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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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41.  新・平家物語 《ネタバレ》 
『新・平家物語』といいましても保元の乱以前の『ザ・レイズ・オブ・平家』とも言うべき清盛の青春時代が描かれていると言って間違いはない映画です。何故に?と申しますとこれは大映が平家物語三部作として企画した第一作で、溝口健二は他の二作には関わっていない、というか本作が溝口のラス前作で予定はあったのかもしれないがすでに彼はこの世にはいなかったというわけです。また、二本しかないカラー撮影作品の一本でもあります。 主演の雷蔵は映画デビューして二年目、世評では雷蔵は本作で演技開花したとされています。とはいっても、まず若人あきらかイモトアヤコかというぐらいの強烈なインパクトのある眉毛メイクに、眼が釘付けになっちゃいますよね。時代考証にうるさい溝口だけど、これにはなんか拘りがあるのかと訝しむばかりです。平清盛というと『平家物語』のせいでどうしても傲慢な悪役イメージがつきまといますが、考えてみれば公家政治を終わらせて武士の時代を切り拓いた人、織田信長の吉法師時代みたいな描き方もこれはアリでしょう。また自分の出自に悩み苦悩する清盛像も、ある意味現代的で斬新な感がありました。余談ですが、私の中では大河ドラマ版『新・平家物語』の仲代達也が、史上最高の平清盛だということになっています。 「女を撮らせたら溝口」というのが定番ですが、観れば納得できるように群衆や僧兵の大群などモブ・シーンの映像も素晴らしい迫力があります。それは名カメラマン宮川一夫の技量もありますが、これは長年コンビを組んで息が合った末に完成した名人芸でもあるでしょう。惜しむらくは保存状態のせいかフィルムの発色が劣化しているところで、貴重なカラー版溝口作品なのでぜひデジタルリマスターしていただきたい。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-02-23 22:17:31)
42.  黒い罠 《ネタバレ》 
冒頭の長回しはあまりにも有名ですが、これってタイトル・ロール部分だけで時間にして三分半ぐらいと意外と短い。でもこの映画の撮影で特筆すべきなのは、この長回し部分も含めてアクション・シークエンス部分での画面手前や奥から動くいわば縦のカメラ・ワークの切れ味で、50年代でこれほど躍動感に満ちた映像を見せてくる映画は珍しいと思います。変なところもオーソン・ウェルズが監督ですから当然のごとくありまして、まずメキシコ人という設定のチャールトン・ヘストンがミンストレル・ショーまがいに顔を黒メイクしているところは違和感が半端ない。まあどうやったってヘストンはメキシコ人っぽくならないのですが、これはやり過ぎです。対するウェルズ演じる悪徳警部クインランですが、これはもうウェルズの怪演に眼が釘付けにされます。このストーリーはいわば元祖バッド・ルーテナントと呼ぶのがふさわしく、この警部の悪徳ぶりはかなりのレベルに達していました。マレーネ・ディートリッヒはいわばチョイ役出演という感じでしたが、画面に登場したときの存在感がこれまた半端ない。やはりチョイ役でザ・ザ・ガボールも顔出しているし、考えるとけっこう豪華なキャスティングじゃないでしょうか。冒頭の建設業者爆殺事件と本題のメキシコ・ギャングがどう関わるのか最後まで気にかかりましたが、ラストのオチは意表をつくまさにサプライズでございました。 フィルム・ノワールの傑作という評価が一般的ですが、ノワールといっても決してB級ではないってことは声を大にしておきたいです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-14 23:32:22)
43.  地獄の英雄(1951) 《ネタバレ》 
ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24)(良:1票)
44.  九十九本目の生娘 《ネタバレ》 
新東宝カルト映画は数あれどもっとも有名(?)な作品で、新東宝の歴史を紹介する書籍などでは必ず取り上げられます。 「日本のチベット」「部落」なんてセリフが頻繁に出てくるのがソフト化しにくいカルト映画になってしまった理由かとも思いますが、実際は十年に一度の祭りで処女の生き血で焼き入れした刀を打って神に奉納する一族が、被差別民だったサンカを連想させるというのが関係者をビビらせたのかもしれません。原作小説は『九十九本目の妖刀』で『妖刀』を『生娘』に変更したのはもちろん新東宝のワンマン社長である大蔵貢のアイデアですが、あえて『九十九本目』を残したおかげで日本語としてはおかしいけど奇妙な語感が出ています。九十九本の刀が揃うと一族の願いが成就するというのが触れ込みですが、990年も同じことしてきたのかと、あきれるばかりです。そんな大事な処女が必要なのに、よりによって三原葉子を誘拐してくるとは、もうコメディです。この処女調達役の婆さんが実はこの映画で一番キャラがたっていて、化け猫映画で有名な五月藤江が演じています。もうこれは彼女フィルモグラフィ中最高の怪演といって差し支えなく、若い娘を見てにやりと笑う不気味な表情は下手すりゃ夢に出てきそうです。 新東宝のプログラム・ピクチャーは大抵ストーリーが途中で(始めからというケースも多い)破綻してしまうのですが、この映画は予想を裏切り最後までしっかり撮られていました。ラストでは弓矢で攻撃してくる住民と警官隊の銃撃戦という奇妙な光景を見せられたりしますが、西部劇を観ているようで不思議と違和感がありません。主役クレジットの警官役である菅原文太はあまり目立たないキャラでしたが、新東宝時代の文太は壮絶な大根役者なのでこれが正解です。エロとグロが売り物だった新東宝でしたが、本作はその中でも希少なエロと伝奇をくっつけた路線だったと思います、でも正直エロはほとんど無いに等しかったですがね(有名な三原葉子が下着姿で水車に括り付けられているシーンはありませんでした、どうもスチール写真だけみたいです)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-01-11 21:17:27)
45.  80日間世界一周 《ネタバレ》 
も~懐かしいですね、有名なこの映画のメインテーマを聞くたびにどうしても『兼高かおる世界の旅』を思い出しちゃうので困ったものです。80日どころか80時間(人工衛星を使えば80分かな)もかからずに地球を一巡りできる現代ですが、観光もせずにひたすら陸路と海路を突き進むだけで80日かかる時代だったんですね。 この映画には、まだハリウッドに余裕があったころの優雅な雰囲気が満ち溢れています。主役にデヴィッド・ニーヴンを引っ張ってこれたことがまず大成功でしょう。彼も「自分が演じたもっとも好きなキャラ」と生前語っていたそうですから。スペインやインド、そして日本など世界各地でロケしているところがまたすごい、とくにインドのロケしたシークエンスは力が入っています。鎌倉大仏でロケした日本シークエンスは明治初年の時代設定なのに男性がみなチョンマゲ姿というところがちょっと微妙ですが、明治の初めなんて髷を切っていない人が多かったそうですから、あまり五月蠅く言わない方が良いでしょう。カメオ出演は本作が元祖だというのは有名ですが、やはり最も鮮烈だったのはフランク・シナトラでしょう。まさかあのピアノ弾きがシナトラだったとは意表突かれました、封切時の劇場ではさぞや観客が湧いたことでしょうね。あとピーター・ローレやジョージ・ラフトも印象に残りましたが、ラフトは後に『カジノロワイヤル』にやはりカメオ出演した時もほぼ同じ演技だったのは笑えます。 時代を感じさせるゆったりした展開の映画ですが、ストレスなく愉しめるので正月休みにのんびりと観るには最適の一本です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-30 23:45:26)
46.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
この映画のヴェネツィア映画祭グランプリ受賞は、今はどうなっているのか知らないけど私らの世代では中学校社会の教科書に湯川秀樹のノーベル賞受賞とともに戦後の文化の欄に必ず記載されているトピックスだった記憶があります。映画の内容はとても文部省が中学生に推奨するものような代物じゃないし、実際観ても中学生ぐらいじゃ理解できないでしょうけど、ちゃんとスチール写真付きで載ってました。教科書を執筆するお偉い大学教授なんかも実はこの映画を観てないなかった、なんてところが真相なのかもしれません。 とはいっても世界の映画作家に与えた衝撃とその影響は、『七人の侍』以上のものであることは確かです。これほど知的に撮られた時代劇は前代未聞で、そのシンプル極まりないストーリーテリングと相まって現代でもまったく色あせてないと思います。多襄丸・侍・妻の三者の言い分が全く違って、その再現劇が三人ともまるで違う人格みたいなところが面白いし、中でも京マチ子の三変化が凄まじいレベルに達しています。昨今の“me too”運動に熱心な意識の高い方々には「実にけしからん映画だ!」と上映禁止運動が起きそうな内容とも言えますが、悪いけど自分には三人の中では京マチ子がもっとも女性というか人間の本質を出している気がします。「門を造るだけだから安く上がります」と会社をだまして凝りまくった羅生門のセットは見事の一語に尽きます。そして受賞したときのドタバタというか大騒ぎのエピソードの中でやはりいちばん強烈なのは、授賞式に日本から関係者は誰も出席してなかったので、急遽街中で見つけたヴェトナム人を引っ張って来てトロフィーを渡すセレモニーを強行したことでしょう。もちろんトロフィーはすぐ回収して日本に贈られたそうですが。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-09-17 23:16:09)
47.  激戦ダンケルク 《ネタバレ》 
クリストファー・ノーラン作品で有名なダンケルク撤退戦、この戦いをテーマにした映画はノーラン版を含めて三本ありますが、本作がいちばん古いわけです。プロデューサーはマイケル・バルコン、アレック・ギネスが主演したコメディを当時量産していたイーリング・スタジオの総帥です。言ってみれば大作戦争映画を撮るのにはどう考えても不慣れな撮影所なわけで、それは作品の出来に少なからぬ影響を与えているようです。 物語はナチ・ドイツがオランダ・ベルギー・フランスに侵攻する前のいわゆる“ファニー・ウォー”の時分からスタートします。憂国の士である新聞記者のバーナード・リー(初期007のⅯ役で有名)と小市民的な価値観を持つ自動車修理工場のオーナーであるリチャード・アッテンボロー、そしてフランス駐在の英国派遣軍の伍長ジョン・ミルズの三人が主要キャラです。民間人の二人は一応ご近所で顔見知りですがミルズとはもちろん面識はなく、同時進行でこの三人の物語が語られてゆきます。ミルズ伍長の率いる分隊は本隊からはぐれドイツ軍の追撃を必死にかわしながらダンケルクにたどり着き、そこで自家用の小舟で駆け付けたリーとアッテンボローと遭遇するわけです。ドイツ軍がフランスに侵入してダンケルクで英仏軍を包囲するまでは陸戦ですけど、ここは地図を使ったアニメーションと記録映像で大まかなところは済ませますが、いきなり大戦中期から使用されるティーガー戦車の映像が使われたりして鼻白んでしまいます。ハリウッドと違って英国戦争映画はこういう細部にこだわるんですけど、ここはコメディ専科だったイーリング・スタジオの弱みが出てしまいました。 この映画が実はノーラン版ダンケルクに影響というかヒントを与えていることに気が付きます。ノーランはこの主要キャラ三人の行動を陸・海・空の物語に置き換え、時間軸もバラバラにして最後にダンケルク海岸で交差するように脚本を書いたのです。本作でも海岸で救出を待つ仲間に撃墜されたパイロットが加わっていたり、ジョン・ミルズたちが一度は乗った船が撃沈され九死に一生を得て海岸にたどり着くエピソードがあるところなどからも(もっとも船が撃沈されるのはアンリ・ヴェルヌイユ版『ダンケルク』にもあり、三作共通のエピソードとなります)推測されます。 ノーラン版のようなテンションが上がるシークエンスもなく、淡々とした感じで物語は進行しそして映画は終わります。辛口で言えば出来の悪いプロパガンダ映画みたいかなとも言えますが、ここで興味深いことに気が付きました。最近観た『人生はシネマティック』のダンケルク撤退を描いた劇中劇映画が雰囲気や細部がとても似ているんです。スクリューにロープが絡んで小舟が動けなくなるという同じエピソードがあるし、ダンケルク海岸のシーンではうり二つのショットまでありました。そう考えると本作は成功作とはお世辞にも言えないけど、けっこう後世に影響を与えているんだなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-08-17 22:20:42)
48.  戦艦大和 《ネタバレ》 
まだ大倉貢に乗っ取られる前、東宝より真面目で良心的な映画を製作していた(その為に会社が傾いたあげくにゲテモノ映画を量産することになるとは皮肉)頃の新東宝が製作した大作です。大和と武蔵が戦中は軍機密で国民にはその存在が知られていなかっただけに、この映画で初めて戦艦大和を知ったという人も多くて、興行的にも大ヒットしました。私の父はこの映画を公開当時に劇場で観ていますが、大和の沈没シーンでは館内では嗚咽を上げる人やスクリーンに向かって合掌する人が沢山いたと語っていました。 大和のセットや戦闘シーンの特撮ははっきり言ってショボいです。これは同年に製作された東宝の『太平洋の鷲』と比べると一目瞭然ですが、これは円谷英二の特撮技術のレベルが高すぎると言えるかもしれません。でも大和は終戦時に写真や図面と言った資料が焼却されているので、当時としてはかなり実物に迫ったものだったといえます。これは生き残った能村副長が協力していることが成果につながったといえるでしょう。その特撮の悪イメージが強かったのですが、今回再見してみてドラマ部分が良く撮れていることに気が付きました。原作者の吉田満は東大から海軍に入ったいわゆる学徒将校ですが、劇中の吉村少尉の同期生たちもみな学徒将校という設定なので、自身の生と死の意味をめぐって葛藤するさまはいかにも戦前のインテリという感じでリアルです。また出撃までのシークエンスを観ても極限状況に追い込まれているのに、登場人物たちの言動は総じて落ち着いているというか達観の域に達している。これには僧職でもある松林宗恵が応援監督として参加していることが大きいのかもしれません。 この大和特攻、いわゆる坊ノ岬沖海戦は一応「天一号作戦」と呼ばれていますが、沖縄にたどり着けたら砲台になり乗員は陸戦隊になる(そう言っているのに陸戦用兵器は持って行ってない)などもはや作戦と呼べるような代物ではなかったと感じます。この戦闘で日本は3,700名が戦死したのに、米軍の搭乗員はたった13名が戦死しただけだったというのは、まったく驚くべき事実です。戦史においてもこれほどコスパの良い戦闘は、他にはちょっと見当たらないんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-07-31 23:06:29)(良:1票)
49.  水爆と深海の怪物 《ネタバレ》 
正体不明の何かに捕まって九死に一生を得る危機にあった原子力潜水艦、つかみはまあOKです。ところがこの原潜艦長が真相究明をほったらかして女性科学者とイチャイチャし始めるから、観てる方とすればもうドン引きです。この女性も、これまた無駄にイケメンの同僚博士ともそれっぽい雰囲気で、開幕10分でもう「なんなん、これはいったい何の映画なの?」と絶叫したくなります。いきなり三角関係を見せられるとは、特撮モンスター映画にしては珍しい展開です。肝心のタコはサンフランシスコ上陸の場面でその全貌が明らかになりますが超巨大タコでしかも六本足、いくら何でもデカすぎだろ。このタコは放射能で巨大化したわけではなく、水爆実験でフィリピン海溝の生活環境が破壊されたので浅海に出現したという不自然な説明(いちおう放射能は帯びた体にはなっている)、「最近はなんでも水爆のせいにしたがる」なんてセリフまであります。これは撮影に協力してくれた軍部というか海軍に忖度した結果だと推測できますが、けっきょく大ダコ退治に活躍したのは海軍だけで陸軍の登場はないも同然という展開には苦笑させられます。ハリーハウゼンは低予算ながらも精一杯頑張った仕事ぶりですが、いっそのこと水爆実験で放射能を浴びて巨大化し六本足に突然変異したという説明の方がすっきりしたと思います。最後は原潜が魚雷を撃ち込んで大爆発というのが大ダコの最期ですが、「JAWS」のサメの最期はスピルバーグのこの映画へのオマージュなのかもしれません。 「タコが主役の怪獣映画は駄作しかない」というのが私の持論ですが、この元祖タコ怪獣映画にも見事にあてはまりました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2019-03-19 22:38:55)
50.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
落語調の演出ばかりに目が行きがちですけど、数編の落語噺をくっつけながらそれを幕末動乱期の事件に見事にシンクロさせたストーリーテリングが絶妙で、歴代邦画の脚本ベストテンを作ったら間違いなくベスト3には選ばれると思います。舞台の品川宿を文字通り歴史の通り道として見せていて、遊郭の前の街道を通り過ぎるのは異人の軍楽隊や幕府の早馬、焼き討ちされた異人館に駆け付ける火消しなどまさしく尊王攘夷に激動する歴史そのものだと言えます。遊郭に上がり込んで攘夷をたくらむ高杉晋作たち長州藩士たちは妙に軽い乗りの若侍という印象で、これはきっと製作当時の学生運動に対するイメージを投影しているんじゃないかな。60年安保は三年先ですけど尊王攘夷は反米闘争のメタファーで、脚本陣に今村昌平が名を連ねているので十分あり得ることだと思います。高杉晋作と佐平治は同じ像の裏表、佐平治は高杉晋作のブライト・ハーフなんですよ。二人とも結核患者ですし、佐平治も晋作と同様に明治という新しい時代を見ることはなかったと思います。 そして凄まじいのはフランキー堺の伝説的な演技で、もう神がかりとしか言いようがない。特に私が好きなのは放り投げるようにして羽織に腕を通す仕草で、カッコよすぎです。驚異的な滑舌でまくしたてる演技をたっぷり見せた後で、一人になった瞬間にふと見せる迫りくる死に怯える表情、こんな演技は彼以外には誰もできません。ラストのシークエンスで佐平治と絡む東北なまりのおっさんが現れるとなぜか佐平治は滑舌も悪くなりおどおどしてしまうのが不思議ですが、これは佐平治にはおっさんが冥途の使者のように感じてしまったからなんでしょうね。そうなんです、佐平治は自分の余生があまり残さないれていないことを自覚していた川島雄三の分身でもあるんですよ。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-09-20 23:57:47)
51.  世紀の怪物/タランチュラの襲撃 《ネタバレ》 
ユニバーサルが誇る昆虫巨大化怪獣シリーズ、今回は蜘蛛の帝王タランチュラを怪獣化させてみました。『放射能X』や『黒い蠍』は実物大プロップやストップモーション・アニメで昆虫を巨大化させましたが、本作では実物のタランチュラを合成ででっかくしてみました。この手法はあのバート・I・ゴードンのクズ映画で有名ですが、実はユニバーサルのこの映画の方が早かったんですね。もっと前の時代にはトカゲに角を付けて恐竜です、なんて映画もあったから、ハリウッドではこの手法は割とポピュラーだったみたいですね。 このタランチュラくんがまたでかいんです、ほとんど丘サイズぐらいはあります。もし目の前に巨大なアリやネズミがいたらどう感じるでしょうか、たぶんメチャメチャ怖いと思いますよ。普通サイズならさして脅威を感じない見慣れた生物でも、それが巨大化すれば人は耐えられない恐怖を感じる本能があるんじゃないでしょうか。合成撮影じたいもそりゃバート・I・ゴードンに較べればレベルは高いのは確かですけど、爆発とかの映像はなぜか下手くそなのは低予算の悲しさかな。 でももっと怖かったのはネズミやタランチュラを巨大化させる研究をしている科学者たちです。ネズミやウサギは食料としての使い道があることは判りますけど、蜘蛛をでかくしてどうするつもりだったんでしょう(笑)。その栄養剤を注射されて死んでゆく科学者の死にざまがまた壮絶。冒頭に出てくる科学者はまるで『ドクター・モローの島』に出てくる毛むくじゃらの人造人間みたいになっているし、もう一人のボス科学者の顔にいたってはほとんどエレファントマンですよ。こういう変なところに拘るのが、ユニバーサルらしいんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-10-16 23:36:49)
52.  宇宙戦争(1953) 《ネタバレ》 
H・G・ウェルズがこの原作を書いたのは1898年、それから55年後に映画化されても十分に通用するストーリーとプロットだということは驚くべきことですね。もちろん、さらに52年後にスピルバーグがさらに進化した映像を見せてくれましたが、その時には誕生から107年たっていたわけです。 冒頭に火星人が侵略先を太陽系の惑星から探して地球に決めるまでが説明されますが、まるで太陽系だけが全宇宙みたいな見方はいかにも19世紀的かとも思います。でもこの感覚は、この映画の製作当時も大して変わってなかったんじゃないでしょうか。スピルバーグ版ではきっちり再現されていましたが、本作では火星人の乗り物(というか兵器)であるトライポッドが角の生えた円盤に変わっています。でもこれが異様にカッコよいデザインで、その後のSF映画に多大なる影響を与えています。トライポッドこそ登場しませんでしたが火星人はなぜか“3”に拘る性質があるのが面白いです。3機一組で必ず行動する円盤、三角形描くような攻撃パターン、そして肉体的にも瞳孔が3つある、これは原作通りなのか製作者の意図なのか興味が湧くところです。 製作者は平和主義者だったウェルズの死後ということもあって、火星人を明らかにソ連のメタファーとして当時の冷戦状況を煽るような撮り方だなと感じます。原作が持っていたウェルズの思想的な考察はハリウッド映画人たちには理解すべくもなく、格好の好戦プロパガンダにされてしまったわけです。もっとも映画人たちは政府から命令されたり援助を受けて撮っているわけではなく、あくまでこういう単純な扇動が大衆に受けるからSF侵略ものを題材としてチョイスしていただけなのです。50年代のこういうハリウッドの風潮が、SF映画というジャンルの発展に多大なる悪影響を与えていたのは、残念なことです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-09-30 22:51:10)
53.  誘惑(1957) 《ネタバレ》 
かつて売れない画家だった銀座の洋品店の店主(千田是也)は、店の二階を客寄せのためにギャラリーに改装する工事を始めています。数年前に妻を亡くした彼には娘(左幸子)がいて、親の血を引いたのか彼女もオブジェを造ったりするグループに所属して芸術活動に余念がありません。恋人が所属する売れない画家グループのために彼女はギャラリーのこけら落としに彼らの展覧会を開こうと提案しますが、そこはお金が絡むことでもありことが上手く進みません。 登場人物たちの心の声をモノローグで聞かせる撮り方は、単純な手法だけどなかなか面白かったです。ふつう男女が相手を異性として見れば、なにかの感情が頭の中で湧いてくるのは動物の本能みたいなものですからね。銀座のシークエンスはセットで撮影されていますが、雰囲気はルネ・クレールなんかの戦前のフランス映画みたいな感じがします。洋品店と向かい側の喫茶店だけのセットですけど、それぞれの店の一階と二階から見える道路を挟んだ向かい側の光景が印象的に使われていました。さすが才人・中平康だけあってこの若さでフランス映画のエスプリを完璧にマスターしていたと言えます。登場人物たちが多くて群像劇みたいなところがあるストーリーですけど、その中でもヒロインといえる左幸子の個性は光っていました、この人はやはり天才女優です。そして岡本太郎や東郷青児といった有名画家が本人役で出ているのも楽しい、岡本太郎なんてまさに“岡本太郎そのもの”といった存在感でした。 でもそのフランスではヌーヴェル・ヴァーグが始まろうとしていて、同年代のトリュフォーやゴダールが頭角を現しだしていたことを考えると、ここが中平康の限界なのかなとも感じます。小津や溝口といった大家ではなく若手監督が撮った映画ですからねえ、こういうところにその後の60年代の興業面だけではない日本映画界が衰退した根っこがあるんじゃないでしょうか。ヌーヴェル・ヴァーグやニュー・シネマの様なムーヴメントがおきなかったのは、映画先進国の中では日本だけだったということは一度分析されてもいいんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-07-05 19:42:29)
54.  怨霊佐倉大騒動 《ネタバレ》 
狂言歌舞伎の題目になっていて有名な佐倉惣五郎の直訴事件をストレート勝負で映像化、かつて活動弁士だった社長の大蔵貢がいかにも好みそうなお話しでもあります。監督は渡辺邦男で佐倉惣五郎役には嵐寛寿郎という、『明治天皇と日露大戦争』で天下をとった新東宝いちの黄金コンビでございます。 お話しは舞台化された佐倉惣五郎もので使われたエピソードというかネタを総動員したって感じで、謂わば集大成と言えます。堀田家のバカ殿様をはじめ家老連中のあくまで憎々しくて、王道のストーリーテリングで安心して観れます。もちろんアラカンも期待通りの重厚な演技、名主とは言え農民なのに役人とのいざこざで見せる立ち振る舞いはまるっきり剣豪のそれなのは、まあご愛敬です。惣五郎一家が処刑されてからのラスト10分は、怨霊となった惣五郎一家が悪役たちに憑りついて大暴れします。アラカンが「そこまでせんでも…これでは映画の余韻が台無しに…」と渋い顔したという話も伝わっていますが、やっぱ新東宝ですからこのお化け屋敷テイストは必須ですよね。 というわけで、深く考えなければ退屈せずに時間がつぶせる一編です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-06-23 22:26:32)
55.  穴(1957) 《ネタバレ》 
以前のレビュアーの方もおっしゃてるように、私も市川崑は”日本のビリー・ワイルダー“だったんだなと再認識させられました。コメディと言っても、邦画界でこれだけセリフ過剰な映画を上手くコントロールできる監督は稀有な存在でしょう。そしてあの京マチ子がこんなに早口なセリフのオンパレードでコメデイ演技を易々とこなせるとは全く想像を超えていました。彼女を観ていると、『ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦』のジェームズ・キャグニ―を思い出してしまいました、そういえばこれも監督はビリー・ワイルダーでしたね。 ミステリーと言ってもこういう緩いお話しなので重箱の隅をほじくるような観方をしてもしょうがないです、でもミステリーとしても良く考え込まれた脚本だと思います。ラストの船越英二の飛び込みはちょっとシュールさすら感じる唐突ぶりですけど、そのために窓に空いた大穴の周りで、死ななかった登場人物たち全員がカーテンコール宜しく勝手なことを言い合っているところなんぞ、市川崑らしいブラックな幕切れだと感じました。 でもいちばん訳が判らなかったのは、石原慎太郎の無意味としか言いようがない出演でしょうね。もう調子に乗ってど下手な歌まで披露しちゃうんだから…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-16 23:23:15)
56.  野火(1959) 《ネタバレ》 
これが現実だったんでしょうけど、日本兵たちの汚れっぷりは凄いもんですね。みんなひげ面で軍服だったとは想像もつかないようなぼろ布を身にまとい靴はボロボロ。最近の太平洋戦争をテーマにした邦画が観るに値しない大きな理由は、俳優たちをここまで汚くさせないところでしょう。船越英二なんか、もちろん役作りには力を入れたんでしょうけど、ひげ面に目ばかりギョロギョロさせていて真に迫っています。この映画はその船越英二演じる田村一等兵の彷徨を描いたロードムービーみたいなものです。教会のある村で出くわしたフィリピン人女性をいきなり射殺するエピソードなんかは唐突過ぎる気もしますが、その他の彼が出くわす人々や戦闘も、まるで田村一等兵が死ぬまでに見た幻想のように観ることもできるでしょう。ということもあって、人肉食というショッキングなテーマもちょっと薄らいでいる気もします。まあそこら辺が市川崑らしいとも言えますけど。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-14 22:32:30)
57.  封鎖作戦 《ネタバレ》 
もし私が“若いころから容貌が変わらなかった俳優ベスト10”というランキングをするなら、間違いなくベスト1の称号を奉るのはトレヴァー・ハワードです。彼ほど生涯顔つきが変化しなかった男優は他にいないんじゃないでしょうか、ということは若いころから恐ろしく老けた顔だったわけですけど(笑)。 この映画の原題は“Gift Horse”、これは第二次大戦中にまだ参戦していなかった米国が英国海軍に貸与した中古駆逐艦のことを表しています。第一次大戦中に建造されたレトロな艦で、平甲板で煙突が4本もついていて“four-pipers”などとも呼ばれていました。この中の一艦の艦長に任じられたのがトレヴァー・ハワードで、彼は戦前に衝突事故を起こして海軍を退役させられた古傷を持っています。任務は船団護衛ですから地味な物語展開で、前半はこのオンボロ艦との悪戦苦闘ぶりがメインで、沈没船とは衝突するわ防潜網をスクリューにからませるて立ち往生するわでほんといいとこなしです。旧帝国海軍ならこの艦長は間違いなくクビでしょうが、船団護衛に猫の手も借りたい英海軍はそれどころじゃないってわけです。興味深いところは艦長を含めてこの艦の乗組員はほとんどが招集兵であることで、戦闘艦には現役兵しか乗せなかった帝国海軍とはこれまた違いますね。この乗員の中にはリチャード・アッテンボローがいます、50年代に撮られた英国戦争映画には必ずと言っていいほど彼がわき役で出演している感じがするぐらいです。 ストーリーは後半からガラッと変わってこの駆逐艦が特殊作戦に加わってフランスのドイツ軍港に突入することになります。これはサン・ナザール軍港に突入して艦ごとドックをふっ飛ばした「チャリオット作戦」の史実に基づいています。つまりこの映画のHMSベントレーという駆逐艦は、実はこの作戦で戦史に名を遺したHMSキャンベルタウンだったというわけです。偽装のために煙突を二本に減らしたり突入後は艦長以下の生き残りが捕虜になって終わるところなんかは史実通りですけど、作戦名や細かい部分は架空になっています。当時はまだ戦後まもなくなので、こういう特殊作戦については機密解除になっていなっかったからなのかと推測されます。そういう事情もあってか、この突入作戦をメインに出来なかったので牧歌的ですらある前半部との継ぎはぎ感はけっこう半端ないですね。まあそこら辺にこの映画の味があると言えなくもないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-02-11 22:39:10)
58.  赤裸々な事実 《ネタバレ》 
スキャンダル雑誌の編集者にネタをつかまれて脅迫された名士たちが被害者同盟を組んで編集者を殺そうとするけど、なかなかこの男がしぶといというか名士たちがかなりのドジ揃いでちっとも上手くゆかないというお話。ネタを掴まれた4人は人気芸人・保険会社社長・女流推理作家・モデルといった顔ぶれですが、はじめは4人とも互いを知らずバラバラに動きます。また編集者を殺そうとするのはそのうちの芸人と推理作家で、社長とモデルはただあたふたしてるだけ。という接点のない4人がついにグループを結成して奇想天外な行動に出るまでの過程がなかなか可笑しいです。ピーター・セラーズは芸人役でお得意の変装芸を駆使して笑いをとりますが、変装と言っても後年の破天荒なやつとは違って髭をつけて老けるぐらいのものです。そのセラーズを意外なことに喰ってしまったのが保険会社社長のテリー・トーマスで、正直彼の方が面白かったといえます。 ラストに仕掛ける大作戦がちょっと奇抜でそこからの展開だけはスピーディなんですけど、中盤までがかなりもったりし過ぎていたのは良くなかったですね。そして期待していたブラック風味もかなり薄味だったところもマイナスだったと思います。
[DVD(字幕)] 5点(2016-12-09 23:47:58)
59.  ボディ・スナッチャー/恐怖の街 《ネタバレ》 
現代の感覚からではSF映画としてはプロットなどに突っ込みどころ満載ですけど、ポリティカル・スリラーという視点で観るとこれほど不安心をかきたててくれる映画は滅多にないと思います。また何度もリメイクされているし、何よりこの映画のフォロワーとして位置付けられる作品に至っては数知れずで、映画史に残るB級映画の金字塔です。 全体主義体制・共産主義社会の恐ろしさを描いた文学作品としてはオーウェルの『1984』が有名ですが、こんな低予算のB級SFでも匹敵するような影響を与えることができたというところが映画の面白いところです。劇中で乗っ取られた者とそうでない者との会話は、もう暗喩にすらなっていなくて当時の全米に蔓延していた共産主義アレルギーをストレートにセリフにしているかのようです。低予算にしてはカメラワークが実にシャープなのも見どころの一つです。たとえば町の広場にさやを受け取るために住民が集まっているシーン、診療所の二階から広場を見下ろす固定された視点で見せますが、ロングスパンで見せられるその風景にはゾクゾクさせられるような恐怖を感じてしまいます。また夜の映像が鮮明でメリハリがあり、夜間シーンになると何が映ってるかわからなくなる最近のヘボ監督たちは見習ってほしいです。 ラストのハッピーエンド(?)だけは夢オチ並みに鼻白まされますけど、ここは50年代の映画ということで許してやってください。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-08-18 22:08:46)(良:1票)
60.  橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) 《ネタバレ》 
50年以上前に撮られた映画ですけど、いわば『フューリー』をドイツ側から描いたような内容です。1945年4月27日(ヒトラーが自殺する三日前、ドイツが無条件降伏する10日前)に戦闘に巻き込まれてほぼ全滅する7人の少年兵たちの悲劇ですが、観るたびに太平洋戦争が本土決戦の寸前で終わってほんと良かったなと感じます。 前半はかなりダレダレな出来のような気がします。いくら西部戦線とはいってもすでにドイツ本土に連合軍が攻め入っている時期にあんなのんびりした生活をしていたとは、ちょっと信じ難いところがあります。なんせ女学生たちがブルマ穿いて体育の授業ですからね(笑)。まあここにはストーリーテリング上の仕掛けがあると思います。同時期のドイツ東部ではソ連軍がベルリンに向けて突進中で、その民間人に対する残虐ぶりで住民たちはパニックになっています。その地方が舞台なら“郷土と家族を守るために必死に戦う少年たち”という英雄的なストーリーになりがちで、相手が米軍ということになると彼らの無駄死に感がより強調されることになるのでしょう(史実でもソ連軍に撃破されるよりは米英軍に投降することを選ぶ部隊が続出しています)。 後半の戦闘シーンになるといっきにシビアな展開になります。でもあのシャーマン戦車もどきだけは何とかしてほしかったですね、いちおう動くキャタピラはついていますが見え見えの張りぼて、おまけに車体の底には芯にしているトラックのタイヤがはっきり見えているんですから。と思えば、パンツァーファウストを撃ったら真後ろにいた民間人が噴射炎で黒焦げになったりして、妙に兵器考証に凝ったところもありました。 いかにもドイツ映画らしい不条理かつ虚無的なラストでしたが、少年兵に射殺されちゃう爆破係りの兵士は可哀想な感じもします。ちょっと口が悪いだけで、なんも悪いことしてないと思うんですけど…
[DVD(字幕)] 7点(2016-08-14 20:12:03)
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