1601. ヴァン・ヘルシング
エンターテイメント大作として不可欠な「思い切りの良さ」は充分に備えていたし、それぞれのキャラクターのビジュアルも良かったと思う。しかし、若干大味すぎた感じもする。同監督作「ハムナプトラ」のような至極単純明快なストーリーならばいいのだけれど、ヴァン・ヘルシング自身の過去への謎やドラキュラ一族との因縁などのバックストーリーがあるのなら、もう少しその辺のストーリー的な深みを備えてほしかったし、それは可能だったと思う。次々に展開されるアクションシーンには破天荒なインパクトがあり楽しめたが、ストーリーにもうひとつ小気味よさが無いために、全編にわたり少々テンポの悪さを感じてしまった。良かったのは「狼男VS吸血鬼」の構図。偶然にも前日に「アンダーワールド」を見ていたために、類似する構図と、相違する作品のテンションが楽しかった。両作ともに出演しているケイト・ベッキンセールの美しさも印象深い。 [映画館(字幕)] 5点(2004-09-10 17:57:32) |
1602. アンダーワールド(2003)
「マトリックス」の誕生以後、同作を真似たスタイリッシュな映像を売りにするアクション映画は量産され続けいる。今作においてもその例の範疇であり、「ヴァンパイアが暗躍する世界」というもはや若干新鮮味に欠けるジャンルも手伝って、“オリジナル性”という部分においては難があることは否めない。しかしながら、「パクリだろうが二番煎じだろうがお構いなし!」と開き直れるほどのクオリティをこの映画は備えている。何と言ってもその映像美が素晴らしい。タイトル通りに全編通して光の当たらない世界を描きながらも、闇に紛れることなく徹底的にスタイリッシュに展開される美しい映像世界に舌を巻く。その闇の美の中に、クールでドライな美貌を湛えたケイト・ベッキンセールの存在が映え、非常に質の高い映画世界へと昇華されている。クライマックスにかけてますます重要になってくる“人間の男”のキャラクター性が全編通すと弱すぎるという感は残るが、単純な勧善懲悪の構図では終わらないストーリーにも満足感は高い。続編も充分に期待が持てる。 8点(2004-09-10 00:46:54) |
1603. コール
ネタバレ なんだか観終わった後にじわじわと映画的な粗があふれ出てくる感じ…。被害者家族の強引な強さや、ケビン・ベーコンが完璧と豪語する誘拐計画の穴だらけ感など掘り起こせばきりが無くなってくるが、もっとも致命的なのは、やはり犯人達の心情描写のチグハグさと曖昧さだろう。おおよそそれらしいことは臭わすが、結局のところ犯人たちはどうしたかったのかが良く分からない。前半部分の犯人達の含みを持たした思惑には引き込まれたが、用意された結末はあまりにお粗末だ。クライマックスはナンセンスにアクション映画よろしくのカーアクションと対決…どさくさの中でセロンがベーコンを射殺してTHE END…。う~ん、そりゃないぜ…と落胆するしかない。俳優演出に定評のある監督のもとに芸達者な俳優たちが揃っただけに、個々の演技は良いが、サスペンス映画である以上この顛末では低評価は免れない。 3点(2004-09-06 00:26:50)(良:1票) |
1604. LOVERS
純真に純朴に清楚にそして魅惑的に二人の男を惑わすという女を演じられる女優は、今チャン・ツィイーをおいて他に見当たらない。「HERO」に引き続いて色彩豊かな美しすぎる映像世界は見事だが、今作において「美」という言葉は、チャン・ツィイーのためにある。彼女の眼差し、佇まい、台詞回しそのすべてが美しい。そしてその希有な女優に対する二人の男優も見事だ。彼女のまっすぐな眼差しに対し、同様に凛とした視線を返す。謀を描いた映画であり、登場人物たちは各々を偽るが、その瞳に真の偽りは見当たらない。大陸の壮大で美しい景色に映える力強い俳優達の精神に圧倒される。 [映画館(字幕)] 8点(2004-09-01 19:08:04) |
1605. フォーン・ブース
個人的見解であるが、良質なサスペンス映画であるほど、舞台となる空間は限定され、洗練される。この映画はまさにその良質なサスペンス映画である要因を十二分に備えた作品だったと思う。電話BOXを利用した都会の狭間に隠れる恐怖感は、実に新鮮で巧みであった。「ヤラレタ!」と思ったのは、時間軸をそのままに描き出される映画世界、所々で画面分割を多用するその手法は、まさに今大流行のテレビドラマ「24」ではないか。「ああ、なんだか似てるなあ~」なんて観ていたら、ラストに出てくるのはあの男……。まさにまどろむ様な後味の悪さとブラックなユーモアが漂うこのラストは、この映画の締めとしてふさわしい。 [DVD(字幕)] 8点(2004-08-27 01:04:41) |
1606. ドラゴンヘッド
「完成度」は低いのかもしれない。しかし重要なのは、何を持って「完成している」と言うかではないか。役者の演技やリアリティのない映像に低評価の要因が集中しているようだが、果たしてそうか?アイドル俳優達の誇張された演技は確かに不自然かもしれない。しかし、映画の持つ空気感として、あれほどまで崩壊し混沌とした世界の中に存在する人間の「自然さ」をぼくたちは本当に理解できるのか。そう言ってしまうとほとんど屁理屈だろうが、そういう観点、そして原作「ドラゴンヘッド」の雰囲気からしても彼らの演技がそれほどまでに不自然だとは思わなかった。加えてそれは映像についても言える。極限まで崩壊し続ける世界を、非現実的に美しく描き出したビジュアルには決して違和感は無い。映画における「完成」とは、あくまでもその映画世界の統一性にあると思う。その点でこの映画は優れていたし、もしこれに原作に忠実な「真意」が描かれていたとしたら、物凄い傑作になっていたと思う。 7点(2004-08-26 01:44:51) |
1607. 華氏911
この世界に生きる人間にとっての最大の恐怖は「無知」なんだと思う。 当たり前であるが、この世界は様々な人間の様々な感情や思惑に溢れているわけで、そのすべてを知り得るということは間違いなく不可能である。 しかしそれでも、知らなければならないことは物凄く沢山あり、そしてその一部は少数の明確な意思によって誤魔化されている。 そういう多くの事実を「知らない」で生きていくことは、非常に恐ろしい。 この映画自体、マイケル・ムーアという一人のアメリカ人の意思で作られている以上、これのみをもって単純に鵜呑みにすることは至極危険であろう。 それは製作者であるムーア自身がもっとも良く分かっていることであり、決して彼はこの映画の意思を大衆に押し付けようとはしていない。 しかし、事実による彼の明確な意思は理解できるし、ベースとなるこの現実を世界の人々は知らなければならない。 人間として「恐怖」におののくことは実に自然なことだ。 必要なのは、今自分を取り巻く恐怖の真意を知ることだ。 [DVD(字幕)] 9点(2004-08-23 18:01:35)(良:6票) |
1608. フランケンシュタインの逆襲(1957)
フランケンシュタインという世界でもっとも有名な怪物の魅力は、何といってもその苦悩だと思う。望まず、望まれず生まれた怪物の苦悩。その最大の要点を描くことができていない今作はまずその点で致命的な傷を負っている。ピーター・カッシング、クリストファー・リーそれぞれの演技は悪くはないが、それだけにもう少し深みのある脚本が欲しかったところであろう。 2点(2004-08-15 12:37:01) |
1609. アビス/完全版
ジャンルわけするなら、海洋SF映画というところか。その名にふさわしく、神秘と未知とエンターテイメント性に溢れた映画に仕上がっていたと思う。ストーリーのわりには淡々と展開された印象はあるが、後味は良かった。 7点(2004-08-13 00:35:48) |
1610. ドッグヴィル
なんという映画だろう。と、思う。この作品の核心を語る言葉など無いような気がする。ただただとめどない感情が心情を駆け回って抑えつけることができない。何が正しく、何が間違いか、何が愚かで、何が崇高なのか、そんな結論などは遠く彼方で彷徨っている。すべてが終わり、あまりにも大きな重圧に押し潰されそうになった時に残るのは、何とも言い難い疲労感と恥辱感、そして自らで認めざるを得ない屈折した爽快感だった。この映画には点数などあまり意味がない。あるとすればそれは0か10かだ。そしてそのどちらであっても本質に違いがあるとは思えない。ただぼくは10点をつけた、本当にそれはただそれだけのことだと思う。 10点(2004-08-11 17:54:15) |
1611. サンダーバード(2004)
面白かったと思う。オリジナルを見たことはないので、それに対する今作の出来栄えをどうこう言うことはできないけど、細かいことは差し引いたとして、その娯楽精神自体は守られたのではないかと思う。まあ言葉であれこれと言うわけではなく、ぼくは根本的にこういう映画は好きだ。活躍→ピンチ→活躍、このありふれた構図に見事に実写化されたサンダーバードが空を駆ける。これが爽快でなくて何なのだ。 [映画館(字幕)] 7点(2004-08-09 23:54:46) |
1612. ファム・ファタール(2002)
ネタバレ 昔、某テレビ系列で「if~」というドラマがあった。岩井俊二の「打ち上げ花火~」がこのドラマから誕生したのは有名な話だが、今作はまさにその超スペシャル海外版と言えるような映画だった。同監督作品「スネーク・アイズ」の時のような訳の分からない難易さに悩まされるのは嫌だったので、相当力を入れて観た分、ストーリーにそれほどの難しさを感じることはなく意外にスッキリと観終わることができたことは、むしろ満足感につながったと思う。今作の場合、ストーリーというよりもその映像世界にある意味惑わされることは必至だ。格調高く洗練された映像美もさることながら、何といっても主演女優レベッカ・ローミン・ステイモスの魅惑。その存在そのものが劇中夢である。 [DVD(字幕)] 7点(2004-08-09 13:28:10) |
1613. ルパン三世 念力珍作戦
「くっだらない」正直その一言に尽きる。くだらなさすぎてある意味拍手を送りたくなる。まともに見れるものでは当然ないけど、これほどまでくだらなさを突き詰めれば、それはそれで完成していると思う。ストーリーも演出もぐだぐだだけれど、そのテンションは一貫して統一されているので、ハマればもしかすると相当面白い映画になるかもかも。 3点(2004-08-08 22:03:44) |
1614. 10億分の1の男
「運」というまさに形のないものを表面に押し出した試みは非常に面白い。常識を逸脱したバイオレンス的な構図をベースに、同じように形のない「愛」を語るようにこの題材を展開させていくストーリーの雰囲気もヨーロッパ的で良かったと思う。ただやはり、ストーリー展開の愚鈍さに少々飽きがくることは否めない。中盤の展開をもっと小気味良くインパクトを高めることが出来ていれば、格別に良い映画に仕上がっていたと思う。映像の色合い、俳優の演技等、作品の雰囲気は目を見張るものがあっただけに、それだけが殊更に残念なところだ。 6点(2004-08-04 19:04:33) |
1615. パンチドランク・ラブ
なんて奇妙なラブストーリーなんだろうと思う。純粋とは程遠いこの愛の物語に、いかにもラブストーリーらしい愛らしさを感じるのは、徹底的に不器用で暴力的な主人公の愛らしさ故であろう。ニュアンスは大いに違うだろうが、愛とは我を押し通すことだということを感じずにはいられない。もちろん主人公の性格から行動まですべてが褒められるものではないし、誰も真似できないことだけれど、それによって愛する二人が幸せなら何も言うことはないのではないか。何というか、そういう奇妙な説得力にぐいぐいと引き込まれる。 7点(2004-08-04 13:10:14) |
1616. レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
ネタバレ 大金をつぎ込んだだけあって、前作よりもパワーアップした特異なアクションシーンには及第点をつけられるが、シンプルさを押し通せなかったストーリーには難色を示さずにはいられない。曲者通しの騙し合いという構図自体は分かるが、その基本構図がまったくキャストを生かしきれない足枷となったと思う。存在自体には流石のアクの強さを見せたジョニデはキャラ設定が中途半端で、結局彼の目的は何だったのだろうと呆気にとられる。悪キャラとして名を連ねたウィレム・デフォー&ミッキー・ロークも彼らの持ち味を出せずじまいでアッケなく殺されてしまう。そもそも主人公のバンデラスは、一人込み入った(?)ストーリーに対して蚊帳の外である。ビッグマネーが使えたからこそ揃えられたキャスティングであろうが、その重圧がロドリゲス節を抑えつけてしまったらしい。非常に残念だ。唯一の救いは、相変わらずにドギツイ悪役面を見せつけてくれるダニー・トレホの存在か。 [DVD(字幕)] 3点(2004-08-03 18:19:08) |
1617. 1980(イチキューハチマル)
ピンボケ、自我の崩壊……。その時代のそれは必ずしも悲劇ではない。時代から時代の流れの中で生じた愛すべきエネルギーだ。誰もがなんだか分からないけど、憂鬱でアンニュイ。ほんの少しのことで人生の道を踏み外しそうになる。そんななんだか危険な雰囲気をもつ時代。1980年という時代にそういう印象をもった。主人公の三姉妹を演じたともさかりえ、犬山犬子の脱線した演技は良かった。でも何よりも蒼井優の全身から醸し出された鬱積した感情に包み込まれる。 9点(2004-08-03 09:08:32) |
1618. 緋牡丹博徒 二代目襲名
藤純子演じる緋牡丹のお龍の任侠劇を描いた人気作第4弾。4作目になり、さすがにストーリーの鈍さは隠せないが、相変わらずのお龍節には惚れ惚れさせられる。3回目となる高倉健との絡みも手伝って独特の任侠アクション&ドラマに熱くなる。それにしても、ズッコケ役の長門裕之がサザンの桑田圭祐に見えて仕方なかった。 [DVD(邦画)] 6点(2004-08-01 17:48:37) |
1619. ボウリング・フォー・コロンバイン
飛び交う情報の中で、もはやぼくたちはどれを信用するべきか分からない。それが今現在の全世界中での混沌に直結すると思う。アメリカを愛し、アメリカを憎み、アメリカを軽蔑し、アメリカが大好きなこのひとりのアメリカ人が作り出したドキュメンタリーは、核心であると同時にそれすらもただひとつの「意見」に過ぎないのかもしれない。だから、この映画を観たことのみで「反銃社会!」、「反アメリカ!」と言うことは非常に安易で愚かであるし、作り手も決してそんなことを望んでいるわけではないと思う。必要なのは、ただ単に「まず知ること」だ。外国でどんなにショッキングな事件が起きても、所詮多くの人たちにとっては日々のニュースの一片にすぎない。もちろんその一つ一つを己の身をもって感じろというのは無理なことだ。しかし、もう少しぼくたちは、自分たちのまわりを覆い尽くしている混沌を見つめるべきではないか。そのためのひとつの術として、このドキュメンタリー映画は非常に有意義に存在すると思う。 [DVD(字幕)] 8点(2004-07-31 08:14:55)(良:1票) |
1620. 69 sixty nine
底抜けな明るさ、底抜けな情けなさ、そして底抜けなエネルギー。ある種想像のつかない何か。これこそ青春というものだと思う。僕は1969年には生きていないが、主人公たちが持つ精神は時代など関係なく「その時」を生きるすべての若者が持つべき本能だ。体制への反発・闘争、そんなものは、行動するためのただ一片の理由の装飾に過ぎない。「退屈だから」「楽しいから」「カワイイあの子に好かれたいから」それらこそ、揺るぎない本当の理由であり、よっぽど説得力がある。とにもかくにも、自分の欲望のために力の限り突っ走るそんな彼らの姿に笑いと興奮が止まらない。 9点(2004-07-19 23:13:54)(良:2票) |