1141. ベスト・キッド(1984)
皆さまご存知、元祖DIYカラテ。 故・岡八郎師匠の「空手もやってるねんぞ~通信教育やけどな~」というギャグと、思想的には近いものがあります。 「そもそも、こんなクソガキがこの程度の練習でトーナメントを勝ち上がれるワケがないだろ~」とツッこむ以前に、「そもそも、エリザベス・シューがラルフ・マッチオなんかに一目ぼれするワケがないだろ~」と言いたくなるワケで、そこに目をつぶることができれば、大抵のことは見逃してしんぜよう、という気持ちにもなってきますが、そういう受け止め方で、いいんですかねえ。ちなみにエリザベス・シューの出演作における相手役は、ラルフ・マッチオ⇒チンパンジー⇒トム・クルーズ⇒マイケル・J・フォックスと、この後、だんだんレベルが上がっていきます。 『ロッキー』のジョン・G・アビルドセン監督が再び取り組んだスポコンものですが、ほとんどスポーツも無ければ根性もない作品に仕上げていて、二番煎じにしていないところはアッパレ。最後は口数が少なくなり少々神がかり的になってしまった一作目のロッキーとは異なり、こちらの作品では「等身大過ぎる」主人公を設定して、最初から最後まで、どうしようもない「のび太君」でいてくれる。いてくれてうれしいかどうかはともかくとして。 で、コブラ会所属のジャイアンに要らぬチョッカイを出して、「ギタギタのメタメタ(©ジャイアン)」にされかかったところを、ドラえもんならぬ(似てるけど)ミヤギさんに救われる。そういや当時、雑誌のインタビューにパット・モリタが「カラテ経験なしで撮影に取り組んだ」とか答えていた記憶があるけれど、実際、見るからにそんな感じの所作ですな。まさに通信教育レベル。だけどそれに目をつぶると(←またか!)、この人、「東洋の神秘」みたいなものはよく出していると思います。日本人の我々が見たって、謎めいてますからね。でも一方で、生身の人間の弱さも感じさせるエピソードが挿入されたりもする(ただ挿入されただけ、という印象もありますが)。 実はジャイアンもそんな悪いヤツじゃなかったり、のび太は基本的にまったく反省しなかったり、ドラえもんはのび太を甘やかし過ぎたり、と、ロッキーから距離をおいた結果、「ドラえもん」にえらく接近した作品になっちゃってて、まあ、そこが、シリーズ化されるほどの人気を博した理由、なのか、どうなのか・・・。 [地上波(吹替)] 4点(2019-04-07 09:56:37) |
1142. 山猫
観てて、「斜陽」という言葉が脳裏に浮かびます。時代の流れの中で徐々に滅びゆくものたちの、最後の輝き。。バート・ランカスターはガッシリしてるし、アラン・ドロンは若々しいし、クラウディア・カルディナーレはキャピキャピしてるんだけど、ここに描かれている「旧時代の貴族社会」そのものが年老いてて、もう、先は無いんだなあ、という想いが湧いてきます。 そもそも舞台がシチリア島で、屋内には確かに豪奢な貴族社会があるけれど、一歩外に出て見りゃ、ハッキリ言って、 ド田舎 なワケです。しかしそのド田舎にも、時代の移り変わりの不穏な動きが、徐々に伝わってくる。こんなところに兵士の死体が。 映画後半に展開される舞踏会。貴族らしい豪華さはあるけれど、何やら老朽感めいたものも散見されます。冒頭の昼のシーンでは窓が開けられカーテンが優雅に揺れていたけれど、夜の舞踏会では窓が閉められ、その中でバート・ランカスターやアラン・ドロンが汗だくになっている。その姿が、何やら病人めいたものすらも感じさせて、あーこりゃもう先は長くないなあ、と。 ラストで去り行くバート・ランカスターの姿が何とも寂しくって、本作と言い、『カサンドラ・クロス』と言い、こういうのが似合う人ですなあ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-07 09:15:48) |
1143. ブリッジ・オブ・スパイ
最初の方でトム・ハンクス演じる主人公が、5人ハネたって1件は1件だ、とか言ってて、このセリフがあまりにもストレートに後半の展開に繋がるもんで、正直ちょっとどうかとも思うのですが、ある種、このストレートさがこの主人公のキャラクターの一部でもあるワケで。弁護士として優秀なのかどうかはワカランこの人、しかももともと保険関係を担当してたことからすると、それこそトンデモない世界へと足を踏み込んでいくことなる。スパイが一般人に紛れているのとは反対に、一般人がわけもわからないままスパイの世界に紛れ込んでしまったような不安の中、最後に頼りになる(かもしれない)のは、この人のストレートな一本気。 クライマックス、闇に包まれた橋が光に滲む。『宇宙戦争』も闇と光の映画だったけど、そういう派手さはなくって、都合3名の「人質」交換がひっそりと行われるのみ。その事実は闇に溶け込んでいく。 と、映画の方もひっそりと終わってもよかったのかも知れないけれど、蛇足めいたエピソードが続いて、でもこれが、蛇足と切り捨てるにはもったいない絶妙のユーモア、後味のよさに繋がってます。中盤、周りから白い目で見られた(ような気がする)電車の中で、今度は称賛の眼差しを浴びる(ような気がする)。これらのシーンの間には、夜の車窓から虐殺を目の当たりにした、暗い夜の列車のシーンがあって、だからこそラストの明るさが印象的、なんですな。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-03 20:54:09)(良:1票) |
1144. 小さな恋のメロディ
ネタバレ 男の子ってのはいつも、カワユイ女の子の方をチラチラ見ているものであって、その視線の先にいるカワユイ女の子ってのは得てして、その男の子以外の「何か」、とてもツマラナイ「何か」を見ているもの、なんです。これは絶対の真実。 なのでこの映画、主人公とメロディちゃんが仲良くなる後半、メロディちゃんが妙に可愛くなくなっちゃうように、見えちゃうんですけどね(※あくまで個人の感想です)。 とは言え、もう私も親の世代ですから、ちょっとハラハラしつつも微笑ましく見守るような、そんな気分にもなりますが。 実際、そんな気分にさせてくれるのに大きく貢献しているのが、周りの少年少女たちのナチュラルさ。その姿をスナップショット的に捉えたカメラの魅力。 大人をギャフンと言わせて自由に羽ばたいて見せるラスト、どうせトロッコをギコギコしながら終わるんだったら、後ろから貨物列車に追われて必死に漕ぎながら終われば、ちょっとは社会の厳しさも思い知って良かったんじゃないの、と(※あくまで個人の妄想です)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-31 21:06:10)(笑:1票) (良:1票) |
1145. ラストスタンド
シュワが片田舎の保安官だってんですが・・・すでに、ちょっと違うんでないの、と。 作品のベースにも「西部劇」があるんでしょうけれど、つくづく、シュワは決してジョン・ウェインにはならないし、なれないんだな、と。 シュワがシュワである以上、老いぼれようと何しようと、デカい銃を振り回して暴れてみせるしかないんだけど(他に何もできないし)、もはや見る側も同情まじりに「やっぱり大目に見てあげないとね」、などと思いながら見るしかない。 ジョン・ウェインはアクションが出来なかったかも知れないけれど、しかしあの独特の雰囲気、独特のユーモアで我々を魅了してくれましたよね。と、あまり比較してもしょうがないんですけれど、この貧相な内容の映画の中では、あまりに惨め。田舎町での攻防戦にいたるまでの前半はおよそチグハグ、それでも無理やり『リオ・ブラボー』(それとも『要塞警察』かな?)みたいに話をもっていこうとするのがいかにもセコイ。敵役にも魅力がなく、付け焼刃のようなユーモアが、不自然極まりない。 これは、失敗でしょう。 [CS・衛星(吹替)] 4点(2019-03-31 20:48:19) |
1146. セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進
ネタバレ 実験的とも言える怪しさ満点の映像が、我々を不条理世界へといざないます。物語は、主人公がひょんなことから整形手術を受け、全くの別人として新しい人生を歩む、というサスペンスですが、正直、彼がなぜそういう選択をしたのか、を説明する描写はこれと言ってありません。しかし、この不条理感あふれる映像こそが、その不条理な物語に何よりも強い説得力を持たせています。 それに、随所に登場する奇妙なまでにしつこい描写。例えばあのハダカ祭り。どんな理由付けよりも、こういったしつこい映像が、主人公にある選択をさせ、同時に実は主人公を束縛している。 理由がないから必然性がある、という逆説。理由がないからこそ、迷いがあり、理由がないから、逃れられない。 ラスト近くの、拘束されたロック・ハドソンの必死のあがき、その描写のしつこさは、映画自体の叫びを聞くような。 これはスゴイ映画だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2019-03-31 19:00:07) |
1147. ミザリー
書く側がおかしくなるのがシャイニングなら、読む側がおかしくなるのがこの作品。作家にとっては担当編集者がおかしくなるのが一番コワい(おかしくならなくても元々コワい存在?)のかも知れないけれど。 それはともかく、キャシー・ベイツがコワイからオスカー獲ったのか、オスカー獲ったから彼女がコワイのか。オスカー受賞以降は「キャシー・ベイツを怖がって観なきゃいけない作品」になっちゃった感も無いでは無く。そりゃまあヤな感じは充分伝わってきますけれど、結構、最初の方から「ヘンな人」感を出しちゃってて、意外性とかエスカレート感とかいうものが、題材の割にはあまり感じられません(例えば『白い肌の異常な夜』なんてのは、一見マトモに思われるから、衝撃も強くなる)。それに、この状況の中、ジェームズ・カーン演じる作家にもあまり追い詰められたような様子がなく、ヘンに冷静に見えてしまって。 要するに、過度にドロドロした猟奇的な作品には、したくなかったんでしょうかね。でもそのせいで、スゴイ状況の設定の割には、あまりスゴ味がない印象。 そもそも、主人公がひとつの部屋に長期間閉じ込められるオハナシのはずなのに、主人公が日々見続けたであろうその「部屋」の印象が、観てて乏しいのが、監禁モノの閉塞感みたいなものがあまり感じられない一因になってる気もします。まあ、テーマの割には、安心して観られる作品、ではありますが・・・ [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-03-24 09:27:05)(良:1票) |
1148. ハングリー・ラビット
前半は、「世にも奇妙な物語」でドラマ化されてた「復讐クラブ」みたいな、復讐代行のオハナシですが、巻き込まれ型サスペンスの体裁をとっており、謎が提示される前半に対して、後半は謎解きとアクションへとなだれ込み、ああやっぱりニコラスケイジ映画にハズレなし。などと、有りもしない法則性にいつまでもすがっていたってしょうがないんですけれども。 冒頭の、自動車転落事故に見せかけた殺人の場面など、一瞬でケリをつけるのではなく、むしろ手間取りモタつくようなその経緯を何カットも使って描いていて、これは「プロの仕業ではない」というこの作品の物語の根幹に繋がる部分でもあるのでしょうが、それを抜きにしても、細かい描写の面白さというものがあります。主人公が自販機でチョコを買うシーンにおけるシツコさなんかもそうですね、わざわざ「2個買え」と指示されるもんだから、時間がかかる、モタつく、何かヤな感じ。 不良生徒とのやり取りなんかも、主人公が停職になるというストーリー上の必然性もあるのでしょうが、それ以外に主人公の内面の変化もそこに投影されていて、印象に残ります。 で、提示される数々の謎(板書された電話番号とか、「choose」のメッセージとか、何で主人公の電話番号が知られているのか、とか)は、理屈をこねれば納得できなくはないけれど、正直よくワカランというか、謎はナゾめいているから面白いんだよね、ツジツマなんて合っても合わなくてもいいよね、というノリで突っ走ってるところがあって、そういう割り切りが作品の魅力になってます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-23 10:09:37)(良:1票) |
1149. キャノンボール
コレ、子どもの頃は、マッドマックスなどと並んで「子供は見ちゃいけないハードなバイオレンス作品」みたいに信じ込んでおり、級友が「キャノンボール観に行ってきた」などと言うのを聞いて、それはそれは尊敬の眼差しで彼を見つめたもんでした。で、彼に訊きたかった点は、予告編にも登場するあの、飛行機からバイクで飛び降りる衝撃のシーン。一体どういうストーリー展開の必然性の中に、あのような絶体絶命の「悲壮感溢れる」シーンが生まれるのか、そして飛び降りた男の運命いやいかに。しかしその私の質問に対する級友の回答は、「いや、単に飛び降りただけ。あの後パラシュートが開いて、バイクだけ落ちていくねん」。私の頭の中に「?」が溢れかえる、これは一体どういうことなんだ、コイツ一体何を言ってるんだ? その後、TVの洋画劇場で本作を観て、彼の言っていたことが正しかったことを知ったワケですが。 というか、ここまで必然性の欠落したスタントシーンが存在することに、あらためて驚愕を覚えたのでした。 そんなワケで、もうホントにテキトーな、思い付き以下のネタが羅列されただけの、怪作ですね。2作目はもうちょっとオチまで考えてた部分もあると思うのですが(オランウータン君!とか)、1作目は殆どオチをまともに考えた形跡も見られない、ホントにただの羅列。これはある意味、スゴイことだと思います、ハイ。ラストもふざけたまま投げ出すように終わっちゃう、この潔さ。いや~実に天晴れ、ただし正気とは思えん。 それにしても2作通じて最大のインパクトを残す、ジャック・イーラム。俳優が普通に登場するだけでオドロオドロしいBGMが流れてしまう、まさに稀有の存在ですな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-03-23 04:29:44)(良:1票) |
1150. ターザン:REBORN
ネタバレ およそ、我々の興味を引く登場人物が一人もいないってのがツラいところ。暗い過去みたいなものを背負っている訳でもなし、意表をつく行動をとるでも無し、そもそも主人公のターザンが、文面社会においてであれ、アフリカの部族相手であれ、はたまた大自然の動物たち相手であれ、何でもかんでもワケ知り顔でソツ無くこなし、単なる「便利な人」でしかない。あってせいぜい、「母の仇」「息子の仇」というエピソードですが・・・これ、正直、ピンと来ますか? むしろ何だかとってつけたような。 CGで描かれる動物の描写、特に実写の人間とこれでもかと触れ合うあたりは、手が込んでるなあと感心するものの、どうしてもCGの「計算された動きの安心感」の範囲に収まってしまい、ここでも意外性を損なってしまっている面があります。 結局、登場する人間も、動物たちも、すべてが想定内にチンマリと収まってしまって。 クライマックスにおける、半分沈んだ船での戦い。その船も、半分沈んだまま、それ以上は沈んでいかないんですね。この戦いを、船が傾いていくタイムリミットとともに描いていたら、もう少し緊迫感も出たんじゃないかと思うんですけれど、そういうサービスもなく、ターザンは勝つべくして勝ち、船は爆発すべくして吹き飛んでみせる、というワケで、最後まで意外性の乏しいオハナシでした。 [地上波(吹替)] 4点(2019-03-23 03:50:36) |
1151. 永遠に美しく・・・
そりゃまあ、その昔、金曜ロードショーか何かで初めて観た時には、私も、こりゃヒドイやと思いましたけどね。不老不死になったら、どんなに肉体がポンコツ化しても死ぬに死ねない、という、ただその思い付きだけで突っ走っちゃったような作品で、大してストーリーらしきものも無いまま、投げ出すようなオチで終わっちゃう、この生煮え感。オムニバスの一本で、充分じゃないの、と。 でも最近では、このテの映画に親しみが湧く、というのか、味覚がおかしくなっちゃったのか。久しぶりに観て、結構、楽しませてもらいました。 イザベラ・ロッセリーニが、実にエロ素晴らしくって、しかもそのエロ素晴らしさってのが、何だかサイレント映画から抜け出してきたような不思議な趣きがあって。で、一方にそういうサイレント映画の女優さんみたいな「永遠の美しさ」みたいな存在があり、もう一方にはメリル・ストリープとゴールディ・ホーンという、押しも押されもせぬ現代の大物女優。彼女たちが数々の出演作の中で見せてきた「美」は、今後、どういう形で映画史に刻まれていくのか?と、そんな風にこの映画を捉えると、ああ、見てる間にもう、メッキが剥がれちゃってるじゃないの。と、この上もないブラックな作品になっちゃってるんですね。で、それをこの二人が、なかなか凝った特殊効果の助けも借りて、実に実に楽しそうに演じてます。正直、「え、ブルース・ウィリスも出てたんだ」ってな感じ。 ただ、不老不死になる過程が、ただ「薬を飲みました」ってのは、ちょっと安直過ぎて、もう少し工夫と遊び心があってもいいのに、と思ったりもするんですけども、ま、もともと映画全体が安直なので(笑)そんなもんかな、とも。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-20 20:52:16) |
1152. パンズ・ラビリンス
ネタバレ これはもう、見事にヤな感じのオハナシで、見終わったらだいぶ、ヘコんでしまいます。 スペイン内乱が一応終結したとは言え、独裁政権下の閉塞感の中、ミニ独裁者ともいうべき義父の姿と、幻想世界を彷徨う少女の姿が、並行して描かれます。それぞれの世界は最初、互いに関連を持っていないようであり、少女は幻想世界に逃避しているようにも見えるけれど、厳しい現実を前に、いつまでも逃避できる訳もなく。双方の世界は「血」のイメージで結びつけられているようなところもありつつ、やがて2つの世界がクロスした時、物語は悲劇を迎える。 で、ここで冒頭シーンに繋がるのですが、いざ繋がってみると、何だか、この映画の中で展開されてきた数々の幻想世界のシーンが、実は瀕死の少女が最後に見た幻に過ぎなかったような気がしてきて(そういう解釈が妥当かどうかはさておき、どうしてもそんな気がしてしまって)、少女の哀れさに、気が滅入ってしょうがないのでした。 [DVD(字幕)] 8点(2019-03-19 23:30:19) |
1153. 正義だ!味方だ!全員集合!!
ドリフ映画最終作。子どもの頃、「テレビのドリフは面白いけど、映画のドリフはつまんない」と思ってた私も、この作品はとても楽しめたのでした。クライマックスの無声映画ふうの早回しドタバタが、バカバカしくって面白いのなんの。ってほど、今見ると笑える訳でもないのですが、いいじゃないですか楽しいし。 ドラマ部分は、まあ正直、撮影に金も時間もかけてないんでしょう、画面自体は、見栄えがするとはお世辞にも言えませんが、比較的ワンカットが長めにとられていて、これが、ドリフのコント仕立ての芝居によくマッチしてます。何か安心感がありますな。 悪役のベンジャミン伊東のヤラレっぷりも楽しいし、飄々とした蝶々さんもいい味出してます。何で金子信雄がいつもカレーライス食ってるのかよくわからんけど、美味そうに食ってます。楽しい夕食。 何より、出番は少ないけれど、自転車に乗る志村けん巡査の笑顔が、もうホントにイイ顔してて、子どもの頃に見た時以来、忘れられなくって。今回久しぶりに観て、そうそう、これこれ!って思っちゃいました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2019-03-18 20:44:08)(良:1票) |
1154. LOGAN ローガン
ウルヴァリンも年老いたならプロフェッサーも年老いて、いわゆる「老老介護」みたいなオハナシですな。切ないですな。ウルヴァリンの掛けているメガネはローガン鏡。なんちゃって。 そのくたびれ果てたみたいなウルヴァリンも、いったん暴れはじめると、どえらい凶暴性を示す。本作の残酷描写が、彼のやぶれかぶれな感じを一層引き立てます。 で、彼は今回、自分の分身ともいうべき2人の存在と出会う。一人は自分と同様の特殊能力を持つ少女。過去の自分、と言ってもいいかもしれないけれどむしろ、未来を感じさせる存在。もう一人は悪の手先として殺人マシーンと化した自分自身のクローン。こちらはまさに彼が引きずり続けている自分の暗い過去そのものと言ってもいいかも知れない。で、この3人がそれぞれ、凄まじい戦いを繰り広げるワケですが、この見事なアクションがみどころ。3人ともガンバってます、ってったって、うち2人はヒュー・ジャックマンですから、これはもう2人分のギャラいただかないと。ってなくらい、スゴイんです。特に、ドーピング注射(?)かましてからの、老骨に鞭打ち肉体の限界を超えて駆け回る姿には、非常に心打たれるものがあります(まあヒュー・ジャックマン自身がそこまでの歳ではないんですが、映画前半との対照、という意味で)。 しかし、本作で一番印象に残った(いい味出してたのは)、あの途中で知り合う家族だと思ったのですが、どうでしょうか。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-03-16 03:06:53) |
1155. アリータ:バトル・エンジェル
ストーリーもアクションも何だかチャカチャカと慌ただしくって、どうしてこうもタメというものが無いんだろうか、と思っちゃう。主人公が闇雲に強くって、しかも戦う気も満々なもんだから、引っかかりというものがまるで無い。普通なら少しは勿体ぶって見せてくれてもよさそうなもので、そういうタメの部分があれば、物語に起伏も付こうってもんですが。 例えば「地上最大のロボット」や「プルートゥ」に登場するエプシロンみたいに、戦いたくはないけれど戦わざるを得ない、とか、そういう含み。 キャメロンが書いた脚本が最終的にどこまで採用されどの程度作り直されたのか知らんけど、キャメロンの脚本を書き換えるなんてそれなりに勇気がいることなのかも知れない(「ランボー/怒りの脱出」の頃とはワケが違う)、でもロバート・ロドリゲスならもうちょっと独自色を出せたのでは? と、どういう遠慮が働いたのか働かなかったのか、特色の薄い作品になっちゃってますが、それでもあの、ビルから見下ろした未来都市(高度な文明というより雑然とした感じ)の遠景なんかは、見どころになってます。 それに、本作だけだと「『エリジウム』の序章だけ」、ってな感じですが、この先、物語が広がっていきそうな予感もさせて、一応、続編に期待しちゃっております。ま、本当に作られるのかは全く自信ないですけどね。 [映画館(字幕)] 7点(2019-03-11 21:08:14) |
1156. 猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)
ネタバレ かつての五部作が、相当に無理やりな部分があったとは言え一応はストーリーの繋がりを意識していたのに対し、今回のシリーズはそういう意識が希薄で、回を追うごとに文明が退化していき、物語の方も、前作から繋がるオハナシというよりは、文明の残り火が最後にフト、微かに燃え上がったような、ちょっと寂しいオハナシです。ま、実際、我々もこのシリーズに対しては、物語の連関など期待してなかった部分がありますが。 で、そういう文明が退行していく世界の中で、また、「苦難とそこからの解放」が描かれます。それも念入りに。 と同時に、その背景には「地獄の黙示録」もあって、ああ、道理で大佐はハゲでなくちゃいかんワケだ、と。 ただ、「地獄の黙示録」では、ただ「王国」が炎上していたのに対し、こちらでは「王国」を焼き払う軍隊自体も描かれ、さらにその「上」の存在(わざわざそれを「神」と呼ぶ必要なないだろうけど)が、襲い掛かる雪崩として示されます。 なんか、アレですな、横暴な課長がパワハラしまくってたら、新任の部長がそれを一喝、しかし結局は社長じきじきに部門ごとお取り潰し、ってな感じですな。 シーザーたちCGキャラの表情が実にお見事で、逆に、「CGキャラにどこまで演技させられるか」という作為を感じさせかねないくらい、その表情に重きが置かれてる面もありますが、それを補うようにロングショットも多様されてて、あの雪崩とも合わせて人間たちと類人猿たちの存在の小ささも感じさせて、心を打ちます。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-03-10 08:43:05) |
1157. 張り込み(1987)
コレも結構、好きなんですよね~。ジョン・バダムだから面白いのか、面白いからジョン・バダムなのか。 本当の張り込みというものがどのくらい大変なのかはわかりませんが、こういうの観てるとちょっと憧れちゃう。何かイイじゃないですか、この、グダグダな環境の中で、ムダにダラダラと時間を過ごす感じ。これでも仕事だってんだから、ちょっと羨ましい。 というワケで、物語の方もそれなりにまったりとした部分もあるのですが、リチャード・ドレイファスが何かにつけ、要らんコトをするもんだから、ハラハラさせられ、目が離せなくなります。 そして、冒頭の魚加工と対応するように、クライマックスには、製材所を舞台にしたアクションを持ってきて、こういうのが実に楽しいサービス精神。全編通じて、軽いノリが楽しい作品です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-09 00:38:34) |
1158. 張り込みプラス
『張り込み』の続編、とは言え、もはや、張り込み捜査自体は形骸化してて、豪邸でヌクヌクと過ごすだけ。前作は、張り込みという行為を通じて、見る側・見られる側を行き来する面白さがあったけど、それに匹敵する何かを2作目では提供できなかったのがツラいところ。「お隣さんとの関係」というものが、サスペンスにも笑いにもなる部分だろうけれど、今ひとつツキ抜けきれない印象で、やはり前作と比べると見劣りしてしまいます。 シリーズものらしく、前作よりもキャラを立ててきている感じがあって、しかしそれとて、ちと鬱陶しい。リチャード・ドレイファスの悪乗りぶりが、目障りに感じられる部分もあり、わざわざマデリーン・ストウが出てくるのも冗長な感じ。 それでも作品を救っているのは、あのオバチャン(ロージー・オドネル)の迫力。どうせマデリーン・ストウを出すのなら、最後にこの二人を画面上に並べてみたかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-03-03 09:36:12) |
1159. 座頭市兇状旅
ネタバレ 川べりのボロ家を刺客たちが取り囲むクライマックス、このシーンだけでも、ああ観てよかったと思わせるカッチョ良さ。 と、ロケシーンも良ければ、屋内シーンもやけにキマってて。 本作、ニセ三船敏郎みたいな浪人のライバルが登場して、剣豪らしい雰囲気をビンビン感じさせますが、いやこれがホンモノのミフネだったら、どういうキャラか想像もつきそうなもんだけど、何せニセモノだけに(と、勝手にニセモノ呼ばわりしちゃってますが)、敵なのか味方なのか、好敵手なのかそれほどでもないのか、見当がつかないのが、かえって面白かったりします。 で、虚しさあふれる結末を迎えたあと、座頭市は陽気にふるまってみせながら去っていきますが、盲目である彼の手に、もはや仕込み杖はなく、一体どこへ向かって行けばいいのか、何とも言えぬ寂しさが漂います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-02-26 21:07:04) |
1160. 超能力だよ全員集合!!
ユリ・ゲラーの「超能力(笑)」が流行ったら、早速ドリフ映画のネタに取り入れる、という、このフットワークの軽さ、節操の無さ。もっとも、「超能力」というよりは「占い」ですけれども、とにかく、記憶喪失になったカトちゃんが、例によって例のごとくいかりや長さんにイジメられコキ使われる、という展開。カトちゃんがいつ記憶を取り戻すかというサスペンスに加え、アヤシイ新興宗教の暗躍なども絡んできて、結構楽しませてくれはするのですが、肝心のカトちゃんの正体が明らかになるくだりが、本来なら最大の見せ場だろうに、たいした工夫もなくってあまり面白くないのが残念(この辺りでは、長さんの存在感も薄れて、スカスカな感じ)。 本作から志村けんさんがドリフ正式メンバーとして登場し、控えめながらも精一杯体を張って見せるかと思えば、すわしんじさん(クレジットでは諏訪園親治となってましたね)がブルースリーネタを披露してみせたり、ってな辺りは、なかなか貴重。 それにしても、ドリフ映画はやはりドリフ色にすっかり染め抜かれてしまってて、夏八木勲と長山藍子が普通に会話する普通のシーンが一番アブノーマルに見えてしまうのはどうしたことか・・・ [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-02-25 21:18:31) |