161. ゴーストバスターズ/アフターライフ
ネタバレ あのゴーストバスターズが帰ってきた!1980年代に大ヒットを飛ばしたエンタメ・コメディの約30年ぶりとなる続編(と思ったら2、3年前にも続編が制作されてたみたいですけど、そちらは未見)。しかも監督は、初代監督のアイバン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマン。親父の映画の続編を作るってどういう気持ちなんでしょうね。とは言え、軽いタッチのコメディ映画で一世を風靡した親父と違い、息子はデビュー以来一貫してヒューマン・ドラマでならした監督さん。確かに悪くはないんですけど、肝心の幽霊退治のシーンよりもなんだか人間ドラマの方が分厚くなり過ぎな印象を受けてしまいました。金銭的にも精神的にも追い詰められて田舎のボロ屋へと越してきたシングルマザー、それでも前向きに頑張ろうとする2人の子供たち、彼らと偶然出会う人付き合いの苦手な中学教師……。もうこれだけで別のお話になりそうな(笑)。しかもそこに現在落ちぶれてしまったバスターズたちの過去の仲違いや主人公の母親と祖父との確執なんかも絡んできて、けっこう深刻。この主人公たちの幾分か重いドラマと軽いノリのアクションシーンが巧く噛み合っておらず、全体的に纏まりに欠けているような感想を抱いてしまう。ゴーストバスターズはもっと軽~いノリで楽しみたかったです。全体的な完成度は高いとは思うんですけど、自分が求めていたものとはちょっと違う内容でございました。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-10 09:39:52) |
162. バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ
ネタバレ ハリウッドで過去に何度も映画化された超有名ゲームを今回キャストを一新して新たに制作したエンタメ・ホラー。監督は、『海底47m』や『ストレンジャー/地獄からの訪問者』でスマッシュヒットを飛ばしたエンタメ映画界の俊英、ヨハネス・ロバーツ。当方、若いころに初代プレステで1と2を散々やりまくったドンピシャ世代。とにかく1を最初にプレイした時の衝撃は今でも憶えています。それまでスーパーファミコンの2D横スクロールやマップをカクカク移動するRPGしかやったことのない自分にとっては、「もはやこれって映画じゃん!すっげーー!ゲームはここまで進化したのか…」と夢中になってプレイしました。そんな自分にとっては、シリーズを大いにリスペクトした名シーンの数々にテンション上がりまくり!特に最初に出会うゾンビが血だらけの顔でこちらに振り返るシーンには拍手しそうになっちゃいましたわ。なっつかしーー!ただ、お話としてはごく普通。決して悪くはないんだけど、なんだろう、この最後まで付きまとう物足りない感。いまいち印象に残るキャラやエピソードもなく上記ゲームを再現したシーン以外に特に心に残る映像もなく、全体的にこじんまりと纏まっちゃった感が強いです。普通に面白かったんですけど、一週間後には全部忘れちゃいそうな内容でした。これに比べると、ミラ・ジョボビッチ主演、ポール・W・S・アンダーソンが監督した初代映画化作品の方が物語としてはだいぶ大味だったものの、印象に残り度で言えばあちらの方が上なんですよね~。ここらへん、映画って何が正解なのか分からなくなっちゃいますね。とはいえ、暇潰しで観る分にはそこそこ楽しめると思います! [DVD(字幕)] 6点(2023-04-10 09:04:21) |
163. バッド・トレジャー
ネタバレ 生まれながらのサイコパスにして一度暴走すると止まらない元米軍特殊部隊、D。長年彼を治療してきた精神科医の尽力により、何とかまともな生活を送れるまでに改善した彼は、投薬治療を続けながら街の片隅でひっそりと暮らしている。そんなある日、長年疎遠になっていた弟がワシントン郊外の小さな島で事故死したとの知らせが届く。葬儀に参列するためすぐさま島へと渡ったD。だが、母親をはじめとする彼の家族は、過去の悲惨な出来事からあからさまな拒否反応を示すのだった。葬儀も終わり、まるで追い出されるように島を後にしようとするDだったが、急に謎の武装集団が島へと乗り込んでくる。彼らの目的は、第二次大戦中に旧日本軍が隠したという金塊を強奪することだった――。死んだ弟が長年そんな財宝のありかを探るために人生をかけていたと知ったDは、主治医に電話を掛け、昔の自分に戻って暴力を解放していいかと聞くのだが……。キレたら何をするか分からないサイコパス元特殊部隊員とイカレタ犯罪者集団の旧日本軍の財宝を巡るバトルをノンストップで描いたエンタメアクション。とにかくつまんなかったですね、これ。お話のテンポも悪ければ、主人公をはじめとする全キャラクターがまったくもって魅力なし、アクションシーンのキレも悪いし、終始画面が小汚くて見辛いことこの上なし。と、ダメな映画の見本市というくらい全ての面に於いてつまんなかったです。精神科医役でメル・ギブソンが出てるということでてっきり彼が悪役か何かで大暴れしてくれるんだろうと思ったら、まさかの自分の部屋で酒飲みながら主人公と電話するだけ……。こんなん詐欺や(笑)。観るだけ時間の無駄の凡作でありました。 [DVD(字幕)] 3点(2023-04-05 09:39:30) |
164. アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド
ネタバレ 古代の象形文字を専門とする言語学者、アルマ・フェルザー。ベルリンの博物館で寝る間も惜しんで働いていた彼女はある日、上司からとある提案を受ける。それは研究資金を調達するため、ある民間企業が実施する極秘プロジェクトにモニターとして参加してほしいというものだった。気乗りはしないものの資金調達のため、その企業が主催するディナーパーティーに参加したアルマ。すると彼女の前に、非の打ちどころのない完璧な容姿を持つ男性トムが現れる。初対面にも関わらず、トムはアルマに酒を勧めると、甘い言葉を囁きながら積極的に口説き始めるのだった。彼の正体は、最新の高性能AIを搭載した恋愛型アンドロイド。そう、トムは全ての女性の理想の男性像を基に造られた、〝完璧な彼氏〟だったのだ――。3週間という約束で、トムとともに共同生活を始めたアルマ。最初は余りにも人間離れした言動を繰り返す彼に戸惑いを隠せない彼女だったが、仕事で重大なミスが発覚ししかも離婚した元夫の再婚という事実も重なって大きなストレスを抱え込んだアルマは、次第にトムに心を許してゆく……。昔からホントよくあるお話で、演出だって極めてオーソドックスなのに、何だろう、普通に面白かったです、これ。とにかく品が良くておしゃれ!ヒマさえあれば女性に甘い言葉を囁いて口説き始めるアンドロイドという、人によっちゃ見るに耐えなくなりそうなこのキャラクターが実にいい味出してる。バラの浮かんだ泡だらけのお風呂にワインをくゆらせながら浸かるオールバックのハンサムさん……、普通にしたら寒さマックスになりそうなこのシーンがちゃんと成立しているんだから凄い(笑)。最初は反発していた主人公が次第に彼に心惹かれてゆく描写も丁寧でちゃんと説得力が感じられるのも大変グッド。悪酔いして自暴自棄になった主人公がトムに「もう何でもいいから私を抱いてよ!」と詰め寄ったのに、彼が「ムードもタイミングも今じゃない、おやすみ」と部屋を出てゆくシーン。「もっと自分を大事にしなよ」ってことですか。さすが高性能AI、女心をよくわかってらっしゃる(笑)。ここらへん、女性監督ならではの視点が冴えてますね。最後、モニター期間を終えて施設へと帰ってゆくトムをアルマが窓から見送るシーンなんてなんとも切なく、もはや彼がアンドロイドであることも忘れて「アルマ、今すぐ家を出て彼を追っかけろよ!」と心の中で叫んじゃったし。愛に傷ついた中年女性の心の機微を繊細に描いたラブストーリー。自分もこーゆー「完璧な彼女」が欲しいと思っちゃいました。誰か作ってーー。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-05 08:31:28)(良:1票) |
165. アンビュランス(2022)
ネタバレ 白昼堂々銀行へと押し入った強盗集団が逃走手段として選んだ車両。それは、今まさに患者を乗せたばかりの救急車だった――。しかもその患者は瀕死の重傷を負った警察官で、彼を救うために全力を尽くしていた救急隊員も乗り合わせていた。これでは警察もFBIも迂闊に手を出せない。危険な暴走特急と化した救急車は、さまざまなものを破壊しながら白昼の街を疾走してゆく……。監督は、ハリウッドの破壊王マイケル・ベイ。ここ最近のこの人の映画って自分はまったく面白いと思ったことはないので正直観る気はなかったのですが、僕のお気に入りのジェイク・ギレンホールが出ているということで今回鑑賞してみました。結果は……、ちっとも面白くなかったです。とにかく演出がテキトー過ぎ!難病に苦しむ息子の為に金策に奔走する主人公、そんな彼を銀行強盗へと誘う頭のイカレタ凶悪な犯罪者、日々の激務に追われやりがいを失くしかけてる救急隊員、意中の銀行員をデートに誘うためたまたま居合わせた新人警察官――。こんなにも美味しくなりそうな食材が揃っていながら、ここまで美味しくない料理を作れるマイケル・ベイってある意味凄いんじゃないかしら。例えるなら、キャビアとかタラバガニとか松坂牛とかを水を張った鍋にぶっ込んでただ1時間煮ただけの料理を食べさせられた気分。いくら脳筋でならした監督とは言え、さすがにこれはひどすぎる!お金をアホほど掛けたであろうアクションシーンも、誰が何のために何処で何をしているのかがさっぱり頭に入ってこず、ちっともハラハラしなかったです。無駄にグロい描写も相俟って、最後の方なんて「もういいから早く終わってくんねーかな」ともはや惰性で観てました。好きな人には申し訳ないですが、自分は「観るだけ時間の無駄のちょーつまんない映画!!」としか思えませんでした。すんません!! [DVD(字幕)] 4点(2023-04-05 07:48:11) |
166. ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
ネタバレ このクオリティで「触手系」を作ってほしいとおもいました。 [DVD(字幕)] 5点(2023-03-27 12:02:43) |
167. ハウス・オブ・グッチ
ネタバレ 世界的な高級ブランド、「GUCCI(グッチ)」。その創業者であるグッチ一族の内紛とその過程の中で起きた3代目社長マウリツィオ暗殺事件を赤裸々に描いたサスペンス・ドラマ。主役であるマウリツィオを演じたのは若手実力派俳優アダム・ドライバー、彼の妻役には最近俳優業にも進出し始めた世界的アーティスト、レディー・ガガ。他にもアル・パチーノやジェレミー・アイアンズ、ジャレット・レトといった超豪華な面々が脇を固めております。監督は名匠の名をほしいままにする、リドリー・スコット。長いキャリアに裏打ちされたであろう、この監督のもはや匠の技と言ってもいい演出の冴えはやはり抜群の安定感。ただ事実を時系列順に追っただけなのに、最後まで淡々と見せ切ったところは称賛に値すると思います。登場人物も多岐にわたり、分かりにくい株取引の世界もちゃんと素人にも理解できるように整理して描いているところも好感持てます。何より、アル・パチーノをはじめとする役者陣の華のある演技合戦!新旧実力派が織り成す、まるでシェイクスピアの舞台劇を観ているかのような重厚なやり取りは見応え充分でした。ただ、内容の方は……、いたって普通。リドリー・スコットって良くも悪くも職人気質なのよね。どの作品もある一定のクオリティは保証されてるんだけど、どれも魂を震わせるような深いものはありません。「グッチという世界的ブランドにこんなことがあったんだ、凄いなぁ」とは思うものの、もう一度観たい、映画として手元に残しておきたいと思うほどの名作ではない。それが自分の正直な感想です。 [DVD(字幕)] 6点(2023-03-22 08:53:54) |
168. アダムス・ファミリー(2019)
ネタバレ アメリカで古くから親しまれてきたホラーコメディ漫画『アダムス・ファミリー』を豪華声優陣を揃えて映像化したフルCGアニメ。いまだ根強い人気を誇るだけあって独特の世界観と個性豊かなキャラクターはすこぶる魅力的。おどろどろしい雰囲気なのにどこかコミカルなのもこの作品ならではで、ティム・バートン好きな自分としてはけっこうツボでした。今回悪役として登場した、髪の毛盛り過ぎセレブおばさんも負けず劣らずキャラ立ちしているのも良かったです。ただ、さすがにお話が空気すぎる!余りにも中身がなさ過ぎて心に残るものが何もないまま、さらさらっと終わっちゃいました。このオーソドックスでベタベタな物語の中に、もう少しぴりりとした隠し味が欲しかったかな。この監督の前作が『ソーセージ・パーティー』という毒の塊のようなアニメだったので、その10分の1でも盛り込んで欲しかったところ。ここらへん、ティム・バートンはやはり偉大だなぁと再確認しちゃいました。結論。可もなく不可もなくなごく普通の家族向けアニメ。でも、声優陣も豪華だし、アニメとしてもちゃんとクオリティは高いし、暇つぶしで観るぶんには充分楽しめると思います!! [DVD(字幕)] 6点(2023-03-22 08:04:28) |
169. TUBE チューブ 死の脱出(2020)
ネタバレ 理由も分からぬまま狭いチューブに閉じ込められたある女性の決死の脱出劇をノンストップで描いたソリッドシチュエーションスリラー。主人公となる女性が放置されるのは、ほとんど棺桶ぐらいの広さしかない狭い空間。そこはカラフルなネオンによって無機質に照らされ、同じような空間がどこまでも続いている。しかもそこには様々な罠が仕掛けられ、腕に取り付けられたタイムカウンターがゼロになるまでに脱出しないと死にます。とまあ一言で言うと『キューブ』の狭い版ですね。本家と全く違うのは、とにかくセンスが悪い!主人公の着ているコスチュームもダサいし、舞台となるチューブ内の映像も凡庸。なんですか、あのチューブを照らす変なネオンは。また各チューブに仕掛けられた罠もまるで小学生が考えたようなベタなものばかりで、さっぱり盛り上がらない。急に参戦してくるゾンビまがいのモンスターなんて何の意味があったのやら。途中で主人公の過去を巡る幻想的なシーンを差し挟んでくるのも違和感しか感じません。また演出のキレもすこぶる悪い。ずっと画が変わらないのに、主人公がひたすらグダグダやってるから途中の中だるみ感が半端ありません。最後のオチも投げっぱなしの酷い代物。これなら本家『キューブ』のように、最後までこのチューブ内だけで物語を完結させてしまった方が良かったんじゃない?まぁとにかくセンスのなさとキレの悪さが際立つ作品でありました。こういった設定勝負のB級映画に最も必要なものなのにね。 [DVD(字幕)] 4点(2023-03-13 05:14:27) |
170. シラノ
ネタバレ 19世紀に初演されたフランスの名作戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を元に、自らの外見にコンプレックスを持つある一人の剣士の長年にわたる片思いを美麗に描いたミュージカル。監督は、現代的な解釈で古典的名作を幾つも蘇らせてきた名匠、ジョー・ライト。このお話って確か、主人公は鼻が物凄く大きいことにコンプレックスを持っててそのせいで好きな人に告白できず何年も片思いに苦しめられるって設定だったよね。でも、本作でシラノを演じるのはピーター・ディンクレイジ。持って生まれたハンディを乗り越え、実力で今の地位を築いた個性派俳優。とにかく彼の自身の境遇を重ね合わせたかのような、周りの偏見や同情を圧倒的な力で捻じ伏せるかのような熱演が素晴らしかったです。心から愛する女性が自身の後輩に想いを寄せていると知った時に見せる彼の切なそうな表情には思わず感情移入してしまいました。それでも彼女の幸せを願って、後輩との仲を取り持とうとする主人公。自分の恋心を納得させたいがため、彼からの手紙だと偽って自らが書いた恋文を何通も彼女に渡すシーンには胸がぎゅうぎゅう締め付けられますね。監督、モテない男の気持ちをよく分かってらっしゃる。癒えたはずの僕の心の古傷がズキズキ疼いちゃいましたわ(笑)。肝心のミュージカルシーンはいかにもジョー・ライトらしい、煌びやかで華のある場面の連続でもはや抜群の安定感。中世フランスの宮廷を再現した、ゴージャスで美しい映像には思わず乙女のように見惚れてしまいました。殺伐とした戦場シーンも何処か気品を感じられて、この計算された統一感は素晴らしいですね。ヒロインを演じた、ヘイリー・ベネットのいかにも恋に恋する自由奔放な感じもグッド。男を振り回す典型的な小悪魔感が憎たらしいけど、でも悔しいけど魅力的でした。彼女と彼女が想いを寄せるイケメンとシラノがベランダ越しに会話するシーンは、それぞれの情熱と諦念が交錯する素晴らしい名場面。片想いの切なさに苦しんだことがある全ての人にぜひ観てもらいたい、なかなかの秀作でありました。 [DVD(字幕)] 8点(2023-03-10 10:01:48) |
171. デモニック
ネタバレ 地方の寂れた田舎町で独り暮らしをしている中年女性カーリー。ある日、彼女に医師を名乗る人物から電話がかかってくる。「あなたのお母さんが今昏睡状態で大変危険な状況に陥っている。今すぐ来てくれませんか」。急なその知らせは彼女を酷く動揺させるのだった。何故なら、看護師だったカーリーの母親は十数年前に精神を病み、老人ホームへと放火して21人も殺害した罪で服役中だからだ。以来母親とは関係を絶ち、連絡すら取っていなかった。それでも何年も抱え込んだ心の傷に決着を図るため、カーリーは指定された都会の病院へと向かう。そこで彼女はにわかには信じられない提案を受けるのだった。先端技術で再現された、あなたの母親の深層意識へと潜入し問題の原因を探り出してほしい――。半信半疑ながらも提案を受け入れたカーリーはさっそく、母親の脳波を元に作り出されたという仮想現実へと踏み込んでゆくのだが……。過去に大量殺人を犯した母親の深層意識へと入り込んだある女性が経験する驚愕の体験を濃厚に描いたサイコ・サスペンス。『第9地区』や『エリジウム』を撮ったニール・ブロムカンプ監督の最新作ということで今回鑑賞。この人って、デビュー作である『第9地区』がすこぶる良かったもののその後は正直右肩下がりな印象だったのですが(個人の感想)、本作でだいぶ底辺までいっちゃったような感じですかね。ぶっちゃけさっぱり面白くなかったです。まあ内容の方は『インセプション』以来大量に制作された人の夢の中に入り込む系のお話。この仮想現実空間の描写が敢えて映像の質を落とした、今発展途上のメタバースみたいなチープな質感にしているところはちょっと新しく感じました。でも、本作の観るべき部分はそこくらい。後は、同ジャンルの先行作で散々見てきたような映像がずっと続き、しかもお話のテンポが悪いことも相俟って最後まで退屈で仕方なかったです。しかも後半からはタイトルで盛大にネタバレしてる、現代の悪魔祓いというオカルト要素をぶっこんでくるのも支離滅裂感が半端ない。とにかく登場人物の誰も彼もが何がしたいのかよく分からないのが致命傷。特に主人公。母親を救いたいのか決別したいのか最後まで意味不明で感情移入出来ませんでした。ブロムカンプ監督、『第9地区』が自分はけっこう好きだっただけに、この先華々しく復活してくれることを祈るばかりですね。 [DVD(字幕)] 4点(2023-03-10 09:48:11) |
172. クーリエ 最高機密の運び屋
ネタバレ 彼の名は、グレヴィル・ウィン。英国の中堅企業で働くごく普通のセールスマンだ。愛する妻とまだ幼い一人息子に恵まれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしている。東西冷戦が激化し始めていたこの時代、それでも彼は得意の語学力を活かし、東欧諸国にもそのビジネスチャンスを拡げていた。定年後の安らかな老後だけを楽しみに、家族のため日夜仕事に精を出していたある日、彼は政府の役人と名乗る人物から会いたいと打診を受ける。商務庁の人間だと待ち合わせ場所に向かったグレヴィルは、そこで待っていた人物に衝撃を受けるのだった――。彼らはなんとMI6とCIAに所属する、いわゆるスパイだったのだ。「ソ連のある高官が西側に寝返ろうとしている。彼と接触するためにはソ連に怪しまれない人物が必要だ。平凡なビジネスマンであるあなたはまさに適役。どうだ、国に貢献してみないか」。彼らの提案に最初は難色を示すグレヴィルだったが、現実味を帯びる核戦争の危機に触発され、渋々スパイとなることを決意する。モスクワへと赴き、当局の監視の目を搔い潜って情報を持ち帰るグレヴィル。もちろんバレると命の保証はない。何度もソ連へと行き来するうちに彼の神経は徐々に擦り減ってゆき……。キューバ危機に見舞われた東西冷戦期を舞台に、核戦争を回避するためにスパイとなったある平凡なセールスマンを描いたサスペンス。実話を元にしただけあって、この全編に漲る緊張感は凄まじかった。いつどこに監視の目が光っているかも分からず、部屋に一人でいるときも盗聴器の存在を常に意識しなければいけない。それでも国のため家族のために任務を遂行する、もともと普通のセールスマン……。圧し潰されそうな重圧から次第に家族と険悪となってゆくというのは皮肉極まりない。そんな難しい役をリアルに演じたベネディクト・カンバーバッチの熱演が光る。そんな中、同じく世界の未来の為に祖国を裏切るソ連高官との次第に深まってゆく絆。当局から疑いの目を向けられるようになり任務も遂行不可能となったのに、それでも彼を亡命させるためもう一度モスクワへと渡る決心をした主人公の決断は重い。そこからはまさに息詰まるようなシーンの連続で自分も固唾を吞んで見守るしかなかった。ただ、惜しいのは拘束されてからの後半。妻がようやく彼に会いにモスクワへとやってくるところが意外とあっさりで、ここをもっと踏み込んで描いてほしかった。地獄のような収容所生活で彼が正気を失わずにいられたという重要な場面、何ならここをクライマックスにしても良かったのでは。げっそりと痩せてしまったカンバーバッチの演技が見事なだけに、惜しい。誰もが不安を抱えて生きていた当時、核戦争を回避するために自分を犠牲にしてまで動いてくれた人がいた――。その事実に改めて畏敬の念を感じざるを得ない、なかなかの秀作であった。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-10 09:00:30) |
173. PITY ある不幸な男
ネタバレ 都会の高級マンションで洗練された生活を送る、ある中年弁護士。常に清潔なスーツを着て、誰に対しても礼儀正しく、毎日規則正しい生活を心がける、品行方正を絵にかいたような真面目な男だ。だが、彼の最近の一日はベッドで目覚めてからしばらくの間、咽び泣くことから始まる。何故なら、彼の長年連れ添った妻が事故により昏睡状態へと陥ってしまったからだ――。もう長い間、彼の妻は病院のベッドで寝たきりで、医師も匙を投げるほどの深刻な状態。そんな彼を気遣って、周りの人々は常に優しく接してくれる。マンションの上階に住む心優しい奥さんは毎朝甘いケーキを焼いて差し入れてくれるし、弁護士事務所の事務員はいつも励ましの言葉を掛けてくれる。長年の友人は食事やスポーツへと彼をとにかく一人にさせないよう誘ってくれ、仕事の依頼主である殺人事件の被害者も自身と境遇を重ね合わせ一緒に涙してくれる。いつしかそんな周りのサポートが彼の生きる支えとなっていた。そんなある日、妻が奇跡的に目を覚ますのだが……。不慮の事故により生活を一変させられた、とある〝不幸な男〟の秘められた狂気を淡々と描いたサスペンス・ドラマ。いやー、なんか変な映画でしたね、これ。特に何が起こるわけでもない中年男の普通の日常を描いているのに、この全編に漂う言いようのない違和感。とにかくこの主人公がすんんんごく気持ち悪いんですよ!!愛する奥さんが事故で寝たきりという不幸な境遇にいるのに、何故か同情できない行動ばかりとる。「俺は世界で一番不幸な男だ」と言わんばかりの暗ーい表情でひたすら周りの同情に依存し、ピアニスト志望の一人息子には「明るい曲を弾くな、周りに立ち直ってると誤解されるだろ」なんて言ったりする。ほんとキモい(笑)。繰り返される謎のテロップも妙に心をざわつかせるものばかりだし、極めつけは息子に「妻がもし亡くなってしまったときの為に歌を作ったんだ。聴いてくれ」と突然歌いだすシーン。妻が死んだら1000匹の動物を殺すだろうと1曲丸々歌いきるところはもはや一周回って笑けてきちゃいましたわ。そして妻が回復してからは、もはやコメディ。「違う、自分が望んでたのはこれじゃない」と、周りに妻がまだ入院中だと嘘をついたり上階の奥さんにまたケーキを焼いてくれとしつこくねだったり長年飼ってた犬を海の上に捨ててきたりと、笑えないのに笑うしかない一連のシーンは白眉。全編気持ち悪いのに、変に癖になる面白さがありますね。画が無駄に奇麗で清潔感に溢れているのも良いセンスしてる。脚本は、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスと一緒に仕事してきた人とのこと。なるほど、なんか納得。かなり癖が強いので観る人を選ぶだろうけど、自分はけっこう好きでした。最後、物語は不幸のどん底に落ちたけど、捨てられた犬が浜辺に帰ってきて観てる方はほっと一安心。人間が嫌いになりそうな映画、お薦めです(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-10 07:40:15) |
174. キャッシュトラック
ネタバレ 彼の名は、パトリック・ヒル。通称〝H〟。最近、現金輸送を専門とするセキュリティ会社に就職したばかりの普通の男だ。10年務めた欧州の警備会社が倒産し今回この会社に応募、採用試験もぎりぎり合格点レベル、妻とも離婚、家族もおらず無口で不愛想。同僚からも少し浮いた存在である彼は、簡単に言うと冴えない男だ。ロサンゼルスの街で日々黙々と働いていたそんなある日、彼が運転する輸送車が武装した凶悪な強盗集団に襲われる。だが、Hは全く取り乱すことなく冷静沈着な判断力と高い射撃能力でやすやすと敵を排除するのだった。そればかりか、後日襲ってきた別の強盗集団も彼の顔を見た瞬間、金には目もくれずすぐさま逃げ出してしまう。上司も同僚もこれには驚くばかり。果たして彼は何者なのか?FBIや会社の上層部が疑念を深める中、全米で最も現金が動くブラック・フライデーが近づいてくる……。世界でも有数の危険区域であるLAで現金輸送車のドライバーとして働く謎めいた男の過去を巡るドラマを重厚に描いたクライム・アクション。監督・主演は、ハリウッドのエンタメ映画界を牽引するガイ・リッチー&ジェイソン・ステイサムコンビ。と言う訳で、そこそこ期待して今回鑑賞してみました。そんな僕の期待をそこそこ上回るそこそこ面白い映画でしたね、これ。まあベタっちゃあベタですけどツボを押さえた演出はどれも嵌まっていて、最後までそこそこ楽しめました。いかにもガイ・リッチーらしい現代と過去を行き来する脚本も分かりやすく練られていて、後半の急展開にもけっこう驚かされました。まあかなり力技でしたけど(笑)。重低音を効かせた重苦しい雰囲気も嫌いじゃなく、ひたすら口をへの字にして無双するジェイソン・ステイサムも相変わらず渋い。各シーンにタイトルをつけて章仕立てで見せる演出もかっこいいし、特に最後の「肝臓・肺・脾臓・心臓」のタイトルの意味が分かるラストシーンは痺れました。まあ内容の方は3日も経てばきれいに忘れそうなお話だったけど、そこそこキレのいいアクション、そこそこ面白い脚本、そこそこ華のある役者陣と、そこそこ面白い映画の見本のような作品でありました。うん、そこそこの7点!! [DVD(邦画)] 7点(2023-03-02 13:01:45) |
175. アイス・ロード
ネタバレ 炭鉱事故により地下に閉じ込められた作業員を救うため、重い重機を載せたトラックで氷の張った湖上の道、通称〝アイスロード〟を疾走するドライバーたちを描いたサスペンス・アクション。今やすっかりアクション俳優として定着したリーアム・ニーソン主演ということで今回鑑賞。まあ普通に面白かったんですけど、何だろう、この今一つ物足りない感。いつ割れてもおかしくない脆い氷上をいかにも重そうなトラックでいくシーンとかけっこう緊迫感もあって、誰が裏切り者か分からない脚本もそこそこよく出来ていたとは思うんですけどね。クライマックス、もう少し盛り上げてほしかったような気がしなくもない。あまりにも優等生的に纏められていて、この作品ならではというもっと突き抜けたものが欲しかったところ。まぁでも暇潰しで観る分にはそこそこ楽しめると思います。 [DVD(字幕)] 6点(2023-03-02 08:34:35) |
176. X エックス(2022)
ネタバレ アメリカ南部の保守的な田舎町にポルノ映画を撮りにきた男女6人組が遭遇する恐怖の体験を濃厚に描いたスリラー。僕のお気に入りのそばかす美少女ミア・ゴスちゃんが出ているということで今回鑑賞してみました。が、正直さっぱり面白くなかったです!!今どきのチャラチャラした若者が泊まった民泊のオーナーが実は恐怖の殺人鬼夫婦だった!という、捻りもなんにもないお話。お決まりのスプラッター描写もこれまで同ジャンルの映画でさんざん見てきたようなベタなものばかりで、古臭いったらありゃしない。しかも最初の殺人が起こるまでがけっこう長くて、この中だるみ感に終始睡魔が……。また、画面がずっと暗くて見辛いのも大いにマイナス。最後のオチも放り投げっぱなしの胸糞悪い代物で怒りすら湧いてきそうでした。全裸にオーバーオールという、裸にエプロンと同じくらいエロい格好でずっと出ずっぱりだったミア・ゴスちゃんに+1点! [DVD(字幕)] 4点(2023-02-23 08:43:17) |
177. ブレット・トレイン
ネタバレ 東京から京都へと猛スピードで運行する超高速車両を舞台に、偶然乗り合わせた殺し屋たちの壮絶バトルを終始ノンストップで描いたエンタメ・アクション。原作は、日本のベストセラー作家伊坂幸太郎。監督は、この手の分野を得意とするデビッド・リーチ。いかにもこの監督らしいごちゃごちゃわちゃわちゃとしたストーリーに、「あ、またか…」と前半は少々げんなり。大量の登場人物が入り乱れるお話は脱線につぐ脱線でとにかく分かりづらい!!アクションシーンは凄くキレがあっていいし、キャラクターもみな魅力的なのにどうして毎回こんな分かりにくいアプローチをしてくるんでしょう。すんごく勿体ないです。あまりの観客置いてけぼり具合に前半で観るの止めようかと思ったんですが、でも、後半のぶっ飛び具合はさすがにお金を掛けただけあってなかなか楽しかった。伊坂幸太郎らしい、伏線を最後に全て回収する練られたプロットも見事。とにかく殺し屋たちが全員キャラ立ちまくりなのが良いですね~~。自分は、可愛い着ぐるみにずっと潜んでいた毒ヘビ女アサシンが好きでした。レモンに殴られた時もじっと耐えてたのね(笑)。ドSな小悪魔少女アサシン〝プリンス〟も超可愛くて、自分もこんな女の子に徹底的に振り回されたいと思っちゃいました(ドM)。彼らが電車をガンガン破壊しながらバトルするクライマックスはもはやリアリティのリミットを3回くらい振り切ってます。到着が1分遅れただけで丁重に謝罪する日本の鉄道会社はこれ観てどー思うんだ??でも、そんな日本を徹底的に茶化したトンデモシーンも根底には凄く愛を感じたし、後半はけっこうスカッとしたので、ちょっぴりおまけの7点! [DVD(字幕)] 7点(2023-02-23 08:25:30) |
178. 三島由紀夫VS東大全共闘 50年の真実
ネタバレ 1969年5月、その日、東京大学駒場キャンパスのある教室は異様な熱気に包まれていた。何故なら、反体制を掲げ時に過激な行動で世間を騒がせた東大全共闘と世界的ベストセラー作家として名声を欲しいままにする三島由紀夫との討論会が行われたからだ。観衆も含め1000人を超える学生グループとたった一人敵地ともいえる教室へとやって来た大作家。片や共産革命を掲げる左翼思想グループ、片や天皇崇拝を主張し国家主義を是とする右翼的作家。真っ向から主義主張の異なる両者の対決は、文字通り命を掛けた激しい激論となった――。本作は、長い間テレビ局の倉庫に眠っていたそんな貴重な映像を再編集して50年目の今日、新たに世間に公表しようと試みた挑戦的ドキュメンタリーだ。中学生だった頃に三島由紀夫の傑作『仮面の告白』を読んで衝撃を受けた自分としては、感慨深いものを感じながらの鑑賞となった。当時の異様な熱気を生々しく写し取った映像は最後まで緊張感が途切れず、両者の激しい舌戦はまるで激しい格闘技を見ているかのような感覚にさせられる。特に、三島由紀夫の生涯のテーマとも言える「世界を変えるのは認識か行動か」という重要な思想が時折垣間見えるのが興味深い。高度な知性によって世界を変革しようという三島氏と文字通り暴力も辞さない行動によって世界を変えようという学生たちとの討論が最後まで噛み合わないのは当然だが、三島がそんな学生たちに理解を持って接していたのが印象的だった。もしかすると氏は、学生たちに深い羨望のようなものを感じていたのではないか。あくまで文筆活動で戦後のぬるま湯に浸かり切ったような日本を変えようとした三島氏が最期、あのような暴挙に出たのはもしかするとこの討論会で学生たちが見せた清々しいまでの若さに影響されたのかもしれない。もちろんかなり穿った見方であることは承知の上だが。ただ、討論会の途中から急に登場する、この時代のひろゆきみたいな芥氏という人物。この人の存在が自分は最後まで不快で仕方なかった。ずっとへらへらしながら自分以外の人間を小馬鹿にしているようなその態度が終始鬱陶しい。幼い娘を抱えながらこの討論会に参加しているのだが、それも「娘の子育てに忙しい自分が、ここで面白そうなことをしているみたいなのでなんとなく参加しただけだし」という言い訳を最初から用意している感じがしてなんとも不愉快。現在の年老いた芥氏にインタビューしているシーンもあるのだが、ここでも変わらず人を小馬鹿にしたような態度で「人ってどれだけ年取っても変わらないものだ」と思わず笑ってしまった。こんな男に最後まで真摯に対応した三島氏の度量の深さには改めて尊敬の念を抱かずにはいられない。反対に、悔恨を感じながらもあの頃の自分たちを肯定せざるを得ない心境で滔々と告白する全共闘の当事者たち。行動を起こしながらも結局世界を変えられなかった彼らには、三島の最後の長編『豊饒の海』にも通じる無常感すら感じる。この貴重な映像を50年後の今日、公開してくれた制作陣に改めて敬意を表したい。 [DVD(邦画)] 8点(2023-02-13 09:13:15) |
179. マザーズ(2016)
ネタバレ 子供が出来ない夫婦のために代理母となる決断をしたシングルマザーが遭遇する不条理な事態を淡々と描いたマタニティ・ホラー。監督は、自分には何がいいのかさっぱり分からなかった『ボーダー/二つの世界』のアリ・アッバシ。自分の好みとは全く正反対のその内容に、「この監督の映画はもう観ない」と決意したのですが、一作だけでそう判断するのはフェアではないと思い、最新作と思われる本作を今回鑑賞。と、思ったらこちらの方が2016年制作のデビュー作だったみたいで。とは言え、内容の方は『ボーダー~』と同じく、さっぱり面白くなかったです。終始ブレブレのカメラワークで撮られた小汚い映像、起承転結に乏しい退屈でありがちなストーリー、全く魅力を感じない根暗なキャラクターたち……と、見れば見るほど睡魔が襲い掛かってきて、最後まで観るのが苦痛で苦痛で仕方なかったです。ここまで自分の好みとは正反対の感性を持った監督も珍しい。改めて、「この監督の映画はもう観ない」と決意した次第であります、はい。 [DVD(字幕)] 3点(2023-02-13 09:07:27) |
180. シニアイヤー
ネタバレ チアリーディング部のキャプテンとして、恋に友情にと青春を謳歌していたリア充女子高生、ステファニー。だが、プロムクイーンを目指して練習に励んでいたまさにその日、彼女はライバル同級生の策略により、瀕死の重傷を負ってしまう。意識不明となって病院へと担ぎ込まれたステファニーはなんとそれから20年も昏睡状態のまま月日が流れてしまうのだった――。20年ぶりに目覚めた彼女は意識こそ17歳のままだが、その外見は年相応のぽっちゃりとしたおばさん体形。スマホやSNSといった当時はなかった先端技術にも戸惑うばかり。でもステファニーは持ち前の明るい性格から、すぐに失った月日を取り戻そうと前を向いて生活し始める。高校へと戻り再びチアリーディングを始めた彼女は、もう一度プロムクイーンを目指して努力を重ねるのだが……。17歳で昏睡状態となってしまった女子高生が20年ぶりに目覚めたことから巻き起こる騒動を終始軽快に描いた青春コメディ。まぁ完全なる出オチ映画ではあるけれど、レベル・ウィルソンのすっとぼけた存在感で前半はけっこう面白かったですね。病院で目覚めた彼女が鏡に映った自分の姿を見て「ちょっとこのおばさん、誰?」と看護師に聞くシーンとか普通に笑っちゃいました。それが自分だと分かった瞬間、失神するなんてレベル・ウィルソン以外がやったら絶対すべってたでしょうね。ツイッターやインスタグラムといった当時なかった技術との世代間ギャップで笑いを取るのもベタながらあり。行き過ぎたポリコレからかなり窮屈となってしまった現代社会を揶揄するネタもけっこういいとこついてる。ただ、結局それだけの映画なので後半のグダグダ具合はちょっと観てられないレベル。特にこの主人公の自己チューっぷりには見ていて腹立って来ましたわ。『ディープ・インパクト』を観ながらライバルをやり込めるために悪態つきまくるシーンは率直に最悪。映画館で思いっ切りでかい声でネタバレ叫ぶなんて一番やっちゃいかんことでしょ!深刻なテーマをあくまで軽く扱うのも良いとは思うけど、さすがにちょっとやりすぎ。最後のエンドロールで撮影風景を楽しそうに流すのも、なんか仲間内のハッピー押し売り感がウザかったです。前半はそこそこ面白かったんですけどね~。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-02-13 08:31:18) |