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しったか偽善者さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 75
性別 男性
自己紹介 かなりゆっくりですが、気まぐれにぼちぼちレビューしていきます。文章がヘタクソで背伸びして書いてますが大目に見てください。ストレス発散のため感情の捌け口として、ささやかな自己満足でレビューしておりますが、結果的に皆様を楽しませ、映画鑑賞のお役に立てれば幸いです。安っぽい正義感をふりかざしたような偽善的自己陶酔レビューが多いです。
「すべての作品を尊敬する謙虚な姿勢を失うことなく」、楽しみながら、かなり感情的なレビューをしております。クソ映画の弾劾は覚悟と労力を要し、めんどくさいので、あまりする気がありません(すべきなんでしょうけど)。基本的にお薦め作品の賞賛です。

大島渚「悦楽」、オリヴェイラ「神曲」、若松孝二「処女ゲバゲバ」など自分が新規登録要望した作品をレビューしてません。申し訳ありません。内容あるレビューをしたいと思ってたら腰が引けて時間がたってしまいました。とりあえず形だけでもこれからレビューしていきます。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  真夜中の弥次さん喜多さん
随分前削除して再投稿/「オールドボーイ」の監督が雑誌で、日本のマンガ界には世界で一番の才能が集まっているとお世辞でしょうが言ってました。その言葉が正しいとすればマンガの原作がやたら多い昨今の映画やドラマは傑作連発してもおかしくないと思うんですけど・・・傑作なんてありますか?。この映画はかなりマシな部類で評価しますが良いとは思えません。私は本作の映像は部分的なイメージについては、原作の世界を表現するべく頑張って、さらにマンガの原作には出せない映像表現ならではの魅力がある気はするんです。技術的なことは知りゃしませんが森の中のバーや三途の川とかキレイだと単純に思いましたから。しかし、作品の姿勢といった点で私には気に入らないところがあります。まず、なんか劇団仲間とその知り合いたちの馴れ合いみたいな雰囲気が漂っている気がします。(そこがむしろ良いのかもしれませんが)。それから、なんだか手抜きに見えるような引っ掛かるところが多すぎる。二人がつながった手は作り物にしか見えない。喜多さんに生えたキノコは食い物には見えない(見えるかな?)。腕に顔がはえてるようには見えず、CGはCGにしか見えない(私はハリウッドは絶対バカにはできないと思う。)。これってどうなんでしょう?。つながった手は筋肉の動きが判るほど「リヤル」で、キノコは植物には見えるべきじゃないでしょうか?。CGはあまりにCGと判りすぎちゃダメじゃないでしょうか?。ワザとあんなふうにするのもありでしょうが、この映画の内容からしてそういうところで興ざめしたりひっかかったりするのはおかしいと思うんです(むしろ絶対に感心させるほどでないとダメ)。スターウォーズのキャラがコスプレに見えたりしたらそこで終わりであるように。ど~せワザとやっててそれも表現の一つなんでしょうね(そうなのかな?)。そこを軽いノリでやり過ごすのが今の「センスある」映画なんですかね。でも、手抜きや妥協に見えませんかね?。どこか私ら観客を舐めてませんか?。もし予算も技術もないからできないのならこの原作でこういう映画作んなくて結構じゃないでしょうか。他にも不満な点あるんですけど、たぶん私ごときには監督の溢れるセンスは理解できないのでしょう。個々の役者は頑張ってたんじゃないでしょうか。
[DVD(邦画)] 5点(2011-04-05 09:08:24)
2.  ゆれる
映画館で公開すぐに観たんですけど今さらレビュー。/兄弟はそれぞれ自分が憧れる望みの人生や輝かしい大切な何かを互いに相手の人生の中に見出している。しかし、兄は弟が自分の領域に踏み込んでくるに及び弟の眩しさに耐えきれなくなる。弟は兄の眩しさが偽りであったと認識して失望する。望みの人生を手に入れることができないことが 人間の一番の悩みかもしれないが、本作は至上の価値を置くその望みの人生が目に見える形で否定される話である。この映画はそれぞれの人間の一番大切な価値を揺るがそうという試みだと思う。/しかし、なぜか私自身の心はあまりゆれなかった。多少あざといくらいによくできた小賢しい作りの脚本で観客の心を動かすという方向性は前作同様だが、個人的に(まったく個人的に)前作のような満足感がなかった。特に裁判後に違和感があった。ラストのナレーションが妙に野暮ったく感じられた。観客の心に一撃 を食らわす芸術性といったものを無理に追求しているように見える。はたして成功しているだろうか?・・・・。 私個人はほとんど映像美に魅せられることがなかったし(私のセンスが悪いのかもしれないけど)、鑑賞後の余韻もたいしたことなかった。自分は長くつきあえる同世代人としてこの監督にあまりに期待しすぎていたのかもしれない(ディアドクターもいまいち)・・・・でも、やっぱり期待してます。/タイトルは「乱れる」「流れる」なんかを意識してるのかな?(あんなのに太刀打ちできるわきゃない・・・)。ナルセ通からは身の程知らずとけなされるんだろうし、この監督にはそっちの方向(芸術性の高い映画)は似合わないと思う。自分としてはもっと娯楽性高めに、女伊丹十三もしくは女周防正行みたいになってほしい気がするんですけど・・・・。 
[映画館(邦画)] 6点(2011-01-19 21:00:37)
3.  レイクサイド マーダーケース
原作未読。最初からこの監督の映画をミステリーとして楽しもうなどとは思ってないので、十分ドキドキして面白かったです。きっと私がミステリーなど判ってない未熟者だからでしょう。これでも少年時代はクィーンやクリスティなどを読みまくってた人間なんですけど伏線の張り方がどうだとかなんて全然判んないし・・・。でも、変なラストも含めて変にフラッシュバックみたいな映像入れたりしないでもうちょっと落ち着いた感じのふつ~の演出にした方がミステリーとしては雰囲気出たんじゃないかな~って思います。しかし、そんなふうに撮る気なんておそらく監督には全然ないのでしょう・・・というか、そもそも私にとってはこの映画はミステリーの要素なんてどうでもいいです。私は中学受験もしてないし、ましてやあんな極端な「お受験」なんかした経験はありません。でも、中学のとき塾は通ったし、高校までは受験というものが頭の中のかなりの部分を支配していたので、なんだか登場人物の心理がとてもよく判る気がします。私だけじゃなく、個人差はあれどもほとんど共通認識的に(受験をしたことがあれば)日本人の子供はトヨエツ言うところの「哀しみ」を背負ってる気がするんですが気のせいでしょうか?。現在の日本においては結構切実な映画じゃないでしょうか?。本作はそれを高みから見てるイヤな映画かもしれませんけど、やっぱり全然他人事じゃないんですよ。なんかイタイ映画ですよ。貧しさで生きるのが必死の国の人々なんかからすれば暢気な話でしょうけどね。上野千鶴子の「学校化社会」かどうか判りませんが、日本社会には人間関係のあり方や人生観や倫理のレベルまでどこか「お受験」の世界に影響を受けて一元化しているところがあり(学歴コンプレックスとかそういうレベルの話じゃない)、本作はそういう社会を非常に上手く表現してるのではないでしょうか?。そんなふうに感じる自分こそ受験に囚われ病んでいるのかもしれないけど・・・。この映画を鼻で笑う塾の先生実際いるんだろうな・・・なんか怖い。単純な「お受験」批判や能天気な競争社会の否定(さすがにヘン。競争自体が悪いわけじゃないのは当然)はただの負け犬の遠吠えですけどね。
[DVD(邦画)] 7点(2010-12-11 22:54:38)
4.  シークレット・サンシャイン 《ネタバレ》 
自ら神に赦されたとする犯人の言葉は傲慢な神への冒涜。その言葉を聞いた主人公の神への逆恨みもお門違い。主人公は自分が最初に犯人を赦して優越感をもって犯人を見下すことにより癒しを得ようとしており、それは神の立場に立とうとする行為。こう考えればキリスト教自体が悪いわけでは全くないでしょう。この映画は宗教批判だとは言い切れません。最終的にはむしろ密かに宗教の中に希望を見出している作品かもしれません。しかし、単に不幸に陥った者の絶望と狂気や世の不条理を描いただけとも言えず、やはり一見罰当たり(?)でキワどい作品でしょうから、キリスト教徒が多い韓国でこれ作った監督の勇気は相当なものだと思います。それにしても、かなり精神的にキツい映画です。本作の「信仰」とか「赦し」とかいったものの本質に真剣に直接迫ろうとする迫力、その切実さは村上春樹「1Q84」など比べ物になりません。近頃では新興宗教なんかの勧誘をしつこくしてくる隣人を想像して他人事とは思えない人も多いんじゃないでしょうか?。狂気と紙一重の妄信の恐ろしさを身に染みて知っている人はこの映画をかなり切実に感じるのではないでしょうか?。静謐でゆったりした画面にただごとではない緊張感が漲っています。チョン・ドヨンの演技の迫力は尋常じゃありません。ストーカー的なソン・ガンホですら、これが普通だよといった感じで笑いになっており、彼の可笑しさや俗っぽい平凡さがちょっとした救いになっています。ラスト、ほんの少しだけ地面に降り注ぐ密かな陽光。私はどうしてもその光の存在自体を、そしてそこに表現された救いと希望を感じ取ろうとしてしまいます。「ベルイマンと比較すなボケッ!」と怒る映画通も多いでしょうけど、この映画はたぶん敬意をもってベルイマンを意識しています。そしてアジア映画である本作は信仰の表現にベルイマンにはない非西洋特有のリアリティがあり、日本人にもそこが切実に感じられると思うのです。結構お気に入りの場面は広場の集会で主人公が音楽を取り替えるところ。あのわけのわからん一見陳腐で可笑しなカオスには不思議な昂揚感があります。「オアシス」からさらにスケールアップしたこの監督、そこらへんの日本の監督とはちょっとレベル違うのでは?。日本の映画人は危機感持ってもいいんじゃないですか?。 
[DVD(字幕)] 10点(2010-07-05 01:17:18)(良:1票)
5.  おくりびと
ハズレくじを引きにくいことから海外の映画祭で賞を獲ったような映画は率先して観る自分なので、本作もアカデミー受賞を知って映画館に観に行きました。本作は真面目に作られた好感の持てる内容ではあると思いますが、別に賞の権威を見下して自分を高みに置いて悦に入るとかでは全くなく(少なからず私はそういう心情が働きがちなゲスな男ですが)、どうにも高評価できません。思うに、ご都合主義が悪いかどうかは映画によって相対的なもので、例えば楽しいミュージカル映画のご都合主義を誰も批判したりはしません(好き嫌いあるにしろ)。死という深刻な題材を扱った本作でさえも演出次第では相当ご都合主義が許容されると思います。汚いところをあえて描かなくても別にかまわないとも思います。しかし、多くの方から散々批判されてるヒロスエの唐突な「けがらわしい!」が後の翻意の展開を無理に作り出していることに見られるように、本作(特に後半)のご都合主義と泣かせに走る作為の不自然さは、ちょっと度を越しているのではないでしょうか?(最後はやりすぎ)。あそこまで違和感があると悪い意味で「あざとい」「わざとらしい」「お涙頂戴」とはっきり言っちゃっていいのではないでしょうか?。私は前半、主人公が納棺の儀式を行う所作と、それを遺族の人々が見守る様子を見てるだけで、大切な人の死の悲しみが伝わってきて泣きましたけど、それは単に題材の選択とモックンの努力の結晶である演技が良かっただけです。信仰に支えられたキリスト教国家と言っても過言でない(言いすぎ?)ようなアメリカの人々からすれば、日本人の宗教的寛容さや死生観は驚きであり、見たことないくらい不自然で大仰な演出(日本では珍しくないんですけど・・・)が妙に新鮮だった。これが受賞の理由ではないでしょうか?(そんなわけないか・・・)。あるテレビ番組で、某テレビ局の社員が自分の局がこの映画に貢献してることを自慢げにしゃべってましたけど、はたして大マスコミ様がこの映画に良い方の影響を与えてるんですかね?(映画の中身と全然関係ないけどヤな感じがしたので作品の評価が下がっちゃうんだな、困ったことに・・・)。私はこの映画の栄誉はイヤ~な方向に日本映画界を導きかねないとすら思います。まあ、そんなこと自分にはどうでもいいんですけど・・・・。
[映画館(邦画)] 5点(2009-05-07 23:38:08)
6.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
この映画には真に尊敬できる人生の先輩が命がけで何かを後輩に伝え残そうとする姿が描かれている。本作のウォルトとタオの関係は、もはや生ける伝説であるスターが、ひよっ子のような新人俳優に本気で何かを伝えているスクリーンの外の姿と重なって見える。それだけでも感動的だ。差別用語連発の偏屈な主人公だが、この映画を観て、彼が「理屈抜きに」尊敬すべき素晴らしい人間だということに異論を唱える人はいないはずだ。ハリー・キャラハン刑事が「理屈抜きに」強烈に強く正しくカッコイイのと同じように。人権大好きでサヨ的心情の持ち主である軟弱な自分にとっては、イーストウッドは偽善に対して鋭い何かを突きつけてくる巨大すぎる憧れの強者だ。ラストの主人公の行動は、微塵も暴力反対的なものなどではない。理屈じゃないのだ。あれほど崇高な自己犠牲であると同時にあれほど完璧な復讐でもある行為なんてあり得るだろうか?。イーストウッドは評論家などにやたら好かれているように思えるし、彼をけなす文章など自分は読んだことないが、それも仕方ない。理屈じゃ太刀打ちできないんだから(と理屈をこねている自分・・・)。自分は「ミスティック・リバー」がこれまで最高かな?(まだ観てない彼の作品多いんですけど・・・)と勝手に思っていたが本作の方が上だと思う。圧倒的に感情を揺さぶられボロ泣きだったのだから。/・・・・などと、興奮したままの勢いで、みなさんの高得点にも便乗して恥ずかしい賞賛をしてしまいましたが・・・最近映画館で泣いてばっかり。気に入った映画はパンフ買うんですけど最近買ってばっかり。どうしたんだろう?・・・・。残念だったのは休日で結構客多かったのにほとんど年輩の方(みんな泣いてた)ばかりだったこと。中高生こそこの映画を観るべきです。自分がタオくらいの年齢のときにこれを観てたら、たぶん今より少しは良い方に人生変わってたと思います。
[映画館(字幕)] 10点(2009-05-02 01:01:43)(良:2票)
7.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
・・・意外に点数低いなぁ。私は世間の絶賛とアカデミー8部門受賞という本作の権威を笠に着て、大激賞のイヤらしいレビューをしますけど・・・みなさん泣きませんでしたか?。私はボロ泣きでしたよ。単純だからでしょうか?。/途中主人公が示唆するように、あの4択のクイズ番組って出題範囲などなく問題内容に出題者の恣意が許されてるので、解るわけない問題出すことなど簡単なわけで(極端なこと言えばみのもんたのプライベートな事柄出せばいい)、欺瞞に満ちたものです。最終的には出題者も左右できない「運」に結果が左右されるいいかげんなものです。安全な高みからうろたえる無知で貧乏な金目当ての解答者を小バカにする醜悪なものです。でも、それってこの世界そのものみたいじゃないですか!。だからこそ、少なからず冷酷な現実に拒絶され続ける我々はインドの視聴者たちと同様、身勝手に主人公を応援し、豊かなくせに彼に自らを重ね、世界を変えたいと願うのです。ムンバイのビル群を見下ろしながら今「世界の中心」にいるという兄のセリフは自己肥大の傲慢さから出たのかもしれませんが、あのシーンには妙な説得力とスケール感がありました。この映画には世界の核心、世界の全てが描かれているという錯覚(そんなわけないけど)を抱きました。本作は最高のエンタメであると同時に突き抜けた崇高さがあると私は勝手に思ってます。/前半のスラムの場面に顕著な全編に渡る疾走感と溢れる生命力は絶妙の音楽とポップな映像に支えられています。もはや風格漂う王道の派手さ、悪趣味さ、カッコ良さじゃないでしょうか?。オペラでも恥ずかしいような純愛は、当初より示される「運命」的な(作られた)全体の構成からすれば当然のこと!。所詮戯れの作り事であることを忘れさせる壮絶な展開をファンタスティックに染め上げるラスト。その快感の余韻は極上!。鑑賞後、なんかこう生きる気力みたいなもんが湧いて元気が出ました。映画ってそれが最高で、それだけでもいいんじゃないですか?。自己満足でもいいです。なんか今後0点もつけられそうな映画ですけどね・・・。 
[映画館(字幕)] 10点(2009-04-24 20:53:47)(良:5票)
8.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦― 《ネタバレ》 
正直、この映画より「演義」に沿ってたNHK人形劇での赤壁の戦いの方が複雑で深くて演技も細かくて(人形なのに・・・)全然面白かったと思うんです。けれども、本作の紅蓮の炎に包まれる大船団の映像は、This is 赤壁といった感じで、子供の頃から頭の中で描いてきた光景を見事にビジュアル化してくれたように思えて感激です(1800年前あんなゴージャスな戦闘やってたとはとても思えないんですけど・・・)。/本作は無理矢理反戦の主張が入り、女性が活躍し、現代に引きつけた「ハリウッド的スーパーアクションラブロマンス」もどきの三国志といったところでしょうか?。したがって「義」や「侠」の世界にラブ&ピースが混じり、ややヘンテコな泣かせ方とオチになってるような気がします。でも、なぜか自分は結構ジ~ンとしちゃったり満足したんですよ。これ、映画的には脚本も演出も技術も通の人からけなされまくるダサい作品だろうし、三国志マニアからは叩かれるに違いないと思うんですけど、お祭りイベント的な性質もあると思うし、私はただ楽しみたいです。正史では赤壁の戦いは簡単な記述しかなく、伝承などを基に千数百年に渡り人々が想像の翼を広げ続け、その一つの到達点として明代の「三国志演義」の権謀術数渦巻く大決戦が存在します。つまり、三国志とは勝手にイメージを膨らませてみんなが集い楽しむ広場のようなものだと思います。思いっきり楽しめる場所を提供してくれただけで本作には感謝したいです。私はただ小学生の頃から好きなだけで、ゲームはしてないし全然マニアじゃないですけど(値の張る正史の邦訳を買うくらいのことはしてますけど)、やっぱ三国志っていいですね。なんでこんなにいつまでたっても面白いんだろ?。三国志の超豪華な映像化というだけで本作好きです。きっとこれを自己満足と言うのでしょうけど・・・。ところで、中村獅童が元海賊(倭寇を連想?)で特攻する役割なのは、やっぱり日本人俳優だからでしょうか?・・・。    
[映画館(邦画)] 8点(2009-04-11 21:55:04)
9.  花とアリス〈劇場版〉
なにやら「こっぱずかしい」感覚や「痛い」感覚があり、それが現実逃避の自己陶酔としても心地よいです。自分は全然ロリコンではないと思ってるんですけど・・・・この蒼井優はカワイイ。本作は、荒唐無稽なストーリーでいい年した大人がはまるのは恥ずかしいような世界を魅力的に構築し、不条理な現実の中から純粋で誠実で輝かしいものをつかみ出そうとする「こっぱずかしい」試みです。この監督じゃなければこんな試みはできないし、サマにならないでしょう。たぶんこの映画(監督)嫌いな人は軟弱で甘えた精神性みたいなのが感じられてイヤなんでしょう。でも、偽善だとしても優しいですよ。人を見る目が温かいですよ。すごく。俗世の我々にこんな優しい世界を見せるのは逆にかなり残酷とも思います。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-07 01:33:06)
10.  それでもボクはやってない
日本の刑事司法制度には代用監獄(最近では代用刑事施設って言うそうですが)というのがあり、自白の強要などが行われ易く、取調べの可視化が必要だと外国からも注文つけられています。それから判検交流といって、裁判所と検察には人事交流があり、そのことに多くの批判があります。また、裁判官の数が少なすぎて裁判官一人が抱える負担が大きすぎるということが問題とされています(映画の中で判事が居眠りしてましたが、私も実際に傍聴で何度もあんな光景見たことあります。)。そして、起訴された場合無罪になるのは奇跡的であり、ほとんど検察が被疑者を裁いているに等しいという現状があります。かように日本は司法制度全般に他の先進国と比べ特異な歪みがあります。そうした状況が何十年も変わらず続いているわけです。・・・・以上のようなことを大学で法学を勉強すると教わります。たぶん世の中の学生は皆こうしたことを知り、腹を立てると思うのです。しかし、俺がこんなことに腹立てても仕方ないし、俺なんかには何もできるわけないし・・・と思ってそこで終わりです。みんなおかしいと思ってるのになぜか何も変わりません。本作はその挫折して行き場のない青臭い憤りをそのまま映画にしたような作品です。その憤りをみんなに共有してもらおうとした作品です。そうすることにより本気でクソ真面目に諦めの先に突き抜けようとした努力と熱意の表れです。昔のサヨの学生運動の気取った勘違いの「正義」ではなく、漱石の唱える素朴な「道理」の実現を目指しているような愚直な映画です。映像や技術にいちゃもんつけるのは野暮に思えるような真っ直ぐな映画です(それがイヤな人も多いんでしょうけど・・・)。これには偽善者の私は心から拍手とエールを送らざるを得ません。この直球はど真ん中ストライクです。まあ、私の場合は自己満足の正義感に酔っているのかもしれませんけど・・・・。
[映画館(邦画)] 9点(2009-04-07 00:45:08)(良:1票)
11.  スカイ・クロラ The Sky Crawlers 《ネタバレ》 
ヴェネチアで記者から何故実写で撮らないのかという批判めいた質問があったようだが、それは全てのアニメ作家に投げかけるべき質問であり、私は押井アニメこそ比較的アニメであることに価値があるアニメだと思う。本作の映画全体で描かれる青空や雲は登場人物の心情などという単純な言葉では表せない静かで陰鬱な精神世界をストーリーと一体になって表現している。私の美的センスを批判されても知ったこっちゃないが、あれは本当に美しいと思う。/監督は根本的には人間ドラマを描くのが苦手なのかもしれない。しかし、人間的になれない人間を描き、せいいっぱいの人間性の表出をすくい取ろうとしているような姿勢には誠実さがある。本作ではあがくように空を這うキルドレたちの姿を冷酷に描きながら優しい視線で見つめている。殺したい、殺されたいと相手に自らの生死を委ねる程の愛は観念的だが、いつも同じ道を通るだけの生に耐えられない者ならそんな愛を望むかもしれない。そういう思考実験的シチュエーションの中、幼くて危うい2人によるラブシーンは痛いくらいの狂おしさがあった。いつも通る同じ道も景色は同じじゃないという主人公だが、彼は愛する人のため新しい道を切り開こうとする。立ちはだかる障害は社会全体で仕組まれたシステムにより倒せないことになっている敵だ。その不条理に無自覚に挑んでいく主人公は残念ながら愚かとしかいえないのが切なくてたまらない。/平和を実感するためのショーとしての戦争という設定自体個人的に変だと思うし、他に不満もあるし、別に押井監督が好きなわけでもないが、本作には好感が持てる。ポニョよりこちらが上だと思う。ただ、空(3D)と地上の描き分けに対する視覚的な違和感はやはりどうしてもぬぐえず、そこはどうにかならないものか?と思った。
[映画館(邦画)] 8点(2008-09-04 21:51:48)
12.  千年女優 《ネタバレ》 
最後のセリフが不評なようですが、私はあのセリフなかったらこの映画無視してます。あれは言葉一つだけですますからこそインパクトあります。別にちゃぶ台ひっくり返したからインパクトがあるわけではなく、彼女の人生からすれば自然な言葉ですが、それを口にしちゃ台無しのような言葉をあえて口にするからこその違和感が妙に心にひっかかって心地良い。清々しくすらあります(落語のさげとは違うかな?)。映像作品であるにもかかわらず、あえて無理矢理にたった一つのセリフに決定的な凝縮された意味をもたせるということこそが本作の目指したところじゃないでしょうか?。死ぬまで人生を演じ続けた女優だからこその告白。演技がドラマチックな女優、人生そのものがドラマチックな女優・・・そんなの甘い。時空を超えて観客の胸に生き続ける女優の怒涛の人生・・・を演じる女優。まさに「千年女優」です。しかし、本作は彼女の人生そのものがステレオタイプでドラマとして面白くないのが残念です。鍵の君の存在自体が彼女の妄想に過ぎないと解釈するのが正しいのかもしれませんが、仮にそうだとしても主人公が男を追いかける動機があまりに弱すぎて彼女の人生は映画として見せられて全然面白いものじゃないです。それに彼女が出てる映画がいかにも面白くなさそう。古き良き?日本映画を思い起こさせてくれません。観客を泣かせて感動させてこそ最後の一言が利くのではないでしょうか?。なんだかこの映画のドラマとしてのつまらなさ、主人公の人生の空虚さこそが最後のオチにつながっている伏線なのでは?とすら私は思ってしまいます。それなら納得かも・・・。まあ、とりあえず本作は絵の美しさとアニメに似合うめまぐるしい場面展開を楽しむことはできます。面白くないのに絵など全体の映像クオリティみたいなものだけでも一応満足はできる作品です。他には・・・・やっぱり音楽がいいですね。
[DVD(邦画)] 6点(2008-06-17 02:03:59)
13.  時をかける少女(2006)
映画館で公開すぐに観たんですけど今さらレビュー。そしてアニメ初レビュー。この映画の「タイムリープ」は、それを行う者がある過去の一時点の自分と入れ替わるというもので、タイムマシンで移動した場合とちがって自らを他者?として見かけることがありません。そして意識はタイムリープ前と継続性があります。それまで居た世界は意識以外はリセットされ、新しい世界が進行するわけです(やり直しがきくこの世界で倫理は存在しないのでは?。たいしたことしない真琴はバカというより超人。)。とはいえ、脳内現象というわけではないので世界は物質的に存在し、その偶然性は支配できません。この世は思うようには行きません。まあ、こういう設定かな?・・・・と思って観ていたのですが、鑑賞後思いました。そんなSF設定なんてどうでもいい。これはいいかげんで青臭い、まさに青春映画だと。悠久の時を刻む世界の中でちっぽけな個人が行う人生の選択、個人の意思や想い。そのかけがえのなさ、大いなる可能性を本作は描いています。月並みでこっぱずかしい表現ですが、一度きりの人生における青春の一瞬の輝きの眩しさが身に染みて感じられました。それで私はOKです。
[映画館(邦画)] 8点(2008-06-17 01:53:34)(良:2票)
14.  嫌われ松子の一生
監督が中谷美紀を下手クソと罵倒してたそうですが、この監督そんなに偉かったの?と思ったのは私だけでしょうか?。「下妻物語」で少し売れたけど、世間的には彼女の方が知名度あるだろうし、CM作ってるようなギョーカイ人が自分はゲージツもできますと映画作ってるようでヤな感じです。しかし・・・これは面白いです。不覚にもここ最近では一番涙出ました。私はある程度以上涙こぼれたら、人を泣かせることだけでも凄いと思うので基本的に低い評価しません。こんなもんで泣くのかと軽蔑されても全然かまいません。たしかに一瞬のインパクトが全てのCMの連続のようだし、語り手の重複やストーリーの不満など違和感を感じることも多かったですけど、思いっきり自分の土俵で相撲をノビノビと取っているようで好印象です。ミュージカルシーンはミュージッククリップみたいでケバケバしく稚拙で悪趣味かもしれないけど、それが魅力的じゃないですか。「ムーラン・ルージュ」的悪趣味さですね。とくに刑務所でのシーンが昂揚感あって好きです。丁寧な作りこみと観客に刺激を与えることに対する熱意をこそ評価すべきと思います。おそらく本作はオヅやミゾグチやヤマナカやナルセなどといった偉大な先人の映画の延長線上にはないかもしれません。いや、映画じゃないって言う人も多いんでしょう。でも、私にとっちゃそんなのどうでもいいことです(そんなこと言えるほど「映画」とは?なんて判っちゃいないので)。最後に内容について少し。人殺してる主人公を簡単には肯定できませんが、結果的に彼女の存在により救われた人(龍やめぐみ)がいるわけで、それを外から眺めて知ってる観客の我々から見れば彼女の人生に価値がないなんて全然思えないし、波乱万丈の人生を過ごせたことだけでも十分彼女は幸せじゃないでしょうか?。若くして職を失ったとか、人殺して刑務所に入ったとかで「人生終わった」と言いますが、実際は本人全然そんなこと考えちゃいません。勝ち組や負け組みなどという言葉が流行る現在において彼女の強さは羨ましいです。私は松子の一生が嫌いどころか愛おしいです。キャプラの某作品より本作の方が素晴らしき哉人生って私は思えますね。褒めすぎかな?。
[映画館(字幕)] 9点(2006-07-10 22:51:08)(良:2票)
15.  砂と霧の家
911以後やたらアメリカの病理を描く映画が多いです。本作もその範疇に入るでしょう。自分がちょっと前に映画館で観たヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」、ワインの世界をを描いた「モンドヴィーノ」なんかでもそうです。なにも「華氏911」とかいうあからさまなのじゃなくてもそんなのが多いです。創作をする人々は時代の空気を表現したいものだそうです。それは単に英雄気取りでアメリカを悪者にしているわけでもないし、サヨってわけでもないでしょう。アメリカ人監督なら相当な危機感をもって自己反省しているのだし、他国の監督ならアメリカに将来の自国の姿を見ているのです。そりゃ自己満足はあるでしょうけどね。私のレビューよりはないでしょうが・・・。国家のあり方や時代の空気なんて我々個人に関係ねえよ、いや、あんまり関係あって欲しくねえ・・・と思っている私ですが、そういうものが実際に個人をどうしようもなく不幸に陥れることもあるし、人々の精神に影響を与えているのは間違いないでしょう。こういう政治的な観方は本来嫌いなんですけど、近年の一連の同じ系譜の映画の連続がそんな観方を強要しているかのようですし、そういう観方をすれば本作も結構すんなり納得いくところが多いです。ヘタレ警察官はあまりに見事なアメリカぶり?でちょっとやりすぎかもしれませんが・・・。でも、本作はそういうことがメインの作品では全然ないと思いますけどね。人それぞれの不幸の度合いは比較不能で、誰が特に悪いわけでもなかったり、みんなが悪かったりで解決不能な問題が世の中にはあります。比較不能な価値の対立があります。本作はそんな表現し難い泥沼の世界のあり様を傍から見ればどうでもいい醜い小さな争いに凝縮し、悲劇的に美しく描いています。私ごときには言葉で本作の感動をうまく表現できないのが残念です。自分の文章力と脳ミソではこの作品の不思議な感動と憂鬱を表現できないのです。そこで上っ面をなぞったレビューもありかな・・・とアメリカ嫌い的な文章になっちゃいました。ごめんなさい。こういう観るからに出来の良さげなのは好きです。映像についてはカメラワークとか知りませんけどキレイでしょ?。玄人受けしそうで高尚だからって私は嫌うことはありません。鼻についてもそれはそれで讃えてやればいいじゃないですか。監督の次作期待してます。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-17 23:20:04)(良:1票)
16.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
パンフの監督インタビュー「この映画には明らかに感情に訴える部分がある。(中略)できれば観客にはその感動に巻き込まれて欲しい。それが全てだと思う。」。好感のもてる明快な信念というか・・。実際暗い暗いこの映画もドラマとして面白いし「感動」しますよね(人それぞれでしょうけど)。ハリウッド的映画作りからはみ出した深みがあるにしろ、観客の「感情に訴え」、観客を「感動」させるという目的達成に向かって研ぎ澄まされた映画とでもいいましょうか。でも、不満があります。ヒラリー・スワンク頑張ってるにしても、あれはどう見てもリアルなプロの試合じゃないですよね。素人の私の目にも明らか。せめて素人の目は誤魔化してもらいたい。本作は他のボクシング映画の何倍もそういうリアルさが求められると思うんです。大目に見てあげるなんて観方しなきゃいけないレベルは克服してほしいです。あえて偽善的な批判をすれば、ラストの尊厳死という問題に関連するような状況(一応文句言われないような言葉使っときます)は深刻すぎてあのボクシングシーンの演出とギャップがあると思います。スポ根成功ものと言える前半の展開はとても面白いですが、毎試合数秒でKOしたり、ひどすぎる反則があったりします。リアルに描かれたあり得ない出来事と、リアルじゃないからあり得ないのは違います。前半だけ観るなら突っ込むのは野暮ですが、そういうあり得ないプレイや反則もラストに直結してるわけですから見過ごせるものじゃない。ボクシングというものが彼女の尊厳に関わってるんですから。明暗の対比とはいえいかがなもんでしょう?。あれじゃ彼女かわいそうです。納得いかなくて余計な不満で腹立ちます。以上の不満はともかく、私は残酷かつ美しい「ラブストーリー」に監督の思惑どおり感動したし、尊厳を守って必死に生きる人々の姿が眩しくて涙出ました。
[映画館(字幕)] 7点(2005-12-01 01:27:40)
17.  スーパーサイズ・ミー
本作は肥満をマックのせいだとする原告が訴えた裁判をきっかけとし、マック食品の危険性を確かめてみたいという動機(まあ、なんだか軽いノリですが・・・)により作ったと冒頭にあります。でも、あらためて言うことではないかもしれませんが、監督の試みは「実験」とか「証明」というものとは程遠いものでしょう。他の食品でも偏って食べ続ければ同様に健康を害する可能性はあること、サンプルが監督一人で少しの対照もなく監督個人特有の体質や生活状況による結果の可能性があること・・・などすぐ思いつくような疑問点があり、私は無知だし理系人間ではありませんが、簡単な理屈からして監督の試みが厳密さを欠くのは明らかだと思います。あの苦行は監督のウケ狙いのパフォーマンスであると言えなくもありません。しかし、だからといって私はこの映画がつまらないとは思いません。本作には現代の食料事情全般(アメリカ特有のものではないのは自明でしょう。)や、企業論理が食事や教育現場までを覆い尽くしているかのような状況などを疑問に思う監督の価値判断がまず先にあります。基本的に同じような価値判断を持ち(なんとなくですが)、権力に抗うことに自己陶酔するような体質の私は、彼の根拠の弱い告発や無駄な徒労的努力を応援するような気持ちでついつい観てしまいます。私みたいな観客を喜ばすエンターテインメントとしては少なくとも十分よく出来た作品でしょう。他人から見れば痛いでしょうけどけどこういうの好きなんですよね・・・。「敵を利する」映画なんでしょうけどね。ただ、やっぱりムーアの後では作品の姿勢や大枠のところでオリジナリティがあまり感じられないし、監督自らの人体実験や汚いゲロにインパクトをたいして感じなかったのでちょっと点を引きます。ムーアのパロディをやってるんでしょうけど根本的に同類に見える気がします。自分の恋人を美化して出演させてるのがちょっと痛いけど微笑ましいですね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-20 00:51:19)(良:1票)
18.  オペレッタ狸御殿
昔、日本には「狸御殿映画」というジャンルがあったそうで(私はもちろん観たことないですが)、この映画はそうした映画に対するオマージュとして作られてるようです。しかし、さすが監督の頭の中のイメージに世界がねじ伏せられてしまう鈴木清順作品です。この監督が映像に紡ぎ出すイメージがつまらないわけなく、独特の面白い映像を見る事ができます。ただ、タイトルにオペレッタを冠しミュージカル映画であるからには音楽やダンスによる快感や満足を私は求めてしまうもので、これは所詮好みの問題でしかありませんが、私は魅力を感じたミュージカルシーンが少なくてちょっと物足りませんでした。ミュージカル映画というジャンルに押し込めておけるような映画ではないとは思いますが・・・。主役二人のデュエットは素朴かつキレイなメロディーで結構良いと思ったんですが・・・歌がもっと巧かったら(魅力的だったら)なぁ・・・と思います。由紀さおりのラップ?なんてショボすぎるのが度を越してます(洒落で意図的だとしても・・・)。昔から薬師丸ひろ子の澄んだカワイイ声は好きなんで歌が聴けて結構嬉しかったですが、彼女が歌った曲があんまり良いとは思えなかったのが残念です。センスのない私ごときが世界の清順監督に文句つけるのも恐れ多いのですが、万人受けする傑作ナンバーを連発していたら私は大傑作として10点つけたでしょう。ともかく今の日本でオリジナルのミュージカル映画(しかも魅力的な映像の)を作ってくれたことには感謝したいです。本作は現実逃避させてくれる見事な「愛すべきナンセンス」ではありますね。しかし、さすがにチャン・ツィイーのカラダの動きのキレは他と一味違いますね。結構ダンス期待してたのでもっと彼女の動きを生かしたシーンが見たかったな・・・。
[映画館(字幕)] 7点(2005-06-11 21:44:59)
19.  父、帰る
いや、ほんとこれいいんじゃないでしょうか・・・。父をソ連に見たてる政治的解釈やキリストに見たてる宗教的解釈をしたり、「イワン」=イワン・カラマーゾフと論じたり、水のイメージなどからタルコフスキーの影響を論じたり・・と、学者や評論家や映画通はすでに様々な視点からこの映画を語り尽くしていることでしょう。本作はそういうことが可能な豊かな表現の作品である反面、少々「あざとい」とか否定的な意味で「高尚」だとか正直私は思います。それはそれで魅力であると知ったかで勘違い野郎の私なんかは感じるのですが・・。しかし、本作はそうした隠喩にまみれた高尚な作品であっても、ストーリーは意外とシンプル(寓話化された単純さ)で結構強烈に心を揺り動かされます。シニカルでぺダンチックな評論家的視点などやっぱりどうでもいいと思える非常に真摯な作品です。自己満足かもしれませんが鑑賞後の余韻がたまりませんでした。どういう余韻かはうまく説明できないのですがボ~ッとなってしまいました(どういう余韻が残るか?というのが私の映画評価で大きな比重を占める基準です)。静かでゆったりしていますが決して退屈ではありません。ハリウッドのけたたましさに慣れきっていてもそれほど不満を感じないでしょう。あえて謎だらけのまま放り出すやり方が成功しているかどうかというのがやはり大問題だと思いますが私個人はこの映画に関してはあれで良いと思います。ソ連やキリストや父親などというのは得体が知れない謎だらけの存在だというのを表現しているのではないでしょうか?。すっきりしないのがこの作品の魅力的な味だと思います。映画館で観てからかなり時間経っちゃったけど、気まぐれに今になって思い出しながらレビューしました。でも、あのなんともいえない薄暗い美しくわびしい映像は大きなスクリーンで観て良かったなぁ・・と自己満足してます。
9点(2005-03-12 22:22:04)(良:3票)
20.  誰も知らない(2004)
実在の事件の「真実」が我々にとって意味するものとはなんでしょうか?。裁判の判決理由の事実認定さえも一義的には「真実」を明らかにしません。また、事件に利害関係のない私など大多数の人間は恣意的に、いいかげんに、無責任に事件を解釈評価します。つまり、乱暴を承知で言えば、こういう新聞に載った事件なんてのは「真実」など人の数だけあり、なおかつ所詮他人事なのです。誰もがあの兄弟たちのアパートの他の住人と同じです。この映画のヒューマニズムも傍観者は加害者というような説教的な意味では所詮無責任だと思うのです。極端な例えですが、我々があの子供たちを見る目とアフリカの餓死する子供たちを見る目はどう違うのでしょう?。本作には当事者を傷つけるという問題もあります。人物を美化したこの映画でさえも実在の当事者に対する私刑のような面を持つことは否定できないでしょう。罪を犯せば法や社会の公正なルールに則って罰せられるべきなのは当然ですが、あの母親も我々他人の無責任な正義感や義憤によって被害を受ける理由はないでしょう。この映画だって無責任な傍観者なのです。しかし、にもかかわらずこの映画のヒューマニズムにはワイドショー的義憤とは全く違う特別な何か、心に訴えかけるものを感じます。私は映画に引き込まれ、痛みを感じ、感動する他ありませんでした。本作は事件の裏に優しく居心地の良い美しい世界を見出しました。限りなく無条件に互いが信頼し愛し合う共同体はまるで一個の人格のように外部がズカズカ入り込むことで傷つき、外部を自ら拒絶します。あまりに危うく脆く痛々しいユートピア。見たことのない美しく同時に醜い不自然に閉塞した世界。無慈悲な仕打ちによって突き落とされたひどい生活の中にしかこんな世界は現れないという皮肉な逆説でしょうか?。事件について私はほとんど知りませんし、私のこの文章も無知のまま匿名で書く全く無責任なものです。私は他人事として、映画として、あの不思議な世界に感動するのみです。
9点(2004-12-15 00:02:40)(良:3票)
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