1581. サイコ(1960)
60年代のヒッチコック映画は、一作ごとにテーマも出演者もがらりと変わり、それにつれて評価もドンドン堕ちていったのは事実。しかしトップバッターである本作は、ホラー・スプラッター映画というジャンルを創りだした“偉大なるオリジナル”であることは間違いない。 ジャネット・リーを始め俳優陣は今までヒッチコック映画に起用されたことがない顔ぶれ、おまけにモノクロ撮影と当時としては実験的な手法を使っているけれど、緻密に計算されたカット割りと演出は現在の眼で見ても見事の一語。基本的に役者の演技は50年代のものでちょっと物足りない感じはするけど、ラストで独房で毛布をかぶって笑うアンソニー・パーキンスは、何度観てもゾーっとさせてくれます。 そう言えば、『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーチスはジャネット・リーの娘なんですよね。元祖スクリーミング・クィーンの子供が母の芸を引き継ぎ発展させるなんて、まるで伝統芸能の世界みたいで微笑ましい限りです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-24 22:16:01) |
1582. 召使
《ネタバレ》 ジェームズ・フォックスが劇中「魚の様な男」とダーク・ボガートのことを評するけど、これぞどんぴしゃりの表現。無表情というわけではないけどあまり顔の筋肉が動く感じが見えない、まさにお魚の様な顔なんですよ。家の中にある鏡はなぜか円形や楕円型をしていて、そこに映る画がまるで魚眼に映っているかの様なのも、意味深です。こんな演技ができるのは、ダーク・ボガートのほかにはいないでしょう。 屋内でほとんど話が進行するのでこのフラット(屋敷)が影の主人公みたいなもんですが、壁に映る影の映像が多用されてドイツ表現主義の教科書みたい。そして屋外はありふれた風景なのに、名カメラマンであるダグラス・スローカムの静謐なモノクロ映像が素晴らしく、屋内とは対照的である。 最後の悪夢のようなパーティはいまいち意味不明っぽいのではありますが、ハロルド・ピンターの脚本はかなりの完成度だと思います。 今ではカルト映画みたいな位置づけになってますが、本作はジョセフ・ロージーの最高作なのかもしれない。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-23 01:14:43) |
1583. レッド・サン
《ネタバレ》 サムライ対ガンマンというプロット一発勝負の映画だろうと想像して長い間観なかったけど、けっこうテンポも良く面白いじゃないですか。さすがは三船敏郎、その貫禄と存在感はアラン・ドロンなんか眼じゃないぞ、って感じです。製作資本からみてもマカロニ・ウェスタンに近いテイストのウェスタンですが、ウルスラ・アンドレスを脱がせたり出来るのは、やっぱヨーロッパ系映画だからですかね。そしてチャールズ・ブロンソン、他の俳優と絡み引き立て役にまわったときに彼の真価が発揮されるということが良く判りました。三船とブロンソンの駆け引き、けっこう楽しませていただきました。三船の黒田重兵衛も、ただの堅物じゃなく、ちゃんと西部の娼婦のお相手もして“日本男子”を見せつけてくれたみたいで、微笑ましい限りです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-19 01:29:48) |
1584. 天国と地獄
《ネタバレ》 黒澤明の現代もの映画は今一つ好みではないのですが、本作だけは例外・別格です。序盤の舞台劇を思わせる対話劇からして緊張感でもうピリピリですし、身代金受け渡しシークエンスから一挙に躍動し始める作劇も見事です。あの特急列車を実際に走らせて一発勝負で撮った(実際には撮り直したそうですが)シーン、これほど緊迫した映像は映画史の中でも類を見ない壮絶さです。そして煙突から牡丹色の煙が上がるシーンになると、満席の映画館でいっせいに拍手が沸き起こったのは、そんなこと初めての経験だったのでほんとびっくりしました。これこそ、初めて黒澤映画に色彩がついた瞬間なんですよね。 思えばその当時(70年代)、黒澤や小津の映画を褒めることはダサいというのがジャーナリズムの風潮だった時代に、黒澤映画の価値が判っていたのは市井の映画ファンたちだったのだなと、しみじみ感じます。 [映画館(邦画)] 10点(2012-06-15 00:41:04) |
1585. ハート・ロッカー
《ネタバレ》 始まりもなければ終わりもないような泥沼のごとき任務に就く爆弾処理兵、決してカタルシスを与えてくれる映画ではないが、今までにない戦争映画だと思います。表現としての手ぶれ映像は最近の流行りだからもう珍しくもないが、爆弾処理班の三人に徹底的に近接した視点は戦争ものとしては珍しい。彼らの上官はいっさい画面には登場しないしどこから命令が下りてくるのかも判らない。ガイ・ピアースやレイフ・ファインズという主役級のスターが、まるで雑踏の中の通行人の様な軽さで画面に登場したかと思うとあっけなく死んでゆくのには驚かされました。考えてみれば、どんなにハンサムだろうと高潔な人格だろうと戦争ではいとも簡単に死んでしまうものだし、贅沢かもしれないけどこういう俳優の使い方はありかもしれません。 この映画を観ての最大の収穫はジェレミー・レナーを知ったことで、こんな不敵な面構えの俳優がいるとはハリウッドも奥が深い。邦画界に彼と同年代でここまで存在観のある風貌の男優がいるでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-06-12 21:30:26) |
1586. 陰謀のセオリー
《ネタバレ》 まずキャスティング、実際の言動を考えると、陰謀論に取り付かれた様に見える主人公にメル・ギブソンを持ってきたのは、まず成功です。だってメル・ギブソン、陰謀論をほんとに信じていそうですから(笑)。しかしですね、ヒロインがジュリア・ロバーツってのは無駄に豪華なキャスティングの見本みたいな失敗です。彼女の現実味のない映画での行動は脚本のせいだからしょうがないけど、このキャラは花のある女優を使ってはいけません。 ストーリー・テリングも「虚実とり混ぜて」という風に引っ張っていくのが常道なのに、意外とあっさり黒幕を出しちゃって、しかもそれが薄いキャラだから嫌になっちゃいます。私の大好きな名曲"Can't Take My Eyes off of You"にしても、下手な使い方をされてしまって可哀そう。ジョエル・シルバー製作だから深みのあるお話しのはずもなくドンパチ・アクションを期待していましたが、その方面もびっくりするほどつまらなかった。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2012-06-08 22:39:32) |
1587. THE SILENT WAR 戦場の絆
《ネタバレ》 第一次世界大戦のとき、西部戦線では塹壕線がスイス国境から英仏海峡の海岸線まで繋がってしまい身動きが取れなくなってしまった。実にほぼ四年間にわたって戦線が動かなかったわけで、相手の塹壕や陣地の真下までトンネルを掘って爆薬で吹っ飛ばしてしまおうとイギリス軍は考えた。ドイツ軍もトンネルを掘ってイギリス軍を阻止しようとし、両軍の間で実に地味~な坑道戦が展開されたという史実をもとにした映画です。この戦いに参加したオーストラリア兵のトンネル中隊を取り上げているのですが、地味な戦いを丁寧に映像化しています。この中隊は将校・兵士とも本国で鉱山技師や鉱夫だったからトンネル掘りはお手の物、でも戦場の中ではそれは大変な苦労です。オーストラリア人とイギリス人の気質の違いや確執も良く描かれており、けっこうドラマとしても質が高いです。戦争映画としてのアクションはほとんどないと言ってよく、ドイツ軍の攻撃トンネルを爆破する唯一のサスペンス・シークエンスすら実にあっけなくてちょっと残念。ラストは敵陣のある“80高地”の爆破に成功するのですが、その前に主人公の将校が悲しい決断をしなければいけなかったのが涙です。史実では、このときの爆発音がロンドンでも聞こえたというから凄まじさが判ります。もっと凄いのは、これだけ苦労して作戦に成功して1万人以上の損害をドイツ軍に与えたのに、戦局にはなんの影響も与えなかったということでしょう。日本人には想像もつかない戦争です。 [DVD(字幕)] 6点(2012-06-05 21:38:33) |
1588. ハーヴェイ
《ネタバレ》 観る前は、てっきりハート・ウォーミングなコメディだと思っていましたが、かなりシュールなところもあり、一歩間違うとサイキック・ホラーじゃないですかこの映画は。ふつうに考えるとハーヴェイが見えるジェームズ・スチュアートは立派なキ○ガイ、むかしで言うところの精神分裂病なんでしょうけど、実はお姉さんにも見えていたと言うのがミソ。終いには精神病院の院長までもハーヴェイが見えるようになるところは、ちょっと不気味です。またハーヴェイが妖精の様なものだという説明はありますが、とくに可愛らしいことをするわけでもなく、ジェームズ・スチュアートにくっついているだけというのも変です。 本質的には大層ヘンな話しなのに、ファンタジーみたいな演出にしたのは監督のヘンリー・コスターも確信犯なのだろうか。 この作品が持つダークな本質を21世紀に甦らせたのが『ドニー・ダーコ』なんでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-06-02 23:15:59) |
1589. 4番目の男
《ネタバレ》 ヴァーホーヴェンにしては珍しく宗教色が濃いのですが、この人やはり信心深くないことが逆に良く判ります(笑)。 『氷の微笑』の原型だと良く言われていますけど、“謎の女”がシャロン・ストーンの迫力に足元にも及ばないんじゃ、『氷の微笑』より遥かに映画としての面白さは落ちます。また主人公の作家が、ホモなのはしょうがないとしても、あまりにおバカなのがまたイラつきます。女に手相占いしてやるシーンなんか、脚本からしてアホまる出しじゃないですか。 よく考えると、この映画ニコラス・ローグの『赤い影』に雰囲気が良く似ているんですよ、個人的には「パクったな、ヴァーホーヴェン」と思っています。 [ビデオ(字幕)] 5点(2012-05-31 23:42:13) |
1590. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 ×××が×××を付けているのを×××に見られたのや、バスの中に×××があることに×××が気づくのも、すべてトラボルタの仕掛けだったと言うのかい!こいつは神か悪魔か!(確かにお名前はガブリエル“大天使”ですが) この映画を貫いているご都合主義とラストのオチは、もう夢オチみたいなもんです。だいいち、人質を連れて銀行から出てきたテロリストを、なんで警察が狙撃しちゃうのかわけ判りません。そんな粗いお話しでも、有名スターを揃えて華麗な映像を怒濤のごとくぶつけてくれば、映画としてはなんとか観られるものが出来ると言ういい見本かも。 映画史に残るムダ脱ぎをしてオッパイを見せてくれたハリー・ベリーに一点献上です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-05-30 01:08:55) |
1591. コンテイジョン
《ネタバレ》 始まったとたんにグウィネス・パルトロウが感染死したと思ったらケイト・ウィンスレットも死んじゃうし、こりゃこの豪華出演俳優たちはみな逝ってしまうのかなと心配しちゃいました。最近のソダーバーグの傾向として、新型ウィルスのパンデミックを冷徹にシミュレートしまくる実験的な作品かと予想していましたが、人間同士の触れ合いに未来の希望があるんだ、というけっこう熱いメッセージが感じられました。グウィネス・パルトロウの不倫や拉致されたマリオン・コティヤール消息などを、あまりにばっさりそぎ落とした脚本にはちょっと疑問が残りますけど。でもサブ・ストーリーを膨らませてゆくとまた『トラフィック』みたいな映画になっちゃうので、ソダーバーグはあえてこういう展開にしたんだろうなと思います。インフルエンザみたいな症状なので『アウトブレイク』みたいな派手な死に方ではなくよっぽどリアルな恐怖が伝わりますが、グウィネス・パルトロウの解剖シーンだけはギョッとさせられました(なんせ頭の皮がペロリですから)。そしてジュード・ロウの怪しいブロガーぶりから、ソダーバーグのネットに対する辛辣な見方が意外でした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-27 23:45:12) |
1592. ある戦慄
《ネタバレ》 むかしTV放映で観たとき、「NYの地下鉄って真夜中でも動いてるんだ、それにしても汚い車両だな」と感じたことが思い出されます。この映画の乗客たちの様なシチュエーションには絶対遭遇したくないものですが、大人になっても体験してないのはラッキーなのかもしれません。この二人のチンピラは、良く考えると肉体的な暴力はほとんど乗客に加えず言葉の暴力と突拍子もない動作で痛めつけているのです。その絡み方がけっこう理屈っぽいところが無教養な若者らしくないんだが、ヤクザに理詰めで詰められるほど怖いものはないと言うことのいい見本かもしれません。まあそのプロットが乗客たちの赤裸々な実像を浮かびあがらせると言ういかにも演劇的な効果を生むわけで、良く練り込まれている脚本です。 ラストにやっと登場した警官までもが、刺されたボー・ブリッジスを介護しようともせず、黒人を見たとたんに犯人と決め付けて飛びかかるなぞ、とにかく観る者の不快指数を上げてくれる素晴らしい映画でした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-26 01:23:50)(良:1票) |
1593. キャット・ピープル(1982)
《ネタバレ》 個人的には、ポール・シュレイダー作品の中で一番好きな映画です。オリジナルは未見なんですが、低予算を逆手にとって変身シーンなどを見せない工夫がされているとは聞いています。このリメイクは、その「見たいけど見れなかった」シーンを撮りたいがために創った様なもので、きっとこの監督もオリジナルのファンなのでしょうね。それに都合がいいことに、ナスターシャ・キンスキーとマルコム・マクダウェルという類まれなる猫顔をした俳優がいたから、シュレイダー「もう撮るっきゃない!」と意気込んだんじゃないでしょうか。数あるナタキン映画の中でも、これほど美しいナタキンは観たことがないというくらい。 たぶんオリジナルにはなかったであろう、兄と妹が近親相姦をしないと血族が絶えてしまうという悲しい運命が悲劇的な結末に繋がっちゃうんですね。あの不思議な雰囲気に満ちている動物園など、けっこう画としても凝った撮り方してます。ラストで映る黒豹がとても美しく見えてくるから不思議です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-05-22 22:30:59) |
1594. ジャズ大名
《ネタバレ》 まさに岡本喜八と筒井康隆、夢のコラボレーションですな。この時期岡本喜八は映画がなかなか撮れない苦境の時期だったけど、初期の喜八映画に立ち返った様なアヴァンギャルドぶりはファンとしてはもう感涙です。おかげで数ある喜八ムーヴィーの中でもとびっきりのカルトとしてその名を轟かせています。 いつもの富士御殿場でロケしているのが見え見えの脱走黒人たちの珍道中パートはちょっとモタモタしているのですが、あのウナギの寝床みたいなお城で殿様に楽器を教え始めると、もうストーリーなんてどっかにぶっ飛んでしまい、後は狂乱のジャズ・セッションが延々と続くんですから観ている方も頭の中トランス状態ですよ。ブレイク前のタモリを始め当時のサブカル界から大挙出演者を引っ張ってきてるのは壮観でもあります。 ちょっと毛色の変わった映画をお探しのあなた、ぜひ一度ご覧あれ! [ビデオ(邦画)] 7点(2012-05-22 00:07:27) |
1595. ウェディング・ベルを鳴らせ!
《ネタバレ》 クストリッツァ映画と言えば、ケダモノ・オッパイ・お尻ですが久しぶりに三つのお印がパワー全開です。初めて彼の映画を見た人には絶対理解できないクストリッツァ的記号(空を飛ぶ男、宙づり)も健在ですし、ヒッチコックの『めまい』を恥ずかしげもなくパクっているのも意味不明ですけど笑えます。 セルビアの山村で育った少年(どう見ても、12・3歳にしか見えないんですけど)が牛をつれて都会に嫁取りに行くと言うとても現代のお話しとは思えないなんですが、まあおとぎ話だと思えば楽しめるでしょう。思うに「嫁を買いに行く」というプロットってフェミニストは眼を釣り上げて怒りそうですが、クストリッツァは基本的にアンチ・フェミニズムの人なのでそんなこと気にするわけないですよ。それにしてもクストリッツァのヒロインを選ぶセンスには毎回感心させられます。 ミュージシャンとしても有名な息子のストリボールが大活躍するのも見どころです。そして“クストリッツァ映画のロバート・デ・ニーロ”ミキ・マノイロヴィッチが再び出演しているのがまた嬉しい。 コメディとしては『黒猫・白猫』より落ちるけど、ファンにはたまらない一編です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-20 23:09:30) |
1596. 刑事ジョン・ブック/目撃者
《ネタバレ》 “二種類の表情だけで演技する男”ハリソン・フォードなんですが、もうこのジョン・ブックの様な好演は観られないでしょうね。でも不思議なことに、この映画でもいつものように“二種類の表情”なんですけど、ピーター・ウィアーの様な腕の良い演出家がつくとやっぱり違うんですねえ。アーミッシュの集落にだんだん溶け込んでゆくところが実に自然で清々しいんです。 プロット自体は『リーサル・ウェポン』や『ビヴァリーヒルズ・コップ』シリーズなどの一作としても違和感ないのですが、観終わってみるとハリウッド製刑事映画では決して味わえないような不思議な爽やかさが残るんです。ラストのロング・ショットは映画史に残るような素晴らしいシーンじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-05-17 23:37:33) |
1597. 眺めのいい部屋
《ネタバレ》 20世紀初頭の時代設定で同時代の日本と比べると贅沢な生活ですけど、登場人物たちは上流階級の人たちではなくあくまで中産階級と新興ブルジョワであるところがこの作品のミソでもあります。その時代の英国がいかに豊かな社会であったかが偲ばれます。ヘレナ・ボナム=カーターのカマトトぶった振る舞いもヴィクトリア朝時代の女性のカリカチュアみたいなもんですが、ピアノでヴェートーヴェンを弾くところなぞは中流階級の新しい女性像を巧みに表現しているとも言えます。この作品の面白いところは、“Poor Charlotte(可哀想なシャーロット)”とみんなから陰で煙たがられるマギー・スミスと、スノッブを絵に描いた様なダニエル・デイ=ルイスの絶妙なキャスティングで、両名の憎たらしいいまでの好演は見事でした。使用されているプッチーニのオペラもまったりとした物語に良くマッチしているし、ジェームズ・アイヴォリーの趣味の良さに、素直に脱帽させられました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-16 01:18:59) |
1598. バグダッド・カフェ
《ネタバレ》 本作は私の観た映画の中で、観れば観るほど評価が下がった映画の筆頭です。フィルムに色をつけちゃう奇抜な手法とあまりに有名なテーマソング『コーリング・ユー』が紡ぎ出す世界はまだ耐用限度を保っているけど、如何せん中身がなさ過ぎる。ジャック・パランスが新境地を開拓するいい演技だったのは良かったんですけどね。 バグダッド・カフェを去ってゆくクリスチーネ・カウフマンが理由を訊かれて「だって、あんたたち仲が良すぎるんだもの」と答えるのですが、このセリフは私の感想でもあります。 そういやパーシー・アドロンって最近名前を聞きませんが、どうしちゃったんでしょうか? [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-05-14 23:54:20) |
1599. 鮮血の美学
《ネタバレ》 この映画はベルイマンの『処女の泉』をパクったというのは有名ですが、確かに見比べるまでもなく舞台がほぼ森の中だけ(つまり、低予算で撮れる!)などそっくりです。お父さんお母さんが三人組を簡単に家の中に入れメシまで喰わせるなんていくらなんでもおかしいぞと思いますが、オリジナルがそうなっているので仕方がないわけです。しかしあの『処女の泉』をこんなエクスプロイテーション映画にしちゃって、ベルイマンはどういう反応を示したんでしょうかね。もっとも、『処女の泉』は『羅生門』からヒントをもらったとベルイマンも公言しているわけで、ということは『羅生門』のリ・リメイク(?)でもあるわけです(笑)。 エロもグロも大したレベルではないし、いくら新人監督と言ってももう少し何とかならなかったのかという俳優の演技、この映画が割と高評価されるのが正直自分には理解できないんです。そう考えると、ウェス・クレイブンという人、上手くなったし良くここまで出世したもんです。 [DVD(字幕)] 3点(2012-05-13 23:13:12) |
1600. ロード・オブ・ウォー
《ネタバレ》 先ごろ“映画『ロード・オブ・ウォー』のモデルとなった武器商人が逮捕された”というニュースが流れましたが、その画像を見て感心しました、この人本作でのニコラス・ケイジに雰囲気がそっくりなんですもの。けっこう緻密な役作りをしてたんですね、ニコジー。この映画観た人は誰もがタイトル・バックの“弾丸の一生”に感心すると思いますが、実はむかしアメリカで放映されたある警察ものTVドラマ・シリーズのタイトル・バックが、これと同じアイデアに基づいたものだったそうです。 とまあ余談はさておき、「銃と弾薬は世界が必要とする商品である」という武器商人ユーリー・オルロフの生きざまは、ニコジーの軽妙な演技が生きていて、監督アンドリュー・ニコルはその才気を見せつけてくれます。とくに前半のサクセスぶりとイーサン・ホークとニコジーの駆け引きは楽しませていただきましたが、嫁さんと弟が絡むシークエンスになると途端にテンポが悪くなるのは残念です。ラストのどんでん返しも強烈なインパクトがありましたが、実在のモデルが逮捕されると言う現実は、国際情勢の変化とその闇の深さがひしひしと感じさせられます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-11 18:22:37)(良:1票) |