1. 新幹線大爆破(2025)
《ネタバレ》 元ネタ(「原作」ってなってるけどこの場合「原作」と言うのかなぁ?)は大昔に観たっきりなのでディテールはほぼ覚えていません。が、当時的にはかなり興奮して鑑賞した記憶があります。洋画でも名作・大作パニックorデザスター作品が目白押しだった70年代。邦画も負けていないぞ!という感銘を受けた記憶があります。 そして本作。ツカミは良いですね。JRさんの協力を得ているだけあって臨場感が素晴らしい。VFXも見事です。キャスティングも良いのでは?リブ-ト作とされていますが、シリーズ化向きではないにせよ普通に続編ですね。 ただ、その続編的な作りが皮肉にもアダになっている気がしないでもなし。なにしろ物語の根幹をなす部分が、直接的及び間接的に過去作のエピソードに起因するリベンジもの的に仕立てている訳ですから。 リベンジを図った爆弾犯が父親によって女子高生の悲しくも歪められた感情を利用して事件を画策したというのはどうなんでしょうか?現実的に出来るものだろうか?しかも、女子高生は以前の事件後随分経ってから生まれていて何か時系列に不自然だったりもして。爆弾犯よりちょっと年下ぐらいの方が自然でしたね。あ、それだと上手く騙さないか?まぁそれは兎も角として、いずれにしても犯行動機や犯行手段がかなり無理筋の力技感があります。この時点で、正直かなり興覚めしてしまいました。 パニック大作は、かなりの部分で非現実的なのが常道ではあります。なので、本作についても微に入り細に入り「ここが変だ」「ここがおかしい」とか言うのは野暮だとは思います。兎に角スリリングで面白ければ良い!という考え方もありだと思いますし自分でもそう思います。けれども、動機とか手段とかもう少し現実的に仕立てていただいていれば、感情移入も出来ただろうし終演時には感動も出来ただろうと思うのです。 と言う訳で、面白いには面白い、けれどイマイチ素直に楽しめなかったので6点献上に留めます。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-04-30 12:21:50)★《新規》★ |
2. フランケンシュタインの怪物の怪物
《ネタバレ》 正直言って込み入り過ぎていて判りにくく&解りにくく設定されている感じ。主演が本人役として出演していてモキュメンタリー風に進行して行く。ただし、劇中及び劇中劇に登場する人物と一人何役も演じている。主人公、主人公の父親、主人公の祖父、劇中劇の主人公の父親と彼が演じる怪物。特にメイクで明確に区別している訳でもないので、集中して観ていないと誰が誰だか判らなくなりそうです。 結局、主人公が自分の父親とは一体どんな人物でどんな仕事をして来たのかを探るうち、父親の本当の姿、父親がしたことを知ることになるといった流れなんですが、何せ判りにくいし解りにくいです。なんとなくウェス・アンダーソン風味がしないでもない演出なんですが、かなりの変化球に加え、そもそも何故フランケンシュタインの怪物なのか?更には何故怪物の怪物なのか?というところを考えてしまうと、基本的にはコメディと思われる作品がその実かなり深いところを狙ってるのかな?という疑問に繋がって来て益々意味不明に思えてしまいます。 まぁ、その時点で作り手の術中にハマってしまっているのかも知れませんね。純粋にコメディとして観賞するのが正解かも知れません。てか、そう受け止めることと致しました。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-29 15:04:47)★《新規》★ |
3. The Braid of time(原題)
《ネタバレ》 主人公部分のアニメ、これはロストスコープなのでしょうか?過去の報道映像的部分もですね。実写から作成したようなアニメと切り絵的なアニメが混在した独特の雰囲気ですね。 テーマについては、冒頭から中盤までは民族と性別についての歴史を背景にしたような語り、終盤はパナマ運河返還の歴史を背景にした語り。一貫したテーマ性は正直なところ感じられませんでした。語りが多く、それもかなり詩的と言うか哲学的と言うか、ファンタジックな映像表現とも相まって、ヒロイン(作り手?)の脳内イメージの映像化的作品に思えました。難解、と言うより少々回わりくどいような印象が残ります。 おそらく、もっと作品テーマに通じる知識や理解があれば、より感慨深く鑑賞出来たのかも知れません。私にはハードルが高かったのかも。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-29 14:40:37)★《新規》★ |
4. ナニカの断片
《ネタバレ》 「サングラス」「炊飯器」「カゼルがパインツ」の3編からなるショートムービー。そうじゃなくても8分弱の短い尺なのに更にそこに3話とは。 各エピソードの印象としては殆どショートコント。シュールと言うか不条理と言うかナンセンスと言うか、大笑いするようなネタではなくクスっとさせるネタの連続。3つ目が一番気に入ったかな?一番コント的ですが。着想は面白いと思います。 日常見逃してしまっているものの、注意深く見ていると結構アルアルな対象をそこそこデフォルメして表現している感じですね。この3話に共通している具体的なナニカがあるわけではないように思えます。てか、ないと言って良いと思います。抽象的というか概念的と言うか漠然としたナニカが共通している。じゃ、そのナニカって何?と聞かれてもそもそも共通項がないのだから答えられない。ナニカというのは、そんなモヤっとした存在であって決して生きて行く上で具体的に必要なもんじゃないような。 3つのエピソードが多いのか少ないのか?多いわけはないですね。じゃ、少ないのかどうか。もう少しあっても良かったかな?という感じです。ただ、増やせば増やすほどに更に焦点がボヤけて行ってしまうかも。そのあたりに疑問が残ると言うか、課題があると言うか、現状では未完の作品?と言った印象の残る1本でした。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-04-29 13:39:34)★《新規》★ |
5. iHostage
《ネタバレ》 シンプルかつストレート、実話ですから、と言われてしまえばそこまでですが、犯人は逃走する客たちを何故おとなしく見送っていたのか?人質になった男性客は何故逃げなかったのか?等々の疑問が浮かびます。犯人が死んでしまった以上、最早事件の背景も動機も何も推測するしか出来ず、作品中では推測さえしません。正直なところ、あまり微に入り細に入りではなくて中身がそれ程ない作品、言い方を変えれば解説も分析もない表面だけ追ったドキュメンタリーみたいな作品に思えてしまいました。 実話ベースということもあって、現実味のある緊迫感はあります。何だか分からないけど大変なことになっているみたいな。作り手には申し訳ないのですが、言ってしまえばそれだけ、といった印象でした。 作品のテーマは何なのか?作り手の狙いは、訴えたかったのは何なのか?緊張感があってスピーディな展開が魅力的なだけに、人質と犯人それぞれの心理描写とか、肝心な部分が少しばかりボンヤリし過ぎているのかなという残念な作品でした。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-29 13:18:02)★《新規》★ |
6. スパイク・ガールズ
《ネタバレ》 あまり笑えないコメディ。てか、個人的には全く笑えず。おネーさんたちもコーチも謎のカルト集団?も、登場人物に全く感情移入とか共感とか出来ないってのは、いくらダークコメディであってもどうなの?という感じでした。 寧ろ、主人公たちがあまりにヒド過ぎるのでカルトなんだか山賊なんだかわからないオヤジ集団(一人だけ少し若い)の方に肩入れしたくなるぐらい。 チームの面々のキャラ設定から、もしかしてお色気路線なのかな?と仄かな期待もしましたがサービスカットはほぼゼロ。否、まるでゼロ。かといって、スプラッター全開かと思いきやチョコチョコっとVFXで仕上げてる程度。コメディなのかホラーなのか何なのか?バレーボールチームが一丸となって特技を生かして悪党どもと戦う作品、ではありませんでした。最後になってバレーボール武器にするなって。何なの邦題?(同時に何なの原題?) コーチの意味不明な爆死で全滅かと思いきや一部生き残りが凶暴化して?街に戻るというエンディングにも、意外性とかはまるでなく勿論?続編に繋がるようなフリもなく、一体これは何だったのだろうという後悔の念が残る作品でした。 [インターネット(字幕)] 2点(2025-04-29 11:59:26)★《新規》★ |
7. CLOSE/クロース(2022)
《ネタバレ》 あまりに近過ぎた二人の少年。まさにクロース。そんな二人が登り始める大人への階段。その第一歩だった中学校への入学は、二人の少年に今までになかった環境を与えることになるのですね。 二人とその家族だけで構成されていた世界から、性別・人種・趣味嗜好等々、様々な子どもたちが二人の生活を取り囲むようになる。本来はそれに適応し社会性等を身に着けて行くことで子どもたちは成長する。ところが、この二人にとってそれはあまりに重い試練だったのでしょう。 レオはある意味強かった。周囲に順応し、アイスホッケーという新たな試練を自らに課し、無意識下の世界かも知れないけれどレミだけを見ていた生活からの離脱を図る。それは当然と言えば当然のことです。しかし、レミにはまだ早過ぎた。否、それは出来ないことだったのかも知れませんね。二人の間に生まれた大きな隔たりは、レミの部屋で寝ていた時にレオがベッドから抜け出し一人で眠ろうとした時、レミがそれに憤り半ば取っ組み合いの喧嘩になった時に明らかになり始めました。休み時間に芝生で寝転ぶレオを枕にして眠ろうとしていたレミ。それを拒むレオ。その時にもレミは大きく戸惑いました。 おそらくは、レミはレオに対してレオがレミに対するものとは異なる感情を抱いていたのでしょう。これも今までは無意識下のことだった。でも、レオの気付きがレミにもある意味異なる気付きを与えてしまったようです。そして、苦しみに耐えきれずレミはレオを生かしてしまった。 一方、レオもそのことに気付いてしまった。レミの母親に「ボクがレミを突き放したから」と言うレオですが、そこには二人だけにしか解らない深い苦しみがあった、否、少なくともレミの母親には解ったのかも知れませんね。 空っぽになったレミの家を振り返るレオの目には何が映っていたのか。彼は前を向くことが出来るのか。深く考えさせられるエンディングでした。 それにしても心象風景そのもののような美しい絵。具体を言葉で語らずに演技で語る少年二人と家族たちの優れた演技。あたかもドキュメントのようなシンプルさにも関わらす雄弁に語る作品。間違いなく佳作です。 (追記) これを書くひと月前にレミの母親役のエミリー・ドゥケンヌさんは亡くなっているのですね。惜しい俳優さんを亡くしました。 [インターネット(字幕)] 9点(2025-04-27 09:32:08)《新規》 |
8. 市子
《ネタバレ》 重い空気に包まれたヒューマンドラマ(ラブストーリー)。無戸籍であることは社会においては存在しないに等しくなってしまいかねない。限られた条件で生きる中で、本当の幸せに辿り着くことは出来ないのか? いろいろと考えさせられる作品でした。少なくとも出生の時点では母親に最大の原因と言うか責任があったでしょう。きちんと法に則って、DV夫と対峙する強い決意を持ってあらゆる社会資源を活用して対応すれば、市子に無用な重荷を背負わせなくても済んだかもしれない。勿論、それは殆ど机上の空論で実際には難しいでしょうけれど。 子どもだった市子には主体的に困難を乗り越えることは無理だったことは間違いないでしょう。大人たちの中で流れに身を任せて生きざるを得なかった。悲し過ぎます。殆ど意味も解らず月子としても生きること。それは成長するにつれ想像を絶する苦悩を呼び起こしたに違いありません。そして、自我も確立し周囲の流れに逆らえる力が付き始めた時、月子の命を奪うという歪んだ決断をしてしまう。しかも母親はそこに迎合してしまう。ここでも母親の自分ありきの論理が市子の進むべき道を閉ざしてしまった。 家庭が無いに等しい市子は恋人に拠り所を求めようともするけれど自ら崩れて行ってしまう。更には、状況は全く異なってはいるものの再び人の命に手をかけてしまう。そして、幾度もの挫折や失望の末にやっと辿り着いた長谷川という安住の地。その3年間は、いつ失ってしまうか分からないという不安を伴いつつも人生最上の日々だったことでしょう。しかし、幸福の絶頂は即ち最悪の失望となってしまう。 もはやここまでという決意だったのか、ネット上で見つけた自殺願望の女性を呼び寄せた市子。果たして自らの死を選んだのか?それともリセットの手段として利用したのか?長谷川の愛は及ばなかったことは確か。 ひとりの人間のアイデンティティとは何?社会のルールのおける存在意義と、本質的・普遍的な意味での存在意義。それらを対比しつつ人の生き方を問うようなテーマ性を感じた佳作でした。 ただ、本作の基本テーマのスタート地点と言える市子の幼少期から高校時代までの設定が少々雑なのは何とかならなかったものか?決してダークファンタジーでもエンタメ色の強いスリラーでもない作品と思えますので、市子が月子になりすまして就学するというトンデモ設定はいただけなかった。月子が公的支援を受けているのが決定的。100%なりすまし不可能です。ここは現実的な設定を工夫して欲しかったところです。 それと、ラストにオープニングのカットを繰り返したことはどうでしょう?冒頭見ていて何故市子がびしょ濡れなのか判りませんでした。でも、クルマが岸壁から落ちて2人死亡というニュースで観客は判るはず。物語の余韻を残すためのリピートなのか?でも少々説明的になり過ぎているように思え残念でした。 そんな不満は抱きつつも、硬派で重厚な人間ドラマとして見ごたえのある1本ではありました。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-04-25 11:06:31)《新規》 |
9. 電エースQ(OV)
《ネタバレ》 怪獣映画愛、特撮映画愛、昭和レトロ愛に溢れた作品ですね。それ以上でもそれ以下でもない。だから、ストーリーがどうだとか、演技がどうだとかを言ってしまうと無粋になってしまうかなと。 とは言え、ストーリーといい出演者といい相当微妙な作品であることは言わざるを得ないところです。好きな人は徹底的に好きかも。一方、嫌いな人や興味のない人は触れない方が良い世界ですね。嫌いな人や興味のない人は、多分電エースQの変身場面で耐えられなくなってしまうでしょう。 かく言う私は、歌手としてのタブレット純さんのファンとして観賞しました。変身シーンは流石に引きかけてしまいましたが、彼のMVだと思えば問題なし。そう、何らかの割り切りなしには相当厳しい鑑賞ハードルです。河崎監督作品やタブレット純さんの歌に興味のない人は、この結界を破るのは難しいことでしょう。コアなファンのみに贈られたものであろう作品でした。 [インターネット(邦画)] 3点(2025-04-24 17:45:51)《新規》 |
10. MASK
《ネタバレ》 なんだか恐い。ホラーってわけじゃないのに恐い。ヤリ口が陰湿だなぁ。 ファミレスとかファストフード店のアルバイトが気に入らない客のオーダーに悪さする、みたいな話は真偽は別として昔からあるけれど、コロナ禍のタイミングでコレって恐いなぁ。 人間の浅ましさは日常の誰にでも手を出せる手段でいとも簡単に表出するということが、かなり現実味を持って表現されている作品でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-04-24 17:34:04)《新規》 |
11. リミット・オブ・アサシン
《ネタバレ》 暗殺者の孤独、妻子がいたばかりに起きた悲劇、裏で彼を捨て駒の如く扱う組織への復讐、敵対する相手に芽生えるシンパシー。裏社会に生きる男を主役に据えたリベンジアクションに必要な要素は悉く兼ね備えた作品。あとはどう料理するかって感じですね。 本作では、凄腕暗殺者が妻子を自らの裏家業に巻き込んで失ってしまったショックによって非情さを失ってしまい(何で高額報酬で気持ちがなびいたかは不明、何で愛する妻を想いながらターゲットと寝たのかも不明)、結果感情的に流され本来の姿を失わされた相手によって殺されてしまうというのが一つ目の調理ポイント。そして組織によって蘇生して情報を聞き出され、お役御免となって再度殺されそうになったところで逆襲、余命24時間(薬物投与による副作用なのか埋め込まれた生命維持装置の寿命なのか不明)の間に組織の策略を阻止するというのが二つ目にして最大の調理ポイント。 そこにお決まりの逆転また逆転とか、主人公が知らなかった組織の非人間的な行為の露呈とか、思いがけない協力者の登場とか、いくつかのエッセンスが加わってくる訳ですが、スピーディな展開と派手なアクションシーンのおかげで大いに楽しませてくれるものの、肝心要の主人公の凄腕殺し屋感が弱いのです。この人ホントに非情なヒットマンなの?てな感じに見えてしまう。それは、彼の非情さを見せつけてくれるようなシーンがなかったのが一番の原因かと。組織の下っ端とかには滅法強いし非情ではあるものの、それはアクションシーンの中でのお話に限られるし、見逃してあげちゃったりもしてるし。 凄惨なシーンが多々登場する割には意外とライトな感じで鑑賞できる作品。決してキャスティングは悪くない、どころか寧ろ良いと思われるのに、今一つ浅いというかヒネリがないと言うか、シンプルな面白さは十分あるのに何だか勿体なさを感じた作品でした。 あ、ラストシーンは要らないと個人的には思いました。アレって観る者が想像すべき後日談的なもんじゃないかと。減点要素です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-04-24 00:15:04)《新規》 |
12. 不思議惑星キン・ザ・ザ
《ネタバレ》 遅れ馳せながら鑑賞。カルト的人気と評価を得た作品という世間の評判を聞いていてずっと気になっていました。 大きく分けて二通りの見方が出来るのかと。ひとつは、ベタでスベリ無視の強引なコントで全編埋め尽くされたあくまでもコメディ、それも旧ソ連製のレアなSFコメディとしての見方。もうひとつは、一見すると現代社会(文明社会或いは資本主義社会)への批判的・否定的な論調に見せつつ、実は逆に隠喩を駆使した強烈な体制批判を放つ作品という見方。 あ、別に分けて考える必要はないですね。実に上手くミックスされていて、登場人物のキャラ設定、台詞、絶妙なBGM、そして思いのほか大掛かりなセット等々と相まって不思議な魅力に包まれています。 勿論、ダメな人にはダメですね。この空気間はある程度観る者を選ぶかも。私は冒頭からピンポイントで惹き付けられましたが、最初のちょっとを見てリタイアする人がいたとしても納得です。 ただ、惹き付けられたとは言うものの、ちょっと気に入らなかったと言うか引いてしまったところがあるとすれば、それはウラジミールおじさんのキャラ。建築士とは到底思えないオレ様キャラ。常に支配的であろうとしていて排他的。如何にも旧ソ連的イメージ。それが後半から終盤にかけて急に人間味を前面に押し出して来る。高圧的で冷酷な人間のようでいて、我が国の支配層は温情溢れる素顔があるんだよ、みたいな体制批判的なのかなと思っていたのに実は裏では体制側に擦り寄ってるような印象が無きにしも非ず。これってちょっと気に入らないどころか作品自体が気に入らないという話になっちゃいかねませんが。 約40年前の作品。芸術面では素晴らしい一面を見せ続けて来た国が生み出した新境地、と公開当時は言って良かっただろう作品。ただし、今の彼の国の状況を見てしまうと複雑な気持ちが生まれてしまうのも正直な感想。今の彼の国の人の目にはこの作品はどう映るのか?少々、てか大いに気になったりもします。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-23 18:27:58) |
13. アビゲイル
《ネタバレ》 吸血鬼映画と言うと年代的には長いこと「吸血鬼=ドラキュラ=クリストファー・リー」でした。その後、明確に転換点がある訳ではありませんが徐々に吸血鬼映画はヴァンパイア映画に遷移していき(あくまでも個人的なイメージです)、2000年代に入って「トワイライト」等に代表されるファッショナブルなラブストーリーへと変わって行った、みたいな(あくまでも個人的な)印象を持ってます。 そんな訳で、本作は予告編やら公式のあらすじで吸血鬼映画と言うよりバイオレンスホラーを予感して鑑賞しました。シチュエーションとしては少し前に観た航空機内を舞台にしたアレと殆ど同じですね。閉鎖空間に悪党が籠ってみたらまさかの難敵登場!みたいな。悪党が食い殺されていく快感的面白さは同様にあるのではないかと。 が、これをもってヴァンパイア映画としての面白さを満喫できるかと言うと何だか違和感が無きにしも非ず。何よりも美しくないです。流血頼み過ぎる。死に様に至っては爆発ですし。ハッキリ言ってキタナイ!流血の中にも美しさは意識して欲しかったところです。 なので、↑でも言いましたが、鑑賞前からイメージしていたバイオレンスホラー作品でした。そして、そう観る限りは十分とは言えないまでも楽しめました。十分じゃないというのは、例えば、何で犯行グループをわざわざこんな面倒なプロセス踏まないでも力ずくで餌食を集めりゃいいんじゃね?みたいに思えてしまう。手下をコントロール出来てないのも謎。要は、ビジュアル面とかキャスティング面での完成度に対して薄いなーと思えてしまうのです。 続編あり?TVシリーズのパイロット版?のようなエンディングですね。流れ的には、ヒロイン@誘拐犯が生き残ったのは普通にアビゲイルの感謝の念じゃないような。 などと様々考えて、高評価はどうかなぁと思える微妙な作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-04-22 10:27:37)(良:1票) |
14. ランチボックス
《ネタバレ》 ほのぼのとしたラブストーリー。 がんちゃんはハルが届けてくれる弁当が本当は大好きだし朝食抜きの生活にとってなくてはならないもの。でも、仕事が見つからない中で自分のために毎日弁当を作っては届けてくれる彼女に対して、もっと彼女自身のために時間を大切にして欲しいという気持ちもある。だから、つい「もう弁当はいらない」などと言ってしまう。言ってしまって後悔している始末。 ハルはがんちゃんに「もう弁当はいらない」と言われちょっと悲しくなる。けれども、がんちゃんが自分のことを大切に思っているからこその言葉というのも解る。翌日の弁当は白飯おにぎり2個という意地悪をしつつ、直接届けることには気が引けてしまい彼の後輩に託してしまう始末。 一念発起したのかハードルを下げたのかハルは翌日すぐに仕事を見つける。がんちゃんの気持ちにすぐに応えたかった。そして、見つけた仕事は弁当作り。彼女の意地が見え隠れする。それに対して、がんちゃんはもう自分に弁当は届かないと解りつつも彼女の就職を祝う。そして翌日からは後輩同様にランチはコンビニで買う生活に。 弁当を食べながらの後輩との会話、コンビニのおにぎりを食べながらのがんちゃんとハルの会話、ちょっと気まずくなった前と後での二人の寝起き、そしてラストの後輩とのやりとり。細かな演出に二人の心の機微が映し出されていて、観終わってほっこりとした気分になれる作品でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-04-21 00:32:00) |
15. 樹の海
《ネタバレ》 富士の樹海を舞台にして、自殺を物語の中心に据えていることから、終始重苦しい空気の中で語られていくのかなと思いきや、各エピソードの入り口には破滅や絶望があるものの、登場人物たちの心情が解きほぐされていくうちに希望の光が見えてくるような構成と展開。感涙に咽ぶという作品と言うよりも、後からじんわりと温められて行くような感覚でした。 死と生を対極的に描くことなく、ひとりの人間が常に併せ持つものとして寧ろ一体的にと言うか、当たり前に描かれているように感じられ、それは数多ある死、とりわけ自殺をテーマにした作品の中でも新鮮な感動を覚えるものでした。 どの登場人物(死んでしまった者、生き残った者、直接・間接に関わった者)にも、それぞれの境遇や立ち位置から生と死についての気付きが描かれていて、正直なところ個人的に感情移入することは難しいのですが、現実問題として捉えるに大いに感慨深いものがありました。 強いて言わせていただくならば、冒頭のバスのシーンや黄色いビラ等、ひとつ間違えば無理筋になりかねないような人生の交差点的設定は無くても成立したような。各エピソードを演出的に交錯させるまでもなく、観る者の心の中で織り交ぜて考えさせてくれる作品でした。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-04-19 10:50:19) |
16. Love Will Tear Us Apart(2023)
《ネタバレ》 予備知識がなかったので、冒頭のDVや激しいイジメから察するに、いじめられっ子が豹変していじめっ子への復讐に走り、更には自分に優しくしてくれた女の子を苦しめる暴力父をも成敗する、みたいな展開を予想していたら、いきなり推しバンドと女子高生とのツアーという展開。 だいたいからして、バンドメンバーと未成年の女の子のプライベートキャンプという設定には大いに引いてしまいましたが、当然の如くバンドメンバーの頭上には死亡フラグが林立し、お約束通りに血祭りにあげられていきます。更に、それに飽き足らず惨劇は続く訳ですが、その段階で真犯人は推測可能になりますね。 ただし、途中参加の遺族かつ刑事の逆恨みというのが無理やり感はあるもののドンデン返しとして用意されてます。このエピソードがないとかなり平板なストーリーだったかも。 グロシーンはそこそこありあますが、(あえて?それとも予算的に?)チープな、と言うか見ようによってコミカルな演出なので、キモさやグロさは殆ど感じないです。(あくまでも個人の感覚です) 「歪んだ愛」「究極の愛」がテーマなのでしょうか?いじめられっ子の思いは「愛」と言えば「愛」なのかも知れません。が、偏執的になればなるほど当然の如く「愛」も変質してしまう訳で、愛される方が愛する方に同期してしまったエンディングは、歪んだハッピーエンドとも言えるのかと。ただ、現実的に考えれば、彼は出血多量で死亡、彼女は途方に暮れて逮捕されるというバッドエンドでしょう。 大上段に構えているかの如きタイトルに「?」となりつつ、ヒロインの心の内側(小学校以来、しかも最悪の状況での再会にも関わらずいじめられっ子に同期していく心情)をもう少し丁寧に描いてくれればな、という残念さも感じての評価です。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-04-19 10:12:19) |
17. 隙魔(OV)
《ネタバレ》 ありがちな都市伝説にひと工夫加えた物語。幽霊の正体見たら自分でした、という「実は死んでました系」の作りかな?と思えなくもないのですが、実際にヒロインは日々生活しているように見えるところから、ヒロインは幽霊というよりも死後の世界で追体験しているという理解も成り立つのかなと。 B級ホラーと言ってしまえば確かにそうなのかもしれませんが、要所要所が大きく破綻しているような雑さは感じられず、いろいろと考えを巡らせる楽しさもありました。長編ではなくショートフィルムで纏めてくれればもう少し高評価かな?と思われるちょっと惜しい作品ですね。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-04-19 09:57:36) |
18. デリシャス(2025)
《ネタバレ》 「ファニーゲーム」的なお話かなと思って観ていたら、当たらずしも遠からずという流れ。そしてそこに、まさかの衝撃の?展開。彼女たちは文字通りケダモノだったのですね。ホントに屋根裏に居たのかも。 お金持ちの一家を狙い済まし、金品よりも血肉を狙い、挙句一家崩壊とは。アナタたち一体何なの?何が目的?あのパリピたちは皆お仲間だとして結構な勢いで犠牲者続出中?勢力拡大中? 気に入られた(相思相愛?)女の子はこれからどうなっていくのでしょう?一緒にいればいつかはケダモノ化するのでしょうか?疑問は多々思い浮かびますが、適度な尺に解り易いストーリーとスピーディな展開。観て損のない作品かと。ただし、ホラーとしての深ーい物語を期待してはいけませんね。先読み容易です。あくまでもライトにご鑑賞ください。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-04-19 09:53:32) |
19. なまず
《ネタバレ》 1枚の恥ずかしいレントゲン写真の流失によって振り回される関係者たちを描いたコメディ、なのでしょうけれど、写真の流失騒ぎは単なる発端であって、そこから展開していく物語はイマイチ無理やり繋ぎ合わせている感じがしてシックリと来ませんでした。 そもそも件のレントゲン写真があまりにイイ加減(どう考えてもそのアングルの写真撮れっこないでしょ?ストロボたいてるし)で、ヒロインがそれを自分と彼氏との写真だと思い込むのも根拠が明示されないので無理やり過ぎる感じ。 タイトルのナマズの登場は唐突過ぎるし、ナマズの見た世界をナマズか語るっていうのだったらそれに徹した方が良いし、肝心のナマズで繋がないもんだから各エピソードがバラバラな感じ。 実に取り留めのないという作品。そもそもコメディなのに笑える場面が少な過ぎるのもマイナスポイントでした。 [インターネット(字幕)] 3点(2025-04-19 09:44:44) |
20. タイムカット
《ネタバレ》 タイムパラドックスものとしては少々粗いかな?という作品。謎の装置のスイッチを入れたら、姉が殺された時点にタイムトラベルしちゃったから助けなきゃ、でも助けたら姉の死後に生まれた自分の存在は消えちゃうかも、でも助けなきゃ!という物語。そこに、そもそもタイムマシンを作ったのはヒロイン姉の同級生の物理学オタクで、当時の恨みを晴らすべく20年間頑張って完成したタイムマシンで過去に遡って同級生たちを抹殺する、という物語か重なります。 姉の死を契機に生まれたヒロインには、姉を殺人鬼の魔手から救えば自らの存在が消えるかも知れないというジレンマがあり、それに対して殺人犯は過去を変えても自分の現状は変わらないのだと確信している。過去を変えれば未来も変わるというタイムパラドックスものの一つの定番に、過去を変えても時間軸が分岐するから現在には影響しないというもう一つの定番が重なり合い、さてどっちが本当でしょう?結果ヒロインは影響を垣間見つつも過去に遡って生きることを選ぶというもの。 ん?矛盾してる?作り手的には矛盾はしてないのですね。作り手はタイトル通りに「タイム」は「カット」出来るのだという原則で組み立てている模様。でも、なんか違和感。ヒロインは姉の救出後に戻った現在で、自らの存在が両親に認識されていないことを確認しますが、だったら何であなたは存在してるの?という疑問が生じます。時間が分岐しているのであれば、もともとのヒロインの過ごした時間も存在し続けているのですから両親は認識できる筈。存在しているのに認識されないってのは変なような気が。ここはきちんと整理して欲しかったところです。 とは言ってみたものの、この手の物理の原理原則の美味しいところ取りをしてややこしく組み立てている物語は好物。難いこと言わずにエンタメとして楽しむのであれば大いに楽しい作品です。矛盾個所は多々あるものの、総じて言えばお楽しみ感十分のライトなSF。いろいろ考えさせられたというのも作り手の策にハマった証拠ですね。うん、結果的には満足したので高評価。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-19 09:40:14) |