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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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601.  ロールスロイスに銀の銃
この映画が『バッド・ボーイズ』の原型で“元祖・バディムーヴィー”と言うことなんだそうだが、現在の眼で観れば単なるテンポの悪い刑事ものでしかありません。なんでも初めてハーレムでロケした映画という名誉もあるそうですが、そりゃ当時の治安状況を考えれば黒人監督じゃないとムリだったでしょうね。棺桶エドと墓掘りジョーンズの刑事コンビも今の視点では単なる類型的すぎるキャラにすぎませんが、何しろこの二人を演じる俳優の演技が酷すぎる。アクションのキレも悪いし、要はこの監督の演出力の問題ということになるでしょう。オシー・デイヴィスといえば監督としてよりもスパイク・リー作品の常連俳優としてのイメージの方が強いわけで、映画監督としての力量は大したことなかったというのが実情だったみたいです。せめてもう少しキレのある脚本だったら傑作になったかもしれない素材だけに、惜しいことしました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2019-05-11 23:05:23)
602.  エルマー・ガントリー/魅せられた男 《ネタバレ》 
テーマ自体が大多数の日本人には縁遠いというか嫌悪感を催すことなので、評価されにくいでしょう。この映画で描かれているのはプロテスタント信仰であり、同じアメリカ人でもカトリック信者はこういう狂信的な信仰を嫌うところは日本人以上かもしれません。伝道師のジーン・シモンズの言動には“危ない人”としか思えない部分もあり、とてもじゃないけど感情移入しがたいです。その半面、バート・ランカスターが演じるエルマー・ガントリーは過剰なほど人間味があふれるキャラです。本作でのランカスターの驚異の弁舌力はもう圧巻です。彼がその能力を活かして宗教界の大立者になってゆくストーリーだと思っていたら、実はそう単純なお話しではなかったというのが、この映画のひねったところかもしれません。脇で新聞記者らしからぬ冷静な視点でシモンズとランカスターを追ってゆくアーサー・ケネディもなかなか良い味を出していました。シモンズが奇跡らしきものを起こした途端に失火で教会が焼け落ちるラストの展開も、「お前、調子に乗るんじゃないぞ!」という神様の怒りが爆発したみたいに感じませんかね?そう考えると信仰に対するけっこうシニカルなニュアンスも垣間見られる気もしますし、もっと評価されても良いんじゃないかと思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2019-05-08 23:38:12)
603.  オーシャンズ8 《ネタバレ》 
ネタ切れに苦しむハリウッドが患う“過去ヒット作の女性版リメイク症候群”がオーシャンズ・シリーズにまで伝染してきたって感じなのかな。ダニー・オーシャンの妹デビー・オーシャンというのはベタ過ぎて笑えますが、確かにこの脚本はいろんな面でひどすぎる。ダニー・オーシャンのお仲間からルーベンとイェンをスペシャル・ゲストで迎えたり音楽はオーシャンズ・シリーズに寄せまくったりで雰囲気だけは盛り上げようと努力しているのは認めますが、ソダーバーグが持っていたセンスには全然及ばないんだよな。女優陣はもちろん豪華ですが、私のツボを刺激してくれたのはアン・ハサウェイでした。彼女のキャラは最近ハリウッドで評判が悪い自身のセルフ・パロディみたい、そんな役をゲロ吐きまでして愉しんで(?)演じていたような感じがしました。そしてサンドラ・ブロック、彼女の開幕直後とラストのメイクとヘアスタイルを見ていると、なんか80年代のマイケル・ジャクソン見ているみたいだと感じたのは、私だけでしょうか(笑)。まあ連休中の暇つぶしには丁度いいのかもしれません。 この映画を観終わっての最大の疑問…果たしてダニー・オーシャンはほんとに死んだのだろうか?
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-05-03 23:39:17)
604.  黒い家(1999) 《ネタバレ》 
原作未読なのでどこまで脚色されているのかはわかりませんが、噂の大竹しのぶの壊れっぷりにはほんとにゾッとさせられました。平成ももうすぐ終わりますが、その31年間の日本映画の中で最凶の怪演であることは間違いないでしょう。例の「乳吸え~」は誰が見ても別人なのはバレバレですけど、中盤の病院のシーンあたりから大竹しのぶが突然巨乳になっているのが笑えます。ラストの「乳吸え~」に備えての小細工だったんでしょうけど、若いころは平気で脱いでたくせにと怒りたくもなります。ぶっちゃけ歳とってボディラインが崩れてるので、熟女女優の方が脱ぎたがらないのかな。前半は大竹しのぶがあまり登場しないので余計になのかもしれませんが、西村雅彦もかなり気持ち悪かったですよね。 監督が森田芳光なので相変わらず奇をてらったショットの多用は平常運転です。でも若いころの才気が無くなってきてるのは顕著に感じられます、なんせ次回作が『模倣犯』ですからねえ。一番イライラさせられたのは内野聖陽のビビりキャラぶりで、あんなにガタイのいいイケメンがこの役とは、どう考えてもミスキャストだったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-04-29 22:49:16)
605.  恋のスクランブル 《ネタバレ》 
名門私立高校のルームメイト、アンドリュー・マッカーシーとロブ・ロウの友情物語と思わせておいて、途中からジャクリーン・ビセットが登場してからが思わぬ展開となります。マッカーシーの童貞をジャクリーン・ビセットが頂戴してイイ関係になりますが、実は彼女はロブ・ロウの母親でしたっていうちょっと出来過ぎなお話しでもあります。面白いのは男優ふたりのキャラ付けで、マッカーシーが庶民階級の一見まじめな少年でロウはセレブな家のボンボンな息子なんですが、中盤からキャラ転してマッカーシーの方がセコイ手を使ってハーヴァードに合格するこずるい奴になってしまいます。ロウの方が母親とルームメイトの関係を知って真面目に苦悩しますが、ラストで二人は殴り合いの大げんかをして仲直り。この映画ではジャクリーン・ビセットはほとんどアル中でニンフォマニアみたいなキャラですので、「悪いのはすべてこの女」みたいにされるのでちょっと後味は悪いです。面白いのはジョンを始めとするキューザック親子が総出演しているところで、ジョン・キューザックなんて相当若いころだと思いますけど、今とほとんど同じ顔なのですぐ判りました。チョイ役でヴァージニア・マドセンも顔を出しますが、驚くほど安易な展開でおっぱいポロリを見せてくれるのでなんか可哀そうになります。そう考えると、この映画はけっこう豪華な出演陣(今となってはですが)だと言えます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-04-27 23:37:39)
606.  ボディヒート(1992) 《ネタバレ》 
まだヤサグレていたころのドリュー・バリモアをフューチャーしたエロ・サスペンスですが、このときバリモアなんと17歳!もうエロ貫禄十分、この歳で酒・男・薬を極めた女のふてぶてしいまでの迫力は見ものです。といっても脱ぎがあるわけではありません、さすがのハリウッドも未成年を脱がすわけにはいかなかったんでしょうね。他のレヴュアーの方々と同じく、わたくしめもディカプリオを見つけることが叶いませんでした。この時の年齢は18歳ぐらいですから、出ているとしたら冒頭の森の中のブランコあたりのシーンのはずですがね。 バリモア自身はなかなか良い演技だとは思いますけど、根本的にお話しがつまらなすぎです。アイヴィーを単なるサイコパスという風に演じなかったのはこれはこれでバリモアの識見でしょうが、それじゃあサスペンスが成立しにくいし、ドロドロの三角関係としてはパンチがないし、要は中途半端なんです。あとトム・スケリットのキャラもどうかと思いますね、単なるスケベで俗っぽい中年オヤジとしか思えないので脚本としては失敗でしょう。 “暇つぶし用映画“として観れば、可もなく不可もなくというのがせいぜいです。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2019-04-24 19:52:23)
607.  セブン・シスターズ 《ネタバレ》 
発想は奇想天外、ノオミ・ラパスの一人七役は彼女の演技力なくしては成立しなかったんじゃないでしょうか。これはボブ・ディランを六人の男・女優が演じ分けた『アイム・ノット・ゼア』の真逆の発想でもありますが、やっぱ本作の方が主演女優のチョイスが難しくて製作のハードルは高いとおもいます。7人のキャラ分けも「こうするしかない」というほどきっちりしていますが、オタク系でITに強い子が“フライデー”というのだけはどうなんでしょうか?あれでは銀行でキャリア・ウーマンを演じるのはキツいだろうし、どうせならお休みの“サタデー”か“サンデー”にした方が良かったんじゃないでしょうか。それともこの映画の世界では休日が金曜日に変わっているのかな、それじゃイスラム教です(笑)。 あまりネタバレするので詳しくは書けませんが、七人姉妹は過酷な試練にさらされます。そして重要なのは、このお話しは実はナチスのユダヤ人迫害の暗喩となっているのです。まず“セットマン”というファミリーネームからしてユダヤ風ですし、彼女らが暮らす貧民街(?)の描写もまるでワルシャワ・ゲットーを彷彿させるところがあります。見つかると連行されてしまう第二子以降の子供たちは当然ユダヤ人のオマージュですし、隔離局という政府機構はナチス親衛隊かゲシュタポをイメージさせられます。そこに気が付くと、冷凍保存されているはずの子供たちの運命もおのずと予想できるでしょう。そういうこともあり、観終わったらいちおうハッピーエンドではあるのですが、背筋に寒気が残ってしょうがなかったのは事実です。でもこれはとても秀逸な脚本だとおもいます。 ラストでコールドスリープの実態を知った民衆によってグレン・クローズは失脚して死刑になることを暗示して映画はおわります。そこでふと考えたのは、もしヒトラーのユダヤ人虐殺を当時のドイツの民衆が知ったら、果たしてナチス打倒の動きは起こっただろうか、ということです。私は決してそういうことは起こらなかったろうと確信します。なぜなら普通のドイツ人もユダヤ人虐殺にはうすうす感づいていたし、またドイツ国民はユダヤ人排斥で経済的利益を得ていたからです。この映画の閉じ方は、ある意味でドイツ人への強烈なあてこすりなのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-19 23:50:29)(良:1票)
608.  ゆれる人魚 《ネタバレ》 
人魚って肉食、実は人肉が好物だったんですね、怖~。 バルト海の海岸からバンドマンに惹かれて陸に上がってきた人魚姉妹シルバーとゴールデン(金髪の姉がシルバーで黒髪の妹がゴールデンというのがややこしい)、二人がナイトクラブの人気デュオとなってゆく前半は、普通の監督なら人魚の青春ミュージカルに持ってゆくところですが、これを無理やりグロホラーに仕立てるのはこの女性監督ちょっとヘン、でも個人的にはこのセンス好きです。音楽センスも抜群で、ポリッシュ・テクノを基調としながらもポリッシュ・パンクまで聞かせていただき満足の極みです。主演の姉妹は考えてみると登場シーンの半分はヌードという頑張りようですが、二人ともボディスタイルはイマイチだったのがちょっと残念でした。金髪の姉の方がバンドマンと恋して人間になろうと臍から下のお魚パーツをぶった切って人間パーツを移植する(人間パーツを提供することになった女性はどうなっちゃんでしょうか?)ことまでするのに、他の女と結婚しちゃう男はちょっと酷すぎ。でも警告されていたのに、裏切った男の胸に抱かれて海の泡となって滅びてゆく彼女の見せた優しい表情には、ちょっと涙腺が緩んでしまいました。 中盤で監督のイメージが暴走してストーリーが収拾つかなくなったのは残念で、これがなかったらもっと高得点だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-04-14 22:51:03)
609.  資金源強奪 《ネタバレ》 
これは面白い、私にとって何年かに一度巡り合う“期待しないで観たけど実は傑作だった”映画の一本でした。組のために殺人犯になり8年間服役した北王子欣也が、ムショで知り合った川谷拓三と室田日出男を仲間にして組の賭場を襲撃して大金を強奪するが、その後に起こるヤクザと悪徳刑事との三つ巴の強奪金争奪戦というのがプロットです。まず特筆すべきはスピィーディな脚本とその切れ味で、登場人物はほぼ全員が悪人で仲間同士でも裏切りあいの連続、それも二転三転が劇中ずっと続いて息もつかせぬ展開とはまさにこれです。松方弘樹と山城新伍は友情出演でしたが山城の登場するシーンは抱腹絶倒で、「ここにいる一般の人は店を出ろ、おい、なんでお前も出てくんだ」山城「ええ、私も前科一犯ですから」、これには参りました(意外とこれは山城のアドリブだったりして)。川谷と室田はこれまでその他大勢的な役者でしたが本作で初めて準主役としてピックアップされ、ここから二人の日本映画界での活躍が始まったと言えるでしょう。北王子欣也も高倉健的なストイックなキャラと見せかけて実は情婦も仲間も裏切る人間臭いキャラ、そこに悪徳刑事の梅宮辰夫が絶妙な軽さで絡んでくる、要は登場人物のキャラがみな立ちまくっているんです。ラストの展開もちょっと洒落てましたね。 監督はもちろん深作欣二ですが、なぜかクレジット表記はひらがなの“ふかさくきんじ”となっています。これは舞台裏で東映といろいろなゴタゴタがあったからだそうで、三年後には両者は訣別ということになります。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-04-11 23:29:02)
610.  マンハッタン無宿 《ネタバレ》 
むかしTV放映で観ているはずなのに、ストーリーも何も全然記憶に残っていない、おかげで新鮮な気持ちで観ることができました(笑)。マカロニ映画界隈から復帰したころのイーストウッドですが、当然ながら若いですし何より「こんなにイーストウッドってイケメンだったっっけ」と感嘆するほどの美男子ぶりです。なので、まるでジェームズ・ボンドばりに出会う女性とヤリまくる展開はもっともです(納得するな!)。よく“西部劇の現代版”とか“ダーティハリーの原型”とか本作は評されることが多いですが、私にはどちらも適切な評だとは思えません。だってNYで早々に拳銃を奪われるし、劇中イーストウッドはガンを撃つことはおろかずっと丸腰だったわけで、普通の西部劇や刑事ものの主人公としてはあり得ないでしょう。おまけに格闘してもほぼイーストウッドは全敗、これじゃあ私の記憶から欠落してしまうの無理ないです。私の中では“イーストウッド=ガメラ”という分類なんですが、その心は“どちらも相手と闘うときはけっこうダメージを受けて血を流す”なんですが、本作のイーストウッドはいくら何でも弱すぎでしょ。極めつけはラストの犯人逮捕で、バイク転倒でダメージくらったけど、いったん逃げ切った犯人がパトカーを見て引き返したおかげ(なにも同じところに戻ってこなくても…)じゃないですか。そもそもこの犯人がどんな罪を犯したのかすらスルーしているから、イーストウッドがなんで無茶してまで病院から連行しようとするのか理解しづらいし感情移入もできません。 よく考えると、この映画の中では誰も死んだり殺されたりしませんでした。こんな刑事アクションは非常に珍しく、当時の“Love & Peace”の社会風潮を反映させた脚本だったのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2019-04-09 23:24:16)
611.  かわいい毒草 《ネタバレ》 
この映画を要約すると“妄想癖の男とサイコパス女のボーイ・ミーツ・ガール物語”というところでしょうが、アンソニー・パーキンスはどちらかというと統合失調症と見た方がよく、製作者側もパーキンスを“精神病院からでてきたノーマン・ベイツ”と観客に感じてもらうことを期待しているのは見え見えです。ハリウッドを逃げ出して『サイコ』から8年ぶりに復帰したキャラがこれで、完全にハリウッドでの彼の立ち位置が決まってしまったわけで、ちょっと可哀そうともいえます。彼は中盤以降で完全にサイコパスJKであるチューズディ・ウェルドに翻弄されることになるのですけど、主演カップルがどちらもヘンという設定が逆にサスペンスを弱めることになってしまったのは歴然です。サイコパス少女が主人公というと『悪い種子』がどうしても連想されますが、チューズディ・ウェルドは『悪い種子』のパティ・マコーマックの映画史に残る邪悪さには足元にも及びません。もはや完全にあっちの世界に行ってしまったけど、彼女の罪をかぶってムショにぶち込まれることを選択するパーキンスがちょっと哀れすぎます。それでも自分を唯一理解してくれる保護司には、禅問答のような会話で「あの女から目を離すな」というメッセージを伝えるところなんかはパーキンスの上手さが垣間見えました。 チューズディ・ウェルドという女優はローティーンのころに起用された“セブンアップ”のCMで物議をかもして一躍有名になったそうです。取り調べのシーンで刑事からコカ・コーラ(さすがにセブンアップではなかった)をわざとらしい感じで勧められチラッと笑顔を見せます。これは米国人の観客ならだれでも判る楽屋落ちなんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-04-05 23:43:38)
612.  ロリ・マドンナ戦争 《ネタバレ》 
アパラチア山脈のふもとで暮らすフェザー家とガッシャル家はお隣同士(山の中だから土地は隣接していても家自体は数キロ離れている)、農業や牧畜で生計をたてるいわゆるヒルビリーと呼ばれる人たちです。フェザー家の家長はロッド・スタイガーで家族構成は夫婦と五人の息子、同じくガッシャル家はロバート・ライアン夫婦と四人の息子と娘が一人。牧草地の権利をめぐってとくに親父同士は非常に仲が悪いが、子供たちはフェザー家の次男とガッシャル家の娘がつきあってたりしている。ここでガッシャル家がつまらない悪戯をフェザー家に仕掛けます。フェザーの兄弟がガッシャルの郵便を盗んでいることを逆手にとってロリ・マドンナという架空の娘が長男に出した偽ラブレターを盗ませます。この悪戯がたまたまバスの乗り換えのために当地に降りた無関係の娘を巻き込み、事態は血で血を洗うとんでもない事態になってしまいます。 プロット自体は『ロミオとジュリエット』を思わせるところもありますが、どちらかというと国家間の紛争が発生するシステムを暗喩していると考えた方が正解でしょう。公開当時は「この映画はベトナム戦争をあてこすっている」と評されたそうですが、それも正当な観方でしょう。経済力としては廃車寸前のピックアップ・トラックが象徴するようにフェザー家の方が劣勢で(ガッシャル家は時代にあったステーションワゴン)、これにはロッド・スタイガーの個性も原因の一つです。彼はとても偏屈で暴力的なキャラで、ここまでひどくなってしまったわけが物語の後半で明らかになりますが、ここは名優ロッド・スタイガーの演技を堪能してください。フェザー兄弟にはジェフ・ブリッジスやエド・ローター、そしてランディ・クエイドといった有名俳優(今となってはですが)がいますが、やはりジェフ・ブリッジスとエド・ローターは光ってますね。ガッシャル兄妹にはゲイリー・ビューシィがいますが、あのゲイリー・ビューシィが両家の和平交渉役を買って出る登場人物の中でもっとも平和的・理性的なキャラを演じているというのが面白いです。けっきょく男手の差がものを言ったのか、母親まで殺され兄弟全滅で娘は家を飛び出して去るというガッシャル家の敗北という感じですが、フェザー家も父親が長男を殺してついには廃人のようになってしまい、これはもう勝った負けたの問題じゃ済まないところまでエスカレートした空しい、いかにもアメリカン・ニューシネマの時代らしい幕の閉じ方でした。 実は原作小説は実話をもとにしていて、ハットフィールド家vsマッコイ家の10年にわたる抗争としてアメリカ史では有名なんだそうです。2012年にはケヴィン・コスナー主演で“Hatfields & McCoys”としてTVミニシリーズ化されています。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-31 22:41:05)
613.  バッジ373 《ネタバレ》 
本作も『銃犯罪特捜班/ザ。セブン・アップス』と同じく『フレンチ・コネクション』のスピンアウトとみなしてよろしいんじゃないでしょうか。『フレンチ・コネクション』のドイル刑事のモデルとなったエディ・イーガンが原案を出し準主役級で出演までしています。自身をモデルにした主人公キャラはロバート・デュバルが起用されています。 刑事ものにしては妙に社会派ぶったお話しで、悪役はプエルトリコ人のギャングとプエルトリコで革命を起こそうとたくらむ過激派です。ここら辺の事情は、作家のピート・ハミルが脚本に参加しているのが影響しているのかもしれません。ロバート・デュバルが演じるエディ・ライアン刑事が麻薬捜査の手入れで追い詰めたプエルトリコ人のチンピラが転落死してしまい、この手の映画でお約束の停職になるところからスタートです。停職中に相棒刑事が殺害され、拳銃どころかバッジすら持ってないのにライアン刑事は勝手に捜査し始めます。 この映画は脚本だけじゃなく、そもそもロバート・デュバルを主演に持ってきたことが最大の失敗です。もちろんこの人は名優ですけど、刑事役でアクションする柄ではないってことです。考えるに、カーク・ダグラスやバート・ランカスターが盛りを過ぎた70年代は、ハリウッドでアクションがさまになる大物中年男優がほとんどいなかった時代だったんじゃないかな。しいて言えばそのポジションを守っていたのはバート・レイノルズぐらいかもしれませんが、ちょっと小物(失礼)ですよね。この状況は80年代にブルース・ウィリスがブレイクするまで続いたわけです。デュバル本人にやる気があったのかは疑問ですが、犯人を追っかけたりする最低限のアクションも鈍重なんです。またこの刑事にはいい面でも悪い面でも感情移入できる要素が皆無なのが弱みです。唯一のアクション見せ場であるデュバルが運転する路線バスと追う過激派とのカーチェイスも、彼が勝手に乗り込んできて乗客を乗せたまま逃げ回るんですから、乗っている方としてはたまったもんじゃありません。けっきょくバスから引きずり降ろされてボコボコにされてしまうんですから、観ていてほんと疲れます。 社会派的な要素があるのでラストの結末にはカタルシスはゼロ、でもラストショットだけは『ダーティハリー』のモロパクリ、なんとも志の低い映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2019-03-29 23:43:40)
614.  ノック・ノック 《ネタバレ》 
これはあのカルト映画『メイク・アップ』の完全なリメイクですね。オリジナルのイカレ女コンビのソンドラ・ロックとコリーン・キャンプがそれぞれ製作陣で参加していますし、コリーン・キャンプはワン・シーンですが出演すらしています。それがまた驚くような変貌ぶり、完璧なメタボ中年おばさんですからねえ。最近はプロデューサー業に進出しているそうですが、『地獄の黙示録』のミス五月がここまで行くとはもう絶句です。あとオリジナルの監督まで製作総指揮ですから、これはまるで同窓会ですよ。それをカルト映画のリメイクが趣味みたいなイーライ・ロスが撮っていますのでその不快感は当社比120%、これは『ファニーゲーム』を超えてるんじゃないかな。 ここまで弱っちくて情けないキアヌ・リーヴスを見せられたら、女性ファンは悲鳴を上げるでしょう。ふつうのハリウッド・セレブならこんな役オファーが来たら即拒否でしょうが、キアヌ・リーヴスは自ら製作総指揮で陣頭に立つぐらいですからやる気満々、この人実はマゾ性癖なんじゃないでしょうか(笑)。こういうキャラは影で悪事を働いていたりして何かしら弱みがある設定がふつうですが、この映画のキアヌくんはあまりに非の打ち所がない善人なので、あまりの理不尽な仕打ちをされるのを見せられると、同情よりも糞女たちへの怒りが倍加させられます。どこかで反撃に移りジョン・ウィック化するはずだと誰もがハラハラしながら観続けると思いますが、イイ線行くかと思わせておいてキアヌくんは肝心なところではドジを踏んでばかり、あの無情なラストはそれこそ『ファニーゲーム』に通じるところがあります。ちょっと疑問だったのはイカレ女たちがキアヌくんの友人を殺しちゃってるところで、もし殺しがなかったらあのラストは超絶ブラックですけどブラック・ユーモアとして閉じることもでき、その方が後味が良かったんじゃないでしょうか。私は未見ですが話によるとオリジナルのラストはちょっとスカッとするそうで、そこを踏襲しなかったのはいかにもイーライ・ロスらしい感じがします。 最近知りましたが、ソンドラ・ロックは昨年11月に亡くなったそうです。でも今年のアカデミー賞授賞式の追悼コーナーでは取り上げられていませんでした。イーストウッドと揉めたので、アカデミー協会に嫌われていたのかな、でもちょっと寂しいですね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-03-27 23:39:49)(良:1票)
615.  魔界転生(1981) 《ネタバレ》 
この映画を製作後40年近く経っても人々の記憶に残っているのは、やはり千葉真一の柳生十兵衛と沢田研二の天草四郎の対決というインパクトがなせる業でしょう。千葉真一の十兵衛はこの映画で四度目のとなる彼の当たり役、でもこの一作しかないんですけど沢田研二の天草四郎も映画スター・ジュリーが演じたもっとも有名なキャラとして日本映画史に君臨しています。本作でのジュリーの存在感は半端なしで、真田広之とのキス・シーンまでありその妖艶な色気はクラクラさせられます。原作を大胆にアレンジしたストーリー(細川ガラシャまで登場させるところなぞ、原作者の山田風太郎は絶賛していたそうです)には、江戸時代初期の有名人や事件がてんこ盛り状態、佐倉惣五郎や刀匠村正まで登場し最後は明暦の大火で江戸城天守閣炎上ですからねえ。この炎上する江戸城内での十兵衛と但馬守の柳生親子対決の迫力といったら壮絶です。若山富三郎といえば殺陣の技は日本映画史上ナンバーワンとの呼び声ですから、千葉真一との対決はまさにドリームマッチです。このシーン、炎上する室内と役者の合成が偉く上手いなと感心してたら、なんとほんとにセットを燃やして撮ったそうで、もうクレイジーとしか言いようがないです。そんな危険な現場で無傷でチャンバラできるのは、そりゃ千葉真一と若山富三郎しかいませんよ、ジュリーに至っては軽く火傷したそうです。 この映画こそ、毀誉褒貶のある角川映画が残した最高傑作だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-03-23 23:32:51)(良:1票)
616.  水爆と深海の怪物 《ネタバレ》 
正体不明の何かに捕まって九死に一生を得る危機にあった原子力潜水艦、つかみはまあOKです。ところがこの原潜艦長が真相究明をほったらかして女性科学者とイチャイチャし始めるから、観てる方とすればもうドン引きです。この女性も、これまた無駄にイケメンの同僚博士ともそれっぽい雰囲気で、開幕10分でもう「なんなん、これはいったい何の映画なの?」と絶叫したくなります。いきなり三角関係を見せられるとは、特撮モンスター映画にしては珍しい展開です。肝心のタコはサンフランシスコ上陸の場面でその全貌が明らかになりますが超巨大タコでしかも六本足、いくら何でもデカすぎだろ。このタコは放射能で巨大化したわけではなく、水爆実験でフィリピン海溝の生活環境が破壊されたので浅海に出現したという不自然な説明(いちおう放射能は帯びた体にはなっている)、「最近はなんでも水爆のせいにしたがる」なんてセリフまであります。これは撮影に協力してくれた軍部というか海軍に忖度した結果だと推測できますが、けっきょく大ダコ退治に活躍したのは海軍だけで陸軍の登場はないも同然という展開には苦笑させられます。ハリーハウゼンは低予算ながらも精一杯頑張った仕事ぶりですが、いっそのこと水爆実験で放射能を浴びて巨大化し六本足に突然変異したという説明の方がすっきりしたと思います。最後は原潜が魚雷を撃ち込んで大爆発というのが大ダコの最期ですが、「JAWS」のサメの最期はスピルバーグのこの映画へのオマージュなのかもしれません。 「タコが主役の怪獣映画は駄作しかない」というのが私の持論ですが、この元祖タコ怪獣映画にも見事にあてはまりました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2019-03-19 22:38:55)
617.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
屈辱の『サンダードーム』から30年、突如としてマックス・ロカタンスキーが我々の前に帰ってきた!老いぼれてしまったメル・ギブソンは当然使えないとして、二代目マックスを拝命したのがトム・ハーディ、まるでこの人はマックスを演じるために俳優を職業にしていたかのような馴染み具合です。冒頭でいきなり愛車を分捕られて泣き別れ、鉄格子のマスクをつけられて人間輸血袋にされるなどはけっこう今までのマックス像を塗り替えるような展開でした。そしてシリーズの特色だった女気のなさもシャリーズ・セロンや美形アマゾネス(?)を活躍させることでついに汚名返上となったわけです。でもそんな俳優たちの演技に目を向ける余裕がないほどの驚異的なカット数、映像の放つ情報量はすさまじいレベルに達しています。もちろんCGのヘルプもありますが異形のバギー&タンクローリー&バイクの実車を使った迫力は息をのむほどで、そもそもこの映画の三分の二は疾走シーンなんじゃないかな。マックスにフラッシュバックする過去やフュリオサが片腕を喪失した事情など、細かいことは敢えて語らないストーリーテリングも好きです。 ほんとに「行って帰ってくる」だけの単純なお話しなんですがこれは『2』以降に共通したコンセプトで、それを35年かけてここまで昇華させたジョージ・ミラーは大した奴です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-03-18 21:48:39)(良:1票)
618.  アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 《ネタバレ》 
邪道だと判ってますけど、100分程度の映画なのにあまりの緊張感に圧倒され時間をかけて三回にわけて観ることになってしまいました。これを映画館で観ていたら、最後まで席に座っていられる自信は私にはありません。ここまで緊張感で圧倒された映画は今まで『未知への飛行』しかありませんでしたが、よく考えるとこの映画は『未知への飛行』とストーリーテリングに共通しているところがあります。第三次世界大戦勃発の危機を会議室と作戦室だけを舞台にして描いているのが『未知への飛行』ですから、誰からも攻撃を受ける危険のない英米の三か所から軍事作戦を遂行する本作の製作意図が影響を受けていることは間違いないでしょう。さらにこの映画ではハラハラドキドキ要素が強烈なので、緊迫感が半端ない水準にまで強くなっています。そのハラハラ要因は言うまでもなくパン売りの少女の運命ですが、あの結末はハリウッド映画では絶対にありえないでしょう。 「誰もが真面目に職務遂行しているのに、その結果はとてつもなく後味が悪い」というのが両作のエッセンスですが、本作の場合はそこに官僚的な責任転嫁という人間的な弱さも登場キャラの言動に加味されているので、よりリアルです。ここにはヘンリー・フォンダが演じる大統領の様に、途轍もなく過酷な決断を下してその責任を背負い込むような人物は存在しないのですけど、それこそが現実というものでしょう。 現代のハイテク戦争の一端がうかがえるのは興味深かったです。中でも“偵察用ロボ昆虫”には驚きました、本当にこんなメカが存在するんでしょうかね。そして考えさせられたのは、また昔に戻るかもしれないけれど、現在進行中の対テロ戦争はもはや古い戦争という概念が通用しない警察活動に近い代物なんだということです。“非対称戦争”という概念がありますが、敵には殺意いがいは大した武器を持たず低速で飛ぶドローンを撃墜することすらできない。地上兵力を投入して徹底的にやれば必勝ですが、大国は人的損害というリスクがとれないので指揮官だけじゃなく兵士までもが安全な職場から攻撃するわけです。これでは人命になんの価値も持っていない集団と戦っても勝利できるのか疑問です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-03-14 23:20:00)(良:1票)
619.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
製作費が300万円ということですが、ほとんど映画らしい手間をかけていないPOV映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の6万ドルや『パラノーマル・アクティビティ』の1万5000ドルと比較すれば予算の割には登場人物も多くて普通の映画だと思います。逆に言うと、300万円でこれだけの映画が撮れちゃう日本の映画製作状況が心配になります。俳優さんたちはギャラなんてほとんどもらってないんじゃないかな。 冒頭の長回しの他はとくに目新しいアイデアは使われていないけど、映画として普通に面白い。「ネットで話題沸騰!」ということで大ヒットしたわけですが、若いネット民やマスコミには長回しというスタイルがよほど新鮮に感じたみたい、ヒッチコックなんか70年も前に全編ワンカットという手法(厳密にはワンカット風)で『ロープ』を撮っているのを知らないみたいです。私はそれよりも、全編に映画愛が濃厚にあふれているところが気に入りました。トリュフォーの『映画に愛をこめて/アメリカの夜』の日本版がついに誕生したとさえ私は感じています。ラストで人間ピラミッドが崩れた後に俳優たちが見せるさわやかな笑顔には、胸がキュンとしてしまいました。 最近の地上波では血が画面に映るのはご法度で放映できない映画がたくさんあると聞いていたので、劇中劇のフェイク・ブラッドとは言えこれだけ流血シーンや首チョンパまである本作が放映されたことには驚きです。数字が稼げてスポンサーがつくなら原理原則なんて糞くらえというというのはいかにもTVらしいところですが、そんならもっとゾンビ系やスプラッター系を放映しろよと言っておきます。もっとも自分としては、地上波で映画を観ることは滅多になくなってますけどね。
[地上波(邦画)] 8点(2019-03-10 21:41:01)
620.  太平洋戦争 謎の戦艦陸奥 《ネタバレ》 
戦艦陸奥は、ワシントン条約が有効だった1930年代まではビッグ・セブンと呼ばれた世界に7隻しか存在しなかった40センチ砲を装備した最強戦艦の一隻、大和・武蔵が国民には秘密にされていたので、長門と陸奥は戦前では日本人なら誰でも知っていた海軍のシンボル的存在です。そんな陸奥ですが昭和18年に瀬戸内海に停泊中に大爆発を起こして沈没、1000人以上の犠牲者を出しました。実は旧海軍では明治時代から爆沈事故が定期的に起きていて(三笠も実は爆沈事故で一度沈んでいる)戦艦クラスでは陸奥が5隻目、これは他国の海軍では見られない旧帝国海軍の最大の恥部だと言われています。けっきょく海軍の秘密主義もあり徹底的な調査はされず陸奥の爆沈は原因不明となりましたが、他の4隻と同じく人為的な要素が原因(つまり放火ですね)じゃないかとも言われているけど真相は不明です。 その陸奥の爆沈事故を唖然とするようなミステリー仕立ての大胆な脚色で映像化したのが本作、これは日本戦争映画史に残る怪作です。よく「虚実織り交ぜて」といわれる手法がありますが、この映画の場合「虚」だけでなく「実」の部分までいい加減な脚本なので疲れます。まずミッドウェー海戦のところから話が始まりますが、セリフで何度も「空母が6隻沈められた」と出てくるので唖然、ナレーションの方では正しく4隻としているので、この映画の雑さが判るというもんです。その後陸奥は内地に還って出撃しないわけですけど、それは史実とはかけ離れています(実際には戦闘に参加こそしていないが、南洋と内地を数往復していた)。その間の戦争進行の状況がまるでフィクション、なんか仮想戦記を見ている感じすらします。特撮もかなりの低レベル、冒頭では53年の『戦艦大和』の特撮戦闘シーンが流用されてますが、なんでここに大和が出てくるの?おまけに7年前の映画よりどう見ても特撮技術が退化している。そんなことはまあ可愛いもんで、ぶっ飛ばされるのが肝心の「虚」のパートで、陸奥を爆沈させたのは「海外」のスパイ団という驚きの展開。なんで「海外」なのかというと首領がドイツの大使館付き武官、そいつがなぜか日本への破壊工作を組織する、アメリカの二重スパイ?かと首をひねるが結局そこら辺の説明はないのでわけが判らん。こいつが日本人グループを使って悪事の限りを尽くして陸奥に時限爆弾を仕掛けることに成功しますが、土壇場で海軍に感づかれてスパイ団は全滅、でも最後は史実通り陸奥は爆沈してしまい何のカタストロフィも得られなく閉幕、ほんとにため息がでるばかりです。 当然と言えば当然ですけど、艦長や副長など陸奥の乗組員は架空です。でも天知茂が演じる副長が日本人スパイの女性にあわや篭絡されそうになる描写などもあり、実際の艦長や副長の遺族などから猛抗議を受けたそうです。新東宝が倒産間際にすかした最後っ屁みたいなものかもしれませんが、ほんとにこの映画誰得だったんでしょうかね。
[インターネット(邦画)] 2点(2019-03-06 23:50:55)(良:1票)
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