41. KUBO/クボ 二本の弦の秘密
ネタバレ ストップモーションアニメであることを忘れてしまうくらい、CGアニメと見分けがつかないくらい高いクオリティですね。それでいて3Dでいいじゃんと思わせない味のある画面。その技術で日本の文化を不自然でなく上手に紹介し、「日本の夏」が持つ独特の哀愁までも表現している所に感嘆します。それが自然過ぎるんで観てる最中はこれといって感じられないほど、堂に入っちゃってる。そういうところがいろいろもったいない作品なんだと思う。 お話はよくある少年の冒険譚です。特殊能力を持って、重たい運命を背負わされ、果たすべき使命を与えられます。出自は謎が多く、悪に魂を売った身内が敵として少年を阻みます。ラスボスは、ハリーポッターの「あの人」レイフファインズ。そんなありがちなアドベンチャーをやっといて、落としどころは日本の夏、つまり「お盆文化」。不死の体を求めて怪物になることより、人間のまま死んでいく。死者は子孫たちから物語として語られることによって、永遠の命を与えられる。 メキシコの死者の祭り、欧米のイースター、日本のお盆。亡くなった人を思い出してひと時を過ごすという考えは共通している。つまり、思い出す人がいる限り、人の命は永遠という考え方。人々の温かい心が全てを救うというラストも良かった。 余談。なんでクワガタ?てなるけど、ほら彼らは日本の夏のヒーローでしょ。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-15 13:07:00)(良:1票) |
42. 世界にひとつのプレイブック
ネタバレ 共に心を病んだ男女が出会い、繰り広げる会話では互いに傷つけ合いながらも、その会話が知らず知らずのうちにセラピーの役割みたいになっているという。発病スイッチがいずれも結婚相手の喪失だったので、何だかんだあっても分かり合えたのは自然の流れでしょう。都合よく自分を安全な位置に置こうとするのも人間の本質としては、有りなのだから。 まともじゃない主人公の二人を囲む周りの「まとも」なはずの人たちが、実はそれぞれがみんなクレイジー。そしてラストは全員のそれぞれの思惑を強引に一まとめにしての、ダンス大会本番。目標点ジャストゲットで大歓喜は、出来過ぎてるけど素直に感動しました。ベタでいいです。結果が大切。 ジェニファーローレンスはいろんな役が出来る素晴らしい俳優だと思う。このまま真面目に映画演技を続けて行けばメリルストリープみたいな大女優になる素質がありましょう。オッパイ女優ではない(NGワードか?)。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-07 10:49:49) |
43. アリー/スター誕生
ネタバレ シンガーソングライターの若きボスキャラアイコン、キャラの塊レディガガが、冒頭ではそのオーラを極力OFFして、普通の女の子に見えてるのが凄い。その対比に「大物スター」ブラッドリークーパー。まあ良しとしよう。「古い生き方は葬ろう」カッコいいじゃないか。この時点で二人とも絶妙に役に合っている。キャスティングは間違ってない。ガガはどんどんガガになっていく。ブラッドリーは本当にアル中のヤク中みたいだ。芸能界においての逆転は痛くて、授賞式は無様で、嫉妬し八つ当たりし、心の距離は離れたり縮まったり。それは全て夫ジャックの病気のせいなのだが、父や兄との関係なども語られ、とても気の毒な男だという事が分かる。夫婦の物語であり、一人の男の生涯の物語であり、夢を叶えたがその代償に最も大切なものを失った女の物語。ガガの力強い歌唱がぐいぐい入り込んでくる。素晴らしい歌声にホロリ。自分、音楽劇には弱いのです。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-02 14:22:13) |
44. めぐり逢えたら
ネタバレ ラブストーリーではなく、ファンタジー。子供は宇宙の力を持ってるから、前世で結ばれる運命だった二人がわかるそうです。ん?本当のママは?ま、そこは置いときます。で、その二人が出逢うと。それだけなんだけど、子供がちょっと生意気で甘えん坊な所が可愛らしく、若いトムハンクスパパとの掛け合いが楽しい。季節はクリスマスからのバレンタイン。冬のアメリカ大陸を西から東へ横断して、ロマンチックな出会いを演出します。最後、会えないのか?と思ったら、警備員のおじちゃんの粋な計らいと、置き忘れたバックで、奇跡的に会えた二人、いや三人。会えたってだけでハッピーって、なんかいい。ほっとした。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-07-30 10:53:25) |
45. デッドプール&ウルヴァリン
ネタバレ 「LOGAN」でノースダコタの地に静かに眠ったウルヴァリンを、デッドプールがあんなことして…。そのシーンがデップーらしくブラックでキレキレで面白かった。そこら辺までは最高でしたが、やっぱり時間変異取締局出ちゃった。あれ出ちゃうとちょっと乗れない自分がいました。このウルヴァリンがマルチバースの人なので、キャラがちょっとアレなんです。そこが残念。 X-MENとMCUのキャラクターについて、知ってれば知ってるほど楽しめるのは分かる。チャールズやドクターストレンジなど有名どころのキャラの知識はみんな持ってるとしても、ロキだったか。見てない人も多いと思うので、虚無の世界の事もう少し説明が必要だったのでは。アライオスとか。ロキ見てても、ちょっと??だったのは私の理解が追い付かなかっただけかもしれませんが。 デップーのセリフ「マルチバースとかもういいよ」みたいなセリフ、あれは良かった。思わず映画館の暗闇の中で小さなガッツポーズをしてしまいました。でもまあ、ウルヴァリンとデッドプールの夢の競演に、MCUへの殴り込みという企画が実現したことは凄いことだという事です。 [映画館(字幕)] 6点(2024-07-25 12:52:48) |
46. LOGAN ローガン
ネタバレ 旧三部作やファーストジェネレーションまでがこのシリーズのピークで、かっこいいX-MENを観たいだけなら、この作品はやめといたほうがいいです。しかし過酷な運命を背負わされた孤高の人、ジェームス・ハウレット通称ウルヴァリンの末路を見届けない訳にはいかないのです。見るには相当の覚悟がいるのです。 この時間軸では、またもや辛い役回りの彼は、最後のジェダイならぬ最後のミュータントみたいな存在で、不老不死と思われていた彼でもやっぱり老いて、追われています。一緒に暮らすプロフェッサーはアルツハイマーで、地球上で最も危険な脳を自分で制御できないありさま。ミュータントあるあるみたいで、リアリティを感じます。子供にそんな事さすなよという目を覆いたくなるシーンが辛いけど、映画でほとんど描かれなかった少年期を間接的に見ているようにも思えます。不死身で生き続けることに疲れいつかは自ら命を絶とうとしていたウルヴァリンは、自分のクローンによって殺される。常に孤独と戦ってきて、その最期に初めて、親子の愛情という普通の人間が抱くごく当たり前の感情を知ることになる。「ああ、こういう感じか」と。温かいけどものすごく悲しい、ウルヴァリンの生きざまそのもののような作品になってました。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-23 17:39:44) |
47. X-MEN:フューチャー&パスト
ネタバレ タイムリープ、からの二つ目の時間軸発生。マルチバースをX-MENシリーズに取り入れた記念すべき分岐点の作品。X-MENZEROにてウルヴァリンが200年ぐらい同じ外見であることが発表され、その能力を利用して精神タイムリープをさせて最悪の現在を正す、なんて巧いこと考えるもんです。その時代ではエグゼビアがたまたまクソ野郎になってたようで、未来の自分に説教されるところとか面白いし、時間は不変で何やっても変わらない、という説も、その説教のお陰で急に前向きなプロフェッサーになる。SFにご都合主義は必須です。いいんです。ピエトロ・ピーター・マキシモス、ここに出てたか。実は一番強いんじゃない? [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-22 16:09:45) |
48. デッドプール2
ネタバレ 前作でX-MEN入会を拒否ってたのに、あっさり「見習い」として加入。え? と思ったら勝手に私製チームの面接をして、ポンコツチームXフォースを結成。おバカ多めだけど、きっちり目的を達成し、すっかりファミリー。ヴァネッサと再会するシーンは感動。これ以上何を求めましょう。あとは「X-MEN ZERO」「フューチャー&パスト」「LOGAN」を復習すればいいのかな。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-19 11:19:30) |
49. デッドプール
ネタバレ X‐MENシリーズ好きなのにまだ観てなかったので、近日公開の&ウルヴァリンを観るために鑑賞。いやー、意外にツボりました。面白かった。 主人公のウェインは元々普通の人間で、ミュータントでもなければヒーローでもない。自分より悪い奴を懲らしめて金をもらってるだけの人間。そう、人間だけど、金のためとは言え彼によって救われた者は、彼の事を「ヒーロー」と言う。そんな男がミュータントに改造され、戦う。それは世のためでもなければ金のためでもない。自分の顔を取り戻すため、恋人のため。そして最終的には復讐と復縁。全然ヒーローじゃない。ミュータントは能力を生かしてチームに入ればヒーロー。入らなければ、ただの変わり者。2観なきゃ、まだ何も語れないな。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-15 11:45:50) |
50. トイ・ストーリー
ネタバレ ああ、こんなおもちゃあったなぁ、と思えるような定番おもちゃが、それぞれの個性を生かして奮闘する、というのが作り手のとっかかりでしょう。彼らは「おもちゃ」という共通点を持ってるけど、みんな違う種類で、助け合って共存しているという設定です。シドの家のおもちゃは、自分用にカスタマイズしてるから更に個性的になっちゃってる。アンディとシドは違うタイプの「子ども」だけど、毎日お気に入りが変わったり、残虐性を持っていたり、どちらも典型的な子供です。子供とおもちゃの関係は、本当にみんな違う。毎日違う遊び方をする。勝手なキャラ設定をし、毎回違ったシチュエーションでおもちゃを駆使する。バズとの遊び方ひとつ取っても、女の子はヘルメットの上にお花のついた帽子を乗せ「ミセス・ネズビット」と呼んでお茶会を開く。男の子は背中に爆発物を括り付けて、着火して飛ばそうとする。それでもおもちゃは子供たちのそばにいる。毎日遊んでもらえなくても、自分たちは持ち主のそばにいてあげることが大切なんだと自覚して「おもちゃ」をやってる。なんて健気なんだろう。もちろん作り物のお話の世界だけど、でもおもちゃって本当にそういう立場なんだ。そしてその不偏的なキャラたちが、個性的に、とても狭い世界で、壮大なスケールの大冒険を繰り広げる。その面白さに着眼したのが凄い。大成功。 [インターネット(字幕)] 10点(2024-07-11 14:48:54) |
51. プロミシング・ヤング・ウーマン
ネタバレ ポップでカラフルな宣伝用画像と、色欲男どもに復讐という紹介文から、もっとドギツく爽快な世直しモノを期待しました。そうすると前半などは物足りなく、主人公がもうちょっと可愛いといいなとか、復讐場面はソフト過ぎるなとか。多くの方がおっしゃてるとおり、見る前のイメージが完全に間違っていた作品。ラストは痛快どころか後味悪いし。自分の命を懸けてまでやることか?というのは、当事者にしかわからない事ですが、「みんなのために前へ進んで」という言葉が一番正しいと思う。ゴッドファーザーのマイケルコルレオーネが言ってた。「敵を憎むな。判断が鈍る。」結局これなんでしょうか。憎まず、冷静に、策を練って、敵を不幸のどん底に陥れてやれれば、それで済んだのに。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-07-07 15:34:15) |
52. 君の名は。(2016)
ネタバレ いわゆるボーイミーツガールものです。このボーイとガールは互いが中身と外身という状態で出会っていて、外身と外身はなかなか会うことが出来ない。どこの誰かも分からない。お前は誰だ?不思議な出会いに興味がそそられない訳がない。 スマホが頻繫に出てくるのに使うのはメモアプリだけで通話はしないとかね、ツッコミどころも挙がりますが、そもそも人と人が入れ替わるって現象が有り得ん話なんだから、細かいところは目をつむりましょう。 寝てるときに観る「夢」って、ほんとこれ自分の想像力でこんな複雑な物語が!?て思うことがある。登場人物は第一人称の「自分」が自分とは似ても似つかない人間で、何か警告めいたストーリーの時もある。そして目覚めてから数分、いや数十秒で記憶から抜け落ちてゆく。その感覚がこの作品の根底にあるとすれば、序盤はあくまで夢の中だけで交流し合う二人という設定でも十分だとも思うが、週に2~3回のペースで実際に入れ替わっている。その方がエモーショナルだけより刺激的で面白いっちゃ面白い。 で、単なるボーイミーツガールの恋物語かと思いきや、このガールは神社の巫女の血筋で、たぶん何百年も前から変えられない彗星落下災害から町民を救うべく、代々備わった能力を駆使してきたという壮大なスケールのお話だったというわけです。私が寝てる間に無意識にひねり出しているストーリーとは訳が違う(当たり前)。脱帽です。ラストもいい。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-07-01 13:46:29) |
53. 人魚の眠る家
ネタバレ 原作読後の鑑賞です。映画では母とマッドサイエンティストの狂気が悪目立ちしてる。もちろん原作の方もそのように読者をリードしている部分もあるが、考えるべきは家族が(特に子供などが突然に)脳死という状態に陥った時の事。事故で突然動けなくなった我が子が死んだか死んでないのか、それは脳死判定を行えばほぼ確定される状況なのに、その「判定テスト」は、臓器提供を表明しないと実行されないというルール。逆説でしか「死」を受け入れない日本の法律がおかしいのではないかという問題提起を、本作は前提レベルでスルーし、家族の話と狂気の部分をクローズアップして描いている。まあそれはそれでよい。そのレベルでのストーリーテリングで描こうというのならそれでもまあ良い。少しでも脳死を考える材料にはなっているから。 動かない幼子を中心に、登場人物はそれぞれの立場でものを言う。「あの子は生きている。まだ死んでなんかない」「自分の体を使って生活した方が生きる喜びを感じる」「延命措置は虚しい行為なのではないか」「技術の進歩にも超えてはならない一線がある」どれも間違ってない。個人の意見だ。 でもこんなに難しい問題を、個人が選ぶ権利として当事者に丸投げしている法律がやっぱり一番の問題。そしてこんな曖昧な法律の下、今後技術の進歩と倫理観はどう折り合いを付けていくのか。法律、政治、医学や技術開発が調和を取って、例えば政治では止められない人口減少の問題なども考えなくてはならない時代なのだろうと、原作を読んだときはそんな事まで考えてしまった。映画の方は、役者の演技はそれぞれとても良く、だからこそ単に悲しく切ない物語に留まってしまったように思う。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-28 14:04:20) |
54. マッドマックス:フュリオサ
世界観やアクションは今更語るまでもなく素晴らしいが、何せ前作まででお腹いっぱい、度肝も抜かれっ放しなので新しさはさほど感じないかな。相変わらずヴィジュアル重視で潔いほど何じゃこりゃな装置には楽しませてもらえます。ここから更にデコレーションが進化して、あの火炎放射ギターとかが生まれるってことなのかな。意味なんてない、説得力なんて必要ない、それがマッドマックス。子フュリオサの女の子がなかなか良い。存在感あって女優の風格が備わっている。あとクリスヘムズワース。おバカな大将っぷりがちょうど良い加減で、でも彼の駆るデカ6輪車は猛獣のように凄味があって怖かった。俺に相応しい死を与えてくれ、なんて最期はカッコいいこと言ったけど、結局おとぎ話のような末路を用意されて、やっぱりちょっと間抜けな感じでズッコケた。ジャックとディメンタス、共にフュリオサの記憶に残る男だったのだろう。 [映画館(字幕)] 7点(2024-06-13 17:27:18) |
55. シェフ 三ツ星フードトラック始めました
インスタの料理動画みたいだなと思っていたら、やはりSNSがサブテーマのように使われていた。今時だけど、だからこそもう何年かしたら古臭く感じちゃうのかな。ストーリーは順調過ぎて物足りなかった。悪い人が出て来ない。ダスティンホフマンだって「ストーンズのライブでサティスファクションが聴けなかったら客は満足するか?」というもっともな考えを持つオーナーだし、元妻も理解者でめちゃめちゃ綺麗。人気料理評論家にSNSで酷評されて傷ついたって言われてもねぇ。素直な子供と明るい大人、ラテンの音楽が全てかな。あとは、アイアンマンメイトがチョイ役で観られるところ。美味しいものは美味しい、良いものは良い、という単純な理論は納得だ。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-06-07 12:36:00) |
56. 罪の声
ネタバレ 原作小説を読みましたので鑑賞しました。主人公の一人曽根俊也は、自分の声が犯罪に加担した罪の声だったことを突然知ることなります。全く記憶にない出来事に、良心の呵責とか罪の意識とか、そういうのとは違う「真実を知りたい欲望」「知らなければならない責任」「知りたくないという恐怖」を覚えます。その葛藤を星野源はしっかり演じていて。同じように利用された子供が二人いることを知り、寄り添いたい気持ちなった優しい男であることもすんなり理解できます。 原作は、忘れかけていた凶悪完全犯罪のルポルタージュとして大変興味深く、また過去の犯罪に利用された子供に着眼して創作された物語としても素晴らしいものでした。事件当時、脅迫電話に使われた例の子供の身を案ずるムーブメントはあったのでしょうか。 原作に対し映画はかなりスピーディーに取材が進み、さっさともう一人の被害者の聡一郎くんが登場して、ちょっと都合良過ぎるなと思ったのも束の間、この現在の聡一郎くんが素晴らしかった。つまり映画の方は事件のことよりも子供の物語を多く語る形になっていて、これはまた原作者が一番訴えたかったことだと思われ、その点は結果的に良かったと思う。 曽根さんはどんな人生だったんですか?と聡一郎に問われた時、答えられなかった曽根。曽根さんの今はあなた自身が掴んだものです、罪の意識を抱くべきはあなたではない、という阿久津。 望ちゃんの声が聴きたいと言って泣く母に、聞かせる声は犯罪に使われたテープの声。日本を震撼させた劇場型犯罪の裏に、一生を台無しにされた家族がいた、という仮定から作られた物語は、あまりにも切ないものでした。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-03 17:05:33) |
57. (500)日のサマー
ネタバレ ジョセフゴードンレビット、いろんな役が出来る役者だなと思っていましたが、このように小粒な作品で(悪口ではない)、ミッションもアクションもなく、何だったらフィジカルはお腹プヨプヨくらいがちょうど良いような役、やってたんですねえ。いやー、幅がお広い。自らの初監督作品「ドン・ジョン」も観てみたい。 運命の赤い糸を信じてやまないロマンチックな男と、その逆思想の女がイチャイチャした末、結果別れるというお話。かなりウッディアレンです。小粒感もちょうど似てる(悪口ではない)。心身ともに互いの距離が縮まっても、「友達」である事にこだわる女サマーと、その関係に焦りを感じつつ強がる男トム。しかしそんな状態はいつまでも続くものではなく、いつしかサマーを嫌いになり、怒り、別れる。好きだからこそ、嫌いになる。これはかなりヤバい感情だとも思うが。再会したとき、またしても期待してしまったトムが見たもの。あまりに残酷です。世界の色が喪失しちゃうくらい。そしてやさぐれる。小気味よいほどにしっかりやさぐれるトムには爽快感すら覚えます。これは面白い。 トムは愛なんて信じなくなり、世の中全て嘘っぱちだと自暴自棄になる。サマーはトムと別れた後、運命の出会いと思える男と結婚する。俗に言う「刺されるぞ」な女だ。考えの真逆な二人が接しているうちに、お互いの考えに感化され、結局また真逆になっちゃったなんて、やっぱり二人は結ばれない運命だったんだな。 「運命」って言葉、迷信じみてて好きじゃない。物事の全ては偶然の連鎖であり、偶然の連続の末に行きつく事象は結局必然なんだと思う。トムの次の出会いも運命などという突然上から降って来たみたいなものではなく、これまでの行動や感情の蓄積から自ら手繰り寄せた縁なのである。苦い体験を経て、トムはただのロマンティストじゃない大人の男になれたのかな。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-05-31 11:35:10) |
58. フットルース
ネタバレ みんな大好き世界の中心ケビンベーコンの学園ものなんて、それだけでありがたい作品。長い俳優人生でも学生役なんてほんの一瞬しかできないんだから。で、そんな一瞬のケビンがまぁキュートな事。実年齢は25歳くらいだそうだけど。都会からの転校生は、田舎町では常に監視されてる気分。また田舎の同級生も厳しい街の規則に抑圧され、若者たちのフラストレーションは高まるばかり。町の道徳ムーア牧師がヒール役と思いきや、意外にもその家族の物語でした。ダンスとは若さ、自由の象徴であり、自己表現のツールである。それを「悪」として禁ずる牧師ですが、その背景には悲しい過去が作用していて、めちゃめちゃ私情を挟んだ規則だったのです。娘や若者たちとぶつかるにつれ、自分の敷く規則に矛盾を感じ始めます。大人は子供を守るために「あれはやっちゃダメ、これは見ちゃダメ」と禁止事を増やすけど、「あれ」にも「これ」にも悪魔は宿っていない。悪魔は人の心そのものに宿るんだ。息子を亡くし娘に嫌われ、正義と信念の下に凝り固まった牧師に、それを思い出させてくれた若者の真っ直ぐな思いに感動するのです。卒業ダンスパーティーが町境の隣町で開催されるという折衷案がまた良かった。 もちろんこの作品は、ダンスと音楽を前面に出してヒットした80年代を代表する子供向けムーヴィーという印象が強いけど、当時ローティーンの私が洋楽&洋画にかぶれたきっかけの一つではあったけど、いくつになっても、いつ見ても楽しいものは楽しい。にしても、ダンス禁止地区なのに、みんなダンスが達者だなあ。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-24 13:49:05) |
59. ラ・ラ・ランド
ネタバレ ミュージカルがちの人と苦手の人、両方が厳しい見方をする作品。確かにミュージカル映画とは言ってますが、ジーンケリーと比べちゃかわいそう。あちらは筋金入りですから。こちらのミュージカルパートはあくまでも、二人にとって「夢を追う」姿の象徴的存在で、脳内妄想の範ちゅうを超えてないレベルです。現実はもっと厳しいもので、ぶつかり合い、すれ違い、傷つけ合い、ハッピーなミュージカルのようにはいかない。カラフルな色使いのロマンチックなラブストーリーは非現実。夢を見ることは非現実的だけど、夢のためにやりたくない仕事をして、妥協して、挫折するのは現実。この矛盾の狭間に生きるのが夢追い人。ミュージカルという不条理にはぴったりな題材だと思う。 二人はそれぞれ夢を叶えることが出来たけど、何て切ないラストでしょう。あの走馬灯はどちらの脳内を走ったものなんだろう。あるいは二人の脳裏に同時に現れたものだとしても、二人は別々の道に戻っていくのです。あー、切ない。 良くも悪くもこちらのレビューのようにみんなが自分の人生観や恋愛観、映画愛、ミュージカル愛を自由に語り合ってもまだまだ語ることがありそうな作品であることは確か。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-13 15:01:27)(良:1票) |
60. 俺たちに明日はない
ネタバレ まず二人が若くてかわいい。ウォーレンベイティには今まであまり縁が無かったのだが、シャーリーマクレーンの弟だそうで、どことなく似ている。どおりで可愛いわけだ。ヴィジュアルはさて置き、彼らの無責任、無鉄砲、無計画っぷりは、それが若さゆえだとしても全く共感できない。盗んだ高級車に足をかけ、葉巻をくわえて記念写真を撮るその行動こそ、ファッション感覚で非行に走り、犯罪を犯罪とも思っていないという証だ。行動を共にするクライドの兄夫婦もどうかしてるし、特にギャーギャーピーピーうるさい兄嫁は、強盗の分け前を要求してくる始末。今のところ気に入ったキャラは出て来ない。途中拉致られ同行したユージーン(ジーンワイルダー)たちとのシーンだけが楽しかった。 強盗を繰り返し殺人まで犯し逃亡する。こんな生活に不安を抱き始め、ママに会いたがるボニーはちょっとだけまともに思えたが、連れて来られたママは娘を慈しむ事もなく「若い人たちだけやってくれ、巻き込むな」的な事を言う。ママに見捨てられ泣くボニーだったが、泣きたいのはママの方だろう。 悲劇的シーンでアイロニックに響くバンジョーの音色は、彼らに共感しない視聴者の嘲りか。だがそれでもあのラストは、やはり切ない。共感は出来ないが、彼らがここまでの犯罪を繰り返すことになってしまったのは警察の落ち度でもあり、世界恐慌という時代背景もあり、こんな珍妙な言葉は使いたくないが、「世の中の犠牲者」だったんではないかと考えると、少しの同情の余地はある。いや無いか。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-05-09 14:35:50) |