1681. 雁の寺
《ネタバレ》 初期設定はインパクトが絶大であり、とりわけ、若僧のあの眼光と硬化した表情、そして何物も近づくなオーラが、最初から完成しています。逆に三島雅夫の俗人ぶりには、そのまんますぎて笑いが出てきます。が、その後が今ひとつ話が発展しない。同じようなやりとりがネチネチじめじめと続くだけですし、若尾文子の主人公にも変化や心情が見えません。よって、本来ならインパクトを発生させるはずのラストも、着地寸前でねじ曲げただけ、みたいに見えてしまいました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-06-30 00:46:11) |
1682. 柔らかい肌
《ネタバレ》 前半は今ひとつ地道で平坦で、登場人物が都合良く動いているだけのようにも見えるのだが、後半に至って、不倫からのすべての破綻が徐々にせり上がってくる。電話したらいなかった件で、一気に振り切れると見せかけておいて、そこからも行ったり来たりの逡巡があるのがよい。最後のところ、「公衆電話の順番待ち」というシンプルな因子だけで前後をあそこまで引っ張るシャープさ。スリルと怖さをもたらすために、持って回ったテクニックはいらないのです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-06-08 00:17:50) |
1683. ガーダ パレスチナの詩
《ネタバレ》 パレスチナの紛争状況を追ったドキュメンタリーなのですが、焦点は現地の女性ガーダに合わせられています。前半、ガーダの結婚から出産、そして子の成長となるに至って、これなら世界各地どこにも似たような風景はあるのでは、と思い出した頃に、周辺の銃撃が鳴り響く光景へと転換していきます。そして、何人かの人物に次の焦点が当たっていくのですが、この辺では、話を聞いているのが監督なのか、ガーダなのかが不明なのが弱点です。全体としては、紛争そのものを解説しているわけではないので、知識を得ようとするには不向きですが、普段あまり見る機会がない現地の生活風景が存分に見られるのは貴重です。 [DVD(字幕)] 5点(2023-05-30 00:44:00) |
1684. トリコロール/白の愛
《ネタバレ》 ジュリー・デルピーが主演と勝手に思い込んでいたので、途中からさっぱり出番がなくて、あれれ?となってしまいました・・・。ただそれはそれとしても、国外脱出にしても、謎の男とのあれこれにしても、土地取引をめぐるどうこうにしても、かなりの危機が発生するものと思いきや、何となく上手くいってしまうのがいい。フランス作品ならではのしんみりとした可笑しさと、そしてペーソスがあります。そう考えると、トリッキーな「作戦」の方がかえって浮いている気がしますが、最後のジュリーの微笑は聖女の雰囲気すら感じさせ、それで丸め込まれるように着地している不思議。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-16 00:44:17) |
1685. 女は二度決断する
《ネタバレ》 前半は、主人公がクスリはやるわ周囲とは喧嘩するわという、何だかろくでもない存在であるのがいい。そうだからこそ、その被害回復を追求するという正義が表されている。一方、後半は、えらく力は入ってるんだけど、それによってかえって問題が訴訟の行方という一点に収斂されてしまって、いろんなアヤは消されてしまっていると思う。●ところで、この法廷で一番問題だったのは、あれだけ証拠がありながら有罪判決が取れなかった検察官であるような気がするのですが・・・。だから、その後の第3部シークエンスは、いろいろ演出上の工夫をしているにもかかわらず、根本のところで説得力を失っています。 [DVD(字幕)] 5点(2023-05-11 01:47:11) |
1686. オズランド 笑顔の魔法おしえます。
《ネタバレ》 この安直で説明的なタイトルの時点で、すでに期待が下がっていて、凡庸な導入部でさらに期待が下がったのですが、そこから後は意外にもちゃんとした内容でした。中盤の盛り上がりの部分で、たった1人の迷子の対応のために全員が全力を尽くすのがいい。変に凝った課題なんかがなくても、こういうありがちな問題に対する一点集中こそが、チームワークとスキルを感じさせるのです。役者陣もなかなかの好演で、特に橋本愛ちゃんが場を引き締めるいい働きをしていますね。随所で「とりあえず笑顔でハッピーにまとめる」という制作思考がありありなのは、作品の深みを奪っている気もしなくもないですが、許容範囲内ではありました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-05-09 00:36:59) |
1687. 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
《ネタバレ》 姉のわがままぶりと自己中ぶりが際立つ格好になっているが、実はそれ以外の3人も、人格の上では強力な欠点を有している。そしてそれがピンポイントで明確に定まっている。そしてそれを表現する演出の腕は妙に優れており、また役者も生き生きした自然な演技を展開しているため、見ていて実に腹が立つ(笑)。俳優のMVPは佐津川愛美ちゃんですよねー、一番若いのに、周りの人物の存在をきっちり受け切る「扇の要の演技」をしています。●でもやっぱり、最後は妹が立ち去ったところで幕閉めにすべきで、そこから後はすべて蛇足でしょ。何というか、お蔵入りになった別エンディングを無理矢理見せられた気分です。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-05-01 02:32:51) |
1688. ポネット
《ネタバレ》 カメラはひたすら母を亡くした少女を追い続ける。最後までほとんどそのまんま。しかし、主演のヴィクトワールちゃんの類い希なる存在感によってなぜか品質を維持しているという、何ともラッキーな作品。カメラ負けしていないというだけではなくて、そこそこの長回しにもきちんと耐えていますからね。ただそうだとすると、大人(制作側)がそこまで一人の少女によりかかって作ってしまってどうする、と言いたくもなりますが。ただし、いざ母親を出すときに、変な小細工をせず、他の登場人物と同じようにそのまま自然に出しているというセンスは良い。そして主演の彼女は、後に「ショコラ」でジュリエット・ビノシュと一緒に帰ってきました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-25 23:14:02) |
1689. 眠狂四郎 女地獄
《ネタバレ》 ドロドロに怪しかった前作からさらに一転、今度は意表を突いて正統派時代劇っぽい風味です。とある藩内の家老同士の権力抗争があって、そこに謎の浪人どもが絡んできます。ここでは、田村高廣の素浪人のはまりっぷりが新鮮ですね。剣の腕も極上で、途中、「俺は後ろの敵を斬る余裕はなかった」みたいな、狂四郎が負けを認める(?)台詞がありますが、これはこのシリーズでは珍しいかも。一方でこのシリーズ定番のハニートラップ作戦も健在ですが、さすがにここまで何人も出てくると、やり過ぎではないでしょうか。とりあえず進行が途切れたら、場面をつなぐために入れているというように見えなくもありません。というか、途中で一体何人目なのか分からなくなってきたぞ。あと、なぜか途中からわざわざ女性お着物になって正体をばらしている高田美和のお姫様ですが、貴重な男装の浪人ルックはもうちょっと見たいところでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-04-08 00:58:39) |
1690. ビューティフル・ボーイ(2018)
《ネタバレ》 志は高い作品だとは思いますが、全然深められていません。何よりも、麻薬中毒のはずの息子は、話が進んでも、お肌はピチピチ、髪はツヤツヤ、目には光があって、会話もまともに成立している。その上で、どこからクスリが始まり、そして深まっていったのかも分かりませんし、それが生活をどう(制御不可なレベルまで)蝕んでいったのかも分からない。つまり、中毒ではなく、単に趣味でクスリをやっているようにしか見えないのです。この作品は父親と息子の双方の手記を元に作られたということなのですが、手記だけを元に作ったのでは?と思ってしまいます。●ただしただし、終盤、母が息子を追う場面で炸裂するのは、アメリカン・プログレの伝説パブロフス・ドッグの"Of Once And Future Kings"!!これにはびっくり!いや、ドッグの曲が映画で使われるのって、絶対にこれまでほかにはないですよね?思わず背筋が伸びてしまいました。ここだけは10点つけたいです。 [DVD(字幕)] 5点(2023-03-28 01:17:02) |
1691. 砦のガンベルト
《ネタバレ》 タイトルに砦とあるからには砦をめぐる攻防と思いきや、確かにそうなんだけど、描写の推定9割以上は、それほど広くもない砦の中という、何とも閉塞した作品。しかも、ぶらりと偶然入ってきた主人公から見れば、中にいる防御隊のことごとくがろくでもなく、助太刀してやりたいという気も今ひとつ起きないという、ひねくれた作品。しかもそこで、敵の設定は徹頭徹尾最強、こちらはひたすら耐え抜いてガードするしかないという、さらにウエスタンらしからぬ内容です。しかしそれはそれで一貫しており、一本の筋は保たれています。ヒロインとのやりとりは、もう少し欲しかった気もしますけどね。あと、ただ制服を着て立っているだけでも妙な存在感を発散しているボーグナイン親父の迫力は、やはり偉大。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-03-13 01:41:17) |
1692. 眠狂四郎 魔性剣
《ネタバレ》 今回のテーマは、多分、「狂四郎の死神っぷり」。冒頭、いかにもな出会いがあって何か運命を感じさせるも、その女は容赦なく退場。その後も、キーパーソンになりそうな人が、登場した先から次々に退場。おりんが捨て台詞っぽく「アンタに関わった人はみんな不幸になる」みたいなことを言いますが、それが皮肉でも虚勢でもなく、ストレートにそのまんま合っている、というのがたまりません。そのひねくれぶりというか陰湿ぶりは悪くないのですが、それでもちゃっちゃか進みすぎかなあ。全体の尺があと20分くらいはあってもよかったんじゃない?とは思いましたが、もし本当にそうしていたら、すでに指摘されている、簀巻き蛇使い作戦とか、シスターハニートラップ作戦とか、印籠ひったくり壮大伏線作戦などのトンデモ作戦の数々が、シャレにならない破綻を導いてしまってたかも。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-03-09 00:17:38) |
1693. ねこタクシー
《ネタバレ》 猫をタクシーに乗せたら、お客さんの評判も良くて、内気な主人公も外向きになって、会社も儲かってめでたしめでたし、みたいな安直な内容になるのを危惧していたのですが、そうはなっていませんでした。序盤でうまくいくと見せかけておいて、強烈な法律の壁を当てて全部シャットアウトという展開が優れています。また、猫全体をどうこうではなく、あくまでも御子神様にフォーカスしているのが、安定性を確保しています。最後を(日本映画にありがちな)愁嘆場にせず、ナレーションの一言と木の葉の揺れだけで表現しているのも良い。●と、長所はいろいろ見つかるのですが、結局、登場人物のそれぞれがやっぱり類型的で、全体としては定番の枠を脱し切れていないのですよね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-02-26 00:54:51) |
1694. 美しき棘
《ネタバレ》 両親と姉不在のちょっとひねくれた感じの女の子が、夜ふらふら出て行ったり、よく分からないバイクの集会に参加したり、友人(親戚?)の女の子とあれこれあったり、そしてまた家に戻ってきたりという行動を追いかけた作品。こういう設定だと、単にその光景を撮りましたという自己満足に陥りがちなのですが、案外楽しめました。それはやはり、主演のレア・セドゥの着実な存在感がもたらしているのではないかと思います。特に何かの演技をしなくても、カメラの中で自然に生きているというか。 [DVD(字幕)] 5点(2023-02-22 00:49:09) |
1695. 眠狂四郎 円月斬り
《ネタバレ》 短時間の割にいろんな登場人物を配置しているのは頑張った形跡が窺えますが、やっぱり整理しきれてないかな・・・。みんなの動きがやたら慌ただしくて、結局、誰が何をしたかったのかがよく分からない。まあ、狂四郎は常に安定の強さなので(例え牢に入れられても)、それを見ているだけで楽しめはしますが。しかし、名刀を手にした狂四郎が何をするかといえば、特に必要性もなく女の着物を切って脱がせるだなどとは、そういうアホさがさらっと紛れ込んでいるというのも、なかなか奥が深いのかも。いや違うか。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-02-19 00:55:22) |
1696. ナイト・オン・ザ・プラネット
《ネタバレ》 コンセプトはなかなか魅力的なんですけど、肝心の会話の中身があまり面白くないのですよね。いろんなパターンの登場人物を世界各地で取りそろえて、そこで終わってしまったというか、形ありきで作ってしまったというか。例えばわーわー怒鳴るロージー・ペレスにしても、すぐ突っかかるベアトリス・ダルにしても、人の話を聞いてないヘルシンキの酔っ払いにしても、何か一つ一つが作為的なのです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-31 01:41:37) |
1697. ピアース・ブロスナン サルベーション
《ネタバレ》 この何ともB級な設定に、この豪華なキャスティングは・・・と思いながら見始めたのですが、はたして、それぞれの個性発揮の演技を鑑賞するだけで十分楽しめます。ブロスナンの胡散臭い牧師なんかはもうそのまんまですし、グレッグ・キニアの小心者キャラもまさしくこの人ならでは。その上でコネリーとかエド・ハリスとかマリサ・トメイまで重なってくるのですから、楽しすぎです。ですが、終盤、話が一気に収束方向に向かってからは、何もなかったようにあっさり幕が引かれてしまいました。上に挙げた後の3人なんかも、あれなら後でピンポイント見せ場があると誰もが期待するのに、ほとんど存在としてなかったこと扱いです。コネリーの娘や父なんかも含めて、周到に設定した各人物を処理しきれないまま終わったという感じです。 [DVD(字幕)] 5点(2023-01-22 00:08:25) |
1698. 続・組織暴力
《ネタバレ》 主人公は一応丹波哲郎っぽいのですが、どう見ても主人公は渡辺文雄です。丹波さんの刑事は、前作以上に何もしておらず(笑)、事態の進展にあたふたしているだけです。一方で、大物悪での脇役出演が多い渡辺さんが、このように出ずっぱりで、しかも現場からのし上がる一代記風なのは、かなり貴重かも。それ以外にも、刑事役の山本麟一(!)とか、賭場の胴元ならぬ洋風カジノのディーラーの待田京介兄さんとか、ただ脅されるだけの一般人の金子信雄とか、拷問されてひどい目に遭う露口茂とか、珍しい光景は割と多い。しかしそんな中でも一番格好良いのは、立ち位置によって当たる光が変わる難しい役ながら堅実な演技が光る、やっぱり内田良平先生。 [DVD(邦画)] 5点(2023-01-07 00:20:55) |
1699. 組織暴力(1967)
《ネタバレ》 暴力団に対抗する警察側が主役で、しかも主演が丹波哲郎!脇に控えるは井川比佐志!と室田日出男!ですよ。むしろこっちの方がヤクザやん、とワクワクして突っ込みながら見始めたのですが、何かあまり丹波さんが活躍しない。むしろ、事件の発生に伴ってうろうろしているだけ。また、千葉ちゃんの役も、ただ敵討ちだ敵討ちだと騒いでいるだけで、それを超える魅力を感じさせません。そんなわけで、盛り上がりそうで盛り上がらずに終わってしまい、特に最後の方はグダグダでした。中盤の病院前対決のあたりとか、その場面設定だけで十分シュールなのですから、もっと引っ張れなかったのかな、と思ってしまいます。キャラとして良かったのは、どこで何をやっていても安定の内田良平先生と、組の親分というのは超貴重かもしれない松村達雄くらいでしょうか。 [DVD(邦画)] 5点(2023-01-05 02:27:46) |
1700. ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出
《ネタバレ》 ローマの休日のコンパクト版、といった趣なのですが、画面は少々テレビ的で安っぽいとはいえ、やたら投入されているエキストラなど、それなりのこだわりも見せています。王女である姉と妹、そして警備の2人があれこれ動き回るのですが、若干目まぐるしいながらも、丁寧さを感じさせる作り方には好感です。ただ、結局は、初期設定から想像できる範囲は逸れていないのですけどね。あと、姉役の凜とした美貌は光っていましたが、妹の方がどう見てもどんくさそうなのが・・・特に朝のシーンになって光が当たっているときなど、ものすごく気になりました。あと、実はいい人だったあの娼館主のおじさん、結局部屋に閉じ込められたままだったのでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-31 22:59:49) |