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Nbu2さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 344
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

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81.  フープ・ドリームス 《ネタバレ》 
貧民街の黒人少年二人が才能を見込まれてバスケットの名門高校に入学し、自分達の夢=NBA入団→「フープ・ドリームス」を叶えるべく努力する姿を4年間にわたって記録したドキュメンタリー。なのだがこれは「井の中の蛙が大海を知ってしまう」残酷さが描かれている。才能あった少年ウィリアムは怪我でひざの手術をし周りとついていけなくなったあげく、ガールフレンドが自分の子供を出産した事で心が折れてしまう。もう一人の少年アーサーは才能が花開かないまま奨学金のバックアップが足りなくなってしまい、名門高校を退学。公立高校に再入学し目標であったトーナメントには出場出来たが名門大学に進学できるかはわからない。日本でいうところの「野心/ハングリー」という言葉の意味合いが諸外国ではまったく違う、重いのだという感慨を初見時の私は感じたものでした。あれから20年の時が経ちますが貧困から脱する為の「スポーツ」の意味はますますもって増大しつつあります。そしてマニー・パッキャオやレブロン・ジェームス、リオネル・メッシの下には何千何百万人のウィリアムやアーサーがいるのだと考えさせられました。DVDは廃盤ですが、Netflixとかでは視聴可能のはず...多分。少々上映時間長いけど機会があれば。
[映画館(字幕)] 8点(2016-08-01 17:29:13)
82.  真田風雲録 《ネタバレ》 
この時代劇に「爽快感」などを期待してはいけない。真田幸村/猿飛佐助で加藤泰+中村錦之助なんだから「風と女と旅鴉(58)」「瞼の母(62)」を期待していた観客からすればなんだこりゃ、であり関西では上映6日間で打ち切られたという失敗作であったのもむべなるかなである。ただしこの作品が現在まで残っているのはそんな「どっちらけ」感によるものだったのだなぁと思っている次第。福田善之原作の脚本を読了する機会があり基本は60年代学生運動の風刺=どんなに立派な理想論/イデオロギーを掲げても結局人間の欲望に挫けてしまう現実+若者の情熱を悪用する偽善者たる大人たちという主題は変わらないのだが、若者のエネルギー=狂騒感溢れる馬鹿馬鹿しさ・くだらなさを存分にフィルムに映し出すことが出来た(ジェリー藤尾やミッキー・カーチス+トッテチッテターな戦争シーン)点で良い映画化なのだろう。さらにこの作品が後世の人々に影響を与えた事実も忘れてはならない。助監督鈴木則文はさることながら勝間田具治は東映アニメ―ション演出家として名匠。さらにもう一人...脚本家福田善之は大河ドラマ脚本(風と雲と虹と)だけでなく出演の経験もあり、大河ドラマ史上脚本・出演した脚本家はこの人と三谷幸喜だけ(wikiより)。...あれ、もしかしたら堺雅人、転んでそのまま槍にグサー、なのかな。加藤泰作品としては中級者におすすめ。
[映画館(邦画)] 7点(2016-06-26 20:52:25)(良:1票)
83.  旅情(1955) 《ネタバレ》 
いきなり暴言から始まる事をお許し願いたいのだが、私はこの映画におけるロッサノ・ブラッツィの役柄が大嫌いだ。不仲であるとは言いながら妻帯者、でもって「ビフテキが食べたくてもお腹が空いてたらラビオリを食べなさい」ってそこまで自分の下半身に忠実になってどうするねん!そこにマイナス点を入れる事にした。…ところがそれ以外は本当に名作。ベニスの街を映し出すショットの見事さ=主人公ジェーンにとっての「夢の世界」であったんだな、という点に物凄い説得力を感じてしまうし、小道具の使い方/カメラやくちなしの花などは印象深い。何より当時47歳のヘップバーンがアラフォーのハイミスを演じてしまって全く違和感を感じさせない、その存在感(恋へのよろめき・揺らめきを感じる)・演技力の素晴らしさは今の映画界には不在なのだなぁと思う。そして監督リーンの作品がやっぱり自分にとって一番映画が「総合芸術」だと感じさせる。多少の贔屓目がどうしてもついてしまうのでこの点数。【(2018年9月追記):上の方のレビューを拝見し、カトリック教会そして信者の、離婚に関する考え感覚に付いて私失念しておりました。何とも恥ずかしい限り...とはいえやっぱりロッサノ・ブラッティの役柄は苦手なのでこのままに。日々これ、勉強ですな。】
[映画館(字幕)] 8点(2016-05-09 13:44:00)
84.  夜の河 《ネタバレ》 
主人公が恋を諦めてキャリアウーマンとして改めて生きてゆく事に決めた経緯が男性陣(演者の演技は良いし時代的な背景もあろうが)の「だらしがない」(としか言いようのない)性格に起因してしまっている点、加えてメロドラマにしても都合の良すぎる展開・余計な描写(特に私はラストのメーデーの描写は蛇足と思っております)といった欠点あるこの作品を何故故にレビューするのか。まずは日本を代表する名カメラマン宮川一夫の撮影/カラー描写の素晴らしさが一点。京都出身の彼が撮りだした日常風景や色彩配置の各ショットは今の邦画ではもう映し出せないし、出せたとしてもその「空気」までは抽出出来ないと思わせる。そしてもう一点は山本富士子の「美しさ」をフィルムに捉える事の出来た一本であった事に尽きるのではないか。後年五社協定事件(1963年=フリーになろうとした彼女に親会社の大映がそれを許さず五社協定の名を借りて映画界から締め出した事で彼女はTV・舞台女優としての生き方を余儀なくされた)により10年しか映画女優として活動できなかった彼女の代表作の一本になった事でこの作品は映画史に名を残した。ま、私としては「彼岸花(58)」「女経(60)」とか「美貌に罪あり(59)」くらいの少しムッフーンな方が好きなんだよう...ムツフーン。...ゴホンゴホン、早く大映はブルーレイ仕様のデジタルリマスターやっちゃってください!
[映画館(邦画)] 7点(2016-05-05 22:06:53)
85.  濡れ髪牡丹 《ネタバレ》 
面白さ、という点で「濡れ髪」シリーズ最終作のこの作品が私は大好きだ。それは京マチ子のツンデレぶり(私はこの映画で彼女がめちゃくちゃ魅力的である事を知った)もさることながら、雷蔵コメディの最高傑作という点に尽きる。前作群における雷蔵の立ち位置は本郷功次郎や川崎敬三を導く「出来る」男で2.5枚目位の立場。だがこの作品における彼は完全に3枚目なのが素晴らしい(「~は免許皆伝の腕前であ~る、ウン!」なんて素敵な笑顔だろうか!)。剣術の達人にも関わらずもろ肌脱いだ京マチ子に気が動転しコテンパンにやられる様や、甲州流早駆けを駆使して飛ぶように去ってゆくところも(時代劇らしからぬ早回しカットの連続で)間の抜けた感があって面白い。多分雷蔵さん自身の素はこんな明るい人だったんだろうなぁと思わせる「明暗含めた役者としての幅」に感服させられるのだろう。ちょっと高めだけどこの面白さにいい点つけちゃおう。本格的時代劇を求める人には?だがいいんだ、楽しければ!機会があればぜひ。
[映画館(邦画)] 8点(2016-04-20 18:29:38)
86.  晩菊 《ネタバレ》 
きん(杉村春子)と田部(上原謙)の関係行く末のみを描写した林芙美子の原作(青空文庫で公開されてますよ~)と違い、この成瀬作品ではきんの昔の花柳界仲間(細川ちか子+望月優子+沢村貞子)の侘しい状況も描かれる。結局はそれぞれが愛する者から縁を切られる/薄くなっていくという孤独化まっしぐらな展開になっていくのだが、不思議と悲壮感を感じなかったのは旧作「稲妻(1952年)」と同じ。つまり杉村には(不安はあれども)情を断ち切って一人で立ち向かう「生命力」を感じるし、細川+望月だって失われたものは多かれど彼女らの「友情」は残っているという希望がある(望月のモンロー・ウォークは凄い)。原作ラストの絶望感(原作の田部=唾棄すべき男ですわこりゃ)と比べて好感度アップだし多少甘いがこの点数。加えて役者。もちろん皆様素晴らしいのですが今回は細川ちか子さんの存在感につきますな。気怠さというか倦怠感というか...確実に「陰のある女」として昔は人気だったのだろうという説得力がある。いゃ〜あ、良い映画見たなぁ。【追記】で、このレビュー上で「DVD化希望」と言ってはや5年。この度「あらくれ」「夜の流れ」と合わせてやっとこさ2021年にDVD化ですよ。この調子!
[映画館(邦画)] 9点(2016-04-11 22:54:02)
87.  離愁(1973) 《ネタバレ》 
第二次大戦初期ドイツ軍のフランス侵攻が激化する中、疎開の為汽車に乗り込んだフランス人の修理工とユダヤ人であるドイツ女性との一抹の恋。とにかくラストシーンの素晴らしさにつきる。列車での疎開そして別れから3年後、男はレジスタンスとして捕えられた女との共謀を疑われナチスの秘密警察に呼び出される。彼女を「知っている」と認めたら彼もまた死刑になるのは自明の理だ。秘密警察の係員(ポール・ル・ペルソン=隠れた名演)に知らない旨を伝えたはいいが係員は彼女を呼び出し対面させる事で揺さぶりをかけてきた...。でラストは皆様のご想像通りなのだが、知らぬ存ぜぬが出来なかった男の想いそして彼を守る為に必死に抑えていた感情が崩れ号泣する女、ジャン・ルイ・トランティニアンとロミー・シュナイダーの演技とその心情を表す効果音やカメラワークがベタだけどいいんだよなぁ。「旅愁」「旅情」「哀愁」同じようなタイトルの作品多いけど混同しないように。機会があればぜひ...にもかかわらずDVDはもちろん廃盤。おいおい~。(追記:2016年にTSUTAYAの「隠れた名盤発掘コーナー」シリーズで待望の復刻。機会があれば)
[映画館(字幕)] 8点(2015-08-02 17:56:05)
88.  冬構え<TVM> 《ネタバレ》 
山田太一+笠智衆コンビによるNHKドラマ三部作の二本目は、人生の晩年に付きまとう「老いと孤独」に対してどうしたら「冬構え」できるのか考える一本。自死する場所を求め遺書を携え東北を彷徨う老人だが、私が思うにこれは彼にとって死への旅程ではなく「老齢に向き合う=生きてゆく為の活力を再び見いだす」為の確認作業ではなかったか。ふとした事から知り合う寒村の老人(藤原釜足)が呟く「人間生きてることが一番ええって言えと。だけども生きてることが一番だと、そんなことは言えねぇ...」ほんとうそのとおり。ただ絶望の内に終わらせるよりも今日よりも違った景色が見えるかもしれない明日に懸けてみるというのも悪くはないのではないか、そう実感したであろうラストの笠の笑顔に救われる。それにつけても笠智衆+沢村貞子/小澤栄太郎/藤原釜足だよ...今のTVドラマではまったく望めない、「本当の」演技だよねこれ。NHKオンデマンドでも視聴可能なので機会があればぜひ。
[地上波(邦画)] 8点(2015-06-19 16:46:26)
89.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
将軍家斉に扮した田中小実昌(!?)が側女を見定めているそのファーストシーンから素っ頓狂を画に描いた展開が繰り広げられるのでそこは覚悟していただきたい。(特に太鼓の音と栗鳥の巣の下りは死ぬかと思うぐらい苦笑いが止まらない)本当下種な部類に入る映画だが、私が感動した点は2点。まずは演出・撮影・演技等東映映画製作関係者のプロフェッショナルな取り組みで制作された娯楽作であるという事。それは冒頭における屋外におけるモブシーン撮影や屋敷や城内のセットの造りに見られ感服の至り。また観客の期待をはるかに上回る熱演を見せる各役者陣(サンドラ・ジュリアンもすごいが個人的には名和宏と三原葉子のプロ根性)には胸を打たれるものがある。そしてもう1点は鈴木監督のこの作品に対する想い。ラストシーンで示される「あらゆる生命の根源たる性を支配し管理検閲する事は何人にも許されない~」。日活ロマンポルノ路線に方針転換→警察庁に刑法175条(猥褻物陳列罪)であると摘発を受けたのが1972年(日活ロマンポルノ裁判は73年から)この作品の制作年にあたる/作中の閨房禁止令を『法令第175条』と呼びひたすら連呼している事=一見して馬鹿馬鹿しさてんこ盛りのこの作品に『「表現の自由を侵害する」為政者』をこのバカ殿で示し、糾弾していたのだ。そこにかっこよさを見る。機会があれば、ぜひ?(鈴木監督初心者は「トラック野郎」シリーズから!)
[映画館(邦画)] 7点(2015-05-05 15:53:00)
90.  ながらえば<TVM> 《ネタバレ》 
こんなに素晴らしいラブストーリーだとは思わなかった。突発的に旅立った主人公の当初の目的は単に病床の妻を案じての心配から来る「見舞い」で、自身の本心には向き合っていなかった。(切符の紛失+電車乗り遅れでお金がないまま一晩を知らない場所で過ごす羽目になる=信念の欠如を暗示しているのが上手い)それがたまたま泊まった宿屋で宿の老婦人に不幸があった事・亡くなった妻との想い出を語る宿の老主人(宇野重吉=名演!)等の後押しもあって「愛してるという想いを伝えたい」という真の目的へと変わるその経緯が自然で、胸打たれてしまう。そしてラスト、病床の妻に向かって背中を向け、泣きながらつぶやく「おまえとおりたい」。一般的に「御前様=好々爺的」イメージしか無かった俳優笠智衆の気骨溢れた男っぷり(寝ている老妻にキスしようとしてる!)に改めて名優だ、と実感させられました。65分という短い時間にこれだけの内容を詰め込んだ、この当時の山田太一の作家性、まったくもって素晴らしい。機会があればぜひ。
[地上波(邦画)] 9点(2015-01-02 19:29:07)(良:1票)
91.  緋牡丹博徒 花札勝負 《ネタバレ》 
70年代東映エンターテイメントの中核を担っていた鈴木則文監督。「トラック野郎」シリーズや東映ピンキー・バイオレンスの諸作品は私にとって青(性)春の良き想い出です。ただ脚本家としての技量も優れたものがありその代表作としてこの一本を挙げさせていただきたい。彼の造形した緋牡丹のお竜=矢野竜子(藤純子)シリーズは正直言うと「主役を女性にした東映任侠映画」それだけのことでB級の域を抜け出せないワンパターン物。ところが名匠加藤泰が監督したこの作品に関してはお得意のローアングルとロングショット+時に挿入されるクロースアップの演出術が冴えわたっていることもさることながら、「ニセお竜」が蔓延っている賭場に本物のお竜が流れ着く、という脚本展開は素晴らしいと思います。これによりお竜自身の「博徒であること=女性であることを封印している」寂しさが強調されニセお竜に足を洗い、女性の幸せを求めるシーン(また~いかんとよという博多弁が良いんですね)+好意を持っている高倉健への抑えた視線に物凄い説得力が加わってしまう、今は亡き新宿昭和館のスクリーンで酔っ払いがお竜さ~んと騒ぐのも完全に理解できる情景。これはB級グルメがミシュランの星を取ってしまったような奇跡の一本でしょう。そしてそんな素晴らしい映画世界を教えてくれた鈴木監督のご冥福をお祈りいたします。
[映画館(邦画)] 9点(2014-05-18 09:44:27)(良:1票)
92.  下郎の首 《ネタバレ》 
日本映画史に名を残す名匠伊藤大輔の佳作として、「王将」(48年)ほどではないが印象深い本作 。とはいえ同年に公開された『同じ槍持ちの下男・ラストの殺陣』を主題とする内田吐夢の「血槍富士」の評価の方が高いし、実際この映画を鑑賞するとそういった世評もむべなるかな、という感はある。純朴な下男を演じる田崎潤が嵯峨三智子演じるお市に惚れられるという展開は説得力に欠け(それこそ片岡千恵蔵ならともかく)、なによりも片山明彦演じる主人新太郎が下男の身柄を敵に引き渡すか否か悩むその心情をいちいちモノローグで説明している、という点は伊藤大輔らしからぬ、キレ味悪い表現として点数は厳しくなってしまう。但私がこの作品をなぜレビュー登録したか=ラスト15分の展開+ヒロイン嵯峨三智子の存在感によるもの。主人に裏切られ(字の読めない訥平に「身柄を引き渡すので好きにしろ」と書いた手紙をもたせ、果し合いの場で敵一団に届けさせる、というのはひどい)絶望した訥平が天に向かって叫び、ボロボロになりながら敵に立ち向かうも相手に何も害を与えることなく、ただなます切りにあって死んでいくその情景に監督伊藤がなぜこの作品をリメイクしたのか・強く訴えたい程の「ほとばしる感情」が見える分、酒蔵で泥まみれになって暴れる千恵蔵よりもインパクトは強い。また果し合いの現場に急行し決闘を諌めるも巻き添えの刃をくらい、訥平の手を取って死んでいくヒロイン。後年伊藤大輔は「薄桜記(58年)」脚本で雷蔵&真城千都世に同様の死に様を見せているがその悲劇度で断然こちらの方が印象深い。加えてこの時19歳の嵯峨三智子の艶っぽさ。着物の襟足から覗く強烈なエロティシズムというのか…とにかくこれは山田五十鈴のDNAですな。脇役(小沢栄・浦部粂子・三井弘次・丹波哲郎)の演技も好印象。
[映画館(邦画)] 7点(2014-04-23 13:52:35)
93.  ゲームの規則 《ネタバレ》 
狩猟会における「ゲームの規則」、それは浮世を楽しく忘れる為に偽りの感情を演じきることであり本音が介在することは許されない。そして規則を破った者に降りかかる悲劇。一見するとこの作品は単に「ユーモアが欠落している艶笑劇」なので公開当初フランス本国ではまったく当たらなかった、「楽しい悲劇」を目指した監督にとって最悪の作品となったのも当然とも思う。但現代の視点で鑑賞するといつの世にも変わらない、素晴らしい風刺劇であるというのが私個人の感想。普通こういった階級社会の没落を描いた作品にはその立場に立った人たちへの同情や時代への郷愁といった描き方をする(てか彼の前作「大いなる幻影」などはその雰囲気にあふれていた)のが常だがこの作中の人物に対して描くのは「現実を直視していない愚か者」であり、監督自身が演じたオクターヴに対しても変わらないスタンスで取組み突き放してしまっているのには驚かされる。その上で人として生きる真実=本当の愛・友情を求めることに目覚めた飛行士(この職業設定もつまるところ地に足がついていない、という意図を込めてますよね)が誤射によって射殺された挙句、狩猟会の獲物(ウサギ)の様な軽い扱いをされてしまうという皮肉。1939年の大戦前夜に監督ルノワールが伝えたかったのはそんな時代の流れを直視せずに怠惰な日々を過ごしている人々への警鐘、だったのでしょう。初見の感動がいまだに残っているのでちょっと甘目ですがこの点数。
[ビデオ(字幕)] 10点(2013-12-07 14:24:48)
94.  ご冗談でショ 《ネタバレ》 
マルクス兄弟の、世の中の常識や権威主義に対し痛烈な皮肉をもって対応するこのスタイル(植草甚一先生曰く「シュールレアルな喜劇の出発」)、現在の風刺劇やコメディに多大な影響を与えているのは間違いありません。ただ字幕から情報を得なければならない我々にはチコやハーポのボードヴィル芸はともかく、グルーチョの風刺がわかりづらいのが難点。という訳でソフト会社は格安ビデオを販売するだけでなく、ちゃんとした解説書を付け加えてだしましょう。…話がそれました。なんといってもこの作品の白眉は大学教授グルーチョがヒロインと陽光下、アヒル池で舟遊びをしている際に歌う「Everyone Says I Love You」。ウディ・アレンがオマージュとして取り上げるのもむべなるかな、というほどの幸せに満ちてます。ま、最後はヒロインを池に叩き落とした挙句、浮き輪を求める彼女に対してトローチを投げつけるという期待通りの行動を見せつけますが。ボードヴィル時代の作風をそのまま踏襲している「ココナッツ(29)」「けだもの組合(30)」「いんちき商売(31)」と比べ、比較的屋外撮影を多用するようになったこの作品の名声こそが、彼らにとって三弾飛びで言う「ステップ(ジャンプはもちろん「吾輩はカモである(33)」)」的成果を遂げた作品なのでしょう。多少甘目なのですがこのシーンで+1点。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2013-11-04 15:20:49)
95.  乱れ雲 《ネタバレ》 
司葉子の魅力大爆発、邦画屈指のスーパー・メロドラマ。監督成瀬の演出力は遺作となったこの作品に至るまで高い水準を維持していた事を実感している。社会的・心情的に疎外感を味わっている男女が結びついていく様を細かく丁寧な演出情景を積み重ねていく事で「事故未亡人の女と加害者の男のよろめき」という、ともすれば安っぽい話にリアリティを感じさせるのは並みの監督では絶対に上手くはできない。またその作品世界を構築しているスタッフの仕事、特に武満徹の音楽と各役者の配分(浜美枝・中村伸郎・加東大介・浦部粂子・左卜全)には心地よさを感じる。ラスト15分の演出、一線を越えようとした二人が結局結ばれずに終わる流れが素晴らしい。別れに至るまでの心情描写がいいのだ。温泉宿へ向かうタクシーが踏切で立ち往生する=危険を暗示する踏切の「警報音」そして超えてはならない「線路」/バックミラーでチラ見する運転手=事故未亡人と加害者がつながる、という事への世間体からの「視線」/窓辺で聴く救急車のサイレン=男が以前交際していた女との別れの情景の再現、など。こういった不安が積み重なった上での帰結であったこと強調したい。でなぜこの点数か、マイナス2点①最良で最善の演技なのだが「罪の意識に苛まれる若手エリート商社マン」に加山雄三がしっくりこない、という点②温泉宿に向かう前の事故現場シーン。このショットを入れたことで観客は「この恋愛が偶発的な要素で駄目になってしまった=話を収束させる為のご都合主義」を感じてしまいかねないから。この点は「見せない」演出を貫き通して欲しかった。  
[映画館(邦画)] 8点(2013-09-10 00:45:16)
96.  チェブラーシカ(1969) 《ネタバレ》 
私も暗くて色あせた色彩が印象的な本家カチャーノフ版(あわせて初回上映時のDVDの方→ジブリが提供している現行版ではない)を取る。キャラクターの可愛さが先に目につくが、大人になればなるほど寂しげな音楽・各キャラクターの哀愁感溢れる姿態(=特に第一話におけるチェブラーシカ、電話ボックス内の仮住まい。)にやられっぱなし。日本人スタッフ中心に作成された最近のリメイクもその点理解し、頑張っているが「寂しさ」は感じられても「哀愁」の域まで届いてないような気がするのはロシアの風土・文化との相違によるものか。そんな中で文化的なずれを物ともせず、チェブラーシカを完璧に演じきった大谷”ピカチュウ/チョッパー”育江さんの神がかり的、と形容しても良い吹き替えは絶品。日本の声優の技量はホント凄いや。
[DVD(吹替)] 8点(2013-09-09 00:29:47)
97.  ガッチャマン 《ネタバレ》 
という訳で、タツノコプロなら「みなしごハッチ」「タイムボカン」シリーズ、「新造人間キャシャーン」という40過ぎのおっさん…どうでもいいや。前評判からして「ひ~どいう~わさの、ガッチャマ~ン」である旨は聞いてたのだがここまでやっつけ仕事なのは如何なものか。名作アニメの実写化という時点でオリジナルを超えるのは難しいし、40年前のアニメなので2013年時の社会情勢との乖離があるのは仕方がない。正直配役も不満はあるが多分松坂桃李や剛力彩芽あっての企画なのだろう。問題は原作への愛着感がまったく見受けられないという事が素人目にもわかる、という事に尽きる。関係製作者にキャラクターに対する愛情や敬意があり、そのイメージを壊さないように設定や脚本・配役を立てるという当たり前の事を順守するという点、この「ガッチャマン制作委員会」というのはわかっていないらしい。出演者曰く、「世界観はこちら(演出や脚本)で構築するので、原作は見なくて良い」という指示をする製作者自体、この名作アニメは単なる金儲けの一環で「国内が駄目でも、ソフト化+他メディアの展開+海外上映等でカバーするもんね」という意図が見えて虚しささえ感じる。世界の半分を17日間で征服→13年後ってその間何してたのギャラクター。そんな人類の危機下にも関わらず東京はのんきな日々で白鳥のジュン両手ショッピング。ジュンの婚活。健とジョーとある人物の三角関係。戦闘直前まで「俺は…」みたいな語りを滔々とするガッチャマン。力不足のCG。水野晴郎先生が「シベ超」に掛けた情熱の1%位、あればなぁ…。
[映画館(邦画)] 3点(2013-08-30 09:58:35)(良:4票)
98.  パシフィック・リム 《ネタバレ》 
という訳で「ジャイアントロボ」「ジャンボーグA」「大鉄人17」が好きだった40過ぎのおっさんが遅ればせながら見てきましたよ。全米BOX OFFICEでも最高はたしか3位、日本でも飛行機映画に押されっぱなしで興行的には失敗の類に入るかもしれないが、この映画にレビューを書きいれた皆様と同様私も声を大にして言いたい。これは絶対に劇場で見るべき作品であり、昔TVの前に座りアドレナリンを出しまくりながら特撮ヒーロー物を鑑賞していた幼少時への回帰体験に他ならない。ラストへの帰結(バトルシーンの深海への移行/また核兵器かい)だけが不満だがイェーガーのガタピシ感や必殺技のオンパレードに胸アツ。敵役を「UMA(未確認動物)」といったチンケな表記にせず「KAIJU」で通した事、ラストのレイ・ハリーハウゼンや本多猪四郎への敬意も含めて日本人が喜ぶようなツボ(何せ「スパイダーマン」までロボットアクション化してしまった国民だし)をこれでもかと示した監督ギレルモ・デル・トロには本当に感謝。昔スクリーンで「燃えよドラゴン」「大脱走」等を見て感じた幸せがよみがえってしまったよ、本当に。今度は吹き替えで見てこよ~っと。  
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-26 11:46:06)(良:1票)
99.  スパルタの海 《ネタバレ》 
映画完成直後のスクールにおける死亡事故再発により、作品は上映中止。約30年間この作品は「幻の一本」でした。レンタル解禁を機に、何年かぶりに再見(初見は戸塚氏入所前に開かれた彼の講演会参加時)。戸塚ヨットスクールの日常を描いたルポタージュ的な話を想像していたが、家庭内暴力で入校させられた少年/スクール生の更生に熱心な校長戸塚を中心に描いたホームドラマだったのは正直意外でした。スクールにおいて死亡事故が発生している中で企画されたこの作品、たぶん監督西河やプロデューサー天尾は1. 家庭や教育機関、自治体が扱いきれなかった問題児の「受け皿」にスクールがなっている、という事実。2. スクールが生徒を更生する時に実施する「暴力」の意味=家庭内暴力/世の中には自分の及ばない絶対的な力がある、ということを身体で体感させ我慢することを覚えさせる・不登校児/体罰を与える事で生きてゆく力、「反骨心」を養う事を実践する、ということを示した上で観客にスクールの存在意義・教育のありかたについてこの作品で問題提議をしたかったのではないか、という気がしましたし、ゆとり教育がもたらした成果をニュースで目にしつつ、「体罰=絶対悪」ととらえる事はやはり出来ないのではないか、と考えさせられました。ヨットスクールのその後を描いた東海テレビ制作のドキュメンタリー「平成ジレンマ」と合わせてどうぞ。
[DVD(邦画)] 7点(2013-08-14 21:53:22)
100.  さくら隊散る 《ネタバレ》 
ロードショー時に高校生だった私はまったく無知のまま映画館に行ったが、頭をぶん殴られたような衝撃だった。再現フィルムにおける、原爆症で苦しみ亡くなってゆく者たちの様子は実体験者の証言をそのまま再現したものなのであまりにも辛く、スクリーンを直視できなかった。「原爆被害と原爆症の恐ろしさ」という主題に隠れているが、私が思う本作のポイントは「戦時下における演劇界への弾圧/苦難の歴史」。全演劇団体は内閣情報局によって昭和16年に発足された日本移動演劇連盟に強引に加盟させられ、従わない俳優には国内での演劇活動を行う事を禁止する処置を取られてしまった。表向きは「国民生活の精神高揚を目指す為」であったが、実際は政府の言論統制の一環であり「時勢にそぐわない」ものは徹底的に公安局から弾圧・検挙されていたという事実。滝沢修・小沢栄太郎・宇野重吉・杉村春子・河原崎国太郎(物凄い面子だこりゃ)らが語るその経緯は淡々とした口調なだけ、その苦労がすぐに想像できてしまう。丸山定夫と夢を追っていた若者たちは苦しい状況の中で演劇を続けてゆく事に喜びと一抹の希望を持ち、さくら(櫻)隊として地方巡業をしていたのだろう。そこへ昭和20年8月6日がやってくる。広島県出身の新藤監督はその映画人生で戦争が引き起こす悲劇と、その害悪に対して常に糾弾してきた気骨ある方。そんな意図を風化させないためにこの映画は若い人にこそ見て、感じてもらいたい。それが戦争で被害を受けた方・苦しんでいる人への我々の世代が出来ることなのだと信じている。
[映画館(邦画)] 8点(2013-08-02 14:18:28)(良:1票)
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