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121.  悪魔を見た 《ネタバレ》 
うーん、期待しすぎたのかもしれないけど、バイオレンスを含む他の韓国作品(「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」「殺人の追憶」「母なる証明」「チェイサー」等)と比べても、単なるバイオレンス押しの作品になってしまっている気がした。  ■描写はとにかくグロい。「復讐者に憐れみを」で十分明示的だと思ったアキレス健切りがさらに露骨な形であるし、頬にナイフ刺したり、ギロチンシーンが数回あったり、基本的に拷問の連続だと考えていい作品。他のバイオレンス作品が可愛く見えるレベル。  ■ただ、他の韓国作品が、バイオレンスへの必然性というか、そこを通じてみる「人間の心の闇・深み」みたいなものがあったのに対し、本作からは残念ながらそういったものは感じられなかった。基本的にバイオレンスシーンが「やりたい放題・支離滅裂」という感じで構成されているからであろう。「暴力性の裏に見る・・・」ではなく単に「暴力」になってしまっていた。  ■ストーリーとして見ても、チェ・ミンスクは悪魔というよりただの変態レイプ犯であり、「凶悪な行動の裏にある冷徹な理性」みたいなものは微塵も感じられなかった。他方のイ・ビョンホンはまだ理性を感じられるし、ゆえに「復讐の鬼=悪魔」でもありうるだろうが、それにしては行動が場当たり的。基本的に彼の行動は「イ・ビョンホンの(なぜか)圧倒的なまでの肉弾戦の強さ」に全面的に依存しているわけで、こちらもまた行き当たりばったりと言われても仕方がない。  ■悪魔性があるとしたら、最後の「俺は苦しさを感じないんだ」だが、それにしては途中のシーンでは散々痛がってるし、結局本心は「どんだけ痛めつけられても生きていたい。生きていれば必ずチャンスは来る」という「カイジ」っぽい精神なのだろうと思った。  ■やるとしたら、乱闘シーンを全部削って、基本的に「イ・ビョンホンの不意打ち→体をどこか傷つけられる」にして冷徹に痛めつけていった方が、「悪魔」の感じは出たように思う。同じ復讐ものといっても「オールド・ボーイ」の冷徹な計画性と悪魔性(凶悪性)には全く及ばず。残念
[映画館(字幕)] 6点(2011-03-22 00:08:28)(良:2票)
122.  ボビー・フィッシャーを探して 《ネタバレ》 
きれいだし、上手いし、いい作品だとは思うんだけど、なんだか物足りなさも残る作品。チェスがわかるわからないではない、そこは問題ではない、けど引っかかりが残った。  ■負けられない立場に立つことの怖さ、負かすことで相手を不幸にしてしまうという悲しさ、楽しみのはずのチェスがいつの間にか義務になっていて楽しめない辛さ(ゲームとプロの狭間)、ただチェスの世界にそのためだけに生きればいいのかという問題、父親やブルースが(恐らく)自らの「あまり勝てなかった人生」の代理としてジョシュに勝たせようとしている難しさ、本作では人生でぶつかる大きな問題を「子供」という目から描き出してくれる。それは非常にいい。  ■しかし、本作ではそうした「投げられた問題」に対して決着をつけてくれない。こうしたジレンマは、すべて「ジョシュが勝てなくなること」によって引き起こされる問題である。例えば「大会で負けてもいいや」と思って公園で楽しくスピードチェスに興じるか、勝つために辛い特訓を必死にし続けるか(それでも勝てる保証はない)、等々。だが、本作では結局、ジョシュが「勝ってしまう」ことでこれらの「投げられた問題」を勝手に解消して終わらせてしまう。要するに物語としてこの問題に正面から取り組んでくれないのだ。扱おうとした問題が非常にいいものであっただけに、それをすべて肩透かしさせる展開は残念だった。
[DVD(字幕)] 7点(2011-03-20 01:03:55)(良:1票)
123.  英国王のスピーチ 《ネタバレ》 
アカデミー賞作品賞受賞作ということで、最近のアカデミー賞は微妙なのが多いという不安も抱えつつ見に行った。だが、そうした不安は解消してくれるいい出来栄えで、また中身がきちんとある映画だった。  ■ストーリーは「吃音という障害を抱えながら、国民に語りかけるという役割を負う国王にならざるを得なかった男の話」という言ってしまえばありがちな感じなのだが、しかし作品中では「吃音の克服」に対してはさして描写は割かれていないのはポイントだろう。結局「幼少期のトラウマ」が「吃音」という形で表れているわけで、本作では「吃音の克服」は同時に「過去の克服」でもある。さまざまなしがらみや人間関係を乗り越えていくところにこそ、「努力」は現れている。  ■そして、「国王」という仕事が、自らの望むと望まざるとに関わらず、さらにいえば向き不向きにもかかわらず、家系によって強制的に「させられる」仕事であるというのは相当なことなんだなぁと見ていて思う。普通ならば話すのが苦手なら話さなくていい仕事を選ぶしそうすべき(ローグも最初そう言っていた)。しかしジョージ6世は選べない立場なのである。冒頭のスピーチは本当に苦境だったであろう。 だが、他方で兄がその立場を蹴って女を選び、王位を降りたという事実も忘れてはならない。本作では兄は迷惑な存在というポジションで描かれているが、彼の行動の方がよほど「一般市民」に近いし、またそうなりたがるのは納得できるところである。運命を受け入れてその中でもがくか、運命自体をどれだけ批判されようとも打ち破りに行くか、そういう対比でもあろう。  ■ここのレビューでは、カメラワークの凡庸さが批判されているようだが、ハリウッドではない、ヨーロッパの作品はこういう静かな映しが多いと思う。むしろ、ローグの診療所での練習シーンでの壁へのズーム&アウトや、卑猥な用語を連発するときに突如ジョージ6世の周りを回転するように映し出す方法は、カメラの写しの軽重とジョージ6世の心情のレベルとをうまくリンクさせていて、なかなか面白い手法だと思った。
[DVD(字幕)] 8点(2011-03-19 00:58:02)(良:1票)
124.  暗い日曜日 《ネタバレ》 
音楽と画が美しいのだが、しかしそれだけでなくストーリーも練られていて素晴らしいの一言。  ■骨格は言ってしまえば三角関係なのだが、そこで描かれる心情が一人一人絶妙で、微妙な距離感と仲違い、恋心の微妙な移り変わりなどがうまく描き出されている。本来的には「一対一」であるはずの恋愛関係が微妙なバランスで揺れていく。  ■そして何と言ってもイロナが美しい。しかし彼女は相当に精神は強い(男二人は結局耐えられず死んだわけだ)。二人の男との間をとっていくのも、一歩引いてみれば相当に狡猾でやり手なわけだし、最後はきちんと復讐を成し遂げるわけだし。  ■ナチスとの絡みは、他の方も触れているが完全に「シンドラーのリスト」の裏返し。あちらでは「英雄」とされているシンドラーのポジションだが、こっちでのハンスは世間的には「ユダヤ人を逃がした良心的な将校」だが、その近くにいた人から見ればああいうあくどい振舞いになる。ハンスが他の方も書いているほど極悪なのかはなかなか微妙なところだとは思うが、人間味のある一面(最初の方の橋から飛ぶところとか)もありつつ、私腹を肥やす非道さもあるというきわどいポジションは巧く描かれていた。  ■しかしああまとめてきたのかぁ。。。もう一回冒頭からきちんと見たくなるタイプの作品。
[DVD(字幕)] 7点(2011-03-18 01:22:54)(良:1票)
125.  ヒックとドラゴン 《ネタバレ》 
なるほど。評判の高さも納得の出来。これは3Dで見てもよかったと思わされた。近年のアニメーションの中でも相当に質は高い部類に属するだろう。  ■ストーリーの大枠はベタな作りと言えばそれまでだが、きちんと作りこまれていていい感じ。しかし単なる子供向けアニメと一線を画するのはやはりラストだろう。主人公が片足を失うという、恐らく「主人公の死」よりもタブーであろう領域にあえて突っ込んでいく展開にしたのは高く評価したい。片尾を失ったドラゴンとの助け合いを見せるラストの構図は見事。  ■ただ、逆にだからこそ、ボスドラゴンをただ倒す展開はいただけなかった。あの構図は「ボスドラゴンは極悪、諸悪の根源であり、他のドラゴンはそれに支配されていただけの善良な者」というものになるが、これは第二次大戦後のドイツの用いた構図「極悪なのはヒトラーであり、ドイツ国民もまた被害者」と酷似している。この構図を用いる限り、殲滅戦は回避できるものの、「敵」の中に「究極の悪玉」を探す作業を肯定してしまうことになり、あまり嬉しい解決ではない。  ■ストイックがヒックに認めた誤りも、彼が「ボスドラゴンの猛威」を見て気づいたものであるように、純粋に戦術的なそれであることにも注意しなければならない。  ■とはいえアニメの中ではかなりきちんと問いを投げかけている作品であり、評価には値すると思っている
[DVD(字幕)] 9点(2011-03-13 01:20:08)
126.  ココシリ 《ネタバレ》 
チベットの密猟者とそれを追う山岳パトロール隊を描いた秀作。実話ベースと言うだけあってリアルで、また自然の残酷さも容赦なく映し出されている。  ■やはり流砂に飲まれるシーンと、凍死した仲間から即座に荷物を奪い取るシーンは圧巻。なんといっても「リアルな怖さ」がある。そして、報われないラストもまた悲壮感をあぶりだしている。  ■ただ、逆に個々人の心情描写があまりに薄いので、入り込めなかったのも事実。なぜあそこまで密猟者を追うのか。なぜ密漁せざるを得ないような状況にまで追い込まれたのか。そういう描写が全然ないので、自然の残酷さだけが伝わってくる作品になってしまった。
[DVD(字幕)] 8点(2011-03-11 00:59:43)
127.  イースト/ウエスト 遥かなる祖国 《ネタバレ》 
第二次大戦後、ソ連への帰還を果たした亡命夫婦とその子供。だが、ソ連での状況はフランスでのそれよりはるかに悲惨だった。。。  ■アレクセイとマリーの仲は途中で破綻寸前のようになる。だが、最後の展開や途中でのスパイを巻く行動を見ると、アレクセイの行動はすべて計算ずくだったのではないかとさえ思えてくる。そうだとすると、自らのことを最愛の妻に嫌わせてまで、妻を守ろうとし、そして自らは去らないというこの悲劇的決断を下したアレクセイには同情を禁じ得ない。  ■こういってしまうとマリーの軽率さが目立つような気もするが、マリーの行動の方こそ恐らく観客には近く、またカメラもマリー目線である。これはそういう理由もあるだろう。  ■愛というもの、信じるということ、を考えさせられる秀作
[DVD(字幕)] 8点(2011-03-10 01:11:12)
128.  聖者の眠る街 《ネタバレ》 
都会のホームレスを描いたいい話。本来的にはバッドエンドながら引きずらないまとめ方は巧い。ただ、その先に踏み込んではくれなかったのであまり評価は高くない。  ■意図的なんだろうけど、設定が妙に非現実的。とりあえずあのホームレス宿泊施設周りのエピソードは丸ごとカットでいいと思う。そもそも施設内で殺人事件が起きておとがめなしなんていうあんな物騒な施設が現実にあるわけないわけで、結局あの施設は「二人の出会い」と「マシューの死」を出すためなんだから他にいくらでも方法があっただろ、と思ってしまう。  ■というわけで、設定はものすごく非現実的なのだから、ここから社会批評的なものを引き出そうとするのは無理がある気が。あえて言えば、襲う側の黒人もホームレスなのだから、そういう「貧しい者同士の足の引っ張り合いが、貧しい者を貧しいままにとどめているんだよね」という皮肉・風刺はあるかな。  ■あと、マシューの持つ「奇跡」の能力が結局全然ストーリーに利いて来なかったのが肩透かし。
[DVD(字幕)] 5点(2011-03-08 23:44:17)
129.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
黒澤を「世界のクロサワ」に押し上げた記念碑的作品。尺も90分以下というコンパクトさ。印象としては、音の聞き取りにくさはあるものの、画は現在でも十分に勝負できるものだと思った。  ■カメラワーク、構図の取り方がうまい。そして実は細かな工夫をいろいろしている。例えば雨が見えるようにするために、あの雨には実は色が付けてある(墨を溶かしたと聞いた)とか。  ■ストーリーは、各人のエゴによって真実が「藪の中」にされていく過程が描き出される。各人が何を守りたく、そのためにどういう物語を語るかというのは、きちんと考えてみるとなかなか面白い。各人の話の中では、皆語り手が「(仕方なく)殺した」と、殺人の役は引き受けているところがまた興味深い。  ■個人的には、最後に真実らしいものを志村が語ってしまうところと、最後に希望を見出してしまうところとが若干残念。こういう流れなら最後の最後まで真相は「藪の中」にするような構図にしてほしかったし、志村が短刀を盗んだとはいえ善人、というポジションはなんか息詰まる展開をラストで抜いてしまっている。志村を最後で超悪人のようにしてしまってもいいし、そうでないなら三人の言い争いをもっと引っ張ってもいいと思った。
[DVD(邦画)] 7点(2011-03-05 00:24:40)(良:1票)
130.  フォー・ザ・ボーイズ 《ネタバレ》 
さまざまな荒波に人生を翻弄されてきた一人の慰問ソンガーの人生の物語。戦場で夫を失い、息子を目の前で失うという悲劇はあまりに重い。 ただ、全体の展開が早いのと、エディにあまりに簡単に言いくるめられて行ったり来たりしてしまっているのとが、個人的にはわかるけどなんか腑に落ちない感じを残したまま終わってしまったのでこの点数。
[DVD(字幕)] 6点(2011-02-28 00:48:07)
131.  オアシス 《ネタバレ》 
難しいところをついている作品だが、個人的には主演2人の圧倒的演技と比べると、ストーリーや構成はわりと失敗している印象。もっとも賛否両論でいいと思うが、このレビューを見ていると肯定的意見があまりに多いので、やや辛めの視点からレビューする。  ■とりあえずジョンドゥの行動はあまりにも周りの人々への迷惑を顧みなさすぎる。「周囲への迷惑」というのは要するに「他の人々への共感の欠如(他の人が自分の行動によってどういう感情を抱くかを考えない)」ということであり、人への共感を欠く人間が愛(究極の他者志向)を語ってみたところでそれは空虚なのである。  ■確かに「周りを顧みない純愛」を描いた映画は多数存在する。だが、それらの作品では、他者への共感を主人公がそもそも欠いているのではなく、他者への迷惑の存在は認知したうえで「それでもなお」愛の方を選びとるという選択をしているがゆえに美しいのであり、「最初から迷惑が認知されていない」のでは何も美しくない。  ■もちろん、何の役にも立たない形式や制度だったら破っても構わないかもしれない。しかし本作では人の邪魔をしたり、人のものを勝手に使ったりするなどという、直接的に人に損失を与える方向に向かっている。コンジュを冒頭で襲うのは明白に「相手の障害を利用した悪質な強姦」でしかなく、相手が「たまたま」自分を好きになったからそれで事が見逃されるという、極めて薄気味悪い展開なのである。  ■ジョンドゥの(軽度)知的障害が恐らく上記の弁明として使われているのだろうが、「知的障害だから周りに配慮できなくても仕方がない」という発想自体が、一見博愛主義的でいながら、実は「障害者には自分たちと同等のことを求め得ない」という「格下扱い」が滑り込んでいる。障害者が「自覚せずに周りを傷つける存在」ならば隔離するしかないのであり、障害者を同じ地平で扱うからこそ初めて共存できる。ジョンドゥのコンジュへの愛は本物だろうが、ジョンドゥを「障害者だから」で見逃すのは「あんな女で興奮するのか」と言ってのける警官と大差ないまなざしである。  ■なお、主演2人の演技は本当にすごい。コンジュ役のムン・ソリは普通に戻るシーンではすごくきれいなのがすごいコントラスト。あれをほぼ全編通したのはすごい演技力だと思う。
[DVD(字幕)] 5点(2011-02-23 00:59:05)
132.  アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 
他のレビュワーの評価を見ると、10~8点に多くの人が付ける一方で、5~0点という低評価も一定数の人がつけている。要するに非常に好みが分かれるであろう作品。  ■とにかく第二次大戦から90年代までのユーゴスラビア史を一本の映画でやろうという無謀な試みなのだから長い、とにかく長い。そして、にもかかわらずあのよくわからないテンションが続く。つまらないわけでは決してないのだが、なんか引き込まれるのとは別の意味で疲れるタイプの映画。  ■この手のコメディにはあまり強くないので、半端なく重くなるのは承知で、悲壮な地下生活と、嘘だと知った時の衝撃・絶望・怒りみたいなものを描いてくれた方が個人的にはよかった(「オールド・ボーイ」みたいな感じ)。映画撮っているところに出てくるとか、どういう奇跡的偶然ですか、だし。とはいえ「閉じ込めた人々」と「閉じ込められた人々」とが心理的には逆の状態になっている(地下の人々が生き生きして、閉じ込めた側が苦しんでいる)のは非常に興味深かったが。
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-02-22 01:50:43)
133.  瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 
見終わって、ずっしりと心に響いてくるタイプの映画。ロマンスとサスペンスをギリギリのところでかけ合わせていて、細部に甘いところはあるものの、非常に好感度は高い。でもメインは多分サスペンスでもロマンスでもなくて「人間は過去とどう向き合うか」という永遠の主題であろう。  ■カメラワークがとにかく秀逸。スタジアムの中に一気に引き込む回し方や、ゴメスと一緒に落ちていき、捕まるところまで撮っていく一連の長回しは圧巻。最後を扉が閉じて終わらせたところや、牢屋の小屋に入っていくシーンなど、細かなところにも写し方をこだわっている。  ■タイトルにもあるように「瞳」の演技が素晴らしく、まさに何も語らないところで「瞳で語る」ようなシーンも多い。駅の別れや誘うシーンなどのわかりやすいところから、タイプライターを打つちょっとしたシーンまで、瞳がいろいろと語ってくる。  ■最後の展開は決して私刑を擁護しているのではなく、まさに人は過去に囚われざるを得ず、特に「時間が止まってしまった」かのような男リカルドはあのようにならざるを得ない、そういう「不条理」を示しているのであろう。過去は忘れるのでもなかったことにするのでもなく、それにとらわれながらしか生きられないし、その中で最善を尽くすしかない。「よい方の選択肢を」とベンハミンにいうリカルドは、裏を返せば自分には選択肢すら与えられなかった(妻を失うしかなかった)ということを示唆しているのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2011-02-21 01:20:51)(良:2票)
134.  アンダルシアの犬 《ネタバレ》 
「シュルレアリスム展」でまさかの上映をしていたので鑑賞。まさにシュルレアリスム、いや、他の絵画よりもある意味で引き立つ不気味さではあった。  ■冒頭の有名な「眼をカミソリで切るシーン」、恐らく「映画史上最も痛いシーン」ではなかろうか。想像するだけで身震いする。そしてもう一つ有名な「切れた手をつつくシーン」、こちらは怪しい趣味ではあるがわりと普通の範囲内だった。  ■腕に湧いている蟻は、ダリの他の絵画作品、例えば「記憶の固執」などにも描かれている。彼の作品において蟻は重要な位置を占めるよう。  ■後のシーンはたいして記憶にも残らなかった。面白いかと言われると微妙。というか面白くはなかった。冒頭だけ見ておけば十分話の種にはなるし。  ■ちなみに、美術館ということもあり、誰ひとり爆笑する人はいなかった。
[DVD(字幕なし「原語」)] 4点(2011-02-18 01:48:52)
135.  ぼくは怖くない 《ネタバレ》 
ストーリーそのものは極めて予想できるものにもかかわらず、心に響いてくるタイプの作品。「囚われた子供」というミステリー性はあまり生かされていないが、その「非日常性」は利いてきているように思う。  ■「なぜあの子は閉じ込められているのか」については、ミケーレが夜に考えていたようなストーリー(映画「鬼畜」や劇場版「TRICK」とかそんな感じ)の方が面白いと思う。そこら辺はちょっともったいない気も。実際、設定が「誘拐」であることのメリットはほとんど利いてないわけで、だとしたら「村における秘密の掟or差別的偏見」みたいな方が。  ■この映画を「大人」と「子供」と切っている人は多いけど、それは必ずしも当たっていないと思う。例えば、子供たちの中でも「罰ゲーム」と称して女の子を脱がせようとしたり、落ちたら大怪我しそうな梁の上を歩かせたりはしているわけだし、ミケーレも秘密を話した友人にあっさり裏切られる。しかも裏切った理由は「車を運転してみたいから」というしょうもない動機。  ■だからこの村は「強いものがのさばる社会/正直者がばかを見る社会」であり、子供たちはまたその縮図の中にいると見た方がいいだろう。そしてミケーレの父はまさにその中における「負け組」に位置している。くじ引きにおける二度の「負けを引く」という演出が彼の「運の悪さ=負け」を象徴している。両親は負けたレースにおいて損な役回りをさせられ、結局犯罪に転落して社会からもはじかれる存在になっていく。そしてそれはミケーレ自身も引き継いでおり、だから母は「村から出ろ」というのであろう。
[DVD(字幕)] 8点(2011-02-18 01:35:10)
136.  鬼が来た! 《ネタバレ》 
難しい作品。とりあえず単純な「日本人として恥ずかしい」型の感想は論外ではあるが、評価はさまざまな情報を加味しないと行けなくて難しい。  ■とりあえず単純な反日映画ではないだろう。確かに全体としてのバイアス(特に「中国人の善良性」についてはなかなか怪しい)はあるが、それはそもそもあの国で戦争映画を作ろうと思ったら中国政府に肩入れするようにしか出来ない状況にある(本作でさえ「日本人に優しすぎる」と上映禁止らしいし)ことを加味すれば、まあ仕方がない側面は多分にあると思う。  ■他国の人が見てどう思うかだが、戦争映画でそんなに「何人か」って見てて気にするのかはわからないところ。似たような映画だと例えば「コーカサスの虜」を見てロシアが嫌いになるかとか、そういう感じの問題じゃないのかな。  ■ちなみに敵前逃亡ってどこの国の軍でも厳しく罰しているものだから、あれは日本だけではないと思う。  ■個人的には、マーのラスト直前での行動があまりに突発的なので、そこをもう少し自然な感じでつなぎ合わせた方がいいと思った。あれだと本当にただ気がふれただけだし。  ■あと、あまり注目されていない気がするが、トンの処刑は意外と重要だと思う。マーは曲がりなりにも殺人者なわけで殺されてしかるべきともいえるのに、その処刑には自らの手を汚したがらない。他方でトンはあの状況下ではどうしようもない展開をたどり、最後には処刑されるのだが、それは躊躇せず中国軍で処刑する。そして二人とも笑顔で死ぬ。。。  ■何人かの方が触れているように、本作では「権力」「上下構造」が虐殺・殺人を招くというのがメッセージに含まれているだろう。だがその上で言うと、それだけでは実際にはなかなか殺人というものは起きず(人間は罪を犯したくないもの)、引き金になるのは「透明性(誰が殺したかわからない、死んでも自分のせいではない)」である。その意味で、虐殺の引き金となる花屋の刺殺もマーの殺人も「顔の見える状態での殺人」であり、現実の戦場とは違うなぁと思ったり思わなかったり。
[DVD(字幕)] 10点(2011-02-14 00:22:04)
137.  飢餓海峡 《ネタバレ》 
重厚な映画。戦中戦後の壮絶な時期と、そこにおける人間の悲哀を、一本の事件を軸にして10年という歳月にまたがって描き出している。  ■前半の事件から、八重に助けられて八重が東京に出ていくまでのシークエンスは、人間の苦境、愛、悲しさ、欲望、そうしたものがうまく映し出される展開。そして後半が、まさに犬飼が捨て去ったはずの「過去」を知る存在として八重が現れ、彼女のそのけなげな気持ちが逆に当人の死を招くという皮肉。ラストの飛び込みは戦慄。 だが、10年後の展開は、特に書生を殺すところなどあまりに乱暴だし、犬飼の幼少期と事件前後の心境はもっときちんと描き出してほしかった。警察の動きはサスペンスとしてもぞんざいだし、人間ドラマならばもうちょい縮めていい部分。  ■他のレビュワーさんも触れているが、やはりこれは「砂の器」と比較したくなる作品。隠しておきたい過去、過去を捨て去っての成功、過去を知る善良な人を殺す運命といった展開は、まさに「砂の器」を彷彿させられる。 しかし、だからこそ、だからこそ10年後の八重殺しをめぐる犬飼の心境と、最初の事件までの犬飼の苦境とをもっと描き出してほしかった。  ■とはいえ十分満足の作品ではあるが
[DVD(字幕)] 9点(2011-02-13 00:13:21)(良:1票)
138.  ぼくのエリ/200歳の少女 《ネタバレ》 
私はキリスト教におけるヴァンパイアの位置付けとか、ヴァンパイアの性質とかはあまりよく知らないので、細かな描写がどうなのかはイマイチわからない。それにヴァンパイアものは初めてなのでどうなのか不安になりながら見たが、予想以上に面白かった。  ■カテゴリとしてはヴァンパイアもの=ホラーではあるが、グロ描写満載で覚えさせるような作品ではなく、むしろある種の芸術性を強く感じさせられる。雪の白、闇の黒、血の赤、この三色がうまくコントラストをなしている。乾いた描写とエリ役のもつ美しさと同時の不安感(不気味さ)が非常にうまい。残虐なシーンを巧妙な構図とカットによって直接的にではなく心に響くようにしている。  ■それぞれがそれぞれの悲しさを含意している物語の展開も深い。いじめられっ子のオスカーは「支えてくれる人」と「強さ」を求める。だが「強さ」はプールのところで自分へと跳ね返ってきて、それは「自らの強さ」によってではなくエリによって救済される。 他方のエリは「理解者」を求める。だが、プールの惨劇のみが本質的に「グロい」シーンになっているところが、エリによるオスカーの救済が、同時にオスカーに自らの完全な「理解者」になってもらう道を閉ざしているようにも思える。エリはオスカーの補完者であり理想像でもある。ある意味で「ファイト・クラブ」を彷彿させられるような。。。  ■邦題のひどさ(笑)はひとまず置いておきましょう。
[DVD(字幕)] 8点(2011-02-11 01:04:18)
139.  ゲッタウェイ(1972) 《ネタバレ》 
ショットガンはバンバンぶっ放すというバイオレンスな側面と、しかし精神的に強いのは女の方(まああの医者の妻はなかなかにクズではあるとは思うけど)。二つの夫婦の中が壊れ、そしてそれがどう修復できるか否かという方に主眼を写しつつ、しかしその描写はバイオレンスさがむんむんとしているという、ペキンパーぽくてそうではない感じ。でもまぁ見ていて楽しめたので普通にいいと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-17 00:59:07)
140.  第三の男 《ネタバレ》 
サスペンス・ミステリの古典と呼ばれることも多い名作。なるほど、ストーリーがそこまで複雑なわけではないが、普通に楽しめた。最近のミステリが複雑にしすぎていることを考えると、このくらいの方がシンプルでいい気もする。  ■この映画は、ハリーの埋葬で始まり、ハリーの埋葬で終わる。最初と最後がかぶって来るところは印象的。あの並木道は有名なシーン。あと観覧車、地下水道、ウェルズの影からの出現シーン等、あちこちで見かけたシーンはこれだったのか、と再発見。  ■やはり観覧車のシーンが印象的。上から粒のような人を眺めて「あれが一人消えて何になる」というのは、「人がごみのようだ」にも通ずるが、こっちは実写なだけに人間の消し去ろうと思えば簡単に消えてしまうもろさを感じる。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-09 01:39:14)
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