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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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521.  さらば箱舟
黄色の鮮やかさ。全体のくすんだ色調の中で、ハッと目を引く。黄色とは、そもそも「黄昏」とか「黄泉の国」とか、日本では時間の終わりや死のイメージを含んで、淀んだドローンとした雰囲気を帯びがちなのに、この作品での死=黄色い花びらは、実に鮮やかなんだ。死者が明確に存在するのと同じ。監督の当時の心境の表われか。逃げつつ戻ってしまうというのは彼の生涯のモチーフで、共同体への愛憎が感じられる。記憶喪失のエピソードが一番いい。忘れてしまうことへの恐れがあり、忘れられてしまうことへの恐れもあり、その不安の中でかぼそく睦みあっているのが、なんと愛なんだな。今まで北方志向だったのが南方に向き、装飾性も控え目で、神話的なメロドラマを強調し、異質の手触りとなった。病をおして撮った映画ということで、とかく「遺言」的な見方をされたものだったが、監督はさらなる新境地を目指していたのかも知れない。
[映画館(邦画)] 7点(2013-04-10 10:02:35)
522.  ハッカリの季節
ギュネイの『路』がカンヌでグランプリ獲ったり、本作がベルリンで銀熊賞獲ったり、トルコ映画に注目が集まっていた80年代初め、しかし私は、トルコってあんな雪山がある国なのか、と驚くぐらい認識不足だった。今から思うとどうもクルド人問題が絡んでいたようで、舞台は南東のイラクと近いあたり。イラク戦争前は注目もされない地域だった。そこへ赴任してきた先生の話。歩いてくる主人公から映画は始まる。細かなスケッチを描きつつ、笑いながらタバコをふかす子どもを中心にした村人たちの、ヨソモノへの悪意とまでは至らない距離感がじんわり滲んでくる優れた導入。先生は、流刑と言うほどではないが、何かの処罰か、何かの注意人物のような扱いがほの見える。イスタンブールの放送が聞けるか、とラジオをめぐる会話があるのも、単に文化的生活への憧れなのか、あちらの人にとってはピンと来る政治的な何かがあるのか(地理的にはイスタンブールと正反対の地域だ)。映画が優れているのは、とにかくまず村人の生き方を記録しよう、という姿勢が見られること。なにしろここは「山が、自分を見てくれるものがいないと神に孤独を訴えた」という土地なのだ。自然と協調した生活、などというノンキなものではない。遊牧民が冬だけ過ごす定住地なのらしい。そこで孤独な山と孤独な村が、ひっそりと見詰め合っている図が、ひどく神々しい。こういう映画だと、教師が文明の伝道者となってやがて開けていくだろう、という方向へ持っていくか、共同体側に立って、どうだ厳しい環境での我々の生きざまを見よ、と自慢するか、そのどっちかだったが、「こういう土地がある」という厳とした現実を突きつけることに映画は集中する。おそらくそれが正しい。問題意識とは、その後に生まれてくるのを待つべきなんだろう。主人公がランプを弱めるとそれに見合って室内が暗くなる。その当たり前の記録性が、臨場感を高める。ランプが弱まったことをよく見せるために室内を明るくしといてはいけないんだ。エルデン・キラル監督。
[映画館(字幕)] 7点(2013-04-08 09:44:26)
523.  麻雀放浪記
落語の「黄金餅」や「らくだ」を思わせる壮絶なブラックユーモアのラストで、思わず点を上げちゃう。それまで欠点と思っていたところを、ヨシッと思い返させてしまう。カタギの人が出てこないこと。真っ当な人々と対照させないと、彼らの異様さが浮き立たないのでは、と思っていたのが、その普通でない人たちだけを煮詰めることで、絶対的な狂気というか、麻雀に憑かれた人たちの地獄を(普通の人とは比べることの出来ない)見せてくれた。登場人物たちのストーリーが同時進行しないで、前半真田君、後半しのぶ嬢と分かれてしまっていることも、ラストの大勝負を盛り上げることと思えぬこともない。群像ものとして。ホント、映画は終わりよければ印象強い。麻雀勝負の周りをカメラはグルグル回るし、家の権利書も回る。高品格に風格。
[映画館(邦画)] 7点(2013-04-05 09:35:51)
524.  風の谷のナウシカ
腐海を焼き払うのではなく、共存していく。怯えずに大きな自然体系の中に組み込まれよ。以後、ずっと続く監督のモチーフが大きく語られた最初の長編。風の谷より腐海のほうが美しいのは、その底で生まれつつある新世界が清浄な冷たさを持ってるからなんだろう。ただストーリーがちょっとごちゃごちゃし、もっとスッキリ語ればいいのにと思った感想は、以後の監督作品で少なかれ続くことになる。腐海の生物たちの動きが素晴らしく、オームの触角に包まれる動きは、まあ泣けた。巨神兵は最初は余計じゃないかと心配してたが、ドロドロに崩れ続けていく凄味が圧倒的で、近代科学の化身そのものだったなあ。もうちょっとユーモアがあっても良かったんじゃないか。(オールディスのSFの古典「地球の長い午後」を読むと、しばしばイメージが重なる)
[映画館(邦画)] 7点(2013-04-03 10:00:11)
525.  夜の河
シルエットの美しさ。山茶花究が五反田の女への土産を探してる、なんてどうでもいいところでもトロッとさせる美しさがある。まして二人が結ばれる朱色の世界においておや。全体、赤の幻想詩といった趣で、ショウジョウバエから赤旗まで貫く。この赤旗は評判悪いんだけど、吉村公三郎の「自分の問題意識のありか」を示すハンコのようなものだったのではないか。『森の石松』とか『源氏物語』とか『美女と怪竜』とか、左翼思想と無縁の作品でも戦後ずっとシナリオで組んできた新藤兼人と、初めて別れた映画のよう(未確認)。京都の「はんなり」を背景にして、人々の在り方はすごく硬質。ヒロインの硬さも。みなの心が通い合わない世界ね、一人一人が閉じて固まっている。見下ろしたり見上げたりする構図が多かったのは、人々が同じ地平に立ってないということか。車窓に映る山本富士子の顔の向こうを、赤い光が横切っていく。赤いものだけが、その硬さを通過する。硬いものの孤独、それへの讃歌の映画と思った。
[映画館(邦画)] 7点(2013-03-24 09:19:47)
526.  西陣の姉妹
ブルジョワってほどでもない西陣の織元の家、金貸しに潰されるその没落を描きながらも、各階層を織り込んであるのが眼目で、職工たちまで捉えている視点が優れている。けっきょくこの映画で対立しているのは階級よりも、古い考えと新しい考えで、この方がより日常に密着した混乱だったのだろう。職工連中も単一な新興勢力として捉えられているのではなく、今までの奉公関係を引きずっている者から割り切っている者までいる。姉妹でも「妾が勝手口から入ってくるような義理は古い」と言う末娘がいるが、彼女も没落ではオロオロし、婚約者のほうがまだ「新しい人」だったりする。姉妹の苦労を描いた後、機女の愚痴をソロッと入れるとこなんかがうまく、パッと世界が広がる。常に各階層に目を配っており、シナリオの新藤兼人としても優れた仕事だろう。画面は陰影深く、俯瞰が気になるのは宮川一夫と気にしすぎたせいか。美しかったのは宇野重吉が兄と橋の上で話をするシーン、空と電線を入れた見上げた図。シルエットで撮ったカットなんざ最高ね。
[映画館(邦画)] 7点(2013-03-21 10:07:39)
527.  グレイストーク/類人猿の王者ターザンの伝説
これは綺譚なんですな。興味本位で語られた話。登場人物は話を面白く進めるためにのみ奉仕し続けるんだけど、じいさんだけが飛び抜けて「人間」が描かれてしまって綺譚の枠をはみ出してしまう。作者の思い入れでしょうか、最後の貴族の風格があって。おそらくアイデアとしては、そういった洗練された貴族趣味と原始のターザンとを衝突させる面白さみたいなものを狙ったんだろうが、こっちの貴族趣味のほうに惚れてしまってる(光抑え目で美しい)。どちらかと言うと否定したく思ってたんじゃないかな、でもそっちに傾いてしまう。否定しなくちゃいけないと思いつつ惚れ込んでる、ってのが一番面白いんだ。『炎のランナー』の監督なら仕方ないだろう。猿の表情がやっぱり微妙に人間の表情。母猿の慈愛とか、矢が刺さったときの驚きと苦痛とか。
[映画館(字幕)] 7点(2013-03-19 10:23:13)
528.  ブリキの太鼓
オスカル君の気味悪さは映画ならではのストレートで迫ってきます。ずっと生き続ける祖母をポーランドに残したまま、成長を再開するオスカルは西へ行ってしまう。これはどう考えればいいのか。ポーランドに残って成長していくってのなら分かりやすいが。彼の太鼓は、軍楽隊のリズムをワルツに変えもするが軍隊の慰問にも使われる。不快に思っても政権から離れられない「芸術」と見てそう間違いではないと思うが、母の死以後の部分がよく分からない。でもそういう“分からなさ”が寓意の豊かさで「きっと深いんだ」と思わせられるのが、芸術映画の得なところ。
[映画館(字幕)] 7点(2013-03-14 10:00:50)
529.  いとこ同志 《ネタバレ》 
うまくいく奴とうまくいかない奴の話。うまくいく奴にとっては何でもないことが、うまくいかない奴にとっては大障害であったりする。それぞれの人生ってことで、しょうがないの。“ヌーベルバーグ”と構えていた想像よりは、しみじみしたいい映画でした。まじめ男が初めて思い切った行動に出たのは(ロシアンルーレット)不発に終わり、彼の命は「うまくいく奴」の遊戯の中に終えられてしまう。このバックに延々とワーグナーが流れることで、つまらん事故が荘重な運命悲劇の様相を帯びるんだ。神話のなかの兄弟の相克って感じで。なぜピストルに弾が入っていたのかを理解していく長回しが素晴らしい。
[映画館(字幕)] 7点(2013-03-11 09:45:39)
530.  愚なる妻
シュトロハイムが自信持ってるなあ、という表情って分かる。ヨーロッパの表現主義を引きずってる。たとえば空涙を流して手の陰で目を光らせてるとことか、鏡で女を盗み見るとことか、きっとああいうとこに自信があったんだと思う。今から見るとクサいんだけど、でもこういうヨーロッパ風・悪の粘着的魅力ってのが新鮮だったに違いない、アメリカでは。そこらへんの「アメリカに渡ったヨーロッパ人の映画」ってことの表現のあれこれに興味は湧くが、現在残っているフィルムで(オリジナルから見ればほとんど断片)何か言ってはいけないような気もする。セットと知らなければそれほどお金掛けてる映画に見えません。
[映画館(字幕)] 7点(2013-03-05 09:18:13)
531.  御誂治郎吉格子 《ネタバレ》 
娘がお百度参りしているあたりから後半に、映画に濃密な空気を感じだす。特別構図が凝っているわけでもなく、ろうそくなどもっと装飾的に使う監督もいるだろうが、一つ一つの図柄の的確さが濃密な空気を醸している。理屈をつければ、治郎吉が彼女への同情を決定的にした瞬間で、つまりこの場にいないお仙のラストの悲劇がカチリと始動した瞬間だった、という運命的な見方をすることも出来る(もちろん観客はまだ知らないんだけど)。このあと彼女の不幸が自分のせいだと知る治郎吉、だから自分で自分の始末を付けるということでもあるんだが、そも「輪」からはみ出されていくお仙の意地っていうのが絡んできて、重厚。「あたしを忘れさせないからね」っていうのは、怖い。
[映画館(邦画)] 7点(2013-02-22 09:55:13)
532.  竜二
後半締まってくる。友人がヤク中で死んだあたりからか。この男辛抱が出来ないの。「辛抱したって一度の人生、つまんないじゃない」という人生観にはもっともなところがあり、でもそういう男のために周りが迷惑するのも事実。やくざもかたぎも同じように空虚感は持ってるわけで、それを自分だけの不機嫌と思ってるとこにこの男の馬鹿さ加減があるんだろうが、でもこういう男は確実にいる、というリアリティはびんびん伝わってくるし、そういうのを見下す感じにはしていない。そこがこの映画のいいところ。かたぎの生活してみても、同じ空虚感が残っていることから来る焦り、みたいなものがよく出ていた。ゲートボールしているオッサンみたいになっていっちゃうんだなあ、って。
[映画館(邦画)] 7点(2013-02-20 10:34:29)
533.  息子(1991)
寅チームの役者が出ないことに気分一新の気合いを感じる。渥美清が全然出ない山田作品は二十数年ぶりだろう。原作ものだが、今でも『下町の太陽』は可能だ、という思いを感じ、この浮き足だった時代に、いや、そういう時代だからこそ、地道のほうが「いいではないか」と言っている。岩手での一周忌は『東京物語』や『寅』でのヒロシの母の死の記憶が湧き上がるが、いいのは尾久。夕方の都電沿いの風物の美しいこと。岩手の田舎の場はやや観念が先行してたようだが、こちらはフィルムにくっついちゃってる懐かしさがある。山田さんの下町のエッセンスを随所に感じた。そして繰り返される「いいではないか」。方言が出ないように気を張ってるとつい文章語になってしまうのか。この言葉の硬さが気持ちよい。
[映画館(邦画)] 7点(2013-02-13 10:30:39)
534.  アリス(1990)
おばさんのアリスにとっても、この世は不思議の国。カメラはいつものニクヴィストではないが、室内の光線などタッチは似てる(冒頭の室内の長回し、奥深い廊下)。現実は退屈だけど、それを覆す形式として「不思議」というものが必要になってしまう。浮気をするにも、媚薬の調合にラ・クンパルシータのBGMで促されなければならない。テレビドラマの作家になる才能もなく、自力で浮気をする勇気もなく、でもカトリック少女だった夢が、ラストで生きてくる。マザー・テレサになるんだ、カルカッタだ、って。秋の動物園、記憶の中の実家、家の前に懺悔室があって、ここらへんの秋の雰囲気が美しかった。常に平均点以上の作品を作ってるんだけど、なんかこのころから、新展開の驚きのない枠が窮屈に感じられ出した。この退屈世界では吹っ飛んだところまでいかないと、手応えを得るのは難しいよ、あたしたち現実のニューヨーカーには難しいでしょ、って嘲ってるようなところもあり。
[映画館(字幕)] 7点(2013-02-12 09:54:55)
535.  女と男のいる舗道
あっけなさというのがこの監督の重要な要素。ラストもそうだけど、初めて客をとってしまうところも、それらしい逡巡や決意の表情やらを見せず、出来事は不意に訪れる。街頭でのドンパチも、観客が「なんだなんだ」と戸惑ってしまうような仕掛け。観客に対する親切が紋切り型を作ってしまい、出来事を遠ざけてしまう、ということなんだろう。出来事は常に隣り合わせに起こり、ある種の自由の感覚がある。流動していくものを肯定する気持ち。人はいつも不意に状況の中にいるんだ、って。冒頭ヒロインのシルエットにタイトルが被さってるんだけど、音楽が中断しつつ流れる。音楽の中にゆったりと浸れない、沈黙が緊張を強いる。出来事が不意に起こるように、今続いているものが不意に消えることもあるってことか。
[映画館(字幕)] 7点(2013-02-11 10:25:06)
536.  モンスターズ/地球外生命体 《ネタバレ》 
主観映像ものもそろそろ新鮮さが薄れてきたなと思われだした今日このごろ、これでは力のいれどころを「非日常の日常を記録していく視線」に傾注した。映画としては、こっちのほうが本道かもしれない。映像はすでにモンスターが暴威を振るったあとが主になり、それが「記録映像」のリアリティを生んでいる。廃墟となったビル、転覆している貨車、木に刺さった車、などが描かれ、それに壁の落書きやテレビのアニメなどが補強する。戦闘機の残骸を運んでいる地元民、おそらく貴重な金属資源なのだろう。非日常が日常になっている環境を丁寧に作り上げていく前半に唸った。地元の人たちの顔もいい、地図を見せてくれた太ったおばさん、フェリーの切符売り、などなど。戦時下の日常を記録していくジャーナリストの視線に徹する。でもそれだけで通すのは冒険すぎ、ラストにはいかにもモンスターものの場面を置くが、それはサービスと思おう。「宇宙戦争」の火星人に東宝のドゴラが混ざったような造形で美しい。サスペンスよりミステリアスな雰囲気狙いのシーン、スローテンポの緊張がいい。その後の結末は実は冒頭に提示されていたことが、口ずさまれる「ワルキューレの騎行」によって知らされる。アメリカの国境に「万里の長城」を建設しているのは、あれは「テロへの備え」を強調してはよそへのミサイル攻撃を繰り返していることへの皮肉か、ふわふわ漂う今回の宇宙生物に無効なのは分かってそうなものだ、と自己分析してるのかと思ったら、これイギリス映画なのか。なーるほど。
[DVD(字幕)] 7点(2013-02-09 10:04:29)(良:1票)
537.  オール・ザ・キングスメン(1949) 《ネタバレ》 
アメリカという国は、何度も何度も「民主主義とは何ぞや」と問い返していて、それに敬服。ソ連は共産革命の賛歌を歌うのにばかり熱心で、同じような試行錯誤をやらなかった。本作は『スミス都へ行く』の、もう一つの結末という感じがする。ああ真っ直ぐに歌い上げられないから、映画としての満足感は劣るが、立派な作品です。いかにもアメリカ南部の農民という顔、アメリカの純朴そのものである顔が、そのままゴリゴリの保守主義者の顔でもある、ということ。後半の群衆の恐ろしさは、映画ならではのもので、あれも『スミス』の裏返しのようにつながっている。テロリズムに共感を寄せてしまうような結末で、考えてみればちょっと怖いんだけども。
[映画館(字幕)] 7点(2013-02-08 10:05:17)
538.  婚前特急 《ネタバレ》 
無礼だった田無君(浜野謙太)を懲らしめてやろうという計画が進んだ結果、一室に四人が集まる状況になり、突然貧者のプロポーズの場と化して過剰にロマンチックな空気が満ち、さらに他の三人が百人一首で話が盛り上がれば、チエちゃんは面白くないを通り越し敗北感深まり、唐突に田無君にキスして脱走する。ここらへんのリズム感、いい。この性格の悪いヒロイン(粘土人形投げるのも、字を書くのも堂々と左利き)、それをずっと対象化しつつ、でも突き放さずに描いてきた映画、このシーンでなんか彼女がかわいく見えた。そもそも田無君に「俺たち付き合ってないじゃん」と皮肉でも嫌味でもなくサラッと言われたことがショックだったときから、彼女の敗北は始まっていたんだろう。ほとんどのシーンに吉高由里子がいる映画で、たぶん田無君がらみの土手の場と、警察からの帰りの場のみ、ヒロインを含まない。五人のうち彼だけこの映画の中で特別な地位にあることがそれだけでもうかがえるが、最初っから「メリット=楽」の田無君は魅力的だった(私事になるが、土手で彼が奏したアフリカの民族楽器カリンバは私も持ってて、よくポロンポロンはじく。心落ち着くんだな)。ラストシーンがファーストシーンを裏返してるのもいい趣向だし、最後まで憂い顔の年上の後輩も楽しい。
[DVD(邦画)] 7点(2013-02-01 10:18:54)(良:1票)
539.  エレンディラ
ヒロインは海に憧れ続け、ラストでやっと海のそばにテントを立てるが、また砂漠のほうに逃げていく。この青空が印象的で、海の青より空の青を選んだ、という感じ(青と言えば、初めて体売られたときカーテンを青い魚が過ぎていく。「百年の孤独」に、ずっと雨が降り続いて湿度が上がった室内を、魚が泳ぎ過ぎていくってイメージがあって、好きだった)。マルケスの小説って凄く映像的だと思ってたんだけど、やはりあれ文学なんだな。この映画で一番美しいイメージは祖母の夢語りなんだ。エイが空を飛んでいくような。その瑞々しさに比べると、ガラスの変色など、実際の映像で示されるとかえってイメージがしぼんでしまう。そこだけが特異点として浮き上がってしまう、日常の中の非日常として。全体が溶け合ったものになってくれない。さらに言えば、あの仕掛けはどうなってんのか、などとあらぬことを考えてしまう。これ映像の不利な点ですね。修道院から帰ってくるところがミソか。幸福と懐かしさで、彼女は懐かしさのほうを選んだってこと。
[映画館(字幕)] 7点(2013-01-30 09:57:34)
540.  モダン・タイムス
工場でチャップリンはその歯車の一つになろうと懸命に格闘するが、ノイローゼとなった結果意図せずサボタージュ扇動者となってしまう。さらに路上で赤旗振ってると思われ、逮捕される。この時代を政治的にハッキリ描いたメジャーなアメリカ映画は、30年代半ばの段階では少ないのではないか。富の偏りがあり、昼のデパートは金持ちに開放され、夜のデパートはやっと職を得た失業者と泥棒の世界となる。この夜のデパートの解放感がいい。ローラースケートで移動する滑らかさ、それは危険と隣り合わせだが、束の間の開放を味わわせてくれる。昼の工場と夜のデパート、近代が作り上げた二つの場所が対比されていたと思う。デパートのエスカレーターは、工場で主任を運び上げてしまったベルトコンベアーを思わせもするのだけど。本作からチャップリン作品は芸を見せる映画より、時代と戦う「言いたいこと」を言う映画になる。後世の私はそれをちょっと残念だとは思うが、その時代での勇気をこそ称えるべきだろう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-26 09:39:56)
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