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プロフィール
コメント数 2386
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1930年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  三十九夜 《ネタバレ》 
私にはどうしても解せないのは、この映画なんで『三十九夜』というシェイクスピア劇の様な邦題になったのか?ということで、ジョン・バカンの原作小説や後に製作された二本のリメイクも『三十九階段』と(正しく)翻訳されているのに、なんかこうなったエピソードがあるんでしょうかね? ストーリー自体はかなり脚色されているそうですが、これが戦前の映画とは思えないスピーディな展開でなかなか面白い。主人公のハネイ氏については「カナダから来た」という以外は一切情報が提示されずに終わるけど、スパイ事件に巻き込まれてからは出会う人物が男女を問わず怪しげで非協力的なところがサスペンスを高めています。パメラとハネイが手錠に繋がれてからの展開はヒッチコック版スクリューボール・コメディという感じで、ヒッチコックにしてはかなり洗練されていました。“ミスター・メモリー”を使って機密情報を国外に持ち出すという原作にはないアイデアも、なんか突拍子もない気がしないでもないですか、スピーディな演出なのでなんか納得させられてしまいました。小指の先のないボス(ヘタ打ってエンコ詰めされたヤクザか!)と三十九階段なるスパイ組織の細かいところもスルーなので、悪役に対する恐怖が伝わってこないところは難点だったかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-27 22:33:16)
2.  我輩はカモである
ここまで徹底的に政治と戦争をコケにした映画はちょっと珍しいぐらいです。製作されたのは1933年で、ドイツでヒトラー率いるナチスが政権をゲットした年ではあるけど、まだ大統領ヒンデンブルクが存命でその地位は首相、いわば国際政治にもデビューしたてで売り出し中といったころ。したがってナチス体制を意識した脚本というのはちょっと的外れなんですが、自分の独裁体制に対する毒を感じとって上映禁止にしたムッソリーニはさすがです。マルクス兄弟の映画はこれしか観たことはないですが、この映画がその後のコメディに与えた多大な影響はひしひしと感じます。亡き志村けんのひげダンスは、グルーチョ・マルクスのパロディだったんだと改めて気づかされた次第です。というか、映画史上もっともカオスに満ち溢れた1時間余りなのかもしれません。そしてまさにギャグの百科事典と呼ぶにふさわしく、現在のコメディのパターンはほぼ網羅されているんじゃないかな。一言もセリフがなくて動き回っていたハーポには、狂気さえ感じたほどでした。「祖国は戦争に入れり」のミュージカル・シークエンスなんかも圧巻でした。ただ英語のダジャレのセリフは字幕では上手くニュアンスが伝わらないのは残念、自分の英語力のなさが悔やまれる次第です。やはりこういうギャグ映画は、原語が理解できないと半減とまではいかなくとも三分の一は面白さが減じてしまいますね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-03-25 22:23:59)
3.  西部戦線異状なし(1930) 《ネタバレ》 
今年のアカデミー賞で9部門ノミネートされているNetflix版の『西部戦線異状なし』、もちろんオリジナルは1930年製作の本作です。この30年版はNetflix版と違って原作小説にはかなり忠実な映像化となっています。もしNetflix版が今年オスカー作品賞をゲットしたら、オリジナルとリメイクが両方とも作品賞という快挙になりますが、まあその可能性は低いでしょう。 この映画を初めて観たのはたしか日曜洋画劇場での放映だったと思いますが、自分には強烈なトラウマが残りました。突撃する兵士前面で炸裂する阻止砲撃の凄まじさ、そして有名な機関銃に撃たれたフランス兵の両腕だけが鉄条網に残っている戦慄のカット、とても1930年製作とは思えない驚異の撮影です。まるで意味もなくバタバタと死んでゆく独仏軍兵士たち、大日本帝国が幸か不幸か経験することのなかった欧州大戦のメガデスの赤裸々な実態が生々しい限りです。考証も行き届いており、ポールたちが新兵時代はプロイセン伝統のスパイクつきピッケルハウベ、中盤以降はお馴染みのシュタールヘルムとヘルメットの型式もきちんと使い分けています。まだトーキー映画の製作が始まったばかりの頃で止むを得ないとは思いますが、銃声や砲声には迫力がないのは録音技術の限界を感じてしまいました。ちょっと意外だったのは劇中音楽が全く使われていないことで、当時としては珍しかったんじゃないでしょうか。そしてあまりに有名なポールの最期、これは原作小説にはないシーンなんですけど、素晴らしい脚色だと思います。原作では「本日西部戦線異状なし、報告すべき件なし」という司令部への報告文で終わるのですが、本作では「西部戦線異状なし」という言葉はどこにも使われていません。その代わり、行軍しながら“もう歳をとらなくなった”ポールの学友たちが振り向くカットで幕が閉じるのですが、無音で見せつけられる彼らの眼差しには胸が締め付けられます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-04 22:00:37)
4.  魔人ドラキュラ 《ネタバレ》 
史上初の正式なドラキュラ映画です。今まで私はクリストファー・リーが最高のドラキュラ役者だと思っていましたが、間違いでした。本作のベラ・ルゴシはリーを凌駕する威厳と存在感を示しており、とくにその眼力には不気味さの中に底知れぬ色気すら感じてしまうほどです。最晩年にあのエド・ウッドと関わってしまった為に色物怪優と言うイメージが憑いて回っていますが、どうしてどうして、彼は映画史に銘記されるべき名優だと思います。 原作にはかなり忠実なストーリー展開みたいですけど、後年のドラキュラ映画とはディティールで異なるところが多々見られました。ドラキュラの嫌うのはニンニクの臭いというのは定番ですけど、なぜか本作ではトリカブトに変わっています。ドラキュラが蝙蝠や狼に変身する(直接的なシーンはありませんけど)というのは原作通りですけど、この部分は意外と後年のドラキュラ映画ではスルーされることが多いんです。あくまでヴァン・ヘルシングがヒーローでジョナサン・ハーカーは愚かな引き立て役というストーリーテリングも、今となっては一般的でないかと思います。ドラキュラが吸血する場面は首筋に噛みつくところも含めて映されないのですが、やはり“ヴァンパイアが首筋に噛みつくのは性行為のメタファー”という分析の通り、30年代のハリウッド映画では刺激が強すぎてムリだったんじゃないでしょうか。最初の餌食であるレンフィールドだけはサイレント映画じみた大げさな演技で浮いている感じもしますが、狂気の演技としては意外と迫真だった気がします。 あっけないラストを含めて尺が短すぎるために大雑把すぎる感もありますけど、まさにゴシック・ホラーの古典中の古典、ルゴシ=ドラキュラの様式美をご堪能あれ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-10-16 22:17:50)(良:1票)
5.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
全怪獣映画のまさに始祖にして頂点、これが1930年代に撮られた映画だというのは信じ難いぐらいです。ストーリー自体はあまりにも有名で、南海の孤島に怪獣が生息していて文明社会にまで遠征して大暴れするというプロットは東宝特撮などの日本製怪獣映画の定番となりましたが、ハリウッド製怪獣映画には類似したパターンは他に見当たらない。そういう観点からは、もっとも本作の影響が顕著だったのは日本怪獣映画だったのかもしれません、円谷英二も『キングコング』を目標にして『ゴジラ』を撮ったと述懐していますからね。またストーリーの骨幹はまさに“美女と野獣”で、怪獣が人間と美女を張り合うという言ってみればアダルトなテーマは他の怪獣映画には見られない独特なものでもあります。これにはコングが巨大なゴリラという擬人化し易いキャラだということもあるのでしょう。エンパイア・ステート・ビルの天辺で戦闘機の銃撃に倒されるラスト、その転落間際の切なささえ感じてしまう表情には、どうしても自分を受け入れてくれなかったアン・ダローへの哀切な感情すら見てしまうのは、私だけでしょうか。 全長版というかカットされたシーンを復元したバージョンには、コングが髑髏島の住人を食べたりNYで女性を窓から地面に叩きつけて殺したりする残虐シーンがあるそうです。残酷すぎるということで当初カットされたそうですが、そういうコングの獣性が薄められた現在のバージョンの方が素直にコングに感情移入できていいんじゃないでしょうか。ピーター・ジャクソンは2005年のリメイクで、“残酷コング”ではなく谷底に落ちた船員たちが蟹蜘蛛なんかに喰われるオリジナルでカットされたシーンをきっちり再現しています。そして気が付いたのは、このピー・ジャク版コングにはオリジナルを忠実に再現しているカット割りが多々あることでした。円谷英二とは世代がかなり違うけど、ピー・ジャクもまた本作をこよなくリスペクトする映画人の一人なんですね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-11-04 21:03:45)(良:1票)
6.  ゲームの規則 《ネタバレ》 
考えてみると、フランスのセレブって不思議な階級ですよね。フランス革命で王制廃止して共和国になったのに爵位を持った人々が未だに存在してるんですから。ていうか、実は革命後80年余りのうち純粋に共和制だったのは20年足らずで、君主制だった期間の方が圧倒的に長かったということは意識されることは少ないでしょう。だから公爵や伯爵が生き残ってデカい面してるのも不思議ではなく、中にはブルボン家の傍系の子孫もいて実現性は皆無だけど密かに王政復活を願っているくらいですから。まあ新たに爵位が授与されることはないのですが、“自由・平等・博愛”なんてイメージだけでフランスを理解している人が日本に多いと感じるのは私だけでしょうか? 余談はさて置き、最近インテリの間で評価が高まってきた本作は上流階級の頽廃を痛烈に皮肉っているのは確かです、面白いと感じるかどうかは別にしてね。『ゴスフォード・パーク』や『ダウントン・アビー』などの英国貴族ものと比べると、“noblesse oblige(ノブレス・オブレージュ)”の雰囲気がセレブたちの振る舞いに微塵も感じられないところでしょう。この物語で彼らが狂奔しているのは不倫・恋愛沙汰といった“ゲーム”にいかにして勝つかということであるという事には頭がクラクラさせられます。この映画のストーリーテリングからすると、ジャン・ルノアールがこの連中を肯定しているのか否定しているのかは判断に迷うところかもしれません。侯爵は捕らえられた粗野な密猟者を何の咎めもなく雇ったりして悲劇のもとを創り出しますし、また自身も不倫しているからといっても妻を浮気相手のもとに送り出す侯爵には、「これは優しさなんてものじゃない、単なる怠惰だ」としか感じられませんね。 この映画のプロットは、時代設定が19世紀でもブルボン王朝時代でもなんら違和感がないわけで、これを現代の物語にしたルノアールの意図は理解できます。「ラ・シュネイは我らの階級を守った、次第に減ってゆく階級だ、お目にかかれなくなる人種だ」というラストの将軍のセリフは、現実に公開翌年にナチ・ドイツに敗れて占領され、壊滅的な打撃を受けるフランス上流階級の近未来を予言しているようで興味深い。
[ビデオ(字幕)] 7点(2021-09-21 23:35:26)
7.  M(1931) 《ネタバレ》 
史上初のサイコキラー映画と言う観方もできますが、そのストーリーテリングは今の眼で見ても古さを感じさせない斬新さで後世のスリラー映画に多大な影響を与えてるんじゃないかな。 まず、本作がフリッツ・ラングのトーキー第一作であるというところが驚くところ。BGMを一切使わず聞こえてくるメロディは、冒頭で少女たちが遊戯しながら歌っていた殺人鬼がテーマの時事ネタ(?)童謡とピーター・ローレが吹く口笛の『ペール・ギュント』のサビだけ。ほとんどのシーンがセット撮影ですけどクラクションや消防車のサイレンなどのいわゆる街の雑音が効果的で、街のギャングたちと警察がそれぞれ街頭で活動する二か所のシーンでは、音声が欠落してるのかと思ってしまうう無音での展開すらあり、その音響設計はトーキー初期らしい凝ったものです。ラングと言えば“ドイツ表現主義”の代表的な存在ですが、その構造的なこだわりは本作では商店のポップや飾りつけに見られます。中でも書店らしき店のウィンドウは、グルグル回る螺旋模様や上下する矢印のポップが現代でも通用しそうなセンスを感じました。映像も五メートルぐらいの高さに据えたカメラからの俯瞰撮影が多用されているのが印象的です。 そして何よりも先進的なのは、とくに物語後半は徹底的に犯人ピーター・ローレの視点で描かれているところでしょう。もっとも前半はローレや彼が犯す殺人はほとんど描かれず、連続殺人に振り回される警察と暗黒街の面々が巻き起こす社会不安がメインテーマになっており、優れた群像劇の様相を呈しています。ここら辺の展開には、ブレヒトの『三文オペラ』の影響を強く感じます。ピーター・ローレも優しそうな童顔のちょっとオタクっぽいキャラで、とてもサイコキラーには見えないところも上手いキャスティングだと思います。 “Ⅿ”のマーキングをされた彼が逃げ回るシークエンスは有名ですが、殺人者という設定は抜きにしてもそこには社会全体から迫害され追い回される恐怖がひしひしと伝わってきます。暗黒街裁判のシークエンスも法廷劇のパロディとしては秀逸で、高校生ぐらいに司法裁判の仕組みを教える教材に使ってみると面白いかも。 ラストは正式な法廷が映り判事が着席し『人民の名のもとに…』と判決を読み上げるショットで終わりますが、肝心の判決を聞かせないで映画の幕が閉じます。ここは「彼の裁きは観客の皆さんで決めてください。有罪=死刑ですか、それとも…」と問いかけられているような気がします。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-03-18 23:29:28)
8.  赤西蠣太 《ネタバレ》 
これほど見事に省略技法と繰り返し話法を駆使する映画は初めてです。ラストの小波の家を訪れた赤西蠣太の「今日はあまりゆっくりできなくて…」の三回繰り返し、そしてウェディング・マーチで閉めるセンスにはもう脱帽。確かに夭逝せずに戦後まで映画界におれば、伊丹万作は日本を代表する巨匠に間違いなくなっていたでしょう。あの片岡千恵蔵が不細工男に扮してラブコメするのが観られるなんて、予想もしませんでした。また原田甲斐との二役も見事な貫録で、これが同一人物とは信じられないですよね。この映画の魅力を語るにはモダンなカメラワークを外すことはできません。冒頭の唐傘がクルクルと回るところやクライマックスの寛文事件の立ち回りなど、真上からとらえたショットはバスビー・バークレーのミュージカル映画を彷彿させるセンスです。 古い映画ですけど、観て絶対に損はないですよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-19 23:44:42)
9.  来るべき世界 《ネタバレ》 
以前に出回っていたソフトは画像状態が非常に悪いと不評だったそうですが、HD化された画像で鑑賞すると、約70年前に撮られた映画とはとても思えない驚異の映像体験でした。 この映画が製作された1936年からの近未来(1940年)に突然世界大戦が勃発するところから物語は始まります。何とこの戦争は30年も続き、ストーリー自体も2030年ごろまでを描く一大サガになっています。まずこの戦争観がとても興味深いところがあります。毒ガス爆弾が猛威をふるい、終いには生物兵器まで使用されて人類は半減してしまいます。どことどこが戦争しているのかはファンタジーですので曖昧にしてますが、敵方の戦車は異様にアヴァンギャルドで手塚治虫の作品に出てきそうなスタイルです(そう言えば手塚治虫にも『来るべき世界』という傑作がありましたね)。都市は崩壊して文明は退化し、『マッドマックス2』を50年も先取りした様な世界観を見せてくれます。夢遊病の様な死病ウィルスが人類を激減させるのですが、感染者たちはふらふらと戸外をさまよい見つかると兵士に射殺されてゆきます。ジョージ・A・ロメロも絶対この映画を観てますよ。 この映画の凄いところは30年続いた戦争が終結して新文明によって新しい世界が建設されるシーンです。ここで見せてくれるミニチュア特撮の精緻さは、50年代の東宝特撮のレベルに匹敵するぐらいです。その中でも、ヘリコプターが登場したのにはビックリでした。これが現代のステルス・チョッパーとしても通用するぐらい優れたデザインで、そもそも製作当時はジャイロコプターすら実用化されてなかったんですから驚きです。ラストに月の軌道を周回させるために有人衛星を打ち上げる宇宙砲なるものまで登場しますが、実は後年ナチス・ドイツがこの宇宙砲と同じ原理でV3号“ロンドン砲”という秘密兵器を造っているんですよ。ほんとH・G・ウェルズという人は恐ろしい人です。 ファンタジー映画として観てもちょっと甘い脚本だしこんな壮大なサガを90分余りで観せるのはちょっと無茶なんですが、センス・オブ・ワンダーは映画史に残るレベルの高さです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-01-06 21:57:44)
10.  バルカン超特急(1938) 《ネタバレ》 
足止めを喰らって旅館で過ごす一夜のシークエンスがどうもモタモタし過ぎている感じがします。この作品は登場人物が多いのですが、どうもそれぞれのキャラが有機的にストーリーに活かされていないところが難点です。どうもヒッチコックは群像劇のようなタイプの映画を演出するのはあまり得手ではなかったみたいですね。列車を舞台にしているところなんかはアガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』に便乗した感じが強いけど、この映画の脚本は本格ミステリーに良くある「まずトリックありき」という不自然さが目立ち過ぎています。あんな老婦人一人を始末するのにあそこまで手の込んだ仕掛けが必要なのかが意味不明。ハラハラドキドキ感は薄いし、種明かししてからの展開もちょっと強引過ぎる気がします。まあ“消えた乗客”というプロット自体は偉大なオリジナルで、この後色んな映画で模倣されてるくらいだから評価すべきところでしょう。 そう言えばヒッチコック先生はどのシーンでカメオ出演してたんでしょうか、全然判りませんでした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2014-03-27 23:37:26)(良:1票)
11.  アレクサンドル・ネフスキー 《ネタバレ》 
チュード湖上の有名な氷上の大合戦は、さすがモブ・シーンが得意なエイゼンシュタインだけあって見応えがあります。ドイツ騎士団の悪逆ぶりも堂に入っていて、子供を次々と火に投げ入れて殺すなぞ、史実かどうかは知らないけれどやってくれます。騎士団の足軽(?)たちが被っているヘルメットがモロに20世紀ドイツ軍のシンボルである石炭バケツ型なのはちょっと露骨です。彼らに付き従うカトリック教会もまるでカルト集団みたいな悪役ぶりで、移動式パイプオルガンには笑ってしまいました。 対するネフスキー公側ですが、公をはじめみんな人間描写が薄っぺらというか無いに等しく、ここら辺はやっぱりプロパガンダ映画だなと感じます。思えば製作された1938年はスターリンの粛清が最高潮だった時期で、ドイツ騎士団の捕虜は解放されるのに内通したロシア人は民衆にリンチされて殺されるシーンなんかとっても意味深。ラストのネフスキー公の演説も、まあスターリンが映画を観ている大衆に説教している様なものでしょう。 この映画の三年後、ネフスキー公が守ったプスコフやノヴゴロドでソ連軍を打ち破って、ヒトラーのドイツ軍がレニングラードまで突進していったというのは実に皮肉なことです。
[ビデオ(字幕)] 6点(2013-05-06 20:19:23)
12.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
まず志村喬の歌の上手さに唖然・呆然。この後テイチクレコードから本気でレコードデビューのお誘いがあったというのも納得です。わずか10日でこんな凄い映画を撮りあげちゃうマキノ正博の職人技と言うか神業には恐れ入りました。でも、志村喬がセットの退場方向を間違えて「そっちじゃないよ」と片岡千恵蔵に声をかけられるショットをそのまま使っているところもあり、まあそこはご愛敬ということで。 本作が撮られたときは志村喬はなんとまだ34歳!、千恵蔵の方が年上だったとはまったく驚くばかりです。だってどう見たって『七人の侍』や『ゴジラ』とおんなじ顔なんだから、恐るべき人です。 全編に漂う能天気なバカバカしさはもう最高で、市川春代の可愛らしさにはちょっと参りました。出来ればもうちょっと状態の良い画像で愉しみたかったところです。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-09-21 20:20:01)
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