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性別 女性
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81.  ベニスに死す ネタバレ 
 ストーリーは2行で語れる様な、至ってシンプルなお話、それを131分の尺で、濃密に、美しく、テンポ悪く(?!)魅せてくれました。まずこの作品を掘り下げようとすると、タージオを演じるビョルン・アンドレセンの不遇な生い立ちと、その美し過ぎる美貌が招いた悲劇、本作の監督ルキノ・ヴィスコンティからの冷遇など、作品の内容には直接関係ないのにどうしてもネガティブなフィルターが掛かってしまうような情報が飛び込んでくる。  しかし本作は、独り歩きしてしまった美少年の存在以前に、主人公は悩める老芸術家グスタフであって、特にクローズアップされる美少年は、もはや幻のような存在。そんな文芸作品なのである。  芸術家グスタフは、「死」と「美」について考えている。人生を砂時計に例え「砂が無くなった時が死。しかしそれに気付くのは砂が終わる直前であって、気付いた時にはもう終わっている」そんな死生観を語っている。芸術家は自らの努力によって「美」を創造する。しかし本当の美とは精神的概念であり、芸術家の努力で作られるものとは別物である。だからこそ、自分の努力では作り得ない、崇高で絶対的な概念としての「美」を常に恐れていたのかもしれない。  着飾った貴族たちが大勢宿泊するなか遭遇したのは、中でも一際際立つ美しい一輪の花のような少年タージオ。無造作な金髪、華奢な身体つきに何の特徴もない白いセーラー服を着たタージオは、グスタフが常日頃から恐れていた「本当の美」「精神的な美」そのものだった。その時から目が離せなくなってしまう。ここら辺からのグスタフは完全にタージオのストーカー。それに加え身体の具合が悪いというグスタフを演じるダーク・ボガードの演技は本当に鬼気迫っており、報われるはずもない思いを切なく、そして程よく気持ち悪く、絶妙にリアルに演じており、素晴らしいとしか言いようがない。   この演技を見て思うのが、ヴィスコンティ監督自身が自分をグスタフに重ね、タージオ演じるビョルンに魅入られ、その美を、今現在の一瞬一瞬に放たれる美を、でもその一瞬は二度とは訪れないという美を、そこに留めておきたいと切望しカメラに収め、留めることが不可能である事を承知して苦しんだのではないだろうか。そしてそこで誰にでもやって来る「老い」という逃げられない無情を敵視しなければならず、ビョルンにもその敵視のようなものが向けられてしまったのではないだろうか。なんて考えることも出来なくもない。  美しい観光地のベニスが、荒廃した疫病の町と化す。それは才能に恵まれ若かった頃のグスタフが、老いて才能も枯渇し病に侵され朽ちてゆく様と重なってしまう。 「純粋」に対しての「不純」。「若さ」に対しての「老い」。タージオと自分が対局であることを思い知らされる。 後は残された命を振り絞り、美しいタージオの姿を脳裏に焼き付けるしかない。  何とも美しく切ないこの文芸作品は、間違いなく、名作でした。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-09-07 14:29:59)
82.  ボヘミアン・ラプソディ ネタバレ 
 当時完全洋楽好きな中学生でしたが、なぜかクイーンはあまり聞けてなかった、なぜだろう。でも知ってる曲はたくさんあるし今聞いてもドンピシャストライクゾーンな曲ばかり。なんで聞いてなかったのか悔やまれます。で遅ればせながらサブスクで飽きるほど聞こうと思う。なんて私の音楽ライフの話などは置いといて。とにかくこの映画が本当なら、フレディマーキュリーという人は間違いなく天才だ。スマイルというバンドの辞めてしまったボーカル代わりに、俺は?と歌いだす。もういきなり天才。美しいメロディ、カッコいい歌詞、面白いアイデアがどんどん出てくる。パワフルなボーカルとパフォーマンスで、なるべくしてなったスーパーバンドのスーパーリードシンガーだった。そこに現れたポールプレンターという男。この石ころにつまづいてしまったんだな。奴の影響がその後のフレディの人生を大きく変えたのか、奴がいなくても運命は変わらなかったのか、そんな事は分からないが、フレディの歌、クイーンの楽曲が多くのビューティフルピープルの人生を変えたことだけは間違いない、確かな事実だ。熱気あふれるライブエイドの会場再現、魂を込めた歌唱に自然と涙が溢れてしまった。音楽の力って凄い。合唱拍手興奮、波打つ観衆、間違いなく空に穴が開いたし、地面も陥没しそう。ライブ前は不安そうだったメンバーも楽しそうにフレディを見守る。ジムハットンの優しい眼差し、メアリーの誇らしげな顔、感極まった観衆、we are the champions ! 会場が割れる。音楽の素晴らしさと、人間の優しさに感動させられました。劇場で観たかったけど、もしそうしてたら号泣間違いなしだったでしょう。危ない危ない。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-08-09 17:09:05)
83.  アラビアのロレンス 完全版 ネタバレ 
 4時間弱の長編で、アカデミー賞7部門受賞という大作という予備知識だけを持って、よし頑張って観るぞという意気込みで観てみた。  まず壮大な、そして長い序曲から始まり、ああ大作に手を出してしまったなと思い知らされる。観たのはデジタルリマスター版ということもあり、とにかく映像が綺麗で驚いた。そして次に思ったのが、これは中東問題の予備知識がないとダメだ、という事。そこで一旦停めてWikipediaを開きながら鑑賞することに。1962年、CGもドローンもモーションキャプチャーも無い時代に、よくもまあこんなスケールのでかい題材で映画を撮ろうと思ったもんだ、とまた驚く。それは、もともと考古学者で軍用地図の作成をしたり、その語学力を活かしカイロの陸軍情報部で連絡係を務めていた実在の人物トーマス・エドワード・ロレンスの壮大なストーリーだった。  一介のイギリス軍将校に過ぎないロレンスが、オスマン帝国に対して、アラブ軍を率いてアラブ反乱を起こす。更にダマスカス占領ではアラブにアラブを与えようと一足早く到着し、町中をアラブの旗で埋めたという。そんなまさか、と思った。どこまでが真実でどこからが脚色なのか、そして主人公の心、内面の部分の表現はこれで正しいのか、ここまで考えるとややこしい事になるので、純粋にこの作品だけを楽しむことにする。  冒頭は主人公の葬儀、そこでの故人の評判はさまざまで、良く言う者もいれば、恥知らずの目立ちたがり屋、偉大な人物だったが良く知らん、という者も。とにかく変わり者であることは分かった。お調子者で気分屋、時代の波にのまれ、周りの雰囲気に流され、自分がアラブ人になったかのように振る舞い、この戦いはイギリス軍のためなどではなく大義ある聖戦だと思い込む。しかしアラブにはジハードという考え方があって、イギリス人が簡単にアラブ人になることは出来ないと思い知らされる。アラブは砂漠を愛さない、とアラブ人が言っていた。アラブを軽く見ていると。一連の作戦にしても結局は、政治家と軍人の妥協劇のお膳立てに過ぎなかった。アラブ軍の指導者かのように嬉々としてオスマン軍と戦ってきたオレンスは、最後は骨抜きになって同胞のもとへと帰っていく。儚い夢のごとく切ないラスト。砂漠はもう二度と見たくない。そして冒頭のバイクのシーンを思い出すと、ロレンスの超ハードで短い人生はいったい何だったんだという余韻にふける。こんな気の毒な人物だったとは。ドラマにしたくなる気持ちが分かった。  そして何より、美しい映像も存分に堪能しよう。マッチの火を消すとそこは砂漠の日の出。ラクダと広大な景色、地平線の遥か遠くから現れた小さな点がたっぷり時間をかけて徐々に近づくシーン、竜巻、太陽、白い砂漠、青い空。美しい金髪碧眼のピーターオトゥール。音楽も美しい。長いが観てよかった。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-08-03 13:06:33)(良:1票)
84.  荒野にて ネタバレ 
 原題は Lean on Pete 。馬の名前。殺処分が決まったピートの命を少年が救い、旅に出る。父と死別し、天涯孤独となった少年を、ピートが言わばアニマルセラピー的な役割で寄り添い、不遇の少年の心は徐々に癒されていく、という話かと思ったが、ちょっと違った。もちろん二人(一人と一頭)の友情関係のようなものは描かれるが、現実はもっともっと厳しく、16歳の少年を容赦なく落としていく。原題に騙された。この物語の主題は、少年が大人になる過程の話だった。  子供とはまず親が用意した環境によって、その人生を大きく左右される。これは残念ながら生まれた時から発生する不平等。子供ってあくまでも受動的な存在なんだ。そう言えば「生まれる」って、I was born 受動態。生まれさせる。育てられる。対して「産む」は、give birth 生を与える。子供のうちは、親もしくは保護者から与えられ、それを受けとって、生かされる。これまで受動的に生きてきた15歳の少年チャーリーが、大切な者の死を乗り越えて、厳しい現実というサバイバルを乗り越えて、受動的子供から、大人になっていく。もちろんこのサバイバルは大人になってからも続くが、ひとまず、温かいベッドで寝て、辛かったことが堰を切ったように涙として溢れ、犯した罪に懺悔の気持ちを持ち、今後のことを考える。与えられたものを受け取るだけじゃない、自分から発信し、対処していく必要がある。そして死なせてしまった唯一の友達ピートのことを思うと、これからも辛い気持ちを抱えていかなければならない。それが大人になるということ。  チャーリー、がんばったね、と声をかけてあげたい。少年役の俳優が、子供と大人の中間と、大人になって行く過程の変化を見事に醸し出すことに成功している。今後を期待したい俳優だ。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-07-25 12:46:46)
85.  君たちはどう生きるか(2023) ネタバレ 
 まず、御年82歳の巨匠が自らの集大成を総括した作品に対し、10点満点(もしくは5点満点)で採点すること、そしてこのような「考えるな感じろ」的な作品に対し、感想を文字化し可視化することが極めて無粋である事と知った上で、あえて書かなければならない。そうしないとこの作品を見た意味すら見失ってしまいそうな、そんなつかみ所の無い作品だったから。自分への覚書のようなものとして、書いておこうと思う。  ネタバレ厳禁をここまで徹底する要素が、果たしてこの作品にあったのか否かは疑問。あくまでも戦略だっただけのように思う。そもそもネタばらしをしようにも、あらすじなるものを簡単に言葉で語り継げるようなストーリーをまず持っていない。とりあえずは「感じろ」と。しかしその次の段階には、登場する全ての物に何かしらの意味が隠されている事を「考える」こととなる。メタファーにつぐメタファーの連続。そして過去作品のセルフオマージュの連続。この、メタファーとセルフオマージュの連続が、一見取り留めのないものの羅列として、退屈を感じさせてしまうのかもしれない。この作品、実は、感じろ、ではなく、考えろ、だった。  全ての鑑賞者の数だけ、解釈の数がある。監督の持つ戦争観、死生観、男女の在り方役割分担、アオサギとは、ペリカンとは、インコとは、そして13の積み木と跡継ぎ問題、産屋へ入ることが禁忌であるということ。  この作品に限らず、監督は常に、生きろ、と言う。生物は生きているか死んでいるかしかない。死んだ者は、食べられるか埋められるかしかない。生きている者は、生きるため産むために殺生をすることがある。イレギュラーケースとして、生きるか死ぬかの基準の中には存在しない行為、自分の頭を石で殴った自傷行為の事を彼は「悪意」と言う。彼が負傷のために刈上げた頭で真剣に武器を作る姿は、デニーロのタクシードライバーを思い出してしまった。捕らえられた女を救出するために命を懸ける男の話だ。男が女を守り、女は子を産む。この古臭い男女の役割分担という考え方が、現代では禁忌、ストレートには表現できないタブーとなっている。メタファーという鎧で自分を守りながらでないと表現出来なくなり、そのために分かりにくい面白くないと評価されるようになってしまう表現者。13の積み木(ゲド戦記を含む13作品)を積み終わった後は、許されるのであれば悪意の無い跡継ぎにこの場を渡してしまいたい。言葉をしゃべるが中身のないインコみたいな無責任な不特定多数の群衆どももいるこんな世の中だから、最新の注意を払って、自分と自分の周りの大切な人を守って、生きていかなければならないんだなぁ、と。どのように生きるか、という監督からの設問への、これはあくまでもほんの一回答、です。
[映画館(邦画)] 8点(2023-07-18 15:51:56)(良:2票)
86.  ノマドランド ネタバレ 
ノマドの生活は、傍から見れば自由気ままに旅をし、大自然を謳歌しているようにも見える。もちろんその通り、楽しんでやっている人もいるだろうし、苦あれば楽ありと割り切ってやっている人もいる。ただ年金だけでは生活できない高齢者が重労働をしながら車上生活を強いられているとなると、それは社会問題だ。そんな問題提起をドキュメンタリータッチで描いている本作だが、それだけに終わらず、こちらの主人公ファームという女性は、それに輪をかけ思い出を引きずり過ぎているという悲しい事情、物語がある。また、この生活を選んでいる人たちには各々の事情があり、それそれ抱えているものが違うから、本当の気持ちを分かり合う事は不可能かもしれない。全く同じ指紋が存在しないのと同じ様に、全く同じ悲しみは無いのだ。それぞれに悲しみ、癒され、希望を持ってはまた悲しみが押し寄せる。ヒーリングジャーニー、決してかっこいいだけの自由な旅じゃない。ファーンの唯一の肉親の姉は、妹の今の生活を、「開拓者みたいで素敵」と言って、やさしい言葉を掛けてくれるのは有り難いが、全く理解していない。これじゃあ一緒に暮らせない。ファーンの事を好いてくれたノマド仲間の男性は、豪華なキャンピングカーに暮らし、帰る家もある。一緒に暮らそうと言ってくれるが、そこは彼女の居場所なんかじゃない。死んだ夫が大好きだった土地(すでに町として存在しない場所)を捨てられない彼女が、癒される時はいつ来るのだろうか。アリゾナやダコタの美しい自然と物悲しいピアノの旋律、そしてファーンの寂しそうな笑顔が作品全体の雰囲気を全て物語っている。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-05-30 14:34:24)
87.  THE BATMAN-ザ・バットマン- ネタバレ 
鬱々としたブルースウェインと、ニルバーナの音楽が、一貫性を持った世界観を創り上げています。ダークナイトトリロジーのブルースと違ってまた新しいバットマン。アメリカ人てホントにバットマン好きだな。地元の大富豪が夜な夜な怪しい変装して、自警活動してるっていうお話を、何度も何度も作り直す。無くてはならないような存在なのでしょうね、スパイダーマンもそうだけど。それを私たちは楽しくまたは心を痛め、毎度毎度観てしまう。その感じ、嫌いじゃないです。今回のブルースウェインは、弱い心を持つ普通の青年。謎々で振り回され翻弄されっぱなしで、そのゴツい変装が痛々しくさえ感じられます。何だかんだで今回の事件を経て、病み期のバットマンは成長し、マスクして人命救助を手伝ってる姿は新しさを感じます。うん、面白かった。セリーナとのバイクの並走シーンは清々しく、プラトニックな二人が無性に可愛らしかった。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-05-14 13:01:21)
88.  十二人の怒れる男(1957) ネタバレ 
後に数々の社会派作品を世に送り出したシドニールメット監督の記念すべき最初の作品なんですね、この事実に映画史の凄さを只々感じてしまいます。陪審員十二人はざっと役付けると、進行役、気が弱い者、無責任、理論的、労働者、偏見、親子関係難あり、スラム街育ち、移民、老人、優柔不断、そして中立と、この場にいる人間だけで民主主義国の話し合いが出来ちゃうっていうくらい個性派ぞろい。ここで間違っていけないのは、話し合いの末、一人の恵まれない生い立ちの少年を救うことが出来ました、という話じゃないって事。実際のところ少年は本当に無罪なのか、真犯人がいるとしたら誰なのか、そんな事は一切語られません。民主主義というもの、その物自体について考えるというのがテーマです。人が人を裁くことの難しさ、その為には納得するまでの議論を持たなければならない。汗が流れる程の暑い密室で成されるその熱い議論が、脚本の面白さで手に取りやすいものになっています。議論を重ねるに連れ一人また一人と無罪に転じていく訳ですが、私が一番気に入ったのはやはり一番最後の一人です。1時間半の間ずっと怒り怒鳴っていた彼が破り捨てた写真に写っているのは、全く別人のように笑顔で笑うお父さんなのです。何て切ないシーンなんでしょう。いさぎ良く、清々しい雨上がりのラストシーンも秀逸です。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-04-18 15:56:50)(良:2票)
89.  ダークナイト(2008) ネタバレ 
choose。日常的で気軽なものから、命がけのヒリヒリしたものまで、人は常に選択の連続で今に至る。物語の世界でも、この「選択」を分岐点として無数のマルチバースが枝のように伸びてゆく、という考え方はもう当たり前に語られていて。で、ここはゴッサムシティ、汚職警官とマフィアの癒着で治安が最悪。そこに現れた地方検事のハービーデントは、公平な事が何よりも最優先で、物事をコイントスで決めるのだが、そのコインは両面表、つまり初めから答えは自分で決定しているという正真正銘の正義漢なのです。ジョーカーの罠にかかり、顔の半分と一緒にコインの裏側が焼かれるまでは。表が正義、裏が悪。光と影。表裏一体。勧善懲悪ではなくどちらに転ぶかの問題だというしっかりとしたメッセージを、このアメコミの世界でカッコいいだけじゃなく見事に構築しています。そしてそのメッセージを語るために、完全悪、絶対悪のジョーカーの存在が不可欠となってきます。全くブレない純粋な悪という狂言回しです。街がバットマンを必要としない日を目指すブルースにとっては、ジョーカーは一対一の宿敵というよりは、次から次に現れる悪党の内の一人でしかないのかもしれないけど、ヒースレジャーはその完全悪を全身全霊で演じました。演じたというか、ジョーカーとして存在しました。自分の人生の暇をつぶす為に犯罪を犯すような、そんなジョーカーがそこに確実に居ました。その端正なお顔立ちも白塗りメイクですっかり隠し、一躍脚光を浴びる事となったブロークバックマウンテンの時とは全く違った演技で挑んだ。また全然違うものを見せてもらいたかった。残念で残念で仕方ない。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-06 15:44:39)
90.  バットマン ビギンズ ネタバレ 
どうしてもマーベル作品と比較してしまいますが、幼少期に両親を亡くし今は地元を守る自警団のような事をしている所はスパイダーマンを、巨額の富を惜しげもなく使い自らソルジャーと化して戦う所はアイアンマンを想像させます。マーベル作品とテイストが違うとすれば、バットマンはとにかく暗いんです。ピーターパーカーはクラスメートの女子に恋する普通の近所の高校生で、トニースタークは大金持ちで真正のプレーボーイだけど超天才で実は正義漢。もちろん好みの問題なんだけど、マーベルヒーローにはそれぞれ愛しさがあるのですが、ブルースウェインにはそこが欠けているような気がします。更に暗さで言ったら、Ⅹ‐MENのウルヴァリンシリーズもありますが、ローガンにはブルースなどは比べ物にならない物凄い過去があるし、全身にはアダマンチウムが埋められています。ピーターは蜘蛛の毒によって驚異の身体能力を得て、トニーは胸に電磁石が付けられています。そう、ブルースは表層上の加工でしかないのです。その代わりに、決して見切りをつけない有能な執事のアルフレッドと、ブレーンの役割をする開発担当応用科学部フォックス、この2おじいがとても良い仕事をしてはいますが。他社製のキャラと比較するのが違うとしたら、バットマンよりこの次から登場することになるジョーカーに魅力を感じてしまうというのも否めない気がします。ブルースは、地元の為に頑張っている陰キャの王子様という域を超えないという印象です。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-03-20 14:57:18)
91.  ダークナイト ライジング ネタバレ 
ブルースウェインの成長が見られる本作、シリーズの中では一番好きでした。そもそもが財力と優秀な取り巻きによって作り上げられたヒーローは、生い立ちこそ気の毒な孤児なんだけど根っからの大富豪で、志や義はあるもののどうしてもそのお坊ちゃんキャラが邪魔になってしまってました。バットマンにとって最強のパワーポイントである財力は、ブルースウェインというキャラクターにとっては最大の欠点になっていました、少なくとも私の場合。前作では数少ない理解者の中の一人レイチェルを失い、今作では命綱の財力を失い、レイチェルがらみで親代わりのアルフレットにも去られ、それはもうこれまでのバットマン、何だかんだ言ってもボンボンだろバットマンは身ぐるみを一枚ずつ剥がされていく事になるわけです。更に、自分との共通点を見たキャットウーマンからは一瞬、ミランダからはがっつりと裏切られたりで、自分の信じる正義と他者のそれとの違いを突き付けられます。前作での戦いの結果生まれたデント法にしても、(その内容は不明ですが)それが果たしてゴッサムシティを平和に導いたかというと全くそんな事はなく、とにかくブルースは身も心もボロボロなわけです。そしてあのラスト。もうそれまでの悶々、鬱々していたものを、一瞬にして全部まとめてくれました。これは歴史に残る感動のラストシーン、マイベストラストシーンに認定です。あ、アベンジャーズエンドゲームかなぁ・・・
[インターネット(字幕)] 10点(2023-03-20 14:55:02)
92.  RRR
第95回アカデミー賞授賞式の日に、やっと見てきました。まずは主題歌賞受賞おめでとうございます。話題の作品なのでたくさんの観客の皆さんと一緒に鑑賞させていただきました。みんなで映画を劇場で観る事ってやっぱり素晴らしいですね。クスッと笑ってしまうタイミングが一緒だったり、ナートゥダンスなんかはみんな静かに観てるけど絶対心躍らせニヤニヤしてるでしょう、それが感じられるってのが素敵ですね。3時間の上映時間で、似たようなお顔立ちの髭の人たち、耳慣れない名前や地名、反英独立運動というちょっと難しげな歴史ものであるということなどの心配は、まったく要らぬ心配でした。至って単純明快、マンガのようなど迫力のアクション、キレキレのダンス、友情、裏切り、大義、見所と言えるシーンが驚くほどストレートに入り込んできます。つっこむ暇すら与えてはもらえない。痛々しいシーンが多い気もしましたが、それも含めて全シーンが熱く本気で、脳内が感動でしびれました。まさに力業のインド映画。長くは感じなかった。むしろ、終わっちゃうの!?まだ観たい!ってくらい。ぜったい見た方がいい。
[映画館(字幕)] 10点(2023-03-18 14:05:54)(良:1票)
93.  七人の侍 ネタバレ 
丁寧なストーリーと、とことんまでリアリティー求めるアクション。これを「素晴らしい」という賛辞以外にどう表現したらよいのでしょう。迫力の戦闘シーンは特に評価されますが、この作品の魅力はそこだけにあらず、ある意味青春群像劇のように一人一人のエピソードを順に、それぞれ決して長くはない尺ではありますが、描いています。それも野武士を迎え撃つという本軸から外れる事なく一瞬にしてその人となりを感じられるのです。脚本の上手さを認めざるを得ません。個性的な侍に対し、百姓たちはあくまでも「群衆」として一個の塊のようにぞろぞろと固まって行動する無個性の集団です。イメージは真面目で弱く守らなければならない存在というよりはむしろ、ひもじく、うじうじと不幸を顔に張り付け、保守的で、人間の根っこにある意地汚さもしっかり保守してるような群衆です。そして百姓と侍を繋ぐ△、菊千代という存在。演じる三船敏郎にはとにかく花がありますねぇ。どんな役をやっても、ここでは下品なノラ犬みたいな偽侍で七人の内の一人に過ぎないのですが、どうしてもその際立つ花のオーラは消すことが出来なかったようです。少々鬱陶しいけど憎めないキャラクターをチャーミングに演じています。ところがやっぱり目玉は戦闘。敵の40騎は作戦ごとに一人ずつ数を数えながら消えていき、味方も一人また一人と死んでいく。決戦では泥臭く、豪雨の中文字通り泥まみれになりながら、あくまでも最初から最後まで一人ずつ一人ずつ(味方も含めて)朽ちていく。その演出がまた迫力と悲哀を併せ持っています。そしてそもそもが高低差のある土地を利用した戦策なので、走る騎馬隊とそれを追う見方の陣の動きが、左右にも上下にも縦横無尽に動き走りまくり、圧巻の戦闘シーンになっています。そういえばちょうど最近スピルバーグの「フェイブルマンズ」を見てきたのですが、そこで(黒澤監督も敬愛するという)ジョンフォードが言ってました。「地平線はどこだ」と。上にあるホライズンと下にあるホライズンを繋いだのがここでのロケーションなんだろうなぁなんて、フェイブルマンズの感想で書くべき事を、ここに書きたくなってしまいました。ジョンフォードから黒澤へ、黒澤から多くの映画人へと受け継がれて行く映画表現と映画愛、これを評価の+αにしてもしなくても、満点の作品です。どっこいそらそらさーっさ 百姓どもの勝ち、という悲哀のあるエンディングも全て、満点。
[インターネット(邦画)] 10点(2023-03-16 15:40:58)(良:2票)
94.  ラストナイト・イン・ソーホー ネタバレ 
美女二人とネオンサインのパッケージと、予告映像で見るカフェドパリなどのシーンから、タイムスリップミステリー的なものを勝手に想像していましたが、思ってた以上に普通にホラーでした。女の子がどんどん追い詰められ病んでいく姿は「ブラックスワン」を思い出しましたが、あちらの方はスポ魂ドラマでもありメッセージ性もあるので私にははまっていました。こちらは主人公がグレーの男たちに追われ絶叫し逃げ惑うシーンの連続。正直飽きました。代わりに例えばホラー色は減ってしまいますが、気を取り直してパーティーに繰り出す際お互いにハロウィンメイクを施し合っているような可愛いシーンとか、裁ちばさみで刺されそうになった女友達が警備員になだめられるようなシーンとか、ひと間違いで交通事故にあってしまった白髪の男の安否とか、そんな場面があっても良かったんではないかと。ま、あくまでも私の好みの話ですが。守護霊的なお母さんは娘の危機を救ってくれるでもなく途中全く出てこないので、サンディ=お母さん?と一瞬ミスリードされたりして(私だけ?)、ん~何だかいろいろ腑に落ちない部分が多っかったです。ラストの火事で全ての事件が焼き尽くされ何事もなかったように終わります。そこに長年隠されていた多くの死体が焼かれる臭いも感じられないままに。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-02-25 15:40:29)
95.  雨に唄えば ネタバレ 
いや~、ジーンケリー良いですねえ。歌って踊って監督してスタントもしちゃう。右に出る人はなかなかいないハイスペックな人物です。そのキレキレにしてコミカルな動きは日本のコメディアンにも大きく影響を与えたでしょうし、名シーン「シンギンインザレイン」は鬱陶しい雨(とりわけどしゃ降り)の日の歩行を少しだけ悪くないかなと思わせてくれるような素敵なダンスシーンです。ヒロインのキャシーのデビューを邪魔する事になるリナは憎まれるはずの役なのに、ジーンヘイゲンがまた可愛く魅力的に演じていました。もちろんドナルドオコーナーもデビーレイノルズも素晴らしくて、みんな何てダンスが上手で楽しそうなんだろうと、見ているだけで笑顔になっちゃいます。このように古いけど良いエンターテインメントを、ゲームとYOUTUBEとSNSとディ〇ニーにしか面白さを感じない若者たちにも見てもらいたいし、どうしたら見てもらえるんだろう、って厚かましくも真面目に考えてしまいますね最近。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-02-22 13:37:08)(良:1票)
96.  フェイク ネタバレ 
マフィアの世界に偽って潜入してる内に、本物の自分とマフィアの自分との境界線を見失いそうになるという話はよくありますが、他とちょっと違うところは、パチーノが演じるレフティという男の存在でしょう(実際には親分ソニーブラックとレフティを足したような人物がここでのレフティのようです)。そう、この潜入捜査官が主役ではないのですね。うだつの上がらない普通のおっさんみたいな兄貴分がいたからこそ、実寸大の自分を忘れずにいられたのでしょう。奇妙なバディものみたいな、皮肉な話です。結果粛清された兄貴は(実話ではソニーは)可愛がっていた弟分に騙されていた事を知って物凄くショックを受けたでしょうけど、「ドニーに会えて良かった」と。それが強がりだったのか、愛情だったのかそれは誰にも分らない、という話です。アルパチーノが小物チンピラなんて最初はちょっと意外な感じがしたけど、見事に演じていて感情移入してしまいます。もちろんジョニーデップの揺れる心も手に取るようでしたし、最後まで目が離せないドラマでした。お見事。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-02-14 12:12:30)(良:1票)
97.  素晴らしき哉、人生!(1946) ネタバレ 
肝心の天使がなかなか登場して来なくて、ちょっとダレ始めたかなと思った頃、8000ドル紛失からの主人公の感情の振り幅がスゴい。そこまではあまり感じなかったジェームズ・スチュワートのキャラクターと演技が爆発します。落としといて持ち上げて感動。完璧です。アメリカの良心と言われるだけあって「スミス都へ行く」でも純粋で応援したくなる青年を演じましたね。良い意味で、今だったら日本の若手俳優でもリメイクしやすそうなキャラ、つまりとても現代的で共感しやすいキャラクターです。そして、「クリスマスには是非これ運動」を起こすべき、一人でも多くの人に見ていただきたい、素晴らしい作品です。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-02-12 15:17:11)
98.  交渉人(1998) ネタバレ 
最後まで疑惑の人間が移り変わり、ケビンスペイシーまで主人公を躊躇なく撃ったりして、えー!?ってなった。騙されやすい性格なので断然楽しめました。アメリカ映画のスピード感ある交渉、駆け引き、取り引きの描き方はホントに上手い。それに比べて日本人は、足して100にならない取り引きをするような人種ですからね、それはそれで面白いと思いますが。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-02-10 10:49:16)
99.  アラバマ物語 ネタバレ 
 子供たちがわんぱくなのが良い。尊敬できるお父さん像が良い。お母さんこそ死別して居ないが、理想的な家庭、家族。お父さんが説明できない事は何もない。世の中の成り立ちとか、大人としてのご近所付き合いの立ち振る舞いとか、学校では他の子供たちと集団生活を送るうえで、しばし実行しなければならない「妥協」というものの存在とか、そういう生活の知恵みたいな事を少しずつ分かりやすく、しかし一定の威厳を保ちながら教えてくれる。少し難しいんだけど、無害の野鳥は殺すべきではないし、狂犬を駆除するのは勇敢な行動。これが正義なんだと教えてくれる。正義の象徴であるお父さんが弁護する黒人の裁判。その判決を受けて、結果二人の人間が命を落とす。お兄ちゃんは怪我をして、顔の見えなかった変人の隣人は、以外にも優しい恥ずかしがり屋の青年だった。正義とは何か、真実は正義か、良心が正しいのか、そこは妥協すべき事なのか・・・。子供目線の日常を描きながら、実はこの世の中で一番矛盾を帯びた、永遠のテーマのようなものを突き付けられる。力のある作品です。面白いとか楽しいとかではなく、観るべき、考えるべき、作品です。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-01-31 12:07:00)(良:1票)
100.  市民ケーン ネタバレ 
完璧な、ザ・映画、です。これぞ映画、ってやつです。場面の構図、入れ替わる時間軸で進んでゆく展開、一人の男の浮き沈み人生に見る悲哀共感同情という王道的ストーリー。すべて揃って完璧。とりわけカメラワーク、構図、絵コンテなどは、当時にしたら発明的だったんだろうと想像します。手塚治虫や萩尾望都などコマ割りが発明的なのと同じ様に(漫画は詳しくないので、見当違いだったらすいません)。モノクロなのでやや分かりにくい所もあり、ラストシーンのRosebudも、一瞬では何?ってなるのですが、そういうのも含めて、技術的限界がある中で、ここまでの物を作る事がまず凄い。たくさんの工夫が込められています。一つの謎ワードでサスペンス感を煽っておいて、実は男の人生が悲しいものだったという告白で終わる。それを取材する記者の顔が見えないのはストーリーテラーだから。とてもシンプルで感動的な作りの完璧な名作です。そして単純に疑問なのは、モノクロ映画って当時の映画人はどう感じていたのだろう。衣装や小道具などその色をそのまま伝えることが出来ないわけだから、そこへのこだわりはカラーのものと違うはずだし、そこには何のジレンマもなかったのだろうか。ただ、漫画、コミックにも今だに色がなくても読者は不便を感じないのと同じ様に、そこに色がなくても想像力の翼がそれを補足していたのでしょう(漫画のことは詳しくないのですが )。ここのレビューが立ち上がってから更に20年以上が経ち、その頃の60年前の作品が80年前の映画になった今、その間の20年の間にも、映像技術は驚くほど進み、ストーリーもネタ切れしないのが不思議なくらい出尽くしていますが、その中でも元祖映画、ザ・映画。素晴らしい物を残してくれてありがとうございます。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-01-22 16:00:27)(良:1票)
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