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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 1489
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101.  侠骨一代 《ネタバレ》 
久しぶりに見た高倉健の任侠映画で、マキノ雅弘監督の映画を見たのも久しぶりだったのだが、いつもの東映任侠映画とは少し毛色が違う感じがして、まず高倉健演じる主人公がいかにもな任侠映画の主人公といったふうではなくて、軍隊にいる時(この冒頭部分で本作は「兵隊やくざ」的な話なのかと思ってしまった。)に母の死を知らされ泣いてしまったりするなど人間味が強調されて描かれているのが新鮮で、このおかげか主人公にすっと感情移入することができた。主人公がやっかいになる組の親分(志村喬)が敵対している組の刺客に狙撃されても致命傷に至らず死なないといった見ている側の予想を裏切る展開もなかなか良かった。それに本作は任侠映画でありつつもメロドラマとしてよく出来ていて、これが本作により深みを与えていて、マキノ監督のうまさを改めて感じた。主人公の母親を演じているのが藤純子で、回想シーンしか出てこず早々に死んでしまうのはおかしいなと思っていると後になって母親そっくりのヒロイン役として二役で登場するという仕掛けもうまく、これも主人公のドラマを際立たせるのに効果をあげている。その藤純子演じるヒロインがビン牛乳を飲むシーンが何度か出てくるのだが、その飲みっぷりがまた良く、印象的だった。高倉健の任侠映画といえば「昭和残侠伝」と「日本侠客伝」の二大シリーズのイメージがどうしてもあるが、本作はそれらとはまた違う作風のイメージで見れたことが良かったし、それでいてマキノ監督の安定感もしっかり出ていて、じゅうぶんに面白かった。
[DVD(邦画)] 8点(2022-04-24 23:46:59)
102.  日本一のゴマすり男 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。植木等主演の日本一の男シリーズの中でも前々から見たいと思っていた映画だったのだが、ようやく見る事ができた。とはいえ、このシリーズ自体をかなり久しぶりに見たので果たして楽しめるかというのにちょっと不安もあったのだが、その思いは冒頭すぐのバスから降りた植木等演じる主人公である中等が軽快に歌いながら笑顔で元気に走っている姿を見て吹き飛んだ。この出だしのシーンを見るだけでこちらも元気になれるし、前向きな気持ちになることができる。今回はゴマすりを武器に主人公が出世していくが、とにかく相手をおだてておだてて褒めまくる。これが普通ならやな奴と映ってしまってもおかしくないところを、植木等だとそうは感じさせない不思議な魅力があり、こんな生き方が実際にできたらいいなとつい考えながら見てしまう自分がいる。古澤憲吾監督の演出にも相変わらずで、このシリーズの底抜けなパワーは植木等のポジティブな魅力に加え、古澤監督独特の勢いのある演出によって生み出されるものでもあると感じることができ、その意味では古澤監督と植木等はまさに名コンビだと思わずにはいられない。(クレージー映画では坪島孝監督の作品ももちろん好きだ。)クレージーキャッツの面々も何人か出ているのだが、ハナ肇が出ていなかったり、谷啓がラストだけの登場(ノンクレジット)だったりして、このあたりからこのシリーズは植木等の単独主演作という方向を確立し始めた感もある。主人公にバイトとして雇われた学生の中に加藤茶がいて、さすがに若く、セリフもあり、けっこう目立っているので印象に残った。舞台となるのが自動車会社で、実際にヤナセが協力していることもあり、登場する外車もどれもカッコよく、その方面でもじゅうぶんに楽しめる映画になっている。
[DVD(邦画)] 8点(2022-02-06 17:49:11)(良:1票)
103.  兵隊やくざ 殴り込み 《ネタバレ》 
シリーズ第7作。今回は大宮(勝新太郎)と有田(田村高廣)が上官の策略によって引き離されるというのがコンビものシリーズにはありがちに思いながらも面白かったし、その上官を演じるのが安部徹とか小松方正という分かりやすいキャスティングなのも安心して見ていられた。1作目から元々コメディー要素の強いシリーズだったのだが、今回は脚本に東宝で社長シリーズなどを担当している笠原良三が参加しているせいか、いつもよりもコメディー要素がさらに強くなっていて、大宮が釣ってきた魚をフライにして食べた全員が腹痛を起こすシーンなど、笑えるシーンが増えていて、その意味でも娯楽映画としてじゅうぶんに楽しめた。でも、これは前作がこのシリーズにしてはちょっとシリアスになり過ぎた感があったので、その反動かもと思ってみたりした。クライマックスの大宮が軍旗を取り戻すシーンも、そこまでシリアスにならず、大宮の超人ぶりがこれでもかと言わんばかりによく描かれていて楽しい。ラストで唐突に終戦になるのは意外な気がしたが、もう階級も減ったくれもないと上官三人相手に大暴れする大宮の姿はこれまでのどの回よりも爽快感を感じた。ラストシーン、軍を去っていく大宮と有田の会話も前作に続いて印象的。それにしてもこのシリーズ、大映のものはもう一本あるのだが、この終わり方で果たして次回はどう続けるのだろうと気になってしまった。
[DVD(邦画)] 8点(2021-06-27 22:59:54)
104.  兵隊やくざ 俺にまかせろ 《ネタバレ》 
シリーズ第6作。今回、大宮(勝新太郎)と有田(田村高廣)が所属する部隊の参謀は有田の幼馴染という設定が面白いし、演じているのが渡辺文雄というところにも妙に納得できる。その幼馴染である田沼が今回の敵役であるが、勝つためなら手段を選ばないような男というのがよく、きっと実際にもこんな軍人はいたのだろうなと感じさせていて印象的だし、作戦を成功させるためとはいえ、大宮と有田が所属するならず者集団の分隊を囮にして全滅させてしまおうという冷酷さもこれまでの敵役上官とは一線を画すものになっているが、ここにもなにかリアルさを感じるし、大宮がゲリラの捕虜になる展開や、囮になった分隊とゲリラの壮絶な戦闘シーンが描かれるなど、今回はなかなか重苦しい雰囲気が漂っていて、娯楽ものというよりは普通に戦争ドラマとして見ごたえのある作品になっていて、シリーズとしては異色作かもしれないが、その面でもじゅうぶんに面白かった。ラストはいつものように田沼をボコボコにするも、なにか爽快感もほかの回と比べてないように思うのだが、最後のシーンの大宮と有田のやりとりで、有田から「お前に任せるよ。」と言われた大宮の笑顔が何とも言えず、これが重めだった今回の物語の救いになっている気がする。
[DVD(邦画)] 8点(2021-06-20 17:51:39)
105.  ジョゼと虎と魚たち(2003) 《ネタバレ》 
昔から気になっていた映画だったが、アニメ映画化を機に初めて見た。健常者の青年と身体障害者の女性の恋愛を描いたラブストーリーだが、本作に登場するジョゼ(池脇千鶴)はよくある障害者を扱った作品にありがちな描き方をされておらず、それが却ってリアルに感じられるし、そのせいか、恒夫(妻夫木聡)との恋愛も障害者云々をあまり気にせずに見ることができたし、映画自体に独特な雰囲気と力強さがあって見ているうちにだんだんと引き込まれた。なんといってもジョゼの強烈で個性的なキャラクターが印象に残るのだが、そんなジョゼの身の周りの世話をしていた祖母(新屋英子)が亡くなり、心配してやってきた恒夫に対し、はよ帰れと言ったあとにやっぱりおってくれ、ずっとおってくれと言うシーンは普段は強がっているジョゼの孤独さやさびしさ、いじらしさといったものが感じられ、つい、見ながら感情移入してしまった。(ただ、そこから次のシーンでああくるとは思ってなかったのでちょっとビックリしてしまったのだけど。)池脇千鶴もものすごくハマっていて、素晴らしく、今まで何本か出演作見てるのだが、こんなに良いと思うのは初めてかもしれない。映画は冒頭から恒夫のモノローグで始まり、それがクライマックスの二人での旅行につながるわけだが、そのモノローグで何気なく語られていた水族館が休みだったエピソードはジョゼの気持ちを考えると切なく、本物の虎は見れたのに、本物の魚は見られず、結局、ホテルの部屋で壁に映された魚を見るというのが見ていてなんとも言えない気持ちになる。冒頭のモノローグで既に二人の別れを暗示していて、死別とかいうありきたりなものだったらヤダなと思ってしまったのだが、この結末はそんな安直な結末とは比較にならないほど重く、見ていてすごくリアルに感じた。果たしてハンディを持った人をパートナーに迎えたときにそのパートナーのことをどれだけ受け止めることができる人がどれくらいいるだろうと考えさせられるし、またもし、恒夫の立場ならパートナーを受け止める覚悟があるかということも考えさせられ、これが本作の真のテーマだったのではないかと思えてくる。ジョゼを受け止めきれなかった恒夫の弱さや、ジョゼの一人でも生きていくという意思の強さといったものをこのラストシーンではしっかり描いていて、犬童一心監督の演出も巧み。これから別々の人生を歩む二人にとってこの出会いは決して小さなものではなかったと思いたい。本当にいろいろと考えさせられる良い映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2021-01-11 02:29:12)(良:2票)
106.  レディ・プレイヤー1 《ネタバレ》 
ストーリーはともかく、本当に「おもちゃ箱をひっくり返したような映画」という言葉がぴったりはまる映画で、とにかく見ていて純粋に楽しめた。冒頭部分からの金田バイクの登場は2か月前に「AKIRA」を再見したばかりというのもあって出てきただけで興奮したし、ガンダムとメカゴジラの戦いももちろん見ていて燃えたし、子供の頃にソフビで遊んでいた感覚を思い出してなにか懐かしくなってしまった。あえて野暮な欲をいえばメカゴジラの登場シーンでゴジラのテーマではなくメカゴジラのテーマ(74年Or93年)を使ってほしかったところ。でも、いちばんの見どころはやっぱり「シャイニング」の再現の完成度の高さで、かなり気合いを入れて作り込んであって、ここが見ていていちばん興奮してしまったし、久しぶりに「シャイニング」見て見ようかとも思った。こういう映画は元ネタを知らないと楽しめないかもというのがあるのだが、この「シャイニング」のシーンで、中に入るメンバーの中に「シャイニング」を見ていない人物を一人入れているのは、実際に見ていない観客と同じ立場の人物を置いておくことでその観客が置いてけぼりを食らうのを最小限にとどめるためだと思うが、これは良かったと思う。映画の世界を疑似体験できるVRというのはそのうち実現するだろうなと思わずにはいられない。それにしても70を過ぎたスピルバーグがまだこういう直球勝負なエンタメ映画が作れるということに驚くとともに嬉しくなる。映画に興味を持ったのは中学の頃で、きっかけとなった中には「BTTF」や「ジュラシック・パーク」があるわけだが、この映画が今のこれから映画に興味を持とうという人のそういったきっかけの一つになれば嬉しい。
[DVD(吹替)] 8点(2020-09-22 13:03:38)(良:1票)
107.  映画 聲の形 《ネタバレ》 
見る前はあまり期待もなかったが、始まるや否や一気に見入ってしまった。内容は確かに障害者やいじめの問題を描いているが、単に差別やいじめは良くないというこういう作品にありがちな単純なメッセージよりも、根本的なテーマはもっと深いところにあり、とても重いが、同時にとても考えさせられる映画だ。小学生の頃、転校してきた聾唖者である西宮に対するいじめの中心人物だった石田がやがてスケープゴートになり逆にいじめられる側になるというのはリアルだし、それが原因で五年たって高校生になっても周囲と打ち解けずにいる石田の西宮に対する贖罪や、彼自身の成長と再生が本作のもう一つのテーマだ。そんな石田の目から見た同級生たちの顔には全体に×印がついているというのも、わかりやすい演出ではあるが、石田の心情をうまく表していると感じるし、そうしていることで、石田にとても感情移入しやすくなっている。そんな中であるきっかけで友達になってくれた永束と、西宮を必死で守ろうとする彼女の妹であるゆづるの存在は石田にとってどれほど心強く、大きな存在だっただろう。出てくる同級生や小学校の担任の教師、西宮の母は問題のある人物として描かれていて、とくに同級生は小学校から高校まででなにも変わっていないような連中が多く、中でもとくに川井と植野は見ていてイライラするほどだったが、同時にそこにリアルさを感じられる部分もあり、映像の美しさや作画の丁寧さもそうだが、人物描写も繊細で丁寧で、作り手が石田をいじめる側の同級生たちも決して完全な悪役のように描かず、どこか愛が感じられる描き方なのがいい。そしてもちろん石田という主人公をきっちりと描いているのが良かった。他人と交わり、完全にではなくても分かり合えることの大切さ、話すことの大切さ、そういうことをあらためて教えてくれる映画で、もちろん、賛否両論はあるのは当然のことだと思うけど、素直に見て良かったと思えたし、じゅうぶん見る価値のある映画だ。最後にこの映画で京都アニメーションの制作作品初めて見たんだけど、実際に作品を見ると、あんなひどい事件が起こってしまったのはあらためて非常に残念で哀しく思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-12-30 16:02:56)(良:1票)
108.  富士ファミリー2017〈TVM〉 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。前作が良かったので見る前は少し不安な面もあったが、そんな心配はなく、むしろ前作を見ているのもあって最初から安心して楽しむことができた。今回も富士ファミリーの面々の日常がコミカルに描かれているが、その笑える中にも前作同様に人間の不器用さや弱さがサラリと、でも、しっかりと描かれているところにこのシリーズの良さがあるし、とても見ごたえのあるドラマになっている。今回、笑子ばあさん(片桐はいり)が幽霊のナスミ(小泉今日子)に聞いた生まれ変わりの合言葉である「おはぎちょうだい」が物語のキーワードになっていて、この言葉がそのまま今回の「生まれ変わり」というテーマにつながっている構成だが、それがなんとも心地よく、見ているうちにこの何でもないような言葉を聞くだけでこちらもなんだか元気に、そして前向きになれる気がしてくる。今回も笑子ばあさんは面白く、冒頭から笑わせてくれていて楽しいのだが、老人クラブで戦時中に白い飯を食べていたと自慢した男(鹿賀丈史)とけんかになった数日後に二人で富士山の見える公園でおにぎりを食べているシーンは思わずしんみりウルっときて、非常に良いシーンだった。また、その直後に炊飯器を開けた鷹子(薬師丸ひろ子)が「炊き立てのご飯ってきれいだな。」と言うシーンを入れるのも印象的で、演出としてもうまかったと思う。その鷹子が有名な占い師になった中学時代の友人(YOU)に再会し、昔のわだかまりを解くエンドロール直前のシーンも良い。また、今回はナスミと新人幽霊(羽田圭介)のやりとりも描かれているが、その会話の中にもサラリと胸にくるような言葉が多く、これも心に残る。そのナスミの分のおはぎを前にした笑子ばあさんの独り言も本気でナスミのことを心配しているのがよく伝わってきて切ない。誰かに必要とされることの大切さや、生まれてきたことのありがたみといったメッセージをストレートに発しているが、今回もそのメッセージがじゅうぶんに伝わり、見て良かったと思えたし、自分はこういう人情喜劇がやっぱり好きなのだろうと感じた。もうドラマとしての続編はないかもしれないが、できればまたやってほしい。見終わっておはぎと炊き立ての白いご飯が食べたくなったことを最後に記しておく。
[DVD(邦画)] 8点(2019-10-13 17:51:39)
109.  富士ファミリー〈TVM〉 《ネタバレ》 
薬師丸ひろ子と小泉今日子、それに片桐はいりの共演にミムラと高橋克実も出ているというこのキャストだけを見れば「あまちゃん」や「梅ちゃん先生」が浮かんでしまうが、もちろんこの2本の朝ドラとは全く無関係なNHKの正月ドラマ。実は木皿泉脚本ドラマを見るのが初めてだったのだが、素直にとても面白かった。富士山のふもとにある小さなコンビニを舞台に、そこを経営する家族の人間模様を描いた人情喜劇で、笑える中にも人間の弱さや孤独といったものをサラリと描いていて、深みがあるし、生きている、ここに存在していることの素晴らしさを感じさせてくれる。そのメッセージがやや直接的すぎる気もするが、じゅうぶんに胸に刺さり心に残った。登場人物の中ではやはり笑子ばあさん(片桐はいり)が面白く、冒頭の食卓を囲んだ富士ファミリーの面々との会話や、幽霊になったナスミ(小泉今日子)とのやりとりが笑わせてくれるのが楽しい。でも、やっぱり、笑子ばあさんとマツコロイド(元は日テレのバラエティー番組に出てきたアンドロイドらしい。)のやりとりが上記のメッセージも出てきて印象深い。鷹子(薬師丸ひろ子)に20年以上同じ日にプロポーズしている雅男(高橋克実)が、ほかの人と結婚するので新居をコーディネートしてほしいと鷹子に頼むのも見え見えなのだけど、それが逆に安心して見ていられる。さっきも書いたが、本当に面白い、見てよかったと思えるドラマだった。続編もあるようなのでそちらも見てみようと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-10-06 23:26:58)(良:1票)
110.  人生劇場 飛車角と吉良常 《ネタバレ》 
内田吐夢監督が唯一手掛けた任侠映画で、東映任侠映画としては初めてキネマ旬報ベストテンにランクインした作品。内容は「人生劇場 飛車角」をリメイクした感じになっていて、飛車角を鶴田浩二、宮川を高倉健が再び演じている。「人生劇場 飛車角」を二週間ほど前に見たばかりだったので、ちょっと不安な面がなかったといえばウソになるのだが、内田監督の演出はさすがに格調高く、重厚さや美しさといったものもあり、鶴田浩二、高倉健をはじめとしたオールスターものなのだが、登場人物それぞれの義理と人情の人間ドラマもしっかりと描かれ、今まで見た任侠映画の中でもとくに見ごたえのあるものになっていて、そういう不安は一気に消し飛んだ。鶴田浩二の飛車角のなんという男らしさは言うまでもなくカッコいいし、高倉健の宮川は「人生劇場 飛車角」と比べるといかにも高倉健らしいストイックな感じで、やはり高倉健のイメージにはこちらの宮川のほうが合っている。そして、なんといっても辰巳柳太郎の吉良常。月形龍之助の吉良常も良かったのだが、この辰巳柳太郎の吉良常は非常に味わい深く、とくに病に倒れてからの亡くなるまでのシーンでの演技は見ていて思わず涙が出るほど感動してしまった。その後の飛車角が殺された宮川の仇討に向かうシーンで止めに入るおとよ(藤純子)とのやりとりも印象的だ。それにクライマックスの殴り込みのシーンで画面がカラーから白黒に切り替わるのは同じ内田監督の「宮本武蔵 一乗寺の決斗」を思い出すが、やはり本作でも効果的に使われ、凄まじい殺陣シーンの中に美しさを感じることができる。そしていちばん最後のシーン、やってきた泣き崩れるおとよに宮川を託したあと、去っていく飛車角の後ろ姿。背中が飛車角の悲しみを代弁しているようで、なんともやるせなさの残るこのラストシーンが強烈な印象を残していて、この殴り込みシーンからラストシーンまでの演出が本作をさらに格調高い傑作へと押し上げている。これが内田監督にとって最後の東映映画で、かつ遺作の前という映画なのだが、それを全く感じさせずにこんな傑作に仕上げてしまうのは素晴らしいと思うし、それに応えた出演している俳優陣ももちろん素晴らしい。任侠映画に興味はあるけどなかなか手が出せないという人には真っ先に本作と山下耕作監督の「博奕打ち 総長賭博」の二本を薦めたいと思う。そういえばこの二本とも同じ年の鶴田浩二主演作だ。
[DVD(邦画)] 8点(2019-07-14 01:03:30)
111.  続・組織暴力 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。主演は前作同様に刑事を演じる丹波哲郎なのだが、実際見てみると渡辺文雄演じる裏とつながった氷屋の社長が主人公のように見え、彼がヤクザと手を結び、のし上がっていく物語になっていて、丹波哲郎の出番は比較的少なめな感じだった。渡辺文雄は前作でも悪役で出演していたが、今回もはまり役で、丹波哲郎の追及をのらりくらりとかわしていくふてぶてしさが素晴らしい。一方でさっき書いたように丹波哲郎の出番が少なめなためか、刑事たちの捜査に対する執念というものが前作より弱かった気がする。それでも本作は前作同様にヤクザを美化した内容にはなっていないのがこの時代の東映ヤクザ映画とは一線を画すところ。逮捕された直後の渡辺文雄をバックについていた柳永二郎演じる大物の命を受けた部下たちがあっさりと殺してしまうラストシーンにヤクザ社会の非情さというものがしっかりと描かれていて、のちの実録路線のヤクザ映画にも通じるところのある映画になっているのが良い。このラストシーンは前作のラストシーンよりも救いがなく、やるせない気持ちになり、茫然と立ち尽くしている丹波哲郎と同じく、見ている側も茫然とするしかないのだが、これは佐藤純彌監督をはじめとするスタッフの狙いなのだろう。そして、トカゲの尻尾切りのように悪人を捕まえても結局、まだその上がいて、悪は無くならないという社会的メッセージを感じとることができる。これがこの当時の佐藤監督の作風によるものなのかはわからないが、このシリーズは2作とも単なる東映のヤクザ映画ではなく、とても見ごたえのある社会派映画の傑作だったことは確か。
[DVD(邦画)] 8点(2019-06-07 00:09:49)
112.  組織暴力(1967) 《ネタバレ》 
佐藤純彌監督の手掛けたヤクザ映画を見るのが初めてだったのだが、面白かった。東映のヤクザ映画というと、ヤクザ同士の争いを描いた作品が多いが、この映画は丹波哲郎演じる刑事を主人公にすることで、決してヤクザを美化するような映画になっていないし、視点もあくまで第三者的でクールに描いていて、70年代後半以降の佐藤監督の大作映画の数々を見慣れていると、本当にこれがあの佐藤監督の映画なのかと思うほどだ。作劇としても見ごたえがあり、ヤクザの描き方もそうだが、中でもラスト近くの空港のシーン、目の前に拳銃密輸事件の黒幕(月形龍之介)がいるのに法が壁となって逮捕できないというのが非常にリアルで、今までヤクザ一掃と拳銃押収に執念を燃やしていた主人公同様、見ているこちら側にももどかしさを感じさせる脚本はすごいの一言。ほかにもヤクザの抗争に巻き込まれてなんの関係もない若い女性が両目を失明してしまうエピソードなどをきちんと描いているところが良い。また、最後の最後に兄の仇討に躍起になっていた千葉真一扮するチンピラの若者(千葉真一、このころから既にギラギラしていて熱い。)が黒幕たちの前に飛び出していく展開は、なかなかに来るものがあり、感動的だったし、それまで抑えられていた見ている側の感情もここで一気に爆発するかのようにカタルシスもものすごく感じられる。さらに、彼の最後の行動によって、本作はヤクザばかりではなく、警察にも批判的な目を向けていたのではないかと考えることができるようになっているのはやはり一筋縄ではいかないものがあり、紛れもなく本作は社会派映画の傑作だったと思う。佐藤監督と言えば大作映画(あるいは「北京原人」)の監督というイメージがどうしてもあるが、それとは違う一面を見るにはじゅうぶんだった。
[DVD(邦画)] 8点(2019-06-01 17:53:26)
113.  クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん 《ネタバレ》 
ぎっくり腰の治療に行ったひろしがロボットになって帰ってくるというのが面白い設定だが、実はそのロボットはひろしの記憶と人格をコピーしただけの存在というのは賛否ありそうに感じるも、これにより本人をそのままコピーしたロボットは本人と言えるのかというSFによくあるテーマを扱った作品としての面白さもあり、素直に楽しむことができた。前半はロボットになったひろしが家族に受け入れられるまでを描いているが、しんのすけがすんなりと受け入れたのに対し、それをなかなか受け入れられずにいるみさえがドデカシティーでのしんのすけたちの事故をきっかけにロボひろしを受け入れられるようになるというのが良かった。しかし、後半の生身のひろしが復活したあとに、みさえがロボひろしの前を横切り、生身のひろしに駆け寄っていくシーンはロボひろしの切なさがなんとも言えず悲しかった。そんなロボひろしもしんのすけにとってはひろし同様とーちゃんに変わりなく、だからこそ、最後のひろしとロボひろしの腕相撲のシーンで「どっちのとーちゃんもがんばれ!」と両方を応援する姿にぐっとくるものがあるし、泣ける。その後のロボひろしが家族をひろしに託して消えていくシーンも泣けて仕方なかった。(このシーンはロボひろしの視点のみで描かれているが、最初にロボひろしが家に帰るシーンも視点のみのワンカットで描かれていて、対になっているのが良い。)シーンが前後するが、しんのすけが正気を失ったロボひろしに拷問と称して嫌いなピーマンを大量に食べさせられるシーンも、しんのすけが家族を助けるために勇気を振り絞ってピーマンを全部食べる姿には思わず感動してしまった。もちろん、泣けるシーンばかりではなく、「クレヨンしんちゃん」らしいバカバカしさも健在で、中でもクライマックスの最終決戦で五木ひろしロボが登場して、コロッケの声で「契り」を歌い始めるシーンはついこの間の連休に五木ひろしの「契り」が主題歌になっている「大日本帝国」を見たばかりだったこともあって、かなり笑ってしまった。父ゆれ同盟というのもバカバカしいネーミングだが、それが、「父よ、勇気で立ち上がれ」の略称なのは何か世の父親たちに対するメッセージとも解釈できて、そういう父親たちへのエールとも取れるネーミングで、そう考えると奥の深いネーミングだと思えてくる。こういうバカバカしさの中にも深さが感じられるのも「クレヨンしんちゃん」の良いところだ。
[DVD(邦画)] 8点(2019-05-11 23:46:41)
114.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ 《ネタバレ》 
劇場版シリーズ第12作。「雲黒斎の野望」と「アッパレ!戦国大合戦」の2本で時代劇をやっている劇場版シリーズだが、それに対して今回は西部劇になっているのは理にかなっていて、前2作のようなタイムスリップという要素を使わず、さびれた映画館で上映中の映画の中に入り込むという「カイロの紫のバラ」や「ラスト・アクション・ヒーロー」で用いられた手法を使うことで違いを出している。なので、作中の西部劇の世界はあくまで映画の中の世界ということで、「アッパレ!戦国大合戦」のようなリアル路線でなくてもそんなに気にならないし、逆に映画の中だから何でもありという荒唐無稽さが楽しく、とくに終盤のたたみかけるようなアクションはいかにも劇場版「クレヨンしんちゃん」らしい躍動感があって圧巻だった。そんな終盤とは違って前半は舞台となる西部劇映画の世界での日常を淡々と描いていて、この部分が冗長という意見もあるのだが、とくにそうは感じずに見れた。映画の世界でしんのすけ以外のカスカベ防衛隊の面々が現実世界の記憶を失って映画の世界の住人として生活している中、ボーちゃんだけは完全に映画の世界に染まらずにいるというのがなんかボーちゃんらしくていい。馬で引きずられる老人や、しんのすけとみさえが気絶するまで暴行されるなどバイオレンス度が高めなのは子供も見る映画としてはどうかと思うものの、このシリーズは監督の作風や趣味・嗜好がもろに出るので、水島努監督のそれが出た結果なのだと思えば一応理解はできる。今回登場する悪役である知事の名前がジャスティス・ラブというのがなかなかだし、声を演じているのが小林清志というのもなにかこだわりを感じる。声と言えばチョイ役で登場する荒野の七人。セリフのある三人は実際に「荒野の七人」の吹き替え版で同じ役を演じていた小林修、内海賢二、大塚周夫の三人を起用しているのも「クレヨンしんちゃん」らしいところだが、ジャスティスの部下である保安隊隊長と副隊長の声を演じているのが二人とも「ターミネーター」1作目のDVDと最初のテレビ放送版でそれぞれT800の吹き替えを演じていた声優(玄田哲章と大友龍三郎。)というのもツボだった。今回のしんのすけは中学生くらいのヒロイン・つばきに恋をするというのが新鮮なのだが、ここはもうちょっと突っ込んでほしかったかな。それでも、映画が終わって消えてしまったつばきを必死にさがすラストのしんのすけの姿には思わずうるっとさせられた。このラストを見てそれこそ「カイロの紫のバラ」のラストを思い出したのだが、このラストを見てやはり本作は西部劇よりも映画そのものを題材にしているのだとあらためて感じることができた。「オトナ帝国の逆襲」と「戦国大合戦」がすごすぎて逆に本作以降の劇場版シリーズに興味が持てなかった(「栄光のヤキニクロード」はこの二つの間で鑑賞済。)のだが、本作を見てやっぱり劇場版「クレヨンしんちゃん」は面白いと思った。また劇場版シリーズを少しづつ見ていきたい。
[DVD(邦画)] 8点(2019-04-19 00:29:37)
115.  妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。前作は山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ以前の作風のようなブラックさがあり、面白かったんだけど今更そこまで戻るのかという疑問も残った。3作目となる今回は1作目のような雰囲気に戻り、安心して見ていられる映画になっている。初期の山田監督のブラックな喜劇も個人的には好きなのだが、やはり、山田監督はブラックな作風よりもこういう安心して見れる作風の喜劇のほうが良い。それに、今回も「男はつらいよ」を思わせるシーンが多く、うたた寝をしている間に泥棒(笹野高史)に入られ、へそくりの大金を盗まれてしまった妻(夏川結衣)を夫である長男(西村雅彦)が責めるシーンなどはいかにも寅さん的(「そういう言い方はない」というセリフも「男はつらいよ」シリーズで何度も出てくる。)だし、1作目のレビューでも書いているが、家族が些細なことからすぐけんかになるのも「男はつらいよ」シリーズを思わせている。家に泥棒が入るというシチュエーションも山田監督が監督を手掛けた回ではなかったが「新 男はつらいよ」の財津一郎をつい思い出して笑ってしまった。そして次男(妻夫木聡)が妻(蒼井優)といっしょにおばあちゃんを捜しに行く場所がまさかの柴又というのがニクイ。これはもう、山田監督の「男はつらいよ」シリーズへの思い、ファンへの思いというものが感じずにはいられない。(このシーンではとらやの面々や御前様、源ちゃんらがどこからか出てくるのではとつい思ってしまった。)サブタイトルが戦前の成瀬巳喜男監督の映画のタイトルからの引用であることからも分かるように、長男が妻を迎えにいくクライマックスの大雨や稲妻、創作教室の先生(木場勝己)が朗読する林芙美子の小説など、成瀬監督を意識しているのが分かるし、山田監督が成瀬監督のファンで、受けた影響も大きい監督なんだというのがよく分かる。(成瀬作品、あまり見ていないのだが、本作を見終わって久しぶりに見たくなった。)それにしても、この映画に登場する平田家は家族になにか問題が起こるとすぐに家族会議を開くなどいつもながらにすごく団結していて、見ていていつもこういう家族っていいなと思うし、自分もこの家族の一員でいたい、そういう気持ちになってしまって、シリーズをずっと見ているからか、この家族がすごく身近な存在に感じる。このシリーズは母親も好きで一緒に見ることが多いのだが、長男の妻が家出するところから話が始まっている今回はこの長男の妻にとても共感したようで、見終わってすごく面白かったと言っていたし、ぼくも母親に対する感謝の気持ちでいっぱいになることができた。シリーズの次回作があるかはどうかは分からないが、もう2、3本はこのシリーズの新作を見たいなぁ。最後にこれも1作目のレビューでも書いたことなのだが、山田監督はシリアスな映画もいいのだが、いつまでも喜劇映画を撮り続ける監督であってほしい。心からそう思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-03-17 01:08:59)(良:3票)
116.  可愛い悪魔(1982)<TVM> 《ネタバレ》 
大林宣彦監督が手掛けた「火曜サスペンス劇場」の一篇で、大林監督にとっては初のテレビドラマ作品となるホラーサスペンス。大林監督のホラーというと監督デビュー作である「HOUSE ハウス」があるのだが、あちらが怖いというよりはどこかお化け屋敷的な楽しさと遊び心もある作品だったのに対し、こちらはあどけない8歳の少女・ありす(川村ティナ)が連続殺人事件を起こすというもので、かなりの本格的なホラーになっていて、冒頭から緊迫感にあふれていて、それが最後まで続くので一切気の抜けない作品になっている。とにかくありすが怖く、殺す相手に対して「しんじゃえ。」とつぶやく時の表情も怖いが、殺人に走る動機が花嫁のベールが欲しい、オルゴール人形が欲しいという実に女の子らしい動機なのがまた怖い。大人から見た子供の恐ろしさをテーマにしているらしいのだが、人が死ぬ描写はもうやりすぎなくらいにグロテスクで、そのテーマをちょっと超えてしまっている気さえする。主人公はそんなありすにの異常性に気づき、自らも翻弄され、命を狙われることになった親戚の女性・涼子(秋吉久美子)なのだが、彼女もまた恋人の死によって精神を病んでいるという設定がなされていて、それがラストに活かされているのもうまく、またこのラストが非常に後味の悪いものになっているのも、普段持っているサスペンスもの二時間ドラマのイメージを覆すにじゅうぶんだった。大林監督はテレビドラマと言えど、やはり映画を意識しているようで、この監督らしく映像も凝っていてクオリティが高く、当時のドラマでは当たり前だったフィルム撮影も相まって本当に映画を見ているようだったし、脚本が那須真知子ということで、もしかしたら地雷かもと見る前は思っていたのだが、見始めるとそこをまったく気にすることなく、最後までとても面白く見れたのは良かった。出演者に関して言えば、ありすを演じた川村ティナのインパクトのある存在感はもちろんのこと、「可愛い悪魔」というタイトルで小悪魔的なイメージのある秋吉久美子を主演に起用しながら、犯人ではなく、逆に命を狙われる役柄というのも視聴者に対するミスリードが利いていてうまいキャスティングだ。ありすの犯行について知っているというボートハウスに住む怪しげな青年をみなみらんぼうが演じているが、本当に怪しさ抜群の演技でハマり役。ほんのチョイ役でこの年の年末に亡くなった岸田森も出ている。彼の出演は本作を製作した円谷プロのプロデューサーからのオファーだったとか。円谷プロといえば「怪奇大作戦」とかあるものの、やはりどうしても「ウルトラマン」をはじめとする巨大特撮ヒーロー番組のイメージが強いので、こういう二時間ドラマにかかわっていたことがすごく意外で新鮮に感じられた。
[DVD(邦画)] 8点(2018-11-24 17:07:25)(良:2票)
117.  トラック野郎 一番星北へ帰る 《ネタバレ》 
シリーズ第8作。いつもは冒頭に主題歌「一番星ブルース」が流れるんだけど今回は流れない、桃さん(菅原文太)がマドンナに惚れた時に星が出ない、と定番をあえて崩していて少し違和感があるものの、それでもなかなか面白かった。今回のマドンナは大谷直子で、このシリーズのマドンナ役としては既にベテランの域なのだが、演じる役も子持ちの未亡人という設定で、このあたりも異色な感じがする(ますます寅さん化してる?)のだが、作品としては桃さんとこの親子の交流を軸にストーリーが展開し、ツボもキッチリと抑えられていて良い。とくに桃さんがマドンナの息子が大事にしていた亡き父の手作りの飛行機のおもちゃをトラックではねて壊してしまい、お詫びにと不器用にも手作り飛行機を作りはじめるところはやっぱり桃さんの優しさを感じずにはいられないし、最初は飛行機を壊されたことで桃さんを嫌っていた子供が桃さんと打ち解けるきっかけもちゃんと描かれているのが〇。その他、シリーズをずっと見ていると2作目で警官時代のジョナサン(愛川欽也)に恨みを持つトラック野郎を演じていた田中邦衛がジョナサンと旧知で桃さんを銭形警部のごとく追い回す鬼警官という前回と真逆の役を演じているのが面白いし、その鬼警官のキャラクターもクライマックスで桃さんが自分の妻の命を救うためにトラックを走らせていると分かっても追跡をやめないところは職務に私情を挟まないストイックさがあるのはなかなか良かった。(その執拗さはめっちゃバカバカしくて笑えるけど。)桃さんの故郷がダムに沈んだことは3作目でも触れられていたが、今回はサブタイトルどおり、そのダムに沈んだ故郷を桃さんがマドンナ親子と訪れるシーンがあるのも、シリーズのつながりを感じられる。そこで桃さんが語る故郷の話や、故郷が無くなったあとの自分のその後の人生はちょっとしんみりとしてしまうが、桃さんの過去が初めて詳細に語られたことで、シリーズとしての厚みも増したのだと思う。(その意味では本作はシリーズ中でも重要な作品だと思う。)その桃さんの話を聞いたマドンナが子供を一人で育てる決心をし、桃さんのもとから去るという振られ方も泣かせてくれていて良かった。(今回、恋敵がいないのでどうなるのかと思ってた。)今回のライバルは黒沢年男演じるアメリカ帰りのコンボイ野郎・九十九だが、もちろんこのライバルとの対決も見どころ。「九十九と書いてつくもだ。」というセリフに「女王蜂」の神山繁をつい思い出してしまった。
[DVD(邦画)] 8点(2018-10-20 17:56:57)
118.  あん 《ネタバレ》 
先ごろ亡くなった樹木希林の主演映画。どら焼き屋の雇われ店長をしている千太郎(永瀬正敏)とそこに現れたあん作り歴50年という徳江(樹木希林)。この二人を中心にした物語で、とくに前半はこの二人やどら焼き屋にやってくる女子高生を中心としたお客さんたちとの交流を交えて、どら焼き屋が繁盛していくまでを描いている。小豆一粒一粒に愛情を持って接し、小豆に話しかけながら丁寧にあんを作っていく徳江の優しいまなざしはとても印象的だし、そのあん作りのシーンもまるでドキュメンタリーでも見ているかのように丁寧にじっくりと描かれているのが好感が持てるし、そんな苦労して作ったどら焼きをおいしそうにほおばるお客さんたちをみてこっちまでどら焼きが食べたくなってしまう。しかし、徳江がハンセン病患者であったことが露呈するあたりから空気は一変する。後半は重い内容だが、ハンセン病患者たちの思いや辛さというものがひしひしと伝わってくる。そして、亡くなった徳江が千太郎とワカナ(内田伽羅)に残したメッセージは今になって見ると実際の樹木希林ともオーバーラップするところがあって、吉井徳江という役柄と樹木希林という役者が本当に分からなくなって涙なくして見ることができなかった。千太郎が桜が満開の中、笑顔でどら焼きを売るラストシーン、それまでどこかやる気のなさげだった彼は徳江との出会いで変われた。また徳江もずっと隔離されていて、最後のほうになって社会とかかわることができた、これを思った時、否応なしに感動してしまった。ほぼ予備知識なしで見た映画だったのだが、本当に見て良かった映画だったと思う。そして、樹木希林さん、この人のような役者はもう二度と出てこないと本気で思う名女優のひとりで、亡くなられてしまったのは本当に残念でさびしい。心よりご冥福をお祈りします。
[DVD(邦画)] 8点(2018-10-10 00:48:11)(良:3票)
119.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
話題の本作が我が地元で上映が始まり1ヶ月近く。ずっと見たいと思っていたがようやく映画館で見ることができた。(久しぶりの映画館)前半のワンカット長回しによるホラー部分は手振れがひどいというのを聞いていたので「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出すような感じかと思っていたが、そこまで酔うようなことはなく見れたのは良かったし、本物のゾンビに襲われている出演者を尻目に撮影を続ける監督の狂ったようなキャラクターも最高で楽しく見た。一転して後半はこう来たかという感じでその構成の巧みさに驚かされる。この後半部分も「ラヂオの時間」を彷彿させる内幕ものコメディーになっていてゲラゲラ笑えて面白い。とくに監督が前半から一転して俳優たちに気を使いまくるまったく別のキャラクターに描かれているのはその落差がなんとも滑稽で笑えるのだが、そんな監督がこだわってどうしても撮りたかったラストシーンを撮影するためにみんなで協力する展開は笑えながらも映画作りに携わる人たちの情熱が感じられて印象深い。低予算、キャストや監督も無名という映画(この部分にいちばん興味を魅かれた。)だが、とにかくこの脚本の構成力の巧みさで勝利した傑作の一本だと素直に思える映画で、口コミによるヒットも納得。こういう映画を見るとやっぱり映画って脚本や演出が命なんだと実感できる。本当に映画館で見て良かったと思えた映画だったし、見終わってすごく清々しい気持ちで劇場をあとにすることができた。こんなことは本当に久しぶりだ。そして見終わってすぐにでももう一度最初から見返したくなるような映画でもある。
[映画館(邦画)] 8点(2018-10-01 19:27:29)
120.  恍惚の人 《ネタバレ》 
小説もテレビドラマもまったく見たことがなく、この映画で初めてこの物語に触れたのだが、最初は少しボケているだけだったおじいちゃん(森繁久彌)が最後には子供のようになってしまう認知症の恐ろしさと、そのおじいちゃんの介護をする家族(主に嫁)の姿がかなりリアリティを持って描かれていて怖い映画だった。豊田四郎監督の晩年の作品だが、脚本を担当した松山善三監督の作風の色が濃く、「名もなく貧しく美しく」もそうなのだが、本作も当時まだ今ほど理解が進んでいなかっただろう認知症を真正面から取り上げた社会派映画となっていて今見ても考えさせられるし、テーマ的にも今日に通ずるものがあり、古びていないとまでは思わないが、現代においても本作の価値はじゅうぶんにあると感じる。おじいちゃんを演じる森繁久彌は当時60歳と認知症の老人を演じるにはまだ若干若い気もするが、その演技がものすごくリアルで、まるで本当に惚けてしまったかのような演技に圧倒されっぱなしだった。そんなおじいちゃんの介護を一人で背負う嫁が徐々に神経をすり減らしながらも献身的に介護を続けるという姿が見ていて痛々しいのだが、それを見事に演じ切っている高峰秀子の演技力もやはりすごく、主演のこの二人の存在が本作の完成度を一層高めている。白黒スタンダードという73年当時既に古めかしい映像もよく、汚物をこねくり回すシーンなどのリアルさを抑えるためもあるのだろうが、おじいちゃんが花を見ているシーンの美しさはまさに白黒ならではだろう。ラストの孫のセリフも良かった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-08-12 23:56:25)(良:1票)
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