが明らかに正しい(男子篇を先に見たのは失敗)。 男女篇とも冒頭からいわゆるポップな雰囲気を前面に出しており、特に男子篇はほとんどコメディでホラーらしくない(ママの顔だけ怖い)。コメディとしての可笑しさは、バカな男子連中のやらかすことを単純に面白がれるかどうかにかかっているが、しかし個人的感覚としては単にバカだと思うだけで全く笑えず、ボーイズラブ寸前のじゃれ合いも鬱陶しい。また過呼吸とか胡麻餡を垂らす場面がくどいため間延びしたように感じるのは男女篇共通だが、特に男子篇では無駄にしか思えない場面があったりもする。かろうじて前後篇でほとんど唯一の泣かせどころがあるのは男子篇の特徴だったかも知れない。 この映画が売りにしているのはクライマックスのドロメ退治だが、ここは爆笑とはいかないまでも可笑しさはわかり、また「終」を出すタイミングも失笑を誘う。そこからエンディングにつながって、花火ダンスの再現で盛り上がるのも映画の終着点として納得いくものになっていた。終盤の展開は東映戦隊シリーズの流れを汲むものに見えたが、ただしそのように見るとエンドロール後の追加部分が不可解ということになってしまう。実際ここは女子篇の方が本来のあり方であって男子篇は捻りを加えた形のため、この点でも女子篇を先に見るのが正解だという気がした。  ちなみに男女篇に共通だが、劇中の比嘉梨乃さんと岡山天音の関係性が非常に可笑しい(小道具製作とスパゲティの場面に注意)。これに関する舞台挨拶での話を聞くと役者の素顔も見える気がして面白かった。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-25 22:08:28)(良:1票)
464.  恐竜を掘ろう 《ネタバレ》 
監督の出身地である福井県のご当地映画になっている。 クレジットによれば「特別協力」が福井県のほか敦賀市と勝山市で、うち敦賀市では気比松原・氣比神宮・中池見湿地ほか街の風景(松島町とか)、勝山市では福井県立恐竜博物館のほか、えちぜん鉄道(勝山駅)と本町通りの街並みを映している。また「協力」が福井市・越前市・池田町・越前町だったのも、それぞれ劇中のロケ地に対応していたらしい(骨董品店と夜の街・越前和紙の里・能面美術館・福井県陶芸館)。そのほか東尋坊・丸岡城・芦原温泉・永平寺・一乗谷・越前大野といったところや旧若狭国の区域は、今回はPR対象外だったようである。原子力発電所も出ないが、「協賛」として日本原電(日本原子力発電株式会社)の関連団体の名前は出ていた。 監督の出身地である敦賀市と、恐竜博物館のある勝山市が特に重視されたためか、登場人物の移動が長距離にわたる場面が目立ち、敦賀市在住の姉弟の通勤がほとんど県を縦断する距離だったのは毎日ご苦労様である。また勝山市の発掘現場の近くに恐竜の卵があるというので歩いて行った先が、海岸の崖際だったと後に判明したのはかなり面食らった。  内容に関しては、まず監督としての手腕がどうか素人としては何ともいえない。またストーリーは「卵」(の殻)や「化石」をキーワードにして人生を語る話だったらしいがこれも何ともいえない。ついでに発掘場所のロケ地選定や作業従事者の服装(中学校の制服のまま?)、道具(スノーダンプ?)に関しても何もいわないことにしておく。全国的に著名な俳優が関わったとはいえ、地元各界の期待を託すには少し心許ない企画だったように思われるが、まああまりシビアに成果が問われるものではなかったのかも知れない。 ほかキャストに関しては、中学生役の小野花梨さんは可愛らしくていいのだが、はしゃいだ感じを表現するための歩き方がいろいろでお疲れ様でした。またミラーマン(1971~1972放映)と帰ってきたウルトラマン(1971~1972放映)を一緒に出していたのは意味不明で、こういうのはリアルタイム世代としても別に嬉しいとは思わない。
[DVD(邦画)] 2点(2016-08-18 22:19:15)
465.  犬飼さんちの犬 《ネタバレ》 
事前知識なしで見たが「幼獣マメシバ」とリンクしているとは思わなかった。芝二郎というキャラクターを知らない人が見るとかなり当惑するのではとも思うが、まあ犬好きの人であれば一通り全部見て当然のように知っているのかも知れない。自分もたまたま見たことのある人物だったので笑わせてもらったが、さすが先行企画の主人公だけあって発言に説得力がある。「犬を擬人化するのも大概に」というあたりはケモノ全般に通じることだろうから、うちの家の者にも言って聞かせたいものだ(犬はいないがネコはいる)。  ところで、別に犬嫌いではないが犬好きでもない立場でこの映画を見ると、まるで“犬を愛する素質は全ての人にあり、それに気づくことで人は幸せになれる”といったような、いわば神の視点から教訓を垂れるような話になっている。劇中家族や犬好き関係者(一部)の理不尽な行動も、主人公を正しい方向へ導くために神が与えた試練だったのかと思うが、そもそも犬好きでない人間までを共感させるものにはなっていない。最初から犬好きの世界で閉じられた物語であって、犬好きとそれ以外の間を結ぶ話にしようとは思っていないようである。 また劇中では犬限定でない一般論として、相手の気持ちになって考えるとか同じところに安住しないで自分を変えるとか自ら動かなければ結果は得られないとか丸く収めるばかりが能でないというような断片的な人生訓が各所にちりばめられており、これはTVシリーズの方で使ったネタかも知れないが、この映画を見る限りそれほど心に染みるものにはなっていない。主人公が犬嫌いになったエピソードも経験者向けの内容ではあるが必然性が感じられず、またエンディングの歌は本編と全く別の話ができてしまっている。自分が見る限り映画全体としてのまとまりが感じられないが、最低限、犬が出ているというところで筋が一本通っていればいいということかも知れない。 それにしても何で犬嫌いのいる家でわざわざ犬を飼わなければならないのか。ネコにしておけばいいだろうが。
[DVD(邦画)] 4点(2016-08-18 22:19:13)
466.  1944 独ソ・エストニア戦線 《ネタバレ》 
第二次大戦中のエストニアに関する映画である。 エストニアは1939年の独ソ不可侵条約と密約に基づいて1940年にソビエト連邦に併合され、ソビエト体制に不適格とみなされた多くの人々が殺害あるいは収容所送りになった。1941年の独ソ戦の開始後、今度はドイツ軍がエストニアを占領したが、戦況の悪化に伴い(連合国がソ連を支援したこともあり)、1944年にドイツ軍は撤退してソビエト軍が再度エストニアを制圧した。 この映画はその最終段階に関わるもので、ロシアとの国境にあるナルヴァ市近郊での戦闘(1944年7月)から、サーレマー島南部ソルベ半島での最後の戦闘(11月)までを扱った上で後日談を加えている。ちなみに前半の主人公が冗談で言及していたカール12世とは、1700年にナルヴァの戦いでロシアのピョートル1世の軍勢を撃退したスウェーデン王の名前である。  この時期の現地状況についてはよく知らないが、1940年にソビエト軍が現地を占領した際、当時のエストニア国軍が抵抗しなかったのは事実らしく、これに関する悔恨と取れるところが劇中にもあった。それで国軍は解体されたのだろうが、その後は現地で編成されたナチス親衛隊に志願したりソビエト軍に編入されたりして、同じ国民が敵味方に分かれて戦う事態になったことがこの映画で描かれている。戦争が終われば元の暮らしに戻れるとみな思っていたらしいのが気の毒で、そのほか細かいエピソードで描かれた人々の思いも切ない。 また微妙なことだが、劇中ではナチス親衛隊よりソビエト体制の方がはるかに過酷で非人間的に見える。もともと現地では何百年もドイツ人が根付いて来た事情があってのことかも知れないが、もしかすると当時の一般人(ユダヤ人を除く)にとってもドイツの支配の方が寛容だったという感覚が残っていて、それがこの映画にも反映されているのではないかという気がした…そう思うのは、同時期のラトビアについて書かれた本で同様の印象を受けたことがあったからである。 これに関する国民感情として、映画を見る限りは「罪なき人が罪を感じ、罪深い人は感じない」という思いがその後も尾を引いていたのかと思わせるものがある。劇中でも罪なき人への赦しの言葉が出ていたが、戦後70年を機に、そうした思いを受け止めた上で一定の収まりをつけようとしたようにも思われる映画だった。恐らくはソビエト側に協力した人々への感情整理の意味が大きいのだろうと想像するが、シベリア出身でロシア語を話す人物の存在をどう取ればいいのかはわからなかった。まだ読込み不足のところが多いと思われる。 ほか戦争映画としての的確な評価はできないが、少なくとも一兵卒の視点からの迫力は感じられた。当初から出ていたソビエト戦車はT34のようである(T34-85?)。また洋上から艦砲射撃していたのはドイツ装甲艦アドミラル・シェーアか重巡洋艦プリンツ・オイゲンだったらしい(恐らく後者)。
[DVD(字幕)] 8点(2016-08-05 00:55:45)(良:1票)
467.  ファイヤーハート 怒れる戦士 《ネタバレ》 
19世紀リトアニアの反逆者で英雄のタダス・ブリンダの物語である。一応は実在した人物らしいが実像は明瞭でなく、20世紀に入ってからの演劇やTVでイメージ形成されたところが大きいらしい。撮影場所はわからないが、劇中の設定としてはリトアニア北西部のジェマイティヤ地方で、字幕ではラテン語由来の「サモギティア」と書いてある。 時代としてはロシア皇帝アレクサンドル2世による農奴解放令(1861)の時点であり、明治維新の7年前に当たる。当時の現地事情はよくわからないが、かつて独立国だったリトアニアは隣国ポーランドとの合邦の結果として社会・文化のポーランド化が進んでおり、民族集団としてのリトアニア人は社会の下層に位置づけられていたらしい。さらにこの時代にはロシア帝国の支配が及び、主人公の見解によればリトアニア内部での領主と農民の対立を煽っていたとのことである。 この映画では、リトアニア人の民族意識を持った領主が農奴解放令を受けて農民に土地を譲り渡したことにより、初めて実際の耕作者が土地を手にした(自作農になった)状況を象徴的に描いたということらしい。その領主がリトアニア風の名前であるのに対し、ラズモフスキというポーランド風の貴族が殺されたのはポーランドの影響を排する意味だったかと思われる。さらに残った敵であるロシアに対し、これから主人公が率いる抵抗軍が立ち向かうということなのだろうが、この映画でそこまでは扱っていない。  これを単純に映画として見た場合、個人的印象としてはどうも説明不足で、いつまで経っても何が起こっているのかよくわからず、登場人物の区別もしにくいのは困った。劇中世界のスケールが小さいので主人公の英雄ぶりもほどほどでしかないが、これは原題に “Pradžia”(英 “The Beginning”、始まり)とあるように、主人公の経歴の初期段階ということで正当化されると思われる。 劇中には令嬢との恋愛、回復された友情、土地と結びついたリトアニア人意識の確立といった各種要素が盛り込まれ、また領主夫人の不倫など妙なコメディ風味もあったりする。尻に関わる主人公のジョークも小気味よく、このまま連続TVドラマにすればよかっただろうという気もした。また景観面では緩い丘陵と森の土地柄のため見通しがきかない印象だが、若干ながら視界の広がりを見せる場面もあってこういう場所だったかと納得できた。 そのようなことで、異国民としてはとっつきにくいところがなくはなかったが、場所も人も言語もリトアニアの映画であるから、リトアニアに関心のある人にはぜひ見ていただきたい。
[DVD(字幕)] 4点(2016-08-05 00:55:40)
468.  杉原千畝 スギハラチウネ 《ネタバレ》 
製作委員会の中に某旅行社が入っているが、劇中でもその会社の「客船乗務員」が出て来て、難民を助けたいと領事館に対して涙ながらに訴える場面があった。自社の美談として世界に広めたいのかも知れないが、子どもの顔など見てしまえば助けたいと思うのは人として当然のことであり、それ自体が特に美談という気はしない。仮に史実とすれば領事館の功績だろう。 自分としてはあからさまな美談にみずから進んで感動したい種類の人間ではないので、この映画も最初から斜に構えた姿勢で見ていたが、しかし話の本筋としては結構まともだったようである。主人公は「世界を変えたい」と言っていた割に具体的な目標があるわけではなく、基本的には大日本帝国の国益のために働いていたようだが、そのために持てる能力を活用したいという思いは結局満たされずに終わったことになる。しかし、いわば本国政府にまでPersona non grata扱いされたビザ発給の方が、結果的に希望の実現につながったのだと解される。 一人の人間が直接世界を変えるほど大きな仕事をするのが難しいのは当然で、それは優秀な外交官でも同じことだろう。しかし普通の人間が普通の人生の中で、普段の行動を通じて周りの人々に伝えることが多ければ、それが少しずつでも世界を変えていくことになる。一人の人間ができることなど結局その程度でしかないわけだが、そのような意志を持つこと自体は誰にでもできるのであり、逆にそういうレベルで考えるなら、主人公のやったことはまさに偉業ともいえる。それを改めて示したことが、単なる美談の紹介にとどまらないこの映画固有の価値と思われる。  ところでこの映画では、主人公が科学者を逃がしたのが結果的に「別の命を救った」という話になっていたが、さすがに日本人の立場として、広島・長崎の人々が殺されたのは世界平和のために有益だったなどというメッセージを許容するわけにはいかない。所詮アメリカ人の監督だから、アメリカの正義は世界の正義と言いたいのだろうと解していいのか。このことでロシア女が主人公を薄ら馬鹿のように憐れんでいたらしいのも腹立たしい。劇中の出来事が事実とは限らないにせよ、これで主人公のモデルになった実在の人物の名誉が損なわれないよう願うしかない。 なお主人公の妻がケーニヒスベルクの近郊で「日傘を差す女」を気取っていたのは意味不明だったが、こういうのは単なるお遊びと思っていいか。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-30 21:41:02)
469.  海難1890 《ネタバレ》 
まず前半では、海難と遊興の対比が意味不明だとか、悪人が突然転向して本当はいい人だったことになるといったマイナス要素が何かと多いが、そういうのも感動物語に紛れて見過ごしにしてしまう面がなくはない。一ついいと思ったのは、日本人は相手に頭を下げられると頭を下げ返さずにはいられない人々だというのを映像化していた場面だった。 しかし素朴な疑問として、両国の民に共通のメロディがスコットランド民謡(誰かさんと誰かさんが麦畑)だったというのは実話なのか。2013年の別の映画でも似たような場面があったが、それは当の相手国の歌であり(蛍の光/Auld Lang Syne)、かつ原歌詞がその場面に合っていたからこそ感動的だったのであって、トルコ人相手に同じことをしても違和感しかない。表層的な文化は違っても、人の心は間違いなく通じたというだけでいいのではないのか。 また劇中の海難救助が「村人たちにとって当たり前のことなんだ」というのは紀伊大島に限らずその通りと思うが、それなら助けられた当人を相手にして、これでもかこれでもかと恩を着せるようなことを言うものではない。トルコ人は船が難破すると生存者を殺して財物を奪う民だとでも言いたいのか。自分の善行を強調しすぎて相手を貶めている。  後半に関していえば、日本人も陸路で逃げればいいのでは、という素朴な疑問を解消しようともしないまま、トルコ人の一部を排除してまで日本人が割り込んだ形になっていたのは非常に抵抗感がある。助けられたのは事実であるから感謝しなければならないが、そもそも日本国政府とナショナルフラッグキャリアの尻拭いを他国にやらせておいて、それは恩返しだから当然だ、というような映画を作ったのは日本側として恥ずかしくないか。そんな根性でよくも前半では偉そうに説教などしたものだ。 加えて、緊急時に怒鳴るばかりで妻子を危険にさらすような男を、よりによって真っ先に助けるなどという展開は全く受容できない。男児が泣いていたのは父親が激高していたのが原因だろうが。自分だけ残って死ね馬鹿が。  以上、ネット動画で見ていればいいものをまともに映画化などするような話か、というのが正直な感想だった。点数は日本人とトルコ人の友情のために入れておく。ちなみに個人的には自室の壁にトルコの青い目玉の魔除けを3個も飾ったりして親トルコ派のつもりだが、最近は何かと物騒な国になってしまったのが悲しい。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-30 21:40:59)
470.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
(初見時以降適宜修正)ゴジラファンという自覚が全くないにもかかわらず、なぜか必ず見に行くはずだと周囲の人々に思われていて圧力を感じたために仕方なく見たが、公開初日を含めて結局3回見た。何度見ても退屈を感じる暇のない映画だが、それは早口のせいもあると思われる。真面目なだけでなく微妙に笑えるネタも仕込んであり、個人的には冒頭の映倫マークで足音一つというところから可笑しい。特に巨大不明生物が初めて全貌を見せた場面はかなり衝撃的(笑)で、これは見事に意表をつかれた感があった。終盤の在来線爆弾も悪ふざけのようで、やりやがったなと苦笑させられた。  ストーリーとしては、要は前例のない大災害への日本国の対応を描いている。野次馬的な国民も被災者も、各種勢力の蠢動も登場人物の家庭環境も全てチラ見せした上で、政治・行政・防衛と対外関係に絞った形になっている。 政治家に関しては、世俗にまみれた人々が状況に急かされて覚悟を固めていく様子が描写され、総理も最後は惜しい人を亡くしたという気にさせられる。とても人格高潔そうには見えない人物が骨のある発言を聞かせるとか、いかにも優柔不断な責任者が、その場になれば自分のやれる方法で最善を尽くそうとするのもいい。官僚組織や学者にも、現実的かつ発想力と対応力のある人材はいるはずだということが表現されている。 対外関係としてはあくまで対米関係を主軸にし、対馬沖で騒いでいたのは何かなど名前すら出ない。米軍機が東京を爆撃したのはさすがに反感を覚えたが(2機撃墜!)、最後は自国の才覚で何とかする形になっていたのは安堵した。最終的には期待と懸念を両方含む不透明な未来に向けて、友達とも限らない大国と付き合いながら国の舵取りをしていこうとするラストはリアルともいえる。ハッピーエンドともバッドエンドともいえない状態でどこまでも続いていくのが現実ということだ。 自分の若い頃は現実に即した自由な考えが許されない息苦しい時代だったので、今になってこういう真っすぐな映画が製作されて普通に受け入れられたのは感慨深い。ちなみに劇中には自衛隊に関わる格好いい台詞が複数あって少々やりすぎかとも思ったが、その中でも「仕事ですから」くらいなら、何らかの社会的使命をもつ人は官民問わずに誰でも言える。  そのほか女優の出演が少ないという意味では映像的に華がない。ヒロイン風に出る日本人顔のアメリカ女は目障りでしかないが、少なくとも前半ではこの人物が、外国からの介入の煩わしさを思い切り体現していたのだろうから嫌われて当然である。この映画としては、最終的にこの人物への好感度を回復させるよう狙っていたのではと思うが、少なくとも自分に関してはそうならないまま終わってしまった。まあこのキャラクター自体がマンガと思えば突っ込むまでもないということはある。 一方で、化粧気のない環境省自然環境局野生生物課の課長補佐は変人風で付き合いにくそうだったが、必要なことを真っすぐに言う人物は正直好きだ。この人が劇中初めて破顔した場面は泣かせどころだった。  [2024/5/25追記] 「-1.0」を見た機会に再見。映画の伝えたいメッセージは「この国はまだまだやれる」だった気がする。「戦後は続くよどこまでも」というのは当時も今と同じだろうが、それでも持てる潜在力を発揮して、日本国の意思と主体性を確立してもらいたいという願いが感じられる。2024年の現在になってみれば「まだまだやれる」などとは全く思えない有様だが、逆にこの映画の時点で共感できたということは、当時は本当に「まだまだやれる」可能性があると思える時代だったということだ。1954年の原典版と同様に、公開時点の世相をちゃんと捉えたゴジラ映画に思われる。
[映画館(邦画)] 9点(2016-07-30 21:40:56)《更新》
471.  鬼談百景 《ネタバレ》 
作家の小野不由美による同名の実話怪談集(全99話)から、10話を選んで映画化したオムニバスである。6人の監督が脚本を含めて担当している。 【追い越し】 原話の不思議さが不足、無駄話が多い。 【影男】 音そのものが神経に響く。異音が付随しているのも嫌な感じ。窓から見えた空も意味不明だが怖い。最初は睡眠時無呼吸症候群かとも思えるがそうともいえなくなって戦慄。 【尾けてくる】 作業着の男がいかにもそれらしい顔。女子高生~女子大生の見開いた目はいいが若干くどい。ラストの街角遠望は好きだ(渋谷二丁目、青山学院近く)。 【一緒に見ていた】 原話にない背景事情を大きく加えた形。一回やっただけというより人格低劣で因果応報。倒れた男子生徒、ぶつかった女子生徒のいた風景がいい。 【赤い女】 女子高生絶叫ホラー。怖いことは怖いが階段をドタバタ駆け上がるのはなぜなのか(笑)。登場人物が高校生にしては変に大人っぽく、加弥乃さんは可愛らしいがヒガリノ(比嘉梨乃)さんはひときわ色気がある。 【空きチャンネル】 普通。特殊効果はやりすぎだが一瞬怖い。 【どこの子】 小学生のくせに妙にエロい。取り残されるシチュエーションは怖いが方言の男には笑わされる。 【続きをしよう】 子役がいい感じ。出演は9人だが顔が見えるのは8人、声がするときに誰の口も動いていない。流血の連続で児童虐待のようだが、走り回る子どもらを見ていると、この監督は本当に子ども好きなのだろうと思った。 【どろぼう】 難解で意味深。果実の隠喩と時間の経過、スカートの下にジャージをはいていないなど。何にせよ流産監督らしいテーマと思われる。女子高生が美形なのはいいとして、子沢山の母親がこういう顔だとは原作からは想像していなかった。 【密閉】 原話の投稿者が隠していた真相はこれだ、という感じの話。主演女優の顔が好きだ。  第1話を除く各話が「こんな手紙が届いた」で始まるのは、夏目漱石「夢十夜」の趣向に倣ったものと思われる。基本的には全て原話の筋立てに沿っているが、映画的なイメージを膨らませたり独自の解釈を施したものもあり、必ずしも実話とはいえないものが多いと思われる。しかし本物の怖さを出したもののほか怖がりながら笑えるもの、ストーリーとして面白いなど多様であり、映像的にもいい出来のように見える。これまで見たオムニバスホラーの中では最も良質だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-16 22:30:45)
472.  残穢 -住んではいけない部屋- 《ネタバレ》 
原作付き映画は原作の劣化版でしかないことが多いので、映画から見てしまって損した気分になるのを防ぐため、今回は原作を先に読ませてもらった。 その後に映画を見ると意外にまともにできており、原作の基本構造を尊重しながら印象的なエピソードを残し(大家の伊藤さんなど)、原イメージを保ったままで短時間にまとめてある。導入部として短い怪談を入れたのは映画独自の構成だが、これもその後の展開からすれば効果的と思われる。老婆が一言「湧いて出る」とか、床下の顔など怖さで印象付けられる場面もあり、また緊張が高まった場面で、登場人物の何でもない発言にいちいち脅えさせるのは笑いを含んだ肝試しの臨場感があった。 ちなみに原作では実在の人物が実名で登場するため、ホラー映画でいえばフェイクドキュメンタリーのような印象があり、それが読者にとっても他人事でない雰囲気づくりにつながっていた。この映画はさすがにドキュメンタリー調にはしていないが、登場人物の平○○明とか○澤徹○とかいうネーミングには原作の名残が見られる。平○氏が羽田の大鳥居にいた意味はよくわからなかったが、これはファン向けの小ネタというつもりだったのかも知れない。  一方で肯定的になれない点として、最後は疑似ハッピーエンド風になったあたりで終わりにしておけばいいものを、その後さらに怖がらせエピソードを4つも加えていたのは呆れざるを得ない。それまでは、邦画ホラーの恒例である現場突撃を「お暇しましょう」であっさり終わらせるなど結構いい雰囲気で来ていたにもかかわらず、結局最後は見せるものを見せなければ気が済まないかのような作りには落胆させられる。 また原作では「穢れ」の残留と拡散に関して仮説のようなものを提示しており、それがいかにも自然現象的にありそうな感じで納得できるものだった。その一端は当然この映画にも出ているわけだが、しかし原作では、確定的影響でないため統計的に有意でないとかいうことで因果関係が特定できずに日常の中へ埋没していく空恐ろしさとやるせなさが感じられたのに対し、映画がこういうラストでは致死率100%の「呪怨」シリーズと同じように見えて、原作独自の趣向がぶち壊しになったように感じられる。そもそも徹底して登場人物を破滅させたがるという無駄な過酷さが大人気なく、邦画ホラーというもののどうしようもなさを感じさせる映画だった。 それでも邦画ホラーにしては悪くなかったので少しいい点をつけておく。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-16 22:30:42)(良:1票)
473.  たまこちゃんとコックボー 《ネタバレ》 
一応説明しておくと、「たまこちゃんとコックボー」とは1本1分で多数制作されたアニメコンテンツのシリーズで、主に広島県と秋田県のローカルTVで天気予報のバックなどに流れているものらしい。この映画はいわばその劇場版で、舞台もTV放送のエリアに合わせて広島県(広島市)と秋田県(男鹿市?)に設定されている。アニメと実写のパートが混在しているが、アニメのキャラクターが実写パートにも登場するのでアニメの実写化のようなところもある。 映画の主演はアイドルグループ「私立恵比寿中学」(エビ中)所属の「廣田あいか」(ぁぃぁぃ)という人である。もとのアニメシリーズでは「たまこちゃん」「コックボー」に次ぐ第3のキャラクター「モグP」の声を担当しており、鼻にかかった甲高い声は演技かと思ったら普段からのことらしい。映画では「広島市立海老巣中学校」の3年生であり、ほかに実写パートで出るたまこちゃんもこの人の二役だが、別人の子役がたまこちゃんを演じる場面もあって、この子役の方がキャラクター本来の想定年齢に近いものと思われる。  映画の内容は主人公が現実世界とアニメの世界を行き来するファンタジーになっており、アニメの世界はもちろん実写映像の方も色彩感豊かで楽しい。しかし主人公は幼児ではなく高校受験を控えた中学生であるから、テーマとしては“現実逃避の克服”ということにならざるを得ないわけで、序盤からしてすでに破綻の予兆が見えている。最後も結構シビアで切ない結末で、チョコレートがなぜ甘いかの答えは少し泣かせるものがあったが、しかしラストで主題歌が流れて題名が表示される箇所はけっこう感動的だった。この主題歌自体もなかなかいい曲だったかもしれない。 そういうことでおおむね好意的ではあるが、児童生徒はともかく社会人としては遵法精神というものが身についているので、登場人物がトラックの荷台に侵入して勝手放題やらかす展開はさすがに見過ごしにできない。いくらファンタジーでも現実世界が舞台であるからには、まともな大人が見て反発を感じる要素は入れないでもらいたかった。ここは残念なところである。 なお映像面で目を引いたのは秋田新幹線の高速走行の迫力だった。何でここに力が入っているのか不明だが。また細かいところでは、夕食時に主人公がニンジン?を全部父親に食わせていたのが微妙に可笑しい。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-16 13:02:24)(良:1票)
474.  ゆるせない、逢いたい 《ネタバレ》 
撮影場所は茨城県筑西市とのことで、馴染みのない地名と思ったら要は以前の下館市ほか3町が合併したところらしい。筑波山が大きく見えていたのが印象に残る。 物語としては「デートレイプ」の問題を扱っており、その中に主人公の精神的自立の過程を大きくからめた形になっている。自分としては年齢性別が違うため直接共感できるわけでもなかったが、主人公の表情や言動を通じて、劇中事件がもたらした複雑な感情の動きが表現されているようには見えた。ラストの決意表明は若干唐突な感じもあったが、それを含めて前を向いて生きようとする主人公を素直に応援したくなる。「対話」の場面で見せた賢明さを未来に生かしてもらいたい。 また主人公の母親に関しては、過干渉というのはその通りだろうが、母親としての思いを加害者に向けてまともにぶつけた場面はよかった(これは娘のいる所ではいえないだろう)。劇中で共感を寄せられそうな人物といえば実際問題としてこの母親だけだったが、父親が生きていれば父親の立場で見ていたかも知れない。  ところでこの話をラブストーリーとして見た場合、どう考えてもハッピーエンドなど望めない設定になっている。これから二人の進路が重なっていく見通しは基本的になく、そもそも生育環境が違い過ぎるため、最初から忌避すべき相手だというのが正しい判断である(つまりお父さんとしては賛成できない、という立場)。 後見人はご苦労と思わなくもないが、他人の立場からすれば本人の身の上など関係ないのであって、現に何をやらかしたか、これから何をやらかすか、ということだけが関心事である。この男の顔つき(目つき)など見ていると、以前に成功体験があったので今回も平気でやらかしたのだろうとしか思われず、こんな男に情けをかけるのはかえって危険という気さえする。ちなみに加害者側の弁護士というのも胡散臭い。  以上のようなことで、恐らく制作側が意図したことの半分程度しか受容できていないのではないかと思うが、全体的には極めて真摯な態度で誠実に、かつ美的に作られた映画に思われた。細かい点ではカエルに関する友人とのやりとりが和む。 なお主演の吉倉あおいという人は、他の映画で見たときはきついタイプの人かと思ったが、この映画では普通に弱さと強さを持った(可愛いところもある)高校生になっていて好印象だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-09 09:30:32)
475.  転校生(2012) 《ネタバレ》 
20分の短編映画だが、各地の映画祭で受賞したりして好評らしい。題名があまりに単純で1982年の同名邦画との区別がつかないが、これは当初「○○○の転校生」(一部伏字)としていたところ、ネタバレなのでやめた方がいいとの助言があってこうなったとのことである。映像ソフトとしては同じ監督(金井純一)の長編映画「ゆるせない、逢いたい」(2013)のDVD特典として収録されている。 出演者のうち役者は森川葵(川野容子)、増田璃子(狭山リサ)、藤原倫己(笹島/クラスの担任)の3人だけで、あとは「筑西市立明野中学校のみなさん」のエキストラ協力である(台詞のある生徒もいる)。撮影場所は前記の「ゆるせない、逢いたい」と同じ茨城県筑西市で、筑波山も映っている。  内容に関しては、これから長く続いていく人生の中で、束の間ながら確実に人と心を通じあわせた一瞬のお話である。ほのぼの笑ってしみじみ泣かせる佳作であり、バックに流れる「パッヘルベルのカノン」も、選曲としてはありきたりだが心に染みるのは間違いない。 物語は「ついてくんなよ」の繰り返しで構成されているが、登場人物それぞれの「ついてくんなよ」は別の意味になっている。最後の「ついてくんなよ」だけは少し新しい意味とも取れるが、ここで人間関係を断ち切ろうとしている点で発言者の姿勢は一貫していたようでもある。それでも言外に込めた思いは見た通りなのだろうし、最後も実は何かがついてきて、この人の後ろ髪をひいていたのかも知れない。 なお主演の森川葵という人はこの時点で17歳くらいだろうが、とぼけた感じの馴れ馴れしさに何ともいえない可笑しみを感じる。森川さんのジュリエットが見たかった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-09 09:30:30)
476.  ファンタズム(2014)<OV> 《ネタバレ》 
自主映画ということだろうが、各地の映画祭に出して評判がよかったらしい。同名の洋画(1979年製作、以降シリーズ化)との関係があるかどうかはわからない。 これを単なるホラー映画として見た場合、通常の和風ホラーの特徴を備えたあまり独創性のない映画に見える(大して怖くもない)。家の中に何か出るとか、最後に現場へ突撃するといった展開は基本的に既存パターンに乗っかった感じがある。また子どもの絵で区切りを入れるのは悪くないが「呪怨」の章立て方法を真似たようでもあり、ビデオ映像の顔が歪むのもありきたりである。ただ危機が迫った場面でドラのような音が鳴り渡るといったところは独特な表現だったかも知れない。 また娘役の末永みゆという人は「日テレジェニック2013グランプリ」とのことで、それなりにアイドルホラーとしての性質も備えていたりする。その面からすれば「あみちゃん」の章が見どころだろうが、これもありがちな怖がらせに終わっていたようで、この部分が最も普通の低予算C級ホラーのように見えた。  一方この映画で特徴的だったのは、怖さというより家族の心の問題を根幹に据えたように感じられることである。個別の場面としては息子の死去後の、平穏に見えながらも爆発寸前のような夕食場面には緊張感を覚えた。そのあと最初の怖い場面でも、心霊現象の予兆というより精神面の危機が強調されており、こういうところにこの映画としての方向性が示されていたように思われる。 また特に印象的だったのは、妻(母)が降霊術を必要とした理由がわかったと降霊術師が告げて以降「理解できなくてもやれることはあります」までの場面である。ここは単純に夫(父)の知的能力の限界を示したようでもあるが(幅が狭く硬直的)、より一般化して考えると、理性的判断と心の問題は互いに排他的なものでなく別系統で併存すべきものであって、深刻な齟齬が生じた場合は理性の方が心の問題に寄り添う必要がある、というように受け取れた。 劇中では、最初は気丈そうに見えた妻(母)が表面では理性的な態度を崩さないながらも、内心とのギャップに耐えかねて日常世界から外れていくのが痛々しく見えた。ラストは「予言」(2004)のようでもあるが、自分としては全体的に「仄暗い水の底から」(2001)を想起する。似ているところがあるから悪いというわけではなく、同種の感慨を覚えるいい映画だった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-09 09:30:28)(良:1票)
477.  -×- (マイナス・カケル・マイナス) 《ネタバレ》 
とりあえず密度の高いものをじっくり見せられた気はするが、娯楽気分で見るのは厳しい。 人の神経を逆撫でする要素を各所に多数入れてあり、また人物の会話も素直につながらず、何かと棘が刺さるようで苛立ちが募る。終盤に至ってもまだ緊張を強いられる気がする一方、登場人物が社会通念を無視した感情表現をするのが気に障って安心して見ていられない(公共交通機関内で大声で歌うなど)。個人的感覚としては劇中に和む場面が全くなかったが、そのように延々と精神的負荷をかけられた後で、最後に中学生がにっこり笑った(+金魚を入れた、襟を洗った、チョコレートが落ちた、アパート前にタクシーを止めた)くらいでは心の収支がプラスに転じない。登場人物に心底共感できる観客なら別かも知れないが、自分としては見るのがつらい感じの映画だった。 またこの映画で、相互に関係しない物語をあえて一緒にしてみせたことにはあまり積極的な意義が感じられない。自分としては最後にどうつながるのかを期待していたわけだが、その期待が満足させられなかったのも全体としてマイナス方向に作用している。自分の感覚でいえば、人はそれぞれ事情を抱えているので世界情勢とか他人の動向など視野に入らなくても仕方ないだろうと思うわけだが、まあできれば世界の広がりに関する想像力くらいはみな持っていた方がいいという気はしなくもない。  ところで女子中学生役の寿美菜子という人は、現時点では声優として有名のようだが(自分の知る範囲では「けいおん!」の琴吹紬役)、この映画を撮影したのは2007年とのことで、その時点ではまだ15~16歳だったようである。劇中ずっと不穏な表情だったこの人が終盤では普通に可愛らしく見えたのは悪くなかった。またその友人役の大島正華という人も、年齢(14歳くらい?)の割に面構えに迫力がある。そのほか、近年は怖い役ばかりやっている感じの長宗我部陽子さんが、この映画では普通に(というか非常に)色気と可愛気のある女性役なのは結構なことだった。それでも少し怖い感じだが。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-09 09:30:25)
478.  賃走談 2号車<OV> 《ネタバレ》 
「賃走談 1号車」の続きであり、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「2」である。「1」と同じく古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【帰ってきた女】 視聴環境によるかも知れないが画面が暗すぎる(女優の顔がよく見えないではないか)。また男の口調が気に入らない(3人とも)。話の基本構造としては単純だが、しかし登場人物の立場によって出来事の性質が変わるのは面白い。[4] 【チイちゃん】 雨の日の不吉感がある。人物を暗く見せたり明るく見せたりして混乱させるのが面白い。印象が二転三転する。[4] 【くりかえす最後の記憶】 題名だけでどういう話かわかってしまい、また男の行動で何が起こったのか容易に想像できる。そもそも男の動機が不明なのは困ったことだが、最大の問題点はタクシーがほとんど関係ないことである。なお管理人のジョークはオヤジじみているが、年長者が若年者に気配りしている感じが出ており、彼我の年齢差を超えてかろうじて同調してもらえそうなあたりを狙っているのがいい。[4] 【怪談タクシー】 悪くない題名である。冷静な運転手と感情豊かな客の対比は面白い。愛すべき女性像に好感が持たれるが、最後は可哀想で切なくなる。2006年でさえなく2014年だったことの衝撃が印象的だった。ただ最後の駄目押しは聞かなくてもよかった。別の締め方がなかったものか。[7]  前作と同じくスターダストプロモーションの所属タレントが多く出演しているが、今回は女優の方に少し重心が移った感じで、タクシー運転手が主人公とも限らなくなっている。基本的に若手女優はスターダストの所属だが、「チイちゃん」だけは女優といっても子役(2005年生まれ)である。 前作と同じ企画の一部であるから水準としては変わりなく、怖いものではないが映像作品としての印象は悪くない。最底辺の安物ホラー群の中にも、結構見られるものがあるのだなとこれで少し見直した。特に「怪談タクシー」は個人的に好きな女優が出ていることもあって印象深いエピソードである。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-03 18:52:49)
479.  賃走談 1号車<OV> 《ネタバレ》 
「タクシー怪談に焦点を絞った」ホラーとのことで、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「1」である。この世界では名の知られた?古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【手形】 夜勤明けの風景が爽やかだが音楽が沈痛。カーテンの色に溶け込んでいた脚は誰だったのか。心霊現象が中心ではなく「ほんとに怖いのは人間」的な話だったのは残念だが、逃げ出そうとした女性客と死にそうな女性客はなかなか真に迫っていた。[4] 【犬】 平凡な話かと思ったら最後に意表をつかれた。それを含めてありきたりな展開と評されるかも知れないが、あえて先読みしようとせずにボーッと見ている限りは少し驚かされる。[4] 【歪み】 運転手は学習能力がないのかと思ったが、どうやっても同じ結果になるということだったらしい。ラストはよくわからなかったが、抜本的解決を図ろうとしたらこうなったということか。女性客(演・相葉香凛)はほんわか系だが、最後の一言に裏があるのではと勘繰ってしまう。[4] 【11号車】 第1話の「手形」を別の監督が引き継いで後日談を作った形になっている。「手形」の方は「ほんとに怖いのは人間」的性格が強かったが、それは発端がそうだったというだけで、ここに至って本格的な心霊現象に移行したらしい。そうすると逆にこれが怪談の本体であって「手形」が前日談とも捉えられる。窓に映る顔の怖さが少し目を引いたが、終盤の視覚効果がいかにも安い感じで、またグロいのも不要に思われる。 なお見栄晴も年を取ったものだと思うが、同じように自分も年を取ったわけである。[3]  企画・製作が株式会社SDPであり、同社が関わった他のオムニバスホラーと同様、スターダストプロモーションの所属タレントを多く出演させている。他のものは女優の魅力で見せるものが多い気がするが、今回のこれは全てタクシー運転手が主人公になっており、男に重点が置かれた印象が強い。 題名は“珍走団”から来ていると思われるのでふざけた感じだが、映像作品としての印象は悪くなく、話としても少し気の利いた作りになっている。どうせ最底辺の安物ホラーだろうと思っていたら意外に悪くなかったというのが実感だった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-07-03 18:52:47)
480.  怖譚 コワタン<OV> 《ネタバレ》 
「最恐の女子校生ホラー」とのことで、全5話のオムニバスである。[ ]は点数。 【集金人】 冒頭のナレーションで回想譚とわかり、本人は無事だったと確認されるので安心してしまう。“あとで聞いたらこうだった”というオチまでついているのは、実話というより古風な読者投稿の雰囲気を出しているともいえる。暗闇の顔が不気味。[3] 【異界からの招待状】 怖いことは怖いが心霊写真の怖さである。主人公の行動が不自然で、ベランダに出た時点で右側が気にならないはずがない。[3] 【理想のトモダチ】 時間が最長。子役時代からキャリアの長い役者を出してエピソードとしての充実を図ったのかも知れないが、出来事自体に新味がなく、ただの女子高生?が超自然的能力を発揮して無理矢理な流血沙汰に至る話を素直に受け入れるわけにはいかない。主人公が錯乱した場面で、近くの仮設ゲートが風で揺れていたのは巧妙な表現かと思ったが、これは実際に風の強い日に撮影したようでどれだけ意図したものか不明。童顔の殺人者に+1点。[3] 【ユウタイリダツ】 時間が最短。美少女がパンツを下ろして便器に腰かけているのは大胆。怖いというよりほのぼの系。[4] 【覗き魔】 個人的好みとしてはこれの主役の人(青山奈桜)が一番かわいく見える。見た目は可愛いが近所のオバサンと比べると明らかに長身で(165.5cm)、最近の日本人は体格がよくなったものだという感慨がある。この人に+1点。[4] 【ベッドの下に…】 大変よろしくない特徴を備えた最低ホラーである。題名だけでわかる古いネタを使っているが、原話を改変した結果として何の捻りもないただの殺人になってしまっている。これで警察の追及を受けなくて済むと思っているのかどうか。意外性を優先して現実味を簡単に犠牲にしたように見えるが、超常現象に頼らないつもりならもう少しありそうな話にしてもらいたい。ただし「みんな言ってるよ」が2回出たのは少しよかった。[1]  SDPが製作し、スターダストプロモーションの所属タレントが多く出演するオムニバスホラーで、今回は若手女優に重点を置いたらしい。 女子高生から取材した実話をもとにしたとのことだが、どこまで実話なのか怪しい話ばかりである。オーソドックスな怖さを重視した面もあるが、外と思ったら中にいた、とか、どこかと思ったらここだった、といったありがちなパターンで済ませたところもあり、全体的に納得できる水準ではない。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-03 18:52:44)
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