1. 夏の遊び
ネタバレ 演出力、画の美しさ、芝居、どれも最高で心を溶かしてくれるような作品。 バレエの舞台稽古の裏側などは本当にリアルで、舞台袖や楽屋前を通行するバレリーナなど、本当にドキュメンタリーかと思うほど。 一つのフレームの中に複数のイベントを起こしてリアリティを作り上げている見事な演出的手腕。 そしてまた本当に牧歌的な北欧の風景。木々にも演出しているかのようにちょうどよく揺らめいて美しい。小舟が頻繁に出て来て、なんだか溝口作品のよう。時期は雨月物語と同じくらいですね。 そして助けてくれる神の不在、神への憎しみ、今の生活にある幸せ、というベルイマンが問いかけ続けているテーマも根底にある。大傑作。私は大好きです。 [DVD(字幕)] 10点(2015-01-31 12:42:50) |
2. 生きものの記録
ネタバレ 面白いか、と問われると面白くはない、じゃあ駄作か?と問われるとそんなことはない。 なにか見終わった後にこの作品について考えさせられて、じゃあそれってやっぱり良い作品なんじゃないか、というとよくわからない。 信念を持ってとった行動も、アングルを変えて見るとただの迷惑行為であるという、価値観のすれ違い。 その辺の描き方は見事だなと思いますけど、あまりにも三船が1人過ぎたのかも。 観たのは結構前ですが未だにこの作品のことを考えています。 [DVD(邦画)] 5点(2014-10-18 14:48:39) |
3. 浮草
小津監督の大映作品ということで期待して観たのですが、期待以上の大傑作でした。 小津作品王道の家族ものというか娘の嫁入りを扱った作品は、面白い事は面白いのですが、パターンがやはりあるし、カットも似ているので数本観ているとあまり新鮮みがなくなってくるといいますか。 もしかしたら売れっ子でもあった小津監督は会社や世間からそういう作品を求められていたから、同じテーマで作っていたのかな、とこの浮草を観て思いました。のびのびと撮っている印象なんですよね…。 いつものカメラ目線正面アングルも上手い具合に微妙に目線が外れていて自然に感じますし(宮川一夫さんの手腕か)、中村鴈治郎を始め役者陣がとても魅力的に動いています。これは大映役者陣の小津監督に対するリスペクトなんでしょうか。 特に若尾文子さんが魅力的で、実は、若尾文子を一番かわいく撮ったのは小津先生なんじゃないですか!?とか思いました。 [DVD(邦画)] 10点(2014-10-18 14:35:44) |
4. 雪国(1957)
ネタバレ すごく原作の雰囲気があります。 というかかなり忠実に再現している気がします。 違う媒体で忠実な再現をする必要はないような気もしますが。 岸惠子さんが駒子っていうキャスティング自体はイメージ通りではなかったですけど、納得できます。 自分の中では岸惠子さんのベストかもしれません。 市原悦子さんの底抜けの明るさもこの作品の結構重要な要素かと。 声、というポイントで言うと葉子の声は八千草薫さんぴったりですね。 とてもいい気分で観れる作品だと思います。 [映画館(邦画)] 8点(2014-10-18 14:26:08) |
5. 近松物語
ネタバレ 溝口健二監督作品後期傑作群の頂点ではないでしょうか。 自分はモノクロスタンダードの邦画ではこれがナンバーワンだと思っています。展開、シチュエーションの面白さ、香川京子さんを始め、浪花千栄子さん田中春男さん菅井一郎さんといった役者陣の鉄壁の演技、建物のさりげない美術へのこだわり、全部最高、素晴らしいです。 ちなみに「新・平家物語」も10点献上していますが、あれは美術、風俗考証、監督の波動(謎)など10点中15点の要素があってドラマ自体は6点くらいかなと考え平均して10点にしたのですが、こちらは真っ直ぐに全てが素晴らしい傑作ですので文句なく10点です。 [映画館(邦画)] 10点(2014-10-18 14:19:20) |
6. 氷壁
ネタバレ なんかちぐはぐな印象でした。 テンポを上げて早口でしゃべらせようとしていたり、山茶花究に変に陽気なキャラクターを要求していたり。 山本富士子さんが茶柱を指で取り上げて、それを上原謙さん見られたと気にして、会社に電話するシーンはシュールさというか、非常に妙な感じです。 それとこの作品の山本富士子さんは何故かいつものように美しく感じなかった…。 野添ひとみさんがやたら輝いてみえました。 その野添ひとみさんのシーンも謎が多く、兄の死を悲しむより、主人公・魚津が来ている事を喜んでいたり、別れ際の電車で明らかに魚津に無視されているのに笑顔で手を降り続けていたり、シュールです。 狙いがよくわかりませんでした。 [映画館(邦画)] 4点(2014-10-18 14:09:51) |
7. 杏っ子
ネタバレ 2014年9月14日池袋・新文芸坐にて香川京子さん本人のトークショー直後の鑑賞。 代わる代わる現れる旦那候補と毎度湖畔サイクリング、自転車で走る距離で相性を表したり、夫役・木村功さんとの相性を始めから臭わせていたり、面白い作品。 役柄というか、役柄のシチュエーションが香川京子さんには珍しい。最低な夫と戦う妻。耐えるというよりも向き合って戦う感じ。 山村聰さん演じる父は非常に超越した人柄の役で、大人物。 実家が完全に避難所。父・母・弟との関係は非常に穏やかで暖かく描かれ、夫との間だけが戦場。 実は夫との争いではなく「家族は永遠」というのがテーマな気もしないでもないです。 トークショーでおっしゃっていたのですが木村功さんとのシーンは、当時映写機の関係で一回フィルムがだめになって一週間分くらい撮り直しているとのこと。 とにかくまだまだ現役の、スラリとしたご本人が観れたというのはラッキー。ちなみに香川京子さんは、自らが出演している成瀬作品の中で一番のお気に入りは「驟雨」だそうです。 [映画館(邦画)] 8点(2014-09-15 01:05:39) |
8. 新・平家物語
スクリーンに充満する興奮、美しさ、時代考証を徹底させる姿勢、どれも溝口健二監督特有のものだと思います。 当時の武士という存在を政治経済風俗あらゆる角度から捉えた上で、清盛の決起を描いています。 その平安末期という時代の空気を時代を肌で感じられるような作品です。 市川雷蔵という名優と巨匠溝口健二のコラボというポイントだけでも価値があるのではないでしょうか。 後年の黒澤明監督の新作構想の中に平家物語があったという事実はこの作品の存在を意識してのことで間違いないでしょう。 日本映画史上重要な作品だと思います。 [DVD(邦画)] 10点(2014-08-03 21:53:31) |