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Nbu2さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 344
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

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【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  いつも上天気 《ネタバレ》 
「レオン('94)」には大した感想はなかったものの、作中にこのMGMミュージカルが使われてるのを見て、監督リュック・ベッソンの趣味の良さに感心した記憶がある。そう、最良のジーン・ケリーが見れるという点で後世に残る一本。アスリート的なパワフルなダンスを身上としてる彼、「雨に唄えば('52)」でいえば有名なタイトル・チューンより、机/椅子の上でダンスをする「Moses Supposes(軽〜いドナルド・オコーナーとの対比含めて)」の方が個人的にはよい。そんな彼のアクロバティックなダンスの頂点が、ジャン・レノが目キラッキラさせて見てた「I Like Myself」。後年のダンス文化への影響という意味において、もっともっと評価されるべきなんじゃないのか。シド・チャリシーも良い。もともとバレリーナだったので前作「ブリガドーン('54)」の方が水に合ってるし、アステアと共演した「バンド・ワゴン('53)」も良いけど、彼女個人のパフォーマンスはこっちかな。以上パフォーマンスはYouTubeの「Warner Archive」で観れるから見て頂戴。でね、ここからなんすよ、私の強調したい事は。それは「幸福感の稀薄なミュージカルは作品としての魅力に欠ける」つまりこの作品、個々のパフォーマンスは素晴らしいのだけど流れる雰囲気がもう「ミュージカル、古臭くね」感がありありなんですな。「雨に唄えば」から3年でこの変化はなんなんだろ。冷戦状況下の社会的影響・新興のエンタメ/テレビの隆盛・何よりロックンロール(ビル・ヘイリー「ロック・アラウンド・ザ・クロック」は55年、エルヴィス登場は56年)の出現。時代の趨勢に呑みこまれてしまって抗えない、廃り感を感じさせてしまう点がこの映画の印象を薄くしちゃってんですよね。...だいたいなんで「巴里のアメリカ人('51)」「ブリガドーン」はソフト化されてるのに、この作品は無いのだ、おかしいでしょ。結局アメリカアマゾンでソフト購入しちゃったよ...。話が脱線しましたが、ミュージカル映画における幸福感ってのは結構重要で、最近でもデミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド(2016)」だってS.S.ラージャマウリ「RRR(2022)」にもちゃんとある。観客がダンスの世界に引き込まれるだけの雰囲気作りは大切。 今回レビューの点数は私の想い出補正と個々のダンスに関して、ってことで。長文失礼しました。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2024-02-25 06:52:34)
2.  我が家は楽し(1951) 《ネタバレ》 
中村登監督を勝手に「松竹版成瀬己喜男」と想ってる私としては この作品、中村監督版「おかあさん(’52)」。いやこっちが早いんですよね。 昨年2023年の神保町シアター、「中村登生誕110年」特集で鑑賞。 年取ってくるとこういう幸せいっぱいのホームドラマ、弱いのよ。  個人的にこの作品のツボは、配役の妙にある気がしてる。 笠智衆/山田五十鈴/高峰秀子/佐田啓二といった、 どちらかというと心に陰のある役柄を得意としてる彼らが ストーリー上起こり得る不幸に胸を痛める演技が上手いので、 ラストの大団円にて「埴生の宿(ホーム・スウィート・ホーム)」を 泣き笑いで唄うラストが映えてくる。そしてアメリカのホームドラマを 上手く換骨奪胎した(父親笠智衆の物忘れ気質とか) 中村監督の職人ぶりもまたいいのよ、これ。  デビュー作品になった岸恵子、ここでは添え物。 ただ彼女のキャリアを考えたら、松竹/本作品のデビューは 最良のものだったのではないだろうか。 彼女の講演会で話されてて印象的だったのだけど 彼女自身当初は大学入学まで、と考えてた役者人生。 この作品で様々な才能と触れ合い、時間を共にする事で 本物の価値に出会い、本当に啓蒙を受けたんだろうな、 自分を磨く場として映画界に魅力を感じたんだろうなと 個人的には感じてしまった。  点数はこんなもんだけど、鑑賞後の気持ちよさも含めて 本当は+2点にしたい位。機会があれば是非。 ってまだDVD化してないの?がんばれ松竹
[映画館(邦画)] 7点(2024-01-21 17:49:40)
3.  真空地帯 《ネタバレ》 
「組織保身の為には個々の人間性や感情は無視される」「目的達成のための効果的かつ合理性に基づいたものではない、ただ末端に至るまで感情を引き上げる為の前時代的な押し付けで運営されている行動規範」「責任の所在が不明瞭なままの組織戦略」軍隊生活の非人間性を訴えたこの古典のテーマが、2023年の今に至るまで問題提起されてるのは、どういった了見なんでしょうかね...。少し録音が聞き取りづらいところがあったので(独立プロ作品なので大手よりはリマスターの機会少ないのかな)その点がマイナス。
[映画館(邦画)] 7点(2023-08-13 10:48:30)
4.  地球防衛軍 《ネタバレ》 
結局、ミステリアンが地球侵攻失敗した理由って 日本をターゲットにしたからなのではないか。 土地だってもっと広い場所もあるだろうに。 白川由美さんの入浴シーンでドキドキしちゃったのかな。 日本の盆踊りに惹かれちゃったのかな。 この頃から日本、インパウンド的に魅力あったんだろな。  それはともかく...地球滅亡の危機たるもの、 H・G・ウェルズ「宇宙戦争」なり、「インディペンデンス・デイ」 的な侵略側の絶対的力を誇示する等の大緊張が あってしかるべきなのだけど、モゲラの鉄橋橋踏み外し・ マーカライトファープ光線への頭ぶつけ、では幻想譚としても なんか膝カックンな展開が繰り広げられる点が、歯がゆい。 その反面地球移住への条件として「種の保存」を要求し 地球人女性を捕えて基地に連れてゆくってのは妙に 生々しさを感じて、気恥ずかしい。  ただ今回スクリーンで鑑賞して良かったのは、 「現実に有り得るのではないか」と感じさせる 小松崎茂デザインの各種兵器。そして 私が「東宝・伊福部昭3大マーチ」と勝手に名付けてる (あとはゴジラのテーマ/怪獣大戦争マーチ) 地球防衛軍のテーマを大音量で聴けた事。 得した気分に、なりました。
[映画館(邦画)] 6点(2023-08-04 20:03:37)
5.  腰抜け二刀流 《ネタバレ》 
神田・神保町シアターにおける「生誕110年・森繁久彌特集」にて初鑑賞。NHKのアナウンサーから始まった経歴は今でいう「マルチタレント」の先駆けであり、「当時の世間では一段下に観られていた喜劇役者が本格的な演劇役者に成り上がる」系譜の道筋を作り上げた人物として、最後は国民栄誉賞まで受け取ったのだから凄い才能であった、と思うのであります。そんな彼にもはじめの一歩はあった訳で、それが30代で初主演となったこの作品。ある大名の御家騒動に巻き込まれた鉄火肌の飲み屋女中とそのパートナーになる、剣豪:宮本武蔵と勘違いされた偽物香具師、この二人が巻き起こす時代劇ミュージカル。題名からわかる通りノーマン・マクラウド「腰抜け二丁拳銃(’48)」の引き直し版でありジェーン・ラッセル:轟、ボブ・ホープ:森繫なんですよ、これ。ただ作品そのものは換骨奪胎どころか脱線転覆...いや脱線ほどではないけどグダグダな展開が進み上映時間の短さもあってあっという間に終劇。この映画の見どころはやはり舞台(喜劇)役者として脂の乗り切った彼のコメディ・ミュージカル演技。映画への経験値が無い分未熟な感は否めないけど、戦後芸能史に多大な影響を与えた、「スピード感ある軽妙洒脱さ混じった演技」の一端が見られるところは最初の主演作から感じられるのではないだろうか。あと同年にデビューした香川京子の出演もさることながら、清川虹子の登場にはちょっとビックリ。 
[映画館(邦画)] 5点(2023-05-17 21:16:41)
6.  陽のあたる坂道(1958) 《ネタバレ》 
日本「青春」映画のエバーグリーンですよね、この作品。今回神田神保町シアターにおける「デビュー70周年/芦川いづみ」特集で初めて劇場にて鑑賞。実は私、今回の特集に当って芦川いづみの別作品(今回は「あした晴れるか(’60)」「乳母車(’56)」)を鑑賞してたのですが、この作品上映時は明らかに観客層が違う。つまり芦川いづみだけではない、石原裕次郎/北原三枝/川地民夫ファンにとっても思い入れのある一本ってことなんでしょう。戦後日本青春映画のビッグバンは日活+石原裕次郎の登場=「狂った果実(’56)」と考えてる自分ですが、不良性を強調し過ぎた演技、くどすぎてあんまり好きじゃない。但この作品においては「(マーロン・)ブランドじゃなくて(ジェームス・)ディーン的」な心に陰のある若者、というスタンス/演技が私だけではない、当時の老若男女に受け入れられ俳優石原裕次郎が大スター、ブームとなる後押しとなった1本としてご年配の映画ファンから愛されているんだなぁ、と感じたわけっすよ。あともう一点思ったのは、若手のフォローに回っているベテランの役者があっての日活青春映画であったという事。主演4人の魅力以上に彼らを支える小杉勇/千田是也/森川信/小沢昭一の演技が上手なので3時間半の長い映画も意外と退屈せずに鑑賞出来た。その中でもMVPは轟夕起子。1967年、49歳という若さでこの世を去ってしまう彼女にとっても、この作品は記憶に残る名演技としてもっともっと評価されてもいいはず。そういった事を念頭にいれつつ、50年代末~60年代中旬の日本芸能社会を牽引していた日活青春映画(大門軍団とか七曲署のボスだけではない石原裕次郎の魅力)を堪能していただきたいということで、機会があれば。あとスクリーンで見る北原三枝+芦川いづみ、良かったなぁ...。結局そっちかい。
[映画館(邦画)] 7点(2023-04-02 19:14:16)
7.  空の大怪獣ラドン 《ネタバレ》 
2023年初・映画館鑑賞はこの作品。 スクリーンで特撮映画を見るのは、いいもんだ。  「ゴジラ(’54)」が(核)戦争体験、「モスラ(’62)」が神話/御伽話 という点を観客に想像させる作品としたら、この映画で自分が 感じたのは身近にある恐怖=人間社会に被害を及ぼす 害獣(それこそ熊とか虎とかワニとか)の存在。 なので個人的にはメガヌロン発生~ラドン出現に至る、 前半パートの方が出色、と思ってる。  とはいえ後半、ラドンが北九州を衝撃波で蹂躙してゆく 一連のシーンはゴジラ(’54)からわずか2年しか 経ってないのに、カラー映像も含めて特撮技術の 進歩・当時の映画業界の隆盛ぶりが垣間見え、 これはこれで一見の価値はある。  上映時間の短さが不満なのと 前年の「モスラ/4Kリマスター」に感動しすぎて インパクトという点では今回レビューとして この点数なんだけど、ちゃんと入場料金分の モトは取れた。機会があれば是非。
[映画館(邦画)] 7点(2023-01-02 14:01:40)(良:1票)
8.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 
オーソン・ウェルズ版('48)やロマン・ポランスキー版('71)、 ジャスティン・カーゼル版('15)も見てる(ジョエル・コーエン版は未見) 自分としてはキリスト教の教義がわからない分、単純に 「野心と欲望に満ちた男の破滅」を日本的(能や狂言みたい表情演技) なテイストで味付けしている、「マクベス」の映像化として一番面白かった。  好きなのは2点。まず女性の使い方が黒澤明作品史上一番うまい。 女性の美貌というより情念に重きを置いてるのが彼らしいっちゃ彼らしい。 山田五十鈴と浪花千栄子なら当然か。 あとは黒澤明の演出するアクション場面・演出力はこの当時 世界映画史上の才能をもっていた事がわかる、という点。 森林の中を駆け抜ける馬のダイナミズムや有名な弓矢の ラストシーン。それを担っていた三船敏郎の素晴らしさもあるけど 弓矢が一本壁に刺さる、からのあの矢衾(やぶすま)は単純に凄い。  あえて難点をいうと、やっぱり音質。 今回「午前10時の映画祭」での4Kリマスター版で鑑賞。 映像は素晴らしいし、30年前に場末の映画館で感じた時の 「台詞がさっぱりわからない」頃から比べれば凄い改善なのだが、 これは出来たら字幕つけて欲しい。自分の鑑賞時は無かったけど 他のところはどうなのかな。老年に至る映画ファンの為にも、 いろんな意味でのバリアフリーを!
[映画館(邦画)] 8点(2022-12-11 08:54:43)
9.  結婚のすべて 《ネタバレ》 
邦画界隈における「新人監督のデビュー作」という点では、増村保造「くちづけ(’57)」の次に好きなこの作品。成瀬己喜男/マキノ雅弘/本多猪四郎等の助監督業をしてた岡本監督のデビューのきっかけは、当時文学界における脅威の新人石原慎太郎が「自作を監督として映画化する」という企画を東宝経営陣が立てた事。素人が映画を撮る事に猛反発した所属助監督たちがストライキを起こしそうになった為、上層部は助監督の中から監督デビューをさせる折衷案を示し、岡本監督が推薦を受けたという流れらしい。ただ準備にはあまり余裕の無い状況で(手間がかかるだろう)好みである西部劇/フィルム・ノワールでは無く、急ぎで脚本を書いたこの艶笑劇が第一作となったわけだ。 この映画の欠点を話してしまうと「新しい恋愛のかたち」を求める新劇女優の卵/雪村いづみを主演とし、その姉役として朴念仁である夫(上原謙)から得る愛情の薄さに悶々としている人妻/新珠三千代、二人に巻き起こる理想の恋愛・結婚の行く末を描いた話なのだけど、主演の雪村いづみよりセックスレス(どうみても)に悩み、周りの状況によろめきやすい新珠三千代の話の方が流れとしてメインになってしまっている為、「で新しい恋愛は?」と解決しないままラストになるのが自分にはちと惜しいのでこの点数。但し私がこの作品が好きだ、というのはまず「喜八節」と呼ばれる細やかなカット割り/マッチカットの鮮やかさ、そしてユーモア溢れる可笑しさが処女作から見受けられるところ。庵野秀明にも多大な影響を与えた点、楽しんでいただきたい。そして最後に新人監督の作品にしては物凄く配役が豪華な事。小林桂樹/ナレーターだけで笑えるのに中丸忠雄/三橋達也/藤木悠/佐田豊/田崎潤/ミッキー・カーチスといった、後の喜八組の面々。三船敏郎+仲代達矢には驚かされた。天本英世とか岸田森がいないかなと探しちゃったよ。今年2022年10月に初の廉価版DVD発売。機会が有ればぜひ。
[映画館(邦画)] 6点(2022-07-31 18:31:04)
10.  あらくれ(1957) 《ネタバレ》 
成瀬作品の魅力の一つとして感情を台詞で説明するのではなく 演者の視線や表情・動作等で示す「見せない・隠した」演出方針があると思うが この作品は彼の作歴上珍しく、感情や欲望含めて「さらけ出す」事に 重点を置いた人物/環境設定が私には意外であり、面白かったのでこの点数。  五代目古今亭志ん生の高座中、禄でもない男と付き合う女性の心境を 「だって寒いんだもん」で説明する小咄がある。まさにこの感情を地でゆくヒロインお島。 彼女を取り巻く環境も、付き合ってゆく男たちもどうしようもなく酷い。 (私の好きな男優・森雅之/志村喬/加藤大介/宮口精二/田中春夫、みなグズだからワクワクする) 「あらくれ」である彼女はこういった境遇から抜け出す器量も度量も才覚もあるはずなのに、 「寒い」から抜け出せない。脚本水木洋子も過去の「浮雲(’55)」に比べて性愛肉欲から 抜けきれない感情をこの時代にしては深く掘り下げてきた点、注目。  作中劇「金色夜叉」に表れる皮肉も効いてるし、 感情の発露がラストの夫の愛人との喧嘩に結びつく展開も良い。 「浮雲」が苦手な皆様、こちらをぜひどうぞ。 ようやく昨年2021年にDVD化されたので、機会があれば。 (成瀬作品初心者には①「おかあさん(’52)」⓶「稲妻(’52)」③でこの作品か 「女が階段を上る時('60)」をどうぞ。「浮雲(’55)」 「乱れる(’64)」はその後で)
[映画館(邦画)] 8点(2022-02-06 16:14:43)
11.  拳銃の報酬(1959) 《ネタバレ》 
ロバート・ワイズ、というと「ウエスト・サイド物語('61)」、「サウンド・オブ・ミュージック('65)」「砲艦サンパウロ('66)」といった大作作家の印象が強いけど個人的には50年代までの作品群、それこそ「罠('49)」「傷だらけの栄光(’56)」、そして「地球の静止する日('51)」みたいな小品が好きだ。「黒人を主演にしたフィルム・ノワールの傑作」として紹介されてるこの映画を鑑賞したきっかけはロバート・ライアン好き+音楽(MJQにビル・エヴァンス+ジム・ホール)。3人の男が銀行強盗を実行、その破滅を描いた話なのだが顛末は「自滅」なので、サスペンスとしては他のレビュアー様と同様「最初からやめときゃ良かったやん!」という感想しか出てこない。但最近DVDで再見する機会が有ってこの作品、企画=主演ベラフォンテ+監督ワイズによる、好景気に沸くアメリカの暗部を描き出した社会派作品として感じるところがあったのでこの点数。黒人差別の件はすぐわかったが、今回見直してみて新たな発見だったのは前科者で極端な人種差別主義者であるアール(ライアン安定の好演)、彼は戦争体験によるPTSDを病んでしまっていたのでは?という点。(軍部が鎮痛剤/精神安定剤として供給したモルヒネの影響で、薬物中毒とPTSDに苦しむ帰還兵が社会に復帰できない=犯罪等の増加の一因となるほどの社会問題になってたのは有名な話)犯罪決行の前、時間つぶしで狩りに行くもウサギを打つことが出来ない→ラスト銃撃戦からのタンク大爆発も銃の流れ弾が、というよりも精神不安定でもたらした帰結なんだろうな、と。50年代後半、映画界におけるヘイズ・コードが未だ効いている中、ベラフォンテ+脚本エイブラハム・ポロンスキー(映画公開当初はノンクレジット=後年名誉回復)は赤狩りのブラックリストに乗った人物。そういったポイントを踏まえて機会があればぜひ鑑賞下さい。あともう一点。音楽に参加したビル・エヴァンス(p)とジム・ホール(g)は後年大傑作アルバム「Undercurrent('62)」で共演し、この映画で使われた「Skating In Central Park」をプレイしてます。これが本当に、いいんだなぁ~。
[ビデオ(字幕)] 7点(2021-10-02 19:30:40)(良:1票)
12.  盗まれた欲情 《ネタバレ》 
最初から今村昌平は『イマヘイ』だったんだな、という事が良く分かる1958年のデビュー作。20~30代の私は彼の初期~中期、それこそ「人間蒸発(’67年)」「神々の深き欲望('68年)」くらいまでの作品が大好きで『社会理念や常識を吹っ飛ばす人間の生命力』を徹底して描き上げるスタイルに惹かれていた。だいたい助監督が浦山桐郎で周りが西村晃/小沢昭一/仲谷昇/菅井きん/高原駿雄って時点でもう今村節全開。ヒロインが春川ますみとか沖山秀子だったらもっとエロエロなんだろうなぁという煩悩まで起こってしまった。後期の今村ならバッドエンドもしくは人生のほろ苦さを感じさせて終わらせるのだろうけど、Show Must Go Onで明るさを感じさせる終幕にしたのも(原作未読なので原作がそうなのかもしれないが)新人監督らしいみずみずしさに溢れているのでこの点数。先に「豚と軍艦(’61)」「にっぽん昆虫記(’63)」を見て、気に入ればかな。機会があれば。
[映画館(邦画)] 6点(2020-01-04 10:32:33)
13.  雲ながるる果てに(1953) 《ネタバレ》 
GHQの占領統治が終結、これが1953年=その前後から各メディアへの情報統制/規制も解除されつつあり、それは映画界にも影響を及ぼした。メジャー会社より独立した「独立プロダクション」の隆盛もこの頃から。山本薩夫/新藤兼人/今井正などが有名だが、家城巳代治もその一人。...すみません、説明が長かったですね。で現在でもよく上映される「太平洋戦争における特攻作戦」の先駆けになったのがこの作品。私も久方ぶりに映画館で見て印象をもったのは、軍上層部の特攻兵に対する見方=徹底して「兵器」としての感覚で表現している、その点にありました。平成~令和の戦争映画はその点、まだ人間としてあつかわれてる気がします。とうちゃんかあちゃんと号泣した特攻兵が国のためにと飛び立っていったその後で、更なる「兵器」の投入を示唆する軍上層部の非情さ。 あとは鶴田浩二。19歳で徴兵され海軍航空隊に所属していた彼は整備兵として、間近で特攻隊を見続けた体験をしております。私財を投じ戦没者の遺骨を収集し続け、戦争に対する講演活動をその俳優人生において積極的に行っていた彼にとってこの作品はたぶん忘れられない一本であったでしょう。そういった点を考慮してこの点数。
[映画館(邦画)] 7点(2019-08-11 07:51:41)
14.  ひろしま(1953) 《ネタバレ》 
世の中には「総合芸術たる映画」とは違った、作家監督が「自分達の主張を何とかして伝えたい・伝わって欲しい」という側面で作られた作品がある。 同年の「原爆の子(新藤兼人)」は鑑賞済であったが、恥ずかしながらこの作品は最近まで知らなかった。戦後8年経った広島。「原爆について学んでなかった・忘れようとしていた」風潮の中で人々はあの日の悪夢を思い浮かべる。この作品のポイントはやっぱり原爆の惨劇をとことん映し出した前半の群衆シーン、そこに尽きるのだと思う。正直このシーンだけで疲労感は極限に達した。...映画において「イデオロギーを声高に主張する」という方法は作家の押し付けがましさが過度に出がちな感があり、個人的な感想としては「原爆の子」「ゴジラ(’54)」には及ばない。そしてこの点(「ドイツではなく日本に原爆が落とされたのは、日本人が有色人種だからだ」台詞=松竹は「反米的」と判断)が全国上映の扉を閉じ、幻の映画となってしまったのだろう...   以上が初見時の感想(2017年)。 がこの度リマスター化したフィルムを劇場で見る機会があり、私は映画としての良し悪しとは別にこの作品に携わった関係者キャストの想い、特に「絶対に戦争を起こさない+この悲劇を風化させない」という気持ちをなんとか皆様に伝えたく、点を+2にすることにした。被爆者が語る「一番自分が経験した事を身近に感じさせるフィルム」「(実際にエキストラとして映画に参加した被爆者の証言)現実から比べたらとてもじゃないが、あんなものではない、と私たちから言えば思いますけどその体験をした人がどんどん少なくなっている現在だからこそ、何かの形で伝えていく事は絶対に必要な事なのではないかと」(ETV特集×NHK1.5chより)
[DVD(邦画)] 8点(2019-08-07 13:06:02)(良:2票)
15.  風と女と旅鴉 《ネタバレ》 
三國連太郎の起用/ドーランを使わず全役者はスッピン/同時録音の実施と、監督加藤の作歴上始めて?の股旅映画は50年代東映チャンバラに、「リアリズム」を組み入れるという試み溢れる意欲作。ただ率直に言えば主役二人以外の人物造形/脚色は東映チャンバラ映画のファンタジー世界そのままなので、(千両箱を置いて逃げ出す殿山泰司とか長谷川+丘+錦之助の三角関係、もしくはコメディ悪役の造形?と思われる進藤英太郎)その半端感がマイナスポイント。 それでも最後まで見る事ができたのは監督加藤のワイドスクリーンを存分に活用したローアングル+クロースアップの使い方、そして画面上の人物配置に工夫を凝らしたショットの素晴らしさと役者錦之助の演技=明暗含めた感情の出し方が抜群に上手い、という点にあるのだろう。...でこの作品がなぜ未だDVD化されてないのですかね?がんばれ東映ビデオ!
[映画館(邦画)] 7点(2019-04-08 22:04:57)
16.  キクとイサム 《ネタバレ》 
今井監督映画のテーマにいつも古臭さを感じてしまう私。この作品にも時代との乖離を感じるが、役者の演技力で見せきってしまうからすごい。宮口精二に東野英治郎、滝沢修や三國連太郎といった演者の登場には驚かされたが、やっぱり北林谷栄の凄さ。(約30年後「となりのトトロ」における「メイちゃーん」という呼びかけ、あのまんま。御理解いただけるだろうか)物語の終わり方も「頑張って生きてゆくんだ」と予定調和的なものになっているが彼女が演じたからこそあの説得力が生まれたのだと思う。子役の二人も好印象。これは機会があれば。
[映画館(邦画)] 7点(2018-01-21 20:33:12)
17.  昇天峠 《ネタバレ》 
ブニュエルの「脱力系」ロード・ムービー。但しコメディを期待すると現代の観客には合わない気がする。そんな私の琴線に引っかかるのは「筋金入りの無神論者」と自身を称し、後年キリスト教を風刺する作品を取り続けた監督ブニュエルがこの作品でも「祈りを捧げたからといって物事は上手くいくとは限らない」「理想から程遠い結果に落ち着く人生」をキリスト教の挿話を暗示させる映像表現で示している点にある。激しい風雨の中を突き進むバスはまさにゴルゴダの丘を登るキリストの比喩であり、リンゴ(禁断の果実)を食べながら主人公を誘惑する女、バスに乗り込んでくる山羊(聖書における悪魔の化身)。道中主人公が体験する様々なトラブルは「七つの大罪」の暗喩。親想いの主人公は最後色欲に負けて聖者になり切れず、親の死に目に会えないというしっぺ返しをくらう。ラストもハッピーエンドに見えがちだけど、それは主人公が奸計を使っての事であり「人をだます事を覚えた」暗い心の発露感は否めない。オープニングが結婚式/ラストは葬式、バスの往路に出産/帰路に葬列というのも印象深い。万人におすすめとは言えないが興味があれば。
[ビデオ(字幕)] 7点(2018-01-03 10:29:57)
18.  女の園 《ネタバレ》 
お恥ずかしながら私はこの作品、「民主主義万歳・自由万歳/封建制度反対」みたいな古くさい題材を扱ったものと思いこんでおりました。ですが何十年ぶりかで見直してみてこの作品は、レビュアーの皆様が既に書き込まれている「新しい価値観に対する対立・融和」という今の世相にも十分通用するテーマを描いた秀作であった事にいまさら気付いた次第です。すみません。封建制度的な態度運営を頑なに守り通す女子大学側(高峰三枝子の演技は素晴らしくこの点は不変)もさることながら、改めて今回感じたのは男性陣が時代の変化や価値観の変貌に対して、妙にぬるい反応であったという事でしょうか。芳江に対する恋人下田の対応も初見時は暖かく見守ってるんだなぁ、でしたが本当は彼自身が新しい時代/価値観に対応出来ていないのではないかと考えた次第であります。で役者。松竹映画における望月優子/浪速千恵子/東山千恵子を見ていると「おばさまオアシスじゃー」と思う位なのですが、やはり高峰秀子の演技力の幅に唸らされてしまっている自分がいる。「浮雲」のレビューにも書いてしまいましたが、同時期に「浮雲」「二十四の瞳」でこれですからね。すごいポテンシャルだ。木下作品にしては(この年のキネ旬ベストテンでは「二十四の瞳」と共に1・2位を独占)少し説明過多で時間が長すぎかな~とは思うがこれもまた良作。機会があれば。
[映画館(邦画)] 8点(2017-02-20 10:51:00)
19.  旅情(1955) 《ネタバレ》 
いきなり暴言から始まる事をお許し願いたいのだが、私はこの映画におけるロッサノ・ブラッツィの役柄が大嫌いだ。不仲であるとは言いながら妻帯者、でもって「ビフテキが食べたくてもお腹が空いてたらラビオリを食べなさい」ってそこまで自分の下半身に忠実になってどうするねん!そこにマイナス点を入れる事にした。…ところがそれ以外は本当に名作。ベニスの街を映し出すショットの見事さ=主人公ジェーンにとっての「夢の世界」であったんだな、という点に物凄い説得力を感じてしまうし、小道具の使い方/カメラやくちなしの花などは印象深い。何より当時47歳のヘップバーンがアラフォーのハイミスを演じてしまって全く違和感を感じさせない、その存在感(恋へのよろめき・揺らめきを感じる)・演技力の素晴らしさは今の映画界には不在なのだなぁと思う。そして監督リーンの作品がやっぱり自分にとって一番映画が「総合芸術」だと感じさせる。多少の贔屓目がどうしてもついてしまうのでこの点数。【(2018年9月追記):上の方のレビューを拝見し、カトリック教会そして信者の、離婚に関する考え感覚に付いて私失念しておりました。何とも恥ずかしい限り...とはいえやっぱりロッサノ・ブラッティの役柄は苦手なのでこのままに。日々これ、勉強ですな。】
[映画館(字幕)] 8点(2016-05-09 13:44:00)
20.  夜の河 《ネタバレ》 
主人公が恋を諦めてキャリアウーマンとして改めて生きてゆく事に決めた経緯が男性陣(演者の演技は良いし時代的な背景もあろうが)の「だらしがない」(としか言いようのない)性格に起因してしまっている点、加えてメロドラマにしても都合の良すぎる展開・余計な描写(特に私はラストのメーデーの描写は蛇足と思っております)といった欠点あるこの作品を何故故にレビューするのか。まずは日本を代表する名カメラマン宮川一夫の撮影/カラー描写の素晴らしさが一点。京都出身の彼が撮りだした日常風景や色彩配置の各ショットは今の邦画ではもう映し出せないし、出せたとしてもその「空気」までは抽出出来ないと思わせる。そしてもう一点は山本富士子の「美しさ」をフィルムに捉える事の出来た一本であった事に尽きるのではないか。後年五社協定事件(1963年=フリーになろうとした彼女に親会社の大映がそれを許さず五社協定の名を借りて映画界から締め出した事で彼女はTV・舞台女優としての生き方を余儀なくされた)により10年しか映画女優として活動できなかった彼女の代表作の一本になった事でこの作品は映画史に名を残した。ま、私としては「彼岸花(58)」「女経(60)」とか「美貌に罪あり(59)」くらいの少しムッフーンな方が好きなんだよう...ムツフーン。...ゴホンゴホン、早く大映はブルーレイ仕様のデジタルリマスターやっちゃってください!
[映画館(邦画)] 7点(2016-05-05 22:06:53)
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