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性別 男性
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1.  ピカソ-天才の秘密
正直に言ってしまえば、キュービズムに走って以降のパブロ・ピカソの前衛絵画は全く理解出来ないし好きでも何でもなかった。しかし、本作の撮影に対し鷹揚な態度で全面協力したピカソの旺盛なサービス精神にはほとほと敬服した。と同時に好感度が一気に急上昇した。撮るのが鬼才クルーゾーなればこその全面協力と持ち上げたいところだが、矢張りここは創作現場にズカズカ乗り込んで来た本作スタッフの挑戦を余裕綽々で受けて立ったピカソの度量を褒めるべきだろう。具象から抽象への変移が刻一刻とフィルムに込められていくプロセスは、並みのフィクション映画なんぞ比較にならないくらいスリリングで面白い、余りに面白過ぎる。本物の映画監督が撮影した本物の芸術家ドキュメンタリーのマスターピースへ限りない敬意を込めて10点満点しかありえない!
[CS・衛星(字幕)] 10点(2007-05-25 04:09:59)
2.   《ネタバレ》 
戦前の東宝を代表する名匠・山本嘉次郎監督によるセミ・ドキュメンタリー・タッチの傑作。筋立て自体は東北地方の貧しい農家の少女いね(高峰秀子)が懸命に馬を育て上げ、遂に最後で軍馬に買い上げられる迄が淡々と綴られているだけの至ってシンプルなもの。が、山本監督による渾身のオリジナル脚本は愛弟子・黒澤明の協力を得て徹底的な調査の下に書かれただけあって、東北の四季を詩情豊かに掬い取って実に秀抜。これほど活き活きとした東北ズーズー弁が全編を貫く映画は恐らく本作が本邦初であろう。いかにもワザとらしいドラマティック的な展開が極力排除されているのも「綴方教室」を受け継ぐセミ・ドキュメンタリー・タッチの真骨頂。三村明を始めとする4人のカメラマンによる柔らかいロー・キィ・トーンのモノクロ撮影も美しく味わい深い。「かまくら」「なまはげ」「曲がり家」「かんじき」「雪降ろし」といった地方色溢れる要素が丹念に盛り込まれており、当時の平凡な日本人の暮らしぶりも窺い知ることができてとても興味深かった。場面的には何と言っても子馬出産を一家で見守るシーンが素晴らしい。実際の出産場面に出演者たちを立ち会わせただけに全員の表情が真に迫っている。汽車で旅立つ弟を見送るためにいねが裸馬の背に乗って追いかけ、窓越しに併走する場面のダイナミックさにも唸らされる。これだけの作品を(東宝のゴリ押しで)エノケン喜劇映画をも掛け持ちさせられながら完成させた山本嘉次郎のパワーに舌を巻きつつ文句ナシの10点を進呈! <追記>山本嘉次郎監督について補足。何より凄いのは商業作品では職人に徹することで娯楽作品を制作会社の注文通りにウェルメイドに仕立て上げる一方、芸術性に富む意欲作にも果敢に取り組むその姿勢。つまり、興行的にペイさせるだけの実績を挙げた上で、初めて自身の「撮りたい」モノへとチャレンジするというコト。愛弟子クロサワも1960年代までは確実に師匠のスタンスを踏襲していた。だから、私が個人的に高く評価する演出家は「娯楽性と芸術性を兼ね備えた」人物に偏る。そういうワケなので、悪いが私的にはゴダ●ルやタル○フスキーといった「おのれの撮りたい欲望に忠実」過ぎるゲージュツ派の監督はあまり高い評価は致しかねる。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-07-08 19:59:23)(良:2票)
3.  犬の生活
何か色々あって落ち込んで癒されたい時の特効薬として私は本作を断然オススメします。何より上映時間のコンパクトさ(40分)からくる即効性!しかもコンパクトながら我らがチャーリーのペーソス・ユーモア・骨身を惜しまぬアクションがてんこ盛り!加えて最大のMVPならぬMVD(Most Valuable Dog)?たる”犬”の存在。キャストにTOPクレジットできないのが残念でなりません。私はどちらかと言えば猫好きなのですが、作中で牛乳ビンに尻尾を突っ込まれたら必死で舐める仕種、チャーリーの”枕”となって仲良く眠る様子、ここ掘れワンワンでチャーリーに土をかけまくる場面に完全にヤラレました。と、同時に”ほのぼの”癒されました。ありがとう、「犬」!君の勇姿は永遠に不滅だぁぁぁ!!と個人的に断言して満点を進呈させて貰います。
10点(2004-12-21 00:18:21)(良:2票)
4.  探偵物語(1951) 《ネタバレ》 
ワイラーの演出の卓抜さが堪能できる刑事ドラマの傑作。開巻を飾るキャスト&スタッフ・クレジットにおけるリー・ガームスのカメラワークが先ず見事。大都会NYを高空ショットで捉えつつ、徐々に絞り込み舞台となる21分署へと至る流麗な鳥瞰撮影の妙で観る者をグッと画面に引き込んでゆく。次いで慌しく引っ切り無しに署内を出入りする登場人物たちの紹介となるが、ほんの端役(被害妄想の婆さん等)に至るまで人物へのスポットの当て方が実に秀逸。凡庸な監督なら焦って主役のカーク・ダグラス扮するマクラウド刑事をこれ見よがしにトップで登場させるだろうが、ワイラーは先ず脇を固める署長や同僚の刑事たちを、万引き女を、猥雑な生活感に満ちた取り調べ室の屋内状況を、矢継ぎ早のショットの積み重ねの中で確実に描写し、観る者に情報を”映像”で提供する。その的確さ、構図の上手さには全く無駄やムラがなく毎度ながら感心させられる。こうした一連の描写の中に細かい伏線を同時に数多く張り巡らせているコトもワイラーの非凡さを実感させるポイント。並みのヘボ監督との相違点はそれだけではない。その最たるトコロは俳優の過剰演技を徹底的に制御するコントロールの見事さにある。カーク・ダグラスの稀に見る力演も一歩間違えば鼻につくオーバーアクトになりかねない諸刃の剣だが、上手く劇中に活かしきっている。自らの”イントレランス”で愛する妻を完全に失うマクラウドの哀愁と苦悩が画面から痛いほど伝わってくる。こうした俳優アンサンブルが見事にハーモニーを奏でるか否かに演出の力量が問われるが、そういった意味でワイラーのディレクションには決して破綻が無い。出演者では矢張り、万引き女役のリー・グラントと強盗犯チャーリィ役のジョセフ・ワイズマンが舞台版に引き続きの当たり役だけに実~にウマイ、ウマ過ぎる。殊にグラントは極端なわざとらしいコメディ演技に走らず、何ともトボけた味わい深さで絶賛も納得。そうそう、ワイラー名物の”階段”は当然、人物の出入りの際に印象的な効果を発揮していたことも言い添えておかないと。とにかく文句無し10点満点!!
10点(2004-11-12 19:28:34)(良:4票)
5.  ボー・ジェスト(1926) 《ネタバレ》 
本作もサイレント映画ながら澤登翠氏の鮮やかな活弁付きで鑑賞。イヤ全くもって面白い!余りに面白過ぎる!!パーシヴァル・クリストファー・レンの原作が有する語り口の上手さを見事に映像化したハーバート・ブレノン監督のお手柄であろう。何と言ってもミステリアス極まりないイントロダクションでグッと画面に引き擦り込む呼吸が鮮やか。救援要請を受け、砂漠の砦に駆けつけた仏・外人部隊。砦は死んだような静けさ。様子を見に先行させたラッパ手はいつまで経っても戻らない。痺れを切らして隊長が乗り込むと守備兵は全滅している。いったん部隊に戻り部下を引き連れて再び隊長が乗り込んだ時には二つの死体が消え失せていた。当惑を隠せないまま砦の外にキャンプして善後策を練る隊長らがふと気付くと砦は炎に包まれ焼け落ちていく…!!一体ここで何があったというのか??ね、めっちゃ面白そうっしょ?その怪事件の陰に回想を挿入しつつ涙ぐましき兄弟愛の素晴らしさを絡めていくシナリオの秀逸さが断然光る!やっぱり映画はシナリオが命っす!加えて脇役陣がこれまたイイ!特にノア・ビアリーのレジョーヌ曹長がド迫力で出色の出来!古今、これほどまでに憎たらしくシブとくイヤらしい悪役はそうそういるまい。ケチな小悪党ボルディーニ役のウィリアム・パウエルも実に味のある名演。豪快なハンク役のヴィクター・マクラグレンもグッジョブ!主役たるボー役のロナルド・コールマンも勿論イイが、矢張り脇に重厚な名優を揃えたキャスティングが傑作としてのステイタスを確固たるものにした要因だと思う。モノクロ・サイレントだから‥と「古い」の一語で敬遠するヒトが何だか可哀想にも思えてくるナァ…(笑)。点数?言うまでもなく10点満点でおます。
10点(2004-10-29 03:45:32)(良:1票)
6.  廿日鼠と人間(1939) 《ネタバレ》 
スタインベックの同名原作、最初の映画化。1992年のリメイク版もまぁまぁ健闘していたとは思うが、先に本作を(名画座リバイバルで)観てルイス・マイルストンの鮮やかな演出に感激した自分にとっては悪いが所詮”焼き直し”としか思えなかった。それほどレニー役のロン・チャニィ・Jrがとにかく物凄い熱演で正に圧倒的インパクト。恐らくマルコビッチも彼の演技に多大な影響を受けたに違いない。しかし、リメイク版との最大の差はカーリーの浮気な妻を演じた女優のクオリティに尽きる。その意味で本作でのベティ・フィールドの上手さ・存在感は特筆に価しよう。シェリリン・フェンじゃ全く相手にならない。これほどの名作でありながら、その年のオスカー賞レースでは選りに選ってアノ化け物超大作「風と共に去りぬ」と争う羽目になり、敢え無く敗北を喫して無冠に終わるという不運さ・皮肉さ(そして何というレベルの高さ!)。それでもマイルストンの代表作であり、文芸映画の鑑たる本作のステイタスは些かも揺るぎはしないが。文句無し10点満点を進呈することでせめて憂さを晴らすとしよう。
10点(2004-10-21 04:14:12)(良:2票)
7.  ニーベルンゲン 第I部 ジークフリート 《ネタバレ》 
ガーーーーーーン!!!数年前に録画していた貴重なビデオテープがカビてしまったぁぁぁぁ!!!!再見してからと思っていたのに最早それも叶わない…。仕方ないから脳内メモリーだけでコメントすることにしますた。さて、本作は戦前神懸りモード全開のフリッツ・ラングが独ウーファ映画で古代ゲルマン伝説を壮大にビジュアル化した大傑作の第一部です。尤も本来は第二部「クリームヒルトの復讐」までも含めた「ニーベルンゲン」という一本の作品な訳なんですけど。私は衛星第二の澤登翠氏の鮮やかな活弁付きで視聴しましたが、キャラクターの把握や細かい台詞まで大いに助けられましたねぇ。氏の絶妙な節回しとモノクローム映像の甘美なコラボレーションを存分に堪能させてもらいました。矢張り本作中最大の見所はジークフリートが巨大な竜と対決する場面でしょう。実際に巨大に作られたという竜は現在の支店でじゃなくて視点で見るとコモド大トカゲみたいでチャチかもしれませんが、80年前の作品であるという事実が寧ろ驚異的なインパクトを私にもたらしてくれました。この衝撃に比べれば、数十年後に本物のトカゲにツノや背びれをくっつけて恐竜に見せようとした某SF映画などは志の低さが際立ちます。しかもそんな英雄ジークフリートも人間の悪企みの前に呆気なく死ぬというアイロニカルなオチが底の浅い子供向けファンタジー辺りと明らかに一線を画して大人の寓話たらしめている気がします。文句無し10点満点です! 
10点(2004-09-08 01:43:41)(良:2票)
8.  若草物語(1933) 《ネタバレ》 
素晴らしい!キャサリン・ヘプバーン演じるジョセフィン・マーチは正に原作者ルイザ・メイ・オルコットそのものだ。溌剌とした彼女が(吹き替えナシで)走り、踊り、歌い、階段の手摺を滑り、木の枝にぶら下がり、窓から壁伝いに降り、柵を飛び越える!!そこらのアクション男優も裸足で逃げ出さんばかりの熱演だ。それだけなら単なるお転婆娘の騒々しいドタバタに終わるトコロだが、姉メグの恋する姿に当惑する表情やロウリィの求婚を退ける場面での何とも言えぬしおらしさによって勝気なジョーの揺れ動く心情が活写されている。上手い。流石に女優の演技指導の上手さでは定評のあるキューカーだ。しかもキャサリンの一人舞台にはさせない、とばかりにジョーン・ベネットのエイミー、ジーン・パーカーのベス、フランセス・ディーのメグ、いずれも存分に持ち味が引き出され実に活き活きとしている。それでもストーリーの骨子がジョー中心になっているのは本来、原作者オルコットを投影したキャラクターがジョーだからであり、キャサリンの”女優魂”がキューカーの演出によって最大限に開花した故であろう。ここにも又、演出と役者の幸福なる二人三脚を見る思いがした。オルコットの名作は今後もリメイクされるかもしれないが、監督の技量と女優のクオリティの点で恐らくこの33年版を凌駕する事は不可能だと(個人的に)思う。当然ながら10点満点!で御座います(笑)。
10点(2004-05-19 01:00:18)(良:1票)
9.  現金に手を出すな 《ネタバレ》 
ジャン・ルノワールの直弟子ジャック・ベッケルの秀抜さが全開の傑作フィルム・ノワール。名匠ベッケルの師匠譲りのリアリズム描写に加えて、地に足の着いた生活感溢れるマックスとリトンの遣り取りは正に彼の真骨頂!初老のオヤジが二人でラスクをボリボリ食い、パジャマに着替え、歯ブラシを持って歯を磨く。「そんな瑣末な事を仔細に描いたからってソレがどうした?」とキレるようではベッケルの作品を鑑賞するのは無理、十年早いと言うモノだろう。ブーシュの料理店やピエロのナイトクラブではジョジィやローラといった若い娘相手に精一杯渋くキメていても、矢張りマックスと言えど忍び寄る老いは自覚せざるをえない事を(ディテールに拘った)映像で観る者に納得させる見事な手腕と読み取れないようでは。盗んだ金塊の換金方法といい、踊り子にちょっかい出す照明係といい、本当にこの監督は隅々まで精緻な演出が冴え渡っていて手抜きが無い。だから無言の強い説得力を持って我々を画面の奥へと引き込むのである。そして「静と動」の鮮やかなコントラスト。クライマックスでのアンジェロとの対決では地味な生活描写の溜めがグンと活きて、車が金塊ごと爆発炎上する様を迫力に満ちたタッチで描き出す。要所要所を締める主題曲「グリスビーのブルース」の哀愁に満ちたメロディが又絶妙だった。安直なヒロイズムに陥る愚を犯さずテーマ「犯罪は割に合わない」を描ききったベッケルに拍手!勿論10点満点で御座います(笑)。
10点(2004-03-11 05:28:14)(良:3票)
10.  道(1954) 《ネタバレ》 
人の作品に抱く印象は”十人十色”、様々なコメントや賛否両論があるのも或る意味当然でしょう。私は本作を「ジェルソミーナを巡るザンパノとキ印の恋の鞘当て」もしくは「インフェリオリティ・コンプレックスを抱えた者達による悲しい三角関係」と捉えてフェリーニの妙技を堪能致しました。徹底的に捻くれた御仁であるフェリーニ氏は巷に溢れた美男美女による恋愛劇を巧みに換骨奪胎し、「野獣の如き無教養で粗暴な大男」と「オツムの弱いちんちくりんの女」と「お調子者で学もあるが根無し草な綱渡り芸人」が織り成すネオ・リアリスモ風味のラブストーリーに仕上げた、という訳です。案外、フェリーニ監督って凄く照れ屋だったのかもしれませんね。素直じゃないって言うか…(笑)。しかし、本作が凡百の恋愛モノと一線を画する最大のポイントは各キャラクターの人物造形が実に見事な点にあると思います。ポエティックでいて、しかも普遍性を有しており、且つリアリズムにも付かず離れずという絶妙極まる三人の人物設定ポジションは正に神業と評する以外に言葉を持ちません。とどめにニーノ・ロータの哀切なメロディとくれば‥ちょっとズル過ぎ!反則ってもんでしょう、ラストシーンでの泣かせに入る上手さときたら!勿論、フェリーニの真意は全く違うかもしれませんが、かくも万華鏡の如くに人によって解釈可能な「懐の深さ」を持った作品を私は余り知りません。よって10点。お若い方は年齢を重ねた後に再見をオススメします。本作が名作と謳われるのは伊達じゃないことを再認識なさるやも。尤も、これは本作に限らず往年の名作すべてに言えることですが…(笑)。
10点(2004-02-10 01:32:34)(良:4票)
11.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 
お二人のレビュー&コメントが実に素晴らしく、既に本作の魅力を語り尽くしている感もある。今更私如きの出る幕は無いのだが、どうしても書かずにはいられない映画史上の傑作だけに蛇足のコメントを加えること平にご容赦の程を。先ず語らねばならない点として岩下俊作の原作「富島松五郎傳」を見事なまでに簡潔にして明瞭なシナリオへ昇華させた伊丹万作の脚本がある。この映像化を念頭に置いた説明的描写を極端に省いたシナリオの存在なくして本作の傑出したクオリティは成り立たなかったと思わしめる出来だ。本来ならば自ら監督したかったであろう伊丹の無念を託されて演出した盟友・稲垣の力強い演出力にも触れなければなるまい。伊丹には生来の病弱を反映するかのように演出が繊細で今一つ迫力に欠けるきらいがあった。つまり本作に関しては稲垣の持ち味である骨太で力強い演出力が見事にそれを補完する形となった訳だ。しかし、伊丹らしさは車軸の回転をあしらった場面転換、据えっ放しのカメラで往来の時間軸だけをスライドさせる絶妙な処理、幼少の松五郎が森をさ迷うシーンの独表現主義を思わせるタッチ、人力車の客が往来に放置されて怒る場面のサイレント喜劇調などに散見される。各シーンに見せる宮川一夫の驚異的カメラワークについてはお二人の繰り返しになるので割愛させていただく。最後に阪妻について。当時の彼は時代劇の大スターとしての地位を既に確立しており、卑しい車夫の役をオファーされた時には大いに逡巡したという。結局引き受けるに当たり、彼は稲垣に「演るからには死ぬ気で演る。その代わりアンタも死んでくれ(その位の覚悟で演出してくれ)!」と迫った。この役者魂!この気概!!これぞ本物の役者というものだ!と胸打たれた。お二人が看破されている通り、阪妻の魅力とは豪放さと繊細さが同時に内在するアンビバレンツさにあると思う。こうした点を踏まえ改めて観るとクライマックスの小倉祇園太鼓シーンやラストの預金通帳が見つかる場面など毎度涙で目頭が熱くなる。悪いが三船版では感動はあっても、こうはならない。以上、例え二度の検閲カットがあろうと本作には満点しかありえない。私の脳内補完では検閲カットも何ら問題にならないからだ(笑)。
10点(2004-02-01 12:21:44)(良:2票)
12.  素晴らしき哉、人生!(1946) 《ネタバレ》 
一年の最後を締め括るに相応しいレビューとなれば、本作を措いて他にあるまい。殊に現実では重く辛気臭い事件が国内外問わず巷に溢れた昨今では。こんな時、我々だって程度の差はあれジョージ・ベイリーと同じ絶望感・虚無感に捕らわれそうになるかもしれない。しかし、キャプラは二級天使クラレンスを通して愛と善意の必要性を力強く語りかける。理想主義?その通りだ。しかし、キャプラは生涯一貫して信じ続けた。それが画面に横溢して感動と共に我々を強く説得し魅了するのだろう。実際、ジョージのいない世界を垣間見せる後半の暗いタッチはあたかも不景気なニューシネマの台頭を予見させるかのようで身の毛も弥立つ。それだけに一転して街中に「メリー・クリスマス!」を叫びつつ我が家へ走るジョージの姿、彼の家に集まる街の人々の善意の寄付の場面は悔しいが毎度涙を禁じえない。取立人までもが寄付する辺りの細かい描写も憎い。緻密な構成とかとはお世辞にも言えないが、キャプラの真髄を味わうなら絶対に外せない一本。勿論10点満点しかありえない。
10点(2003-12-31 23:49:58)(良:4票)
13.  稲妻(1952)
個人的には成瀬のベストワークに推したい。登場人物に極端な悪人も善人もいない実に平凡極まる点が如何にも彼の好む題材だ。原作:林芙美子との相性も抜群なのは当然であろう。黒澤や溝口の力感溢れるドラマや小津の上品さとも一線を画す、えも云われぬ”抑揚の無さ”こそ成瀬の真骨頂である!と信じて疑わない私としては本作で見せる浦辺粂子のダメダメな母親っぷりに陶然とさせられた。「ビギナー」なら優等生の”デコ”や初々しい香川京子に感情移入するも良し、「通」なら浦辺や村田知栄子、三浦光子の埒も無い愚痴に惚れ惚れするも良し。間口というか作品の懐は相当に深いし、幅がある。尤もコレは本作に限らず、当時の邦画の送り手と受け手の幸福な(しかもハイレベルの)関係を象徴する要素ではあるが。兎に角ストーリーを追うような映画ではないので、台詞に頼ることなく往年の名優たちの演技力そのものを徹底的に引き出して勝負する天才・成瀬巳喜男の職人技を存分にご堪能あれ。もちろん文句ナシの10点でおます。
10点(2003-12-29 15:40:25)(良:3票)
14.  市民ケーン
ふふん♪君たち「つぼみ」って漢字でどう書くか知ってる?「くさかんむりにかみなり」で「蕾」なのさっ!じゃあ「バラ」は?よ、よく分からないけど…兎に角コレで「薔薇」さっ!二つ合わせて「薔薇の蕾」だ。さあ!俺(私)、漢字で書けるぜ(わ)!って皆に自慢しまくろう!!更にだ。「つぼみ」って英語でどう書くか分かる??正解は”bud”!「ばらのつぼみ」なら”rose bud”だ!!さあ!したり顔でスラスラと、しかも筆記体で書きまくっちゃえ~!!もし嫌われても責任は持てないが。色々ためになる本作には十点満点で報いたいぞと。
10点(2003-12-20 03:49:23)(笑:1票)
15.  大列車強盗(1903) 《ネタバレ》 
百年も前に製作されたこの僅か8分のモノクロ映像を「何だぁ?こりゃ」「音がしねーよ」「ふっる~!てか、もう終わりかよ!呆気ね~」「ラストのおっさんがこっちに向かって銃をズドン!ってそれで怖がらせてる積もりかよ、プ」と一刀両断するのは簡単かもしれません。しかし、リュミエール兄弟の”キネマトグラフ”やトーマス・エジソンの”映写機”だけでは時代の徒花となっていたやもしれない「映画」というものを”大衆娯楽”へと導いた本作の計り知れない功績を、我々映画ファンは永遠に忘れる訳にはいかないでしょう。極端な話、本作なかりせば我々は「映画ファン」なる共通認識用語すら持てずに、本サイトで日夜投稿することもありえなかった…かもしれないのです。もちろん好みは人それぞれでしょうが、歴史的意義すら認めず「つまらん」と断ずるのなら、ソレは偉大な先達へのリスペクトを余りに欠いた軽挙と言うより外ない!というのが私の個人的な気持ちです。ラストシーンに銃声を聞き、ハッと驚く或いは悲鳴をあげる純粋さを当時の観客と分かち合うのが不可能なのが残念ですが。無の状態から創造(クリエイト)する凄まじいポテンシャルを本作の中に感じ取れるか否か?観る者の感性が試される瞬間と言えます。
10点(2003-12-16 01:57:37)(笑:1票) (良:3票)
16.  赤西蠣太
伊丹万作は伊丹十三の父にして「無法松の一生」等の名脚本家として、つとに知られている。が、彼の秀抜な映画センスを真に実感したければ監督としての彼を知らねばなるまい。本作は現在でも鑑賞可能な数少ない一作である。まずもってチャンバラ時代劇全盛期の昭和11年という時点で”パロディ”という概念を導入した斬新な発想が凄い!しかも講談・浪曲で手垢にまみれた「伊達騒動」を巧みに換骨奪胎して”コメディ”に仕立て上げた手腕には思わず舌を巻いた。間違いなく「天才」の成せる業である。開巻の雨傘が踊る俯瞰撮影の妙、BGMにショパンやメンデルスゾーンをあしらう大胆で小粋な処理、「ミスター時代劇」千恵蔵にコントラストも鮮やかな二役を演じ分けさせるブッ飛んだエスプリ、それでいて実に快調なテンポ、どれを取ってもズバ抜けた映画センスとしか言いようが無い。惜しむらくは生来の病弱な体質が彼に作品の量産を許さなかったことだろう。太平洋戦争へと突入した時点で日本の敗戦を鋭く予見した理性の持ち主であったが故に病床の身で書き上げた脚本を盟友・稲垣浩に託した彼の無念な心情は「無法松の一生」にも滲み出ている。生きていれば間違いなく小津や溝口にも匹敵する天才監督と謳われたであろう。残念ながら息子にはその才能の一部しか受け継がれなかったようだ。僅か46歳の若さで夭逝した孤高の天才に敬意を込めて10点。 
10点(2003-12-13 00:23:58)(良:2票)
17.  ホワイト・クリスマス
4年前に亡くなった父がこよなく愛した忘れじの一本。CATVでオンエアされたのをビデオに録画してプレゼントしたら大喜びで何度も何度も繰り返し観ていた。主題歌の「White Christmas」も幼少時から耳にタコができるくらい、しょっちゅう聞かされて閉口したものだった(ハッキリ言って音痴、ビングとは雲泥の差!)。父は一緒に観ようと必ず私を誘ったが、照れくさかったのと映画通ぶった下らないプライドが邪魔をして殆ど断っていた。しかも「ソレは『スイング・ホテル』のリメイクで云々」と薀蓄まで垂れて!父は映画の知識には疎かった為、黙って1人で観ていた(母は映画を余り観なかった)。失って初めて気付く父の存在の大きさに打ちのめされた時に今度は私が1人で観た。ビングが歌う場面は別に泣くようなトコロではないが涙が止まらなかった。何故もっと素直になれなかったのか、一緒に観てあげれば…いくら悔やんでも”後悔先に立たず”だ。一緒に観る願いはもう永遠に叶わないが、供養の代わりに私は今後もずっと観続けるだろう。《追記》本来なら6~7点くらいなのでしょうが、どうしてもコレには冷静・客観的な評価を下すことが出来ず、個人的な思い入れだけで満点に致しました。どうか御容赦を…。
10点(2003-12-08 23:42:27)(良:16票)
18.  ラインの仮橋 《ネタバレ》 
コレはジャン・ルノワールの「大いなる幻影」でのマレシャルとエルザの愛は果たして成就するであろうか?という問いへのアンドレ・カイヤットからの一つの回答とも言うべき秀作である。果たして第二次大戦中、実際に斯くの如き仏人捕虜の一般ドイツ家庭での”アルバイト”が行われたのかどうか私は知らない。が、イデオロギーや政治から一歩離れれば一般国民レベルでは本作のように深く理解し合えるに違いないと私は信じる。本作の何より素晴らしい点は、そうした”ささやかな庶民”レベルでの国際間の交流を見事に描き出していることに尽きる。戦後15年にして拭い難いドイツへの恨みも敵愾心も恩讐の彼方に流し去り、鮮やかにルノワールへの”返歌”を果たしたカイヤットに惜しみない賛辞を送りたい。シャルル・アズナブール、彼が演じる冴えない小男ロジェの素朴な温かみのある人物像はイケメン重視の今日びのハリウッドや日本の芸能界では絶対に出せない味わい深さだろう。彼は折角解放されパリに戻ったにも拘わらず、ドイツでの村長一家との人間らしい農村生活が忘れられず、彼を待つヘルガの元へ帰るべくラインを渡る方を選ぶ。「ありえない」「御都合主義」などと安易に言うなかれ。その布石は本作中の至る所にカイヤットは散りばめていたハズ。敗色の濃い戦局で遂に村長、次いで少年兵として村長の息子までもが召集される場面での別離の哀惜、村長の戦死が通知され病の床に倒れた妻をヘルガと看取る哀愁、数え上げたらキリがない。戦争映画というジャンルを考えた場合、声高に反戦を訴える方法論もあれば、ヒーローが戦場で超人的な活躍をする方法論もあろう。昨今で言えば、CGもしくは火薬の量で勝負!といった感じのド派手な戦闘シーンや酸鼻を極めるようなドギツイ残酷描写も反戦の方法論の一つには違いない。しかし、私は一切戦闘場面の無い本作のような映画の穏やかな方法論を断然支持する。残念ながらジョルジュ・リヴィエール扮するジャンの場面が些か冗長だが、アズナブールの好演だけで充分オツリが来る。ヘルガを演じたコルドラ・トラントフの美貌も忘れ難い。ルノワールとカイヤット、アズナブールに乾杯!!
10点(2003-11-21 00:30:08)(良:2票)
19.  密告(1943) 《ネタバレ》 
クッソォォォォォ~!”からす"の正体は絶対☆★◇≧*だと思ったのに~!!まさか、まさか♂♀@±§◎が犯人だったなんて、そんなぁぁぁぁ!!見事クルーゾー監督にしてやられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ミステリ通を広言して憚らぬ身としては自信満々いっぱしの名探偵を気取って散々推理を働かせてみたものの、クルーゾー監督が巧みに散りばめたニセの伏線に引っ掛かりまくった挙句にラストで驚愕のオチに唖然・呆然・愕然…。く、悔し~~~い!!大体、登場人物がどいつもこいつも胡散臭過ぎる上に、先が全く読めない展開と来た日にゃお手上げですわ。ズルい!意地悪~!!もし本作を御覧になって一発で犯人が分かったと仰る方がいらしたら、もうそのヒト一生尊敬しちゃいます!それどころかパンツ一丁で町内一周逆立ちして回ります!鼻の穴からウドン食ってみせます!東京タワーのてっぺんからバンジージャンプしてやります!!ハァハァいかん、落ち着け。つい興奮してあらぬコトを口走ってしまい大変申し訳ない。さ、さて本作は1943年にドイツ占領下で対独協力の一環として制作された一本だが、強制されたテーマは”フランスの腐敗した地方都市”。が、天才クルーゾーは当局に従うと見せかけ、裏に痛烈なゲシュタポ批判を織り交ぜつつ娯楽としても第一級の逸品に仕立て上げたのである。カルネの「天井桟敷の人々」の素晴らしさは勿論認めるところだが、レジスタンス魂という観点に立てば本作もそれに近い高評価を受けて然るべき傑作と個人的には思うんだがなぁ。キャストが地味だから?それともミステリ仕立ては芸術性が薄いから??取り敢えず再評価が待たれる本作にはスッカリ騙された天晴れさも称え10点満点で御座います。イヤ参った、恐れ入りましたw。
10点(2003-11-13 04:32:18)(笑:1票) (良:1票)
20.  巴里祭
「巴里祭」…嗚呼、何と甘美な響き、何と見事な邦題なんだろう!「望郷」と云い、当時の配給元の狂ったようにズバ抜けた邦題センスの的確さ・素晴らしさは筆舌に尽くし難い。もし仮に「七月十四日」で封切られていたとしたら日本人が斯くも”花の都・巴里”へと思いを馳せたであろうか??昨今の片仮名邦題の氾濫に憂いを隠せない身としては只々羨望の限り。そう、本作のMVPはクレールでもモーリス・ジョーベールでもアナベラでもなく、実はこの名邦題を考案した当時の配給元なのであーーる!!と言っても強ち不当なモノではあるまい、少なくとも日本では。とは言え、如何に見事な邦題を冠しようと内容がクズでは今日に伝わる傑作と成りうべくもないのも当然の摂理。その点でクレールの映画的センスも又ズバ抜けている。のっけから酔わされるジョーベールの主題曲、悪戯小僧たちの鳴らすクラクション、広場から聞こえてくる楽団の奏でる音楽、俄か雨と雷鳴、ワン公、自動ピアノetc‥”トーキー”の持てるポテンシャルを「巴里の屋根の下」をより洗練した形で余す所なく引き出して正に圧巻である。オールセットの巴里の下町を生き生きとした生活空間へと変貌させるに至っては正しく「天才」と評するより外にない。俳優アンサンブルも実にイイ。アナベラ、ジョルジュ・リゴーの主役カップルが醸し出す純情可憐さ、同業のタクシー運ちゃんに扮したレイモン・ゴルディと相棒のワン公の絶妙のコメディ・リリーフぶり、チャップリンを彷彿とさせる素っ頓狂なポール・オリヴィエの酔いどれ紳士、すっかりやさぐれたポーラ、極めつけは謹厳実直な大学教授一家の行列!!雨宿りのアンナとジャンの熱烈なキスを二度も目の当たりにし、子供に見せぬよう狼狽しつつ家に入る終幕の構図のユーモラスさは絶品である。要するに下宿のオバハンから近所の悪ガキに至るまで全てがクレールの描く”巴里の下町”という名のささやかなパズルのピースなのである。言うまでもなく10点満点しかありえない。
10点(2003-11-05 03:09:59)(良:3票)
070.50%
180.57%
2221.58%
31007.17%
41228.75%
533123.73%
625918.57%
722215.91%
819413.91%
9856.09%
10453.23%

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