101. 野性の少年
《ネタバレ》 観ていてアーサー・ペンの『奇跡の人』を思い出しました、あそこまで壮絶ではありませんが…。まるで少年を動物のように縄に繋いで見せて歩いたり、見世物として料金を取って利用したりと人間の浅ましさを垣間見せながらも、何とか少年を現代社会に順応させようと熱心に教育するイタール博士の姿に心を打たれました。トリュフォー監督って役者としても素晴らしいんですね。途中で幾度と無く挫けそうになる彼の姿を見て、思わず「先生、あんたは良くやってるよ!」と声を掛けてあげたくなりました。それから主演の男の子の演技も迫真に迫っていました。人間の優しさ溢れる佳作です。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-08 12:09:24) |
102. 少女の髪どめ
《ネタバレ》 こういうのを無償の愛って言うんでしょうね。最初は鳩に小石を投げ付けていた主人公が、純真な少女との出会いからやがては純粋な心へと入れ替わっていく。それだけに最後まで主人公に対してお礼一言言わない少女の仕打ちがちょっと酷いようにも思えるけど、本編終了後には"バラン"という名前の意味を知ることが出来て良かったです。この手の映画では本家「シベールの日曜日」よりも嫌らしさが無くて好きかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-06 20:40:07) |
103. 橋の上の娘
最近『シン・シティ』を観て随分画期的な映像だなと思ったけど、こちらも負けていません。俗に言う"スタイリッシュ"な感覚もあったし、やっぱりモノクロの映像はカッコ良い!撮る方に実力があるからこそなんでしょうけど…。最初は物語の余りの展開の速さと落ち着きの無いカメラワークに観ていて疲れたけど、ナイフ投げのシーンで全てが帳消しになりました。音楽と映像との完璧なまでの調和。これから嫌なことがあっても、ダニエル・オートゥイユの「運なんて見方次第さ」という言葉を慰めにしたいと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-06 20:37:12) |
104. ブラインド・デート
いや~、なかなか面白かったですよ。相変わらずブレイク・エドワーズは日本人を馬鹿にしていますが(苦笑)。この手の一昔前のコメディはひたすらに馬鹿馬鹿しく、それほど深いことを考えずに楽しめるので好きです。ブルース・ウィリスのコメディ演技も、映画デビュー前のTVドラマ「こちらブルームーン探偵社」で既にこなれている気がします。その後「ダイ・ハード」で一躍大ブレイク、今は「シン・シティ」。人生って分かりませんね。 [地上波(字幕)] 7点(2005-11-05 21:29:05) |
105. バティニョールおじさん
最近観た戦争映画の中ではかなり面白かった!悪人にも善人にも成り切れない、ある意味戦争とは最も無縁そうなバティニョールおじさんのトボケっぷりが良く、又ユダヤ人役の子供達も芸達者でした。特に二人の女の子が可愛かったです。終始明るい雰囲気で通しながらも、最後にさり気なく戦争の虚しさ、悲惨さを提示しているところが上手いです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-05 21:18:52) |
106. 刑事コロンボ/もう一つの鍵<TVM>
《ネタバレ》 執事と間違われるコロンボ、そしてやっぱり犬には舐められています。久しぶりにコロンボ警部の活躍を見たので個人的には大いに楽しめました。犯人の犯行シーンもなかなかスリリングで、尚且つ同情の余地無しの酷い奴だったので最後には我らが大将がやっつけてくれてスッキリしました。ただ事件の決め手となる証拠が驚きでも何でもなく、観ている人なら誰もが最初から気付いているような呆気無いものだったのが残念です。それからこれは私事ですが、本作品を以って見事旧シリーズ全45作を制覇しました。嬉しい! [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-01 21:41:42) |
107. 男はつらいよ 私の寅さん
まさに芸術の秋にピッタリな内容ですね。今まで大分方向転換してきた内容を、かなり原型まで取り戻しているような気がします。前作までの流れから考えると確かにちょっと物足りないような感じもするけど、久しぶりに以前のシリーズの落ち着きを取り戻していて僕は好きです。今日もまた青い空の下で寅さんは地道に生きるのでした(それにしても今回は熊だの猿だのやたら動物ネタが多いですね)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-01 21:27:39)(良:1票) |
108. リトル・ヴォイス
《ネタバレ》 これはてっきりユアン・マクレガーが主演の映画かと思っていたのですが、完璧にジェイン・ホロックスの映画でしたね。それからマイケル・ケイン、まさかあそこまで嫌味たっぷりで落ちぶれた男の役を熱演するとは…。仮にもナイトの称号を持つ名優なのに(苦笑)。ユアン・マクレガーの物語上、然して意味が無いように思われたハト好きという設定も、最後の一斉に飛び立たせるシーンの美しさと言ったらありませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-29 20:20:37) |
109. アルゴ探険隊の大冒険
これはレイ・ハリーハウゼンの行った仕事の中でも最高の出来栄え、映画としての面白さでは「シンドバッド七回目の航海」にも引けを取りません。何と言っても出てくるクリーチャー達が揃いも揃ってカッコ良すぎ!巨像タロスはそのあまりの大きさに、コイツが動き出すのかと思うと非常にワクワクしました。そして七頭の大蛇はデザイン、ディテール共に凝っていて素晴らしく、その牙から生まれる骸骨軍団とのクライマックスの死闘はハリーハウゼン・ダイナメーションによる極地と言えるのではないでしょうか。ここまで来るともはや無駄な人間ドラマが邪魔に思えてくる程…いや、この際ハッキリ言ってしまいましょう。邪魔だと(笑)。これを当時映画館の大スクリーンで観ることが出来た人たちが死ぬほど羨ましい…。くぅぅ [ビデオ(字幕)] 8点(2005-10-28 18:28:14)(良:1票) |
110. ビッグ・ウェンズデー
前半の馬鹿馬鹿しい雰囲気とは打って変わり、後半は戦争が物語に暗い影を落とします。何と言ってもこの作品、単なるサーフィン映画に終わっていないところが良い!青春映画の全ての要素が詰まっています。特に最後の雄大な音楽と共に、三人がビッグ・ウェンズデーへと立ち向かって行く姿は本当にカッコ良かったです。どんなに辛く悲しいことがあっても、波が全てを洗い流してくれる。例えそれがサーフィンでなくとも、 自分も何かそういうものを見つけたいです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-28 18:16:27) |
111. 父、帰る
《ネタバレ》 これはもう映像の美しさだけで、その勢いで8点を付けたくなる映画ですね。流石はあのドヴジェンコ(正確にはウクライナだけど)やタルコフスキーを輩出した国だけはあります。途中でもしかしたらこれは最後まで結論を出さずに終わるんじゃないか?と思っていたら、案の定…。でもこういう突き放した感じの映画は結構好きです。監督はこれが初監督作品だそうですが、落ち着きのあるストーリー展開やカメラワークなど、早くもベテランの風格を感じさせます。兄役のウラジーミル・ガーリンが撮影終了後に溺死してしまったという裏話はあまりにも出来すぎていて(失礼)、映画の物語以上に落ち込んでしまいました。ご冥福をお祈りします。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-28 18:07:31) |
112. 虹を掴む男(1947)
いや~昔から変な映画は存在したんですねぇ、これをリメイクしたくなる人々の気持ちも分かります。ただ問題はマザコンの上に妄想症という特異なキャラクターの主人公に、ダニー・ケイ以上のハマり役がいるのかということと、現代のハリウッドでここまで幻想的な世界観を再び創り上げることが出来るかということです。空想のシーンで度々出てくる「ポケタ、ポケタ…」には笑いました、これからどんな音を聞いてもこれ以外には聞こえなくなりそうです。シットコムなら常に周りから「ハッハッハッ」という笑い声が聞こえてきそうですな。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-10-24 18:06:23) |
113. 制服の処女(1931)
《ネタバレ》 実はこの映画、けっこう不純な動機で観ました。案の定「ベルンブルク先生って女じゃん!」などと喜び勇んで観ていたのですが、これがなかなか真面目な内容でした。主人公の少女マヌエラは他の生徒たちとは違い、先生のことを実の母親のように慕っていたのでしょうね。最後は学園内の"悪の親玉"である校長が打ち負かされたにも関わらず、どこか物悲しい余韻が残ります。昔の人々は良い映画の撮り方を知っていた…。それにしてもジャン・ヴィゴの『新学期操行ゼロ』が"反社会的"という理由から上映禁止処分になり、こういう作品がすんなり公開されるというのは何とも面白い話ですね。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-10-21 22:53:25) |
114. ファニーとアレクサンデル
初めはひどくお上品で優等生的な作風にいまいち馴染めなかったけど、後半の子供たちがヘルハウスに連れて行かれてからは文字通りファニーとアレクサンデルの物語になり一気に引き込まれました。このグロテスクさが良い、前半と後半の対比はお見事!ただ今回観たのは残念ながら三時間バージョンの短い方で、いつの日か五時間完全版(長いなぁ…)も観たいです。何はともあれベルイマンさん、どうもお疲れ様でした! [ビデオ(字幕)] 7点(2005-10-21 22:39:23) |
115. バニシング・ポイント(1971)
オープニングとエンディングの見せ方が実に上手い!最後まで観たらまた最初から観直したくなりました。内容はと言うと、本当にただ車が爆走しているだけの映画なので「つまらない、退屈だ」と思われる方もいるでしょうが、途中で主人公の過去の映像が挿入されたりと、なかなか憎めない作りになっています。過ぎ去って行くセンターライン、どこまでも続く果てしない大自然と、ある種のトリップ感も味わえます。映像もなかなかの迫力で個人的には◎の映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-21 18:03:57) |
116. 理由なき反抗
オープニングのブリキの玩具と戯れるジェームズ・ディーンの姿から、この何ともやるせない世界に引きずり込まれてしまいます。正直古臭さは否めません、確かに現代ではもっと悲惨な事件が起きていますからね。それでもどうしても観ていて悲痛な気持ちになってしまうのは、偏にジェームズ・ディーンの才能と監督ニコラス・レイの的確な演出によるものではないでしょうか。チキンレースのシーンは、後にディーンが自動車事故で命を落としたということを知りより一層感慨が深まりました。青春映画の名作。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-21 17:28:39) |
117. フェリーニ 大いなる嘘つき
「フェリーニ 大いなる変人」という感じですね、勿論褒め言葉として。これを観てフェリーニという人が分かったような分からないような…。とにかく彼が子供の頃から奇人や変人に憧れていたというのは妙に納得。それから「カサノバ」の撮影シーンは笑いました、女性のおっぱいに吸い付くドナルド・サザーランドの勇姿には大爆笑!最後に間違いなく一つ言えることは、これからも我々は彼の映画を観続けていくだろうということ(サザーランドじゃないよ?)。偉大なる大嘘つきに乾杯! [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-19 18:28:42) |
118. 卵の番人
《ネタバレ》 これだから卵と関わるとロクなことがないんだよ…、「ファニーゲーム」然り「ハリー、見知らぬ友人」然り。まず冒頭の五分間がデジャブの連続、ここで一回も欠伸をしなかったら勲章を差し上げます(笑)。この監督の作品は先に「キッチン・ストーリー」を観ていたのですが、全くこれっぽっちも作風が変わっていないことに驚きました。これがノルウェー流のジョークなのでしょうか。特にしつこいぐらいのトイレのシーンは笑いました。月面着陸の実況と画面の映像がシンクロするところは、確かジャック・タチの映画でもやっていたような。相変わらずこの人の作品は自分一人で部屋に閉じこもって、ゆったりとコーヒーでも飲みながら観たいです。そんな味わいのある映画です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-10-19 18:16:57) |
119. 愛と殺意
《ネタバレ》 ミケランジェロ・アントニオーニ監督の長編デビュー作だそうです。この映画は彼の後期の作品と比べて比較的スマートで観易く、近いところでは同国のフェデリコ・フェリーニ監督の『崖』や『青春群像』などの初期作品群を思い起こさせます。前半は「ある女の過去を探る探偵、そこに秘められた一つの死」という感じで如何にも犯罪ミステリーの匂いを漂わせかなり期待させたのですが、後半以降は結局いつものアントニオーニ節でした。というか監督第一作目にして既に独自のスタイルを確立させていたというのが凄い!後半、主人公二人が突如女の夫の殺害計画を思い付くところなんてほとんど説得力無しなんですけど、それでもあのアントニオーニお得意の「FINE」の唐突さで何もかもが水に流されてしまった感じです。そんな訳でこのレビューもここで、FINE [地上波(字幕)] 7点(2005-10-19 18:09:59)(良:1票) |
120. シービスケット
《ネタバレ》 いや~、久しぶりに観ていて心が震えました。確かに前半部分はかったるい、その余りのかったるさに思わず「これじゃオスカーを貰えなかったのも当然だな」等と偉そうなことを考えてしまいましたが、観終った後には「せめて撮影賞ぐらいはあげたかった…」とこう思いました。いくら後半が面白くても前半がつまらなければ意味がない、という定説は明らかに間違っていますね。映画は最後まで観なくちゃ分からない。特に最終レースとウォーアドミラルとの対決シーンには胸が打ち震えました。それから人間の傲慢さが嫌いという批評も見かけたけど、少なくとも僕はそう感じませんでした。それどころかこの映画は最後の台詞からも分かるように、寧ろ馬の方を優先させているような気がします。シービスケットと共に暴れていたところを見出された騎手のレッド・ポーラッド、最後に二人仲良く足を怪我しているところからも、この一人と一頭は最初から運命で結ばれていたのかなと思いました。ところで今のハリウッドは30年代ブームなのか今度はボクシングをテーマにした『シンデレラマン』が公開されますが、監督のロン・ハワードとはどうも反りが合わないのですが、こちらも同じように前評価が高いので観てみようと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-10-19 17:56:50) |