6.ネタバレ これは凄い。『ユージュアル・サスペクツ』級の傑作ミステリーでは。かつて私が『チョコレートファイター』と『ベイビーわるきゅーれナイスデイズ』の感想で使用した褒め言葉を再び使わせて頂きたい。「1食抜いてでも観てください」。いや劇場公開はとっく(超とっく)に終了しているので、抜くのはおやつくらいで構いませんが。 アイデア自体が特別目新しい訳ではありません。思い返せば、いくつも類似作品が浮かびます。ただ組み合わせの妙と丁寧な描写に唸らされるのです。ネタバレ厳禁映画ですので、余計な情報を仕入れずに速やかにご覧になられる事をお勧めします。以下はどうしても褒めたいので要点を絞って記述しますがこれも「余計な情報」ですのでご注意ください。
「ヒントの出し方が丁寧」髪型が変わると印象が変わる。当たり前の話ですが、きちんと例示している点に好感が持てます。「そういえばそんな事言ってたなあ」な余談もそう。サブリミナルに刻まれた微かな記憶がタネ明かしと同時に甦り、はたと膝を打つ仕組み。気持ちよく騙されるのは快感です。 「ここぞの演出が冴え渡る」ライター水没と車廃棄を重ねる描写。息子を奪われた父親からの乾坤一擲の「かまかけ」は犯人の動揺を見事に引き出しました。多分ほんの僅かな揺らぎで構わなかったでしょう。疑惑を確信に変えることができれば計画を実行に移せるのですから。 「犯人側から描かれる物語」所謂『コロンボ』『古畑任三郎』スタイルですが、これら定型ミステリーと違うのは、あくまで犯人が主役であること。刑事が出てきてバトンタッチではありません。そう本格的なクライムサスペンスです。どうにかして逃げ切りたい。犯罪を隠ぺいしたいと観客が無理矢理「思わされる」のは厄介な話ですが、その分極上のスリルが味わえます。もちろん再鑑賞で逆サイドから検証し直す楽しみもあります。 このように「絶賛」と言いたいところですが、実は残念なポイントがありました。詳細は伏せますが「それをしなければスマートなのに」が一箇所あり。怪人二十面相でもあるまいに。犯人を騙すだけなら多分無くても良い仕掛けですが、映画なので観客も同時に騙さなくてはいけません。ここがもどかしい。日本人である私たちにも多分不要な仕掛け。そんな手間を掛けなくても見分けなんてつきませんもの。そういう意味では、もし日本でリメイクするなら配役には相当神経を使いそうですが。それにしても面白かった!劇場公開当時は話題になったんでしょうか。よく分かりませんが、邦題で損をしている気がします。タイトルだけならまるで典型的なB級サスペンスです。 【目隠シスト】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-20 18:20:38) 《新規》 |
5.ネタバレ 既にご指摘のあるように、「羅生門」を想起させる展開ですね。しかも、一人の人間の言動によって事実関係が塗り替えられて行くという変化球。複雑に入り組んだ物語には大いに翻弄されました。キチンと辻褄合わせが出来ている脚本には脱帽です。
が、少なからず展開ありきの肉付けを感じてしまうのも事実。そりゃあこれだけ入り組んだ物語を最終的に一か所に収斂させて行くには力業の一つや二つは必要でしょうけれど、結構何回も「んな訳ないだろ!」的な展開が結構頻繁に見受けられます。痛し痒しとでも言いましょうか、この複雑な物語の落としどころを如何に自然にバランス良く偶然と必然に描き分けるかに当たっては、作り手も相当苦労したのではないかと思う次第です。
極上のエンタメ系作品として割り切るのであれば大いに楽しめました。ただ、一旦疑問を挟んでしまうと、と言うか現実問題として捉えてしまうと評価は一変しそうです。今回はエンタメ系として割り切りました。
ちなみに邦題は良いですね。原題のままだと単に密室殺人の謎みたいなイメージかと。「悪魔の証明」を持って来たことで物語の本筋が見えて来る感じですね。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-17 14:03:43) |
4.ネタバレ 良作。うわーそうきたか、と気持ちよくエンドシーンを迎えられるでしょう。でも疑問が一つ。スペインの人にはこのオチ、バレバレじゃないのかな。 【代書屋】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-09 02:06:26) |
3.密室劇+回想劇によるスペイン産ミステリー。 観客をミスリードする数々の要素や仕掛けが多分に盛り込まれ、ストーリー展開以上に、登場人物たちの印象が二転三転とひっくり返る興味深いサスペンス映画だった。 SNSのショート動画で紹介されていた情報を見て、ほぼ衝動的に鑑賞に至ったが、“掘り出し物”としての満足感も非常に高い作品だったと思う。
事件にまつわる人物たちの「証言」によって、事の真相が転じていくというストーリーテリングは、古くは黒澤明の「羅生門」から始まり、その映画タイトルから取って、「羅生門スタイル」とカテゴライズされたりもするが、本作も大枠で捉えればその範疇のストーリーだろう。 ただ本作の場合は、「証言」を行うのが、ある殺人事件の罪を問われている若手実業家一人に集約され、彼の発言とその行動が徐々に詳らかにされていくにつれて、映画冒頭の「印象」とは一転する趣向が新鮮だった。
本作があまり馴染みのないスペイン映画であり、出演する俳優たちの知名度も個人的に皆無だったことも、つくり手が意図するミスリードにまんまとハマっていく要因となり、功を奏していたと思う。 無論、鑑賞後にあれやこれやと突き詰めれば、無理筋だったり、道理が通らない要素も見えてくるけれど、ミステリーとしての整合性は保たれており、秋の夜長に楽しむには充分だったと思える。
スペイン人監督オリオル・パウロの作品は初鑑賞だったが、無駄のない画づくりで卓越したビジュアルをクリエイティブしていた。本作も含め、脚本創作も手掛ける注目すべき映画人だと思えた。他の作品もぜひ鑑賞してみようと思う。
日々SNS動画を見ていると、映画の内容を要約したり、ネタバレする情報も流れてきて慌てて飛ばさなければならないことも多々あるけれど、こういう隠れた良作の情報得られる機会も多いので、一長一短だなと思う。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-27 11:43:04) (良:1票) |
2.話が進んでゆくにつれグッドマンはダニエルの両親の依頼を受けていると見たのですが・・・ 斜め上の結末に驚くと共に無理筋にも思えました。 ローラ殺人の真相も雑に感じ、鑑賞後急激に冷めてしまった微妙な作品でした。 |
1.ネタバレ ある殺人事件の容疑者と、弁護士の代理でやってきた女性との室内限定会話劇。タイムリミットは尋問開始の3時間後まで。という超魅力的な設定です。構成は、出だしから予想できるとおりの「羅生門型」であり、あるやりとりが終わって別のやりとりが始まると、今度はがらりと違った様相を見せる、というなかなか凝った展開です。また、会話劇が基本でありながら、回想や時系列操作を適切に入れ込んでおり、単調に陥ってもいません。オチ自体は、伏線の分かりやすさも手伝ってかえって分かりやすいともいえますし、また性質上話の広がりも期待できない(一定の枠からは外に出ない)わけですが、それでもサスペンスとしては手堅く焦点を絞ってまとまっています。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 6点(2023-04-15 22:36:26) (良:1票) |