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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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61.  黒蘭の女 《ネタバレ》 
ワイラー版「風と共に去りぬ」。 スペクタクルを期待する人間には少々物足りないかも知れないが、普通のメロドラマを期待する人には充分な作品。 少なくとも俺は「風と共に去りぬ」よりも好きだ。 ベティ・デイヴィスの演技が良い。気が強くワガママだったヒロインは、やがて気丈で落ち着きのある大人の女性へと成長していく。 物語は南北戦争を背景に男女の複雑な絡み合いを見せる。 彼女の着た「真紅のドレス(白黒画面では黒衣のドレスにしか見えない)」は別れの印か。彼女は“ジイゼベル”と呼ばれる男を狂わせる女なのだろうか。 いや、感情こそ激しいがラストの彼女の姿は気高い一人の女性でしか無い。病なんて関係ない。だって彼を愛しているのだから。 愛する男を殺そうとする病が、再びヒロインと彼を結びつけるとは何とも皮肉なものだ。   「そうだ明日があるは」何て事言いやがる女と、病が染つるかも知れない男に「愛しているから」ってだけで追いていく女、どっちが良いよ。俺は後者だね。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-11 21:23:03)(良:1票)
62.  ゾラの生涯 《ネタバレ》 
エミール・ゾラの一生をスピーディーな展開で魅せるウィリアム・ディターレの傑作。 とにかくポール・ムニの演技が最高すぎる。 ただ1本のペンで様々な権力や政治問題に爆弾をブチ込み、切り裂いては果敢に立ち向かったゾラ。 「ペンは剣より強し」身を持って証明した偉大なる作家だ。 特に中盤の「ドレフュス事件」を巡るドラマは素晴らしい。クライマックス直前の法廷劇も面白い。 時間としては短いものだが、法廷劇としても最高の部類に入る屈指の名場面だ。 ドレフュスを演じたジョセフ・シルドクラウトの演技も大変素晴らしい。  ポール・ムニは大好きな俳優の一人だ。 「暗黒街の顔役」や「科学者の道」「仮面の米国」での演技も最高だった。正に唯一無二(ムニ)の役者だぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-11 21:16:58)
63.  弥次喜多道中記(1938) 《ネタバレ》 
「鴛鴦歌合戦」に並ぶ・・・いやそれを凌駕するくらい面白いオペレッタ時代劇の傑作。 オペレッタ時代劇といっても、開始20分目にしてようやく歌が始まる。最初20分はユーモアを交えた普通の時代劇なのだ。  「鼠小僧」が追われる場面から始まるファーストシーン、説明乙な剣豪とワケ有り泥棒の邂逅が面白い。 追う者と追われる者とも知らず・・・そして捕り方に潜む「裏切り者」。 片岡千恵蔵の演技が上手い。上手すぎる。杉狂児とのコンビが面白い。 志村喬を「はげちゃびん」呼ばわりできるのは千恵蔵だけです。 旅までのシリアス気味な20分、残り1時間20分の歌あり騒ぎありの旅道中。 「大福喰いのマンジュウおじさん」シーンは最高だった。 名前の笠が呼ぶ幸運と不幸。結局お銀は今何処。中盤の天狗の「大立ち回り」も踊るように爽快だった。川面のシーンは「次郎長三国志」に繋がる演出。 三条橋から日本橋、困った時にぱwぴwぷwぺwぽwwww マキノ雅弘にハズレなし。
[DVD(邦画)] 10点(2014-03-11 02:17:22)(良:1票)
64.  按摩と女 《ネタバレ》 
按摩を主人公にした当時としては珍しい映画。 取り敢えずクレジットの「曳かれる男」にワロタ。  ストーリーは清水宏らしく至極単純、温泉宿にマッサージを生業としてやって来る按摩、 そんな按摩と東京から来たワケ有り女性とのロマンス。 そこに絡む同じく東京からやって来た男とそれに付きそう子供。 謎めいた女性に“嗅覚”が反応し惹かれていく按摩。 同じく子供の世話を一人でするのは大変だと洩らす男。 「奥さんは?」満更でも無い表情を覗かせる女性。 根っからのお嬢様である高峰三枝子の気品と色気が良い。  「按摩が人にぶつかるなんてたりめえだろぅが!」スゲー自己中。 挙句にぶつかっといて叩きのめすって・・・按摩強えぇー。後の「座頭市」である。 ラストの馬車を見送るシーンは超名場面です。 眼の見える人間には見えず、眼の見えない男に見えるもの・・・徳大寺伸の繊細な演技が光る。 ・・・で、結局宿屋ドロボーは誰だったんだよ・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-06 14:35:45)
65.  大平原 《ネタバレ》 
デミルの西部劇の中でも「平原児」に並ぶ最高の1本。 西部劇の醍醐味がすべて詰め込まれているし、とにかくメチャクチャ面白いし。今見ても最後まで楽しめる指折りの西部劇の一つだと思う。 序盤は銃撃戦の一切ないドラマが25分続くが、コレがまた面白い。銃撃戦だけが西部劇じゃないって事を証明してくれる出だしだ。 25分を過ぎた辺りから次々と巻き起こる事件の数々。アクション、ガンファイト!特に中盤のスー連合(インディアン)との死闘は西部劇史上に残る屈指のスペクタクルだ。 物語は大西洋と太平洋を結ぶ「大陸横断鉄道」の施工を巡って繰り広げられる政治ドラマから始まる。 そこから鉄道工事に命を賭ける個性豊かな面々のドラマで楽しませてくれる。 武闘派エンジニアで列車の保安官を務めるジェフ・バトラー、 列車の運転手を務めるモナハン、 モナハンの娘で男勝りの元気な女性モリー、 アウトローでバトラーの戦友でもあるディック、 用心棒を務める鞭の名手フィエスタ、 フィエスタの相方リーチ、 過激なクレイトン、 工事の阻止を企てる悪党キャンポーと魅力的な登場人物たち。 特にキャンポーにつるんじゃいるが昔の義理でバトラーを裏切れないディックの存在が面白い。 酒場でのやり取りは絶対「やっちまいなバトラー」ってシーンだと思うぜ。ピカピカに磨かれた鏡に感謝だ。 セリフの方も熱い言葉が多い。 「拳銃で人の心を変えられないわ」 「顔を隠せ身元が判らなくなる」 「モーゼだって海を渡ったぜ」 「私は支持するわ」 俺も支持するぜ、インディアンを無闇に殺しやがった男をブチのめしてくれたバトラーに。 デミルの西部劇はただの娯楽じゃない。インディアンを撃つ前に「殺生も許されるわよね赤い悪魔なら」なんてセリフはデミルの作品じゃなきゃ言えねえよ。 命懸けで大陸に渡った開拓者たち、元々そこを故郷にしてきたインディアンたちの衝突。 交流もあったが、その多くは殺し合いの負の連鎖が続く悲劇を生んでしまった。今日に語られる西部劇はその負の連鎖を正直に告白してきてくれた。もう二度と同じ過ちを繰り返さないためにも。 西部の荒野を突っ走る列車に込められたフロンティア魂。線路は続くよ何処までも。未来に向かって今日も人々の夢と希望を乗せて走り続けるだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-03 04:29:43)
66.  西部戦線異状なし(1930) 《ネタバレ》 
前に見た時は、余りに哀しく何も得られないこの映画が酷く退屈で、息苦しく思えたんだ。余り心に響かなかったんだ。  でも、再見して、いや見れば見るほどマイルストンに謝りたいという気持ちが大きくなった。 俺のように最初見た時はダメだったという人も、最後の、最後の2分間だけでももう一度見て欲しい。レマルクの素晴らしい小説が、映画としてもあの最後の2分間に凝縮されたと言ってもいい。 故郷に帰ったパウルの部屋には、子供の頃夢中になって追いかけた蝶の標本が飾られていた。俺はその蝶を忘れ・・・いや見逃していた。 観客にとって、標本の蝶なんてほとんどの人が忘れてしまうのかも知れない。 でも、パウルにとっては故郷の妹や家族、友達との思い出が詰まった、それを見た瞬間に思い出すような掛け替えの無い宝物だった。 パウルは蝶が好きだった。それの命を“奪う”だなんて意識もしなかった。 戦争に慣れていく事への恐怖、大切な友人を奪っていく戦争への失望。 何処を見ても土埃と煙、瓦礫、泥水、屍の山。そんな地獄に綺麗な綺麗な蝶がふわりと降りてきた。 パウルは、地獄に希望の灯火を見てしまった。 河の上を歩く女たちや、戦場で出会った掛け替えの無い友人たちの笑顔よりも、もっとキラキラと輝って見えた。 その灯火が消えようとしている。パウルは、無意識の内に飛び出してしまった。 カットのおっちゃんが無意識にパウルを守ってくれたように、パウルもあの蝶を守りたくてつい飛び出しちまったんじゃないだろうか。 今まで散々奪ってきた。もう沢山だよ・・・なんてさ。 ま、そんな事を敵が親切に思ってくれるワケがない。そんな余裕なんて無いよな。 相手だってパウルのいる敵の軍隊に仲間を殺されているもん。蝶よりも横に転がるライフルの方に眼が行っちまうよなあ。 パウルが蝶を守ろうとしたように、敵だって・・・いや、最初から何処にも敵なんていなかったんだ。仲間のために命掛けで戦った人々しかそこにはいなかったんだ。 万の言葉なんか無くてもいい。そこに一生が刻まれた一瞬があればそれで良かったんだ。 後年の原作に沿った「TVスペシャル」も見て欲しい。
[DVD(字幕)] 8点(2014-02-15 23:25:29)(良:1票)
67.  人情紙風船 《ネタバレ》 
山中貞雄は何を成し、何をやり残し戦場に散って行ったのか。  この「人情紙風船」にはそんな山中貞雄の死を感じさせる描写が散らばっている。  生きるか死ぬかの博打の日々を送る新三、  士官先を求めて何度も頭を下げては断られ続ける浪人の又十郎。  それを取り巻く女たち。  何度袋叩きにされようとめげない新三、何度断られようと通い続ける又十郎。  そんな二人の物語が交錯していくドラマの厚み。  二人は「共謀」を図った。  一時でも良い、死んだって良い。どうせ明日は無いんだ。一瞬でもいいから何かを成してから死んでいきたい。  金でも地位や名誉でもない。  意地が彼らに行動を取らせた。  酒屋での宴会は最後の晩餐か。  死んだことにも気づかず逝った男、死んだか生き残ったかも解らない男。  皮肉にも山中貞雄は己の死と向き合ってこの世を去っていった。  だが彼の代わりに、この作品に出演した俳優たちは息の長い活躍を続けた。  まるで亡き監督の魂を受け継いだように・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:09:17)(良:1票)
68.  御誂治郎吉格子
伊藤大輔の演出の冴えは既に「忠治旅日記」で幾らか堪能したが、まとまったフィルムを通して改めてその凄さに驚く。  オリジナルは100分あったそうだが現存するのは79分のみ。  躍動感にあふれた描写はモチロンの事、主人公のアクションや子供が遊ぶ姿など常に画面に動きを感じさせる工夫に溢れている。  閉所での格闘シーンはかなりの見応え。 ストーリーも単潤かつテンポが良くサクサク楽しめる。  役人から逃げて来た先での恋や義理人情、三角関係、ラストの提灯の津波や太鼓の演出など最後まで楽しめた。 しかし欠損したフィルムには与力との戦闘もあり、いきなり劇中から与力が消えた理由がそこにあるようだ。其の辺は資料などで補う他ないが、それ意外は上場の娯楽として楽しめる傑作。  ちなみに断片的ではあるが、サイレント時代の大河内傅次郎の殺陣は「忠次旅日記」の一部や「長恨」「血煙高田の馬場」などで拝む事ができる。やはり凄い迫力だった。
[DVD(邦画)] 9点(2014-01-10 20:59:08)
69.  嵐ケ丘(1939)
ワイラーの作品では「黒蘭の女」「孔雀夫人」に次いで好きな作品です。  この映画の何が凄いかと言いますと、原作の復讐劇を完全な恋愛映画にしてしまったベン・ヘクトの恐ろしさです。  原作好きには物足りなく感じる人もいるかと思いますが、私はこういう「嵐が丘」も有りだと思っています。 ローレンス・オリヴィエとマール・オベロンのピリピリした空気、一瞬ながら異常な躍動感に溢れた乗馬シーン(ワイラーは馬で本気出す人)と細かい演出も見所です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-10 19:41:48)(良:1票)
70.  非常線の女
これは中々の掘り出し物。「朗かに歩め」「その夜の妻」に続く小津監督の暗黒街ものだそうです。若い頃の小津さんは本当にチャレンジャーで面白い。ギャングものと言っても銃撃戦はまったくありません。小津監督らしい人情味のあるドラマで最後まで見せてくれます。サイレント時代の小津監督は退屈というものを感じさせてくれません。演出にしても、ジョセフ・フォン・スタンバーグの「暗黒街」をただマネただけではありません。冒頭のタイプライターや落ちる帽子と、細かい部分で凝った演出が見られます。終盤の路地裏のカットも凝りまくってます。さすがに田中絹代だけはミスキャストな気がしますが、それ以外は役に段々馴染んでいく感じ。水久保澄子さんが可愛かった。何故彼女をヒロインにしなかったのか・・・orz 小津ファンには不評との事ですが、私にはかなり面白い作品でした。オススメです。
[DVD(邦画)] 9点(2014-01-08 10:51:48)
71.  妻よ薔薇のやうに 《ネタバレ》 
成瀬監督も小津監督同様、敬遠していて一人でした。しかし「映画は語る」において淀川長治さんに「凄い」と言わせるほどの作品がどれほどのものなのかと見る事になりました。いやー凄い映画でした。成瀬監督はこれが初めてですが、もうビックリですよ。見事な「夫よクズのやうに」。妻と娘を養うため山に金を堀に行った夫。だがその夫は別の女に入れ込んでいた・・・「だって嫁が怖いんだもの」ビックリですよもう。娘さんも最初こそお父さんを引き戻そうと頑張りますが、諦めたのか父の浮気を許しちゃいますし、奥さんなんか完全に冷めてます。そして娘の彼氏は空気になりました。お父さんを叱りつける叔父さんだけが唯一まともに父を説得しましたが、お父さんは浮気先の奥さんの事で頭がいっぱいです。浮気先の娘さんとの冷ややかなやり取りも忘れられないです。何も知らないであろう小さな弟さんの存在も・・・本当の娘を取るか浮気先の家族を取るか・・・そんな状況を自分で作り上げてしまったこの男は大馬鹿野郎です。 男の駄目さ加減と女のドロドロが凄い作品でした。もうなんべんだって「凄い」と言っておきますよ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-08 10:39:46)
72.  大人の見る絵本 生れてはみたけれど 《ネタバレ》 
再見。やっぱり江戸っ子時代の小津は最高に面白い。活き活きしてるね。  初っ端から桃だか種だか分からないもんから“生まれた”赤ん坊の御挨拶(股間を抑える元気な男の子です)、泥にハマッた車輪の唸り、それを見つめるおとんと息子二人。 サボるな働け押し問答、上着を着こむのは作業が終わったから。  先に行って待っていた母と子の再会。どうやら引越して来る最中だったようだ。 子供と親と態度を変える酒屋、お近づきの印に知恵の輪と“御挨拶”を喰らわせガキを泣かせてスタコラさっさ。酷いもんだ。  父親はお得意先にペコペコ頭を下げ、それをつまんなそうに見上げる子供。友達の呼び掛けに喜んで走り寄る無邪気さ。  “変な奴”とのご対面、バイキン(黴菌)みたいな顔してやがらあ、背中に注意書き貼られてやがらあ、ガキ大将の拳骨vs下駄、パンを拭いて奪うのは思いやっているから。ここの連中は新入りに拳骨でしか挨拶できんのかww けん玉を止める兄弟の泣き声、報復する相手を見つけ歩みを止めるようなキャメラの動き、子供たちだけが知る“おまじない”、「倒れろよこの野郎」とばかりに突き合い取っ組み合い逃げるが勝ち。  喧嘩して学校サボッて怒られて、子供の視点で見つめる「大人の世界」。互いに撮った映像を披露し合う発表会、映写機が映すものを見てしまった衝撃と後悔。醜態(変顔)を晒しても愛想笑いを浮かべ、夜道をトボトボと歩く子供たちの背中が語る失望。 「その夜の妻」の時といい、背中で歩き去る場面が様になりすぎ(褒め言葉)。  昔は子供だった父親も、今では大人の目線でしか子供を見られなくなってしまったのかも知れない。子供に無くて大人に無いもの、大人になって得たものと失ったもの。  ただ、そこから「どう従うか」ではなく「どう付き合うか」という事をこの映画は教えてくれる。  庭先から見える電車の疾走、風が吹き荒ぶ中を椅子に座りつっぱね続ける意地、でも母ちゃんにはちゃんと返事する微笑ましさ。 草を食べズボンの紐で押さえつける空腹、椅子の上へ握り飯を置いて行き、遠くから見守る愛情。椅子を寄せ一緒につまみ、話し合うのは仲直りするために。 食器が置かれた食卓。食器をひっくり返すのは「いつもの通り」に戻ったことを表すため。  戦前は家族の団欒を表わしていた食卓が、戦争を経た「麦秋」「お早う」等では帰らぬ者への鎮魂を現わす場ともなっていく。 列車が通り過ぎた先で見たもの。兄弟は父を見送ることを選び、兄弟の友達もまた“おまじない”で地面に倒れ、起き上がり腕を背中にまわし共に歩いていくことを選ぶ。知恵の輪が結んだもの、知恵の輪が解けてもほころばないもの。挨拶をしに走り行く友達を待ち続けてくれるのだから。
[DVD(邦画)] 10点(2014-01-07 16:35:38)(良:1票)
73.  有りがたうさん
清水宏の傑作ロードムービー。戦前が身近に感じられる名作の一つです。  ストーリーは至極単純、のどかな田舎道を延々とバスが走るというシンプルなもの。それだけなのにまったく飽きない。田舎の美しい風景、人々の人情に溢れたドラマ。冒頭から「有りがたう!」のバーゲンセール。どんだけ言うんだよ(笑) どんな時でも感謝を忘れない運転手の人情味。たまに毒づくのも面白い。それに個性豊かなバスの乗客たち。ズケズケ物を言う女性、見栄を張った紳士、赤ん坊を取り上げるために急ぐ医者、売られていく娘・・・様々なドラマを見せてくれます。運転手と娘さんの会話がまた何とも言えません。感謝に始まり感謝に終わる・・・またいつか会えると信じて・・・良い映画です。
[DVD(邦画)] 9点(2014-01-07 16:17:24)
74.  或る夜の出来事 《ネタバレ》 
スクリュー・ボール・コメディの皮を被った素敵な恋愛映画。 後の「ローマの休日」を思わせる場面の数々。 冒頭から監禁状態の領域から逃げ出すヒロイン、ジャーナリストとの出会い、喧嘩を通して徐々に接近する二人、しかし運命は・・・という流れ。 決定的な違いは身分の“壁”の有無・ラストシーンにおけるヒロインの疾走!キートンの「恋愛三代記」もマイク・ニコルズの「卒業」もビックリなクライマックスだろうねー。  海を思わせる“水”のイメージのオープニング、船、会話をする船員たち、父親と口論を交える令嬢。初っ端から言葉で殴り合うような面白さ。男も女も互いに振り回し合う。 令嬢がプッツンして机をひっくり返せば父親がビンタし、その次は令嬢がドアをブチ開け船の上から脱走!父親は船を出して追おうとするがまんまと逃げられてしまう。どんだけ速いスピードで泳いだんだよ・・・w 一方、町の公衆電話では受話器の向うの仕事場の上司と揉めるジャーナリスト。そのジャーナリストが邪魔な新聞紙を窓から投げ捨てるし、そんでドライバーと喋っている内に冒頭の女性が新聞をどけた場所に座っちゃう。ここまでまだ7分も経っていないんだから驚き。  綺麗な脚を使った粋なヒッチハイクにも爆笑。  バスの中では座席を隔てて、ホテルでは一枚のカーテンが隔てるだけ。  愛していた筈の男との接吻はどこか迷いを見せる。式場での思わぬ再会、好きだからこそ別の男に“譲ってしまう”男心、車、カーテンと灯りの落ちた家が静かに物語る結末・・・。  この後にロードムービー・恋愛・コメディの要素を持った作品は「サリヴァンの旅」といった作品が撮られる。後続の名作たちと見比べるのもとっても楽しい映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-04 22:02:37)(良:1票)
75.  残菊物語(1939) 《ネタバレ》 
大根役者が親から自立し、歳月をかけて一流の役者に成長するという話。 主人公の菊之助は大役者の親の重圧、自分に才能が無いという板挟みの苦しみ。それを支える奉公女お徳。多少ズケズケとした物言いだが、嘘を付かずハッキリ言っては思いやるその優しさ。言わないことの厳しさよりも、いっそ言い放つ優しさの方が欲しい。それが人間の本音。その辺の描き方が良い。 まずファーストシーン。 歌舞伎のやぐらみたいな部分をぐるりと回し、舞台は歌舞伎の演目。 一場面が終わり、演目を終えた役者たちがゾロゾロ楽屋に入り愚痴をこぼす。 このショットと溝口の独特の間が、退屈を感じさせず観客を引き込む。でも祭りの席での会話は流石に字幕が無いと聞き取れん(最初字幕→次見る時は字幕なしで楽しめよ)。 そんな夏の熱い夜、スイカを食べ一時の至福を噛み締める二人の男女。赤ん坊に蚊帳をかける様子、スイカを斬る描写、口止めされた子供から駄賃で情報を聞き出す絵。 親はダメと言っても若い二人は止められない。太鼓もドコドコそんな二人を後押し。 物語は菊之助が軸であり、男心をじっくり描く、段々と女心も絡ませてくる。 親の心子知らず、子の心親知らず。菊之助のセリフが“溝口”の心を代弁する。 そんな菊之助を慕うお徳。 深まった中で“あなた”と優しく言う。二人の距離が縮まった事を、このたった一言で印象付ける。 しかし菊之助は中々芽が出ない。 5年の旅芸人生活で心が荒み始める菊之助。お徳の献身的な支えが、菊之助にかすかな良心と粘り強さを残す。苦よりも楽、失敗を恐れて現状に甘える菊之助。 そんな菊之助を、お徳は一計を案じてまで元の光の中に戻そうと努力する。こんなええ女何処にもおらんがな。人間一人じゃ生きられない、人の縁が人を活かす。 後に引けなくなった菊之助の覚悟と五年間の苦労が、大舞台の上で爆発する。 そんな姿を見て嬉しそうな表情と何処か哀しみを覗かせる顔をする。自分の運命を悟った上で。菊之助の成長を喜ぶ仲間たち、子の心を理解してくれた父親、だが菊之助の心は満たされない。動き出す列車、川を流れる船が運ぶのは菊之助の栄華か死にゆく者の魂か。菊之助の無言の苦しみがカメラワークだけで伝わって来る。 二人が黄泉の向こう、あるいわ生まれ変わって幸せに暮らせる事を心から願うばかりだ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-01-03 18:08:43)(良:1票)
76.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
「弥次喜多道中記」に並ぶオペレッタ時代劇の傑作。前者が歌と股旅映画が融合した作品ならば、この作品はミュージカルとしてより洗練された楽しさ。歌いっぱなしの「鴛鴦歌合戦」、歌ありアクションあり何でもござれの「弥次喜多道中記」。どちらも大好きな映画だ。  正月特番で作られた1時間映画だが、みんな「演じている」という堅苦しさが無い。量産性・劇団のような俳優陣の共通は何百回と稽古を積み上げた迫力を味わえる。みんな活き活きとした表情で元気に歌いあっている。当たり前だがみんな歌が絶品。ディック峰、志村喬と歌も演技も最高の面々が揃っている。  ストーリーそのものは典型的な時代劇だが、殿様見物、微妙な三角関係、価値観の崩壊(骨董収集がガラクタの山と化す志村喬)、金か愛か、ラストの踊る様な立ち回りなど見所が多い。  特に終盤の殺陣は面白い。無駄なチャンバラはせず、身のこなしだけで刀を避け敵を投げ飛ばす。  死人が出ない喜劇タッチの面白さ。  でもちょっとは斬り込めよディックさん・・・(笑) その辺ひっくるめて誠に愛らしい存在です。  ラストの展開は多少強引かなと思ったが、エンディングのカーテンコールの見事さに唸りっぱなし。   俺にとって作品の面白さに時代は関係ないんだな・・・という事を痛感させられた映画の一つです。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-29 14:52:41)(良:2票)
77.  街の灯(1931) 《ネタバレ》 
“映画”とは何か?チャールズ・チャップリンである。 そう言い切ってしまいたいほどチャップリンの映画には子供の頃から惹かれ、引き込まれ、笑い、ワクワクし、泣かされてきた。それくらいチャップリンが大好きだ。 俺は「モダン・タイムス」の方が好きだが、この作品も二度見て、いや見れば見るほど新しい感動に包まれる最高の映画だ。 特に終盤、吹き矢の子供が二人の男女をめぐり合わせる“悪戯”なんてもう。あの瞬間ほど「ハッ」とする場面は無いと思う。 チャップリンは花売りの少女から希望という“灯”を貰うし、チャップリンも少女のために我武者羅に働いて彼女の心に瞳という“灯”を授ける。一輪の花と手の温もりが、見えない筈の闇を照らす。 自分のためでなく、誰かのために命を賭けて生をまっとうする・・・素敵じゃないか。 冒頭から街の銅像の式典、その銅像の上でいきなり爆睡するチャップリンの登場からして面白い。 路上で出会った花売りの少女。彼女の眼が見えないという事を身振りと「お拾いになった?」の一言で理解できる。サイレントなのに男がドアを閉じる音が聞こえてきそうな場面だ。 チャップリンは完璧な像よりも本物の人間に惹かれていく。放っておこうと思っても見捨てられない情は赤子を拾う「キッド」といった作品を思い出す。 誤って水を浴びせられても文句を言わないチャップリンは英国紳士の鑑です。 眼が見えなくても生きている人間もいれば、事情は知らんが人がいるにも関わらず自殺を図ろうとする人間もいる。それを見守るように輝く街の灯。以前のチャップリンの短編なら水に落ちたらそれまでという話も多かったが、この映画は底から這い上がり次に進む事を選択する。 少女と再会したチャップリンは少女に誓い働いて働きまくるが、どれも失敗続きで中々上手くいかない。 総てをかけたボクシングシーン。幻に見る女、惚れた女の未来が懸かるたった5分。 それまで積み上げられたドラマ、それがあっと言う間に弾けていく避け合い、殴り合い、ゴングに振り回されるファイターたち。レフェリーは彼らの踊るようなボクシングに振り回される。 最後までチャップリンに恩を仇で返してしまう男は或る意味一番不幸。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-29 14:19:19)(良:1票)
78.  丹下左膳餘話 百萬兩の壺 《ネタバレ》 
久々に再見したがやっぱりムチャクチャ面白い。前回は字幕付きで見たが、一度内容が頭に入っていたからか二度目は字幕なしでも超楽しんでしまった。今回は2004年に出された「幻のシーン」が収録されたソフト。   物語は百萬両もする一つの壺を巡って展開される。 出だしは淡々とした語りで始まるが、壺が次から次へと持ち主を変えていく様子がミソ。 道場主とその妻、貧しくも強く生きる町人の親子、そして我らが丹下左膳とその相棒お藤の二人。それぞれに掛け替えのないパートナーがおり、尚且つ壺が彼らを巡り合わせるこのドラマ。 偶然か必然か、運命のイタズラをユニークかつテンポよく描いていく。何といっても面白いのが夫婦揃ってツンデレという所。  左膳「誰があんなガキ!」→もうしょうがねえな~(照れ) お藤「あたしは子供が嫌いなのよ!!」→暖かいご飯をたらふく食わせる 仕舞いには子供を寺子屋に行かせるか道場に行かせるかで夫婦喧嘩に発展する始末(ある意味終盤の道場への殴り込みよりもハードなバトル)。 幼いながら気丈に振る舞うちょび安が可愛い。   用心棒(居候)はいつの時代も立場があるんだか無いんだかハッキリしませんね。 怖い形相だけど本当は優しい左膳、口は冷たいけど体は腹の減った子供にご飯を食べさせたり物欲しそうな竹馬を買ってあげちゃったりうなじがちょいと色っポイお藤姉さん。   本作は終盤までほとんど戦闘がないが、一瞬で決まる戦闘の鮮やかさも素晴らしい。 懐に手を入れる侠客、顔は横を向いても目線は常に相手を捉える左膳、子供が数を数える瞬間の緊迫・・・一瞬の抜刀!    何?金がいるって?そんな時は道場破りよおっ!!     また2004年に日活から出されたDVDに収録された幻の場面。 クライマックスで左膳がちょび安を止めるべく家から出た矢先、左膳に恨みを抱くヤクザ連中が左膳に絡んでくる場面。 戦後に公開されたver.はGHQによって一部の殺陣がカットされてしまったそうだ(「人情紙風船」や「河内山宗俊」も同様に一部の殺陣がカットされてしまっているという)。   だが2004年にクライマックスの殺陣の一部を収めた数十秒のフィルムが発見され、見事にdvdで蘇った。 残念ながら音声トラックは行方不明の無声、画質も余り良くない。それでも一瞬の斬り合いが光る音が聞こえんばかりの迫力。ヤクザ連中をあしらう様に肩を突き離し、それでも「野郎ッ!」とばかりに斬りかかるヤクザたちを叩き伏せる!   本作で左膳を演じた大河内傅次郎。 伊藤大輔監督の元でも左膳を演じましたが、今作では喜劇役者としての才能も活かした演技が特徴。その独特の野暮ったさとセリフの聞き取れなさが左膳のエネルギー溢れるキャラにピッタリですね。山中貞雄監督の演出、傅次郎のパワー漲る演技が合わさった名演です。   お藤を演じた新橋喜代三(今村嘉子・後に結婚して中山嘉子)も好演。愉快なやり取りが忘れられません。 「野良犬」で貫禄ある演技を見せた山本礼三郎も出ていたりと、俳優陣も曲者揃いで楽しませてくれる。   字幕で楽しむも、字幕なしで味わうも絶品の1本です。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-24 12:57:34)(良:1票)
79.  暗黒街の顔役(1932) 《ネタバレ》 
ハワード・ホークス最高傑作の一つ。一体このハワード・ホークスという男は何処まで人を楽しませてくれるのだろう。 純粋な娯楽の中に現代にも通じるテーマをねじ込むその心意気。劇中で粉々になる夥しい窓ガラスの雨。 この一枚一枚が現代社会の「ルール」なのかも知れない。それを破壊していったある男の生き様を描く! 女性陣のメイクはサイレント時代の名残か少々濃いが、この妖艶なアイシャドウは暗黒街を照ら“瞳”となり、は本作を彩る最高の華となる。 無駄な音楽と血の描写を徹底的に廃したこだわり。 “滅びの美学”を血の雨で語らないのがこの時代の映画だ。 冒頭の“暗殺”までの張り詰めた5分間、“星”で火をつけるマフィアと警察の対立、抗争の裏で回転する“コイン”の一時の安息・・・最初25分の丁寧な展開はまったく飽きない。 だが「早く何か起こらないかな」と否応なしにワクワクしてしまうのも確かだ。 溢れかえるビールは女の初潮か、流される血の噴水を現すのか・・・。嵐の前の静かな25分間。そして次々と銃声が飛び交う凄まじい抗争の幕開けだ。 マシンガンのようにめくれるカレンダー、凄まじい銃撃戦、ぐしゃぐしゃになる車、疑心暗鬼、騙し合いと殺し合い・・・たった1時間30分の中でこれほどの密度、これほどの余裕。 終始撃ちまくっている映画なのだが、その合間合間で光る人間ドラマの魅力もこの映画を更に盛り上げてくれる。 組織社会での成り上がり、コインのような日常と犯罪の表裏一体の生活、生と死、光と闇。 際限の無い復讐戦は何も産まない。 あるのは果てしない「暴力の愚かさ」がこの映画の根底には存在している。 権力、裏切り、妹にまで欲情する色欲・・・あらゆる欲望に染まっていったトニー。 「THE WORLD IS ROURS!」 「世界は俺の物だ!全ては俺の物だ!!!」 ラスト6分の最後の銃撃まで息を抜けない、ギャング映画の傑作。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-19 14:17:36)(良:1票)
80.  M(1931) 《ネタバレ》 
ドイツ時代のフリッツ・ラング最高傑作。 こんな凄い映画を撮りまくったラングをヒトラーがほっとくワケが無い。 ドイツ時代のトーキー作品をもっと見たかった・・・。 犯罪映画はラングの十八番であり、その中でも「M」はサイコ・スリラーの祖にして今でも抜きん出た完成度を誇る。 本作はBGMがまったくない。 なのにまったく飽きることもダレも無い独特の呼吸、サイレント映画さながらの演出と語りが見事にはまっている。 警察署でのやり取りは10分縮めても良かったかも知れないが、42分を過ぎたあたりの舐めまわすようなカメラワーク、犯人と警察たちの追走劇、“M”の強烈なイニシャル。 耳を抑えると音が消え、離すと音が聞こえてくる場面も面白かった。 物語は少女ばかりを襲う猟奇殺人の真相を追う内容。 ファースト・シーンが凄い。 街で遊ぶ子供たち、そこに現れる黒い影。 盲目の老人が配る風船は、死にゆくの魂を運ぶ「船」か・・・。 「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿」を口ずさむ殺人鬼。 ピーター・ローレの狂気に満ちた演技。 何処までも歪んだ男の筈なのだが、少女と戯れているこの男の妙な愛嬌は何なのだろうか。 まさか筋金入りのロリコンを描く映画があろうとは・・・! ドイツはヒトラーにしろ、シュトロハイムにしろ、ルーデルにしろマジで「変態」ばっかりだな(大賛辞)・・・ドイツ万歳。 後のフィルム・ノワールに与えた影響が尋常じゃなく、ピーター・ローレルがアメリカのフィルム・ノワールの祖「マルタの鷹」に出演したのは偶然なのか必然なのか。 この後「カサブランカ」やヒッチコックの「暗殺者の家」など多くの犯罪映画に出るローレルだが、やはり一番強烈なのは「M」。 それと本作は当時活躍していたドイツ演劇界の巨匠ベルトルト・ブレヒトの「三文オペラ」からの影響があるという。 ラスト20分の法廷劇は正に舞台上の論戦だ。 本作の犯罪心理は後のジャン・ルノワールの「十字路」と共にフィルム・ノワールの祖となり、ラング自身もアメリカで「飾窓の女」を始めとするフィルム・ノワールをいくつか撮る事となった。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:26:17)(良:1票)
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