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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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81.  ア・フュー・グッドメン 《ネタバレ》 
それにつけても、80年代~90年代のトム・クルーズの目覚ましいキャリアアップには目を見張るものがあります。ポール・ニューマンやダスティン・ホフマンなど大物俳優と共演してはたまたキューブリックの遺作にまで主演、そしてついにと言うかジャック・ニコルソンと堂々と張り合うことに。この頃のトム・クルーズは初期のチンピラ感のあるキャラから独特のオーラを持って演じられる演技力を高めていた時期でもあり、本作でもその力量を示し始めていたんじゃないでしょうか。 お話し自体はハリウッド映画お得意の法廷ドラマという感じでしたが、我々日本人には縁遠い軍事法廷の様子が観れて興味深かったです。ちょっと衝撃だったのは、弁護側と検事が被告人のいない場で、まるでポーカーの駆け引きみたいに取引して判決の落としどころを決めようとするところで、これは民間の裁判でも同じような米国の刑事訴訟の実態なんでしょうね。ボンボン育ちでいい加減な法務士官トム・クルーズがだんだんと真剣になってゆくのは定石通りといったところですけど、さすがにジャック・ニコルソンを証人として出廷させての最終弁論は迫力がありました。被告の二人の兵士が無罪を勝ち取っても海兵隊を不名誉除隊させられるのは、やはり俗に言う“軍の威信”というやつなんでしょう。そこで改めて観る者に「これは軍事法廷だった」と再認識させるわけです。 まあそれなりにカタルシスは与えてくれるストーリーでが、もちろんフィクションなのは承知ですけど、同じ軍事法廷でも『オフィサー・アンド・スパイ』の史実通りのドレフュス裁判とはえらい違いでした。米国では裁判でも、善悪・勝ち負けをはっきり見せるストーリーじゃないとウケないんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-24 23:42:19)
82.  ウルフ 《ネタバレ》 
コッポラが『ドラキュラ』をリメイクしてそれに刺激されたようにデ・ニーロがフランケンシュタインを演じたと思ったらジャック・ニコルソンは狼男、90年代はモンスター界の三大スターのリメイクが揃ったわけです。ジャック・ニコルソン版狼男は意外と王道的なストーリーテリングです。でもよく考えると、この作品ではニコルソンの変身シーンが無いんですよね。せいぜい顔に毛が生えまくるぐらい、これはもう一人の敵役狼男であるジェームズ・スペイダーも同様です。そもそもニコルソンに狼男を演じさせること自体が反則技みたいなもので、あの顔と演技力からするとメイクなんかしないでも迫力の獣人ぶりでした。昼間のリストラに苦悩するくたびれた中年男から日が暮れてからの精力に満ち溢れた狼男ぶりを、多少のメイクだけの表情の演技だけで余裕でこなしちゃうところは、さすがニコルソンです。ミシェル・ファイファーもまだこの頃はギリで全盛期の美貌を保っていたので、見ごたえがありました。でもお話し自体は意外とミニマムな展開で、非情なオーナーのクリストファー・プラマーやお守りのペンダントをくれた老人との絡みが膨らんでいかないのは、イマイチな感がありました。ラストの展開には、どこか『キャットピープル』のオチを彷彿させるものも感じさせられましたが、出演俳優が豪華な割にはやっぱB級感は否めなかったですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-21 22:39:11)
83.  誰が私を殺したか? 《ネタバレ》 
邦題は明らかに『何がジェーンに起こったか?』のもじりで、60年代にベティ・デイビスをフューチャーして一世を風靡した『何が…』の亜流映画の一つと位置づけられるが、これが単なる亜流と片付けるには惜しい一編です。デイビスは『何が…』と似たような姉妹ものという設定ですけど、こっちはデイビスが双子の姉妹で一人二役というところがミソ。映画のタッチからしててっきりロバート・オルドリッチが監督かと思ったけど、メガホンを取ったのは俳優としてのイメージが強いポール・ヘンリード、オルドリッチも候補だったことは確からしい。 なんと言ってもデイビスの二役演技が素晴らしい。ファースト・シーンの葬儀の場面では妹マーガレットの方が顔を完全に隠すヴェールを被っていたりカット割りで二役演技をさせる撮り方なのかと思いきや、両端で姉妹が向き合って演技するカットもあって、これが実に違和感がない素晴らしい撮影技術なんです。現代ではデジタル技術でこんなこと簡単に撮れるわけですが、60年代で成し遂げたのは素晴らしい。と、感心してよく調べると、撮影監督は名手アーネスト・ホーラーじゃないですか、納得です。双子で大富豪の未亡人である妹を殺して成りすますのが基本プロットですが、このサスペンスを盛り上げる脚本がとても秀逸です。妹を殺して大豪邸に入り込んだデイビス、来客が待っていると執事に告げられても、デカいお屋敷なのでどこが客間なのか判らない。そこで執事に呼んでくるように先に行かせて、彼の動きでどこが客間なのか判ると「やっぱ私が会いに行くわ」と取り繕う。相続関係の書類にサインしなければならないけど、何度練習しても妹の筆跡に似せられない。そこで暖炉の鉄杭を握って火傷させて、左手でしかサインできないようにして切り抜ける。いくらそっくりだと言っても妹と生活していたわけじゃないから、たしかに細かいことが判るわけがない。こういうリアルなサスペンスを丁寧に盛り上げる巧みなストーリーテリングです。ここに貧乏暮らしだった姉のイーディスに惚れていた警部のカール・マルデンが絡むわけですが、この人がまた良い味出してるんだよなあ。けっきょく妹マーガレットも愛人と共謀して夫を毒殺していたわけですが、その結果死刑が宣告されてもマルデンを悲しませないようにマーガレットとして刑を受けるラストのデイビスには、ジンと来るものがありました。 やっぱベティ・デイビスは凄い女優だったな、と再認識させられた次第でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-08-18 22:29:02)
84.  ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 《ネタバレ》 
最近のハリウッドで#MeToo運動やらカトリック聖職者問題やらでの内部告発ものを題材としたお話しが流行っているけど、巨匠スピルバーグとドリームワークスが選んだのは50年も前のペンタゴン・ペーパー事件。7000ページもの紙文書を一人で手焼きコピーしたなんて、デジタル化が進みSNS全盛の現代では想像を超えるものがあります。この米国史を変えた大事件をメリル・ストリープとトム・ハンクスを使ってスピルバーグが映像化してるんだから、そりゃ見応えがあるってもんです。その特ダネを巡ってワシントン・ポストとNYタイムズのライバル紙同士がが凌ぎを削る展開をテンポよく見せてくれるのは、スピルバーグの力量にすれば余裕です。メリル・ストリープはスピルバーグ作品には初出演ですけど、夫の死後ワシントン・ポスト社主を継いだキャサリン・グラハムを余裕の好演で、今やお約束のオスカーおよびゴールデン・グローブの主演女優賞ノミネート。ふてぶてしささえ感じさせるポスト紙の編集長はトム・ハンクスですけど、さすがのハンクスも今回はメリルに喰われてしまった感がありました。この映画でのスピルバーグの視点は『リンカーン』に通じるところがあり、米国の民主主義の原点を真正面から見据えていこうとしています。ジャーナリズムが政治を正した世界史でも稀有な事例ですから、こういう風に感動作になるのは必然でしょう。まあこれがオリヴァー・ストーンなら『スノーデン』を撮っているぐらいだから、もっと捻った後味の悪い映画となったでしょうね。 それにしてもこういうテーマの作品を観るたびに実感させられるのは、“報道しない自由”を乱用する我が国のマスコミのだらしなさですね。そりゃ米国だってジャーナリズムはビジネスですけど、なんかその根幹があまりに違うんじゃないでしょうか。まあ記者クラブなんて組織がある時点で、もう問題外ですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-15 22:59:34)
85.  街のあかり
カウリスマキの“敗者三部作”の掉尾を飾るわけですけど、作を重ねるたびに悲惨になってきた主人公も、ついにここまでの境遇になってしまったかと嘆息してしまいます。三作の主人公の中でも本作のコイスティネンが最も無表情というか無感情の様に思えます。時は21世紀に入りフィンランドもEUに加盟していて通貨もとうぜんユーロになっています。それなのに10年前の第一作当時から時が止まってしまっていたような社会の状況、銀行は相変わらずゲス対応だしノキアの国なのにスマホどころかガラケーすら誰も使っていない。コスティネンは家族も友人もいなけりゃ職場の同僚からも嫌われている。挙句の果てには女に騙され宝石店泥棒の片棒を担がされて刑務所行き。出所して女と黒幕ギャングを見つけて復讐しようとするが、哀れ返り討ち。こんだけひどい目にあってようやく自分を理解して救ってくれそうな女性が身近にいたことに気が付いて呟くのは、「ここじゃ、死なない」、なんか最後にようやく希望が湧いてくる一言でした。 描き方によってはいくらでもダウナーになるストーリーなんだけど、カウリスマキ・マジックにかかると不思議とほんわかした映画になるのは不思議です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-12 23:09:33)
86.  ポゼッサー 《ネタバレ》 
監督しているのは、デヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン。最近は老いて枯れてきた風のある親父とは違って往年の親父を凌駕するようなグロい作風で、変態の性癖というのは遺伝するとは知らなんだ(笑)。この映画で見せられる殺人シーンのどれもエグいこと言ったらもう、とくにショーン・ビーンのやられ方なんて鉄杭みたいな棒を口に突っ込まれて…(以下自粛)、でもあれで死ななかったというのが信じ難い、人間という生物は思ったよりも頑丈なんですね。“マーダーinc”みたいな殺人請負企業で活躍するヒット・ウーマンがアンドレア・ライズブロー、第三者の脳に寄生するような形で操ってターゲットを仕留めたのちに操られた者を自殺させてオフィスの自分の肉体に戻ってきて任務完了、このシステム自体は『マトリックス』なんかで散々見せられてきた感じで斬新さはない。でもこんな反社企業が活動しているのが独特な世界線なんですね。時代は現代でターゲットが経営しているのはソフト制作企業みたいなんだけど、なんかレトロな雰囲気なんだよな。劇中でスマホもガラケーも誰も使っていない(ワンカットだけ携帯が鳴ったけど)、ヒロインが会社に連絡するのも自宅にある固定電話なんです。現代が舞台の映画でスマホやSNSが登場しないとここまで違和感があるとは、驚かされました。シメントリーを意識した映像や凝ったセットなどは印象に残ります。そして、ヒロインと操られた男の意識が混濁してゆくところのグロさは、これぞクローネンバーグ・ワールド!ヒロインが殺しにやたらと刃物を使って血まみれになるのが、これまたエグいんです。 ラストの展開は、私には正直?でしたが、けっこう印象に残る作品でした。ブランドン君、この調子を貫いて親父を越えていってくれ!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-09 22:16:26)
87.  エンテベ空港の7日間 《ネタバレ》 
エンテベ空港奇襲作戦については、直後に『エンテベの勝利』と『特攻サンダーボルト作戦』という便乗したTV映画が粗製乱造されたのとメナヘム・ゴ―ランがさらにそこへ便乗して一本撮ったぐらいで、なんでまた40年以上もたってからこのテーマなのかというのは?ですね。『勝利』とか『特攻』なんて勇ましい言葉がタイトルにつくので察せられるとおり、二本のTV映画は奇襲成功に浮かれたハリウッドのユダヤ系俳優たちが結集した一種のエクスプロイテーション映画みたいなものらしいので、ある意味本作はこの事件をテーマにした唯一のまともな映画なのかもしれません。 監督が『バス174』を撮った人なので、全編を通じて重苦しいドキュメンタリー・タッチで、カタルシスはまったくありません。テロリスト側とイスラエル政府内の動静を均等に描いている感じですけど、テロリスト・サイドをいわゆるサイコパスじゃなくて偏った思想を持っているけど普通の人間として描くので、そこには批判があるかもしれませんが映画の評価としては妥当ではないと思います。とくに二人のドイツ人テロリストが、ロザムンド・パイクは別にしても相方がダニエル・ブリュールですからね、狂信的なヴィランの訳が無いじゃないですか。イスラエル政府内でも、ラビン首相とペレス国防相のいかにも政治家らしい責任の押し付け合いというか駆け引きを赤裸々に描いているのも面白い。渋った首相もギリギリで作戦にGOを出すのですけど、成功の一報が入っても歓喜の表情を見せるのでもなく、「このまま交渉不能なら、この戦争は終わらないぞ」と呻くところが印象に残ります。ラビンは実はテロリストと交渉する寸前だったぐらいなので作戦決行は苦渋の決断で、決断から逃げて「一人の生命は地球よりも重い」という迷言とともにハイジャック犯に降参したどこかの国の総理大臣とはえらい違いでした。 これだけ劇的でスリリングな出来事をここまで(あえて)盛り上げずに映画化するというのは、ある意味で偉業なのかもしれません。でもそれが万人受けするわけじゃないというところが、難しいところです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-08-06 22:40:57)
88.  兵隊やくざ 強奪 《ネタバレ》 
シリーズもついに大団円を迎えるわけだが、ここに来て大宮=勝新太郎と有田=田村高廣に子供が出来るという展開。これは二人が廃墟に捨てられていた乳児を見つけて脱出行を共にするという事だが、当時はまだ日本では認識がなかった中国残留孤児の先駆けとなるでしょう、もちろん大宮と有田が愛し合って子宝を授かったというわけではありません(笑)。今回の悪役は特務機関の大尉=夏八木勲で彼が隠した軍資金10万ドルを巡っての争奪戦となるわけですが、大映出演は珍しい夏八木勲、なんか髪形といい雰囲気といいまるで美川憲一みたいでした(笑)。大宮と有田は中盤以降は離ればなれになってラストまで絡まなくなる展開だけど、この映画の脚本はなんかとっ散らかしたような構成でそれぞれのエピソードの繋がりが悪いんです。だいたい気に喰わないのは1945年8月9日以降に満洲に攻め込んで関東軍を追い散らかしたのはソ連軍なのに、それがすっかり解放軍(中共軍)に置き換わっていてまるでソ連軍の侵攻なんてなかったかのような撮り方、ここまで来ると歴史改変といったレベルです。『眠狂四郎』シリーズと違い、本作でシリーズは打ち上げという意図で撮られたんだから、もっと印象に残るようなストーリーにして欲しかったところです。帰国最終便のトラックに乗り遅れた二人だけどそれでも楽しそうに子供をあやしながら去ってゆく、きっと困難を乗り越えて帰国しちゃうんだろうなとほっこりさせられるラストカットでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-08-03 22:02:27)
89.  ラブ ゴーゴー 《ネタバレ》 
パン屋くんと同居している男女、三人とも吉本の芸人をスカウトしてきたような風貌なのが面白い。この若者たちの恋愛模様と言っても、髭男爵の相方・ひぐち君みたいな風貌の郷里に帰る素人音楽プロデューサーは恋バナには絡まず、けっこうイケメンだけど気弱なスタンガンのセールスマン君を含めての三人というわけなんですね。塚地武雅を可愛くしたようなパン屋君と小学校の卒業式の前夜に消えた“透明人間”彼女との再会と彼女に認知してもらおうとする奮闘ぶりがストーリーの軸に当たるんだろうと思いますが、面と向かって話してもパン屋君のことを全然思い出さないところが哀しい、彼は十数年ぶりの遭遇でも一瞬にして認知したのにね(笑)。そんな美容師として店を持つ彼女の方は、中二病を引きずっているような吉本三人組とは違って、不倫して奥さんに店に突貫されるような大人の恋愛中なんだから、パン屋君に気が向くはずもないんでけどね。でもこの映画の最注目キャラは、ポケベルを拾ってから見知らぬ持ち主に会うためにダイエットに奮闘するメタボねえちゃん・リリーとなることは間違いない。どう見ても女芸人としか思えない彼女も、コミカルにダイエットしてゆくうちにだんだん可愛くていとおしくなってくるのが不思議。でもそのポケベル男が、あの前半で売り物のパンにグチャグチャに噛んだガムをねじ込むようなサイコ野郎だったとは、そりゃリリーちゃんが可哀そうってもんだよ。失恋してバーガー屋でヤケ食いしてる横の席で、マナーモードの携帯がブルブルしているラスト、やはりこの映画が撮られた97年当時は携帯の黎明期だったのかな、台湾でも。 三人の導線が交差しているとも見えなくもないラストの展開には、なんか独特の余韻がありました。台湾の映画界って、中韓とは違って日本人に馴染みやすい感性の映画作家が多い様な気がします。この監督チェン・ユーシュンは、寡作ですけどやはり台湾ニューウェーブの旗手として注目してゆきたいです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-31 22:56:34)
90.  引き裂かれたカーテン 《ネタバレ》 
ジェームズ・スチュアートやケイリー・グラントそしてグレース・ケリーとは疎遠となり、いい意味でも悪い意味でも迷走していた60年代のヒッチコック、女優以上にヒーロー男優に迷いがあった感があります。『マーニー』のショーン・コネリーに続いてついに大物ポール・ニューマンが起用することになった次第です。そりゃあニューマンにはヒッチコック作品に呼ばれることには不満はなかったでしょうが、“若き天才物理学者”というキャラには正直いって合ってなかったような気がしてなりません。ヒッチコックには冷戦スパイものというべきいくつかの作品がありますが、本作を含めてどれもイマイチなんですよね。言ってみればこの映画でのニューマンは亡命者を装った二重スパイというわけなんですが、米国の国防兵器の開発に携わっているような科学者が危険な任務を引き受けるようになる動機というか必然性が見えてこない。まあ言ってみれば素人スパイなわけで、タクシーに乗って工作員に会いに行くシークエンスなんて東独当局にバレるのは当然と言えば当然です。ここで監視役を殺してしまうことで後半のハラハラ・ドキドキに繋がるわけだけど、この殺し自体がなんか雑な展開な感が拭えません。東独の科学者から数式を聞き出すところも思ったよりあっさり感が強くて、ここをもっと凝った展開にしたら違ったサスペンスが生まれたんじゃないでしょうか。脇はほとんど西ドイツの俳優が起用されていて仲間内では当然ドイツ語で喋っているのでニューマンがドイツ語を解しないという設定はリアルさがあるんですけど、さすがに劇場で「火事だ!」という英語の叫びにドイツ人の観客がパニックになるというのは、ちょっとアレでしたね(笑)。ニセ路線バスと本物のバスとの接近遭遇など随所にヒッチコック流の盛り上げが健在でしたが、全体的にサスペンス映画としては緩すぎです。 考えてみれば、本作がヒッチコックのフィルモグラフィで最後の大物男優の主演作でした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-07-28 22:37:13)
91.  怒号する巨弾 《ネタバレ》 
『怒号する巨弾』なんとも凄まじいタイトルですけど、これはっきり言ってストーリーとは何の関係もないんです。なんでもサイレント映画時代にこの題名の海外映画があり、当時は活動弁士として活躍していた新東宝社長の大倉貢の印象に残っていて、内容とは関係なく「これを使え!」となったそうです。まあ新東宝のタイトル詐欺にはもう慣れっこですけどね(笑)。 戦時中にスパイ容疑をかけられて獄死した父親の復讐のために、息子の天知茂が戦後15年たって冤罪をでっちあげて父の会社を乗っ獲った政財界の大物を抹殺してゆくというのが大まかなストーリーです。冒頭とラストには轟音を響かせて飛ぶ米軍戦闘機、そしてタイトルバックには街角で慈悲を乞う傷痍軍人(現代の人間に異様な風景に見えるでしょうけど、昭和生まれのわたくしには幼い頃こういう人たちを見た記憶がたしかにあります、歳がばれますね)を映すと、妙に太平洋戦争敗戦を観る者に意識させる撮り方です。主人公の警視庁警部・宇津井健も戦争で自分以外の家族が全滅したという設定で、この映画の独特の暗い雰囲気に貢献しています。天知茂は戦後に名前を変えて美術商になり三ツ矢歌子とは恋人関係になりますが、彼女の父親こそ天知親子を拷問した特高警察の幹部で現・警視総監、天知の最後の標的というわけです。 この映画の天知こそが“ザ・天知茂”という典型的なキャラで、その暗い影を引きづった立ち振る舞いには、惚れ惚れとさせられます。対する宇津井健は融通の利かない超真面目人間で、根本的に大根である彼の演技力には最適のキャラでした。脚本は末期の新東宝としてはマシな方です。天知が美術商のはずなのにいかつい手下どもに君臨するギャングのボスみたいなのは、どう見てもヘンテコですけどね。そしてラストで天知と宇津井がライフルVS拳銃の決闘を繰り広げるのは新東宝映画に不慣れな人には?でしょうが、これは新東宝アクション映画では有りがちな展開でしょうじき「ああ、またか」という感じでしたね。でも撮影は新東宝にしては凝っていて、下から煽るように映すショットの多用や深作実録ヤクザ映画のような街頭での無許可ロケやそこをビルの屋上からの鳥瞰視点で撮っているなど、当時としてはけっこう斬新です。もっと印象深いのは、新東宝唯一の巨匠・渡辺宙明の音楽で、時には即興ジャズ風のキレのある演奏もあり、そしてそのメロディが耳に残る“天知茂のテーマ”(これは私の勝手な命名です)は名曲です。この映画の劇伴は、新東宝映画群の中でもトップクラス、いや間違いなくトップでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-07-25 23:26:09)
92.  許されざる者(1992) 《ネタバレ》 
■御存じイーストウッドのウエスタン引退作(のはず)。脚本はデヴィッド・ピープルズが無名時代に書いたものだが、内容が重すぎてどこの映画会社にも売れなかったそうです。イーストウッドが気に入って権利を獲得したが、自分がウイリアム・マニーと同年齢になるまで10年寝かせていた企画とのこと。そして盟友モーガン・フリーマンとの出会いともなったのも本作です。■ストーリーは、狙った結果ではあるけど登場人物の行動がすべてにおいてグダグダなところが、珍しい部類の映画だと思います。ウイリアム・マニー=イーストウッドの初登場シーンからして、飼っている豚を追いかけ廻して泥まみれになっているわけですから。かつての冷酷非情な殺人犯であるマニーも、亡妻の愛に触れてすっかり真人間に生まれ変わったおかげで、馬に跨るのにも苦労するし、銃の腕前もガタガタ。「こんなイーストウッド、観たことがない!」と悲鳴を上げるところですけど、彼のこの映画での狙いは“西部劇の様式を徹底的に否定する”ということなんです。保安官=ジーン・ハックマンとイングリッシュ・ボブ=リチャード・ハリスの遣り取りが象徴的なんですが、西部のガンマン伝説なんてくだらないいざこざに尾ひれがついただけのホラ話に過ぎないという事を暴露する身も蓋もなさ。賞金稼ぎを呼び寄せる娼婦暴行事件にしても、もう猟奇殺人ぐらいにまで大げさに伝わってゆくまるでフェイクニュース、まあ情報伝達手段も限られ人口密度も低い西部では実際こんな感じだったんでしょうね。■この映画のリアルなところはフリーマンやスコフィールド・キッドそしてイーストウッドにしても、人を銃で撃ち殺すという事には、たとえ過去に経験していても心理的にはかなりの抵抗があるという事、まあ普通の人間なら当たり前でしょうけど。ましてキッドに至っては初めての殺人ですからねえ、オリジナル脚本では彼はショックのあまりこの後自殺することになっていたそうです。やはり題名にもなっている“Unforgiven”は“殺人を行う者”だということなんでしょうし、フィクション上とは言っても数えきれないぐらい人を殺してきたイーストウッドの懺悔的な感慨も込められているのかもしれません。そうは言ってもフリーマンを殺されて誓いを破って酒を口にしてからのイーストウッドはもうブギーマン状態、薄暗い酒場であっという間に五人も射殺するという神業を見せる、でもあの暗くて何が起こっているか判りにくい映像は老体のイーストウッドの動きを隠すための苦肉の演出なのかもしれない。■死にゆくジーン・ハックマンが「今家を建てているのに、こんな最期になるなんて…」と嘆くところなんか見せられると、このキャラはほんとにヴィランだったんだろうかと、首を傾げたくなります(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-07-22 22:42:19)
93.  過去のない男 《ネタバレ》 
極寒の地であるために、ロシア語は口をなるべく開けずに発語できるように進化した言語だという説を聞いたことがあります。まさかフィンランド人も、なるべく無表情で生きて寒気に適応してきたのかな?そんなわけあるはずがない(笑)。なんていう妄想が浮かんでくるぐらい、少なからぬ登場人物がいるのに全員がほとんど無表情で、驚くべきことに誰一人笑顔すら見せない。ストーリー自体は、決してオフビートではないけどかと言ってシリアスというわけでもない、なんとも絶妙なバランスなんです。フィンランドの蟹江敬三と岸田今日子の淡いラブストーリーといった趣きなんですけど、やはりテーマは“敗者の人生やり直し”ということでしょう。過去のない=記憶がないというのが重要なプロットですけど、このフィンランドの蟹江敬三氏がほんとに記憶喪失なのかという伏線が埋められていて、あえてそれに回答を与えないカウリスマキの不思議なストーリーテリングはホントに彼らしい。冒頭の病室で、心肺停止したのに突然蘇って脱走するところからして「これは寓話です」と監督が宣言している感もあります。ホームレス状態から立ち直ってゆく過程も、決して平坦ではなく一歩前進・二歩後退という感じのもどかしさ。どん底に落ちた人生はあとは上がってゆけるもんだよ、と言ってもそんなに簡単なもんじゃないということなんでしょうが、ここは能天気なハリウッド映画とは一線を画する視点じゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-19 22:05:46)
94.  肉体の野獣 《ネタバレ》 
大蔵貢時代の新東宝映画は、実は倒産後に東映やTVで活躍した俳優や監督が多く撮影や音楽などのスタッフも技量は高かったが、如何せん脚本だけはどうしようもないレベルだったと言えるでしょう。時代劇以外はほとんどが原作となる小説がなくつまりオリジナル脚本、まあこれは原作料をかけないコストカット策でもあったでしょうが、そこに社長自ら脚本というかプロットに口を出しまくりだったのも原因だったと思います。そういうハチャメチャな作品群の中では本作はまあまともな方ですけど、よく考えるとこのストーリーは寛一お宮で有名な『金色夜叉』の翻案みたいです。監督の土屋敬之介は倒産間際になってようやく監督に昇格した苦労人で、新東宝では本作を含めて二本しか監督作はありません。ところが倒産後はTV業界で活躍し、『マグマ大使』や『宇宙猿人ゴリ』などのピープロ制作の特撮シリーズや、円谷プロからも声がかかり『戦え!マイティジャック』も監督しています。因みに父は長唄家元で、実兄はなんと人間国宝だったそうです。 まあ元ネタが『金色夜叉』ですからいくら時代を現代にしても古臭いお話しになるのは当然の帰結、主人公の医師が恋人・三原葉子に裏切られて「女は信用できない、復讐だ!」女あさりに精を出すようになるところは全く理解不能。看護婦や堕胎を執刀したTVタレントや同じアパートの未亡人にまで手を付けるけど、まあどんな時代にもいる女癖の悪いモテ男でしかないんです(ちょっと羨ましいけど)。この映画のおかしいところは、説明もなく話が進展したり登場人物が増えたりするところで、編集段階でけっこうカットされたシークエンスがあるように感じられました。 新東宝お得意の題名詐欺ですけど、その詐欺映画群の中でもインパクトの薄い一編でした。でも三原葉子を始め女優陣は綺麗どころを揃えていて、新東宝の女優陣は他社に比べても遜色がなかったと納得させてくれました。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2023-07-16 22:29:35)
95.  1秒先の彼女 《ネタバレ》 
なんと言っても主演女優のリー・ペイユーが良い。なんか眼と眼が開いていて決して美人というわけじゃないけど、街を歩けば見かけるようなごく普通のOLみたいな感じだけどそのほんわかした雰囲気と豊かな表情に引き付けられてしまいます。こんな彼女が三十路の郵便局員を演じているのは、もう実在感が半端ない、そりゃあ同僚の超美人な後輩の方がビジュアルとしては目を引くのは確かですけどね。因みにこの美人な同僚、なんと本業はプロの囲碁棋士で七段、台湾でも有名な強豪なんだそうです。 ストーリーはラブコメとは相性が良いタイムパラドックス系列なんですが、中韓の映画にありがちな強引さや押しつけがましいところがなく、そのストーリーの根底にある情緒は日本人の感性に近いものがあります。台湾では七夕がバレンタインデーみたいに盛り上がるというところが、初めて知ったけど面白い。たしかに織姫と彦星が年に一度だけ会えるというところは、バレンタインデーに通じるところがありますね。そしてバスが走る海辺の光景の美しさには息を飲まされます。固まっているシャオチーをグアタイがバスからおろして色んなポーズを採らせて撮影するところはちょっと間違えば単なる変質者の所業ですが、なるほどこういう風に撮れば微笑ましくなるんですね(笑)。 この監督チェン・ユーシュンは90年代に台湾ニューウェーブの旗手として登場した人なんだそうですが、もっと他の作品も観てみたいと思います、でもフィルモグラフィを見ると寡作みたいですね…
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-07-13 21:49:28)
96.  ペット・セメタリー(1989) 《ネタバレ》 
原作がスティーヴン・キングで脚本も本人が書いているのだからまさに純粋なキング・ワールドなんだけど、この後味の悪さは『ミスト』と肩を並べるぐらい。もっとも『ミスト』のバッドエンディングは映画独自のものなんだそうで、本作のほとんど悪趣味と言えるテイストはキングの本性がむき出しになった感じですかね。キングの家族愛が根底にあるストーリーには陰惨な結末になる傾向が見受けられ、この人の人生経験が反映されているのな。それでも怪談噺としては良く出来ている映画じゃないでしょうか。善玉幽霊として狂言回し的な絡み方をするパスコー君はユニークなキャラですけど、もしキング以外の脚本家なら絶対登場させないだろうな。アメリカには欧州みたいな怪談のネタになるような歴史が無いんですけど、本作みたいに原住民の伝説や霊界を基にしてストーリーを組み立てるのは良いアイデアだと思います。ラストの蘇った息子の暴れっぷりやビジュアルを観ていると、もうこりゃあ『チャイルドプレイ』のチャッキー人形の実写版じゃないですか!親父の注射であっさり冥界に戻されるところなんかはチャッキーと違って可愛げというか哀れみは感じました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-10 22:30:44)
97.  バレンチノ 《ネタバレ》 
ケン・ラッセルお得意の芸術家伝記映画の掉尾を飾る一編、そりゃあルドルフ・ヴァレンチノだって立派なアーティストですよ。物語はヴァレンチノが死んだときの伝説の騒動から始まる。死せるヴァレンチノに別れを告げに来る彼の生涯をかき回した三人の女の回想という形式は、『市民ケーン』方式というかオーソドックスな伝記映画ですな。でもケンちゃんのことだからありふれたスタイルのはずがなくどんどんと飛躍してゆくのはお約束ですけど、ギリ70年代の彼の作品は80年代以降の訳の分からなさが大爆発する作風に比べればはるかに観やすい。それでもラストの新聞記者とのボクシング決闘のシークエンスは、何の映画を見せられているのか戸惑わされるのは必定で、さすがケンちゃんと褒めてあげましょう。サイレント時代の映画スターだけあって当時の撮影風景は今の眼からすると奇妙で、無声なのを良いことに「右向け、左向け!」みたいな感じで監督が終始俳優に声をかけているところが面白い。ミシェル・フィリップスを始めとする女優陣は美形揃いで、醜女好きなこの監督にしては珍しいことです。せっかくルドルフ・ヌレエフを使ってヴァレンチノを演じさせるのだからもっとダンス・シークエンスが合ってもあってもよさそうなもんだけど、どうもケンちゃんはそっちの方は興味がなかったみたいです。ケン・ラッセル・マニアの自分としては刺激が足りないかなという感じで、まあ可もなく不可もなくというところでしょうか。
[ビデオ(字幕)] 6点(2023-07-07 23:06:47)
98.  センチュリアン 《ネタバレ》 
ニューシネマ全盛時代に撮られたいかにもニューシネマらしさに満ちた警察ストーリーです。こういう警察の日常を淡々と描くドラマは、タイトルは忘れたがTVシリーズになって日本でも放映されていましたが、70年代中期のアメリカではこういう風味が好まれていたみたいで、同時期の日本では『太陽にほえろ』や『西部警察』のような単純かつド派手な警察ドラマが流行っていたのとは対照的ですね。 “何も起こらない”というわけではなく、ジョージ・C・スコットの自殺やラストでのステイシー・キーチの殉職など、いかにもニューシネマ的な悲劇はきっちりと盛り込まれています。毎回癖のあるキャラを演じてきたスコットですけど、私が観てきた中ではもっとも人間味があふれる善良なキャラでした。彼が独自の行動指針としている“キルビンスキー法”からすると理想主義者の様でもありますが、実際に警官として社会に接するにあたっては柔軟かつ人情味を持っていて、こんな善人を説得力を持って演じれるのも名優の力量でしょう。妻子に逃げられて酒に溺れてぐれてゆくステイシー・キーチの姿には心が痛みますけど、「他人は守れても家庭が守れない」なんて彼を責める女房には1ミリも感情移入できなかったです。監督はリチャード・フライシャーで、この人のフィルモグラフィを見ると『トラ・トラ・トラ』『ミクロの決死圏』などの大作から『マンディンゴ』のような問題作まで幅広く撮っていたから、このような小品は余裕でこなしてしまえる職人芸の持ち主だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-04 23:05:23)
99.  兵隊やくざ 殴り込み 《ネタバレ》 
毎回毎回脱走したり大暴れしたりしてるのに、次作ではシレっとどこかの部隊に潜り込んでいる大宮と有田。今回は准尉の策謀で有田が暗号兵研修で連隊本部に派遣されて、大宮と有田は泣き別れ。ところが有田は成績優秀で一カ月余りで終了して、帰隊して「昭和20年7月7日、有田上等兵復帰しました!」と申告します。えっ、たしか四作目の『脱獄』のラストはソ連が満洲に侵攻してきた8月9日だったはずなのに、つまり5作目以降はいわば軽くタイムスリップしていたわけですね、どうりでのんびりした隊内生活だったわけです(笑)。本作での大宮=勝新太郎は、有田=田村高廣がいない間は“上官をぶん殴る→営倉行き”の繰り返しみたいなもの。さすがにここまでやれば旧陸軍なら軍法会議で銃殺ものでしょうが、有田と大宮が上官の悪事を把握しているという流れなので重営倉で済むということで辻褄を合わせている感じ。その上官には小松方正や阿部徹といったいかにも悪そうな面々を揃えています。軍旗護衛隊を巡る戦闘シークエンスはシリーズ中でもっとも大規模だった感じがしますが、攻めているのが八路軍というのはやっぱおかしい。この頃の日本は八路軍(共産党軍)無双という中国共産党のプロパガンダにすっかり騙されていたころで、実際に共産党軍は基本ゲリラ的な戦闘しかせずに隠れていたのが真相で、だいいち満洲にはいなかったはずですよ。まあソ連軍にするには軍服や白人系のエキストラを揃えるのにはコストがかかるし、平服で間に合う八路軍の方が安上がりですけどね(笑)。 これほど悲壮感のない終戦は邦画では珍しいと言えるし、「これからはお前が上官だ」という有田の言葉に嬉しそうにリアクションする大宮の姿は実に微笑ましいラストでした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-07-01 23:04:32)
100.  青春群像 《ネタバレ》 
フェリーニ初の成功作であり、あのキューブリックが“マイ・ベスト・フェバリット”に選んだことでも有名。フェリーニの作風もまだネオレアリズモの影響が色濃く、後の強烈なフェリーニ的世界観からすると淡白なストーリーでもある。北イタリアの海岸沿いに位置する田舎町で気ままな生活を送っている五人の若者たちのエピソードを繋いでゆく構成は、後の『アマルコルド』で再構築されます。五人のリーダー(なのかな?)格のファウストは仲間のモラルドの妹を孕ませて出来ちゃった結婚、演じたフランコ・ファブリーツィは髭を蓄えたところなんかは若き日の宝田明になんか似ている。五人の中で唯一インテリで劇作家志望のレオポルドは、『ニュー・シネマ・パラダイス』で神父を演じたレオポルド・トリエステの若き日の姿。そう言えば劇中でアルベルト・ソルディが労働者を侮辱するシーンも、『ニュー・シネマ・パラダイス』での上映映画として使われていましたね。まだ“フェリーニがフェリーニになる前”の作品とは言っても、カーニバルのシーンにはその片鱗が伺えます。けっきょくモラトリアム生活にどっぷり浸かっていた五人の中でもモラルドだけが故郷から訣別するのがラストですけど、自伝的要素があるというこの脚本の中でフェリーニは自身の姿をモラルドに投影していたのかな? 観終わってみれば、真底の悪人はこの映画の中には一人も出てこなかった感じがします。考えてみれば、これは後のフェリーニ作品群にも共通する傾向なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-06-30 23:02:29)
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