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1.  ざ・鬼太鼓座 《ネタバレ》 
巻頭の荒々しい波濤のショットを始め、佐渡の日本的な自然が実に美的に活写されていて海外マーケットを多分に意識している風にもとれるが、 その風景はあくまで躍動する若者らと一体化する形で構図化されていて単なる絵葉書的美観には陥らない。  神社や商店街などのロケーションにおける端正な構図と人物配置、屋内セットにおける透明板の床から仰ぐ大胆なアングルなどが尚のこと 演者のパフォーマンスを引き立てる。  バチを叩く青年たちの精悍な肉体がハイライトによって美しく立体的に浮かび上がり、その律動する肢体は強烈な色気を発散して素晴らしい。  披露される演目の合間に、海辺や街中をひたすら走って鍛錬するメンバーの姿が幾度も反復される。 それらのショットは、芸能の土着性と共に若々しい躍動感をもって迫ってくる。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2017-02-25 22:28:05)
2.  追いつめられて(1987) 《ネタバレ》 
ホワイトハウスからペンタゴン上空を経て、一軒家へと至る見事な空撮。そしてケヴィン・コスナーの回想形式の語り。 元となるジョン・ファーローのノワール『大時計』(1948)の冒頭の大胆なカメラ移動を意識して大掛かりに変奏したオープニングである。 夜の路地に立つコスナーのシルエットや、緩から急へのドラマ展開などもノワールスタイルを踏襲したものだ。  一方では1980年代でのリメイクということで様々な設定の改変があるが、あからさまな性愛シーンや同性愛の設定など当時ならばコードに引っ掛った シーンを採り入れる一方、喫煙のショットなどは逆に除かれているあたりが世相の差として興味深い。  ポラロイドフィルムをデジタル化して画像解析していくサスペンスも、今見れば何やら映画史の流れを思わせる趣向で面白く、 階段や廊下を使った追っかけや市街カーチェイスを採り入れたアクション志向も、オリジナルとの差別化要素だ。 アクション自体にも撮り方にもさして工夫はないが。  ドラマは国防絡みにスケールアップした分、痴情関係で右往左往するコスナーやジーン・ハックマンらのキャラクターが冴えないのは問題だし、 ショーン・ヤングの役柄は単なる色情狂的な人物にとどまり、魅力を欠く。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-02-05 23:01:02)
3.  1000年刻みの日時計 牧野村物語 《ネタバレ》 
太陽の運行のショット。稲の生育や受精のショット。それら、膨大な時間と手間暇をかけた映像は生活と一体化した見事なスペクタクルである。  土器の発見から始まる遺構の発掘のエピソードなど、偶然の要素が生活=映画の中に取り込まれ、発展し、映画を豊かに形づくっていくのが凄い。  神主さんの祝詞の響きや、みねさんと呼ばれる女性の延々と続く味のあるおしゃべりがなんとも魅力的でまるで聞き飽きない。  村民が協力して演じる五巴の一揆のエピソードでは、長回しのショットで各々が拙いながらも順々に台詞を披露していく。 懸命に練習して台詞を覚えたのだろう、そうした画面には表れていない時間と努力がダイレクトに伝わってくる。  学校の校庭で学生たちの生演奏が始まると、クレーンが上昇し、出演した村民の方達が輪になって名前を名乗りながらカメラの前を歩いていく。 連帯感に満ちた、ハートフルで何とも素敵なエンディングである。
[DVD(邦画)] 10点(2017-01-05 23:58:05)
4.  海へ See you 《ネタバレ》 
事あるごとに幾度も幾度も回想シーンに飛ぶという、最悪の語りで進む。仮にもレースの映画でこのような「後ろ向き」な進行は勘弁して欲しい。 桜田淳子との対話シーンとなると、その途中途中で説明の為のフラッシュバックに突入。 しかも、それがいしだあゆみ絡みの類似シーンの反復というから、クドい事この上ない。 いかにもこの脚本家好みだと思われる設定や女優が登場してくるが、ヒロイン二人もここではただ鬱陶しい。  南極の大地を駆ける犬たちのイメージを受け継いだ、砂漠を走る車両の空撮ショットも次第に単調と化す。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-23 23:59:45)
5.  動くな、死ね、甦れ! 《ネタバレ》 
映画の終盤近く、強盗団から逃れた少年と少女が束の間の休息をとっている。 そのままクレーンのカメラが昇っていくと、 晴天なのか曇天なのか白い空に黒々とした木の枝が映し出される。  この後、二人は機関車に乗って晴れて故郷へと向かうのだが、 その長閑で爽快なはずの空と木の図象は、白地に黒い亀裂が入っていくような、 何やら不穏で禍々しいものとしても迫ってくる。  果たしてその予兆通り、乾いた悲劇が二人を待ち受けるのだが、 それが暗示を意図したショットであるのかどうかは定かでない。  ともあれ、こうしたモノクロの優位を活かした画面造形の妙は全編に見られる。  雪や吐息・湯気・子豚の白、機関車や泥土の黒。  手持ちとロケーションを主体としながら、計算されたかのように それら白と黒が絶妙に配置されており、 さらにその中に様々なアクションと音楽性が組み込まれる様は何度みても驚異だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-23 00:54:17)
6.  柳川堀割物語
映画の冒頭、緩やかに進む平底舩の船首低位置に据えられたカメラが 掘割の景観を映し出していく。 木々から漏れた陽光が水面で反射し、 水路沿いの民家の軒下に光の揺れを作り出している。 子供たちが戯れ、ご老人が寛いでいる。 また夕焼けの水田では、逆光の中で一人の男性が足踏み水車を回し続けている。 かつては映画の最初期にも撮影されたそれらの風物は、柳川の景観として以上に 映画の被写体として、動的かつリズミカルで尚且つ美しい。  古くから培われた掘割の合理的なシステムが、アニメーション・図版を活用して 解説されるのも勿論アニメーション監督の特色だろうが、 大半を占める実写部分のレイアウト、動きの捉え方にその資質が表れている。  高度成長期の危機に瀕した掘割。その汚れきった死相は、静止した一枚写真の 数々で提示されるのも高畑流の演出だろう。  流れ、巡ってこそ生きる水が、動きあってのフィルムを通しての生として語られる。     
[DVD(邦画)] 8点(2014-07-24 15:51:08)
7.  吼えろ鉄拳
初っ端から真田広之が銃弾の嵐を受けるように、登場人物の死も数限りない。 死臭漂う作品でありながら、一方ではコミカルなギャグも満載であるという辺り、 まさに出鱈目である。 が、そうした渾身の荒唐無稽こそが鈴木則文の魅力だ。  延々と続く追走、追走がまるで退屈にならないのは街中に 飛び込んだ大胆なゲリラ的ロケ撮影に漲るパワーと意欲ゆえである。  国内外、豊富な雑踏ロケーションでのアクション撮影には大胆さだけでなく 綿密な準備と段取りが必要なことだろう。  高層ビルの合間を素手とロープで昇り降りし、塀を飛び越え、断崖からジャンプする。 映画は様々な高低の装置を創り出し、垂直のアクションを展開する。  その個々のアイデアから積み上げられた逃走シークエンスであるがゆえに 観る者を飽かさず、俳優達がそのアクションを命懸けでこなすがゆえに 感動的でもある。 真田広之の運動神経、反射神経の素晴らしさ。それらは今現在の彼の活躍を 大いに納得させる。  断崖から落ち、波間に浮かぶ志穂美悦子の亡骸。 彼女を包む鮮血の「本物らしくない」鮮紅色。映画の赤である。  千葉真一の見せ場作りも抜かりない。      
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-13 21:46:46)
8.  クラブ・ラインストーン/今夜は最高
ニューヨーク夜景の空撮から始まって、その華やかな金髪とスパンコールの輝きを 伴いながら笑顔を振りまくドリー・パートン。 相方には、ギンギラの衣装でカントリーミュージックを熱唱する シルヴェスター・スタローン。  二人が演技以上の親密さで共演するステージシーンがそれなりに煌びやかでいい。  彼らの仲睦まじいツーショットを収めるためのシネマスコープサイズと云っても 過言ではない。  中盤の長閑なテネシーの場面でも、シネスコを活かした二人の配置と照明によって 印象的な画づくりをいくつか見せてくれる。  『オスカー』以降のコメディ演技にはどうにも無理矢理感があるが、 ここでのスタローンは音楽に、コメディにと果敢な意欲を見せる。 ほとんど無謀だが。 ともあれ心底楽しげに弾けているところが微笑ましい。        
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2014-02-17 20:49:00)
9.  火まつり
キャストをみて初めて職業俳優が多数出演していたとわかる。 そのくらい、キャストの佇まいや方言が現地に溶け込んでいる。 それは引きのカメラによる達成でもあるだろう。  街の一角を、後方に山を望む駅を、引いたカメラで出来る限り広域に取り入れ その中で複数の人物を近景と遠景の間で動かし、絡ませるなど 非常に手間と労力のかかる贅沢な演出をしている。 人間と自然を一体のものとして画面に載せた、意欲的なロケ撮影だ。  オートバイに乗った男女が勢い余って生垣に投げ出される、 滑走する漁船から安岡力也が海に放り出される、といった危険なスタントも 引きのワンカットで収めるといった具合に、アクションも気合が入っている。  静かな森の中で次第に風が立ち上がり、ざわざわと枝葉が揺れ出す。 激しく降り出す森の中の雨は人工の雨か、それとも本物か。 これらの撮影はまさに神憑りと云うべきだろう。  太地喜和子の乗る小舟が、埠頭を歩く北大路欣也と並走しながら入港してくる、 その船側から陸側を望む横移動の緩やかな運動感。 柳町光男も、これをやっている。        
[ビデオ(邦画)] 8点(2014-01-11 23:29:42)
10.  恐怖分子
夕景の街中にあるガスタンク。十字の格子が浮かび上がる部屋。木々のざわめき。 半透明なレースカーテンの白の揺れ。風にはためく、壁に貼られたモノクロ写真。  何気ない風景のようでいて、その佇まいだけで不穏な気配を濃密に湛える画面の 息遣いがことごとく心をざわつかせる。  そして人物の表情が見えるか見えないかの半逆光の加減が絶妙で、 その無表情と陰影はキャラクターの心理を読み取らせない。  ゆえに本作は、物語的にも画面展開的にも全く予断を許さない。  それだけに、突発的な暴力が炸裂する刹那のインパクトは見る者を戦慄させ、 静かに流れ出す『煙が目に沁みる』のレコード音の情感に 訳も分からないまま心を動かされてしまう。  80年代の空気をすくい取りながら、まるで古さを感じさせない。 
[ビデオ(字幕)] 10点(2012-10-05 23:52:51)
11.  無人の野
作中での人物のクロースアップはかなり頻繁だが、 それは構図から逃避するための安易なものでは決してなく、 一個の生命の個性を、感情を強固に描写するためのものに相違ない。  米軍のヘリが落とした照明弾用パラシュートを見つけては喜び、 米軍兵士を見事に威嚇し退散させた大蛇を振り回しては喜ぶ ラム・トイとグエン・トゥイ・アンの農民夫婦。  そのパラシュートを利用して衣服を縫う。大蛇の皮を剥いで太鼓を作る。 ヘリに見つからないよう、木々の枝を揺すって炊事の煙を拡散させる。 赤ん坊をビニール袋に包み、共に水中に隠れて空襲から守る。  そうした生活の一部としての戦争描写もまた、 彼らの印象的な表情と共に、丹念かつ具体的だ。  同時代の体験者ならではの顔であり、居住まいであり、リアクションである。  同時に米軍パイロット側のと表情のドラマも並行することで、 ラストにおいてその妻子の顔写真と、それが燃える様を見つめる グエン・トゥイ・アンの表情が胸を打つ。  そして、時に詩的な趣きをみせるメコンデルタの葦原の情景描写も瑞々しく 素晴らしい。  ヘリに狙撃されるシーンの仰角・俯瞰のカメラワークが醸成する迫真の緊迫感は、 『北北西に進路を取れ』のトウモロコシ畑にも決して負けない。 
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-06-17 00:01:03)
12.  デ・ジャ・ヴュ(1987)
ピンク色のランプシェードが淡く反映する列車の車窓を介して、あるいは深い森の木陰で、クリストファー(ミシェル・ヴォワタ)は時空を越えてルクレツィア(キャロル・ブーケ)と視線を交錯させる。 カメラと正対した彼女の美貌と謎めいた眼差しは観るものを虜にせずにおかない。  謝肉祭の喧騒の中、仮面を外した彼女の表情が蝋燭の光に次第に浮かび上がり、妖しい瞳と口元の動きが復讐の「斧」を示唆するかに見える。 撮影はレナード・ベルタ。蝋燭、松明、焚き火、青白い月光といった慎ましい光が17世紀の夜の闇を生々しく印象付ける。  森の中をジョギングする人々を追う左へのパンが、中世の馬群の疾走にスムーズに繋がっていく時空往還の感覚の見事さ。酒場の賑わいをゆっくり捉えていく移動の魔的な魅力。  ダニエル・シュミットらしくドキュメンタリー風のニュース映像から始まる怪奇譚は、ファンタジックと云ってもよい白光と、ピノ・ドナジオの甘美な旋律で締めくくられ、そのラストショットはただ美しい。 
[地上波(字幕)] 8点(2011-11-25 22:44:57)
13.  飛行士の妻
街頭を歩きながら口論するフィリップ・マルローとマリー・リヴィエール。 それをハンディで追うカメラ。偶々通りがかった通行人なのか、エキストラなのか、後景に映る人々が何事かとカメラのほうに眼を向けたりしている。 駅やカフェテラス、バス内や公園と、街の空気にささやかに映画を波及させ、それを何気なく取り込みながら、映画が生々しく進行している感覚それだけで十分に楽しい。  飛行士を尾行するフィリップ・マルローに、お茶目で可愛い少女(アンヌ=ロール・ムーリ)が絡んでくる。目的自体が曖昧なまま、男女が男女を尾行するサスペンスの程よい緩さ。 緑豊かな公園の遊歩道、およびカフェの窓際席での二人の他愛ない会話劇がまたすこぶる楽しい。 尾行対象を常に後景(画面奥)に意識させるレイアウトが、画面全体を包括する視線を要求してくる。よって映画の心地よい緊張がまったく途切れない。  本作では緑を基調とした配色の中、少女の羽織るレインコートの黄色のアクセントが鮮烈だ。 
[映画館(字幕)] 9点(2011-11-06 18:34:45)
14.  タイトロープ
黒の領域を目一杯とりながら、見せるべき身体部位や輪郭線は最小の光源によって的確に浮かび上がらせ、画面は常に見事な艶を保持している。  このB・サーティースのローキーによって、イーストウッドの顔面半分も濃い闇に塗りつぶされ、その中に潜む彼のオルターエゴを強く印象づけてくる。  仮面、覆面、ピエロ、人形もまた「裏面」を嫌でも意識させるモチーフだ。  そして、脱『ダーティ・ハリー』として自制されたガンファイトの代わりにクライマックスのアクション画面に閃くのは、稲光とヘリのサーチライト、操車場を走るレール面の照り返しである。 雷光に浮かび上がる犯人とイーストウッドの上下の切返しショット。その相似の表情が禍々しい。  次女が無邪気に語る卑語や護身用教材人形、娼婦の咥えるアイスキャンディー、ジュヌビエーブ・ビジョルドと向かい合っての筋トレで性をユーモラスに隠喩し、80年代ノワールとして倫理コードと戯れつつ、イーストウッド父娘はレイプ被害という過酷なエモーションをも担ってみせる。 
[DVD(字幕)] 8点(2011-10-26 21:03:58)
15.  ロックよ、静かに流れよ 《ネタバレ》 
『少女たちの羅針盤』と大いに響きあう。  「駅のホーム」からドラマは開始され、少年は「城下町」松本へ。少年「4人」は地方の高校生活の中で、ほぼ全篇「ロケーション」の瑞瑞しいローカル性に溶け合いながら、葛藤を経つつバンドを「結成」し、「仲間の死」を乗り越えて「舞台」に立つ。  転校早々に理由もなく対立する岡本健一と成田昭次は、殴り合いの喧嘩を通じていつのまにか親友になっている。理屈を超えた「接触」から生まれる非論理の関係性、そしてそこから滲み出るエモーションこそが映画だ。  4人の面構えのみならず、取っ組み合い、殴りあう4人のシャープな打撃の擬斗が素晴らしい。  松本から上京した4人が、有名バンドのコンサートの帰り道、見晴らしの良い夕景の歩道上でじゃれ合いながらバンド結成を決意する長回しもまた、瞬発的なアクションと情感に溢れたショットだ。  4人が楽器を買うためにそれぞれアルバイトに精を出すショットが積み重なる小気味良さと、初セッションで拙いながらも音を合わせ合うシーンなどの持続感とのバランスもいい。  そして見せ場は少ないながらも、渡辺正行、寺尾聰、あべ静江、大寶智子らの好演が4人を一層引き立てている。  
[ビデオ(邦画)] 8点(2011-10-01 18:49:50)
16.  ザッツ・ダンシング!
エジソンの時代から80年代までのダンス映像がモンタージュによって紡がれ、一つのリズムにシンクロしながらオープニングナンバーを形づくる感動。  そして『ザッツ・エンタテインメント』シリーズと同様、名ショットがリプレイされる最中にストップモーションによってダンサーたちの素敵な表情と身振りの一瞬間が躍動の中から的確に切り取られ、その一瞬が永遠化するようなエンディングの映画的感動。  全身で表現される伸びやかなダンスがスクリーンを越えて観る側の何かを開放し、幸福感で満たしてくれる。  69年の不動産企業によるMGM買収とその「資産破壊」、そしてメジャー再編を経たMGM/UAによる本作に登場する作品は(皮肉にも)時代範囲からしてもMGM中心の上記シリーズ以上に多彩だ。  映画は「ダンス」を描いた古代の壁、絵画、彫刻、舞台、そして映画最初期から80年代のMTV時代までを網羅する。 様式的には、民族舞踊、チャールストンからモダンダンス、ブレイクダンスまで。 映画表現的には、サイレントからトーキー、モノクロームからカラー、スタンダードからシネスコへ。30年代のバスビー・バークレーの前衛的な視覚効果からアステア+ロジャースらの個人技・フルショットの時代への変遷も判りやすい。  なかでも、巨大セットとスターが象徴する絢爛豪華の50年代と、『フェーム』等のストリートロケが象徴する80年代とのルックの隔たりは、撮影所の崩壊を強烈に印象付ける。その一方で、ダンスは継承と同時にエレガンス志向からエネルギッシュなものへとスタイルの革新を示し、映画は黄金時代への郷愁に湿るばかりではない。 映画は健康なオプティミズムで締めくくられている。  そして何より「映画キャメラの発明以前にダンスの道を歩んだ人々に捧げる」とする映画冒頭の献辞が感動的だ。 
[ビデオ(字幕)] 9点(2011-09-07 22:57:22)
17.  ストリート・オブ・ノー・リターン
開巻の人種暴動の混沌から一気に作品世界に引き込む豪腕。その群衆とゴミ屑の派手な散乱状況の強烈なインパクトは、『裸のキッス』冒頭のバイオレンス以上の過激さでS・フラーの軒昂ぶりを表すと共に、後のロサンゼルス暴動をも的確に予見してみせる。陽光なのか、ヘッドライトなのか、雨に濡れた街路を浮かび上がらせる強い逆光の幻想的な美しさ。港、そして屋敷内の攻防のなかに充満する、むせるようなスモーク。放水のしぶき。いずれの造型もその過剰さ・大胆さが際立つ。ラストのロマンチシズムといい、活力が全編に漲っている。
[DVD(字幕)] 8点(2010-03-30 21:45:36)
18.  南極物語(1983)
空撮の多用とロングショットによって捉えられた神秘的な大陸のスケール感が圧巻。蔵原監督の日活での第一作『俺は待ってるぜ』に連なる無国籍アクションの最たるスケールだろう。狭い日本でなら不可能なカラフト犬の全力疾走の躍動感と獣性の美しさがロケーションと共に映える。人間側の傲慢かつ欺瞞的な同情やら憐憫やら愛護心などを他所に、人間の残した餌には手もつけず独力でアザラシを狩る犬たちの姿はまさに蔵原的ヒーローの体現だ。編集やBGMがいくら犬達の孤独や悲哀を演出しようが、犬たちの前にはカメラ(と人間)が常にある。ゆえに個々のショットには物語とは裏腹な犬たちの喜びと安心感が露呈しており、こうしたドラマとの逆説的なズレがあるから映画は面白い。
[映画館(邦画)] 7点(2010-03-08 22:23:49)
19.  メーヌ・オセアン
ブラジル人女性がチケット発券し、改札を通過、そして間一髪のタイミングで列車に飛び乗るまで、カメラは彼女の後姿を延々と追い駆けていく。開巻早々の駅構内ロケの場面から、段取り感など微塵も感じさせずに時空間を自在に操るその絶妙なゲリラ的長廻しに心躍る。カメラが奥へ奥へと進む度に構内の一般通行人たちが、何事かとカメラに気を取られる様を映し出していくのも楽しい。  その自由奔放さ・平等主義は、作劇全体にも及ぶ。当初は、旅客である女性二人が主役かと思いきや、偶然的出会いの繰り返しの中で主人公は群像化し、かつ対等化して行く。たまたまレストランの奥にいた女性や、偶然呼び出された牧師たちが主役・脇役の別なくジャムセッションに興じるクライマックスは真に民主的だ。(その後に淡々と描かれる各人の離散の様もまた同様。)ヒッチハイクで偶然出会う端役としての(恐らく本職の)船員一人一人の表情まで丁寧にショットに収めて行く律儀さにジャック・ロジエの資質が現れている。  また、景観に対する視点も当然素晴らしく、印象深いショットは数多い。港湾を望むホテル二階の窓と、出帆する船とのカットバック。小型飛行機の離陸と、その夕暮れの空を捉えた情景。船を乗り継いでのユーモラスなヒッチハイク場面での、船上から岸辺を捉えた横移動ショットの悠然とした運動感。干潮となった広大な泥地の中をとぼとぼ歩く男ののどかな光景。いずれも情感に溢れ、忘れ難い。
[映画館(字幕)] 9点(2010-02-12 21:19:50)
20.  最前線物語
約2時間の劇場公開版も十分素晴らしいのだが、S・フラー監督の本来意図したと思われる約3時間のバージョン(スタジオによる再構築版)はカットされたショット・エピソードの大幅な復活と再編集によってさらに充実し、作品の深みを増している。元々が大戦中の断片的な挿話を積み重ねていくスタイルのドラマ構成にさらに複数のエピソードが追加された形だが、散漫になるどころか、逆に旧版では解りづらかった部分もより明瞭になり、「生き残る」という主題がより強烈に印象付けられるものとなっている。木陰で休憩する四銃士たちの会話。ドイツ側スパイとの攻防。『フルメタル・ジャケット』(1987)の先駆けともいえる古城での戦闘。リー・マーヴィンに花で飾ったヘルメットを少女が手渡す美しい場面の後に綴られていた残酷な顛末、、。埋もれていた印象深い断片の数々が加わることによって、戦闘/休息、大人/子供、悲惨/ユーモア、正常/異常、敵/味方、生/死といった諸相はさらに渾然とし、クライマックスである収容所の場面の静かな感動は間違いなく「短縮版」以上だ。  
[DVD(字幕)] 9点(2009-11-02 21:18:31)
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