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エスねこさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 644
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ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23593/
ホームページ http://kine.matrix.jp/
自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

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1.  太陽はひとりぼっち 《ネタバレ》 
極めてシステマチック。極めて論理的。この映画は見事なほどソナタ形式の音楽として「聴ける」。この、全体を統一する伽藍のような美を心行くまで堪能しました。 普段はアート系映画を観る際、自分の「画を観る能力のなさ」に悲しくうなだれてしまうワケなんですが、今回ばかりは「まだオイラにゃ構成を聞く能力があらァね」って自信持っちゃったよ。  というワケでいきなりネタバレ解説ですが、全体はソナタに倣って3部構成+プロローグ&コーダになっています。序盤(序奏)/1日目(提示部)/2日目(展開部)/それ以降(再現部)/最後の夜(コーダ)、という分かれ方ですね。 主題は自然的・非論理的・女性的な世界観と、都会的・合理的・男性的な世界観に分離されてます。それぞれを背負ったキャラクターとして、ヴィットリア(モニカ・ヴェッティ)とピエロ(アラン・ドロン)が配置される、と。 第一主題と第二主題が交互に現れては呼応しあって、互いの距離を近づけて行く。これはまさにクラッシックでのソナタの構築法であって、一番盛り上がるお約束になっている展開部が「株大暴落とその後」に当たっているあたりニクいニクい! 二つの主題は共にビシッと立ちすぎていて、両者が変奏を重ねてひとつのメロディに繰り込まれても多分楽しくないだろうな…と大体予想がつきます。 このあたりはセリフを聞く必要もストーリーを追う必要も全然なし! なぜなら画面いっぱいに広がる、雲や、路上の雑踏や、犬たちの群れこそが重要な劇伴となって主題を装飾し、流れをサポートしているからです。 一番判りやすい雑踏を例に挙げると、最後の方で「また会おうね~」と言って別れた二人。ヴィットリアが屋外へ出ると、息の詰まりそうな雑踏に呑まれてしまう。彼女がいる世界の路上は、提示部では常に無人でした。「無人」という、言い換えれば「ゆとり」という伴奏が、画面で彼女をサポートしていた。第二主題との掛け合いによって「彼女の画面」の装飾はどんどん崩れていく。路上にはチラホラと人が登場し始め、いつのまにか息も詰まるほどの雑踏になって彼女を圧倒し…これと同時に、電話でリズムを律せられていたピエロが電話を受けなくなるのを描き、彼の主題世界も崩れた事を現します。  画面そのものが伴奏であり、主題であり、それが古典的な美しい構成をもって、決められた手順通りに反復され、予定の結末(この映画の場合は和声崩壊)に至る。この、病的なくらいのクラッシックな完全性は、何というかラストに訪れるメランコリーな演出を帳消しにしてしまうほどに美しい。わくわくと胸躍らされるモノがあるのですわ。 予想通りの場所で「FIN」が出た時、初めてサン=サーンスの『オルガン』を聞き終わった時のようなため息が漏れました。話は60年代の終末観にあふれてたかもしれないが、監督の意図とは別に天国へ行かせていただきましたよ。 まったくもう見事な演奏。名盤でした。
[ビデオ(字幕)] 8点(2008-03-02 23:14:18)(良:1票)
2.  007/カジノ・ロワイヤル(1967)
実は子供の頃、土曜の午後に偶然テレビをつけたらこれを放映してて、「140センチ」云々以降は観てました。つまりオチがわかっちゃってるので食指が動かなかったんですな、今まで。 今回初めて通して観て、一流の無駄使いに超一流の脱力をさせて頂きました。この監督たちは、この世の何が無駄か、よくわかってらっしゃる。無駄でないモノがひとつもない(笑)。 本作がティム・バートンに与えた影響の大きさも量り知れないですなぁー。幼少のバートンは、絶対あの敵に自分を重ねて観ていたに違いない。オイラも、あのガラス越しのパントマイム芸だけはしっかり記憶してましたからね。あの頃の彼のパントマイムは絶品だと思うなあ。  だが、音楽がこの上なくダメダメ。 映画そのものには大変よくマッチしているが、シナリオ/映像があれだけ頑張ってるんだから、劇伴も本家「ボンドのテーマ」&スパイ物の音楽全般をちゃかすアレンジを駆使してほしかった。新作の「カジノ〜」ではボンド史上最もエキサイティングなアレンジをしてるので、比較しちゃってなおさら情けない感じ。●2巡目追記:これ、進行が違うだけでアレンジになってるわ! 脱帽しますた! 1点上げ!  もちろん全体としてはすんばらしい。『地下鉄のザジ』が小粒に見えて来るほどの懲りようですわあ(向こうは音楽も凄いんだが)。 個人的にはサスペンダー対ガーターベルトのミサイル戦が超ツボでした。60年代バリバリのサイケな雰囲気も悪くない。バグパイプ軍団のわけのわかんなさや、ベルリンへ行く時の無茶苦茶さ(あれって単に表現主義のパロディしたかったからベルリンにしただけじゃないの?)、スーパー安っぽい夢の中でかかる情けない歌…支離滅裂なドラッグ感覚が散りばめられながらも、話の本筋からはギリギリ外れない。観客を本気で置いて行くわけではない。A級ならではの舵取りの絶妙さに映画職人の腕と意地を見た感じ。 このスノッブさが、現代の映画から消え去ったのは悲しい事かもしれない。本物のゆとりが、まだ本作には残っていて、もう自分たちには(画面を見つめる以外に)手が届かないと痛感させられるのが悔しくてならない。こんなくだらない作品、その気になれば現代で作れないはずがないのに、絶対お目にかかれない。 しゃーねーわ、泣きながらオースティン・パワーズでも見直してみるか…。
[DVD(字幕)] 8点(2007-12-24 07:39:31)
3.  家での静かな一週間
「ノゾキのニヒリズム」とでも言えばいいのか。 (詳細はブログにて)
[映画館(字幕)] 8点(2007-06-14 14:25:51)
4.  ケス 《ネタバレ》 
主人公ビル・キャスパーの生き生きした表情、子供っぽい思考。それが微妙に変化していくのが見もの。彼を認めた教師は、最後はほとんど同業者としての対等な立場で彼と話している。 ケスとの出会いが、少年を《親》にし、次に《教師》にする。 最後に苦いラストへ持っていくのはディナーの皿に残ったパセリみたいなモンで、あんまり気にならなかった。  んが! マンチェスター・ユナイテッドのサッカーは、ありゃ何だ(笑)。全体の硬質でクリスタルな感じの展開より、ケン・ローチのユーモアセンスの方が衝撃でした。ローチも結局はモンティ・パイソンの国の人間ですなあァ。
[映画館(字幕)] 8点(2007-05-10 21:17:38)
5.  ケルジェネツの戦い
今まで慎重に避けてきた、とってもとってもおっかないノルシュテイン評。まあ最初は無難な(そうか?)あたりから…。  去年の『ナイトウォッチ』を皮切りに、太陽ソラリス罪罰カラ兄チャイコフスキー…ソ連・ロシア映画をけっこう観ました。で、美術さんの仕事ぶりが他の文化圏と違うのにビックリ。リトアニアの一分アニメも観たんですが、これすら美術がロシアっていた。 本邦みたいにデッサンがカチッと決まって「整理整頓の行き届いた世界」ではなく、様々な色が重層的に折り重なる「玉虫色でグニャグニャした世界」。明らかにロシア圏の美術担当は、同じ美的感覚の下で仕事をしています。 で、最近とても気になっているのがロシア正教。「言葉」を最重視して、全ての拠り所を聖書に求めるローマ旧教&新教と違い、ロシア正教では偶像としての聖画も重要な信仰対象になってるからです。画だけではなくステンドグラスも信仰対象で、名作の写真集見ても「なんじゃこりゃ」状態なんですが、函館出身の方に聞くと色ガラスの組合せにも宗教観があるんだとか。そういうガラスの光に包まれてミサなんかをやってる風景を想像すると、ロシア圏の映画美学が判らなくもないような。 ともあれ部外者にはまったくわからない独自の美学が、教会分裂千年の歴史で醸成されてきたのは想像に難くないですな。悟り重視だというその教義も、西側諸宗派のように世界を縦割りにしてしまう暴力感がなく、西とは全く別の宗教観の下で映画人が育っているのを感じます。ソクーロフやタルコフスキーはともかく、あのベクマンベトフですらその美的枠組の中にいる…と思うだけでもそこに分け入って、世界観を覗いてみたくなります。  で、その世界に住む究極の監督と言っていいノルシュテインの、思いっきり宗教じみた本作。ロシア正教的な美術への入口編と言ってもいいし、言葉を換えれば到達点と言っちゃってもいいんじゃないすかね。冒頭なんか、聖画をアニメートさせてる時の宗教的高揚感みたいなモノまで感じちゃうし。本作自身が、20世紀から始まった「動く聖画」の鋳型になるかも(まあロシア建国の物語ですが)てな、そんな気迫に満ちています。こいつを見続ければ、得るモノがあるかもなあ。 まあ彼は同時に《エイゼンシュテイン主義》の最右翼でもありますから、ロシア正教だけでは上手に斬れないだろうとは思いますが。やっぱり彼の作品は恐ろしいな。
[DVD(字幕)] 6点(2007-05-02 22:27:33)
6.  花折り
初見。今回DVD化されるまで、喜八郎は恥ずかしながら中学時代に『道成寺』を観たのみだったのだ。そのたった一度の出会いですら他のアニメが霞むほどに強烈で、何年か後に自分を「舞台上で人形を操る」立場に導いてくれたのだから、喜八郎恐るべしなのだが。  閑話休題。 川本喜八郎は、デビュー時にして既に川本喜八郎であった。この、年季や上手下手を超越した作家性は凄いと思う。逆に、3D部の増加した後年の『死者の書』の方が、観ていて悲しくなるくらいだ。 若き日の本作は、当然ながら代表作『道成寺』に及ぶものではないけれど、既に観客の目が、あの独特の《喜八郎界》で遊べてしまう、という点では驚愕すべき人形アニメの一里塚。
[DVD(邦画)] 6点(2007-04-18 12:23:06)
7.  緋牡丹博徒 花札勝負 《ネタバレ》 
人が死ぬ時、寒そうに白い息を吐く。血糊から湯気が立つ。その寒気は凄かった。 それ以外はですね、ダメなんですよ。仮面ライダー世代だから。こういう作品で映像の文法が確立された後、どんどん省略&ウケ狙いに走っていった東映の映像にドップリ浸かってしまった世代だから。半面メイクのバケ安が出てきた時も、「あー怪傑ズバットでこんな親分もいたよなあ」とか想像しちゃって、完全に事象の因果関係が倒立していました。 もちろん藤純子の義侠心も、健さんの忍耐も、嵐寛寿郎の貫禄も、若山富三郎の覇気も、みんな素晴らしい。でも頭の中では各キャラをいちいち「レッド」「ブラック」「ブルー」「イエロー」…と色付けで呼びたくなるくらいの東映特撮キャラ大集合…いや違うこれはプロトタイプなんだプロトタイプ…。 あと、映像まわりも確かに名作の誉れを感じさせる場面は多いけど、冒頭の列車アクションの場面はどうか。あまりに典型的な「仮面ライダー」過ぎないか。オイラがこの場面を誉められるかというと…まず無理だな。 本作のように後年ステレオタイプになってしまう作品の場合、若輩者が真の評価を下すのは難しいというのを学習した。子供時代の刷り込みだろうが、NHKの少年ドラマシリーズには美学を感じても、東映特撮には感じねえんだオイラは。いやホント申し訳ない。
[映画館(邦画)] 4点(2007-01-15 01:27:29)(良:1票)
8.  恐竜100万年
完全に見くびってました。すごいよすごいよ! セリフのないのは当然として、テキトーさ加減も手抜かりなく全体に配分されてるし、ストーリー滅茶苦茶だし、BGMもテクスチュアがあったりリズムだけだったりしてポリシーがなく、映画前半で「常識」というモノがブチ壊される。もはや全編異化効果と言っていい(いやー、そしたら無意味なんだけど…(^^;)。この破壊力は並みじゃない。印象が一番近い作品を挙げろと言われたら、迷わず『スーパー・マグナム』と答えるね(笑)。  余談を交えながら…。 原始時代の祭祀を描写して物議をかもした前衛バレエ音楽『春の祭典』。コレを分析した指揮者ピエール・ブーレーズは、「少しづつずらして配置されたリズム細胞によるテンポの攪乱、その効果によって音がリズムから切り離されて自由になる」…とまあ大体こんな感じの結論を導いたんですが、この論文が書かれたのは記憶では本作のちょっと前。難解だったこの曲の音楽的意味が明快に解き明かされ、音楽界を震撼させました。 で、『恐竜100万年』の製作スタッフがこんな論文読んでたとは思わないんだけど、感触はすごい似てるんですよ。『春の祭典』を聞いた時の呪術的な浮遊感に。だから、オイラ的にはオチャラケながらも原始の真髄を映像化してしまった『ナンチャッテ春の祭典』に見えてしまいました。  まあ一言でまとめれば「果てしなくサイケでプリミティブ」ってコトです。極めて60年代的ドラッグ・ムービー。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-05 06:34:37)(良:1票)
9.  帰って来たヨッパライ
狙いは断然、60年代映画のセックスシンボル緑魔子(異論はおありでしょうが)だったんですがね…ちょっとだけ世代がズレてるせいで、彼女の映画観たことなかったんすよ…そんな想いを吹き飛ばすくらいに北山修が若~ッ!! …いやオイラは彼のコトをまず“自切俳人”として認識する、ごく限られた世代なのですが…。 とまあ、あの時代の雰囲気をムンムンに感じながら、そして昔韓国・今北朝鮮、と完全に回帰してしまった世相(かつての韓国大統領朴ちゃんも今の将軍様並みに言われてたんよ)におののき、胸が一瞬映るだけの緑魔子のヌードにヘナヘナと脱力しつつ、シュールなようでいて辛気臭い展開に日本映画独自の湿気を感じてムシムシした上、教科書的な異化効果&予想外に骨太で安定感ありまくりのシナリオに萎え、来るべきカタストロフの普通さにキョトンとしちゃったワケです。 でも! 最後まで画面にかじりつくように見続けることができたのは、クルセイダーズ3人のとてつもなくヘボい演技力のおかげでした(口パク完全に合ってないし~ (^o^;)。いっやあ、あそこまで下手だと監督が狙った以上のシュールな映画になってしまうっすよ。表情ゼロで、あの棒読みのセリフが醸し出すトボケた雰囲気は、一度でも演劇の訓練を受けた人間ではやれないんじゃないかな。演技ではない天然のノホホンぶりが、作品が追う痛烈なテーマと絶妙なコントラストを作っていました。こぉれはレアだよ~。 緑魔子を堪能できたとは言い難い作品なので、また別の60年代映画にチャレンジするか…。 
[DVD(邦画)] 6点(2006-07-19 01:26:26)
10.  ハスラー
この映画を見たのは20歳の時。 なにぶんバリバリの理系でしたから、当然「世渡りってのはナ、才能だけじゃダメなんだよ。図太く悪どく生きなきゃなァ」っていうこの映画の肝の部分には反感を持ったワケですね。ある意味、この映画は自分の人生に枠をはめてしまったかもしれない。恐ろしいまでのメッセージ性でした。ポール・ニューマンを真似して、一万円札をクシャクシャにしてポケットに突っ込んでおいたり、若い頃はこの映画の影響がけっこう大きかったかな。 今じゃすっかりジャッキー・グリーソンの世代になり、彼の言う事の端々が実感できるようになってきました。世の中、甘くはないしキレイでもない。泣き言並べたって、聞いてくれるのは同じ境遇の負け犬だけ。ファッツ曰く「才能なんて、誰にでもある」…そうだよ。蹴落としたい奴にコッソリ後ろから近づいて、頭を思いっきり殴りつけるのは、誰にだってできる。そして長い人生のある場面では、明日を迎えるためにソレをやんなきゃなんない…それがわかるまで、けっこうな時間を費やしました。 今でも、この映画に対しては敵愾心というか、認めてやりたくない気持ちがありますね。世の中はキレイで、素晴らしくあるべきだ…この映画は一生、自分の敵に回るのかもしれない。いや、この映画を越える事が大事なのかも。 本作が「人生」という競技に与えられた、かなり難易度の高いエクササイズである事は間違いないトコロでしょう。 
[映画館(字幕)] 6点(2006-05-24 22:31:42)
11.  ジャンヌ・ダルク裁判
気にも留めてなかったメルギブの『パッション』だけど、内容を聞いてからは猛烈にレビューしてみたい。してみたいが、サスガにソノ内容では見る勇気が…というワケで、代わりに同じ宗教映画でも対極の演出方法であるブレッソンの『ジャンヌ・ダルク裁判』をレビューしときます(笑)。  『スリ』では演技だけを否定していたブレッソンですが、本作では演出までも否定。監督としての仕事を放棄してるようにすら見えてしまう恐ろしい作品。動かないカメラ、棒読みのセリフ、平板な照明、ノーメイクで腫れぼったい目の主役、ちっともモンタージュしてないカット割、さらには音楽なし、演技経験者なし、カラーなし…。カタログスペックだけなら『死霊の盆踊り』級ですよもう(あ! 盆踊りはカラー作品だぞ (^^;)。「観客をなめとんのかーっ!!」という声が聞こえてきそうだけど、ブレッソン監督による強烈な作為の否定が全編を貫いております。恐ろしいまでの徹底ぶりです。攻撃対象はもちろん、「映画の教科書」と言われる、カール・ドライヤー監督の名作『裁かるゝジャンヌ』。真っ向から、全力で、かの名品にツバを吐きかけウンコまみれにして踏んづけてポイしてしまったブレッソン監督の冷厳な怒りが、映画を見終わる頃にはさすがに腹に沁みてオナカいっぱいになってしまいます。「創作しちゃダメなんだ。色付けせずに、素材をそのまま提供しなければ、ただの見世物になっちまうんだ」という監督の声が聞こえてきそう。彼と前後して活動を始めるアンディ・ウォーホルが同じ手法で、もっと過激な撮り方をしたのを思えば、ブレッソンの歩んだ道は彼一人のモノではないはずです。近年では同じ視点に立って『ブレアウィッチ・プロジェクト』が作られてますし。観客の目を意識した、エンターテインメント/ショービジネスに立脚する創作活動を徹底して否定したこの映画の潔さは、かえって観客の脳を働かせて、ジャンヌが持っていた「信仰」に対して冷静に想いを巡らす事ができるようになります(そう、映画の中では彼女の信仰もとことん裸にされて行く)。これは、「野にあるように活けるべし」と華道の極意を語った千利休に似た、全てを削ぎ落とした究極の「作品」なのです。日々の暮らしの中で立ち止まって、創作の何たるかを考えてみたい人には絶対のオススメ品(確かにシロウト向けじゃないですが)。 ●2006/7/23:ムシェットと同一点に下げ
[DVD(字幕)] 9点(2006-02-25 18:58:10)
12.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
昔は怖かったんだ。確かに。でもさー、『プラン9・フロム・アウター・スペース』を見た瞬間から、本作はオイラの中でギャグ映画に変貌してしまったのだった。だって昼間の墓地で襲ってくるゾンビですよー! シチュエーションがあまりに同じすぎ(笑)。ロメロがエド・ウッドJrを意識してたとは一度も聞いた事はない(ってか、そんなわきゃない)んだけど、どうしてここまで似ちゃってるのか…これは、才能ある若手監督による低予算リメイク版『プラン9』です。断言!
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-02-12 19:57:42)
13.  伯爵夫人
愛情のこもった6点。確かに評価が難しいけど、好きな作品です。さて、以降は本作には直接関係なし。モンティパイソンの作品の登録要望を出してて本作にたどり着いたんですが、あのパイソンズのご指定コメディエンヌ、キャロル・クリーヴランドが本作に出てるんですねー! チャップリン(しかも本作『伯爵夫人』)からパイソンへ、この対極のコメディを渡り歩いた彼女の演技の幅に感嘆です…てか、モンティパイソンのデビュー時のキャリアでは、彼女が一番上だったんじゃん。けっこう衝撃の事実かも…。
[地上波(吹替)] 6点(2006-02-11 11:31:50)
14.  最後の航海
いまだに『タイタニック』を見てない理由のひとつに、この映画の圧倒的な存在感があります。どんな豪華客船を沈めたところで、CGでやってる限りはこの映画に勝てるわけがない(本物パワーとしてはもう一作『フィツカラルド』ってのもありますナ)。淀川さんの受け売りですが、ヒロインの救出シーンは本当に沈む船の中で撮影したそうで、撮影現場には異常な緊張感が漂っていたそうです。オイラにとってはかけがえのない沈没テーマ大作。
[地上波(吹替)] 8点(2005-11-06 14:31:35)
15.  シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック
《ある意味ネタバレ》舞台でのマジックショーに様々な特撮を施して「何がなんだかわかんないけどスゴイ」的勢いで押し切ったヤンのデビュー作。上映会があるたびに足を運んで何度も見たんだけど、何年か前DVDが出たときにですね、もう速攻で買ったワケですよ。で、昔から気になっていた本作の豪快な特撮の秘密を解き明かそうと、じ~っくりとコマ送りでチェックしたワケです。「ひぇ~! フィルムに書き足ししてるよ!」「あーコレはフィルムに写った黒子を塗りつぶしたのね」…そう。ヤン爺さんの特撮は、ひとコマひとコマフィルムに絵の具で『描いて』たんです。シーンによっては筆の跡までわかります。この作品、操演している黒子がキレイに消去されてますから、おそらく半分以上のフィルムに手が入っていると思います。コマ撮りの忍耐力だけでもスゴイのに、ポストプロダクションにかけるパワーも尋常じゃないよ。若き魔術師ヤンの贈る、セルアニメとは違った意味での《動くグラフィック・アート》。
[映画館(字幕)] 7点(2005-04-22 17:26:32)(良:1票)
16.  小さな兵隊
「見ず嫌い」の映画監督が何人かいるんだけど、ゴダールもその一人(ルイ・マルは好きなんだけど…)。で、理解しやすそうな本作を選んで、初めてチャレンジしたんですが…なんじゃこりゃ! 芸術性ウンヌンよりも先に、製作サイドのとてつもなく貧乏な台所事情が涙を誘いますねえ。これ、この必死に風景で誤魔化しつつモノローグでシーンをつなぎ、アクションシーンをわざとカットし(たように見せかけ)てモノローグでつなぎ、大戦の被害者であるが故にアルジェリア問題をこじらせてしまったフランスの若者のやるせない状況を長い長いモノローグで…ってモノローグばっかじゃん! コレでさー、拷問シーンの合間に女の子のストリップとレスリングが挟まってたら、まんまエド・ウッドの『グレンとグレンダ』になるっすよ。いやま、ベラ・ルゴシ級の怪優も必要だけどさー。話としてはありがちスパイ物なんで、なおさらエド・ウッドの持っていた新奇性と比較しちゃうなー。うーん、ゴダールってようわからん…。
[DVD(字幕)] 4点(2005-04-21 00:36:01)
17.  華氏451
高校の頃、ブラッドベリの原作を読んで感動してビデオも見たんだけど…くだらねえ。とことんくだらねえ。原作で非難されている『映像』をメディアとして使ってるのに、そこに何にもヒネリがない。自作だけは特別なんですか。そうですか。いろいろエピソードをカットしておきながら。観客を納得させるには『モンティパイソンのホーリー・グレール』の幕切れくらいの大仕掛けをやってくれなきゃねえ。まだ見てないが、リスペクト作品である『華氏911』にも同じような「自分は特別」志向を感じる。案外この2者はカウンター・カルチャーに根ざす、深い深い部分で似てるのかもね。美術的には『時計仕掛けのオレンジ』『スリーパー』の先取りって事で評価はできる。全然違う原作を選んでおけばよかったんだと思う。
[地上波(吹替)] 2点(2004-12-25 16:43:13)(良:1票)
18.  ある殺し屋
仕事人の原点ですねー。おっそろしく地味で渋い。燻し銀どころか百年物の海泡石パイプの輝きだ…ってよくわかんねー例えですが。でも1点だけ気になる点があるので、現在の平均よりひとつ下げます。市川雷蔵、声が細すぎないか…? もっと落ち着いた男の低い声であるべきなんじゃ…? そこを藤田まこと流にアレンジした結果が必殺シリーズであるのか、オイラが先に中村主水を刷り込まれているが故の違和感なのか、判然とはしませんが。私的には市川雷蔵の殺し屋像は、完成形になっていないような気がする。続編『ある殺し屋の鍵』ではもっとエンタメして違和感がグッと減ってますが、それがいいのか悪いのかも判断できないな…。作品としての完成度は、小粒ながら素晴らしいと思います。
[ビデオ(字幕)] 6点(2004-12-25 02:07:15)
19.  天使ガブリエルと鵞鳥夫人
世に隠れなき艶笑古典、ボッカチオの『デカメロン』第2話「好色な修道士が天使になりすます悪事を働く話(ベネチアの物語)」の完全映像化。これを60年代という時期に人形アニメでやったというのは凄すぎです。まあ、チェコの人形劇文化は500年以上の歴史を誇る(子供向けというより、言葉が分断したボヘミアを文化的に繋ぐニュース番組的な役割を果たしたらしい)深い世界なので、《エロい人形劇》という芸能ジャンルがあっても全然フシギじゃないんですが…。しかしトルンカの描く上品なエロっぽさには参りますねえ。鵞鳥夫人、まるでカモがネギ背負って歩いてる状態だもんなア(゚ー゚;…。個人的には中盤のサスペンス、ベネチアならではの水路の逃避行が素晴らしかったです。ノンビリ歌いながら迫ってくる船頭さんとか、なかなかいい味が出てました。大人向けに製作された映画だけあって、一般の人たちの鑑賞に十二分に堪える良作。
8点(2004-12-19 22:09:24)
20.  電子頭脳おばあさん 《ネタバレ》 
(かんたーたさん、この作品だけは私的に絶対外せないのです。先取り御免!)《ちょいバレ》表情のない人形で、最初は男か女かもわからない手抜き顔。なのに話が進んでいくとキャラが立ってくるからフシギ。飛行カプセルに置き忘れたおばあさんの写真を見送る時と、電婆にボールを落とされちゃう時の(´・ω・`)ショボーンって感じが、たまらなく愛くるしいです。レトロな未来世界の美術も手が込んでいて面白いけど、そんな博物館的な価値は正直どーでもよくなるほど、子供の心情がうまく出ている。ちなみに本作はNHKがトルンカ影響下で作った『チロリン村とクルミの木』と同時期の製作で、『空中都市008』より遥か以前の作品。ワールドワイドでは『サンダーバード』よりも前。量産される子供向けSF番組に刈られてしまった芽が、おばあさんの写真を無くしてしまった主人公みたいに、憐れで悲しくなってくる。未来を舞台にした、素晴らしい(´・ω・`)ショボーンパワー放射ムービー。
9点(2004-12-18 16:30:56)(良:1票)
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