101. トラックス<TVM>(1998)
ネタバレ こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが…… 残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。 全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。 爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。 陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。 元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。 機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。 元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか…… 全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。 それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら…… ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。 「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。 あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。 最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。 ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。 「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。 やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2022-02-02 11:57:38)(良:1票) |
102. 地獄のデビル・トラック
ネタバレ 監督と脚本をスティーブン・キングが担当したという、それだけで映画史に残ってしまいそうな一本。 こういう場合、いっそ「破滅的に酷い出来栄え」であれば、カルト映画として人気になってたかも知れませんが…… 本作は「一応そこそこ楽しめる」ってタイプの品なので、評価に困っちゃいますね。 勿論、粗は多いです。 例えば冒頭にて、機械が勝手に動き出す場面も、映像だけ見れば不気味なのにBGMがロックなAC/DCなので、何かチグハグなんですよね。 キング当人がAC/DCのファンであるがゆえの選曲なのでしょうが、ミスマッチとしか思えなかったです。 男がトラックに轢かれる場面でも「止まってる車に男の方からぶつかってる」としか思えない撮り方してるし、演出の拙さが目立ちます。 脚本に関しても「新婚夫婦の車だけは暴走しておらず、人間が自由に動かせる」って事が伏線だろうと思ってたのに、全然そんな事は無くて、理由が説明されないまま終わっちゃうんだから、もう吃驚です。 主人公達が籠城するガソリンスタンドの地下には、武器がたんまり秘蔵されており、戦力的に主人公側の方が有利っていうのも、ちょっと歪なバランス。 わりと序盤の段階から「バズーカあるから勝てるじゃん」って思えちゃうし、途中で出てきたマシンガン搭載の車に対しても、わざわざ主人公が近付いて手榴弾で爆破なんかしなくても「バズーカ使えばいいじゃん」ってなってしまう。 そんな感想が間違ってなかった証のように、最後は普通にバズーカ撃って、敵の親玉トラックを倒して終わりだし…… 観客に違和感を抱かせない為には「切り札であるバズーカを中々使えない理由」を、ちゃんと描いておくべきだったと思います。 本業は小説家のキングだから、演出は拙くとも脚本には光るものがあるだろうと期待していたのに、それさえも裏切られた気分。 そんなこんなで、欠点を論ったらキリが無いんだけど、ちゃんと良い所もあるというか…… 「長所」っていうよりは「愛嬌」を備えてるタイプの映画だったので、不思議と憎めないんですよね。 まず、予算は問題無く確保出来たようで、トラックが破壊される場面はキチンと描いているっていうのが嬉しい。 「玩具の車を口に突っ込み死んでる犬」とか、同じキング作品の「クリスティーン」や「クジョー」を知ってるとニヤリと出来ちゃう場面があるのも、程好いファンサービスって感じがしましたね。 他にも「芝刈り機は襲ってくる」し「下水パイプの中を移動する」しで、さながらキング作品のオールスター状態。 それらの「元ネタ当てクイズ」をするだけでも楽しめちゃうし、ちゃんと「スティーブン・キングが脚本を書き、監督を務めた事」に、意義のある作品だったと思います。 キング作品ではお約束の「可愛らしい子供」も登場しているし、キング当人も冒頭にカメオ出演しているしで、嫌々撮った訳ではなく、きっと楽しんで撮ったんだろうなって思えるような、微笑ましさがあるんですよね。 最後の気象衛星オチも、非常に馬鹿々々しくて「何じゃそりゃ!」と、呆れながら、笑いながらツッコむ事が出来ました。 面白かった……とは言い難いんだけど、それなりの満足感は得られたし、また何時か気が向いたら、観返したくなっちゃいそうですね。 話のタネになるという意味でも、観ておいて損は無い映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2022-02-02 11:50:11)(良:1票) |
103. ペントハウス
ネタバレ 「オーシャンズ11」の監督を降板したブレット・ラトナーが、そのリベンジのように撮った映画って印象ですね。 オールスター感は薄めだけど、その分だけ主演のベン・スティラーの魅力が光る仕上がりになっており、個人的には大いに満足。 ビジュアル的に最高に恰好良い彼を収めたフィルムってだけでも、凄く価値があると思うんですよね。 微かに白髪交じりな「老け具合」さえも魅力的に思えちゃうし(この人、恰好良い歳の取り方してるよなぁ……)って、惚れ惚れしちゃいました。 ストーリーとしては「善人が泥棒になる話」であり、中々感情移入し難いはずなのですが、その点を上手く仕上げている辺りも、お見事。 「大金を盗んで楽に暮らしたい」なんていう身勝手な動機ではなく「皆の年金を取り戻す」という目的がある為、主人公のジョシュを自然と応援したくなるんですよね。 そもそも皆の年金が失われたのは「ジョシュが悪人のアーサー・ショウを信頼して、金を預けてしまったから」なので、一種の贖罪行為になってるという点も上手い。 この辺り、ジョシュに全く咎が無いとなると「無償で皆を救おうとする聖人」タイプの主人公になってしまい、ちょっと鼻白んじゃいますからね。 自殺未遂したレスターに同情している、と言い張るアーサーに対し 「……じゃあ、何故レスターが無事か訊かない?」 と静かに問い返す場面も印象的であり、彼の犯行動機が「自分の為」ではなく「他人の為」である事が伝わってくる、良い場面だったと思います。 上述の台詞もそうなんですが、この映画って「如何にも名台詞って感じではない、さりげない台詞が凄く良い」って特長があるんですよね。 特に終盤にて、何とか助かろうと取り引きを持ち掛けるアーサーに対し、主人公達が「チップは頂かない決まり」と答えるのも恰好良くて、痺れちゃいました。 そういった会話劇としての魅力だけでなく「宙吊りの車に掴まって、高層ビルから落ちそうになる」っていうスタント場面もあったりして、視覚的に分かり易い魅力も備わってるし、本当にバランスの良い映画だったと思います。 序盤にて、こっそり司法試験の勉強してたジョシュの部下が、いずれジョシュを助けてくれる展開なんだろうなと思っていたら、やっぱりそうなったって辺りも、実に気持ち良い。 一応、難点も挙げておくなら…… 副主人公かと思われた泥棒のスライドが、全然活躍しなかった事が該当するでしょうか。 活躍しないだけなら、まだ良いんだけど「ジョシュとの間に絆が生まれてるように思えなかった」っていうのが、何とも寂しかったですね。 例えば、金を独り占めしようと銃を向ける場面にて、幼馴染であるジョシュとの子供時代を思い出し、結局撃てなくて悪態をつきながら銃を下ろすとか、そういう場面があれば、もっと印象も違ってた気がします。 後は、そもそもの犯行計画が杜撰過ぎるって点も該当しそうだけど……まぁ、この点に関しては「アーサーを終身刑にした代わりに、主人公も窃盗罪で二年ほど服役する」という相討ちに近い結末だった為、さほど違和感は抱かずに済みましたね。 特に悩んだりもせず、淡々と「クィーンを犠牲にする」事を決意した辺り、いざとなったら自分が全ての罪を背負って逮捕されるって、最初から覚悟の上だったんだと思われます。 ラストにて、屋上のプールに隠してた車を取り出す爽快感も素晴らしいし…… 色々欠点があるのを承知の上で、それでもなお「傑作」と呼びたくなる。 ベン・スティラーの代表作の一つとして、彼を好きな方には、是非オススメしたいです。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-01-12 17:54:23)(良:2票) |
104. ラブ・アクチュアリー
ネタバレ 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。 所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。 この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。 登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。 特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。 主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。 個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。 そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。 後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。 それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。 カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。 しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。 つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。 正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど…… 彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。 その他、欠点としては ・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。 ・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。 ・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。 等々が挙げられそうですが…… これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。 やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。 後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな? サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。 「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。 ……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。 本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-12-25 21:12:45)(良:3票) |
105. クロコダイル2
ネタバレ 冒頭、銀行強盗のシーンが中々スピーディーで良い感じになっており(これは1より面白くなったパターンか)と期待させられた訳ですが…… 結果的には、そんな期待を裏切らぬ仕上がりとなっており、嬉しかったですね。 低予算な作りなのは前作と同じだけど、血の嘘っぽさも緩和されているし、稚拙な特撮ながらも(頑張って本物っぽく見せよう)っていう、作り手側の熱意が伝わってきました。 前作で豊富だった「お色気サービスシーン」も殆ど無くなっているし、硬派で真面目に仕上げてきたって印象です。 「サメ映画かと思いきや、ワニ映画」っていう前作の構成を踏まえ「ハイジャック映画かと思いきや、ワニ映画」ってストーリー展開にしているのも、上手かったと思います。 前作はサメを全面に出す予算が無かったせいか「サメ映画と思わせるミスリード」が徹底しておらず、折角の仕掛けがイマイチ機能していなかったんですが、今作の場合は人間が演じる形で「ハイジャック映画と思わせるミスリード」が、キチンと行われていますからね。 同じ「○○かと思わせて××」展開でも、今作の方が、ずっと賢いやり方だったんじゃないかと。 ワニが本格的に出てくる前の「無力な主人公達と、銃を持ったハイジャック犯の戦い」も中々面白く仕上がっているし、ワニ映画として考えても「巨大ワニが空飛ぶヘリに食らいつく」なんて見せ場があったりして、明らかに前作よりパワーアップしてる。 「中々火が付かないライター」「沼地に充満するメタンガス」が伏線になっており、ワニを火葬にしちゃう倒し方も、派手で良かったです。 そんな訳で、前作と比較すると大幅に改善されている本作なのですが…… コレ単品で評価すると、欠点も色々目立っちゃうというのが、ちょっと困りもの。 例えば、ヘリを操縦するローランドが主人公カップルを裏切ったと見せかけて、犯人側のボスを撃つ展開は痛快で良いんですけど、その後すぐローランドがワニに襲われて死んじゃうっていうのが、ちょっとチグハグなんですよね。 これじゃあ主人公達は「ローランドは俺達を裏切った」「卑劣な男だ」って認識のままだろうし、ボスを倒した後に二人を助けに戻ろうとしてたローランドが、凄く可哀想。 こういう展開で、観客をスッキリさせてくれない脚本っていうのは、如何なものかと思います。 最後の「夢オチ」も、それ必要だったかなって思えちゃうし…… これならワニを倒した後、沼地で救援を待ちながら、キスする二人で終わらせた方が良かった気がしますね。 1→2という流れで観た為「前作より良くなってる!」という興奮を味わえたけど、単体で評価する限りでは「まぁ、それなりに面白い映画」くらいに落ち着きそうな…… そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2021-12-17 00:06:22) |
106. クロコダイル
ネタバレ 冒頭、ワニに襲われる場面の血が如何にも嘘っぽくて(大丈夫かな?)と思ったんですが…… 結論から言うと、大丈夫じゃなかったです。 こういうモンスターパニック物が好きな自分から観ても、とても退屈な仕上がりとなっており、褒めるのが難しい品でしたね。 というより、冒頭で襲われるシーンを挟んだのって「ワニが出てくるまでは時間かかるけど、最初に襲われる場面やって盛り上げておいたから、我慢して観てね」的な意味合いだと思うんですけど、これだと逆効果というか…… どんなに我慢して観ても、その後に待ってるのは「あの嘘っぽい血が流れる場面」って分かっちゃう訳で、最初からテンション低いまま、希望を抱けないままで映画を観る形になるんですよね。 これなら冒頭で襲撃シーンを見せたりせず、途中までは(ワニが出てきたら面白くなるはず)って希望を抱かせてくれる作りの方が、ずっとマシだったんじゃないかと。 サーファーのヴォックとジョン船長、どちらが主人公なのか分かり難い構成になってるのも気になるし(ダブル主人公って訳でもなく、場面によって適当に主人公が変わるだけっていう印象です)ワニとの一騎打ちに挑んだジョン船長は呆気なく死んじゃって、驚くというよりガッカリしちゃうしで、登場人物にも魅力を感じられないんですよね。 「獲物を追って飛び降り、尖った岩に刺さって死亡」とか、ワニの退場の仕方も間抜け過ぎるもんだから、最後まで盛り上がる事無く終わっちゃいました。 それでも、何とか良かった箇所を探すとしたら…… 「サメを求めて撮影にやってきたら、ワニに襲われた」って展開は中々捻りが効いており、気が利いてるなって思えた事。 大まかな流れは「アナコンダ」シリーズを参考にしているようで、王道の魅力もそれなりに味わえた事とか、そのくらいになりそうですね。 あと、途中でヌードを披露した金髪美女さんがペタンコな胸をしていて(あれ、もしかして男の子?)かと思ったんですが、特に説明も無かったし、結局あれは貧乳の女性だったって事で良いんでしょうか。 あそこまでペタンコな胸の人は珍しいと思うし、妙に印象に残ってます。 でも、あのくらい貧乳だと巨乳に負けないくらい不思議な魅力あったなぁとか、そんな事が一番気になっちゃうような……まぁ、そういう映画でした。 [DVD(吹替)] 4点(2021-12-17 00:01:06) |
107. マウス・ハント
ネタバレ 人間にとってネズミは害獣だけど、ネズミにとっては人間が害獣という、そんな当たり前の事に気付かせてくれる映画ですね。 圧巻なのは「釘打ち機」の場面であり、人間による何気無い大工仕事が、ネズミにとってはトンデモない災害となる事を描いていて、これには感心しちゃいました。 日常生活で見慣れたはずの「釘」が、ネズミ目線だと凄まじい殺傷兵器になっちゃうんだから、もう吃驚です。 こういう「視点や発想の切り替えによる面白さ」って、観ていて嬉しくなっちゃいますね。 ベッドや時計もあったりして、居心地が良さそうな「ネズミの寝床」の描写も好きだし、カップの取っ手を潜ったり、ピアノの鍵盤を走ったりと、家を駆け回るネズミの描写が、きちんと面白かった点も評価したいです。 ただ、ネズミの糞を食べたりとか、観ていてエグい場面もある事。 そして、終盤の展開が唐突過ぎて、流石に白けちゃった事が残念ですね。 特に後者は致命的であり (えっ……なんで主人公兄弟とネズミが仲良くなってるの?) って、全く納得出来ないまま映画が終わっちゃう訳で、置いてけぼり感が凄かったです。 弟のラーズは「糸」に拘りがあったはずなのに、最後は製糸工場からチーズ工場に変わってるのも、何かスッキリしないし…… 気になって計ってみたら、主人公兄弟が家を失い疲れ果てて眠るシーンから、僅か三分で無理矢理ハッピーエンドにしてるんですよね。 これは流石に急展開過ぎるし、説明不足でもあったと思います。 ネズミがシェフになるオチとか「レミーのおいしいレストラン」(2007年)を先取りした感じでもありますし、一見の価値はあると思いますが…… 最後の最後で、絡まった糸のようにモヤモヤが残ってしまう。 そんな一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2021-12-08 06:34:01) |
108. ユーロトリップ
ネタバレ 旅映画としても、青春映画としても楽しい一品ですね。 国から国へと移動する際の演出も凝ってて飽きないし、観光地としての欧州の魅力を感じられる内容だったと思います。 ただし、この場合の「欧州の魅力」というのは、非常に漫画的というか…… あくまでも「アメリカの若者が思い描くような欧州」って事なので、注意が必要ですね。 さながら「忍者や芸者が一杯いる日本」のような、色々と強調された欧州の国々が描かれており、ちょっと不謹慎かも知れないけど、つい笑っちゃいます。 この辺りのバランス感覚が絶妙で、たとえば「5セントもあればホテルが買えちゃう国」なんかが登場するもんだから、観ている側としても「完全なフィクション、映画という名のファンタジー」として、割り切って楽しめちゃうんですよね。 巷に溢れる「頓珍漢な日本を描いた映画」の数々も、外国の方が観たらこんな感じなのかも……って思えたりして、不思議な可笑しさがありました。 旅先で遭遇したフーリガンすらも「なんだかんだで良い人達」だったりして、最後まで明るく陽気に仕上げてある点も良い。 「アメリカでは違法」「旅先では合法」というドラッグ入りケーキや、幻覚を見る酒に挑戦する姿が描かれているのも、程好いドキドキ感がありましたね。 「俺達は違う大学に進むんだから、四人でツルめるチャンスはコレが最後かも知れない」 という台詞が象徴するように「仲間と一緒の旅」が強調されており、途中で失敗してもあまり落ち込まずに「皆でいれば何とかなるさ」とばかりに、前向きな姿勢のまま旅を続けていくのも、凄く好みでした。 そんな本作の欠点は何かと考えてみると…… 割と根本的な部分に関する事なんだけど「主人公のスコットに対する違和感」ってのが大きいでしょうか。 いくら泥酔してたとはいえ、結果的に「男に迫られたら怒って罵倒するけど、美女と知った途端に態度を変えて会いに行こうとする」って姿が描かれてる訳で、どうも彼の恋路を応援する気になれないんです。 その後になって「見た目じゃなくて、中身が好き」的な事を言われても、全然説得力が無かったし…… ここは変に良い子ぶって「彼女の中身が好きなんだ」なんてフォローを入れたりせず「男だと思ってたけど、本当は美女だった。美女だから好きになった」って流れにした方が、スッキリした気持ちで観れた気がします。 でもまぁ、そんなスコットも、お調子者な悪友のクーパーも、基本的には「良い奴」じゃないかと感じさせる作風でしたし…… 彼らに恋人が出来るハッピーエンドには、こちらまで嬉しくなっちゃいましたね。 観終わった後は、主人公達と「旅の思い出」を共有したような気持ちになれる。 彼らと、仲間になれたような気持ちになる。 良い映画でした。 [DVD(吹替)] 7点(2021-12-02 08:01:14)(良:1票) |
109. ショーガール
ネタバレ 何処となく「イヴの総て」(1950年)や「哀愁の花びら」(1967年)を連想させる内容。 女性のショービジネスにおける若手とベテランの確執を描いており、既視感は否めないんだけど、その分だけ王道の魅力もあるって感じですね。 上記二作に比べると女優陣が露出度高めで、エロティックな要素濃い目なのも、結果的には程好い「個性」になってた気がします。 それと、主人公ノエミ(=若手)とクリスタル(=ベテラン)の関係に、何やらレズビアンな匂いが漂ってるのも、興味深いポイント。 別れのキスの場面なんて、明らかに友情を越えた愛情というか「性愛」の匂いが感じられますし。 しかもノエミが出会う男は最低な奴ばかりで、女性にだけ優しい眼差しが注がれてる作りなんですよね。 この辺りの歪さは、オタク女子が描く「美男子だらけの同性愛世界」の性別逆転バージョンって感じにも思えました。 本作に不思議な魅力を感じてしまうのって、案外この「男にとって都合の良いレズビアン世界」っぽさにあるのかも知れません。 そんなこんなで、自分としては「女優陣の性的な魅力」「レズ要素」を好意的に捉えた訳だけど、それがそのまま「下品で低俗」「あざとくて幼稚」と欠点に感じる人もいるでしょうし、評価が分かれやすい映画だと思います。 正直言って、脚本の筋運びも雑であり(女友達のモリーがノエミを許す流れが唐突、など)完成度という意味では、決して高くないですからね。 ノエミが麻薬に手を出す場面や、クリスタルを階段で突き落とす場面を妙にアッサリ描いたりとか、監督の手腕にも疑問を抱いちゃう場面が多いです。 それでも、自分としては「好き」か「嫌い」かと考えたら前者になっちゃうというか…… なんか憎めない映画なんですよね。 観客どころか、脚本家のジョー・エスターハスにすら自虐ネタにされ「アラン・スミシー・フィルム」(1998年)で笑いものにされてるのを観た時も(もっと自分の作品に愛情持ってやれよ)って思えて、寂しくなっちゃったくらい。 その他にも、色んな映画で「最低の出来」と揶揄されてるし「ショーガール」ならどれだけ馬鹿にして笑っても構わないって扱い受けてるけど、ちゃんと良い所もあると思うんですよね。 終盤、モリーを傷付けた男に復讐するノエミの姿には、スッとしたし…… 階段で突き落とされたクリスタルが、ノエミを責めようとせず「私も昔、同じ事をしたから」と淡々と語るのも、彼女が背負ってきたドラマを窺わせるものがあり、味わい深い場面でした。 ヒッチハイクで始まり、ヒッチハイクで終わる構成も、綺麗でしたね。 ノエミが出会った男の中では、この最初と最後に出会う「スーツケースを盗んだ男」が一番マシだったんじゃないかと思えちゃうのも、皮肉な魅力があって良かったです。 本作を世間が絶賛してたら(そうかぁ?)とは思うけど、まぁ反発はしないだろうし、逆に嘲笑の対象にされてたら「そこまで悪くないだろ」と庇いたくなる。 そんな距離感の、不思議な映画です。 [DVD(吹替)] 6点(2021-11-25 22:29:03)(良:1票) |
110. 最凶赤ちゃん計画
ネタバレ これは……面白いんだけど、最後で台無しってタイプの映画ですね。 途中まで、というかラストのオチ以外は良い感じなんです。 「最凶女装計画」では女装ネタの王道を描いたウェイアンズ監督が、今度は赤ちゃんに成り済ますネタの王道を描いており、どこか既視感を覚える展開ながらも、面白可笑しく纏めてる。 無邪気な赤ん坊の振りして美女に授乳をせがんだり、子供達に悪い遊びを教えたりと、こういうネタなら外して欲しくないって部分を、ちゃんと押さえた作りになってると思います。 脇役にも良いキャラが揃っており「幼稚園への送り迎えを仕事にしてるママさん」なんて、特に良かったですね。 彼女が車を暴走させる場面が、本作のピークだったんじゃないかと思えたくらいです。 赤ん坊に成り済ましたキャルを疑うのが年老いた父親という事で、本当の事を言ってるのに「とうとう呆けてしまった」と思われ信じてもらえない流れなんかも、上手かったですね。 主人公のキャルもダリルも、子供時代に問題があったようなのですが、それをクドクド語る真似はせず「生まれて初めての誕生日会で、感激して泣いちゃうキャル」という描写や「俺、父親業が好きだ。凄く楽しい」「自分の父親とやれなかった事がやれるんだから」と語るダリルの場面などで、サラッと描いている辺りも良かったです。 でも、やっぱり最後が…… 「ダリルの妻が産んだのは、実はキャルの子」としか思えないオチであり、流石にブラック過ぎるんですよね。 今回の事件を通し、ダリルとキャルの二人には友情が芽生えていただけに、余計にやり切れない結末。 ここの部分をカットしておいてくれたら……と思わずにはいられないです。 ちなみに本作はラジー賞を幾つか受賞しており、バックス・バニーのエピソードを盗作したとの声もあるようですが、個人的にはこのくらいなら「パロディ」の範疇じゃないかと思えましたね。 盗作と言うなら「最終絶叫計画」の方がよっぽど「スクリーム」そのまんまな訳だし「最凶女装計画」も「バッドボーイズ」(1995年)の盗作って事になっちゃいますし。 本作だけ殊更に騒ぐのは不自然というか、不適切なんじゃないかと。 冒頭にて述べた通り、最後のオチだけは褒める気になれないけど…… それ以外は、かなり良く出来てる。 「ラジー賞を取った映画は、意外と面白い」法則に当てはまる一本として、カウントしたくなる映画です。 [DVD(吹替)] 6点(2021-11-18 18:22:35) |
111. 最凶女装計画
ネタバレ 明らかに「バッドボーイズ」(1995年)が元ネタであり、途中までは「最終絶叫計画」のようなパロディ映画かと思っていたのですが…… 終わってみれば、しっかりとオリジナルの魅力を備えた映画でしたね。 刑事物のバディムービーとして考えても、女装ネタのコメディ映画として考えても、充分に楽しめる出来栄えでした。 前者に関しては「主人公達が喧嘩して仲直りし、絆が深まる」というお約束の魅力を描いているし、銃撃戦の際には、意外とシリアスで恰好良い雰囲気になったりもするんですよね。 この辺の「切り替えの上手さ」って、コメディタッチの刑事物では凄く重要ですし。 そこがしっかりしているというだけでも、もう拍手を送りたくなっちゃいます。 後者に関しても、女装ネタならではの可笑しみを感じる部分が色々あって、大いに満足。 「女装した主人公が男に迫られ、窮地に追い込まれる」っていうお約束ネタも、しっかり描いてあるし…… 本物のウィルソン姉妹の方を「女装した男」だと思って取り調べする場面なんか、特に可笑しかったですね。 ここ、普通ならウィルソン姉妹が可哀想で笑えなくなりそうなんだけど、序盤にて彼女達の「嫌な女」っぷりを描いてたから、素直に楽しめちゃうんです。 この辺りのバランス感覚は、本当に見事でした。 女装して女の子達と仲良くしている内に、何時しか性別を越えた友情が生まれていく流れも、凄く好み。 最後に正体を明かした後も、彼らの友情はずっと続いていくって示すハッピーエンドであり、後味爽やかなんですよね。 彼らには性別以外にも、年齢やら人種やら、色んな壁があるはずなのに…… そんなの関係無いとばかりに「仲間」として笑い合う姿が、とても眩しく思えました。 一応、欠点も挙げておくなら、女装したマーカスに迫るラトレルが色々頑張ってて、憎めないキャラだったのに「結局は嫌な奴だった」ってオチになるのが、微妙に思えた事。 女装した二人が周りから「美女」と認識されてるのに違和感を覚えた事。 後は……女子トイレでの一幕とか、下品で笑えないネタも幾つかあった事くらいかな? でも、こうして色々振り返ってみても「ダンス対決が面白かった」とか「喧嘩ばかりしてた同僚と、土壇場では熱いやり取り交わすのが良い」とか、長所の方が数多く浮かんできちゃいますね。 ウェイアンズ監督の代表作といえば、世間的には「最終絶叫計画」となるんだろうけど…… 個人的には、こちらをオススメしたいです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-11-18 13:38:31)(良:1票) |
112. SHRIEK(シュリーク) 最低絶叫計画 !?
ネタバレ 同じパロディ映画の「最終絶叫計画」では「スクリーム」を「最低」と貶して笑いを取ろうとしていたのに対し、本作では「最高」と絶賛してるのが印象的。 だからって訳じゃないけど、同じ「スクリーム」好きとしては好感を抱いちゃう作りでしたね。 最初から最後まで「スクリーム」をなぞる作りだから、話の芯がブレておらず、落ち着いて楽しめるのも嬉しい。 矢継ぎ早に色んな小ネタを挟み「質より量」ってスタイルにしたのも、正解だったんじゃないかと。 たとえ打率は低くても、とにかく打席数が多いもんだから、ヒットの数もそれなりになってるんですよね。 個人的には「メンタルズ」の歌や、クライマックスの追いかけっこで「ドーソン役は高所恐怖症」「監督は酒を飲ませてやらせた」などの注釈を挟むネタが、特にお気に入りです。 「去年の夏」に関しても、思い出す人によって情景が全く違う辺りには感心しちゃったし、他のネタに比べ「グリース」だけ(やたら古い作品を引っ張ってきたな……)と思っていたら、ちゃんとその後に「登場人物が元ネタを分からず、白ける」ってオチが付く辺りも、何か気持ち良かったですね。 「クリスティーン」もパロってみせてるし、作り手側と自分とで「好きな映画」が同じなんだなって思えて、嬉しくなっちゃいました。 序盤に出てきた「チャイルド・プレイ」のチャッキーも、やたら可愛いコスプレだったりして、その後に出てこないのが勿体無く思えたくらいです。 恐らくは予算でも、監督の才気という意味でも「最終絶叫計画」には及ばないのでしょうが…… 個人的には、結構好きな映画でした。 [DVD(吹替)] 6点(2021-11-05 02:28:33) |
113. 最終絶叫計画
ネタバレ 「スクリーム」の殺人鬼が「ラストサマー」の鉤爪を武器にしてるという、そんな絵面を拝めただけで得した気分になれますね。 基本的なストーリーも上記二作に準じている為、安心して楽しめる作りなのですが…… それだけに、最後の最後でオチが「ユージュアル・サスペクツ」になっちゃうのが、違和感あって仕方無かったです。 「スクリーム」でのデューイに相当するキャラが全ての黒幕ってネタ自体は悪くなかったし、出来れば徹底して「スクリーム」もしくは「ラストサマー」のテイストのまま終わって欲しかったですね。 途中で別の映画のネタ挟むくらいなら構わないんだけど、本作は文字通り「最後に別の映画になってしまう」って形な訳で、観た後モヤモヤが残っちゃいました。 「スクリーム」作中にも他の映画を馬鹿にする場面があるとはいえ、これだけ「スクリーム」と「ラストサマー」に乗っかった映画でありながら、その二作を作中で貶してるのも気になる部分。 オチが「ユージュアル・サスペクツ」になっちゃう点といい、作り手側に「スクリーム」と「ラストサマー」への愛情が感じられないのは、この手のパロディ映画としては致命的だと思います。 一応、良かった点も挙げておくなら「武器ではなくバナナを手にする女」とか「同性愛者かと思ったら、実はそうじゃなかった男」とか、笑える場面もキチンとあった事。 あと、音楽やカメラワークなどは意外と洗練されていたって事が挙げられそうですね。 予想以上にクオリティが高くて、面白いとか面白くないとか以前に、まず「出来の良さ」に驚かされましたし。 本作は同年公開の「スクリーム3」に匹敵するか、あるいはそれ以上のヒットを記録してるんですが、それも納得です。 この後、ウェイアンズ監督は「最凶女装計画」などの佳作も手掛けていますし、ちゃんと映画作りの才能はある人なんだと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2021-11-05 02:18:01) |
114. スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション
ネタバレ ホラー映画の「ファイナル・ガール」になりたい少女が、その願望を叶える為に「殺人鬼」になるという映画。 こうして文章にしてみると、非常に複雑なテーマを扱っているはずなのですが、それをサラッと分かり易く作ってあるのが見事ですね。 思えば初代の時点で主人公シドニーは「注目を浴びたくて嘘をついた」と周りに陰口を叩かれてるし、1&3の犯人も「生き残った被害者に成り済ます」という手口を用いているしで、スクリームシリーズに自然と馴染む「動機」と「トリック」なんです。 そしてなおかつ、犯人であるジルを「主人公シドニーが守るべき、お姫様ポジション」として描いておいたから「犯人の意外性」も高まってるという形。 スクリームの伝統である「共犯がいる」というトリックを活かし「殺人鬼から電話が掛かってくる場面」「襲われる場面」にて、ジルが被害者側にいる事が多い為、観客としても自然と彼女は犯人候補から外して考えちゃいますし、この辺りの描写は本当に上手かったと思います。 理想の「ファイナル・ガール」になる為、ジルが偽装工作する様も面白かったし、傷だらけで報道陣に囲まれ、幸せそうに微笑む姿も良かったですね。 ジルは悪役だし、母親まで殺してるような罪深い子なんだけど、ちゃんと感情移入出来るキャラクターに仕上がってたと思います。 そんなジルの夢破れた死に顔に、彼女をヒーローと称える報道が重なって終わるのも、実に皮肉が効いてて素敵。 そして、なんといっても主人公シドニーの描写が、抜群に良かったです。 「殺人鬼の相手なら任せて」とばかりに、経験を活かして適切な対応を取る様が、凄く恰好良い。 正直、前三作の彼女には全く魅力を感じなかったんですが、本作では大いに成長して「私こそがスクリームの主人公」という貫禄を得ていたように思います。 今の映画のルールで生き残るのは「処女」ではなく「同性愛者」だと語る場面や「冷蔵庫が閉まる度にドッキリ」などの台詞も面白い。 他にも、デューイの着メロが「ビバリーヒルズ・コップ」だったりして、映画オタクがニヤリとしちゃう小ネタが散りばめられているんですよね。 スクリームって「ホラー」や「スラッシャー」や「ミステリー」という以上に「オタク映画」だと思いますし、四作目になってもその芯がブレてなかった事にも、拍手を送りたいです。 とはいえ、良い伝統だけじゃなく悪い伝統も受け継いでおり、特に「シドニーを殺す前に、共犯者を刺し殺す不自然さ」まで1と同じってのは、如何なものかと思えましたが…… まぁ、そういうのも全部ひっくるめてスクリームなんだから、これはもう仕方無いですね。 「ほらっ、またシドニー殺すの忘れてるよ」って、優しくツッコんであげるのが正解なんだと思います。 あとは「前作のキンケイド刑事が出てこないのが寂しい」とか「ジグソウを好きと言ってた女の子が意味深に包丁を手にしていたけど、特に何事も無く殺されて拍子抜け」とか、不満点としてはそのくらいかな? 今回、スクリームシリーズを一気見する前は「1が一番面白く、それに次ぐのが4」という認識だったのですが、今は「4が一番面白い」って評価に変わっちゃいましたね。 十段階で評価する為、点数としては同じ「7点」って形になりましたけど、自分としては1より4の方が好み。 スクリーム2にて「続編はオリジナルを超えられない」という台詞がありましたが…… 同じシリーズの続編である4がそれを否定してみせたんだから、実に痛快な話だと思います。 いずれ訪れるであろう「5」の公開も、今から楽しみです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-11-03 09:21:23)(良:1票) |
115. スクリーム3
ネタバレ 全四作の中で、3だけ犯人が誰だったか思い出せない……という状況のまま再鑑賞。 観終わってみれば「主人公シドニーの兄」であり「シドニーの母を殺した黒幕」という凄い犯人だった訳ですが(いやぁ、これは憶えてなくても仕方無いよ)って、何か開き直る気持ちになっちゃいましたね。 とにかく印象に残らないというか、犯人が明かされた時に(……えっ、誰?)と戸惑ってしまう度合いの高さでは、間違い無くシリーズ随一。 何せ顔を明かされた時は本当に誰だか分からなくて、犯人自ら「監督のローマン・ブリッジャー」と自己紹介した事で、ようやく(あぁ、いたなぁ、そんな奴)と納得出来たくらいですし。 これって「観客は決して犯人を当てられない」って意味では凄いのかも知れませんけど……正直、感心するより呆れる気持ちが強いです。 例えば、途中までミスリードしていた通りに、キンケイド刑事が犯人というのであれば「主人公シドニーに親身に付き合い、ロマンスの匂いも漂わせた好人物が犯人」って事で、ベタではあるけど「意外な犯人」と呼べたはずなんですよね。 でも主人公と全然絡まず、出番も少なく、観客の印象にも残ってないローマン監督が犯人とか言われても、それは「意外な犯人」ではなく「地味で目立たない奴が犯人」ってだけであり、本末転倒。 スクリームの中で、この「3」だけ脚本がケヴィン・ウィリアムソンではないって事も大きいんでしょうけど…… 本筋には全然関係無いレイア姫ネタを挟んだりとか、どうもシナリオに引っ掛かる点が多いです。 その他にも「便利過ぎる変声機が登場するのに、何故そんな凄い代物を犯人が持ってるのか、説明が一切無い」「シドニーがトラウマを克服したのを示す為、ラストシーンにて家のドアを開けっ放しにしてるけど、流石に不用心過ぎるとしか思えない」といった具合に、不満点を挙げ出したらキリが無いんですが…… 一応、良い所も色々あったりして、総合的に考えると「それなりに楽しめた」って結論になるのが不思議ですね。 監督は変わらずウェス・クレイヴンなので演出は手堅いし、ちゃんと「スクリームらしい魅力」を感じられたのが大きかったのかな、と思えます。 犯人の正体はスッカリ忘れてた自分でも、鮮明に憶えていた場面が二箇所あり、その「ランディからのビデオレター」「シドニーが映画の撮影現場に迷い込み、1の頃を思い出す件」の二つに関しては、文句無しで良かったです。 デューイとゲイルも相変わらずイチャイチャしていてラブコメ的な魅力があったし、最後にデューイが求婚して終わるというのも、グッと来る結末。 「エルム街の悪夢」さながら、シドニーが母親の悪夢を見る場面も、監督繋がりの遊び心が感じられて、クスッとさせられました。 それと、派手な爆破シーンもあったりして、ちゃんと観客を楽しませようという気持ちが伝わってくるのも嬉しい。 こういう「映画としての優しさ」のようなものが感じられる作品って、不満点はあっても嫌いにはなれないです。 そんなこんなで、シリーズ四作の中で評価するなら、残念ながら最下位になってしまうかも知れませんけど…… それでも一定のクオリティは保っていた辺り、流石だなって思えましたね。 有名ホラー映画のシリーズって、長く続いた分だけトンデモない代物が混ざっていたりするものですし。 一番微妙な品でも、これだけ面白いんだなって考えると「スクリーム」シリーズの地力の高さのようなものが感じられました。 [DVD(吹替)] 5点(2021-11-03 09:11:29)(良:2票) |
116. スクリーム2
ネタバレ 作中の台詞にある通り「続編はオリジナルを超えられない」を体現しちゃってるとしか思えない仕上がり。 初代より面白い続編も色々あるのは間違い無いんですけど、残念ながら本作は該当しなかった気がしますね。 一応、良い所も幾つかあるんだけど、それらは大体「1」の時点で存在してた要素だったりするので(映画オタク的な続編論議の面白さとか)目新しさが無いんですよね。 冒頭の映画館での殺人も中々ショッキングなんですが「1」の冒頭に比べると見劣りしちゃうなって、つい思っちゃいました。 それでもあえて「2独特の魅力」を探すとすれば……前作で投げっ放しだった要素を色々拾って、決着を付けている点が挙げられそうかな? 「冤罪をかけられたコットン」が、その後どうなったか描いたり、デューイとゲイルのロマンスの続きを描いたりしてるので、観ている側としては(そうそう、そこが気になってたんだよ)って、嬉しい気持ちになれるんです。 それでいて、新たに消化不良な要素を生み出すような真似はしてないし、その辺りは「1」より綺麗な作りだったと思います。 前作で描かれた「現実」に比べると「スタブ」ではシャワーシーンが追加されてるのもニヤリとしちゃったし、作中映画の「スタブ」の使い方も上手かったですね。 「この話が映画になったら、シドニー役はトリ・スペリング」という会話が前作にて行われてましたが、それが実現している辺りも面白い。 また、今回の黒幕となる「ビリーの母親」の存在は前作の時点で示唆されてたんですが、その場面を「スタブ」で再現し、自然にヒントを与える形になってるのも良かったです。 で、悪かった点はというと……やっぱり、観終わった後にスッキリしない点が挙げられそうですね。 ラストにて、主人公シドニーを救ってくれるコットンが嫌な奴なので、どうも爽快感に欠けるんです。 しかも彼がヒーローとして祭り上げられる事を示唆して終わるもんだから、折角のハッピーエンドに水を差された形。 シドニーの新しい彼氏であるデレクは良い人だったのに、犯人と疑われつつ死んでしまったって件も、後味の悪さを倍増させてた気がします。 作中にて「ショーガール」を揶揄するような台詞がありましたが、正直これも大差無い出来栄えというか…… 個人的には「ショーガール」の方が面白かったくらいなので、なんか凄く恰好悪かったですね。 やっぱり、映画の中で他の映画を否定的に語るのって、あんまり好きになれないです。 [DVD(吹替)] 5点(2021-11-03 09:00:58)(良:2票) |
117. スクリーム(1996)
ネタバレ 2021年に鑑賞してみると「主演はドリューバリモアかと思ったのに、冒頭で殺されて吃驚」感が当時より高まってる気がしますね。 この「電話の向こうの殺人鬼に襲われる」導入部は秀逸であり、ウェス・クレイブン初期の秀作「鮮血の美学」に通じるような、陰鬱さと絶望感があったと思います。 此度再鑑賞してみて(ここだけクオリティ高過ぎて、浮いてるなぁ……)と感じちゃったくらい、見事な仕上がりでした。 作中で論理的な手掛かりが示された訳でもない為「犯人探しのミステリー」としては成立していないんじゃないかと思えますが…… それでも「犯人は二人組」「最初に犯人かと疑われた彼氏のビリーが、本当に犯人」ってのは意外性があって、良かったですね。 この辺りは、単なるスラッシャー映画の枠に留まらない魅力を感じます。 鑑賞後に「スクリームの犯人は誰か知ってる?」と周りに語りたくなっちゃいますし、本作が公開当時ヒットしたのも、大いに納得。 冒頭から「二つのドア、どっちにいるでしょう?」というクイズを出したり「ビリーは犯人ではない」と思わせるミスリードに貢献したりと「犯人が二人いる」事に、ちゃんと意味があるのも良かったです。 作中にて「ホラー映画の法則」を茶化す場面が挟まれているのも、特長の一つ。 「ヴァージンの特権」とか「すぐ戻るって台詞だけは言わない」とか、生き残るコツについて説明する件も面白かったけど、個人的に一番ツボだったのは「殺さないで」「続編にも出たい」と訴えてた女友達キャラが、本当に殺されちゃった場面ですね。 その後、殺人鬼達も「俺達は生き残って、続編を作ってやるんだ!」と言ってたのに死んじゃうし…… 何とも皮肉で滑稽で、人死にが絡んでるのに、つい笑っちゃいました。 ホラー映画が嫌いなヴァージン少女のシドニーと、ホラー映画オタクな殺人鬼のビリーっていう主人公カップルの組み合わせも面白くって、真相を知った上で再見すると、序盤のやり取りが更に楽しめちゃう作りなのも良いですね。 ビリーは「エクソシスト」のテレビ放送版で、過激なシーンが省略されてる事に不満を示したりと、実は序盤からオタク的な一面を見せていたし、ビデオ店で働くランディに絡む場面では「主人公の彼氏」とは思えないくらいの「嫌な奴」っぷりを披露していたしで、その後の展開に自然に繋げてる辺りも上手い。 犯人の動機について「ホラー映画が原因じゃない」「両親が離婚したせい」「周りの期待がプレッシャーになったせい」とわざわざ語らせているのも、脚本家の「ホラー映画愛好家」としての譲れない一線のようなものが窺えて、面白かったです。 「怪しまれないように自分達も傷を負っておく」にしても、シドニーに止めを刺してからやるべきだろうに、勝手に自滅した犯人達が間抜け過ぎるとか、デューイとゲイルのロマンスなど、中途半端に終わった要素が多くて消化不良とか、不満点も色々あるんだけど…… まぁ、この映画の場合、作中でホラー映画を観て楽しんでる若者達同様、そういう部分にツッコミ入れつつ観るのが正しい作法なんでしょうね。 実際、誰かと一緒にコレ観た時は絶対「いや、先にシドニー殺せよ!」ってツッコんじゃいますし。 そういった諸々も計算して、意図的に「ツッコミ所」を用意した脚本だったのだとしたら、本当に見事だと思います。 あとは……「エルム街の悪夢」は1以外は最低と作中で言わせるのは、ちょっと大人げないって思えた事(ウェス・クレイヴン監督は初代「エルム街の悪夢」の監督&脚本担当) それと「13日の金曜日」でジェイソンが出てくるのは二作目からってのは間違いでは?(一作目ラストの夢のシーンでも少年ジェイソンが出てくる)って事が気になったとか、そのくらいですね。 今回、スクリーム4まで一気に再見する予定なのですが、それによって「スクリームは1が一番面白い」っていう自分の固定観念が揺らぐかどうか、今から楽しみです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-11-03 08:37:04)(良:3票) |
118. ラストサマー2
ネタバレ 前作ラストが「主人公ジュリーが見た夢」で片付けられる導入部にガッカリ。 でも結果的に、そこから尻上がりで面白くなったというか…… 「序盤は面白いのに、中盤からつまらなくなる」っていう前作とは逆の「序盤は退屈で、途中から意外と面白い」って形になってるのが興味深かったですね。 クローズド・サークル物として「嵐に閉ざされた無人島」を舞台にしたのも正解だったと思います。 一応「優しいボーイフレンドと思われたウィルが、実は殺人鬼の仲間だった」というサプライズもありましたが、基本的にミステリー映画ではなく、スラッシャー映画として分かり易く舵取りしてるのも好印象。 「ミステリーなのかスラッシャーなのか分かり難く、どっち付かずな内容」という前作の不満点が、それなりに改善されてる形。 「如何にも怪しげな人物であるエステスが、ウィルに襲い掛かる」→「エステスは悪人? と思わせる」→「実はウィルが犯人の一人」って流れも面白くて、少なくとも脚本に関しては前作より洗練されてたんじゃないかと。 彼氏役であるレイが、プロポーズ用の指輪を質に入れて拳銃を買い、主人公ジュリーを救いに来るっていうのも、熱い展開で良かったです。 それと、前作でも「海に投げ入れようとした死体が、直前で蘇生する」という場面があり「犯人は、主人公達が殺したと思っていた死体」ってオチに自然と繋げていましたが、本作でもその辺は上手かったですね。 「ブラジルの首都はリオじゃないのに、何故かクイズに正解して旅行に招待される」って形で「この旅行自体が罠だった」ってオチに、きちんと繋げてる。 細部に不満やら矛盾点やらはありますが、こういう大事なとこはしっかりしている辺り、人気作としての背骨の太さのようなものを感じました。 そんな訳で、こうやって良い部分を挙げる限りでは「前作よりも面白い、正統進化版の続編」って言えそうなんですが…… 残念な事に、前作の欠点が足を引っ張ってもいるんですよね。 2単体で評価すればカッコ良い彼氏役のレイに関しても(でもコイツ、前作ラストで罪を告白せずに逃げた卑怯者なんだよな……)って事が気になって、素直に応援出来ませんでしたし。 ラストの「殺人鬼は生きていた」オチに関しても、お約束の魅力を感じる以上に(またかよ)って呆れる気持ちが強かったです。 あと、フィッシャーマンが勢い余ってウィルを殺す場面は間抜け過ぎて笑っちゃったし、前作同様「脇役を活かしきれてない」って印象は拭えなかったのも難点。 「話の掴みが上手い」「青春映画としての切なさ」などの「1には有って、2には無い魅力」も色々ありますし…… 総合的に評価すると、前作と同じくらいの面白さって感じに落ち着きそうですね。 以下は、映画の内容と直接関係無い余談。 今回再鑑賞して気付いたのですが、殺される端役として無名時代のジャック・ブラックが出演してるのも、中々興味深い符号だと思います。 それというのも「13日の金曜日」ではケヴィン・ベーコン「エルム街の悪夢」ではジョニー・デップという具合に「歴史的ホラー映画では、無名時代の大物俳優が殺されてる」っていうジンクスがあるんですよね。 本作は1ではなく2という形だし、個人的には大好きなジャック・ブラックも、上記二名ほど大物ではないかも知れませんが…… なんだかんだで「ラスト・サマー」シリーズも、歴史に残るホラー映画なんじゃないかなって、そう感じさせるエピソードでした。 [DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:35:36)(良:1票) |
119. ラストサマー
ネタバレ 「去年の夏」に関する手紙が届く序盤までは、かなり良い感じ。 これはヒット作となったのも納得だなと思えたのですが…… 中盤以降は失速というか、どうも着地が拙かった気がしますね。 まず、ジャンルとして「犯人探しのミステリー物」とも「殺人鬼が暴れるスラッシャー物」とも言えないような、中途半端な内容だったのが痛い。 両方の魅力の良いとこ取りが出来ている訳でもないし、観ている間(……で、どっちにするの?)と、観客としてはもどかしく思えちゃうんですよね。 鑑賞後に結論を下すとすれば「スラッシャー物」って事になるんでしょうけど、それにしたって殺人鬼となるフィッシャーマンに魅力を感じなくて、ノリ切れないんです。 無関係の人間も色々殺しまくってるから「怒りに燃える復讐者」って感じもしないし「車のトランクにあった死体」が消えちゃう件とか(この殺人鬼は現実的な存在ではなく、ファンタジーで何でも出来ちゃう系なの?)と気になっちゃうのも難点。 話の主筋はシンプルで分かり易いのに、こういう細部が曖昧で分かり難いって形なのは、ちょっとチグハグでバランス悪いんじゃないかと。 あと、キャラの使い方も勿体無い感じなんですよね。 アン・ヘッシュ演じるミッシーとか「犯人候補であり、主人公カップルと三角関係に成り得る存在」なのに、途中から全然出てこなくなって戸惑いますし。 シバース姉妹の確執が伏線っぽく描かれていたのに、姉がアッサリ殺されて終わりってのも吃驚です。 ベタではありますが、姉が殺される直前に妹を庇い「逃げなさい!」と言ったりして、喧嘩しがちでも姉妹の絆は確かにあったって展開にしても良かったと思うんですよね。 魅惑的な要素が色々散りばめられていたのに、それらを活かしきれてない気がします。 無事に殺人鬼を撃退した後「命を狙われた原因に心当たりは無いか?」と問われて「いいえ」と答える展開にも、心底ガッカリ。 (こいつら結局、何も反省してねぇな!)と呆れちゃうし「比較的善人と思われた主人公カップルも、結局は嫌な奴らだった」ってオチになっちゃう訳で、凄く後味悪いんですよね。 「殺人鬼は、実は生きていた」というお約束エンド迎えるのも、好みとは言えないです。 冒頭にて述べた通り、序盤の展開というか「話の掴み」は上手いと思うし、カメラワークや音楽のチョイスなども良いので、観ていて退屈するって事は無いんですけどね。 夜の浜辺で「高校最後の夏」を楽しむ様には、青春映画としての魅力が確かにあったと思うし…… 事件から一年後、かつて抱いていた夢が嘘のように冴えない日々を送ってる仲間達と再会する流れも、切なさがあって好きです。 エンディング曲もかなり良い感じで、映画本編に対する不満を忘れさせる効果がありましたね。 商業的に成功したのは納得だし、90年代を代表する品なのは間違いないと思いますが…… 名作や傑作とは評し難い。 でも、粗削りな魅力は確かにあるという「青春映画」という以上に「若者映画」って感じの一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:30:45)(良:1票) |
120. 鬼教師ミセス・ティングル
ネタバレ 最後がハッピーエンド過ぎて納得いかない映画ってのがありますが、これもそんな一本。 主人公のワトソン達と、ティングル先生。どっちが悪いかといえば「ワトソン達」で、どっちが被害者かといえば「ティングル先生」なのに「前者は無罪放免」「後者は教師をクビになる」って結末を迎えちゃいますからね。 最後は主人公三人で、笑顔の卒業式を迎えて終わる訳だけど (……それで良いのか?) とツッコむしか無かったです。 「スクリーム」「ラストサマー」「パラサイト」と同じ脚本家(本作では監督も兼任)という事で、90年代のティーンズ映画らしい魅力が詰まってる事。 舞台の大半が「ティングル邸」に限定されている為、小さな世界の「舞台劇」めいた魅力を味わえる事など、良い点も色々あるんですけどね。 主人公ワトソンの犯行動機というか、ティングル先生と戦う主因が「ママと同じ人生は歩みたくない」っていう想いゆえなのも、非常に残酷で良い。 これ、ママさんが酷い母親って訳じゃなく、娘想いの優しいママさんだし、母娘仲も良いはずなのに、それでも尚そう思ってしまうというのが、何ともやるせないんですよね。 (たとえ夜勤で毎日大変でも、夫に逃げられようとも、娘に愛情注いで育ててる立派な母親じゃないか) と、自分としてはそう感じる訳ですが、それでも娘側の「こうはなりたくない」って想いに、説得力があるよう描かれてる。 「親のようになりたくない」「自分が思い描く理想の大人になりたい」という感情のままに行動する主人公ってのは、等身大の若者らしくて、リアルだったと思います。 それと、悪役になるティングル先生が魅力的なのも良かったですね。 そりゃあ彼女は日頃から意地悪だし、不倫もしているしで「悪い人」なんだろうけど、作中で描かれている限りでは「監禁されている被害者」な訳で、どっちかというと彼女側を応援したくなりますし。 作中で何度か言及されている「エクソシスト」の悪魔のように、巧妙に話術を駆使して窮地を脱しようとする姿は、文句無しで主人公達より恰好良かったです。 あと、不倫相手のウェンチェルコーチが、彼女との逢引では「従順な奴隷」となっちゃうのは、如何にもって感じで笑っちゃいましたけど…… 個人的には、日頃偉そうな態度のティングル先生の方が「奴隷」になっちゃう関係性の方が、ギャップがあって可愛く思えたかも。 脇役&女友達枠のジョー・リンの描写も面白くって、主人公のワトソンより華やかなルックスなのに「私は脇役じゃないわ」って劇中で言わされちゃうのが、実に皮肉が効いてましたね。 「女優の才能が無い」と言われた仕返しのように、ティングル先生を騙すのに成功するのも痛快でしたし…… 三角関係の泥沼を乗り越え、主人公ワトソンとの友情を選ぶ展開になったのも、嬉しかったです。 こういう「報われない女友達」枠が好きな自分としては、とても好みのキャラクターでした。 ただ、唯一のメイン男性キャラであるルークについては不満があるというか……正直言って、魅力を感じない存在でしたね。 そもそもの発端というか、諸悪の根源と言えるのは「答案を盗んだルーク」のはずなのに、なんか「優しい王子様」みたいな扱いを受けてて、違和感が拭えなかったです。 成績の書き換えを提案したのも彼だし、作中で一番「悪魔」と呼ぶに相応しいのはワトソンでもティングル先生でもなく、ルークじゃないかと思えました。 ……とまぁ、そんなこんなで、劇中では散々な目に遭ったティングル先生だけど、生徒のワトソンに「皮肉」の意味を教える事が出来たって意味では、少しだけ報われたのかも知れませんね。 クビになった後の彼女については一切描かれていないけど、何とか立ち直って欲しいものです。 [DVD(吹替)] 6点(2021-10-08 02:16:16)(良:1票) |