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サムサッカー・サムさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 211
性別 男性
年齢 34歳
自己紹介 日本は公開日が世界的に遅い傾向があるので、最近の大作系は海外で鑑賞しています。
福岡在住ですが、終業後に出国して海外(主に韓国)で映画を観て、翌日の朝イチで帰国して出社したりしています。ちょっとキツイけど。

Filmarksというアプリでも感想を投稿していますので、内容が被ることがあるかもしれません。ご了承ください。

これからも素晴らしい映画に沢山出会えたらいいなと思います。よろしくお願いします。

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41.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
アイアンマンがキャップと殴り合い、スーパーマンはバットマンと競い合ってるんですから…そりゃハリウッドゴジラにもそれ相応の相手が必要でしょう。  今後、ハリウッドではスター怪獣同士がぶつかり合う大作の制作が予定されている。そこで相見えるのがゴジラと、本作に登場するコングというワケだ。(今作にもムートーなどのいくつかのキーワードが登場する) そのため今回、PJ監督の「キングコング」以来の復活を果たしたキングコングは、過去最大級の規格外モンスターとして描かれている。立ち姿も以前のゴリラ然としたものから、シュッとした感じに変わって、時には武器をも使う器用さを見せる。そしてデカい、とにかくデカい。さらに相変わらず女性に対してはジェントル。  ストーリーは至極単純ながら、怪獣が出てくるまでが早く、とても潔い造り。あれよあれよという間にメイン舞台のスカルアイランド入りだ。「怪獣だらけの島からの脱出」という明快なコンセプトを楽しもうとする観客にとって、お涙頂戴ドラマの描写がどれほど野暮なものかをよく分かっている。こういった振り切り具合は素晴らしい。  また人間側もサミュエル・L・ジャクソンがやけに頑張っているため、キャラ立ち・濃さは十分。最近出演作は多いものの、黒幕とか上司役とかで体を動かす機会の少なかったサミュエル先輩が、楽しそうに体を張ったイカれ演技をしているのが良い。 WW2から戦いつづけているという兵士も、怪しげで如何わしい独特の雰囲気をこの作品に加味している。 けっこうな数の人間が出演するが、終わってみれば殆どキャラが立っていた。やはり見せ方や死に方(死なせ方)がうまく機能していたということだろう。   70年代の世相や雰囲気もいいスパイスになっていて、味のある映画に仕上がっていたと思う。 ベトナムで撮影したという映像も、よくこんな場所があったなと思うほどこの世界観にピッタリだ。(ちなみにベトナムでのプレミア時に巨大コング人形が燃えるというハプニングがあった) クロスオーバーやら対決モノの弊害というか、企画の為だけにあつらえられた映画になっていたら嫌だなと思ったが、そんな心配は杞憂だった。本作でコングの雄姿を見届け、しっかりと次の闘いに備えられるような作品になっている。  以下余談ですが。 なぜかタコが食べたくなりますね。 なんででしょう。コングが捕食したタコがいい感じに茹で上がった色してたからすかね。どうでもいいですよね。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-03-20 13:18:42)
42.  アサシン クリード 《ネタバレ》 
ミラ・ジョボビッチの「バイオハザード」シリーズと同様、こちらもビデオゲームを原作とした作品である。ゲーム第一作を購入した時は、エルサレムを舞台にしたアクション・ゲームと思っていたが、いざ電源ONにするとアニムスやらアブスターゴやら近未来的な世界観にびっくりした覚えがある。  以降の続編を経て、もはや宇宙規模なんじゃないかというほど大げさになったストーリーは、まさにハリウッドで映画化するに相応しい。スモークマシマシでハッタリを効かせまくった中世スペインや、やたら進化した豪華版アニムスのデザインなどから、このゲームとハリウッド映画との相性の良さが見て取れる。  個人的に原作の好きな所と言えば、笑っちまうほど荒唐無稽なSF設定を、歴史上の人物だとか難しい科学用語とかで真面目かつ強引に押し通してくる世界観だ。 嬉しいことにここら辺は映画版でもしっかりと再現されていた。なにしろジェレミー・アイアンズ、マリオン・コティヤールが気難しい表情で意味の分からん絵空事を懇切丁寧に語ってくれるのだから、こういったトンデモ空気感の再現は上手く出来ている。  また映画化にあたり、アサシンVSテンプル騎士団の構図も、ハリウッドらしいアプローチで描かれている。自由意思と支配の確執、つまりは社会を形成するうえでどちらの主義をかかげるか。 無論、本作でテンプル騎士団は完全にイカれた集団なので、100%アサシン側に肩入れして観られる。しかし行きすぎた個々の自由は暴力や堕落を招くことも世の常。今回は導入編なのでシンプルな構成だが、これは同時に次作以降で深みを増すポテンシャルも秘めている設定である。(ゲームで言えば「ローグ」の部分か)  残念な点は、物語のほとんどが現代パートに集約されてしまっているため、過去パートがエピソードの羅列になってしまってることか。上映時間に限りがある映画故の決断か、過去パートをアクション中心で組み立てた潔さは買うが、強烈なキャラが過去編にいても良かったのではとも思う。 しかしアクションだけ見れば、パルクールの類が導入されて久しいハリウッドにおいても、なかなか良い出来だ。逃走からの剣戟など、ゲームのキモである部分も良く再現している。   原作ありきと言えど、映画シリーズ(になることを願う)1作目なので敷居は高くなく、それでいて原作の雰囲気も損ねていない。複雑さや深みは無いので批評家受けは悪そうだが、娯楽映画として2時間楽しませてくれたのは事実である。興行成績は振るわなかったようだが、続編は是非観てみたい。今後このシリーズがトンデモ方向に展開していくことを実は期待している。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-02-21 16:22:42)
43.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
これは難しい。そもそもこの映画の立ち位置が難関なのである。 前ボーンのいい所は、そのシンプルさにあった。無駄をそぎ落とした脚本の中に、極限の諜報世界が息づいていた。  しかしリニューアルを図った「レガシー」が頓挫してしまった以上、やはり集客力のあるマット・デイモンのボーンを作らなければならず、さらに過去の焼き直しにならぬように、大幅なアップデートも必要になるのだ。  いやいやこれは難しい。シリーズの良さと、製作側の希望が最初から全くかみ合っていない。それでもこの難題に対してグリーングラスは善戦したと思う。高難易度の撮影や編集テクニックが伺える他、アクションも派手な見せ場が並ぶ凄い映画になっている。 というかスターと巨匠の黄金コンビに巨額の予算を投じることで、高水準な作品を作ったというのが正解か。 それなりにいい映画になっているのが個人的にはある種、タチの悪さを感じるところ。「これ、凄いけどボーンの必要あるのかな」というのが正直な感想である。  ボーンが戦う理由から弱い。まだまだ出生の秘密あるよと言われて、自分探しの旅へ出発である。物語的にボーンの動く理由としては良いのかもしれないが、観客としてはこの付け足し設定には雑さを払拭できない。終盤には復讐にシフトしていき、彼の人間的な感情を際立たせるのかと思いきや、敵もがっつり復讐で動くヤツが用意されおり、この路線変更もやはり空回り気味か。  そもそも私怨で動くようなヤツもこの作品には向かないのではないだろうか。この手の映画ではたまに「Not personal.(これはビジネスだ)」という台詞を耳にするが、ボーンの世界観はまさにそんな感じだ。指令を受けた工作員が問答無用で標的を殺す、または殺されるか。それだけの世界だ。 トミー・リー・ジョーンズが復讐心を操っていたにしろ、結果的に2人の工作員が復讐合戦でカジノに突っ込むとは何事か。  また、昨今のCIA絡みのインシデントを扱っているのも、食い合わせが悪かったか。バックドアに端を発するアップル対CIAを模した陰謀から始まり、スノーデンやらSNSやらを通じて、アメリカの抱えるプライバシーや監視への問題提起が展開する。グリーングラスにとってはこの手の話は得意分野であり、故に新要素として時事ネタを取り込んだのだろうが、途中からこの問題にシフトしていくようなプロットでは駄目だろう。 こんなのはマクガフィンでいい。ボーンとCIAが最後に出会うためのお膳立てであり、ただの記号で良い。 この問題を扱いたいなら、これを軸とした脚本にボーンを絡ませていかないと問題提起にもならないだろう。  もちろんいい所もいっぱいある。一貫した激しいカット割りの連続も相変わらず臨場感がある。世界規模のロケーションも007のそれとはまったく異なる趣があっていい。他のスパイ映画ならパルテノン神殿をフィーチャーしそうな所、それを空撮にとどめて国会前のシンタグマからオモニアまでの範囲でアクションを撮っちゃう所なんて渋いなぁと思う。 マット・デイモンとグリーングラスのタッグは、やはり素晴らしいシーンを生み出しているのだ。  しかしながら物語は詰め込みすぎ、アクションはラストのカーチェイスで一気に娯楽寄りになってしまい、映画内でのバランスはかなり悪い。このコンビでこの脚本なら、「グリーン・ゾーン」のような選択肢を提示した方が良かったのではないか。 本当に良くできたスパイアクションだが、「ボーン」のアイデンティティはあまり感じられないといったところか。
[映画館(字幕)] 7点(2016-10-09 02:41:22)(良:1票)
44.  ロスト・バケーション 《ネタバレ》 
サメ映画は(そんなジャンルがあるのかは知りませんが)、最近ではB級はおろかZ級のネタ映画のような存在になっていた。(ステイサムが巨大サメと戦うというヤベェ映画も待機している) 本作も妙な邦題と低予算の安いあらすじで、例に漏れずという雰囲気だが、いやいやこれが実にいい出来だ。満足感はB級どころかSクラス。どこの誰とは言わないがブレイク・ライブリーの水着見たさにホイホイ釣られるような観客は、本作の緻密な設定と演出に驚くことになるだろう。  本作はシンプルなサメ映画のプロットながら、随所で的確な演出が冴える。。 監督のジャウマ・コレット=セラといえばホラー、サスペンス、アクション、さらにはスポーツ青春ものまでそつなくこなせるオールラウンダーだ。これまで培ってきたであろうどんなジャンルでも通じる演出力を、この上映時間の短いサメ映画でも遺憾なく発揮したといえる。  それは冒頭のスマホの画面を映し出す演出からもうキレキレ。これだけだと単によくある今風の画面作りに思えるが、スワイプしていった先に頭を布で覆った女性を映したのが巧い。これだけで彼女の母が闘病したことが刷り込まれるため、中盤の親子の会話が無理なく展開できる。さらには妊婦の形の島やファンタズマも、彼女と母との繋がりを暗示し、結果はどうあれ、彼女が最後まで闘いぬく意思を持つことを強調させる。  恐怖描写もまた面白く、ローカルの帰宅と冒頭のビデオのミスリードのおかげで、持久戦にもつれ込んでいく際の絶望感が際立っている。砂浜に落ちているバッグを気に掛ける描写もリアルな不安感を煽るが、それを中盤のメキシカン裸の大将がそっくり回収するのがまたタチの悪い所だ。陸からほんの200mほど離れただけで、人間はこんなにも無力なんだよと再確認させられる。(さらにはサメの恐ろしさを非業の死をもって伝えるなど、大将はなかなかいい仕事をしている)  シンプルかつ理路整然と用意された舞台設定も、恐怖を感覚的にとらえやすくするための仕掛けだ。鯨の死体、足場、ブイの3点が形成するまさに魔のトライアングル海域には、生存に直結するような起死回生アイテムもない。 そう、これほど救いのない状況だからこそ、生存を占う要素として、彼女のファイターとしての側面を丁寧に描いたのだ。  荒唐無稽なサメ映画と見せかけてその実、ロジカルな構成に裏打ちされた「面白い映画」だと言える出来だ。  そしてやはりブレイク・ライブリーについて言及しないわけにはいかない。実はヌードNGとして通っているが、必要であればギリギリを惜しまず提供する非常に好感度の高い、いや仕事に真面目な女優だ。(参考資料:「野蛮なやつら/SAVAGES」) 監督もそれを理解してか、演技指導にも撮影クルーにも良い指示を出していたことが伺える。その功績は枚挙にキリがない。  破った袖に足を通して美脚ドン!ラッシュガードはジッパーで胸寄せドン!一年後には新作水着キタコレドン!はい、いただきました。ありがとうございますありがとうございます。  どこの誰とは言わないが、一部の客層が絶対抱くであろう期待をもしっかり汲み取ってくれる素敵な映画だ。 あの狡猾なサメがブレイク・ライブリーのお尻を追って玉砕したのも、今の君たちなら理解できるだろう?
[映画館(字幕)] 7点(2016-08-08 17:26:28)(笑:2票)
45.  X-MEN:アポカリプス 《ネタバレ》 
今年だけでもすでに多くのアメコミヒーローがスクリーンに登場したが、この老舗シリーズの存在感と面白さこそ真打ちと呼ぶに相応しい。 本作は「ファースト・ジェネレーション」から始まった新三部作に一応の決着を着ける体で制作されており、ドラマとバトルが渾然一体となった熱いアクション映画に仕上がっている。新三部作を予習していれば、より感慨深く楽しめるだろう。  前作DOFPで新たなタイムラインが発生し、映画シリーズも原作の平行世界の概念を持ち込んだような形になった。もしかすると日本では馴染みのないスタイルかもしれないが、「これはこういうモン」として、あまり気にせずに鑑賞する方が良い。  特徴としては、前作が時間移動を取り入れた怒涛の展開を見せたのに対し、アポカリプスは極めてX-MENらしい構成で語られることだろうか。  前半はアポカリプスの再誕を核に、様々なキャラクターのドラマが描写される。その感触はもはや群像ドラマのそれであり、DOFPのような勢いは無いものの、しっかりとクライマックスに繋がっていく。 このドラマの多彩さこそX-MENの核、そしてアイデンティティと言える部分だ。間違いない演出だと言える。  しかしながら中盤に大きな山場が挿入されなかったのは少々食い足りないか。 アポカリプスを際立たせる描写が不足していることから、具体的な強さがぼやけてしまった。もちろんアポカリプスは分子構造を操り、大陸間を瞬間移動すれば、驚異的な速さで移動することもできる。明らかに最強クラスのミュータントだ。しかし単に力の大きさを見せているだけで、敵に回すことの怖さに直結していないのが惜しい。  実際、中盤には先走ったハボックが大爆発を誘発し、それを通りかかったクイックシルバーが助けるという見せ場が用意されているが、これは少し雑な印象を受ける。例えばここを「成長して超強力になったハボックがアポカリプスの圧倒的な力の前に完敗し、学校を破壊される」という展開にしても良かったのではとも思う。これならアポカリプスの怖さを印象付けられるし、クイックシルバーも活躍できる。  過去作品と比べると、評価の高いファースト・ジェネレーションでは、ショウの恐ろしさを描くシーンがしっかりある。進化論を掲げたミュータントをより強い進化で圧倒する。皮肉の効いた象徴的な一幕がショウの悪役としての魅力を底上げしたのだ。こういう描写が本作にも欲しかった。  しかし不満点はあるものの、終盤はそれらを吹き飛ばすほどの勢いと熱量になっており興奮必至。特にチャールズを救出してからのクライマックスの盛り上がりは特筆に値する。  刀折れ矢尽きたかという場面での味方の助太刀は、まさに王道。 「お前は一人、だが私たちはちがう」「俺が裏切ってしまったのはお前(アポカリプス)じゃない」 丁寧にドラマを描いたからこそ熱い台詞がバシバシきまるというものだ。  それだけではない。様々な葛藤が入り乱れた最終戦で浮かび上がるメッセージとは、このシリーズが訴えて続けてきた「希望」そのものである。 差別や恐怖に支配された60年代に世相を反映して登場したXmenというコミックは、映画になってもより良き世界への希望を模索してきた。激しい戦闘描写の中で、この戦いの勝敗を分けうる鍵として希望に言及した点が見事である。  回想シーンにもあるが、過去作でチャールズがエリックやレイブンに送った言葉が、本作で大きな希望として集約されていることに気付く。 アポカリプスという絶望が迫る中、そこに敢然と立ちはだかったのは「X」という希望のシンボルなのだ。その熱さ、カッコよさといったらこのシリーズ屈指の名シーンになるに違いない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-06-30 14:13:08)
46.  デッドプール 《ネタバレ》 
ディズニーのアベンジャーズ、ワーナーのジャスティス・リーグなど、アメコミのクロスオーバーは最近のトレンド。そんな中FOXはX-MEN以外のヒーローものがことごとく失敗(新F4も散々だった)したため、アメコミタイトルの多彩さでは他スタジオの後手に回っている状態だ。 しかしX-MENの性質上、ヒーローの数では全く引けをとっておらず、また各ヒーローの人気も絶大なため、X-MENの世界観でアメコミ大作枠を充実させることができる。本作もその一つだ。色んな理由でコロッサスと学校くらいしか出せなかったものの、「X-MEN」の世界を広げることに貢献している。  興行的に大成功を収めた「ウルヴァリン」のラスボスとして映画デビューを飾ったデッドプールだが、原作とかけ離れた設定で描かれたため、ファンから好意的には受け入れられなかった。さらには演じるライアン・レイノルズも、H・ジャックマンのバルキーな肉体の前に、見た目の迫力でも完敗を喫したこともあり、このデッドプールは「ダメなデッドプール」の烙印を押されてしまった。  ライアンはルックスも良いし、演技も起用にこなせる(が大抵、共演者の好演に喰われる)。アメコミ物の経歴も豊富だ。しかしながら、どこか残念な雰囲気が付きまとう映画スターでもある。思えば上述の「ウルヴァリン」意外のアメコミ原作映画「グリーン・ランタン」「R.I.P.D」「ブレイド3」では、全て興行的に惨敗し、何度も苦い経験をしているのだ。  しかし「デッドプール」ではこれらの悲惨な経験が、まるでライアンが仕掛けた複線であるかのように回収されているから救いがある。今作で再びデッドプールを演じるにあたり、自らが最もイジリがいのある最強のネタ人間になっているとは、本人も嬉しいんだか悲しいんだか。 「ブレイド2観て楽しめよ!」ライアンには悪いが確かに2はアンタの出ている3の100倍面白かった。  さて映画としては意外に堅実な出来。ぶっ飛んだヒーロー像を提示しているが、脚本自体はオーソドックスな「ヒーローになるまで」の物語である。 ヒーローものでは避けては通れない「誕生」エピソードだからこそ、デッドプールのような強烈キャラで既視感やマンネリを打破できるというワケだ。ストーリーテリングにしても、一風変わった回想形式をとり、客を楽しませようとする姿勢にあふれていて好感が持てる。  惜しい点としてはアクションシーンの見せ方が単調な部分か。カーチェイスや格闘などのバリエーションはあるが、舞台が全て似たような市街地のため、メリハリが薄くなりスケール感も欠いてしまった。デッドプールについては、フザケたようでブルータルな戦闘スタイルが確立されていただけに、色々なシチュエーションでのアクションが見られないのが惜しいと感じる。  惜しい部分もあるが「デッドプール」として押さえるべき点は押さえていると思う。以前の失敗に学んだか、ファンが望むデッドプールを上手く表現し、キャラで魅せることに主眼を置いているのが分かる作りだ。  第4の壁を飛び越える口の減らないセクシーなマザファカ。OPの「Angel of the morning」から、エンドロール後のアベンジャーズいじりまで、デップーらしさがブレることなく貫かれ本作は、間違いなく本来あるべき「デッドプール」の姿だろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-05-23 16:56:58)(良:1票)
47.  レヴェナント 蘇えりし者 《ネタバレ》 
何と言ってもレオが悲願の受賞を達成したことが一番に耳に入るが、同時に監督・撮影賞受賞のお墨付きどおり、熱のこもった力作に仕上がっている。  その出来栄えたるや、どの場面を切り取っても圧巻。長回しと視覚効果の融合が激しい臨場感を醸成する一方で、自然光の生む映像美が野蛮さと過酷さの中によく映える。雪原でバイソンを喰う先住民と遭遇するシーンなど、あまりの美しさにおしっこ漏らすかと思ったほどである。 かなりチャレンジングな制作内容だが、制作努力だけでなくしっかりモノにできているからこそ評価したい。  レオの演技もやはり大きな見どころで、ヒューの復讐劇を体現する様は壮絶。受賞を逃し続けたレオだが、逆に言えばいつもオスカーを狙うパフォーマンスを見せる名優だ。ベジタリアンなのに生肉を貪ったり、骨折するまで殴り合ったりの演技はもちろんすごい。しかし本作の言葉で表現すると「神」に出会う瞬間だろうか。そういったシーンでは、心情を表す表情の演技が印象に残った。 過酷な撮影を耐え抜き、素晴らしい演技でオスカーを受賞したレオには素直に拍手である。   惜しい点としては、やはり賞取り映画に寄りすぎていて如何せん一般の客層には向かないところか。 監督の個性ではあるが、バードマンの時のようなユーモアが封印されたため、結果的に更に間口が狭くなり、長尺の暗い感触に仕上がっている。  かといってダラダラと長尺を消化していくわけでもない。美しい映像と過酷なサバイバルの途中にはなかなか興味深い描写もある。 この映画では色々な人物が「神」に遭遇する。これはヒューが一度死んで蘇ったという伝説にキリストをイメージして、映画的なメタファーを込めたものだろう。  ヒューはバイソンの群れと遭遇し、フィッツジェラルドは親父がリスを食べて生き延びたと話す。開拓民に破壊された集落で先住民はブリジャーから食料を得た。ポワカは突如現れたレヴェナントにより部隊に合流し、ヒューは自らを神と思えと怒鳴った男と対峙、ポワカ達はフィッツジェラルドを裁き、レヴェナントを生かした。 映画ではヒューの生死があいまいに描かれたことによって、ブリジャーの顛末もあえて宙ぶらりんになっている。フィッツジェラルドの言葉では、神は与えそして奪う(ヒューに施しを与えた先住民は開拓民に奪われてしまった)。ブリジャーに対して神がどのような運命を与えるのか。予想してみると面白い。 (ちなみにブリジャーは史実では生き延びていて、開拓時代ではわりと有名な人物です。よかったね。)
[映画館(字幕)] 9点(2016-04-26 18:00:16)(良:1票)
48.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
「白鯨との闘い」とはなかなか吹っ掛けた邦題である。モビー・ディックとの死闘を描くアクションかと思いきや、この映画で語られるのは「白鯨」のモデルとなった凄惨な海難事件を描いたドラマである。白鯨の課した過酷なサバイバルとの闘いを指しての邦題だろう。アサイラムあたりが「白鯨VSメカシャーク」とかを作ってしまいそうなところ、ロン・ハワードはこれを奥深いドラマに仕上げている。  石油という燃料にあやかる私たちにとって、産業革命を支えた一昔前の燃料のストーリーは充分に通じるテーマといえる。ましてや米国の技術革新によりシェールオイルが増産され、OPECはじめ世界にきな臭い影響を与えている昨今である。この映画においてオイルが示すもの、それと人類との関係性が胸に突き刺さるはずだ。  そもそも本来の捕鯨とは食用に行う狩猟であったはずである。しかし鯨油がもたらす恩恵に気づくと、捕鯨は生活を豊かにするための行為へと変貌した。いかに立派な帆船と言えど鯨油以外を置く場所は無いので残りは海に捨ててしまうのだ。  街の灯を絶やさぬために海洋の心臓部で鯨油を追う。人間の英知を象徴する物が火なら、それを動かす燃料の一つは人間の傲慢である。これを悪とは思わないが、しかし同時にこのような行為に伴う業の深さを忘れてはいないか。知っていても、普段意識したりすることもないのではないか。  そこで白鯨は、鯨油を求める船乗り達に試練を与えた。油はもちろん食べるものもない。ただ一つの渇望は飢えを満たすことである。 生きるために食べる。至極単純ながら苦渋の決断を下さなければ乗り越えられない試練だ。だからこそ再び白鯨と対峙したときにオーウェンは武器を置き、ジョージは自らの行為の業の深さを話したのだろう。  クジラの数も減り、海の果ての宝を求める捕鯨も衰退期に入った。しかし映画のラストには新たな燃料の存在を匂わせる。今度は地の果てまでオイルを求める時代が来るのだ。知っての通り、これは豊かさと同時に人類に混乱や破壊をもたらすことになる代物でもある。つまり現代人も、豊かさに伴うエゴや、それが引き起こす悲劇を、意識せずとも実は知っているということだ。
[映画館(字幕)] 8点(2016-01-25 13:26:41)(良:1票)
49.  スター・ウォーズ/フォースの覚醒 《ネタバレ》 
実に10年ぶりとなる待望の新章。劇場には長くからのファンが沢山詰めかけた一方で、初めてスター・ウォーズに触れる人も多いようだった。 これは新たに製作の主導権を握ったディズニーの広告戦術の賜物か。可愛らしくデフォルメされたSWグッズに、SNS上で盛り上がるようなイベント感を醸す同時刻上映ときた。10年間のブランクも手伝ってか、多くの新規ファンを動員出来たようである。 かくして公開前の映画館には、SWの思い出を語る人やコスプレのコアなファン、パーティに乗っかった若者まで様々な層が集まり、モスアイズリーの酒場のような賑やかさだ。  そんな人々をどのように楽しませるか、その点もディズニーは抜かりない。 監督は「スター・トレック」を甦らせたJJエイブラムスである。彼はテレビシリーズのプロデュースで活躍しており、「M:I-3」の監督抜擢を皮切りに数多くの大作を成功に導いてきた。 特撮を得意とする一方、ドラマの展開もスマート。オリジナル作品も上手いし、続編・リブートもお手の物だ。正直ムカつくほどに有能な監督であるが、だからこそ今回のSWにも信頼がおけるというものだ。  実際、エイブラムスは今回も素晴らしい仕事をこなしている。前3部作はEP4に繋げるために、やや説明的で内面を描く作風だったのに対し、今回は誰もが楽しめる冒険活劇といった趣だ。情報に乏しいフィンとレイの視点を通した物語は、一見さんでも楽しめるような配慮が伺える。  しかしながらSWのエッセンスも失われていない。こういうバランス感覚は流石である。実際にはEP4とかなり似たような点が散見されるのだが、SWは繰り返される家族の物語でもある。それに大事なのは巡ってきた境遇でどのような決断をするかである。ハン・ソロはベン(カイロ・レン)と対峙するが、彼らの血筋では初めてのことではない。第二デス・スターでのルークとベイダーを知っていれば、あの場面でカイロが下す決断には驚愕必至である(同時にとても悲しい場面だ)。 今作だけで一つの物語を上手くまとめているが、ルークの登場やカイロの動向など、次作への期待を繋げているのも良い。  やっぱりSWは面白くて魅力がある。 物語が新たな世代に受け継がれたのと同様に、ルーカスはかつてSWを観ていたというエイブラムスにバトンを渡した。 作り手が変われば確かに作風の変化は感じる。映像の進化もあるし、ドラマの展開も合理的になった。 でも今日観てきたのは本当に紛れもなくSWだった。 EP4から何十年と経ってるのに、相変わらず新しいスピーダーだかドロイドだかの世間話をするトルーパーも面白いではないか。
[映画館(字幕)] 9点(2015-12-19 01:35:29)(良:3票)
50.  007/スペクター 《ネタバレ》 
ガンバレル、そしてプレタイトル・シークエンスに続いてオープニングテーマが始まる。そこには過去3作の重要人物が登場する。 伝統的な一連の流れだけで、この作品に込められた意味や立ち位置が理解できる仕組みだ。 本作が目指すのは究極の「ボンド映画」であり、過去作品はスペクターへの壮大な伏線であったのだ。  実際、本作はどこをとってもボンド映画といった印象だ。 まずは世界を股にかけたロケーション。死者の日や雪山、列車に砂漠など、何かしらの特徴を持たせているのが面白い。ボンド映画らしいケレン味を演出する仕掛けだ。  それを活かしたアクションも素晴らしい。大迫力の映像の中に、忘れずユーモアを盛り付けているのが憎い所だ。さらにはタフなライバルの出現も熱い。ボンドに対峙する巨漢はジョーズを思い起こさせる。(ちなみにQの遠征は「消されたライセンス」を彷彿とさせる) 今回は敵が「組織」ということで、ボンドもスクワッドを組んで闘うのが新鮮である。普段は待機組のMたちだが、Mとマニーペニーは元工作員として描かれているため、こういった使い方もアリなのだ。クレイグ=ボンドの世界観を上手く昇華させていると言える。  メンデス監督の人間描写もボンド映画の中に活きている。 拷問で意識を失いかける中、マドレーヌの言葉に応え時計爆弾を持ち直すシーンは特に印象的だ。研究所に向かう車中で「怖ろしいわ」と漏らす彼女に応え、ボンドが無言で手を握る描写が事前にあるから、こういう大人のラブストーリーに説得力が出る。  惜しむらくはスペクター首領か。名優を投入して色気が出たか、首領にしては前線で体を張りすぎである。ボンドへの興味の表れともとれるが、参謀役がいても良かったかもしれない。  しかしそれを補ってなお余るほどの完成度だ。 思えば新ボンドが決まったとき、世間ではバッシングが起きたものだ。僕自身、クレイグ=ボンドに懐疑的だったが、しかしそんな感情は「カジノ・ロワイヤル」公開当日に払拭され、以降は新作が出るたびに新ボンドを確立された。炸裂する爆弾のように闘い、愛し傷つき涙を流す人間ボンドだ。 そして伝統的な様式美を携えた本作を観たとき、クレイグの起用やシリーズのリブート、新ボンド像への挑戦、それら全てが「スペクター」で繋がったような気がした。前3作の正統な続編、正常進化の結果がこれほど素晴らしい「ボンド映画」として結実するとは感慨深い。
[映画館(字幕)] 9点(2015-11-29 02:36:51)
51.  007/スカイフォール 《ネタバレ》 
五輪開催などの一大行事に湧くロンドンイヤーであった2012年。その締めくくりに相応しいコンテンツとして登場したのがスカイフォールだ。奇しくもシリーズの50周年が重なり、記念碑的ボンド映画の趣だ。  クレイグの007に通ずる興味深い点は、一人のエージェントの成長物語としての側面だ。既存のイメージをぶち壊して登場したクレイグ=ボンドが、今作では熟練の諜報員として描かれるのもそのためである。  そういった世界観の説明を孕んだプレタイトルシークエンスから実に良くできている。 状況変化に富んだアクションも圧巻だが、ドラマに秀でたメンデス監督の的確な人物描写も巧い。 引金を引くための駒。地球の裏側からの無線指示が招く結果。 これらは中盤のハビエルとの演技合戦できちんと回収され、「2匹のネズミ」を決定的に分かつ理由になる。  多くの部下を失ったMは、現場に復帰できないはずのボンドまで起用した。MI6に見捨てられたシルヴァはこの事実をMの裏切りと解釈するが、ボンドはどう捉えたか。 会話劇を通してプロの信頼関係を浮き彫りにする秀逸なシーンだ。 つまり、ボンドはこれをMからの信頼と受け取り、シルヴァとの対決に臨んだのだろう。  Mとボンドの信頼関係は、実は前2作でも盛り込まれた隠れたテーマでもある。お互いに信頼することで生き抜いてきたからこそ、今作でボンドがついにみせた涙が胸に突き刺る。信頼に応え任務を全うしても、かけがえのない人を失っては、ボンドでも感情を堪えられない。こういった人間的な面もしっかり表現できるからクレイグのボンドは良い。過去に「ボンドは泣かない」という監督の意向でレーゼンビー=ボンドが涙するシーンがNGとなったことあるが、そのことからもクレイグの007がいかに人間としてのボンドに迫っているかが分かる。  冷戦終結後に数々のテロリストと戦ったブロスナン=ボンドとは異なり、クレイグ=ボンドは実態の見えない組織を追った。現代の諜報戦におけるスパイの有用性を問うような闘いだが、本作では次の50年に向けた結論を打ち出している。レイザーブレードにDB5、無線機。良いものはいつの時代も残っていく。リザレクションの言葉通り、ボンド映画の伝統もまた復活し、受け継がれていくだろう。
[映画館(字幕)] 9点(2015-11-26 14:07:18)
52.  エベレスト 3D 《ネタバレ》 
エベレストは初登頂が記録されて以降、登山経験の蓄積や登山用具の進歩を受けて、幾分かは登山が容易になったと言われている。 そこに生まれた錯覚とも思える余裕と、最高峰の冠に執着する人間の思惑がどの様な事態をもたらしたのか。  邦題についた「3D」を見ると、なんだか飛び出る山岳アクションみたいな感じだが、実際に起きた遭難事故を描いた真面目な実話ドラマだ。生き証人であるブクレーエフとクラカワーは後に事故の顛末を出版しており、本作はそれらを下敷きとして「現実の事故」を強く感じさせる。 (ちなみにクラカワーは映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作者でもある)  過度の脚色を排しているが、エベレストの過酷な環境はそれだけでフィクションをも超えてしまうほどの恐ろしさがある。 目を見張る豪華キャストが起用されているのも本作の良い所で、要所で適格な人間ドラマを演じられるこそ、人の理を超えた自然の厳しさが際立つ。様々な想いを秘めた人間たちが、ベテランもアマチュアも関係なしに力尽きていく様子は、映像だけでは表現できないエベレストの恐ろしさを付加することに貢献している。  では本来、この山にはどのように挑むべきなのだろうか。 もしかしたらこの事故は、単純な日程調整や登頂断念で回避できたかもしれない。しかし商業登山という側面がこの事故を必然に変えてしまった。  極端な話、金さえ払えば登山に挑戦できる。また客を募るガイドたちは、登頂の実績を作って次に繋げなければならないプレッシャーがある。資源に乏しい国の政府にとっては、登山客は貴重な外貨収入源になるため、なかなか政策を打ち出せない。  G・マロリーの「そこにエベレストがあるから」という言葉があるが、そんな純粋な「山と人」の関係の間に、不純なモノが混ざってしまったのではないか。 今では登頂では飽き足らず、「最年少」だとか「最多~」とかの別の冠を求める賞レースが過熱しており、世界のトップには相変わらず渋滞が出来ている。  この映画は、信念や夢などの裏にあるシビアな部分を詳細に記しており、未曽有の遭難のみならず、現在この山が抱える問題についても警鐘を鳴らしている。 サバイバル映画としては抑揚にかけ、実話故に状況や登場人物の把握が困難で分かりにくい面も否めないが、全体的にとても丁寧に作られて、なおかつ有意義な映画である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-11-05 13:15:00)(良:1票)
53.  ファンタスティック・フォー(2015) 《ネタバレ》 
気鋭の監督と俳優を起用して、将来性を見込んだ映画作りもむなしく、全くもってファンタスティックでない残念な仕上がりだ。  リブート前と最も異なる点はメンバーの年齢設定で、主人公たちはティーンエイジャーに設定された。ダイバージェント、ハンガーゲームなどのティーン向け映画が最近のトレンドでもあるハリウッドにおいては、この層へのアプローチを狙うのは当然の方向転換でもある。 この変更を受けて、ティーンに向けた等身大のテーマが用意され、それを描くに相応しいスタッフが投入されている。監督は「クロニクル」でも若者の感情を描いたジョッシュ・トランクが務め、役者もフレッシュな面々だ。といっても、実は主要4人の実年齢は、役柄の年齢よりは10歳は上である。年齢は置いといて、「セッション」で熱演したマイルズ・テラーを初め、頭角を現してきた有望株のキャスティングは興味深い。  この面子が大作でどのような魅力を放つのか。しかしここからがこの映画の酷い点で、期待させる部分がどうでもいいと思えるほどつまらないのである。脚本は壊滅的で、ドラマとアクションが互いに独立しているような印象さえを受ける。  監督の性質上か、ドラマに焦点を当てたいのは分かる。長い時間を割いているが、しかしそれが効果的かは疑問だ。この手の映画ではじっくりと描くのではなく、短い時間でどれだけ印象的に演出できるかに手腕を発揮してほしい。そのための若手演技派ではないのか。  結果としてアクションは少なく、実質はクライマックスのバトルのみと言っていい。アクション映画としての物足りなさは否めない。映像の質としても優秀とは言えず、ラボと異次元をうろうろするだけで、申し訳程度に地球にクレーターをつくる程度である。  ドラマも機能せず、アクションもマズい。新鋭クルーが作るリブートということで、定石から外したかった面もあるだろうが、面白くないならばそれは失敗だ。冒頭、中盤、終盤に見せ場を設け、その間に葛藤と成長を印象的に演出する。ベタかもしれないが、彼らのようなオールドスタイルのヒーローはこういった基本で攻めても違和感はないはずだ。積み上げたドラマのエモーションをアクションに注ぎ込めなければ、燃えるヒーロー映画にはならないだろう。
[映画館(字幕)] 3点(2015-10-12 02:41:14)
54.  ナイトクローラー 《ネタバレ》 
ダッジ・チャレンジャーに乗り込み、夜のLAを跋扈する不気味なダークヒーローの物語。これは紛れもない傑作だ。  ナイトクローラーという知られざる職業にフォーカスすることで、退屈さとは無縁のエンターテイメント作品として仕上がっているのが面白い。役者の演技が光るサスペンスフルな展開から、素晴らしい出来のカーチェイスを経て、再三言い続けていたメッセージを突きつける。脚本もよく練られており、全ての要素が高いレベルでまとまっている。  ジェイクが演じるルーは疑う余地のない強烈キャラだが、負けず劣らず、ストーリーやメッセージ性もかなりキツイ。成功、成果、数字のためにどこまでやれるか。要はどこまで倫理から外れられるか。  僕はやはり倫理観という範囲の中で行動しているので、ずれ気味なルーが異様な行動力で成りあがっていく様はどこか痛快に映る。ネットで覚えた受け売りで相手を煙に巻き、ライバルは排除、衝撃映像を捏造するなど八面六臂の大活躍。「勝つためにはチケットを買え」ともっともらしいことを口にしておきながら、そもそも彼の成功のチケット(カメラ)は犯罪で得たものだ。コイツは最初からズレているのだ。  そういった中で描かれる雇用主と労働者の関係もかなりエグく描写されており、この辺は経営者や就活生にはかなり刺さるハズだ。薄給で酷使され、悲惨な最期を迎えたリックも決して他人事ではない。大企業のインターンという名目で無給で働かされ、正規雇用でないゆえ簡単に切られる若者は実際多い。  面白いのはこういった点が非難などもなく、中立の視点で描かれていることだ。これはOPとEDの映像を観れば合点がいく。この映画の主役の一人は街であり、ここで起きる事件も、ナイトクローラーもインターンも、全てが粛々と流れるLAの日常なのだ。  ふとテレビを点けると、ショッキングな「バナー」が踊っていた。生放送中に銃撃事件が起きたというのだ。 その内容はまさに善良な市民を襲うマイノリティの凶弾、大都市に潜む身近な狂気。 この事件にもやはりナイトクローラーやテレビ屋の奔走(または暗躍か)があったのだろうか。 無論、この映画はフィクションであるが、そう思わせるようなリアリティを十分すぎるほど持ち合わせている。膨大な時間をかけた取材と、LAの街を主役とした撮影の賜物である。
[映画館(字幕)] 9点(2015-09-29 13:59:44)(良:3票)
55.  ジュラシック・ワールド 《ネタバレ》 
リメイクか思うほど、シリーズ1作目を意識した作り。だがテーマパークを中心としたプロットは映画館と相性が良く、子供にとっても敷居が低い。到着するや否や、はやく園内を回ろうと急ぐ子供を見れば、この映画が子供たちに向けたアトラクションであることが分かる。悪くいえば一作目の焼き直しだが、新しい世代の子供たちに贈るワクワク感を否定はしない。この決断は支持したい。  一方でシンプルにまとめられたメッセージも興味深い。人間の欲求がエスカレートして止まらなくなれば、どこかに綻びが生じ、破綻を招くということ。  利益のためには、より強く、歯の多い恐竜を次々に発表せねばならず、それはまるで、シーズン毎に多機能になるスマホのような商品である。あまりにも進化した機械が、個人情報や著作権に猛威を振るうように、恐竜にコストをかけて、従業員や安全管理の質が下がったのも、人間のやり過ぎた行動に伴う結果。こんなやり方では、客のフォローもせず「だってそう言われたもん」と言い放つキャストがいるのも納得だ。  映画は「恐竜」という誇張された現実を描いているが、現実にもそんな危機は訪れている。 黒のタートルにデニムのウー博士は、「ジョブズを意識した、あの中国の実業家」のようでもあり、現代に合わせた警鐘なのでは…と訝しむのは考え過ぎかとも思うが、そんな奥深さも本作にはある。  これらは劇中で「学ばない奴らめ」という台詞でまとめられるが、これこそ久しぶりの新作に合致する最も強烈なメッセージである。  もちろん映画では深く掘り下げられないが、その必要もない。子供たちが、何か悪いことをする大人がいる、と肌で感じられる程度の描写で十分である。 それくらいのシンプルな教訓でいい。それに観ている間は、僕だって子供のように夢を見れる。子供と同じ視点でワクワクして園内を探検できる。  T-REXの堂々たる登場に、起死回生のラプターの助太刀、そしてモササウルスの一撃による極めて映画的な決着。スクランブラーとラプターの併走もカッコいい。一人の少年として、手に汗握り映画の世界に没入してしまう。 やはり恐竜にはロマンがある。 人間は変わらない生物だろうが、いい意味で変わらないものもあってほしい。動物園に恐竜がいたら…そんな子供のころの夢をスピルバーグは今も真剣に応援してくれる。
[映画館(字幕)] 7点(2015-08-14 13:09:07)(良:1票)
56.  ターミネーター:新起動/ジェニシス 《ネタバレ》 
「1」の前日譚となる未来の戦争から、舞台は見覚えのあるロスへ。 そこから始まる超展開の中、おなじみのセリフが響き渡る。  "Come with me if you want to live!!(生き残りたいなら来い!)"  本来なら、サラを守るために派遣されたカイルがクラブで言うはずの言葉。だが今はこの言葉に従ってついていくしかない。スカイネットとの戦いは、「Genisys」で新たな局面へと突入していく。今までのタイムラインをぶち壊し、より強力なターミネーターを出現させ、もはや何でもありの世界観で重量級のアクションを展開させながら。  思えば、「3」は基本的には「2」のプロットを流用し、「4」は現代をすっとばしてひたすら未来の戦争を描いていた。それに比べて本作は、まるでファンボーイが自分の夢を好き放題詰め込んだようなサービス精神あふれる作風だ。 しかしシリーズのエッセンスはいい意味で十分すぎるほどに踏襲され、なおかつ新起動ともいえる斬新な脚本も内包している。J・キャメロンが太鼓判を押す本作だが、もしかしたら作り手としてこうした挑戦をしたかったから本作を評価したのかもしれない。  また、過去作品では「運命を受け入れる」「運命を変える」といった具合に、運命をテーマにした戦いを描いていた。今回も例に漏れず「運命を突き進む」というテーマに基づいて作られているのも小さな感動ポイントだ。今作では、トリッキーで予測のつかない運命を描くからこそ、このテーマも活きてくる。「ターミネーター」である必然性を、ファンサービスや主演俳優の復帰以外でもアプローチできているのが素晴らしい。  もちろんシュワちゃんの存在感も忘れてはならない。 複数の時間軸を移動する設定も、これは同時にありのままのシュワちゃんを無理なく活躍させられる妙案である。そこを監督がしっかり理解しているから演出にもブレがない。鈍い音が響くガチンコの殴り合い、ことあるごとに挿入されるあのテーマ曲。老いても彼のスター性に陰りナシだ、いつだって僕のヒーローである。  総じて満足度の高い娯楽作品だった。ジェニシスはシリーズの正当な続編であると同時に、熱いシュワ映画に仕上がっているといえる。
[映画館(字幕)] 8点(2015-07-31 14:03:02)(良:2票)
57.  アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 《ネタバレ》 
相変わらずどこを見ても大金がつぎ込まれていることがわかる、まさに超大作に相応しい映像だ。マーベル好きといういことも手伝い、それなりに楽しいのである。  しかしながら、これまた相変わらずツッコミ所も満載で、今回はそれが根幹部分に生じているみたいだ。 要するに、「これアベンジャーズのせいじゃね?」って思ってしまうのが痛い。 ハルクVSハルクバスターなんて、南アの皆さんは堪ったもんじゃない。せめて敵が仲間割れを狙っての精神攻撃とか言ってくれれば、まだ許容できたるのだが。(前作と被ってしまうか)  また全てのヒーローに見せ場を設けるために、敵の描写が限りなく薄くなってしまった。アベンジャーズには最終的に3人も新キャラが増えるのに、敵はウルトロンとその他の雑魚である。デカいメカもなければ、手強い中ボスもいない。こんなメンツで超人や神に挑むんだから、敵の方が気の毒になっちまう。  このぬるい空気感は致命的か。凄い映像なんだが総じて薄味な印象の映画になってしまった。  マーベルヒーローをここまで育て上げたことが、本シリーズの強みであるし、拡大を続けるマーベルの宇宙は、ファンとしては非常にうれしい。しかし本作は、大ヒットシリーズというブランドに頼り切っており、本作独自の驚きや興奮が希薄なのだ。  大予算を懸けたハリウッド大作だ。続編映画で手堅くいくのは当然。それも分かる。実際ホリデーシーズンには各社こぞって続編系の大作を封切っている。 そして本作は期待通りに大作揃いの映画シーンで歴史的ヒットを記録した。それこそアベンジャーズのように敵を「蹂躙」する勢いでだ。  しかし興行が全てではない。30年ぶりに登場したMAXは、CGに慣れた観客の度肝を抜いた。トム・クルーズは前作超えの超絶スタントに挑戦し、シュワちゃんは自身の代表作に本気のカムバック。英国の諜報員は復活した敵組織と闘うはずだ。 無難な続編から脱しようと、そして心に残る映画にしようと、意気込む大作が今年は揃っている。  だからこそ興行的に大勝利を収めたアベンジャーズには、劇中のソーの叫びをそのまま言いたい。  Is that the best you can do!?(それで本気かこの野郎!!)  アベンジャーズの本気はこんなもんじゃないはずだ。
[映画館(字幕)] 6点(2015-07-07 22:38:41)
58.  セッション 《ネタバレ》 
最近の映画界では、「新バットマン」への大抜擢でトップスターへと躍進したあの俳優だろうか。 バットマンの前に撮った作品は低予算スリラーでありながら、危険な役作りを敢行したというエピソードがあった。(もっとも本人にとってはそういった努力への評価は二の次で、役者としてどれだけ作品に貢献できるかを重要視しているだけのようだが。)  「天才」とか「偉人」とか言われる人は、やはり常人とは違う。 そんな人間は、件の俳優や劇中のバードのように、「天才」という記号だけでは片づけられない狂気じみた逸話を持っているものだ。   「ウィップラッシュ」では、そういった人間が作られる過程を威圧的な緊張感と共に描き出している。 彼らを表すにはあまりに稚拙で安い表現だが、「輝いている人」「トップを走る人」は決して、才能のみで今の称号を手にしたのではない。「アマデウス」みたいな化け物もいるかもしれないが、多くはフレッチャーのシゴキのような辛辣な境遇で、闘いぬき、挫折して、そしてなお立ち上がって、道を極めたのだと思う。  フレッチャーの教育方針に100%賛同するわけではないが、絶対に折ることの出来ない信念を持った人間の会話には説得力がある。 上出来なんてクソだ。 鬼教師の放つ言葉がグサリとくる。 こういう会話があったからこそ、ラストのセッションはとてつもないパワーを帯びてくるし、観終わった後には、アスリートや芸術家、各界の巨人たちの凄さを今一度、凡人の僕に教えてくれる。  また、一握りの偉人をフィーチャーする一方で、普通の人々についても描けているのが素晴らしい。  レーズンをよけてポップコーンを食べることのできる優しい青年が、理想にとりつかれ、人を傷付けて、挫折を経験し、そして自分のやるべきことを見つけていく。 あるいは極端なサディスト指導者が、ピアノ少女に気さくに話しかけ、時に自身の教育の悲劇的な結果を偲ぶ。  普通の人間、そして弱さを描くことで、観客もこの異常なドラマに没入できるし、浮き彫りになる強固な信念が、彼らがなぜ一般人より抜きん出ているのかを強調している。  これはとんでもなく強烈な映画だった。この完成度、上出来どころじゃない。
[映画館(字幕)] 9点(2015-06-18 23:51:38)
59.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
でかい太鼓を搭載した車がドンドコドンドコと猛チャージをかけ、ギターをかき鳴らせば炎が飛び出る。砂漠を疾走するトレーラーには、奪われた女たちを奪還せんと、棒にしがみついた白塗りの戦士たちがびょーんびょーんと迫りくる。 どひゃぁ、狂ってる!これはMAD過ぎるだろうよ!!しかしこれがべらぼうに面白い。しっかり座ってないと興奮して椅子から転げ落ちちまう。  キャストは一新されたものの監督は変わらずジョージ・ミラー。「ベイブ」等のファミリー映画を手掛ける一方、監督も相当溜まっていたようで、30年ぶりの続編でもその狂人っぷりをいかんなく発揮している。  その内容たるや、現在のボックスオフィスを賑わせている他のハリウッドアクション大作の中では明らかに異質。 クーデターに巻き込まれたマックスの活劇のみを映し出す、シンプルかつパワフルな構成だ。しかし狂気とはシンプルな感情や衝動がもたらすもの。作品のテーマに合致したプロットだと言える。  そして一貫した映像世界もまた狂っている。 オレンジ色の砂漠に真っ青な空。人物のクローズアップではオレンジの肌に青い目が映え、夜のブルーの中ではオレンジ色の爆発が画面を彩る。いつの頃からかハリウッド映画に蔓延する「ブルー&オレンジ(大作映画のポスターや本編は、この2色で表現されていることが多い)」をやりすぎなくらい対比させ、無二の世界を作り出す。極端であることも狂気の一面である。  これほどシンプルだからこそ、その狂気を助長し、これほど極端だからこそ、生と死のコントラストがサバイブという本能を爆発させる。  CGが氾濫し、映像を展開させる装置とかした脚本が量産されるハリウッド。この潮流に対して、ジョージ・ミラーは見せつけるかのように、再び傑作アクションを生み出した。 荒野の向こうから絶望と狂気が迫ってきたら、こちらもありったけの狂気で真っ向からぶつかり叩き潰すのみ。躊躇えば死、戦い続けることこそ希望。 狂ってる、狂ってるぅ!でもこんなアクション映画を観たかったんだ。やったぜ、マックス!最高にカッコよかったぜ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-06-16 13:44:26)(良:3票)
60.  ワイルド・スピード/SKY MISSION 《ネタバレ》 
走り屋をフィーチャーしたカーアクションからスタートし、いまやハリウッドを代表するビッグバジェットムービーへと成長したファースト・アンド・フューリアーズ。トーキョードリフト失敗(?)の後、シリーズは途方もない大作路線へとシフトチェンジ。見事に息を吹き返したわけだが、ポール・ウォーカーとの熱い走りは本作をもって一旦幕を下ろすようだ。 自身も車に興味がある方なので、このシリーズは毎回楽しみにしている。ポールがいなくなったことは本当に寂しいが、ここまでの大作として仕上げてくれたことに感謝である。  作品の方は正常に進化しており、スーパーアクションに強引にクルマを絡めてくる安定の出来。なんでもかんでもクルマでアプローチしてくる潔さ、それが見せ場として機能することの素晴らしさ。 イサムだけかと思ったら、トニー・ジャーにロンダ・ラウジー、カート・ラッセルまで登場するのもまたスゴイ。ガチファイトのカッコよさも忘れちゃいないのだ。 色々ツッコみまくりなんだが、そういうところもこの映画の楽しいところだ。  ポールの死によって一時は制作が断念されたが、弟コディとCGIの投入で完成にこぎつけたという本作。ブライアンは引退という方向で企画が組みなおされ、彼のフェードアウトのためにテーマにも変更があった。シリーズの根幹をなす家族というテーマに加え、家族との別れを描くときが来たのだ。  エンディングの「see you again」の言葉を借りれば、小さな出会いは友情になり、友情はやがて強い絆になる。それが彼らのいう家族だ。それでも別れはやってくる。ブライアンは家族を守るべく、絆で繋がった家族を離れることを選ぶのである。 でもアイツがいなくなったとして…絆はそこで切れるのか? この映画は彼らなりの答えをしっかりと描いていく。 ダッジチャージャーに乗り込んだドムは、1作目で口にした言葉を振り返り、変化を受け入れようとする。スピードの中に生きてきた兄弟たちも多くの変化を体験した。そうして辿り着いた場所でも、ずっと一緒にやって来た兄弟を思い出せば、今もスープラに乗ったブライアンが横にいてくれる。 400メートル先のほんの10秒の間に答えを探していた彼らが、ずっと変わることないもう一つの答えを見つけたのかもしれない。これから違う道を進んだとしても、絆や愛は失われない。いつかまたあった時はたくさん話そうぜと。
[映画館(字幕)] 9点(2015-04-23 20:26:33)(良:4票)
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