961. 艦長ホレーショ
ウォルシュの傑作。この映画のグレゴリー・ペックは良い演技してるぜ。 「マスター・アンド・コマンダー」よりも面白い海洋戦争映画だ。 ホレーショ・ホーンブラワーの航海術・戦略の数々。 欲がなく誠実、と思ったら一風変わったところもある抜け目無い性格。 そんな人柄がグレゴリー・ペックのイメージに合ってるし、頼もしい。そんなホレーショは誰にでも愛される筈だ。 技術的な問題も少なくないが、それでも幌船が砕け散り地獄絵図に変わる場面、そんな状況で必死に指揮を続けるホレーショの勇姿!最高だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-27 01:02:27) |
962. 暗黒街の弾痕(1937)
《ネタバレ》 「俺たちに明日はない」より粋 これは、傑作である。だが、単純なフィルム・ノワールの傑作というワケではない。 ルーベン・マムーリアンの「市街」と共に二人の男女の逃避行を描いた恋愛映画でもあると思う。 男は善人だった。あんな優しげな表情をした男も、一度刑務所に入れば世間は冷たい。刑務所から出ない方が幸せだったのかもしれない。 ただ一人、愛する妻だけが男を信じている。 男は無実の罪で再び獄中に送られる。 世間は「人殺し!」と叫ぶ、男は人間も神父も神も信じられなくなる、それでも女は男を信じ続けた。 荒んだ男の心を、女はひたすら信じて癒した。 だが男の傷がいくら癒えようとも、背負った十字架は何処までも二人を死の運命から逃さない。 逃げて、逃げて、逃げて・・・気付けば、産んだ赤ん坊に名前を付ける暇すら失っていく。 それでも二人は明日を信じて生き続けようとした。 ようやく霧の晴れたその向こうに、二人は空高く登っていけたのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 03:36:30) |
963. 怒りの河
この作品の原題は「河の曲がり角」。 強盗だったジェームズ・ステュアートが改心していく様子、そして更に悪に堕ちて行くアーサー・ケネディの対比。 善人顔のステュアートが強盗というのは「決断の3時10分」並に窃盗力に欠けるが、そんな男が以前は犯罪に手を染めていた・・・「人間見かけじゃ判断できない」という演出なら上手くいっていると思う。 ラスト付近の狭い幌馬車における格闘は、互いが息切れしながら争うなど生々しい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:55:11) |
964. 土
《ネタバレ》 内田吐夢が農民たちの生活を極限まで突き詰めた作品。 キング・ヴィダーの「麦秋」でもここまで地味じゃなかった。 これほどリアリティを持った農民は「七人の侍」にもいなかっただろう。 「七人の侍」で息子を野武士に殺された婆さんがいた。 その人も戦火で家族を失った辛い中を生きてきたという顔だ。 このように軍役や戦中・戦後の混乱をくぐり抜けた面構えの俳優が多かったが、この「土」に出てくる爺さんオッサン連中の面付きはもっと凄い。 辛い農民生活を身を削りながら耐えてきたという、そういう面付きの連中が多い。 フィルムは歳月を経て劣化が進んでいる箇所もあり、画質や音の悪さ、さらに冒頭とラストのシーンが欠如してしまっている。 欠如した部分は字幕で補われているが、劇中の絵で語る場面は言葉を必要としない凄味が伝わって来る。 物語はある農村の家族の生活を辛辣に描いていく。 主人公は祖父が残してしまった借金の完済に追われる身だ。 家を残してくれた父親を敬う反面、借金を残した父を恨んでもいた。 まるでドキュメンタリー映像でも見るかのような農村の様子。 ボロボロになった衣服、干からびた大地、多少の水ではすぐに渇いてしまう大地。 そこに大粒の雨が振り再び田は潤う・・・。 更には雷鳴のような音を立てて開く農家の戸。 娘がこっそり とうきびを狩りに行く場面。 ガラリと空く戸が緊張感を引き上げる・・・。 嫁入りで賑わうささやかな宴会。 火災の映像も凄い。 家が燃えてしまった残念だが、命あっての物種だ。 終盤で主人公が落ち込む様は情けないとも思ったが、自分の家が焼けたら誰でもああなってしまうだろう、抜け殻のように。 父を恨む息子、理由を知らない周りの人々は「なんんと親不孝な」と主人公を詰る。 しかし父親も責任を感じていた。 死が迫る父親、父親のために立ち直る主人公。 ラストの部分が欠如していたのは残念だが、恐らく感動的なラストで締めくくったのだろう。字幕がそう補完しているし。 内田吐夢はよく作品のテーマが余り「受けるイメージが無い」のでいつも資金繰りで困ったらしいが、映画仲間や知人から余ったフィルムや費用の援助をしてもらっていた。 それは毎回映画をヒットさせるという事と、何より人々に与える感動が内田吐夢の信頼となっていたからだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:28:44) |
965. 決断の3時10分
エルモア・レナードの短編を原作とする「ユマ行き3時10分発」。 ストーリーの完成度は未だリメイク版に引けを取らない。 人間ドラマが主体の西部劇だが、ファーストシーンにおける居並ぶアウトローと取り囲まれる駅馬車の様相はワクワクするなという方が無理だ。 本作は強盗団の首領を捕縛し護送するというシンプルなもの。 首領を抑える事で強盗団そのものを押さえつけ、強力な盾であり敵に次々と襲われる餌でもある。 そんな命懸けの任務に集う仲間たち。 駅馬車を利用した隠蔽劇、 立場を超えた絆、 ラスト20分に渡る駆け引きは見応えあり。 走り去ろうとする列車における一瞬の戦いは面白い。 ただ奥さんが駆けつける必要はあったのか? アレで敵に襲われた人質なんてなってたら洒落にならない。 ラストの雨の場面がキレイだった事。美しい。 強盗団のボスを演じるグレン・フォードの顔は、一見に善人に見える「極悪人」だ。 見た目はニコニコ面でとても悪党には見えないが、不敵な笑みで主人公を嘲笑う時の表情は不気味である。 怖い顔のヴァン・ヘフリンは正義漢の塊だが、焦りと苛立ちが内に潜む凶暴性を見せる。 元々は家族を食わせるために参加した普通の人間。覚悟はしてきたがいざ妻と再会するとなると家族への愛情を覗かせる。このヴァン・ヘフリンは「シェーン」よりも好きな父親だね。 たった一人で戦い抜く姿は「真昼の決闘」よりもハラハラドキドキしてしまう。ゲイリー・クーパーが愛妻なら、ヴァン・ヘフリンは本来敵である筈のグレン・フォードに助けられる。孤独だと思う人間ほど誰かの支えで助けられている。人の支えの大きさを思い出させる。 あとフェリシア・ファーが可愛かった。特に胸が(ry [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:43:02) |
966. ビッグ・トレイル(1930)
《ネタバレ》 ジョン・ウェインのデビュー作という一括りで片付けるには勿体無いフロンティア精神に溢れた作品。 本作の内容は後の「小さな巨人」や「ソルジャーブルー」、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に先駆けたテーマが描かれていた。 それはインディアンとの共存が可能か可能でないか。 幌馬車隊は道案内としてインディアンたちと交流を結ぶ。 他のインディアンのグループたちとも交渉し、絆が結ばれようとしていた。 正しそれは交流したグループだけの話であり、事情を知らない別のグループとの戦いを避けられるという保証は何処にも無い。 インディアンたちも、味方同士で殺し合わなければならないという理不尽さを目の当たりにする。 本作はジェームズ・クルーズの「幌馬車」さながらに西部開拓民たちの力強い生き様を雄大に描く。 壮大な幌馬車隊がくぐり抜ける大自然の猛威。 河を渡り、 森を切り開き、 砂漠を超え、 嵐を乗り切り、 雪原を突破していく。 さらにはインディアンの襲撃、組織内における対立など内と外での戦いも絡んでくるのだ。 最初40分は幌馬車隊の生活模様と出発をじっくりと描きやや退屈だが、 人々のコミカルなやりとり、 月下でのダンス。 幌馬車の群れを円形にしてグルリと囲んだ中での団欒。 40分目におけるバッファロー狩りの迫力。 命懸けの河渡り、押し流される人々の描写が怖い。 そこに戻って来たウェイン、幌馬車の渡河を手伝う。 さらっと戻ってくるウェインのカッコ良さはこの時から感じられる。 50分目におけるインディアン(シャイアン)との交渉。 あの時のウェインは尻を撫でているようにしか見えない(笑) 結婚式の直後に流れる不穏な空気もまた凄い。 幌馬車隊内におけるささやかな結婚式、裏では男たちの殺し合い。 この光と闇の描写。 終盤におけるインディアンとの戦闘の迫力。 危機を乗り越えた幌馬車隊だが、生き残った者と背後の簡素な墓標の対比。 犠牲を乗り越え、それでも人々は前へ前へと突き進む。 安住の地を目指して・・・。 そしてラストの一瞬の決闘。 「銃」ではなく「ナイフ」というのが憎い演出。 最初あれだけピカピカの服装だったウェインが、砂や雪にまみれてヨレヨレの格好になり、また戻ってくる。 何度でも戻ってくる男のカッコ良さ。 穏やかなエンディングが何とも言えない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:04:42) |
967. 戦場よさらば
戦場よさらば 「第七天国」といい、ボザージの描くロマンスは嫌味が無い。 ダグラス・サークほど際立ったものは無いけど、じっくりかつ丁寧に戦争と恋愛の絡んだドラマを見せてくれる。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:21:13) |
968. 第七天国(1927)
第七天国 素直に好きと言えない男。「ダイアン チコ 天国」の言葉でしか愛の言葉を言えない恥ずがしがり屋。 そんなウブな少年を、戦争の悲劇が襲う。だが、そんな悲劇が二人をより強く結びつけるとは皮肉なものか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:18:02) |
969. 成功の甘き香り
ショービジネス界の内幕を暴く傑作フィルム・ノワール。 秘密を暴く事が生業のコラムニストも、裏では妹と肉体関係を匂わすような疑惑に満ちた存在というのが皮肉だ。 ニューヨークの夜間撮影の美しさは素晴らしい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:15:08) |
970. 拾った女
反プロパガンダ映画の傑作フィルム・ノワール。 冒頭から一気に引き込まれる見事なファースト・シーン。 短いショットの積み重ねで我々を退屈させてくれない。ストーリーもスリからタレコミ、共産主義のスパイと複雑に絡み合う。 セルマ・リッターに女優賞を贈らなかったハリウッドの何たる見る目の無さよ! [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:12:17)(良:1票) |
971. その女を殺せ
フライシャーの傑作フィルム・ノワール・サスペンス。 証人を護送する列車、だがその列車には証人を消そうとする殺し屋たちが潜む。誰が犯人なのか?その恐怖とスリル。 絶えず横に吸い付くように走る車が不気味だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:09:30) |
972. ゾラの生涯
《ネタバレ》 エミール・ゾラの一生をスピーディーな展開で魅せるウィリアム・ディターレの傑作。 とにかくポール・ムニの演技が最高すぎる。 ただ1本のペンで様々な権力や政治問題に爆弾をブチ込み、切り裂いては果敢に立ち向かったゾラ。 「ペンは剣より強し」身を持って証明した偉大なる作家だ。 特に中盤の「ドレフュス事件」を巡るドラマは素晴らしい。クライマックス直前の法廷劇も面白い。 時間としては短いものだが、法廷劇としても最高の部類に入る屈指の名場面だ。 ドレフュスを演じたジョセフ・シルドクラウトの演技も大変素晴らしい。 ポール・ムニは大好きな俳優の一人だ。 「暗黒街の顔役」や「科学者の道」「仮面の米国」での演技も最高だった。正に唯一無二(ムニ)の役者だぜ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 18:13:55) |
973. 天使の顔(1953)
プレミンジャーの傑作フィルム・ノワール。 少ない日程の中、強行的な作業と速さで映画を完成させたプレミンジャーの演出が凝縮された1篇。 狂った歯車はどんどん加速する。堕ちるところまで堕ちていく己を冷徹に見続けるロバート・ミッチャムが最高です。 ジーン・シモンズの殺人的な「天使の顔」は卑怯だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 17:45:55) |
974. 毒薬と老嬢
こんな恐ろしいババア共がいてたまるか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 14:47:47) |
975. ヨーク軍曹
内容はストレートな戦争アクション、ゲイリー・クーパーの演技は最高潮。 クーパーに賞を取らせ、自身も監督賞にノミネートしたホークスの手腕が輝る傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 14:30:55) |
976. ウィンチェスター銃'73(1950)
西部劇においてリアリズムを追求した監督は誰か? もちろん「真昼の決闘」なんてつまんねえ西部劇を撮ったフレッド・ジンネマン何ぞではない。 オールラウンダーな職人アンソニー・マンだ。 リアルタッチの演出はもちろん、独特な人間ドラマや風景の美しさ。失敗作も少なくないマンだが、反面全盛期の傑作群は今の時代にこそ再評価されるべき作品ばかりだ。 ヒューマンドラマ「グレン・ミラー物語」はもちろん、突出した戦争映画「最前線」や「雷鳴の湾」等優れた傑作が多い。 あの「スパルタカス」だって最初はマンが撮ってた。アレを全部マンが撮っていたらどうなっていたのだろうか。キューブリックに及ばないのか、それともそれに並ぶかそれ以上の作品になっていたのか。気になるぜ。 そんなマンが最も多く手掛けたのが西部劇。 本作「ウィンチェスター銃'73」はそんなマンの傑作の1つだし、保安官もの「胸に輝く星」やインディアンを友好的に描いた「流血の谷」といった諸作と共にもっと知られるべき代表作でもある。 この作品を見て“古臭い”なんて思う奴はこの映画の何を見たんだろうか。いや何も見てないね。 ストーリーは千丁に一丁と言われる名銃「ウィンチェスターM1873」を巡って様々な人間ドラマが交錯する。まるで山中貞雄の「丹下左膳 百萬両の壺」だ。 だがストーリーはシリアス一色、名銃探しはやがて奪い合い、殺し合い、そして壮絶な事件へと膨張していく。 たった一つの優れた“道具”が万の人間の命を奪える“人殺しの道具”になる過程。西部を征服した銃が今度は人の心を狂わせていく。怖い話だぜ。 どうでもいいけど、マンの映画って大抵主人公が“伏せる”よな。ステュアートどんだけ伏せんだよ。 馬上で睨みを効かせるステュアートも印象的。面白い作品でした。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-20 01:22:19) |
977. 絞殺魔
《ネタバレ》 フライシャーの緻密な演出とシンプルな面白さが光る。 フライシャーは「バイキング」や「ミクロの決死圏」等アクションものの監督と思っていたが、まさか「ミクロの決死圏」の後にこんなサスペンスを撮っていたとは。 他の作品に比べるとかなり地味な印象もあるが、それでもフライシャーらしい演出が光る作品だ。 「実在のボストン連続絞殺魔事件」をモデルにした作品。 複数のカットを同時に見せる実験的な仕掛け、淡々と殺しのドラマとそれに歯噛みしながら捜査を続ける警察たちの姿を映していく。 ただでさえ得体の知れない「絞殺魔」が襲いかかるってだけで恐怖だし、もっと怖いのが散々ニュースで注意しているにも関わらずドアを開けてしまう人間心理の怖さ。 開けなくても簡単にドアを突破してしまう「絞殺魔」。 後半の展開は衝撃的。延々とシーンが続く感じなのだが、不思議と飽きない。 “もう一人のアイツ”が出てくる瞬間といったらもう。 [DVD(字幕)] 8点(2014-03-19 20:11:16) |
978. 折れた矢(1950)
「流血の谷」と共にインディアンを友好的に描いた最初の作品。 ちょっと説教臭い場面もあるが、少なくとも「ダンス・ウィズ・ウルブズ」よりは面白いだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-18 18:20:26) |
979. ホンドー
「高原の疾走」に並ぶジョン・ファローの傑作。 「ラスト・シューティスト」の冒頭で引用された作品の一つだが、なるほど中々の作品だ。 ジョン・ウェインが荒野から一人でのしのしと現れる場面、インディアンとナイフで決闘に及ぶ場面など見所も多い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-18 18:19:44) |
980. 四十挺の拳銃
これは傑作だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-18 18:18:16) |