Menu
 > レビュワー
 > fero さんの口コミ一覧。3ページ目
feroさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 204
性別 男性
年齢 46歳
自己紹介 専門は邦画とヨーロッパ映画(特にフランス)。気に入った監督や俳優がいればひたすら観つづけるので、どうしても同じジャンル・国に集中してしまうようです。(だからあまりハリウッドを観ない。)

最近引っ越してしまい、なかなか映画を気軽に観ることができなくなりました。撮りためたビデオとDVDばかりになりますが、観たものは書き込んでいこうと思っています。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011
投稿日付順1234567891011
変更日付順1234567891011
>> カレンダー表示
>> 通常表示
41.  ボーイ・ミーツ・ガール
正直、しんどかった。まだ汚れた血・ポンヌフの恋人を観ていないので理解できていない。しかし、この映画を「難解」と切り捨てるつもりはない。ドニ・ラヴァンの演技の凄まじさと、ミレーユ・ペリエの透明な美しさはわかったが、それ以外は3部作を全て観てから判断したいと思う。
7点(2004-03-07 18:58:05)
42.  日曜日の恋人たち
これはセックスを通して愛、そして生と死を描いた作品です。エロディが熱演しており、ジャン=マルク・バールも非常に巧みな演技をしていて、見応えのある作品になっています。しかし、この映画を観ると「死」が少々乱雑に扱われている事が気になります。屍姦や検死所でのセックスが死への冒涜だと感じる部分もありますが、ここで言いたいのはそういうことじゃなくて、僕が言いたいのはこの映画は「死」に対する定義付けが甘いんじゃないかということです。この作品は「死」というデリケートな要素を間近に置く事によって、生や愛を描こうとしていますが、その「死」が曖昧だとどうしてもあやふやな感じがします。「死」については人間は長い間、宗教的にも科学的にも考えつづけてきたわけで、いくつもの「死」観がありますが、それを踏まえて映画を作る上での思想が欲しかったと思います。エンディングでは突然「生きるもの」と「死に行くもの」を対比させてしまいますが、それまで死を即物的に扱っていたのが、急に観念的に扱われているので面食らいます。 それに、この映画では「死」と「生」を対比させているように見えますが、本来「死」と「生」はセットにはなっても反対語ではないわけで、時には類義語にさえなるという不思議な関係なので、なんだか浅いなぁといった感じがします。それとは関係ないのですが、この映画を観ていて、エロディはまだまだロマーヌ・ボーランジェには敵わないと思いました。作品としても「野性の夜に」の方が数段上だと思います。さらに話は飛ぶけど、もう解散してしまったサニーデイサービスというバンドの1枚目のアルバムに「日曜日の恋人たち」という曲があって、それはまったく関係ないんだけど、観ていて頭の中で勝手にBGMになって困った。  
6点(2004-03-02 23:47:19)
43.  海と毒薬
前半、結核患者の手術に際して白黒の画の中で流れる血が、白黒なのに異様にリアルで赤く見えそうなほどで、震えながら観たことが鮮明に記憶に残っています。その時はまだ、僕は原作を読んでいなくて、「白い巨塔」のような医師の世界の矛盾だとか、戦争の悲惨さを伝える映画だと思っていました。しかし今は、もっと深い宗教性と、「白い人・黄色い人」に近い日本人ゆえの悲しみに似たものを感じています。特に、ラストでの勝呂と戸田の会話は、どちらも、この社会の真理の一端を突いており、「殺人」を犯した者が得たことが何だったのか、それを語っているように感じました。また、原作では愚鈍で純朴な印象の強い勝呂医師を、奥田瑛二という適役だとはとうてい思えなかった俳優さんが見事に演技していることに意外な驚きを感じました。それに対してクールな戸田に渡辺健を持ってきていることには二重の驚きでしたが、その役を上手く使いこなせていたと思います。ヒルダ夫人と上田看護婦のエピソードは非常に大きなインパクトを与えています。大連で死産になった子供が、ちょうどヒルダ夫人の娘と同じくらい。「白人の肌って切りにくいのかしら?」と口走った彼女の、冷たい心のうちが透けて見えます。 原作を読んでいる方にですが、実は遠藤周作の「海と毒薬」には続編があります。「悲しみの歌」というタイトルで、「海と毒薬」とは全く違った毛色の作品ですが、勝呂医師のその後をこの作品で読む事が出来ます。
8点(2004-02-29 07:54:04)
44.  チンピラ(1996)
僕が青山作品が大好きだからそう思うのかもしれませんが、「実はすごくいい映画なんじゃないですか?」と真剣に思います。ストーリーは、84年の映画のリメイクなんですから、そのまんま古臭いチンピラ映画という感じです。しかし、感動という言葉が適切かどうかはわかりませんが、なんとも言えない不思議な心の高まりがありました。「うぉー!」と言いたい気分なんですが、これは涙を流すような性質の心の高ぶりじゃないです。観ていない人に薦めたいのが、とにかく大沢たかおとダンカンの演技が最高です。大沢たかおの、チンピラな社会に揉まれてガサガサに擦り切れていく感覚(下手な言い回しですが、)は、恋人役の片岡礼子との関係もあってとてもいい味をだしています。この時の片岡礼子も非常にいいです。しかし、それにも増してダンカンの「望んでもいない、意識してもないのに何故だか転落してしまう男」という存在は、「そうとしか生きられない運命」をすごく的確に示していて、「そういう人生」ってなんというか「哀れだなぁ」と同情とか憐憫だとか、とても切ない気分になりました。(しかし、ここで青山真治は涙を流すような描写をしたわけではない。)ダンカンは本当に、本当にいい俳優さんだと思います。一番好きなシーンはセスナを発見した瞬間です。この瞬間の顔がいいです。それに、その後の会話もいい。他にも「みっちゃん~」の歌がまた切ないんですよ、胸がキリキリ痛みます。話がこんなに単純なのに、こんなにガツンと心にくるとは思いませんでした。もう一度書きますが、この映画は涙を流すような描写は一切ありません、しかし切ない、しみじみと感じさせる映画です。
9点(2004-02-25 23:41:11)
45.  気狂いピエロ
「ゴダールは映画を壊した」とはよく言われることである。僕はほとんど彼の映画を観ていないが、既成概念を打ち破ったヌーヴェル・ヴァーグの中心人物であることくらいは知っている。しかし、残念なことに78年生まれの僕は、彼の打ち破る前の映画概念を知らないのである。だから、この作品に新しさを感じないし、革新的だとも思わない。僕は映画に哲学や思想を持ち込む必要性を(今のところ)持ち合わせていないようである。だから、この「気狂いピエロ」の評価も保留にしておこう。これからもっともっと映画を観てみたら、この作品の新しさがわかるようになるのか?楽しみでもあり、この著名な作品の面白さをついにわからなかったらということが恐ろしくもある。
6点(2004-02-24 21:34:03)
46.  アメリ
緑と赤をオーバーにしている画面がとても新鮮で、見ていて飽きなかった。現実にはありえないくらい素敵な部屋、凝りに凝った調度品、一つ一つの物が、出てくるハトまで素敵に見える。どのシーンも、乙女心をくすぐる、可愛さと皮肉に満ちていて、とても、良い。僕は男だけれど、それを超えていいなと思わせる大道具小道具さんの働きと、カメラワーク・演出がありました。アメリの行動は、その動機や、突発的な動きに予測がつかないことが多い。それを、「理解できない」と拒否してしまう人も多い。しかし、だいたいにおいて自分以外の人間をそう理解・予測できないことは実生活でも実証済みである。映画の中の人だけ自分にも理解できないといけないと考えるのは傲慢でもある。さらに、行動の動機がわかるようなことでは、アメリから発散されるこの最高の”エスプリ”(自分でも何だかわからずに使ってしまうが、)は到底得られないと思う。普通に考えても、日本からだいぶ離れたフランスの、文化も気候も食べ物も違う国で、しかも若い女で、さらにかなりエキセントリックに育った変人の考え方が理解できないのは当然だし、理解する必要もないと思われる。アメリの思考回路が理解できなくても、映画を観る洞察力不足だと非難されることはない。「こんな面白い考え方する人間がいる!」という気分で映画を観りゃいいのだ。それと、ドミニク・ピノン(気持悪いハンドテープのストーカーね。)に注目してください。もうこの存在感、最高です。なかなかいないとは思うけど、彼に着目した天邪鬼さんは是非、「溝の中の月」を観てもらいたい。(「ディーバ」にも出てるけどカッコよすぎ。)彼の怪優っぷりを堪能できます。話は変わるけど、この映画はサントラがとても素晴らしい。ヤン・ティエルセン。映画を気に入った人は、是非サントラも聴いて欲しいと思う。僕のチェンジャーには普通にヘビーローテとして入ってます。
9点(2004-02-23 23:17:12)
47.  溝の中の月
やはり、ベネックスの画は美しいですね。ブルーの美しさは格別です。僕の好みに合っているだけかもしれませんが、そのブルーに酔いしれました。そして、ナターシャキンスキー、ジェラール・ドパルデューと、素晴らしい役者が揃っていますね。この頃は痩せていたんだなーと感心してしまうドパルデューは野性的でいいですし、(特に氷を噛み切るシーン最高)キンスキーの魅力は赤い口紅と赤い車で3割増しの美しさです。それにフランク(弟)とベラ(彼女)の二人の演技もいいですね。貧しさや醜さ、そしてその悲しみを上手く演じています。ドミニク・ピノンはディーバ、アメリあたりに出ていますが、実は怪優ぶりはこの作品が一番なんじゃないかとも思います。最後の看板の文句と、ドパルデューの表情が胸を打ちました。
8点(2004-02-23 23:10:44)
48.  青い夢の女
べネックス作品に期待できる映像の美しさは、及第点と言えると思います。青いフィルターをかけたような黄色と青色の飽和した色彩は観ていてうっとりとします。オルガの表情、服、仕草も蠱惑的で美しいと思います。しかし、やはりストーリーは物足りないですね。この監督は、こんなコメディを撮る人だったかなぁ?と、ちょっと疑問符がつきます。オルガの美しさはもっと多くのシーンで活用して欲しかったと思いますし、ジャンの演じるミシェルも、もう少しカッコよく悩んで欲しかったです。ブルーな映像を楽しむためだけの作品になっちゃいましたね。
6点(2004-02-23 23:09:03)
49.  ロザリンとライオン 《ネタバレ》 
ベネックスファンでこの映画を観たのですが、最初レンタルビデオのパッケージを観て期待していなかった反動か、とても良い映画だと思いました。私の基準から言えば、ヒロインのロザリンはちょっとパッとしないかな?対して相手役のティエリは「ディーバ」のジュールのような細くて頼りがいは無さそうですが、なかなか男前に見えます。ストーリーはと言えば、古いフランス映画によくある若き逃避行モノですが、それが「ライオン」というキーワードで進んでいく所が面白いと思いました。若き二人が衝突するシーンもありますが、愛の葛藤は前面に押し出さず、最後の大舞台への前フリ程度。脇役たちが良い具合にエピソードを持っていて、映画を盛り上げて行きます。最後のシーンは、観ていてこちらが緊張してしまうほど、いい芸を見せてくれます。それにしても、ライオンの前でよくあれだけの演技ができるなと感嘆しました。ヒロインも最後は美しく見えます。満足しました。
7点(2004-02-23 23:08:15)
50.  IP5/愛を探す旅人たち 《ネタバレ》 
べネックス映画を観ていて感じることは、どんな時も、どんなシーンでも美しい映像を提供してくれる監督だな、ということだ。人物描写でも、自然描写でも、アップでも、引いても、それは変わらない。基調となる青色が観ている僕に心地よさを与え、黄色が刺激する。湖畔のシーンなど、とても幻想的なシーンを見せてくれる。ストーリーは、少々トリッキーで、疑問の残る部分もある。たとえば、何故あの老人は湖の上を歩けたのか?ファンタジックなシーンの演出としては素晴らしいが、「何者?」と思った。湖に現れるはずの娘達も、結局のところ普通のオバサンになってしまっているわけで、それを湖に入ることで捜し求める意味がよくわからない。疑問は、最後まで解決されないまま放置されてしまい、次の話へと進んでいくわけだが、結局のところどうでもよくなってしまう。クライマックスに近づくにつれて、話が現実的に進み、そして感動へつながるわけだが、その進み方もちょっと無理矢理な感がある。それでも、9点を付けるしかないと感じてしまうのは、映像と、ジョッキー役の少年の演技と、そして何よりイヴ・モンタン、とにかくイヴ・モンタンの最後の演技だろう。監督とイヴモンタンに敬意と賛辞をこめて、9点。
9点(2004-02-23 23:07:26)
51.  ディーバ 《ネタバレ》 
主人公のジュールが最初の頼りない細い男性からやがて、歌姫シンシアを受け止めるだけの度量を持つ青年に成長していくまでのストーリー(と僕は観た。)歌姫の歌うオペラは大迫力で、正直に言ってこれは絶対に映画館で観なきゃ損だ!と思った。公開時3歳の僕には無理なんですけど。汗 黒人女性と白人男性の恋愛ということに対して、何か悶着があるかと思っていたが、そんなレベルじゃないんですね。この映画にはベトナム出身の少女(アルバ)も登場しているんだけど、人種問題をサラリと流すところがフランスの粋なのかと思う。その少女や、何しているか解んないけど悟ってるオヤジ(リシャール・ボーランジェ)、それに刑事、殺し屋までがスタイリッシュでそれにディーバの歌までついてるんだから、観ていてウットリすること間違いナシ。ベネックスは初回監督作品でこんな映像を撮ってしまうのだから、その才能に圧巻。
9点(2004-02-23 23:06:37)
52.  ベティ・ブルー/インテグラル<完全版> 《ネタバレ》 
これはゾルグとベティの愛の物語である。ゾルグの受難でもベティの破滅でもない。ゾルグはベティを受け止めたのではなく、ベティは自己崩壊を起こしたわけでもない。そんな事じゃない!ベティはゾルグを愛する事で生きた。そして、それと同様にゾルグもベティを愛する事で生きた。ベティと出会うまでのゾルグはゾルグではなかった。アドルフの回想録を書き、人生に横を向いた傍観者でしかなかった。そんな彼が、ベティを愛すことで人生に真正面からぶつかってゆく。それまで道なりだった人生は一変する。人々はみな善良で、滑稽で、愚かである。日々は退屈で、虚無に満ちている。そんな中で、ベティとの愛だけが輝いている。しかし、その至高の愛はその純粋さ故に食い荒らされ、朽ちてゆく。ベティは心を病む。3人の警官、雇い主、白皮症のボブと妻、さらにリサとエディでさえも、彼らの愛を食い荒らす愚かな人々に過ぎない。そして、ゾルグは気付く、自らもその愚かな一人に加わっていたことを。ベティの純粋さと、自らの愚かさの狭間でゾルグは悩む。ベティはあまりに純粋で、張り詰めて、二人の愛にはどんな夾雑物も許されない。この愛は内側から崩れたのではない。全ての愚かな物が二人の愛を朽ちさせたのだ。ゾルグは自らの手で、愚かな人々に汚されたベティの息を止める。しかし、決して後悔はしない。何故なら、それをベティが望んでいることを知っているから。"信じる"とは別の次元で、彼は二人の愛が永遠であり続ける事を"知っている"から。だから、彼は自らの命を絶ったりなんかしない。彼は虚無から立ち上がり、ベティに捧げる小説を書き始めることができる。ベネックス監督は愛の対極に「愚かさ」を置いた。そして、ベティは、あまりに純粋すぎた、それだけである。
10点(2004-02-23 22:49:30)(良:1票)
53.  ベティ・ブルー/愛と激情の日々 《ネタバレ》 
「インテグラル」の方を観て、はっきりと自分の間違いに気付いた。前にここに書いていたレビューの的外れさに自分で情けなくなった。僕が確信していることは、この映画が「ゾルグとベティの愛」の対立項として「人々の善良なる愚かさ」を挙げていることだ。この物語の登場人物には悪人は一人もいない。ペンキ塗りを命じた雇い主でさえも、悪人には描かれていない。では、何故にベティは死ななければならなかったのか?それは、ベティとその愛情があまりに純粋であったからである。ベネックス監督は何度も何度も、人々の愚かさ・日常に潜む虚無を取り上げている。(妙なネクタイのエディの葬儀、銃で威嚇する若い警官、強盗での警備員、病院から帰ったゾルグが見る白皮症の男ボブと妻の喧嘩 etc.) 薬売りのサーファーに言ったゾルグの言葉「どこもかしこも血の海」は示唆的である。そして、銀行強盗のあとベティの「何のため?バカね。」でゾルグも自らもその愚かな人々の一人であったことに気付く。小説の出版が決まり、ベティの回復を確信したその時には、既にベティは取り返しのつかない状態になっていた。それも、善良でありながら愚かな人々のせいである。ゾルグはベティを愚かな世界から解放し、彼も二人の永遠の愛の世界に戻る。  と、筋道だててみたのだが、ここまで書いて「本当か?」と書いたことに自分でも自信がなくなってきた。しかし、ベティの価値観を軸に話を読み取っていくと、頑なにゾルグとの愛(またはゾルグの尊厳)を守ろうとしたベティの行動と、それに対する「愚かな人々」が鮮明になってくると思うのだがいかがだろうか?この映画の示す情報量からすれば、単に「破滅的な愛の映画」としていいものかと疑問をもったりする。
8点(2004-02-23 22:47:34)
54.  野性の夜に 《ネタバレ》 
ここで3人目の満点をつけることに、躊躇はありません。この映画は素晴らしい、多くの人に観て頂きたい名作だと確信しています。この映画には、AIDS、同性愛、右翼といった幾つかの問題を孕んでいますが、最終的に観るものに突き付けているのは「いかに生くるか」に尽きます。このテーマを真正面からぶつけているこの作品に、僕は最高の点数をつけざるを得ない。フランス映画で、僕はいくつかの同性愛映画を観てきました。そこではホモ(同性間)とヘテロ(異性間)の違いや関係を通して、セックスや恋愛、差別や社会との隔絶を描いているのですが、この作品ではさらに一歩踏み込んだ描き方をしています。鬱屈した毎日につきまとう死への恐怖、そして逃れられない不幸。醜いホモのうたう歌が、「そのようにしか生きられない不幸」宿命ともいうべき、人間の根源に付き纏う悲しみを浮かび上がらせます。また、17歳という少女ローラが、真実の愛を求めて苦悩し、またAIDSという問題を抱えて壊れていく過程は、ベネックス監督の「ベティ・ブルー」を連想させます。自らの全てを投げ出しても得られない愛。独占、恨み、躊躇、苦しみ、その先で自傷に行き着くまでは同じような展開なのですが、さらに17歳という年齢からくる弱さによる、相手まで呪わざる得ない心の脆弱さを加えている事に、シリル・コラール独自の変化を感じます。そしてこの映画のキーパーソンであるサミーの鬱積した感情。若さという一言では片付けられない苦悩や情欲、愛。ジャンの持つ生への固執、才能への不安、怠惰、虚無、家族の愛、そして死への恐怖。最後のエンディングで、それらの全てが昇華し、一つの答えとしてジャンの口から語られた事で、この物語は完成しました。
10点(2004-02-23 22:08:14)
55.  人間の條件 第一部 純愛篇
僕は昔から、映画よりも読書に熱中していた学生で、この作品も原作を高校時代に読みました。それまで戦争といえば遠藤周作の「海と毒薬」程度のもので、本格的な戦争小説を読んだのはこれが初めてです。また、父が初めて僕に薦めた小説である事も印象に残っています。父はこの小説の内容をきちんと把握できる年齢になったと判断したんでしょう。渡されたこの本の奥付けには、僕が生まれる前の1974年62刷という刻印があります。僕は、この作品を震えながら読みました。日本軍の残虐さ、社会の矛盾と汚職、それと闘う梶の熱い正義。今思えば僕はこの小説を本当に理解できていたとは言えなかったでしょう。日本人としての自分に軽く鬱になったことを覚えています。それから僕は大学に入り、この作品のことも忘れていました。書架の片隅に並べてはいたものの、手にとるたびにその世界が重く蘇り、読み返すことはありませんでした。そんなとき、この映画に新規登録要望が出されていることを知りました。いつも行くレンタルビデオ屋には5本並べて置いてあります。キネマ旬報でかなりの評価を受けていることも知っています。そこで、初めて僕はこの作品に再度向かい合うことになったのです。キャストは全て日本人。仲代達矢と新珠三千代は、今からすれば古臭い演技ですが、かなりの熱演をみせています。国内での撮影だと思われますが、荒涼とした満州のステップ、砂嵐、そして坑道にいたるまで綿密にロケーションが組まれていることがわかります。小説の世界をイメージ化する力は存分にあることがわかりました。これから凄惨な世界が幕を上げる、そう思うと次の巻に移るのが恐ろしい、そんな気になりました。
8点(2004-02-21 03:11:11)
56.  ラブetc. 《ネタバレ》 
「僕は甘いものを食べないと・・・」というクスッと笑ってしまうようなピエールのベンチでの会話。「オイオイどうするの?」と楽しくもドキドキしてしまう告白されたマリー、花束でオロオロ。同情しながらもなんだか突き放して眺めてしまい、さらにやっぱり同情してしまう後半のブノワ。観ていて、純粋な観客として楽しめた映画です。この映画の中では、観ている側が登場人物に感情移入をするための”とって”がほとんどありません。最初、ピエールの性格は不明で彼の行動は不審ですらあります。突然のマリーのブノワへの寛容な愛もよくわかりません。後半ではブノワが何故、あの段階で二人の関係への感心が爆発したのかもわかりません。しかし、映画を観ただけで、登場人物が何を考えて、どう行動したかを全て把握する事が出来るわけもありません。現実の世界で、子供や配偶者でさえも理解しがたい時はいくらでもあるはずです。僕には、異国の特殊な関係に陥った恋愛の当事者の心を共有できるとは思えません。だから、僕は観客に徹します。これはそんな、観客の僕が、少し離れた場所からクスクス笑いながら、ちょっとドキドキしながら、本当に楽しんで観ることが出来る映画なのです。たまに理解しやすい映画を観ると、登場人物が思わせぶりな心情の吐露をすることがあります。「そんなこと現実にないよな。」と苦笑してしまいますが、よくある手法です。しかし、この映画にはそんな方法で登場人物の心情を共有して欲しいとは思っていないようです。3人は、3人とも愛すべき人間として描かれています。特に、利己的さと知的さを併せ持つピエール、シャルル・ベルランのパーソナリティーは素敵です。暗さと我儘とを輝かしく見せたシャルロットの演技も素晴らしい。気弱さと大胆さをあわせたイヴァンも良かったと思います。この3人が知的に、利己的に、横暴に、矛盾を持って会話する妙は、単純に観えて非常に緻密で、この映画に奥行きを持たせています。3人の素敵なキャスト。2人の男と1人の女というフランス恋愛の王道を歩みながらも素晴らしいコンセプトを光らせたストーリー。最後のエンディングの秀逸さを加味すれば、この映画は1級だと僕は判断します。
9点(2004-02-20 23:13:52)
57.  シャルロット・ゲンズブール 愛されすぎて 《ネタバレ》 
「え!?アントワーヌを選ぶの?」と結末には驚かされました。姻戚関係という基本的なキャストを考えてみても、これは絶対ポールを選ぶとばっかり思っていたから、かなり裏をかかれた気分です。どう考えてもポールの方がいい男じゃないですか。顔も、スタイルも、性格も、精神年齢も、社会的地位も、というか、何もかも。(ここまで書くと言い過ぎか。)これはイヴァン・アタルを比較でカッコよく見せているのかと言いたいくらいにです。しかし、それでもアントワーヌを選んでしまうのは、これが愛ってことなんでしょうかね?母性本能をくすぐる男はモテるのかな。関係ないけど、フランス人はせっかくの高性能なドイツ車に乗らず、頑固にシトロエン、ルノー、プジョーの国産車に乗ってるって話を思い出しました。シャルロットは話す声のかすれ具合がいいですね。愛を語る時はそのハスキーに甘さが加味されてもっといい。とにかくいい声でした。そして、アントワーヌとの戯れが良かった。ベッドシーンの後にアントワーヌがマリーを抱えて遊ぶ所なんて、なんかほのぼのです。パワーボムか?みたいなシーンもあったし。けど、結局つれなくふられてしまったポールがただのシツコイ男になっちゃってて可哀相なので、ちょっと不満だったのでした。 ラブetc.でも彼はふられる役でしたね。うーん、恋人とラブな結末ではダメなんでしょかね?
6点(2004-02-20 22:40:31)
58.  カンフー・マスター! 《ネタバレ》 
「ジェーン・バーキンにしかできない映画」という言葉は、一面では正しいし、一面では間違っているようにも思える。この映画を観る時、多くの人がその中にセルジュ・ゲンズブールの影響を読み取るだろう。フレンチロリータの巨匠セルジュ。ジェーン自身も彼に見出されたロリータの一人であり、この映画の着想はセルジュのロリータ(中年男性の少女への愛)が反転されたものであることは容易に想像できる。しかし、そうでありながらもこの作品はセルジュのそれとまったく違うベクトルを持っている。それは、セルジュがロリータを絶対的な女神、自分を受け入れてくれる存在として描いたのに対し、ジェーンが母親としての視線を捨てず、庇護すべき対象として描いた事だ。それは、そのまま相手から自分へ注がれる愛に反映される。ロリータはセルジュを愛するが、そこに理由はない。あえて言えばセルジュの理想を実現させたに過ぎない。少年はジェーンを愛する、しかしそこには打算と性への憧れが隠れている。(エンディングでドライに語る少年の言葉がそれだ。)この映画は徹底したリアリシズムで進行しており(キャストも含めて)、セルジュへのアンチテーゼともとれる結末で終わる。セルジュとは違ったロリータ観を立ち上げたことは理解できるが、それによってセルジュの達した頂へ到達していないことも確かなのだ。これが、ジェーンでなければならず、そうでもないとも言える理由である。ここまで読んで、ドワイヨンの影響を考察せずに何を言う!と思われた方も多いだろう。まったくその通りである。浅学な自分はそこまで到達できていない。この時代のフランス映画はやけに奥が深いなと思う次第である。
8点(2004-02-20 22:20:52)(良:1票)
59.  いちばん美しい年齢(とし)
とりあえずいちばん最初に書いておくことは、デルフィーヌ役のエロディの”いちばん美しい年令”はこの映画の撮影時じゃないということです。「スタン・ザ・フラッシャー」であれだけ輝いていたエロディを思い起こすと、悲しい気分になってしまいます。「あの時、なぜ彼女を調教できなかったのかい?セルジュよ、君は致命的なミスをしてしまったようだ!」と心の中で考えました。(こんなこと口に出したら変態だし。)そりゃヴァネッサにも負けちゃうよ。それにこの映画は、残念ながらフレンチ・ロリータというジャンルには適さないようです。どちらかと言えばサスペンスがかった青春映画と言うべきでしょう。ここもちょっと不満な原因になっています。と、ここまでは批判ばかりでしたが、きちんと評価してやると、そう悪い映画とも思えません。デルフィーヌには不満が残りますが、相手役のアクセルがなかなかいい演技をしています。彼のキャラクターがシニカルで、若くて、カッコいいのでそれで緩衝されている感じです。(関係ないが、カウボーイビバップが実写化されるのならスパイク役に彼を推薦したい。)ストーリーとしての面白さもありましたし、そこに方向性もはっきりしていて、良く出来た青春映画だと思います。もう少し、画としての美しさにこだわりが欲しかったところですが、全体として若い映画と言えるでしょう。しかし、この映画から感じる「もう一歩」は決定的に遠いのかもしれませんね。
6点(2004-02-15 21:25:09)
60.  天空の城ラピュタ
ラピュタの世界には、スルリと冷たさが潜り込んでいる。エンディングのドーラたちとの再会は幸福な結末でさえあるが、「ソドムとゴモラを滅ぼした天の火」は地上に壊滅的な打撃を与えているのである。陸上への一撃であれば、半径数キロが焼け野原。海上へのものなら周辺の海域には致命的な津波が起きているはずである。想像するだけで凄惨な様子だ。そんなことを考えていたら、ムスカの言葉が蘇った。「君はラピュタを宝島か何かのように考えているのかね。」一筋縄ではいかない話だ。
6点(2004-02-15 20:25:45)
000.00%
100.00%
231.47%
352.45%
4167.84%
53014.71%
65325.98%
74019.61%
83115.20%
92311.27%
1031.47%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS