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オルタナ野郎さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 75
性別 男性
年齢 44歳
自己紹介 昭和55年・生誕。

平成24年・レビュワー登録。

雑感を適当に投稿しつつ現在に至る。

今更ながらFacebookの利用を開始。
更新が忙しいのでしばらく休みます。
映画の感想も当面はそちらに書きます。
…が、気が向いたらたまに転載するかもしれません。

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1.  千年女優
今敏監督の三回忌の折にCSの特集で今更ながら観賞。で、最後の千代子の台詞→平沢師匠のロタティオンのコンボであえなく号泣。そりゃ泣くよ!泣きゃあいいんだろ泣きゃあ!ラストシーンについて、主人公の人生を懸けた壮大なオナニーに付き合わされただけ、とか文句言ってる人をたまに見かけますが、かなり普遍的なテーマを描いていると思うんですけどねぇ。永遠に手の届かない何かをひたすら追い求めて、どこかで力尽きて自分を悟りながら死んでゆく、誰の人生だってそうなんじゃないですかね。願わくば千代子と今監督の来世に祝福のあらんことを。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-02-03 23:33:53)
2.  ダウト ~あるカトリック学校で~ 《ネタバレ》 
あるカトリック学校で一人の黒人生徒に関わる“疑い”を巡って、厳格な女校長(メリル・ストリープ)と寛大な神父(フィリップ・シーモア・ホフマンの西田敏行感は異常)が対立するというお話。昔、古畑任三郎で似た様な話があった(確か沢口靖子が犯人の回)のを思い出したが、結論から言うと非常に見応えのある素晴らしい映画である。演技派の2人による罵り合いや嫌がらせ合戦を観ているだけでも十分に面白いので、個人的にはこの泥仕合を延々3時間くらい続けてくれても飽きずに観ていられる自信がある。まず2人の確執を通して表立ったテーマとして語られるのは、信仰における美徳(規則や戒律)と寛容(博愛や慈悲)の間にある葛藤である訳だが、1964年(JFK暗殺の翌年)という時代設定も相俟ってここにイデオロギーや人種・ジェンダーといった、この時代に顕在化していった様々な対立軸も巧みに織り込まれているあたりも実に憎らしい。最終的にこの映画は色々と不明瞭なまま様々な含意と余韻とを残して終わるのだが、何としても神父の“疑い”を暴こうとする校長に対して黒人生徒の母親が、「理由はどうでもいい。息子を気にかけてくれるなら。」と涙ながらに訴えるシーンがとても印象的である。そもそもこの映画において神父と黒人生徒との“疑い”の真相や、神父と校長の論争の勝敗なんて大した問題ではないのだろう。むしろ、周囲の人間からの孤立を招いてまで“疑い”を確信へと変える必要はあるのか、あえて“疑い”を“疑い”のままにしておく方が人心を救う事にもつながり得るのではないか、という問いかけこそがこの映画の本当のテーマである様に思える。神父が学校を去った後の校庭のラストシーンで、校長は堰を切った様にシスターに告解を始める。“疑い”を持ってしまった事。そして、その“疑い”を確信に変えたいがために嘘までついてしまった事。おそらくここで彼女が吐露した“疑い”とは、自身の信仰や生き方に対して抱いてきた“疑い”でもあるのだろう。泣き崩れる彼女の胸中には冒頭における説教を締めくくった神父の言葉があったのではないだろうか。「“疑い”は、確信と同じくらい強力な絆になり得る。道に迷った時、あなたは独りではない。」
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-01-10 21:19:27)(良:1票)
3.  ジョニー・マッド・ドッグ 《ネタバレ》 
「死にたくなければ生まれてくるな!」、アフリカ怖えええええ!!頭にビーンボールの直撃を喰らった様な久々の衝撃を受けた映画。反政府軍の少年部隊長ジョニー・マッド・ドッグとその部下達が行く先々で殺戮やレイプや略奪をしながら行軍していく姿と、彼らに弟を殺された少女ラオコレが撃たれた父親(戦争で両足を失っている)を連れて戦禍から逃げ回る姿が、対比されながらやがて交錯していく様子が描かれる。それ以外にこれといった話らしい話は無いのだが、略奪した衣服や装飾品を身につけた色とりどりの少年兵が、自動小銃を担いで無軌道に暴れ回る描写がとにかく強烈で、無秩序な環境で分別の無い子供が武器を持つという事の恐ろしさが全編に渡って描かれる。互いを妙なコードネーム(ノー・グッド・アドバイスやらチキン・ヘアーやら)で呼び合い、戦闘前には呪術めいた儀式と鬨の声による集団トランス状態で士気を高め、上官であるネバー・ダイの命令あらば忠実にそれを遂行する。タチが悪いのは彼らは純粋に戦争というゲームに興じている子供なのであって、その無邪気さ故に罪悪感を感じておらず死をも恐れていない点。だからこそウェディングドレスやカツラでふざけた仮装をして、仲間が死んだ時には下ネタまじりの追悼歌で見送るのである。反政府軍の大人達は彼らのその子供らしさに付け入り、恐怖による洗脳と薬物による陶酔で即興の兵士へと仕立て上げ、後退すら許さぬ状況で使い捨ての駒として前線に立たせる。しかし最後には反政府軍のクーデターが成功するやいなやジョニー達は用済みとなり、常備軍に入ったネバー・ダイにあっさりと見捨てられてしまう。何とも救い様の無い話だが、この映画で少年兵を演じているのは実際に内戦を戦った本物の元少年兵であるらしく、これは完全なフィクションではなく世界のどこかで今も起きている現実なのである。劇中で流れるキング牧師の演説やエンディングの「奇妙な果実」は、アメリカとリベリアの関係性を示唆するだけにとどまらず、ひいては地域紛争の多くが先進国との歴史的・商業的な関係性に起因する事を告発している様にも思える。残念ながら日本における本作の興行はさほど振るわなかったそうだが、これは先進国の国民すべてが観るべき映画であると感じる。少なくともジョニー達の境遇に照らし合わせれば、何気なく享受している平和がどれだけ重いものなのかはっきりするはずだ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-01-03 13:30:17)
4.  グレイスランド 《ネタバレ》 
不慮の事故で妻を亡くした若い男と、エルビス・プレスリーを名乗る胡散臭いおっさんが、プレスリーの自宅であるグレイスランドを目指して一緒に旅をする事になるというロードムービー。途中までカイテル演じるニセ(?)エルビスの余りのデタラメさにヘラヘラ笑いながら油断して観ていたが、終盤に2人して死んだ妻の墓前へとやって来るシーンで不覚にも号泣してしまった。「いつまでも悲劇の世界に閉じこもるな」、絶望に打ちひしがれているすべての人に観て欲しい映画です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-12-15 01:14:10)
5.  桐島、部活やめるってよ
ようやく観られた吉田大八監督の話題作。この映画に関してはすでに色んな人が色んな所で熱く語りまくってるので私ごときが今更言える事は少ないが、とにかくラスト間際に思い浮かんだのは“かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう”((C)早川義夫)って言葉だった。やっぱり世間様からどれだけズレていようが純粋に好きなもん追いかけてる奴等が一番かっこいいんだよなあ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-03-24 00:10:19)
6.  ゆれる
西川美和監督の代表作という事で今更ながら観賞。ある種独特の飄々としたローファイ感漂うタッチで綴られてはいるが、この女流監督が突き付けてくる提起はいつもながら舌を巻く程に鋭い。対照的な生き方をする主人公兄弟を通じて見えてくるもの。都会と田舎。モテと非モテ。優越感と劣等感。そして、抑圧と解放。一億総中流社会と言われる中でぼんやりとだが確かに存在している「格差」と、無配慮と誤解の積み重ねで瓦解へと至ってしまう「人間関係(血縁関係)の危うさ」。兄弟の葛藤はやがて観る側の感情をも巻き込んで不安定な吊り橋の様に“ゆれる”。最終的な結論を受け取り手に委ねる作風が賛否両論を呼んでしまう事も多いが、控え目ながらも確実に物事の核心を射抜いてくる彼女のスタンスが私は好きである。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-01-08 20:13:13)(良:1票)
7.  バベットの晩餐会 《ネタバレ》 
敬虔なクリスチャンである老姉妹と亡命してきて家政婦となった未亡人バベットの交流を描いたデンマーク映画。これはすごい掘り出しものの隠れた名作に出会ってしまった気がする。自分でもなぜなのか分からないけれど終盤のあたりから涙がこみ上げてきて堪えるのが大変だった。小汚いジジィとババァが飯食ってるだけのシーンなのにどうしてこんなに感情を揺さぶられるんだろう。小気味よい手際のバベットの“もてなし”が猜疑心や虚無感に満ちた人々の意識を鮮やかに塗り替えていく。この上ないほど地味で素朴だけどとても強くて奥深いメッセージを持つ作品だと思った。「貧しい芸術家はいません」、迷いなくそう言い切ってしまえる情熱とプライド。これは料理人に限らずすべての作り手に通底する普遍的なテーマなんじゃないかな。いやー傑作です。良いもん観せてもらいました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-06 00:16:33)(笑:1票)
8.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
前々から観たかった一本だが今回念願叶ってようやく観賞。ノベルゲーム『STEINS;GATE』の元ネタとして有名な作品だけどシナリオや舞台設定に関してはこの映画の方がずっとシンプルにまとまっとるね。あと、主要登場人物に美男美女がほぼ皆無であるという点も妙に生々しいリアリティと媚びない姿勢みたいなものが感じられて好印象。中身は『BTTF』シリーズみたいな過去改変型SFのよくある類型なんだが本作では実際にタイムスリップする訳ではなく、主人公が持つ「過去の行動を再選択する能力」を発動する事で「現在に別のパラレルワールドが再構築される」という仕様。ルートの分岐点で選択肢を選ぶ(フラグを立てる)事でその後のストーリー展開やキャラクターの運命が変移していくという点では、もともとこの作品のプロットそのものがサウンドノベルのような「ゲームブック的構造」を意識した作りになっていて、その「周回プレイ感」をひとつの表現として映画の中に持ち込んでいる部分が新鮮と言えば新鮮。主人公はゲームのプレイヤーさながらに数多のバッドエンドを体験しながら真のエンディングを目指し、最終的には誰も不幸にならない究極の選択肢(『かまいたちの夜』で言うなら「大阪就職エンド」)を敢えて選ぶ。そして、シュタゲでもパクられて…いやオマージュを捧げられていたラストシーンはやはり秀逸。いやー分かっててもこれは切ないねぇ…。でも切ないけど…なんかイイ。俺はおまいさんの選択を断固支持するぜ!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-04 18:40:34)
9.  CURE キュア 《ネタバレ》 
「本部長の藤原、あんたは誰だ?」国籍・人種・信仰・職業・家族・名前・住所・電話番号…等々、個人を規定するありとあらゆる肩書きを取り払った上で自分が何者であるかを弁明できるだろうか?大なり小なり社会や組織にアイデンティティを埋没させながら生きている現代人にとっては答えを出すのになかなか骨の折れる質問である。間宮(萩原聖人)はのらりくらりとその人を食った様な問答を通して、相手の固定観念や存在意義を揺さぶりながら催眠による“CURE”を施していく。どんなに温厚な人物でも日常の中でうっすらとしたストレスを抱えながら生きている訳で、それを暗示によって一点に濃縮・増幅させれば殺人だって犯し得るかもしれない。そうしてわだかまっていた憎悪や悪意を表出させて精神的安定を目指す事こそが“CURE”の目的であり、葛藤しながら間宮と対峙し続けた高部(役所広司)もその本質に触れて最終的にはその役目を引き継ぐ事になる。何とも突飛な皮肉に満ちた話ではあるが、これを一概に荒唐無稽と断ずる事もできまい。現に周囲を見回せば至る所で主義主張の名の下に憎悪や悪意が垂れ流されている。敵対する国家・敵対するイデオロギー・敵対する男女 、あらゆる差別やそれに対するカウンターとても例外ではない。理想のため?平和のため?愛国のため?純粋にそれだけの動機だと本心から言い切れるか?今日も我々は押し寄せる情勢不安をひたすら誰かのせいにしながら互いに憎しみをぶつけ合うのである。ほんの僅かな“CURE”を得るその一瞬のために。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-09-30 12:52:41)
10.  メタルヘッド 《ネタバレ》 
まったく聞いたことのないタイトルだったので、正直あまり期待せずに観たのだがこれは良い掘り出し物。交通事故で母を亡くしたいじめられっ子の少年・TJの家庭に突如転がり込んできた危険なヘビメタ兄ちゃん・ヘッシャー。彼の破天荒な言動に振り回されながらもその影響から徐々に変化していく主人公とその周囲の人々との関係が描かれる。謎の人物(使者)が傷心した人間を翻弄して立ち直らせるという点では、以前レビューを書いた『グレイスランド』に非常によく似た話ではあるが、本作の使者のモデルはプレスリーではなくメタリカの元ベーシスト(タイトルロゴもメタリカのオマージュ)らしい。地獄からやって来た悪魔の様な破壊的行動とどうしようもない下ネタ発言によって、まるでダイナマイトの爆風で火事を掻き消すが如くジレンマやトラウマを相対化していく様がとにかく痛快。家族を失って途方に暮れる家庭を慰めや励ましではなく、破壊と狂気によって再生させるという斬新な発想には目から鱗をもぎ落とされた。本作を観て確信したが、全国のいじめられっ子や自殺志願者はポップスやアイドルソングではなくヘビーメタルやハードコアパンクを聞くべきだ。ネガティビティを克服できるのはポジティビティだけとは限らないという事実をこの映画は告げている。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-08 01:19:22)(良:1票)
11.  靴をなくした天使 《ネタバレ》 
墜落した飛行機から乗客を「魔がさして」助けてしまった盗人の話。多くの乗客の命を救いながらもセコい小悪党であり続ける主人公をダスティン・ホフマンが、ヒーローを偽って名乗り出るも良心の呵責に苛まれるホームレスをアンディ・ガルシアがそれぞれ好演。2人を対比させながら物事の多面性を理解し得ないメディアや世論への皮肉と諦観が描かれていく。『靴をなくした天使』という恥ずかしい邦題を除けば、ここでの高評価に違わず非常に良い映画だと思う。最後まで真実が公にならない部分をあげつらって低評価を付けている人達がおられるが、実社会でも評価されるべき事象が時流の趨勢やメディアの黙殺によって埋もれてしまう事は多々あるはず。ラストシーンで鼓笛隊の演奏に掻き消される主人公の胡散臭い自慢話の様に、真実は時として嘘なんかよりもずっとか弱いものであったりするのだろう。コミュ能力やらプレゼン能力やらといった皮相的な処世術が持て囃される昨今、無口で不器用な真実はどんどん見過ごされて虚栄の中に埋没していってしまうに違いない。「世の中はウソだらけなんだ。だからお前は好きなウソを選んでそれを信じればいい。」息子にそう語りかける主人公のニヒルな台詞がやけに悲しかった。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-03-20 20:38:47)(良:1票)
12.  主人公は僕だった 《ネタバレ》 
12年間同じルーティンの生活を繰り返してきた男が、ある日聞こえてきたナレーションの声から自分が悲劇の小説の主人公だという事に気付き、自身の死の運命を回避する為に奔走するというコメディ映画。ここでの評価は余り高くない様だが良い映画だと思う。なんか普通に感動してしまった。何と言っても結末で主人公が死ねば傑作となっていた小説を、主人公を生かす為に駄作に書きかえる部分がミソだと思う。深刻ぶった創作の悲劇なんかより何気ない現実の日常の方がずっと尊い、そんな当たり前の事に気付かせてくれる映画である。ともすれば悲壮的な物語の中に逃げ込んで、酔いしれてしまいがちな人達(私も含めてだが)へのアンチテーゼ…と言うほど大袈裟なものではないが、チクリと気の利いた皮肉で上手くやり込められた様な憎めない爽やかな余韻の残る良作である。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-02-22 00:16:45)
13.  南極料理人 《ネタバレ》 
南極観測基地に従事する越冬隊の生活をひたすらゆるく描いた、おっさん達のおっさん達によるホモソーシャル好き腐女子の為の映画。終始ぬるま湯の中で繰り広げられる場面の連続に、「南極舐めんな!」とブチ切れる御仁がおられるのも理解できるが、この一分の隙もないローファイ感はちょっと只事ではない。エンディングのユニコーンの主題歌も含めて完璧と言えよう。終盤に全員でラーメンを食うシーンが最大の山場になっているという恐るべき起伏の無さはある意味見事である。本作はおそらく南極を題材にした作品にありがちな、「過酷な大自然×重厚な人間ドラマ」的イメージに対するカウンターとして作られたのではないだろうか。即ちこれはニュースクール・南極映画なのである。ちなみに南極2号とかは出てきません。念の為。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-02-07 01:14:40)
14.  8 Mile
アメリカを代表する白人ラッパー・エミネム主演の半自伝的映画。エミネム人気が飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃の作品で、公開当時はそれを揶揄する向きもあったようだが、中身の方は極めて真摯につくられているので、ヤンチャに見えて実は生真面目な人だという事がよく分かる。自動車産業の急速な発展と衰退によって荒廃したデトロイトを舞台に、工場で働きながらラッパーとしての下積み生活を送る主人公が描かれるが、その姿を通してちゃんとヒップホップがどういう音楽なのかを説明するつくりになっていて、ヒップホップを知らない人でもかなり分かりやすい内容になっている(訳詞も相当がんばっている)と思う。ちなみに冒頭のMCバトルで主人公を叩きのめすのが、エミネムも所属するD12のプルーフ(2006年に銃撃を受け死去。享年32歳。合掌。)というラッパーで、映画に出てくるフューチャーのモデルとなった人物であり、実際に駆け出しのエミネムを最初にフックアップした人物でもあるので感慨深い。他にはヒロインがクソビッチである点が多少気になったが、そのあたりを除けば非常に完成度の高い映画である事は間違いない。あと個人的には、スクリブル・ジャム’97でのドーズ・ワンとのMCバトルが再現されるのではないか、という気がしていたが別にそんな事はなかったぜ(ドクター・ドレすら出てきません)。
[地上波(字幕)] 8点(2013-01-09 02:08:57)
15.  告白(2010) 《ネタバレ》 
この監督の映画は背景がやたらとゴチャゴチャしてたり、わざとらしい演技が多かったりしてかなり苦手だったのだが、本作はいつもの調子を抑えてかなりシリアスなトーンになっていて、こういうテンションの映画も撮れる人なんだと感心した。ただし、内容の方はパク・チャヌクの復讐三部作あたりの良さげな部分だけサンプリングして上手くまとめました、という感じ。松たか子の演じるキャラクターなんてほとんどクムジャさんそのまんまだったりする。でも分かり易くてタイトにまとまってるので、ラストの展開とかも含めて非常に完成度は高いと思う。人物の描き方が表層的(記号的)とか必要以上に露悪的とかいった批判も、そもそもこの映画自体がガキをガキ扱いし続ける社会に対するネガキャンCMなのだと考えれば大して気にならない。敢えてひとつケチをつければ、終盤に出てくる爆破の(イメージ)シーンが無駄に長くて仰々しい点。あそこはもっと淡々としていた方がより突き放した感じになって良かったと思う。あんなクソガキに自己憐憫めいたカタルシスなど与えてやる必要はまったく無い。何が「復讐なんかしたって被害者は浮かばれない」だ?復讐と銘打つからには本作のラストの様にすべからく加害者をフルボッコにして終わるべきなのだ。今後はおちゃらけ映画は止めてずっとこの路線でやって欲しい。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2012-12-27 18:33:23)
16.  特別な一日 《ネタバレ》 
ヒトラーのイタリア訪問の式典の日、子育てに追われ生活に疲れたファシスト党の主婦と、ゲイである事を理由に局を追われたラジオアナウンサーとの交流を描いた話。閑散とした団地で式典の実況が流れる中、静かに繰り広げられる2人の応酬は、不思議と緩やかなのに張り詰めている。個人的にファシズムvs自由恋愛(不倫)みたいな構図は大嫌いなのだが、単に下世話なメロドラマとして終わらせない語り口にはかなり好感が持てた。それどころか扇情的なBGMや戦闘・演説シーンなど一切無しで、反戦・反ファシズムを描き切った見事な映画。脱帽です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-27 16:47:37)
17.  アバウト・シュミット 《ネタバレ》 
ラスト数十秒のジャック・ニコルソンの泣き笑いの表情にすべてを語らせる映画。そこまで観てやっと、今までの約2時間がそのシーンに至るための壮大な前フリだった事に気付く。内容は一応コメディなのだが、引退したサラリーマンの悲哀がこれでもかと無様に描かれるので、微妙に暗かったり痛々しかったりして笑えない場面の方が多い。しかし、少々退屈に感じたとしても、最後まで投げ出さずに観るべきである。晩年に差し掛かっても何者にもなれず、何事も成し遂げられなかった平凡な男に訪れる、ほんのささやかな救いを。「自分の人生に意味などあるのか?」、一度でもそんな自問をした事がある人なら、人生観を変えてくれる1本にもなり得るはず。ただし、終盤に出てくるキャシー・ベイツの裸体には人生観を狂わされるくらいのインパクトがあるので要注意。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-15 00:46:06)
18.  ローズ・イン・タイドランド 《ネタバレ》 
『ブラザーズ・グリム』と同時期に制作されたそうだが、あちらとは対照的に、それにしてもこのギリアム、ノリノリである。皆さんも指摘されている主演ジョデル・フェルランドの圧倒的な存在感、それに負けじと呼応するジェフ・ブリッジスをはじめとする脇役陣の異様な熱演、そして画面の隅々まで行き届いたディティール、この狂った世界観を余すことなく表現してやるという気合いを感じる。世評では奇を衒った様な世界観や役者達の怪演に好き嫌いが分かれているみたいだが、単純にストーリーだけを抜き出してみると結構救いようのない話なので、観ている内になんだかしんみりしてきてしまった。「狂気にでも逃げ込まなければ、この世は悲しくてやり切れないじゃないか!」、鬼才ギリアムのそんな孤独な叫びが聞こえてくる気がする。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-08 12:02:32)
19.  ピアニスト
観客への嫌がらせの様な陰湿な映画を撮る事で定評のあるミヒャエル・ハネケ監督の2001年作。粗筋的には倒錯した性癖を持つ中年女性のピアノ講師と若い男子生徒との歪みまくったラブストーリーである訳だが、爽快な見せ場など皆無の所謂アンチカタルシスな映画なのに何かとんでもなくヤバいものを見たかの様な余韻が残る。主人公が異常な性向を持つに至った背景は劇中でそれとなく示唆されるものの過度に説明的な描写がある訳ではなく、断片的なヒントだけが羅列されて最後はほぼ投げっ放しのままで終わるという実に見事な“ハネケ節”が炸裂している。序盤は半笑いで見ていられる主人公の変態っぷりも途中から笑えなくなって終盤にかけて息が詰まりそうになるのは、誰もが内に秘める《他者と関わる上での根源的な不安感》を本作が白日の下に暴き出しているからなのかもしれない。私には「おめーらが心から誰かに理解される訳ねーだろバーカwww」という監督の高笑いが聞こえてきた様な気がした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-12 04:57:22)
20.  県警対組織暴力 《ネタバレ》 
菅原文太に哀悼の意を表して『仁義なき戦い』…とほぼ同じスタッフで制作されたという本作を観賞。当時ヤクザ映画を量産して世間のバッシングを受けていた東映が初めて「警察側の視点」を持ち込んだ転機作らしく、文太兄ィ演じる悪徳警官とヤクザの若頭(松方弘樹)との友情と若きエリート警部補(梅宮辰夫)との対立が描かれる。物語の舞台は架空の地方都市という設定ではあるものの脚本自体は取材過程で明らかになった実話を元に書かれており、そこからは政・官・財とヤクザが結託して癒着や談合によって形作ってきたこの国の柵(利権構造)が垣間見えてくる。さてここで現実に立ち返ってみると折しも先般成立したテロ資金関連法案は指定暴力団等にも波及すると言われており、現政権は国際世論からの外圧を背景にいよいよ「裏社会」の切り崩しに取り掛かっているとみてまず間違いないだろう。しかし戦後長きに渡って日本社会の受け皿としてこの国の暗部を引き受けてきた彼等がそう簡単に引き下がるだろうか?またある種の必要悪として許容されてきた彼等が存在しなくなった日本社会は今後どのように変容していくのだろうか?この映画の劇中終盤では追い詰められたヤクザ達が人質を盾に立て籠り汚職に手を染めた連中を暴露しようと試みるが、もしかしたら本作におけるそのクライマックスが現実のものとなる時がすぐそこまで来ているのかもしれませんなぁ…。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-01-12 04:53:33)
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