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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  アルジェの戦い 《ネタバレ》 
ジッロ・ポンテコルヴォによるドキュメンタリー・タッチの皮を被った戦争映画の傑作。 ロベルト・ロッセリーニ「戦火のかなた」といったネオ・レアリズモの流れを組むリアリティ、スリリングなやり取りの連続で飽きさせない。  密室で裸にされ、火傷のようなものを胸に負い、震える男を囲む軍人らしき男たち。隣に置かれているのは水桶だろうか。 恐怖で怯え、涙目になった男に軍服を着せ、弱々しく「叫び」ながら窓から出ようとする男を押し止め、扉の向こうへ連れ去っていく。抵抗する力を奪い尽くして。  お次は機銃を装備した軍隊がアパートに雪崩れ込み、壁の向こうで“耐え続ける”者たちに最後の警告を発する。抑圧され、抵抗し続けた者たちに与えられる最後の選択。 そこから物語は「なぜそうなったのか」を解き明かすために過去へと遡る。  刑務所、窓・穴という穴から目撃される“断頭台”による処刑。アルジェリアという場所で育ってきた習慣、宗教、支配者であるフランスとの文化の違い。  隠され増幅されていく復讐の念。街中に武器を隠し、ベールの下から手渡し、拳銃・マシンガンによって一人一人確実にブッ殺していく暗殺。 やがて負の連鎖は運び込まれる“起爆剤”によって文字通り爆発的にエスカレートしていく。哀しみは怒号となって群衆を津波の如く突き進める!  女たちが髪をとかし、切り落とし、染め上げ覚悟を決める“荷運び”。地毛を染める必要の無かった愛する者との結婚、染める必要のある憎むべき敵の抹殺。  ザル警備を挑発する様に多発する爆破テロ。同じような音楽が流されるのは「お互い同じ気持ちだった」と言いたいのか、それとも「どっちもどっちだ」と言いたいのか。 市街地で繰り広げられる銃撃戦、車上からの機銃掃射。無差別にされたら無差別に殺り返す憎悪のぶつけ合い。  老人だろうが子供だろうが容赦なく襲い掛かる“人種差別”という名の暴力。物売りをしていただけの子供でさえ、同じ人種というだけで「やり場のない怒り」を向ける捌け口にされる。仕事とはいえ身を挺して子供を庇い連れ去っていく警官たちの姿には思わず震えた。  井戸、壁の中はアルジェリア人にとっては命を繋ぐ安全地帯。フランス人には敵が何処に潜んでいるのかという恐怖。  後半は民衆と軍隊の激突が本格化していく。  整然と行進する軍隊の頼もしさ、恐ろしさ。 ヘリが飛び交い、武装した軍隊が建物の上まで睨みを利かす。機銃を突き付け、窓ガラスをブチ破り、シャッターを引きはがし、ドアを蹴破り押し入るガサ入れ。籠城野郎やアマどもは建物ごとダイナマイトで吹き飛ばす!  叫び続け“断念”することを選ぶ者もいれば、沈黙を貫く者もいる。同胞たちは、何も出来ない・してやれない悔しさ哀しさに黙って涙を流しながら耐えるしかなかった。  それが国の、自分たちのアイデンティティが刻まれた“旗”を掲げ、叫んで叫んで叫びまくりながら市街地を埋め尽くす瞬間!殺したきゃ殺せ!殺しきれるものならしてみろと言わんばかりに人々の行進は止まらない。  もうもうと白い煙がたちこめる路上。煙の向こうから咆哮を束にして旗を振り回しながら押し寄せる人、人、民衆の群!もはや彼等・彼女等のエネルギーは誰にも止められないのだ。 男たちの“沈黙”によって幕を開けた物語が、女たちの“叫び”とともに締めくくられる。いや、アルジェリアの人々にとっては新しい時代の“始まり”を告げる歓喜なのかも知れない。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2017-04-25 07:52:49)
2.  独立機関銃隊未だ射撃中 《ネタバレ》 
戦場を舞台にした厭戦映画の傑作の一つ。  冒頭、デカデカと映る第二次大戦下の日本、満州、ソヴィエート聯邦(ソヴィエト連邦)を中心とした地図を映し、満州とソ連の国境線、ソ連国境警備隊が守る陣地を映していく。  鉄条網の下に伸びる塹壕、風になびく花、花、花、木漏れ日に照らされる陽気な道を抜けてくる男二人。 トーチカから投げ渡される煙草、土くれにボコボコあけられ埋められる穴。ベラベラ喋り合い食い物を渡し合える平和な一時、ベテラン兵。  撮影はマキノ雅弘「次郎長三国志」シリーズに参加した名手の山田一夫。穴から差し込む光の陰影といい、素晴らしい。  外は蝶々が舞い、扉を開けた先は地面を鼠が這い、新兵を出迎える個性豊かな男たち。 お守りぶら下げ戦う隊長、家族思いの父ちゃん、女好きの髭面、丸眼鏡のインテリ、笑顔で自己紹介する新兵、出入りする顔なじみの戦友たち。  話がデカすぎて信じられないくらい遠くから響いてくる戦争の足音。みんな戦争が怖い、死ぬのが嫌だから戦うしかない。銃を抱えさせられ教えられ、銃剣を研ぎ、爪を切り遺書をしたため決めた覚悟は揺らぎ続け、人を撃った罪の意識で動揺し、吐き、泣き叫ぶ。敵ではなく同じ人間を「殺っちまったんだ」って顔がまた…。  電話通信、ヘルメットで煙草の火を付け、挨拶から機関銃の糾弾方法・撃ち方まで教え込んでいく。“音”とともに掛け声を張り上げ揃える戦闘準備、弾薬を落とし耳を塞ぐ恐怖の現れ。  男たちはトーチカ内を機銃と弾を抱え動き続け、双眼鏡越しに敵を捉え、穴という穴をハンドル回し開いて閉じて睨みつけ、平手打ちを浴びせ気合を入れ、励まし、鉄兜の緒をしめ、伏せまくり、飯と酒をかっ喰らい、血と土埃にまみれながら薬莢と弾丸を吐き出す機関銃を撃ちまくる。  出たくても出れない閉鎖空間、あらゆる“音”だけが鳴り響き見えざる敵の存在を知らせる。  穴から降り注ぐ土、砂利、扉の向こうからやってくるもの、閉められ遮られる土煙、穴という穴から浴びる爆風、銃弾、焔。 案内板も、蝶々が飛び交う原っぱも、勇ましい訓示も、塹壕も、化けの皮も何もかも吹き飛んでいく戦闘。断たれる電話線、死の恐怖が引き起こすパニック。  恐怖を跳ね返すために座り込み歌う鎮魂歌、死者に被せる手向け、雨漏りの中で告げられる「命令」。  歩兵を薙ぎ払い戦車(造りはチープでも演出の力もありかえって怖く見えてくる)にも浴びせまくる掃射、跳弾、士気が上がる援護射撃、閃光が降り注ぐロケット弾、穴から出てくる表情、ヒビが入り、瓦礫が落ちて風穴が開き、扉を薙ぎ倒されようが撃って撃って撃ちまくる。  鏡で反射させて照らす探り、扉を開け飛び出していく戦車への接近、“挨拶”。「やっぱりガキだなおめえは…」。噴き上げる黒煙、“申し開き”。  戦況も、味方も残っているのかいないのか、どうして戦うのかも分からなくなり無情に過ぎ去る時間(まあシベリア送りとかソ連の悪業三昧知ったらそりゃねえ)。  たった一つしかない武器を我が子のように庇い整備し続ける佐藤允、若者から一人の兵士に変貌していってしまう寺田誠(麦人)。  覗いた先から伸びてくる恐怖、黒く染まった大地を照らすように輝く“花”、こびりつき飛び散る命、命、命。
[DVD(邦画)] 9点(2017-01-25 23:11:13)
3.  荒野の女たち 《ネタバレ》 
ジョン・フォードが本当に撮りたかったもの…それは女たちの生き様だったのではないか。  「我が谷は緑なりき」や「怒りの葡萄」の家族を支える女たちの、「駅馬車」で蔑まれている中だろうが赤ん坊を救うことを選んだ女の、「馬上の二人」の連れ去られ差別に苦しんだ少女の、「メアリー・オブ・スコットランド(スコットランドのメリー)」の王女になってしまった女たちの孤独。  野郎が跋扈する「三人の名付け親」や「捜索者」ですら、男は母親の様に子供を抱きかかえていた。いなくなってしまった女たちの代わりを果たしたかったかのように。  この映画は、冒頭の馬賊が駆け抜けるような映画ではない。理不尽な現実に打ちのめされ、それに抗おうとする弱者たちの静かな“怒り”が渦巻く映画だ。幼い子供たちの、彼等を守る女、女、女たちの。  馬賊たちは後の災厄を予告し、動乱の中国大陸に脚を踏み入れ取り残された人々を振り回していく。   馬に乗って僻地にやって来たカウボーイのような井出達の女医。このアン・バンクロフトのカッコ良さと言ったら。厳粛なキリスト教を笑い飛ばすように煙草をたしなみウイスキーを愉しみ、祈る暇があったら自ら行動し、家族や組織といったしがらみを拒むように孤独な様子を覗かせる。  それが運ばれてきた負傷者を見るやいなや医者として迅速に行動を起こし、病が発生すれば家中を駆けずり回り、貴重な水でも犠牲者を減らすために投げ捨て最善を尽くす。   隔離を告げる看板、ひたすら土を掘り返していた者が座り込み、布の下に眠る死者たちを想い打ちひしがれる。   一難去ってまた一難、建物の向こうで燃え盛る巨大な焔、門の前を通り過ぎる軍隊、扉を開いた瞬間に雪崩れ込む馬賊たち暴力の嵐。監禁と虐殺、けたたましい嘲りがこだまし頭がおかしくなりそうな閉鎖空間。それでも彼女は諦めず己を貫き通す。「汚い手で触んじゃねえっ」と言わんばかりに屈強な大男に平手打ちを喰らわせる気丈さよ!  女たちは老いたはずの肉体で新たな命を産み、女医はそれに応えるために壁を駆け上がり格子を握りしめ怒れるばかりに叫ぶのだ!!   馬賊たちとの取引、土埃にまみれた鏡を一目見て、ベッドに座り込み見せる弱さ、再び立ち上がり覚悟を決めた強さを見せる後ろ姿。虐殺を繰り返してきた者たちまで赤子の誕生に喜んでいるかのようにはしゃぐ奇妙な光景。   馬賊に尽くす女たちもまた犠牲者に過ぎなかった。代わりの女が来れば部屋から追い出され、用済みになればゴミ同然に投げ捨てられる。疲れ切った表情。  だが彼女は何度でも仲間の元に戻り、切り札を手に入れ、敵の懐へ飛び込んでいくことを選び続ける。椅子にふんぞりかえるのは身内同士の決闘で殺し合わせるため、服を着替えるのは寝るためでなく二人っきりの状況を作るために。  たった一人扉にもたれかかり、女たちを見送る視線。彼女が一度でも“祈る”ことがあるとするなら、それは見送ってやることしかできない仲間たちの無事くらいだろうか。   開かれた扉の先で待ち受ける野獣、杯に入れられる切り札、投げ捨てられる杯。医者の道を踏み外すようなことを選んでしまった・救ってやれなかった自分自身への怒りも込めて、彼女は投げ捨てるのだ。   最後の最期まで何かを“投げる”ことを描き続けた、フォードらしい締めくくりだった。
[DVD(字幕)] 9点(2016-11-24 22:41:14)(良:1票)
4.  鳥(1963) 《ネタバレ》 
恐怖とは不意に襲い掛かって来るからこそ面白いし、その謎が解き明かせないからこそ恐ろしいのである。 この映画は、並のホラー映画よりもおっかない作品だ。  冒頭から鳥、鳥、鳥が泣き叫び空を覆いつくすように飛び交い、部屋中に閉じ込められて人々の視線を集めるように登場する。 鳥たちは「何か」をしでかすことを予告し続ける。それがいつ来るかはわからない。その瞬間まで緊張させ、油断させ忘れた頃に“思い出させる”ために。  二人の男女が出会い「鳥」によって接点を持つ微笑ましいやり取りでさえ、籠が開かれたら鳥はいつでも飛びたつのである。  そんな鳥たちが待ち受けるとも知らずに女はわけもなく男を探す旅に出発し、男も彼女を誘うように瞬く間に実家に帰ってしまう。  退屈な方が平和だった映画と地方暮らし、美しい案内人、船に乗り込む接近。 エンジンを切るのは気づかせないため、泥棒か殺人鬼のように静かに扉を開けズカズカと家に侵入してしまう人間の恐ろしさ。ヒッチコックの他の映画ならこの時点で2,3人殺しているレベル。  船上でこっそり見守り、視線が合うのを待つように留まるのは見つけ出して欲しいから。見つけて欲しいのは彼を驚かせたいから。だが、男は別のことに驚き船に飛び乗ることになるのだ。  鳥は二人を接近させるために飛ぶのではない。人々を混乱に陥れるために縦横無尽に飛び交うのである。押しかけ美人も、好青年も、幼く可愛い妹も、美人の母親も、クールな先生も、酒場の変人たちも、町中のあらゆる人間の「今まで」を破壊し恐怖のどん底に叩き落すために!  けたたましく響き続ける音、音、音、血まみれにするために突き立てられるくちばし、嘴、嘴、部屋中に散乱する羽、羽、羽。  鳥たちは自然災害のように出現と消失を繰り返す。時として音もなく、気づいたらそこにいる。 それでも人間たちは外出をやめることは出来ない。知人に会いたい、何かを知らせるために衝動的に・どうしようもなく体が動き走り出してしまうのである。脚本の都合上(ry  外にいるなら上空から降下して襲い掛かり、風船を割り、頭を突き薙ぎ倒し、中に入ろうが煙突から侵入し、窓を閉めようが窓ガラスに体当たりしブチ破り、眼鏡を叩き落し、窓を塞ごうが弾丸のように押し寄せ壁に穴をあけまくる! 乱れた髪、割れた食器、ガラスを突き破り部屋中に散乱する亡骸。  襲われてパニックになった人々の挙動もおっかない。 うつろな眼差しで扉の外を見たり、声が出せないほど口を大きく開け駆け込んだり、眼を開いた瞬間に何も無いはずの空間で何かを払うように腕を振り回したり。瞬きが出来ないほど肉体に刻まれた恐怖。 言葉だけでは誰も信じない。この目で見るまでは情報を交換し余計に混乱させるだけで何の対策も打とうとしない。ガソリンが地面を流れようが誰も気づかない・気づいた時にはパニックで我をわすれている。人々の行方は誰も知らない。挙句には他人のせいにして八つ当たり。まったく人間て奴は恐ろしいねえ。  しかし人々は鳥を殺そうとしない。 身を守るために服で振り払い、ホースの水を浴びせる程度。それは鳥に親しみ愛する人間が多かったからというのもあるだろうが、何より恐ろしいから、災害のような相手に何をしても「無駄」だということを知っていたからなのだろう。怒りで石を投げようとする者の動きすら止めてしまうのだから。  鳥も動くことを止めようとしない。いつでもまた飛んでやるぞと群をなして待ち構えるようにすらなるのだ。地面を覆いつくし不気味に静寂しながら。
[DVD(字幕)] 9点(2016-10-02 08:06:28)
5.  かたつむり 《ネタバレ》 
ルネ・ラルーの短編。 後の「ファンタスティック・プラネット」等に繋がる摩訶不思議な空間。  揺れる球体の上に立つ無数のものたち、揺れが止まりオープニングへ。  球体に近づくと街、畑に。 水を撒くもの、如雨露に座り込み植物を見る。 木の枝で支えを作ったり、歩きまわったり、釘を刺して磁石で吊るしたり、風船で吊ったり。違う、そうじゃない。  涙を流すとその涙で突然元気に。 飛び踊るように喜ぶ。男も玉ねぎをあてながら涙を流しまくる。曇り空、誰の骨?、自ら金槌を打ち付ける機械を背負い込んでまで続ける。 成長していく作物、家を呑み込むように。  無数のかたつむりの出現、消え失せるもの、巨大化する恐怖、移動して車や電車を破壊しまくり人間を殺しまくる。伸縮する触角、押し寄せる恐怖。 静かな街と夜の営みを邪魔するように侵入する来訪者たち。 かたつむりの体ごと呑み込まれる。 触手のように伸び、誘い、絵を点滅させて吸い込むように。 逃げ遅れるもの、亀裂が入り破壊される街、飛び散る瓦礫、廃墟となった街。 ゆうゆうと過ぎ去る災害。 災害は性行して数を増やし、糸を張り、沈黙する。  次の人間はビルを作り、畑を耕し、次の食を欲するものたちを呼び寄せる。おい、じじいwwww
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:23:23)
6.  死んだ時間 《ネタバレ》 
ルネ・ラルーの短編。  後の「ファンタスティック・プラネット」等に繋がる、石ころのように転がるありとあらゆる死、死、死が詰め込まれた内容。  実写、暗闇から近づくと現れる星、日本の子供たちが遊ぶ様子、おもちゃの銃を撃ち合うごっこ遊び、遊びが本物の銃を握りしめる殺し合いへ。 戦争、燃え上がる飛行機、砲撃、爆炎、突撃する兵士、突如頭を吹き飛ばされたかのような男と廃墟のアニメーションに切り替わる。拡がる地獄絵図。  暗い雲に覆われた空、四肢を吹き飛ばされた瞬間のまま固定された人、人、人の形をした人もの。血はないが人形…いや石のように固まった命。 下を吹き飛ばされた家、死体のように折り重なる脚脚脚、胴体だけが残り赤ん坊が吸い付こうとする裸体、瓦礫に埋もれ何かを手に持つ腕、瓦礫の中から何かをついばむカラス、首を吊らされた損傷遺体。 口づけだけが残る恋人、水の中から手を伸ばす穴の開いた手、削られた空間に火が灯る遺体。 死体に剣を突き刺す躯骨と豚の上に君臨する黒い体躯の者、そこに集う人々。祈るように。  貯金箱?顔を覗かせ見つめる包帯の男、松葉杖をつきながら近づく男に敬礼。  突如実写の魚が泳ぐ海の中へ。 引き釣り回される魚、飛びまわり撃ち殺される鳥、剣を突き立てられる闘牛、暗殺の瞬間が描かれたイラスト、短剣、拳銃、床に転がる遺体。  橋走る機関車、謎の露出狂女、箱に閉じ込められた者の山、その下に拡がる空間に座主もの、見つめ合う恐怖に怯えるような視線と冷めた視線、人間跳び箱、飛び越えた先に飛び込む、火にくべられる脚、廃城?  実写の処刑台、絞首刑、銃殺、斬首、首が地面に斬り落とされる瞬間(閲覧注意)、電気椅子。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:22:29)
7.  猿の歯 《ネタバレ》 
ルネ・ラルーの短編。 実写、道を歩いていく人々、アコーディオンを弾き、一軒家に集まり楽しそうに作業に励む人々。  ナレーション、会議、紙、絵の中のビル群へ。  不気味なデフォルメ絵と音楽、カラフルなビル、自転車をいじるもの、扉から出てポツポツ歩く者。 歯医者、抜かれた歯がおざなりに置かれる狂気地味た空間。歯を一本一本抜く、結婚、食事、家族を一人ずつ抜かれていくような悪夢へ。  抜かれたあとは穴だらけ、穴は戦場になり、そこでもまた一人に。孤独に苛まれる姿、抜かれた歯の行方、眠るものを抱えて向かう先、ドイツもコイツも恐ろしい歯だこと。 何をする気だったのか、自転車で通り過ぎる悪魔、押し寄せる警官、追跡、家の中に入り、飾りのマネキン?、逃亡者は肉になり警官の追跡を巻き、、警官は子供になり身元がバレないようにする。郷に入ったら郷に入るということだろうか。 階段を登る、男は人体標本に。獲物を見つけたぞとばかり教科書や文房具を放り出し警官に戻る姿、教師の睨みで子供に戻る。 ぎこちない動き、窓から見つめる視線、脱ぎ捨てられる半身、鏡、涙、笑顔の写真、ベッドにうずくまる孤独。ビルに囲まれた小さい家、ひっそり近づく悪魔たち、尻尾をなでながら口に突っ込みまくる。 口を開けて自転車を寂しそうに漕ぎ続ける。悪魔は春の季節も歩き続ける。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:21:34)
8.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 
動から始まる「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」、静から始まる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」。 「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」に対してアクションは少ないが、多彩な登場人物の魅力と突然襲い掛かる恐怖はコチラの方が上かも知れない(もちろん撃ちまくる「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」も大好きです)。  一本の道を走ってくる一台の車、不気味な音楽。  車は道から墓場で止まる、男と女の会話、ラジオ、ドアを開けて一人ずつ車から降りていく。不気味に拡がる木の枝、葉。  白黒の簡素さが余計に恐怖を増大させる、墓参り、雷、くもり空。   6分を過ぎた辺りから恐怖は加速する。 ゾンビのように突然現れ襲い掛かる謎の男、走る走る走る!   倒れざまに墓に頭を打ち付けられる、他に誰もいない墓場での追いかけっこ、車にこもる、女は運転の仕方を知らないか単にパニックに陥っているのか、窓を割り伸びる手。  入口が木によって塞がれる、車を捨てて全速力で駆け出す、最寄の建物を探してまた走る走る走る、密室に逃げ込む、部屋には誰もいない、不気味な剥製。  陽が落ちる外、ぞろぞろと同類が集まってくる、とっさに掴むナイフ、階段を上った先で見た絶望、扉の先で出会った希望。滴り落ちる血、遺体を幾度も引きづる事になる地獄。  ライトを割る、何度もバールを打ち付ける、突き刺す、何かに引き寄せられるように次々と家の中に入ってくる群集の恐怖、遺体は火をつける事で壁になり、ゾンビは火に弱いらしい事がアクションだけで説明される。  バリケード、電気はまだ通っている=まだ人類は生き残っているという淡い希望、家の中から武器を探す、女も恐怖に抗うための戦いを始めていく、外から入ってくる情報によって彼らの籠城戦はより深刻なものになっていく。   落ち着いて互いの事を話し合う平穏、家族の死が信じられずに泣き叫ぶ、気を失った彼女をソファに寝かせ窮屈そうなコートをはだけさせる優しさ。  ラジオを聞きながら黙々と要塞にしていく、救助を信じて灯す暖炉、予想だにしないドアの発見、ドアから見つける武器。   扉に隠されていたものの“登場”によって、警戒心がとけはじめた事を物語る。同じ人間すら信じきれない恐怖。 窓から突然現れる恐怖、撃たれたゾンビの反応が物語る彼らにとっての急所、ゾンビは何でもかんでも貪る。  非常時とはいえ自分の家をメチャクチャにされてご立腹、ラジオ→テレビ。 脱出するための作戦開始!火を投げ込み、隙をついて奪取、行き先を見守る視点。心を失ったが故に手ごわいゾンビ、心があるが故にもろい人間。 アクシデント、燃料、焼けただれた遺体からすら肉を探して食べる、狂気も正気もないあるのはただ「食う」という本能。  電気が消える事で外との繋がりが絶たれた事を物語る、燃え尽きた遺体、極限状態で破滅へと向かっていく人間たち。自分の命欲しさ故に。   かぎ爪という人として扱われない衝撃的な結末。写真と火葬が語るのみ・・・。 
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 13:35:33)(良:1票)
9.  憂国 《ネタバレ》 
仲間の決起に呼ばれず、今度はその仲間たちを敵として討たねばならない。殺すくらいなら死んだ方がマシだ・・・。 そう思い死ぬ道を選んだ男たちの話。それを仲間想いの志士と見るか、死に逃げたと見るかは観客に委ねられる。 小林正樹の「切腹」が言葉と“見せない”事によって語る映画ならば、この映画はその瞬間を徹底的に見せる事を選ぶ。ただただありのままを描く、セミドキュメンタリーのような描写。  漆黒の画面、巻物を広げる軍服の腕、「憂國」と英語のクレジット。  サイレン映画の体裁で、この映画は一切セリフを吐かない。うめき声一つあげず、ただ男が切腹をするまでの過程を描いていく。  「至誠」の掛け軸、着物姿の女、折り紙、筆、亡霊のようにまとわりつく男の手、両手が女をなぞる。女の記憶の中に刻まれた夫の姿。 鶴岡淑子が演じる妻は、三島由紀夫が演じる男を心から愛している。神棚に祈るように。  廊下で帰った夫を出迎える妻。 二人の男女の会話は徹底的に省かれ、思いつめた男の様子と事情を飲み込んだ女の表情だけがすべてを語る。 肩を引き寄せ、女の耳元に何かを話し、腹を斬る真似をする右手、その手を女は掴み自分の喉元に寄せる。女が振り返るのは、男に笑顔で応える瞬間。男女二人は最期の接吻を、最期の交わりを始める。 抜かれかけた刃で女は時が迫る事を理解する。 見詰め合う二人、何度も交錯する視線、抱き合う二人、死ぬ前の生きる喜び、死への恐怖とそれを味わってみたいという欲求。 髪をたくしあげ、女の表情をなぞり、男の肉体をなぞる手、指、喉、仰向けになる頭、脈打つ肉体。 女の乳房や肢体はほとんど映されない。生きている筈の肉体は性交で真の快楽を得ないのだろうか。一体何が楽しくて死の間際の快楽を求めなければならないのだろう。それは本当に死ぬ人間にしか解らない痛みだからだろうか。そうじゃない人間がそれを解るワケがない。  帽子によって影が落ちた男の顔。ハラは決まった。 死に装束をまとう女、ふんどし一丁に帽子を被り、軍服という“装束”をまとっていく男。 互いに遺書をしたため、神棚に祈り、視線を交え、別れの、最期の挨拶。  小太刀を抜き、紙を巻き、上着のボタンを外し、腹を出し、太ももの根元に先を刺して痛みを確認、腹にあてがった指の間から刃を腹に入れていく。 口元だけが激しく表す苦悶の表情。うめき声が聞こえんばかりの、震えながら刃を左から右に引いていく。 女の口元も振るえ、汗を、涙を流す。血潮が白い着物に跳ね、女は見届ける事しかできない、苦痛を変わってられない苦しみ。 肉体はうめき、腸が飛び出て、口から泡をふき、喉元に太刀を突き刺す。女は介錯でもするように男を引っ張り見届ける。  女は外の部屋に消えていく。 女を見届けるように自動で閉会する襖、照明、鏡を見て白粉をつけ、紅をさす。男が死ぬ間際も軍服で飾ったように、女も死ぬ間際に自分を飾って果てていく。  夫の血の上を歩き、帽子を先に逝った者にのせ、顔を袖で拭って綺麗にして弔う。 懐刀を抜き、切っ先を舐め、喉に突きさし果てる。文様が刻まれた砂の上。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-07 21:23:01)(良:1票)
10.  特攻大作戦 《ネタバレ》 
「攻撃」に並ぶアルドリッチの傑作戦争映画。  冒頭10分は収容所における囚人たちの丁寧なキャラの掘り下げ。問題児や凶悪な性格で軍という“組織”から追い出された12人の男たち。それをリー・マーヴィン演じる鬼軍曹がまとめ上げ、13人の軍隊として成長していく物語です。  更正するのではなく、その攻撃本能を逆にそのまま少数精鋭の部隊として利用しようってアイデアが面白い。断っても今までの罪で銃殺、どうせ死ぬなら戦場で敵を殺してから死んでやらあっ。それぞれの反骨精神!  心と体を鍛えなおす訓練、友情を深めていく男たちの姿は勇ましい。 特にトイレで将校二人に襲われるブロンソンを助けに駆けつける仲間たちの姿が最高にカッコイイ。男の友情ですね。チャールズ・ブロンソン、ロバート・ライアンや俳優時代のジョン・カサヴェテスも活き活きとした表情をしています。  模擬訓練と実戦の凄惨さの違い。   そして戦いは第二次大戦のノルマンディー上陸作戦の夜に。 リー・マーヴィン率いる部隊は先鋒隊として落下傘で上陸。   眼には眼を、ゲスにはゲスを・・・それがアルドリッチ流。 「攻撃」で本当の敵は無能な上司である事を描いたアルドリッチです。 戦争に卑怯もクソも無い、非戦闘員も女・子供も容赦なく殺していく軍隊の残虐さ、粘り気。 しかしそこには国のためでなく、仲間たちのために心を鬼にして戦い死んでやらあという野郎どもしかいないのです。 密室に閉じ込め手榴弾でまとめてアボーンッ。えげつねえ。まったくゲス野郎共め!(褒め言葉) 怯えるブロンソンに、リー・マーヴィンは「コレが戦争なんだ!」と言う。大義名分もクソも、その時その時で変わってしまうのが戦争の怖いところ。 次々に散っていく男たち・・・ただ彼らはその一瞬の中で人間として自分を取り戻していったのかも知れません。 正しマゴットてめえは駄目だ。  激戦の果て、病院にたたずむ3人の何とも言えない表情が印象的でした。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-20 19:34:11)
11.  グラン・プリ(1966) 《ネタバレ》 
バート・ランカスターの期待に応えた「大列車作戦」、 先見性の高かったフィルム・ノワール「影なき狙撃者」と数多くの傑作を手掛けたジョン・フランケンハマーによる作品。 流石に他の傑作群と比べるとやや精細を欠くが、この映画のレースシーンの凄さ!  実際にレース上をプロのレーサーがブッチ切り、俳優たちも引っ張られながら走ったそうだ。 ジェームズ・ガーナーの実力はプロに匹敵するほど成長したとか。 冒頭のド迫力かつ冷や汗ダラダラの息を呑むレース映像。 その裏で渦巻く男たちの野望、女たちの哀しみ。 何故男たちは命懸けのレースに身を投じるのか? トロフィーを掴む、トロフィーに酒を満たして飲み干す、賞金で生活するだけが目的じゃない。 ただ「勝つこと」。 勝利への執念がある者を高め、ある者を滅ぼす。 生と死が隣り合わせの男の戦い。  終盤のレースにおける勝者(生者)と敗者(死者)の対比が強烈。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:15:02)
12.  座頭市物語 《ネタバレ》 
再見。 個人的に完成度はTVシリーズ、「喧嘩旅」あるいは「千両首」の方があると思うが、やはり本作を見ずして座頭市は語れない。 今回は「物語」をたっぷりと語る。居合抜きを拝めるのは36分以降、本当に一瞬を積み重ねて終盤の大乱闘まで流れていく。  桜の花見、客をマッサージする一人の男、雪が降り積もった街中、棒を持って手探りで先に進む「市」の姿、旅から旅に揺れて揺らされて揺り動かして、挨拶、梅の香り。 清水宏「按摩と女」にも武闘派の按摩が出てきたな。あの作品も座頭市シリーズに影響を与えているそうだ。  博打から始まる駆け引き、「めくら」と馬鹿にしといてまんまとハメられるヤクザ連中が面白い、無数のヤクザにまとめて喧嘩、死ぬも生きるも大博打、揉む人間が揉まれる、座ったまま正確に物を投げ込む。  釣り、耳、足音、魚の跳ねる音、のどかなようでヒリヒリとした出会い。釣り竿と市の顔が重なる。  鼻血も搾り取る喧嘩売り、目をつぶり抜刀の練習に顔が引きつる女性、座頭市も用心棒も「抜かない」と無駄な闘いを避けようとするが…名前を聞いて眼が変わる瞬間。  畳の一部かと思っものは杖となり、刃となって放られた蝋燭をたたっ斬る! 水辺に投げ出されたもの、釣り仲間への“おもてなし”、盃、死亡フラグ下っ端、闇討ちには返り討ちで、使者と鬼ごっこして“返答”。 忘れ物、おたねにたねブチこもうと太ももをこじ開けようとする兄貴、先に手を出したら負けよ。  感触、弔い、出入り、思わぬ知らせと食い物の恨み、川を突き進む船団、鉄砲を見て決める覚悟とやり取りから伝わる信頼。 贈り物 、薄野から市街戦へと突入、ヤクザも女子供も死んで死んで死にまくる修羅場、血反吐ぶちまけ、橋の上での一騎打ち!風だけが静かにないている。  虚しくもくたばり果てる命、船に積まれる死体の山、隠れ蓑、「馬鹿野郎ッ!」、開かれる酒樽と両眼、返されるもの、本当馬鹿なくたばり方しやがって…。  市の孤独な旅は続く。棒きれを握りしめ、果てしなく。  予告にあって本編にないシーンも必見だ。酒樽への一閃(本編では唐竹割り)、闇夜での一騎打ちと返り血。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-20 22:08:51)
13.  続・荒野の用心棒 《ネタバレ》 
「殺しが静かにやって来る」や「ガンマン大連合」に並ぶコルブッチ最高傑作の1つ。 それを勝手に「続」だの何だの紛らわしい邦題を付けやがった当時のスタッフは縛り首レベル。 一体どれだけの人間が「荒野の用心棒」の続編と勘違いして見た事か。 セルジオ・レオーネのマカロニも血の気があったが、この作品ほどの残虐性は無かった。 或る意味、残虐性と有無を言わさぬドンパチの連続はコルブッチの方が上と言っても過言では無い。 泥まみれ、血まみれ、汗臭そう、汚さ全開のコルブッチワールド。 敵の真っ赤っ赤すぎる衣装(アントニオ猪木かよおまえら)、娼婦の衣装の趣味の悪さ、生活感がありすぎて汚らしい格好(褒めてる)、とにかくメチャクチャグチャグチャに撃ちまくるガンファイト! B級臭さフルスロットル、終盤はそれに磨きがかかって超A級の凄みが出てきたりする。多分。 中盤の機関砲で赤い彗星もどきを一掃するシーンは爽快だぜ。 どうしてこう機関銃が唸る場面は気持ちが良いのだろうか。あと爆弾。 一度銃を握り締めたら生存競争。詩情だの甘ったれた事を言っている暇も卑怯もクソも無い・・・そんな感じが良いじゃないですか。 棺桶を引きずる黒衣のガンマン「ジャンゴ」。ジャンゴの行く所は泥沼、血の海、死体の山が常。 機関銃による虐殺は甲高い笑い声が聞こえてきそうなほどムチャクチャ。 手当たり次第ブッ殺しまくり、強奪しまくり、ヘマして財宝沼底、手はミンチ。 リアリティ?ストーリー?んなもんズドドン蜂の巣よぉ! 懲りずにまたも突っ込んでくるジャクソン一味。「七人の侍」の野武士かおまえらは(野武士は切羽詰っていたが、ジャクソン一味はただの集団自殺)。 金に取り憑かれた人間は破滅する。 それを救ってくれるパートナーがいれば話は別。良いパートナーに限るけど。 不屈の精神を持つジャンゴのキャラは魅力的。 「手はやられたが失くなったワケじゃねえ」 トリガーガードを引きちぎってまで銃を撃とうとする執念。 十字架と撃鉄を利用したラストの銃撃は面白い。 さながら「荒野の決闘」のワード・ボンドを思い出す一瞬!
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:03:47)
14.  猿の惑星 《ネタバレ》 
ピエール・ブールの原作を元にした映画。  「ウラシマ効果」による老化、 未知の惑星における受難、 文字通り言葉を失う主人公。  ブール自身の戦時中の受難、日本軍への怒り、戦争そのものに対する憎悪。 それをSFの世界に持ち込み、人間の誤ちと尊厳、魂に訴えかける力強い作品となった。  惑星を支配していた猿たちは「人間が進化させた結果」である。  第二次世界大戦の狂気を人間が作り出し自らの兵器で焼かれたように、人間の恐ろしさと愚かさを擬人化した存在なのだ。  本物の猿のような精巧なメイキャップ。 「2001年宇宙の旅」に出てきた類人猿に負けず劣らずのリアリティが凄い。  原作の星はベテルギウス星系の惑星らしいが、本作はそれを変更したことで衝撃的なメッセージを産みだす事になった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-19 20:21:24)
15.  赤ひげ 《ネタバレ》 
語りがメインのヒューマン医療時代劇「赤ひげ」。 「生きる」は重すぎてダメだったけど、この作品は嫌いじゃない。 俺としては「椿三十郎」や「七人の侍」みたいに刃を抜いて戦って戦いまくる映画こそ黒澤だと思うけど、こういう心と心をぶつけて“闘う”ヒューマンドラマも好きだぜ。ヒューマニズムこそ映画だ。 当時の医療や人々の交流を通じて、人間の本質に迫ろうとする。 かなり長いし、全体的に淡々とした語りで退屈してしまうかも知れないが、この映画は見れば見るほどじんわり染み込む類の作品だと思う。 しかもこの作品は前・後篇に別れている上にオムニバス風味。無理をせず少しずつ消化していくのも良いし、好きな人は一気に見てその積み重ねを味わうのも良い。 時に冷たく、時に辛辣に、時に暖かく見守るような描写は見応えがある。 加山雄三演じる若い医者。最初生意気だったけど、幾つもの修羅場を潜って徐々に成長していく。王道だが、こういうのは良いもんだね。 アクションシーンは全然無いけど・・・え? 何処ぞの用心棒そっくりなオッサンがゴロツキぶちのめしまくって暴れてる? 恐ろしい表情の香川京子が加山雄三を殺そうとしてる? やだなあ~。そんなエグイシーン出てくるわけ無いじゃないですか~(棒読み) あれだけ痛めつけておいて自分で治療をはじめるんだから面白い。でも骨が飛び出てるのはやりすぎ(笑) 地震の被害を地震後の惨状だけで語る、まっ裸の女の治療も傷口を見せない(乳首は見えた)、生死をさ迷う子供がどうにか一命を取り留める様子を見せない“演出”。もどかしさも黒澤映画随一。 でも井戸に向かって全員で一斉に叫び続けるシーンは胸に響くぜ。 体も病めば心も病む。 内も外も健全でこそ健康と言える。 ラストの二人の会話も印象的。 情の厚い人間ドラマだ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-19 19:13:08)
16.  シェナンドー河 《ネタバレ》 
アンドリュー・V・マクラグレンの最高傑作はコレでしょう。  西部劇としても戦争映画としても見れる本作は、奴隷制とは無縁の家族が南北戦争に巻き込まれていく悲劇を描く。 悲壮なドラマがアクションを盛り上げ、また凄惨なアクションがドラマを最高潮に盛り上げてくれる。 前半のコメディタッチのやり取りと亡き妻に語りかけるスチュワートの温度差、戦争が始まり一変する空気、終盤も戦争の虚しさを見せ付けられるシーンばかり。 あんなにも悲壮な表情を見せたジェームズ・ステュアートは見た事がない。   後半の展開はちょっと雑な気もするが、マクラグレンとしてはコレ以上にない作品。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 19:40:28)
17.  飢餓海峡 《ネタバレ》 
日本映画の黎明期から活躍を続けた内田吐夢の傑作サスペンス。  マキノ省三が日本のD.W.グリフィス、 衣笠貞之助が日本のセシル・B・デミルなら、 内田吐夢は日本のキング・ヴィダー! どんな地味な題材でもスリルを帯させダイナミックに描いてしまうのだ。  「土」や「限りなき前進」なんか正に究極の地味映画。  本作は3時間という長さを感じないスリルに満ちたドラマ。  戦後の台風や火災から一つの殺人事件が浮かび上がってくる。  強盗事件が様々な人間や街一つを焼き尽くすほどに膨れ上がっていく。  だが一度強盗に手を染めた人間は何処まで行っても警察の影が付きまとう。  女を助けた男、愛されていると信じた女、それぞれの顛末。  「限りなき前進」「土」「大菩薩峠」と多くの名作を残した吐夢監督。  本作は邦画黄金期の終焉が迫った65年に制作された。  水上勉の原作を映画化した作品はこの後も多く作られたが、原作の緊迫感を如実に映像化した作品はこの内田吐夢の映画だけであろう。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 19:10:59)
18.  ある街角の物語 《ネタバレ》 
哀しい話だが、とても素敵な映画だ。セリフが一切ないのに、映像だけで総てが伝わってくる。 正直この作品を見るまで、手塚治虫をナメ腐っていた時期があった(中学生の頃)。だが、試しに見てみたこの作品で意識を改めた。漫画だけでなく、アニメでもこんな凄いのを残したのか・・・!と。やっぱり手塚治虫は凄い。この作品はもっと多くの人に見てもらいたい。  戦争の足音が迫るヨーロッパのとある街角。街灯が暗い路地を照らし、ポスターの中で静かな演奏を続けるヴァイオリニストとピアニストの淡い恋。空間で遮断された二人は、そこから抜け出して手を取り合うことも、愛し合う事もできない。 屋根裏部屋に住む女の子、その子が大事にしているクマのぬいぐるみは落ち、それをイタズラ好きのネズミが見つける。 恋人たちの穏やかな日々。直接手を取り合えなくとも、こうして見詰め合っているだけで、それだけで良かった。 それを引き裂くように戦争は激化していく。独裁者のポスターが嘲笑い、脅かす。  やがて戦火が街を包むが、皮肉にもその焔が恋人たちを結びつけ、空高く誘うのである。 
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-17 05:56:28)
19.  水の中のナイフ 《ネタバレ》 
「ポランスキーの映画=血生臭い」というイメージがあると思うが、ポランスキーのデビューを飾った本作は鮮血を描かない。  プロットとしてはルネ・クレマンの「太陽がいっぱい」に共通しているが、本作のサスペンスは一味違うのだ。    冒頭、車を飛ばす夫婦から映画は始まる。  車上で交わされる他愛の無い会話、そこに飛び込んでくる若者。  中年のエリート気取り、インテリぶった人妻(メガネ取ったら超美人)、背伸びする若者。  三人は世間話でしばらく時間を潰し、男が若者を船上に誘い込む。    若者の前で見栄を張ろうとする男、大人を演じようとする女、負けてたまるかと反抗的な青年。    ストーリーは至極単純、テンポものんびりしているが、独特の空気が中々退屈させてくれない。 “ナイフ”で指の間を刺す瞬間の緊張。  三人のやり取りが面白い(そして奥さんが無駄にエロイ。ちょっとズンドーだけど美人だから問題無し)。 もうこの頃からロマン・ポルノスキーの気が(ry   湖上でのやり取り、そこで起きる「事件」。    湖面に消える者、情事にふける者、岸辺に戻ってしまった者・・・彼は何者だったのだろう。 そして最終的にナイフと船じゃなくても別に問題無かったという。  あるいわ本当に幽霊だったのかも・・・そんな映画。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-16 22:09:14)
20.  審判(1963) 《ネタバレ》 
カフカの意味不明(褒め言葉)な傑作小説をよくぞここまで映像化しましたよ。やっぱりウェルズは天才。 ストーリーはいきなり主人公が逮捕されるわ、次々と異様で不可解で意味不明でエロいナース服?姿の女の娘とチューだわウェルズが相変わらずデブ(ry  とにかく不条理極まるカオスな映画だ。でもスゲー面白れえ。 ラスト・シーンはもっと謎だ。 文字通りドカーンとしたラスト。カフカはポカーンだろうぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:09:19)
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