81. 秘密の儀式
ネタバレ 鑑賞後、ロンドンの空模様のように陰鬱な気分になる事請け合いな怪作。監督ジョセフ・ロージーは、エリザベス・テイラー主演で「夕なぎ」(原題「Boom!」当サイト未登録)という、この作品に負けず劣らずの世迷言台詞満載な問題作を連作でこしらえてます。最早この時期になると、僕が大好きだった『ジャイアンツ』『熱いトタン屋根の猫』あたりの、魅力的な世界一の美女リズは一体どこに行ってしまったんだろうと暗鬱たる気持にさせられる。エリザベス・テイラーという完璧マスクを、顔表面に張り付けた別の女優が口調を真似て出演しているみたい。鏡を見ながら「太ってる!」とか、自己パロディをいきなりやられてもこっちは困惑するだけ。取っ替え引っ替えの豪奢なお衣装も、体型に全く合わず悪趣味で幻滅。あ、ラヴェンダー一色で纏めたドレスだけはお似合いだったかも。ああ、彼女の事を絶対こんな風に語りたくはなかったのになあ・・・(泣)自分で登録した作品だから、レビューできっちり落とし前はつけないとね。唯一の取柄はモンシロ蝶か色素の薄い蛾のごとく、画面をフラフラと彷徨う痩身ミア・ファローが、例の不可思議な雰囲気を撒き散らしている点のみ。途中から出てくる、義父役R・ミッチャムは特に見せ場も生彩もなし。凄んでみせてもさして怖くないし。オハナシ自体も凡人には理解しがたい内容。で、結局なんだったんこれ?っていう、疑問符のみ空しく残る。 [DVD(字幕)] 4点(2022-07-21 22:33:41) |
82. 重役室
ネタバレ これこれ、こういう映画をオーソドックスな「オールスター映画」っていうんですよ!タイトルバックからして、画面の奥から次々とメインキャストの名前が真正面にドーンと出てくる手法。いいんだなぁ、この感覚が。巻頭しばらくは、一人称のカメラが人物の視線となって映し出され、こっちは身を乗り出して見守り、やがてぐらりとその視線がゆらぎ、その人物(社長)がこの瞬間事切れた事実を観客は知らされる・・・。後の巨匠R・ワイズ監督らしい、なかなか凝ったオープニングで掴みは万全。次期社長を狙い、当時の新旧取り混ぜた重役室オールスター達が、虎視眈々と駆け引きを繰り広げる展開。会社の業務内容が家具メーカーっていうのも面白い。ただ、製作当時時点ではどうしたってウィリアム・ホールデンが名実ともに一番客を呼べる大スターだったはずだから、最終的に彼が勝利を収める形になるのが、何となく途中で読めてきちゃうんですよね。彼みたいな職人堅気の技術屋さんは、むしろ副社長的ナンバーツーの立場のほうがサマになるのになあ・・・と、自分は思って観てました。敵対する、経理部長フレデリック・マーチの言う事も、裏でやってる事はともかく、もうひとつの正論のような気もするし。ホールデンの妻役、ジューン・アリスンは、いつも通りの彼女で清涼剤的な役どころ。登場シーンはあまり多くないけれど、彼女があの笑顔で画面に出てくるたんびに何となく嬉しくなった。 [DVD(字幕)] 8点(2022-07-20 22:32:43) |
83. 寒い国から帰ったスパイ
ネタバレ リチャード・バートンって役者として過少評価され過ぎですよね・・・。例の『クレオパトラ』前後、エリザベス・テイラーとのすったもんだスキャンダルがおそらく影響しているせいだと思うけど。この映画や『イグアナの夜』なんかを観ると、ただ黙っているだけでも女性が放っておかないような男の色気に溢れてますもん。彼の好演ももちろんだけれど、ここでは名前からしていけすかない、敵役のドイツ司令官「ムント氏」が憎々しげにポートレートされていて、観客の焦燥感をこれでもかというくらい煽り立ててくれます。生真面目な作風のM・リット監督らしく、折り目正しい端正なスパイ映画に仕上がっていました。原作通りだとしても、このラストの描写は・・・ツラいなあ、哀しいなあ・・・。きっと彼は最期だけはスパイとしてではなく、感情に流される「人間」として人生に終止符を打ちたかったんでしょう。うん、これも男の素晴らしい生き様だと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-19 21:28:26)(良:1票) |
84. セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進
ネタバレ ロック・ハドソンと言えばまず私が偏愛する『ジャイアンツ』(10点)の主人公、次にドリス・デイとのコンビで量産されたライトコメディ作品群での明朗で粋なスーツ姿がイメージとして真っ先に浮かんできます。おそらくこの映画、その作品群がマンネリで飽きられ始めた時期に、演技派へのシフトチェンジを狙い主演したのではないかと。結果的には及第点。外見をチェンジして全く別の人間として再生するって内容は、アニメやドラマでも今となってはさほど目新しくないネタだけれど、おそらくこれが先駆けになった映画じゃないかな。しかもかなり大仕掛け。導入部から手術直後の、外見がイケメンロック君になるまでは、モノクロの凝ったカメラワークも独特で、これ世紀の大傑作ちゃうんか~?って、期待したけれど「転身」してからが少々失速。ワイン祭り?のシークエンスとか、やたら長ったらしい。主人公が徐々に錯乱していく様を描きたかったんだろうけど、観ているこっちまで不快指数MAXでアタマがやられそうに。題材的にこの種の映画の先駆けという点、只事ではない秀逸なカメラワーク、ラストに向けまたグッとテンションが盛り上がるのでこの点数で。良く出来た実験作だと思います。観ながら何故かカフカ原作の『審判』(7点)を思い出しました。内容は違うけれど、あれもモノクロ画面がやたら怖かった。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-18 22:37:44) |
85. 偽の売国奴
ネタバレ 50年代に代表作を連発し、順調にキャリアを重ねて全盛期を迎えたウィリアム・ホールデンですが、60年代のある時期から、いきなりガクッと老け込んでしまったんですよね。でもまだこの作品では実に颯爽とした、僕が大好きだった身のこなしが軽くスマートでカッコいいホールデンが見られます。よく「危機から危機へのつるべ落ち」っていうけれど、この映画こそ、この形容詞にピタリ当て嵌まるサスペンス映画。ヒッチコック先生の、この時期のスパイ映画と比較しても全く遜色なし。いや、「引き裂かれたカーテン」「トパーズ」なんかより遥かに面白かった。冷戦時代のスパイ映画は、数多く製作されたはずだけど、これは実話ベースの第二次大戦中の対ナチス相手のスパイ映画。題材的にも興味深かったし、何よりラストまで手に汗握るスリルの連続。クライマックスと呼べる山場のシーンが、これでもかってくらい何度もあって楽しめました。場所から場所への、乗り物移動サスペンスがお好きな方には特におすすめ。ヒロインも適役だし、脇役も充実。中でもナチスシンパの眼鏡少年が巧く使われていました。原題「偽造者」。邦題の「偽の売国奴」、う~ん、確かにその通りの内容だし偽りなし。悪くはない、悪くはないんけどなあ・・・これだと、どこか安っぽい二流活劇を思わせる。なかなかの隠れた秀作なのに、今ひとつ一般的にも浸透していないのは、このタイトルにも責任の一端があるんじゃないかと思うんだが。 [DVD(字幕)] 8点(2022-07-17 22:38:11)(良:1票) |
86. サンダウナーズ(1960)
ネタバレ 「サンダウナー」っていうのは、後半出てくる競走馬の名前。映画史的に殆ど語られる事がない映画だけに、地味な佳作かと思いきや、とんでもない。家族、親子の愛、夫婦の絆、仲間達との絆、オーストラリア大地の雄大な景観、飛び交う羊たちの群れ、メルボルンカップ、山火事スペクタクル・・・と、内容てんこもり盛りだくさんの御馳走映画でした。しかし長編小説のダイジェスト映画版などでは決してなく、きちんとした一個の映画作品として成立しているのは名匠フレッド・ジンネマン監督の力量と演出の巧みさによるもの。この監督の作品に出演する事が、アカデミー賞受賞への近道と当時から言われていたようですが、この映画でも、各々の役者から好演技を引出し且つ、個性を損なうことなく画面に生きている人間像として観客に納得させてくれる、ホント素晴らしいと思う。奥さん役デボラ・カーの演技巧者っぷりは、これまで観た作品からも当然だと解ってはいましたが(意外な色っぽさもここで引き出され6度目最後のアカデミー賞ノミネーション)、定住嫌いの旦那役R・ミッチャムがここまで良い役者とは。三回目の共演作とあって呼吸もピッタリ。映画を観終わって即思い出したのは、昔観てたアニメ「マンガニッポン昔ばなし」のED「いいな、いいな、人間っていいな~」のテーマ曲。過去の諸作に比べ若干緻密さには欠けるものの、この作品はジンネマン監督流の「人間賛歌」。タイトルが原題も含め複数系なのも納得。 [DVD(字幕)] 8点(2022-07-14 08:48:27)(良:1票) |
87. 走り来る人々
ネタバレ 『急いては事を仕損じる』昔ながらのこの格言の意味を、口八丁手八丁な主人公フランク・シナトラ君に投げて説教したくなる、そんな気分にさせる映画です。『地上より永遠に』で脇役だった頃はそうでもなかったのに、この時期になると画面から漂う、彼の「俺様」感がやけに鼻についてくる。そもそも彼が断筆中とはいえ「小説家」っていう柄にとても見えない。アメリカのスモールタウンで繰り広げられる、コメディというよりは人情劇。作品全体の雰囲気は良いし、何より語りたいのはこの作品で初めてアカデミー賞にノミネートされた、シャーリー・マクレーン!可笑しさの中に切ない哀しみの表情を滲ませる、このジニーという役は、後年の彼女の十八番となったキャラの原点といえる適役。この映画での好演が、彼女のコメディエンヌとしての進路を決定づけたような気がします。何があっても帽子を脱がないD・マーティンはじめ、他の脇役陣も粒が揃っているのに、主役のシナトラ氏だけがどうにも私には食い足りないゆえ、この点数に留めます。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-11 23:03:51) |
88. 日本やくざ伝 総長への道
ヤクザ映画、今に至るまで、ほとんど未鑑賞。シドニー・ポラック監督「ザ・ヤクザ」(6点)くらい。でも、あれは変化球的で純粋なヤクザ映画ではなかったような。東映の動画配信で、たまたまこの作品があったので観てみました。フツ―に面白かったです。ヤクザ映画での、傑作か凡作かの基準がイマイチ初心者の自分にはわからないんですが。健さんはここでもガマンにガマンを重ね、最後の大立ち回りで怒り大爆発、観客にカタルシスを与える後年のキャラを踏襲しているようでカッコいい。健さんを支える脇役陣もすこぶる充実。流血度もさほどではない。この作品あたりがヤクザ映画のスタンダードなら、もっと秀作と言われている作品群もこれから鑑賞してみたいと思います。映画ジャンルの食わず嫌いって、やっぱり良くないのかもしれませんね。色々これまでの事を後悔。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-07-08 06:53:50) |
89. 三つ数えろ
ネタバレ 苦手ジャンルの映画を今さら克服してみよう!シリーズ第二弾ハードボイルド編。「マルタの鷹」(5点)と、たいして面白さ自体は変わりませんが、こっちのが、出てる女優陣が豪華で華やかな点を鑑みて点数上乗せ。しかしこの映画も本筋のストーリーから脇道に逸れる逸れる。ハードボイルド小説や映画が好きな方って回り回って元の位置に無事着地するスリルが好きなんかなあ・・・。などど邪推してみたりする。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-05 22:23:53) |
90. マルタの鷹(1941)
ネタバレ 苦手ジャンルを克服してみようシリーズ第一弾。小説にしろ映画にしろ、自分は昔っから「ハードボイルド」っていうジャンルが大の苦手です。あ、懐かし土曜ドラマ「Gメン75」は大好きでしたが。この歳になって、食わず嫌いはいかんと思い、最近何作か名作といわれる作品を鑑賞しましたが。。。。やっぱりダメでした。監督が職人ヒューストンであろうが、ボガートがいくらハマリ役であろうが、やはりダメなものはダメ。どうして本筋を真っ直ぐに追わず、隙あらば横道に逸れていく展開になるだろう・・・?不思議。ハードボイルド映画っていうジャンルは、そもそも本筋ストーリーを追わないのが王道なんでしょうか。私は台詞を聞きながらついていくのが精一杯でした。綺麗な女優さんでも出してくれればまだしも、この女優さんじゃてんで共感も湧かないし同情も出来ません。ミスキャストも甚だしい。 [DVD(字幕)] 5点(2022-07-05 22:11:47) |
91. 僕の村は戦場だった
ネタバレ 齢50を越し、レビュー数1300本も越して今回生まれて初めてロシア(ソ連)映画を鑑賞しました。みんなのシネマレビューは、自分が鑑賞した映画の、制作国の本数まで確認できるのが便利ですねー。難解と言われるタルコフスキー監督作品という事で、恐る恐る鑑賞しはじめたところ・・・あれれ?予想反して、すごくわかりやすい・・・。わかりやす過ぎて逆に拍子抜け。オハナシそのものよりも、視覚的に記憶に残る場面がかなりありました。本筋とはあんまり関係ない、白樺の森の中で軍人さんとその恋人が延々と語り合うシ―ンや、クライマックス、敵地に小舟で乗り込む水辺の沼地での美しくも恐ろしい白日夢みたいなシーンが特に。ただ、決して手放しで感動したりとか面白いというタイプの作品ではないので、点数はこの辺りで留めておきます。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-02 22:32:34) |
92. 飛べ!フェニックス
ネタバレ 傑作です。「大脱走」や「パッチギ!」なんかと同じく、身体中の熱い血がたぎってくるような、そんな男騒ぎの映画です。自分がこの映画の中のキャラクターならどのタイプに当てはまるのか、一晩じっくり検討を重ねたくなります。どんなシーンでも、常にリーダー的存在(になりたがる)J・スチュアートや、危険を顧みず死地に赴く勇気あるP・フィンチはまず真っ先に消去。まるで犬死にする為だけに出てきたようなE・ボーグナインでもない。理系蘊蓄人間とは程遠い、軟弱文系人間だからH・クリューガーは絶対有り得ない。一見クールだけどホットなイケメン医師クリスチャン・マルカン氏も違う。あと目ぼしいところ・・・力自慢のG・ケネディか、仮病の達人軍曹さんあたりか、やだなぁ・・・この辺は・・・。あ、副機長の走れ正直者リチャード・アッテンボロー君がいたか。最後まで生き残るし。よし、今回の僕はキミに決定だっ!おめでとう!ラスト、フェニックス号が飛び立つ時、仲間達の墓標を映すワンショットにはホント感動しました。 [DVD(字幕)] 9点(2022-06-30 21:39:07)(良:1票) |
93. 霧の夜の戦慄(1947)
ネタバレ 若き日のジェームズ・メイソン氏には、ホントなんとも表現し難い男の色気がありますね~。どんなに悪い役どころを演じてても、ふとした時に見せる、例の迷い犬のような、情けを乞うような、彼にしか表現することが出来ない表情をしてみせると、たちどころに演じてるキャラクターに観客を無条件に共感させてしまう、そんな役者ってなかなかいるもんじゃないですよ。この地味な作品も彼の演技力と魅力が映画本来の出来を数段押し上げてるってイメージ。邦題に偽りはないけれど「戦慄」とはちょっと違うような。 [DVD(字幕)] 7点(2022-06-29 21:19:10)(良:1票) |
94. 犯人は21番に住む
ネタバレ 真犯人が単独犯ではなく複数犯だったっていうオチの意外性はあるものの、運びがいまひとつルーズで映画に乗り切れませんでした。いや、わかるんですよ、ヒッチコック作品を例に出すまでもなく、優れたサスペンス映画にはスリルと背中合わせのユーモアがあった方がより効果的だっていう事は。でも、それにしてもこの作品はユーモアの方がサスペンスに比べてより勝りすぎているような気がしました。前知識なくクルーゾー監督作品という事で、もっとグルーミーなフレンチノワール作品を期待してしまった自分がいけないんだと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2022-06-29 20:58:09) |
95. 日本人の勲章
ネタバレ これは一言で言えば、映画史的にもよく言われている通りジャンル的に「現代版異色ウエスタン」っていうくくりなのかもしれないけど、全くもって不思議な感覚の映画。他で同類の映画とか、ちょっと直ぐには思い浮かばない。そういった意味でも、かなりの異色作。太陽が照りつける中、めったに列車が止まらない駅舎に一人降り立つのがスペンサー・トレイシー。待ち構えるのが、ロバート・ライアンにE・ボーグナイン、リー・マーヴィンにW・ブレナン曲者役者四人組+αときたもんだ。いや、この役者陣達が雁首揃えて安ホテルロビーでひとつ画面に収まってるだけで、画柄的にも全編ワクワクドキドキしっぱなし。善人役より、断然悪役が似合うロバート・ライアンが中でも一番の儲け役。しかも着こなしがやたらスマートでカッコいい!この邦題は全編を観終われば、それなりに意味を咀嚼しつつ納得。ジョン・スタージェス監督って、「ブラボー砦の脱出」や代表作「荒野の七人」でもそうだけど、構図の捉え方が抜群に巧いんですよね。いやー、面白かった! [DVD(字幕)] 9点(2022-06-28 22:24:28)(良:1票) |
96. 幸福の設計
ネタバレ 後年サスペンス映画に手腕を発揮するJ・ベッケル監督作品。この作品はサスペンスでもないごくフツ―な内容のオハナシなのに、時折妙にドキドキさせられる場面も幾つかあったりして面白かったです。屋根に上ってラジオの回線を繋ぐシーンとか。地下鉄の駅のシーンや、パリ市内の何気ない生き生きとした市井描写が、他のフランス映画ではなかなかお目にかかれない独特の捉え方をしていると思います。宝くじかあ・・・私は年末ジャンボは数年前購入を止め、WIN5を時々買ってはいますが、まあ、当たらない事当たらない事。作品の性格的にもハッピーエンドなラストで良かった。邦題の「幸福の設計」っていうタイトルも地味だけどいいよね。 [DVD(字幕)] 8点(2022-06-28 09:52:19)(良:1票) |
97. 回転
ネタバレ 典雅な英国女優デボラ・カーの魅力と演技力が堪能出来る、お上品な準ホラー映画。「レベッカ」「アザーズ」「たたり」とか、人里離れたゴージャス大邸宅スリラージャンルがお好きな方ならきっとこの作品も楽しめるはず。私は独身オールドミス家庭教師の欲求不満が生み出した「誇大妄想」が、不気味なチルドレンよりこのオハナシに実は深く介入していたのでないかと解釈しましたが、原作未読の為その点はハッキリと断言できず。上品な外見とは裏腹に、あくまで心理的に淫らな内面を時折垣間見せるこの役に、彼女ほどの適役はいなかったと思います。マイルズ君はおやすみのキッスした時、舌先でも彼女の口に差し込んでいたのかな?やるなー、ガキのくせに。とはいうものの、貴婦人デボラの口元も思わず半開きになってたって事は・・・。いかんいかん、オッサンの誇大妄想。 [DVD(字幕)] 7点(2022-06-28 09:32:40) |
98. 麻雀放浪記
麻雀を知らなくても楽しめるけど、知っていれば、よりもっと深く楽しめるという映画。和田誠さんという方は、自分がそもそも映画好きになった上では欠かせない大いなる指針となった恩ある方。映画に関する書籍で、人生で一番最初に購入したのは「ロードショー」とかのファン雑誌を除けば、和田氏と山田宏一氏の対談集「たかが映画じゃないか」(文庫本版)。ああ、こういう風な映画の観方もあるんだと、両氏の嫌みのない映画通っぶりにひたすら感心しきりで。昔の映画を積極的に観るようになったのも、和田さんの影響。イラストレーターがご本業だと知ったのはずっと後。奥様が平野レミさんだと知ったのは、実はお亡くなりになってからでした・・・。監督二作目も三作目もそれなりには楽しめたけれど、このデビュー作が一番映画作品的には面白かった。片山まさゆき氏の初心者用麻雀本を授業中に廻し読みしてたバカ学生時代に戻りたい。このコロナ禍がひと段落ついたら、当時の雀悪友連中に声かけて卓囲みたいと思います。麻雀って(フリー除く)少しだけよそよそしい知り合い同士をトモダチに格上げする、一番手っ取り早いコミュニケーション方法だったんですよね、当時は。 [ビデオ(邦画)] 9点(2021-05-26 20:49:32) |
99. オーケストラの少女
『ザッツ・エンターテインメント』(9点)でジュディ・ガーランドとディアナ・ダービン、当時の天才少女シンガーお二人の、MGM社との契約の顛末がライザ・ミネリから語られていましたね。確かにこのディアナ・ダ-ビンという少女、かなりアクが強いジュディよりも、一見万人受けするフェアで可憐な美しさ、口を開けば歌声もソプラノが上手くて耳に心地よい。ただ、ココロの奥に引っ掛からないというか、フックが足りないというか、後々まで引きずられるような魅力には欠けるような気が。それが今となっては映画史的に、この「オーケストラの少女」唯一作でしか、語られなくなった原因ではないかと思うんですが・・・。 [DVD(字幕)] 6点(2021-05-11 21:04:05) |
100. 朝の波紋
ネタバレ 当時この映画、「高峰秀子フランスからの帰朝第一作(!)」と、大々的に銘打たれ公開されたらしいです。「東京のえくぼ」(6点)同様、彼女の長い長い映画出演歴の中でも、ひときわふっくらふくよかな、貴重なお姿を拝見することができます。彼女の自伝「わたしの渡世日記」によると、この半年間のフランス渡航前後っていうのは、周囲で色々なゴタゴタやら「波紋」があった時期だったにもかかわらず、そんな混乱した背景を一塵たりとも感じさせない、普段通りの魅力的な高峰秀子を観る事が出来、もう自分はそれだけで感無量。英会話を自由自在に操れる、キャリアウーマン的役どころっていうのも新鮮。映画自体は淡々とした運びで「煙突の見える場所」(8点)しかり、いかにも戦前からの松竹の名匠五所監督らしい作品です。自社の切れ者のイケメン同僚(岡田)とライバル会社のヌーボーとした営業マン(池部)との狭間で揺れ動くヒロインの心情も、意外にあっさりスッキリで、それほど恋愛に比重を置かずに描かれ好感を持ちました。ラスト近くになって、唐突に尼僧姿で登場してきた香川京子にはびっくり。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-05 09:03:09) |