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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1875
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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461.  やさしい本泥棒 《ネタバレ》 
1938年、ドイツ。ナチスがその汚れた爪で世界をずたずたに切り裂こうと手ぐすねを引いていたその年、とある一人の少女が貧しい老夫婦の元へと養子に出される。彼女の名前はリーゼル、まだ思春期を迎えたばかりの平凡な女の子だ。甲斐性はないが心優しいおじいさん、口が悪く一見性悪に見えるが根は善人のおばあさん、そして腕白盛りのクラスメートの少年たちとリーゼルは新しい生活に少しずつ馴染んでゆく。学校で文字を習い始めた彼女は、図書館にある様々な本に書かれたまだ見ぬ世界に強く惹かれてゆくのだった。だが、社会ではナチスがその正体を徐々に表し始める。リーゼルが愛する様々な本たちは彼らによって有害図書に指定され、強制的に燃やされていく。そんな折、彼女の家に突然マックスと名乗る一人の大怪我を負った青年が訪ねてくる。昔おじいさんの命を救った恩人の息子であり、そしてユダヤ人だった。地下室に匿うことになった彼の気を少しでも紛らわすためにリーゼルは、本をたくさん隠し持っている市長の家に忍び込み、夜な夜な彼に朗読して聞かせるために一冊ずつ盗み出してゆく…。時代の波に翻弄されたある一人の少女の青春を、死神という特異なストーリーテラーの視点でもって描き出す大河ドラマ。そういった変わった設定ではあるものの、とても堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。主人公の少女を演じた女の子の瑞々しさもさることながら、やはりジェフリー・ラッシュ&エミリー・ワトソンという名優コンビが演じた老夫婦の存在でしょう。どんどんと悪化していく世情に決して負けることなく、人間として必死に生きていこうとする彼らは全編を通じて胸に迫るものがあります。地下室に隠れ住むことになるユダヤ人青年マックスも、リーゼルに大切なものをたくさん教えてくれる男として充分存在感を放っている。特に、主人公に恋する同級生の男の子が非常に魅力的でした。常にリーゼルのために頑張ってくれた彼が、その後に辿る運命を思うと切なくなってしまいます。ただ、一個の物語として見ると少々散漫な印象を受けたのも事実。タイトルにもなっている〝本泥棒〟というエピソードが物語の中でいまいちうまく機能していないうえ、ラスト、彼らが戦後どうなったかを駆け足で説明するくだりも何だかとってつけたような感じがしてちょっと残念でした。とはいえ、丁寧に創られた大河ドラマとしてとても好感の持てる作品に仕上がっていたと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2016-08-24 01:00:38)
462.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
「ドイツ軍がこれから行う奇襲攻撃や爆弾投下、神出鬼没のUボート攻撃、全ての指令が今この空中を飛び交っている。これらの無線信号は受信機さえあれば子供でも傍受出来る。だが、その内容は高度に暗号化されている。その組合せは、159×10の18剰通り……。10人が1分間で一つの組合せを試し、1日24時間、週7日休みなく続けても、全てを調べ終わるのに2000万年もかかるのだ。しかも、それは1日のはじめに全て設定しなおされてしまう…。それが、ナチスドイツが開発した世界最高峰の暗号化システム、エニグマだ」――。本作は第二次大戦中、英国諜報部の極秘指令を受け、そんな難解な暗号化システムの解読に成功したものの長らく極秘扱いにされ、歴史の闇に埋もれていた天才数学者アラン・チューリングの生涯を描いた伝記映画だ。なるほど、数々の賞を受賞しただけあって、堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなかよく出来ている。アラン・チューリングという天才的な頭脳を有するものの、人間としては社交性ゼロ、偏屈な変わり者が如何にして仲間たちと協力し合いエニグマという世界最高峰の暗号を解読することが出来たのか?また、第二次大戦の終結を2年は早め、多くの人命を救ったばかりか現代のコンピューターの原型と呼ぶべきシステムを開発したのに、何故それが何十年も極秘扱いされてきたのか?そんな興味深い内容であるもののいかんせん地味になりがちなテーマを極めて分かりやすく、かつ魅力あるドラマとして描き出すことに成功している。主人公の人格形成に大きく影響を与えた少年時代、仲間とともにエニグマ解読に全精力を捧げた第二次大戦下、そして、その抱えた秘密によって不遇の晩年を余儀なくされた終戦後…。ともすれば空中分解しそうなそんな三つのエピソードを、極めてバランスよく配置したその物語構築の手腕は高く評価されるべきものだろう。観客の好感を得られにくい偏屈な数学者という難しい役柄を、一人の人間として見事なまでに演じきったB・カンバーバッチの仕事ぶりも大したものだった。ただ一つ難点を挙げるとすれば、それはK・ナイトレイが演じたアランの婚約者、ジョーンの存在だろうか。同性愛者であった主人公がどうしてそこまで彼女に執着し、あまつさえ婚約者となって引き止めたのか。そこにいまいち説得力が感じられない。ここらへんをもう少し丁寧に描いてほしかった。とはいえ、歴史の荒波に翻弄され、不遇の人生を歩まざるをえなかった一人の偉人の生涯を現代に甦らせた本作の業績は称賛に値する。なかなかの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2016-07-21 21:50:42)
463.  セッション 《ネタバレ》 
映像と音楽のセンスが抜群!!単純な話だけど、面白かった!!ただ、この2人とは絶対に関わりたくない(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2016-06-15 20:22:01)
464.  博士と彼女のセオリー 《ネタバレ》 
ホーキングさん、あなたの病名は運動ニューロン疾患です。脳からの命令が徐々に筋肉に伝わらなくなり、運動が困難になります。たとえば、話すこと、歩くこと、そして食事や呼吸までも…。最後には、随意運動を制御する能力が完全に失われます。自分の意志で身体を動かすことが出来なくなるのです。残念ですが、余命は2年といったところでしょう。もちろん、脳は影響を受けません。思考力も変わらない。ただ、それを誰にも伝えることが出来なくなるのです。実に、残念です――。1963年、英国。ケンブリッジ大学の宇宙物理学科に進学してきた青年、ホーキングはその卓越した思考能力で将来を有望視されていた。大学のパーティで知り合ったジェーンという素敵な恋人も手に入れ、輝かしい未来に向けて順風満帆に過ごしていた彼だったが、突如として悲劇に見舞われる。ALS。徐々に筋肉が衰え、いずれは寝たきりとなってしまうそんな難病を発症してしまったのだ。当然、自暴自棄に陥りそうになるホーキング。だが、名実共に妻となり献身的に支えてくれるジェーンの助けによって彼は博士号を手に入れ、さらには愛する子供たちまで授かることに。そんな2人に更なる試練が訪れる……。車椅子の天才として名高い物理学者、スティーブン・ホーキング博士。本作は、そんな彼と妻との長年にわたる愛の日々に焦点をあてて描いたヒューマン・ドラマだ。昔、『ホーキング、宇宙を語る』という彼の著書を読んで、その虚時間という考え方――時間というものは自分たち3次元の人間からしたら流れているように見えるけれども、5次元6次元という高度な視点から見ればそれはあらかじめ描かれた地図のようなもので、全ては決まっている(なにぶん大昔に読んだもので間違ってたらごめんなさい!)に感銘を受けた者としては、彼のその人間としての私生活を描いた本作を興味深く鑑賞してみました。確かに、まだ描かれた人々がご存命ということもあってか、幾分か綺麗事に纏めすぎられたきらいはあるものの、美しい映像や音楽、何より役者陣のナチュラルな演技が素晴らしく、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。これは男と女のままならない愛の物語であり、人が家族となることの素晴らしさをとことんまで肯定的に描いた心温まるドラマでもあり、決して数式では割り切れない人間の力強さを描いた賛歌でもある。最後は別れてしまったけれど、彼らの愛の軌跡になんだか柄にもなく切なくなってしまいました。欲を言えば、もう少しホーキング博士の科学者としての側面にも光をあててほしかったけれど、それでも充分見応えのあるヒューマン・ドラマの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-11 01:25:11)
465.  ゼロの未来 《ネタバレ》 
ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは現在93.789%です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。次の解析済みデータを1時間後にアップロードしてください。不可能ならば超過時間を分単位で入力してください。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%で――。コンピューターが異常な発達を遂げた近未来。仕事一筋で生きてきた真面目な男、コーエン・レスは人生の意味を教えてもらうための電話を待ち続けて孤独に生きてきた。より思索に耽りたいと願うあまり、彼は会社に在宅勤務を要請する。当初は難色を示していた上司だったが、マネージメントと呼ばれる経営トップの判断により、彼はとある極秘プロジェクトを任されるのだった。そのプロジェクトとは、「ゼロの定理の証明」。家に閉じこもり、来る日も来る日もデータ解析に打ち込んでいた彼だったが、作業は遅々として進まない。会社からは次々と催促の連絡が入るものの、肝心の電話は一向に掛かってこず、次第に追い詰められていくコーエン。そんな彼の元に、怪しげな売春婦ベインズリーやマネージメントの息子ボブを名乗る青年がやってきて……。唯一無二の独創的な映像や超現実的なストーリー等々、もはや生ける伝説と言っても過言ではないカルト映画界の巨匠テリー・ギリアムの最新作は、いかにも彼らしいそんな超シュールな作品でございました。いやー、やっぱりいいですね、このギリアムにしか描き出せない摩訶不思議な世界観。『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』『フィッシャー・キング』といった彼の往年の名作を髣髴とさせる唯一無二の独創的な映像に僕は久し振りに痺れてしまいました。そこに今回はベインズリーというそれまでのギリアム作品にはなかった(?)エロティシズム要素も加わって、いやはやどうして一筋縄ではいかない作品に仕上がっていて嬉しい限り。相変わらず訳の分からないストーリーなのですが、きっとそこには〝愛〟がテーマとして埋め込まれていたような気がする?!頭髪や眉毛まで剃り落としたクリストフ・ヴァルツの怪演振りもバッチリ嵌まっていてナイス!胸元ざっくりのセクシー・コスチュームで惜しげもなく色気を振りまいていたベインズリーちゃんも超キュートで大変よかったです!うん、相変わらず観る人を選ぶかなりぶっ飛んだ作品でしたけれど、僕は充分楽しめました!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-07 19:42:51)
466.  プリデスティネーション 《ネタバレ》 
1970年代、連続爆弾魔の恐怖に怯えるニューヨーク。場末の小さなバーに一人の〝男〟が酒を求めてやってくる。相手をするのは、何処か影のあるバーテンダー。だが、どうやらこのバーテンダー、政府の特殊工作員として未来からやって来た時空エージェントらしい。〝不完全な爆弾魔〟と呼ばれるテロリストの犯行を阻止するというのが、この工作員の最後の任務のようだ。「僕はかつて孤児だった。そして、君が信じるかどうか知らないけど僕はかつて女だったんだ」。バーテンダーに、かつて〝女〟だったころの話を始める客の〝男〟。性別だけではない。彼が歩んできた人生は、まさに事実は小説より奇なりと呼ぶに相応しい特異なものだった…。いったい彼は何者なのか?連続爆弾魔とはどんな関係なのか?そして、彼がしきりに繰り返す「鶏が先か、卵が先か…」という言葉の本当の意味とは?『デイブレイカー』という、ヴァンパイアが多数派となり絶滅寸前の人類の生き血を求めてドラマが展開されるというかなり特異な設定のホラー・アクションを撮ったスピエリッグ兄弟。彼らが、再びイーサン・ホークを主役にして挑んだのはそんなタイム・パラドックスをテーマにしたSF作品でした。前作のその他の追随を許さない独創的でスタイリッシュな作風がかなり気に入っていた自分としては、その世界観をさらに進化させたような本作ももちろん期待して鑑賞してみました。なんだけど、ちょっと予告編に騙されましたかね。もっとアクション寄りのエンタメ映画を期待していたのに、まさかこんな脳みそフル活用しないと理解できないような複雑怪奇なお話だったとは(笑)。でも、これはこれで面白かったです。観終わった後に誰もが深く考えさせられる優れた脚本と、随所にセンスを感じさせる格好良い映像(バイオリン型のタイムワープ装置とかナイス!)、それにイーサン・ホークをはじめとする男臭い役者陣の競演(特に、男と女を見事なまでに演じ分けたジェーン役のサラ・スヌークは素晴らしかった!)などなど、充分に見応えのある深い作品でございました。次はもっと『デイブレイカー』のようなアクション寄りのエンタメ映画を期待しつつ、この監督の次作を待ちたいと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2016-04-12 22:52:45)
467.  天才スピヴェット 《ネタバレ》 
そう、やっぱり明日ワシントンDCへ行こう。ぼくは研究者で、科学者だ。彼らはぼくを求めている。ここに残ったら、きっとぼくはくるくる廻り続けて一生を終えるだけの人生になるだろう。あのコウモリたちのように――。ウシやヤギしかいないような、のどかな牧草地が拡がるモンタナ州のとある田舎町。1日に3本しか列車が停まらないようなそんな地で、頭の堅いカウボーイの父親と虫のことしか頭にないような昆虫学者の母親、そしていつか有名になってテレビに出ることだけを夢見る姉とともに暮らすT・S・スピヴェットは、何処にでも居るような10歳の少年だ。ところがその小さな頭の中には大人も顔負けの天才的なひらめきと科学的探究心を併せ持った、将来のレオナルド・ダ・ビンチを自任する聡明な少年だった。ある日、彼の元に一本の電話が掛かってくる。なんと、彼が以前発明しこっそりスメソニアン協会に送った、磁力を元にほぼ永久に動き続ける画期的な〝永久機関〟が高名な賞を受賞したというのだ。式典で受賞スピーチをしてほしいという要請を一度は断ったものの、それでも保守的な田舎の雰囲気に違和感を感じていたスピヴェットの心は揺れ動く。何より、双子の弟が事故で死んだことをきっかけに心を閉ざしてしまった彼は、ある決意を胸にたった一人旅立つのだった。必要なものをたくさん詰め込んだボストンバッグだけを手に……。昔から唯一無二の独特の作風で知られるジャン・ピエール・ジュネ監督の最新作は、そんな一人の天才少年の一人旅をアメリカ西部ののどかで雄大な風景の中に描き出すロード・ムービーでした。飛び出し絵本を模したプロローグに始まり、スピヴェット少年の頭の中で考えた数式や分析をいちいち画面に映し出したり、家の電話に出るだけなのに順路を三つも考えて悩んだり、相変わらず遊び心満載の独自の演出手法はもういかにもジュネ監督印。『アメリ』や『ロスト・チルドレン』『ミックマック』をこよなく愛する自分としては、もうそれだけでわくわく感が止まらなかったです。特に、スピヴェット少年が一人ぼっちで列車に乗り込み、雄大な大自然の中をひた走りだしてからは、その軽快な音楽の力もあって凄くのめり込んで見入ってしまいました。うん、さすがジュネ監督!素直に面白かったです。ただ…、最後スメソニアン博物館で演説してから展開される家族との安易な和解劇は正直いらなかったかなぁ。ちょっとあまりに唐突過ぎて、無理やり良い話に纏めようとしたみたいな印象を僕は持ってしまいました。と、そこらへんに若干不満が残ったものの、惚れ惚れするほどの映像の美しさと遊び心満載のそのイノセントな世界観は今回も充分堪能させてもらいました。うん、やっぱりジュネ監督、サイコー!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-03-04 23:47:38)
468.  エクソダス:神と王 《ネタバレ》 
「出エジプト記」――。それはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という世界の約半数の人々の精神的支柱であり、さらにはあらゆる文化的生活の基礎となり道徳心や倫理観の規範となるべきものでもあり、時にはその解釈を巡って歴史を揺るがすような諍いを巻き起こし続けた旧約聖書、世界宗教の原点とも言うべきその中でももっとも重要な部分と言っていいだろう。そして恐らく人々が歴史に刻んだ原初にしてもっとも有名な物語だ。本作は、そんな誰もが知るお話をいまやハリウッドの重鎮となったリドリー・スコット監督が、新たな解釈のもとに映像化した重厚な歴史スペクタクル巨編である。特徴的なのは、そんな宗教掛かった原典から出来るだけ神秘性を排除し、あくまで科学的に解釈出来るように神の奇跡を描いていることだろう。特に〝エジプトを襲う十の災い〟と〝追い詰められたヘブライ人のために海が割れる奇跡〟。現代の常識ではあり得ないこの奇跡を、監督は――多少の無理があるとはいえ――あくまで科学的に証明できるものとして描き出してゆく。また、モーゼが縋る神の存在も見えるのは彼自身にのみであり、子供の姿で現れる神はあくまでモーゼの妄想が創り出した想像上の産物かもしれないものとして描写されている。ここでこの老監督の狙いが明らかとなってくる。「神は死んだ」。これはニーチェが唱えた有名な言葉だが、神とはもしかしたら人が生きるために創り出した一つの壮大な物語ではないのか。科学が極限まで発達し、この世に神が居ないということを論理的に証明しつつある現代においてもなお、宗教が現代のあらゆる問題に影を落としている。もしかして、人は生きるために神という物語を必要とする生き物なのかもしれない、たとえそれが間違った物語であったとしても――。本作の優れている点は、宗教という人間の生きるうえでの根源的なものをテーマとしながらも敢えて否定的な視点をも備えているところだろう。そこには、それでも自分は映画という世界で物語をずっと創り続けてきたというスコット監督の矜持が力強く貫かれている。ただ、本作はよくも悪くもR・スコット作品。長い間、人が生きるうえでの倫理的規範であり続けてきた〝十戒〟を根底から否定するわけでもなく、かといって狂信的なまでに肯定するわけでもないそのスタンスは「浅い」と非難されても仕方がない。『グラディエーター』や『ロビンフッド』という、その重厚な世界観には圧倒されはするものの肝心の内容のほうは――あくまで個人的にだが――そこまで深いものが感じられなかった過去の作品に比べればより芸術性は増したものの、彼の代表作の一つとして映画史に残るほどの出来かというと残念ながら“否”と言わざるを得ない。それが僕の本作に対するあくまで冷静な評価だ。
[DVD(字幕)] 7点(2015-12-22 21:35:48)
469.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
ドイツ、ハンブルク。2001年、911の実行犯がこの港湾都市で計画を練って以降、それを察知できなかった現地の情報機関は躍起になってテロ対策を加速させていた。そんな国際都市にある日、ロシア当局に拷問を受けた過去があるチェチェン人青年イッサが入国してくる。そのことを察知したテロ対策諜報員バッハマンは、彼が大手銀行員と接触したがっていることを知り、全容を解明しようと彼をしばらく泳がせることを決断する。だが、バッハマンの思惑など意に関せず、国の上部機関、警察、現地のイスラムネットワーク、さらにはアメリカのCIAまでが絡んでき、事態はさらに複雑な様相を呈していくのだった。そんな折、イッサを支援していた女性弁護士の手筈で彼がドイツの街中で失踪してしまう……。名優フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作となったのは、ドイツの国際都市を舞台にテロ対策の最前線をリアルに描いたスパイ・サスペンスでした。スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの原作を映画化しただけあって、この全編に漲る息を呑むような緊迫感はなかなか凄かった。派手なアクションやスキャンダラスな設定で観客を煽るのではなく、あくまでもリアルで地味なストーリーなのに最後まで見せきる本作のスタッフたちの手腕は大したもの。そんな無差別テロという悪魔の所業を阻止するために誰も知らないところで彼らのような人が日夜、神経を磨り減らすような情報戦を繰り広げているのかと思うと本当に頭が下がる思いです。特に、何処にでも居るサラリーマンのようないでたちでありながら、それでも時折その隠し切れない狂気性を垣間見せるF・S・ホフマンの熱演は見事でした。権謀術数渦巻くテロ対策という問題の難しさに翻弄され、自分の無力さを思い知らされた彼の魂の咆哮とでも言うべき最後の雄叫びは胸の奥深くに突き刺さってくるようでした。つくづく惜しい人を失くしたと残念でなりません。奇しくも昨日(2015/11/14)、フランスのパリでイスラム国と見られる組織によって大規模なテロが発生してしまいました。あらためて、本作のラストに漂う無力感に胸が引き裂かれる思いです。本作の主人公バッハマンのような人たちがそれでもテロという悪魔の所業に決して負けず闘い続けてほしいと、今回のテロで亡くなった人々のためにそう願わずにはいられません。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-15 22:00:09)
470.  イントゥ・ザ・ストーム 《ネタバレ》 
のどかな田園風景が拡がるアメリカのとある田舎町。気のいい純朴な人たちがのんびりと暮らすそんな平凡な田舎町だったが、最近は地球温暖化の影響か、以前では考えられないほどの強大な竜巻が何度も発生するようになっていた。いつ何時強大な竜巻が発生するか分からないこの町にその日、様々な思惑を抱えた人々が乗り込んでくる。竜巻を追う女性気象学者、大金を得るため竜巻の映像を撮ろうと目論むフリーのカメラマン、卒業式を目前に控えた高校生の兄弟、彼らの父親で生徒の規律をもっとも重んじる教頭、そして何も考えずにただ目立ちたいという理由だけでユーチューブに画像をアップする馬鹿二人組――。史上最大規模にまで膨れ上がった竜巻によって彼らの平凡な生活は無残にも破壊の限りを尽くされるのだった……。最新のCG技術を駆使して描かれる本作は、そんな王道のパニック・アクションでした。もうそのストーリーを聞いただけで内容のほぼ大半は予想できる典型的なB級作品なのですが、こういう頭空っぽにして最後まで安心して観ていられるエンタメ映画もけっこう嫌いじゃないんで、今回ビデオ屋さんでレンタルしてきました。とまあ、ほとんど期待せずに観始めたのが功を奏したのか、けっこう面白かったです、これ。カメラマンが撮った映像や携帯の動画撮影、監視カメラの映像等々、POV手法を要所要所に差し挟む演出が抜群に利いていて、造り込まれた迫力のCG映像も相俟って、なかなか緊迫感溢れる展開に最後までけっこう釘付け。「すぐそこまで竜巻が迫ってきてるぞ!お前ら、早く逃げろー!」と思わず町の住民になったかのように胸の中で叫んじゃってましたし。所々、「これって完全に『ツイスター』のパク…、オマージュやん!」ってシーンがあるのはご愛嬌(笑)。親子の確執や人のために働く気象学者と大金を得たいだけのカメラマンとの対立など、人間ドラマとしてもそこそこよく出来ています(まあ、超ベタですけどね)。というわけで、完全なるB級エンタメ映画として僕は最後まで面白く観ることが出来ました。うん、7点!
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-09 13:50:36)
471.  サード・パーソン 《ネタバレ》 
パリ、ニューヨーク、ローマ。時代の先端をゆくそんな人種の坩堝のような3つの国際都市には、今日も様々な事情を抱えた男女が集い出会いと別れを繰り返してゆく。ある男女には新たな愛が芽生え、またある男女は疑念と嫉妬によって心をぼろぼろにされ、そしてまたある男女は辛い別れを経験してゆく……。本作は、そんな3つの国際都市を自在に行き交いながら、そこに生きる様々な男女の出会いと別れを静謐な雰囲気の中に描き出してゆく群像劇。自分の不注意から最愛の子供を失ってしまった作家は若い女性との不倫に溺れ、ストレスから自らの子供を虐待してしまった母親は引き離された息子との面会を果たすため必死になって生活を立て直そうとし、街のカフェで移民の女性と偶然知り合った男は彼女の奪われた子供を取り戻そうと金策に駆けずり回る。一見無関係に見えるそんな3つのストーリーが、物語の進行とともにまるで縺れた糸のように絡み合い複雑に交錯していく――。同じく群像劇の秀作『クラッシュ』でアカデミー賞の栄誉に輝くポール・ハギス監督の最新作は、そんないかにも彼らしいミステリアスで魅惑的なヒューマン・ドラマだった。登場人物の数も多く、各々のストーリーもかなり複雑なのに、この監督の演出力は相変わらず冴えわたっている。極めて分かりやすいストーリーテリング、それぞれに個性豊かな登場人物たち、詩的で美しく時には官能的ですらある映像、そして観る者を深い迷宮へと誘うように魅惑する壮麗な音楽……。挙げていけばきりがないほど、画面の端々にまで才気が漲っている。親子間であれ男女であれ深く愛するがゆえに憎み傷つき、それでも愛されることを求めてもがき苦しみながらも必死になって生きていこうとする主人公たちに最後まで釘付けだった。特に、ミラ・クニス演じる若いシングル・マザーが直面する苦悩には深く胸打たれた(ホテルの一室で他人の幸せの象徴である白い百合の花を無茶苦茶にするシーンは、最近観た中では息を呑むほど印象的で美しいものだった)。ただ、ほとんど謎を残したままで終わる本作のラストはやはり賛否の分かれるところだろう。こういうメタ・フィクション構造は夢オチと同じでよほど丁寧に扱わないと何でもアリとなってしまうので、多くの場合観客を興醒めさせてしまうもの。本作もその例に漏れず、やっぱりそんな〝興醒め〟感から逃れられていない。こんな奇を衒った構造などせず、直球の群像劇として終わらせていれば『クラッシュ』を超える傑作になりえたかも知れないと思うと、つくづく惜しいと言わざるを得ない。とはいえ、静謐な空気に満ちた上質のヒューマンドラマとして最後まで惹き込まれたことは確か。充分鑑賞に耐えうる良質の作品と言っていいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-08 19:05:13)
472.  インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 《ネタバレ》 
1961年、ニューヨーク。売れない若手歌手ばかりが集うカフェで夜な夜なフォークギター片手にステージで歌う男、その名もルーウィン・デイヴィス。いずれ有名になることを夢見ていた彼だったが、コンビを組んでいた相棒を自殺でなくしてからは酒と女に溺れる鬱屈した日々を過ごしている。そんなある日、彼はひょんなことから知り合いの大学教授の猫を預かることになる。とはいえ彼はその日泊まる家すらままならないどん詰まりの毎日だ。一日だけでも泊めてもらおうと友達夫婦の家に向かうルーウィン。だが、応対に出た奥さんは彼のことを見るとかんかんに怒りだしてしまうのだった。「私、妊娠したみたいなの!きっとあなたの子よ!」――。そう告げる彼女の言葉に心当たりのあるルーウィンは、ちゃんと中絶費用を払うと約束するのだが、どう捻出したらいいかすら分からない。音楽活動も一向に芽が出ず、友達とも喧嘩ばかり、さらには預かっていた大切な猫さえ逃げ出してしまい……。そんなどん底を這いずり回るような日々を過ごす彼の人生に、果たして光は差すのか?いまや重鎮の風格さえ漂うコーエン兄弟の新作は、そんな愛すべき駄目男のどうしようもないトホホな日々を描いた佳品でありました。彼らの相変わらず冴えに冴えわたった演出はもはや抜群の安定感。女にも金にも酒にもだらしないどうしようもない駄目男の日常に、コーエン兄弟お得意のユーモアとペーソスが絶妙なバランス感覚で配合されていて観ていて大変微笑ましかったです(実際に知り合いにこんなヤツがいたら迷惑千万なんですけどね!笑)。もうやることなすことことごとくが裏目裏目に出てどんどんと不幸になっていくのですが、そのほとんどがまぁこのルーウィン・デイヴィスというアホ男の自業自得なので全然同情しなくて済むという設定が秀逸。特に、ジョン・グットマン演じる超胡散臭い男とのロードムービー的展開になるトコなんてあまりにも馬鹿馬鹿しすぎて何度も笑っちゃいました。そんな徹底的に駄目な男なのに、それでも音楽に対する情熱と自殺した元相棒に対する友情だけは決して失わないところがなんとも魅力的。僕は最後まで彼に好感を持って観ることが出来ました。「君は確かに巧い。音楽に対する情熱も素晴らしい。ただ、君の音楽には心に響くものがまるでない」。劇場のオーナーにそうとどめの一言を言われてしまった彼の人生に、それでもこれから先ほんの少しでも光が灯ることを願ってやみません。自分にとってはつらい毎日でも、客観的に見れば面白い人生なのかもしれない。そう思わせてくれる佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-06 22:52:09)
473.  チョコレートドーナツ 《ネタバレ》 
「そうよ、あの子を引き取りたいの。もちろん簡単じゃないことは分かってる。だからといって放り出せと言うの?麻薬依存の母親も自分が他の子と違うこともあの子が望んだわけじゃない。なぜ、あの子がこれ以上苦しまなきゃならないの、何も悪くないのに」――。1979年、カリフォルニア。場末のゲイバーでダンサーをしているルディと地方検事局で検事をしているポールは、ほとんど一目惚れに近い形で恋に落ちたゲイカップル。今月の家賃の支払いすらままならないルディは、ある日、隣で麻薬依存の母親とともに困窮した生活を送る一人の少年と出会う。彼の名はマルコ。ダウン症で知的障碍もある特別な男の子だ。だが、自堕落な母親は彼のことをほったらかしにして、夜な夜な男と麻薬漁りに繰り出すのだった。心配を募らせていたルディだったが、とうとう母親が麻薬不法所持で捕まってしまう。「マルコをあの最低な養護施設に放り込むなんて許さない!」。義憤に駆られたルディは、そんな不幸な少年を引き取ることを決意する。同棲相手であるポールの協力のもと、何とかしてマルコを引き取ろうと奮闘するのだが、世間の差別や偏見の目はそんな彼らの前に大きく立ち塞がるのだった……。障碍を抱えた一人の不幸な少年と一組のゲイカップルの本物の親子のような深い繋がりを描いたヒューマンドラマ。ちょっとあまりにも作りが優等生過ぎるきらいがあるものの、なかなか見応えのある良品でしたね、これ。何が良いかって、まずは俳優陣のナチュラルな演技でしょう。特に、実際にダウン症を抱えたこのマルコ役の少年のキラキラと輝くような目にはすっかりやられちゃいました。そんな彼を引き取ろうとする2人のゲイカップルも、実際に何年も一緒に暮らしたんじゃないかというほど深い愛情を感じさせて何とも微笑ましい。彼らの迫真に満ちたドラマに最後まで終始釘付け。ただ、僕はずっと実話を基にした作品だと思って観ていたのですが、観終えたあとにこれがほとんどフィクションに近いと知って、ほんの少しですがあざとさのようなものを感じたのがちょっと残念(特に、手紙を巡る最後の展開は賛否が分かれるところ)。それでもこの作品に終始貫かれる、差別や偏見という人間の悪意に最後まで戦う覚悟のようなものに僕はいたく共感できました。ゲイだから、障碍を持っているから、貧困家庭に育っているから、だからきっと自分たちとは違う世界の人間だ……。そんな誰の心にももしかしたら眠っているかも知れない悪意の芽に立ち向かうことの大切さを、この作品から改めて教わったような気がします。うん、なかなかの良品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-10-19 14:12:04)
474.  アデル、ブルーは熱い色 《ネタバレ》 
「ねえ、エマ。初めて味わったのは何歳のとき?」「何を?」「女の子」「女の子?それは私が女の子といつキスしたかってこと?それとも食べたかってこと?」「キスよ、もちろん…。その先のことは後で教えてもらうわ」「14歳のときよ、アデル」「そう…、エマはやっぱり女の方が好き?」「両方試した、男も女も…。それでもやっぱり女の方が好き。アデル、絶対よ」「エマ、私もあなたとキスしたい」――。17歳の女子高生アデルは何処にでも居るような平凡な女の子。毎日バスで学校に通い、退屈な先生の退屈な授業を受け、休み時間は女友達とのどうでもいい恋バナをして、そして家に帰るといつものように家族揃ってご飯を食べて…、という平穏な日々を遣り過ごしている。そんな毎日に物足りなさを覚えたアデルは他の女友達のように彼氏を作ってデートをし、セックスだってしてみるのだけど、それでも心の空白を埋めることが出来ないでいる。「何かが違う」。そう感じたアデルは、彼氏とも別れ、友達に連れてこられたゲイバーで“彼女”に出逢ってしまうのだった。髪の毛を鮮やかなブルーに染めた彼女の名は、エマ。そう、彼女こそアデルが街中で偶然擦れ違ったとき、自分の心の深い部分に火を点けるような衝撃を与えて去っていった女の子だった。偶然の再会に、何か運命的なものを感じたアデルは、そんなエマと何もかもを捨ててもいいほどの情熱的な恋に堕ちてゆく…。自分の殻を破れないでいる平凡な女の子アデルと芸術家肌の奔放なレズビアンの女の子エマとの数年間にわたるそんな濃厚な愛の日々を詩的な美しい映像で綴るカンヌ映画祭パルムドール受賞作。とにかく、この監督は人の顔をアップで撮るのが好きみたいですね~。3時間という長い上映時間のほとんどがこのアデルとエマの顔のどアップで占められておりました。もう冒頭から、主人公アデルのスパゲッティやらケバブやらをくちゃくちゃ食べるシーンが延々と繰り返されるのですが、普通、そんな挑戦的な演出はものの見事に失敗するのだけど、この監督さんの映像センスは素晴らしいですね。このアデルという何処にでもいる平凡な女の子の等身大の魅力を見事に引き出していたと思います。そんな彼女を虜にしてしまう青い髪のボーイッシュな少女エマとの濃密なベッドシーンも全然下品じゃなく、かといって必要以上に綺麗に美化されている訳でもなく、この絶妙なバランス感覚は凄く良かったです。後半、互いの生活のすれ違いから2人は破綻に至るわけですが、そこで描かれるアデルの心理は女と女という狭い枠組みを超えた普遍的なもの。辛い失恋を経験した男女なら誰もが共感できる、切ないものでした。僕もちょっと過去の色んなことを思い出して思わず泣きそうになっちゃいました(笑)。ただ、いかんせん長い!!このストーリーなんてほとんどあって無きが如しお話に3時間弱はさすがに長すぎます。2時間弱くらいに収めてくれたらもっと完成度の高い傑作になり得ただろうに。そこらへんがちょっぴり惜しかったですが、充分見応えのある納得のカンヌ映画祭パルムドール受賞作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-07 02:30:31)(良:2票)
475.  ブランカニエベス 《ネタバレ》 
むかしむかし、カルメンシータという女の子がおりました。年老いた祖母と平穏に暮らす彼女の父親はかつての天才闘牛士アントニオ・ビヤルタ。だが、父は獰猛な雄牛との競技中に事故に遭い全身麻痺という悲劇に見舞われて、さらには愛する妻をも失ってからずっと心を閉ざしてしまったのでした。幼い彼女を遠ざけ、欲深き悪女であるエルカンナと再婚した父を、それでも待ち続けていたカルメン。祖母の死をきっかけにとうとう父と念願の再会を果たします。ところが、迎え入れられた父の屋敷には継母である悪女エルカンナが君臨し、カルメンは虐げられた不遇の日々を過ごすことに。それでも継母の目を盗んで、カルメンは父との交流だけを糧にそんな生活に耐えていたのです。でも現実は何処までも残酷です。カルメンの生きる支えだった父も継母の策略で殺されてしまうのでした。邪魔者となったカルメンも森の奥深くに捨てられてしまいます。辛うじて生き延びることに成功したカルメンは、そんな森の中で「7人の小人闘牛士」を名乗る愉快な小男たちと出会い、数奇な運命に翻弄されていくのでした……。1920年代のスペインを舞台に、『白雪姫』という誰もが知る童話をベースとしながら、そんな女闘牛士として美しく成長していくカルメンの姿を詩情性に満ちた美しいモノクロ映像と情熱的な音楽で綴るサイレント・トーキー作品。ほとんど予備知識もなく、ただゴシック調のパッケージに記されていた「アルモドバルが絶賛!」という宣伝文句に惹かれてこの度鑑賞してみたのだけど、確かにアルモドバルが大好きそうな映画でしたね、これ。3Dやなんやと喧しい現代に於いて、敢えてモノクロサイレントという古風な作風で撮られた本作、その冒頭から漂ってくる並々ならぬ淫靡で独特な世界観に僕は完全にノックアウトされました。主人公カルメンの幼少時代を演じた少女がとにかく可愛くて、そんな彼女が迷い込むことになるおとぎの国の映像美なんて、もう監督のセンスが冴え渡っています。妖艶な悪女である継母の目を盗んで父との秘密の交流を図る一連のシークエンスなども、ぞくぞくするほど美しい。ただ、惜しむらくはそんなカルメンが大人になってからの後半の展開。『白雪姫』という物語に拘りすぎたのか、展開の先が読めるうえに、少々強引な印象が否めませんでした。特に毒りんごを食べてからの運命の人のキスを待つ最後の流れはさすがに無理があったような気がします。とはいえ、他の追随を許さない唯一無二の映像センス、情熱的なのにどこか淫靡な世界観を僕は充分に堪能できました。新たな才能の出現にひとまず喝采を贈りたい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-05 00:45:38)
476.  マップ・トゥ・ザ・スターズ 《ネタバレ》 
学校のノートに、自分の机や木々に、砂の上や雪の上に君の名を書く。肯定する肉体すべてに、我が友すべての額に、差し出された手すべてに、君の名を書く――。女優として行き詰まりを感じ、起死回生を計るために今まで真剣に向き合うことを拒んできた自分の母親の人生を描いた伝記映画に主演しようと目論むハリウッドのセレブ女優、ハバナ。子役として一躍有名になったもののクスリに手を出し謹慎を余儀なくされた13歳の高慢な少年、ベンジー。その姉で、かつて弟を焼き殺そうとしてずっと病院に隔離入院させられていた、生まれつき精神に問題を抱えた少女、アガサ。2人の父親で、神秘的なセラピストとしてハリウッドセレブたちに人気の金に目がない男、スタッフォード。ハリウッドの上流階級で蠢く、そんな醜いセレブたちの嘘と喧騒に満ちた日々を、まるで夜空の星に地図を描くような空虚さでもってシニカルに見つめた群像劇。かつてグロ映画界の巨匠としてその名を馳せたものの、最近はなんだか分かりにくい作品ばかり撮っているクローネンバーグの最新作、そんなに期待せずに今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、比較的分かり易いアプローチで描かれていて、今回は眠気と戦うことなく最後まで観ることが出来ました(笑)。とはいえ、ストーリーは確かに分かりやすかったのですが、この作品が観客に伝えたかったテーマはやっぱり分かり難かったです。たぶん、このどうしようもない人たちの何も有益なものを生み出さない醜悪な人間ドラマを延々と描くことで、人生の空しさを表してると思うんだけど?とはいえ、そんなさっっっぱり分からない感じが、上手く言えないのですが今回はなんだか心地良かったです。例えるなら、デビット・リンチの傑作『マルホランド・ドライブ』を幾分か薄めた感じのシュルレアリスム劇と言ったところ。豪華な役者陣の熱演も光っていたし、シニカルな人間ドラマの中にときたま顔を見せる抒情性も印象的だし、なかなか見応えがありました。それにしても、本作で主役を演じたジュリアン・ムーアのもう何も怖いものナシと言った感じの鬼気迫るような演技は凄いですね。誰も望んでいない?ヌードを惜しげもなく披露し、ヒステリーを起こして泣き喚くわ、おばさんとレズっちゃうわ、ネグリジェ姿で変な踊りを踊りだすわ、挙句の果てには便器にパンツを下ろして座り、「最近、便秘気味なの」とブブブってオナラしちゃうなんて、物凄い女優魂です。そ、そこまでせんでも…と若干ひいちゃうくらいでした(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-07 18:27:47)
477.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ノーマン、何処に居る?こっちへ来い。分かるか、こいつはさっき捕まえたドイツ兵だ。ドイツ野郎を殺せないような役立たずはいらない。こいつの背中に風穴を開けろ。間違っていようと関係ない。お前は何をしにここに来たんだ?俺たちの任務はナチスを殺すことだ!ノーマン、お前はこいつを殺すためにここにいる。そして、こいつはお前を殺すためにここに来た。こいつを殺すか、お前が死ぬかだ――。1945年、4月。連合軍に追い詰められ、降伏寸前のナチスドイツは、最後の総力戦を戦うために女子供を問わず戦場へと駆り立てていた。兵役についたばかりのノーマン二等兵は、そんなドイツ軍との熾烈な戦いの最前線へと送り込まれるのだった。それまで事務仕事ばかりで実戦経験のほとんどないノーマンだったが、歴戦のベテランであるドン・コリアー軍曹の愛機“フューリー号”の副操縦士として配属される。鋼鉄と油にまみれたそんな狭い戦車に揺られながら、ノーマンは戦場の汚い現実を目の当たりにしていく。自分が信じる神と良心に縋ることによって何とか理性を保とうとするノーマンに、そんなものなど当の昔に捨ててしまったドンは、ドイツ兵は誰であろうとたとえ女子供であろうと躊躇なく殺せるマシーンになれという教育を施していくのだった…。第2次大戦末期のドイツを舞台に、戦車部隊の工員として過酷な戦場を生きたそんな男たちのドラマを生々しく描き出す軍事アクション。とにかく、この徹底的にリアルさに拘った重厚な戦場描写は凄まじいものがあります。ナチスドイツの狂気性はもちろんのこと、歴史的には英雄として認識されることが多い連合軍にもきっと蔓延していたであろうモラリティの欠落も、ちゃんと目を逸らさず描き出した本作のこの冷徹な姿勢は賞賛に値すると思います。そんな汗と泥の臭いにまみれた男臭い物語なのですが、中盤に登場する一人の可憐な女性を巡るエピソードは強い印象を残してくれました。もし、自分の童貞を捧げた美しい女性が、その次の瞬間に死んでしまうなんて経験をしてしまったら、そりゃ人間性なんてどっかに吹っ飛んじゃいますって。今では粗野な振る舞いを繰り返す先輩たちも、きっと入隊したての頃は彼のような葛藤があっただろうにと思うと見ていて辛いものがあります。ただ…、終始そんな冷徹な視線でもって戦争のやり切れなさを見つめていた本作なのですが、後半における無謀なヒロイシズムへと安易に流れてしまった展開はやはり大きなマイナスポイントでしょう。「俺の最大の任務は、仲間を生きて帰らせることだ」と言っていたドン軍曹の信念がここで揺らいでしまったのが残念でした。とはいえ、最後までヒリつくような緊張感を途切れさずに見せきる戦争ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-04 01:38:22)(良:1票)
478.  ホビット/決戦のゆくえ 《ネタバレ》 
ロードオブサリングの感動再び!と勢い込んで観たものの、原作のボリュームを考えるとこちらも同じような枠組みで3部作にするのは無理があったんじゃ…、と思わせ続けた本シリーズもとうとう完結。という訳でけっこうハードルを下げて観始めたせいか、僕的にはけっこう面白く観ることが出来たっす。まあ、いろいろと突っ込みどころは多々あれ(あれだけ引っ張ってきたドラゴンが冒頭10分であっさり死んじゃうトコとかけっこう失笑しちゃいました~☆)ど、戦闘シーンの迫力なんかは抜群の安定感で素直にハラハラドキドキ。当初の予定通りシンプルに2部作として製作していたらきっと完成度の高いシリーズになっていただろうに、そこらへんはやっぱ色々と大人の事情があったんでしょうね~。クライマックスが終わった後の大団円の超あっさり終わってしまうトコとかなかなか投げ遣りな感じがして、P・ジャクソンの「俺は普通に2部作で撮りたかったんだよ!」という嘆きがそこに滲み出ているような気がしたのは僕だけかしら?フロドもゴラムも出てこないし…。と、前シリーズに比べるとやっぱり見劣りしちゃうけど、普通に独立したファンタジーとして観ればけっこう面白かったかな~。ジャクソン監督はこれで肩の荷が下りただろうし、次はどんな凄い作品を撮ってくれるのか期待を込めて7点!
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-03 21:30:21)(良:1票)
479.  アクト・オブ・キリング 《ネタバレ》 
1965年、インドネシア。軍部によるクーデターが発生し、軍事独裁政権が誕生した。政府に逆らう者は共産主義者として告発され、西側諸国の支援のもと、100万人を超す“共産主義者”が1年足らずの間に殺された。虐殺や拷問の主な実行者は〝プレマン〟と呼ばれる、ほとんどヤクザと変わらない民兵集団だった。当時、彼らは権力者として敵対するものを容赦なく迫害。驚くべきことに、彼らは今も罪に問われることもなく国民的英雄として幸せに暮らしているのだった。今回、取材に応じたそんな殺人者たちは、かつて自らが犯した残虐行為を誇らしげに語り始める。どうして彼らはそんな鬼畜にも劣る行為を嬉々として実行できたのか――。その理由を知るため、本作のスタッフたちは、彼らに当時の拷問や虐殺を自由に再現し撮影して1本の映画として完成させるよう依頼する。本作は、その過程を追い、そんな殺人者たちの形成過程を記録したドキュメンタリーである。主な出演者は、当時プレマンと呼ばれ残虐の限りを尽くしたものの、今では地元の権力者として住民から英雄視されている初老の男たち。つまり当事者自らが当時のことを再現してみせるのだ。例えるなら、本物のナチスが多くのユダヤ人をガス室に送った工程を自ら演じてみせるようなもの。こういう今まであり得なかった手法で撮られた本作は、もうそれだけで観る者の知的好奇心を否応なく刺激してくる。映画を撮るために、久々に集った当時の仲間たちが、まるで学校の同窓会のように抱擁を交わし、そして当時の虐殺の様子を楽しそうに語り始める姿は観客の倫理観に挑戦状を叩きつけてくるようだ。「俺たちは当時正しいと信じられていたことをやっただけだ。それを言うなら、アメリカだってイラクで同じようなことをした。戦争犯罪は勝者が規定するものさ。殺人を責めるなら〝カインとアベル〟からやれ。俺たちは勝者だ、自分の解釈に従う」と主張する彼らに、真に有効な反論をいったい誰が有しているだろう。人間の倫理観の規範となるべき根拠の脆弱性を鋭く問う本作のテーマは、なかなか深いものがある。ただ、後半における「そんな彼らも当時のことを再現する過程で罪悪感に目覚めていった。きっと人間の本質にあるのはやはり〝善〟だ」という既存の道徳観に(無難に)収めていく展開は、残念ながら監督の“逃げ”と捉えられても仕方ないだろう。日本が世界に誇るカルト・ドキュメンタリーの怪作『ゆきゆきて神軍』における奥崎謙三が放っていた真の狂気性には到底及ばない。監督には彼らの心にいまだ眠っているだろう真の闇に、徹底的に肉薄して欲しかった。そうしたら、歴史に残る傑作になり得ただろうに。惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-28 16:02:14)
480.  わたしは生きていける 《ネタバレ》 
「緊急ニュース速報です。ただいまロンドンで核爆弾が爆発した模様です。繰り返します、ロンドンで核爆発、首都近郊はいまや炎に包まれ、数万人規模の死者が出ているようです。確認できただけで15の組織が犯行声明を出していますが、真偽のほどは分かりません。現在、ヨーロッパ各地に死の灰が降り注いでおり、政府は戒厳令を発令しました。繰り返します、世界はいまや第3次世界大戦の瀬戸際に立たされています」――。ハードロックをこよなく愛する反抗期真っ只中の16歳の少女デイジーは、ひと夏を都会の喧騒から逃れて過ごすため、イギリス郊外の叔母の家へとやって来る。のどかな田園風景が拡がるそんな田舎町で彼女を迎えてくれたのは、自由気儘に暮らす従兄弟たち兄妹だった。最初こそ、情緒不安定な性格のせいで反発を覚えたデイジーだったが、次第に彼らの純朴な人柄に心を許してゆく。やがて、長男のエディに仄かな恋心を抱くまでになるのだった。だがある日、緑に囲まれた丘の上でのどかなピクニックを楽しんでいたデイジーたちは、遠くの空に一筋の閃光を見るのだった。直後に降り注ぐ謎の白い灰。急いで家に帰ったデイジーたちは、テレビのニュースで第3次世界大戦が勃発したことを知る……。これまで社会派ドラマの良品を幾つもものしてきたK・マクドナルド監督が数々の権威ある賞に輝くベストセラーを映画化したという本作、正直に言って、明らかな瑕疵の目立つ作品でありました。前半での青春ドラマパートにおける主人公デイジーとエディの恋があまりにも唐突過ぎて説得力に欠けるうえに、彼の動物と話せるらしい特殊能力もデイジーを終始苦しめる頭の中の声も一向にドラマに絡んできません。挙句、最後の取ってつけたような展開にいたってはもう目も当てられない。なのですが、本作にはそれを補って余りある魅力が随処に感じられて、僕は素直に観て良かったと思えました。たとえば、デイジーが大量の打ち捨てられた死体の山で従兄弟のことを捜すシーン、こんなにも悲哀に満ちたシーンを僕は久し振りに見たような気がします。あるいは、従兄弟の女の子を捕まえようとした男たちにデイジーが躊躇なく引き金を引くシーン、彼女の深い怒りに胸が張り裂けそうになりました。本作の優れた点は、戦争という巨大な災厄をあくまで一人の無力な少女の目線から捉えたところでしょう。この世界はロクでもない暴力に満ち溢れていて常に犠牲になるのは女や子供といった弱い者たち…、それでも人を想う気持ちさえあれば“わたしは生きていける”。そんなシンプルだけど、力強いメッセージにどうやら僕は心打たれようです。それだけにこの脚本上の欠点がつくづく惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-26 20:56:50)
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