ブラックブック の ドラえもん さんのクチコミ・感想

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ブラックブック の ドラえもん さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ブラックブック
製作国オランダ,,,ベルギー
上映時間144分
劇場公開日 2007-03-24
ジャンルドラマ,サスペンス,戦争もの
レビュー情報
レジスタンスものは、近年の戦争映画の中では少数派とも言えるが、本作ではむしろ一人のユダヤ人女性の戦争体験による、波乱に満ちた数奇な運命を中心に、戦争というものがいかに残酷で、人間の運命を狂わしていくかを描いたものである。しかも監督がP・ヴァーホーヴェンという事もあり、展開は必ずしもセオリー通りとはならず、かなりアクの強い作品に仕上がっている。ナチスとレジスタンスという明確な対立の構図の中を、女スパイとして綱渡りをするのも、肉親を虐殺された事による私憤の為であり、映画としては常識的に、彼女の復讐劇が描かれていく筈のものが、そうはならないのは、従来から既成概念に捉われず、自由闊達な視点で創作するヴァーホーヴェンの一つの特徴と言えるだろう。そういう意味においては、中盤の見せ場である仲間の救出劇や、ムンツェとのラブ・ロマンスにしても、敗北感や虚無感ばかりが覆い尽くしている。つまりは本当の意味で、溜飲を下げる要素は何一つ無いと言ってもよく、波乱万丈の大娯楽作品としての味わいとは程遠いのである。しかしながら、ただひたすら荒っぽい筋立てで、まったく先の読めないまま、目まぐるしく展開していく事と、彼の作品の特徴でもある、残虐性や露骨さ、或いは猥雑さ(中でも美女を裸にして汚物まみれにするという悪趣味の極み!)等が渾然一体となって、本作を魅力的なものにしている事も事実である。全編、既成の善悪の判断の無意味さと、欲望に駆られた人間の愚かしさが痛烈に炙り出されていくが、やがて平和を迎えた時に、かつて、仇の男と毎夜の如く情痴を繰り返していた、もう一人の女性と再会した事から物語が回想されていくのも、何やら皮肉な運命を感じさせる。女たちの生きる事への貪欲さとしたたかさに、改めて人生を教えられた思いだ。注文を付けるとすれば、何の前触れも無く唐突に出現した感のある、肝心の“ブラックブック”の(まるで葵の印籠のように)有無を言わせぬその信憑性と齎す意味に 、あまり説得力を感じない点だ。
ドラえもんさん [映画館(字幕)] 8点(2007-07-29 15:53:51)(良:1票)
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投稿日付邦題コメント平均点
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2007-10-18ツォツィ9レビュー6.26点
2007-07-29世界最速のインディアン9レビュー7.41点
2007-07-29ブラックブック8レビュー7.43点
2007-04-29ポセイドン(2006)7レビュー5.87点
2007-03-18ディパーテッド9レビュー5.98点
2007-02-25それでもボクはやってない10レビュー7.60点
2007-02-18単騎、千里を走る。6レビュー6.64点
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