西鶴一代女 の イニシャルK さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > サ行
 > 西鶴一代女
 > イニシャルKさんのレビュー
西鶴一代女 の イニシャルK さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 西鶴一代女
製作国
上映時間137分
劇場公開日 1952-04-17
ジャンルドラマ,時代劇,モノクロ映画,ロマンス,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 溝口健二監督の映画もかなり久しぶりに見る気がする。そんな本作は溝口監督が一躍国際的に名が知られるきっかけとなった名作として知られているが、始まって早々に溝口監督らしい力強い長回しに一気に引き込まれた。田中絹代演じる主人公 お春がお経の声に導かれるようにして羅漢堂に入っていく最初のシーンからもうすでにただならぬ雰囲気を感じるし、もちろん、溝口監督ならではの映像美もこの冒頭からよく出ている。物語はこのお春の転落人生を描いているわけだが、溝口監督は一切の妥協を許さずにこのお春という女の人生を描き切っているし、それに見事に応えた田中絹代のすごさ。ここにこの名コンビの真骨頂があるのではと思えてならない。お春の人生の転落ぶりは最初の高貴な身分から最後は夜鷹までと凄まじいものがあるのだが、そこに描かれているのは封建主義の理不尽さとそれに立ち向かう女の強さだ。冒頭の勝之介(三船敏郎、溝口映画にも出てたんだ。)との身分違いの恋からお春の怒涛の人生は始まっているが、これをはじめとしてお春の人生にはこの封建的な世の中の空気というものがついてまわっていたように思う。とくに輿入れした松平家でのエピソードにそれがよく出ており、あれだけ苦労して探した(この嫁探しのシーンがユーモラスに描かれていて笑える。)嫁であるお春を世継ぎが生まれたらもういらないとばかりに実家に帰したりするのは理解できないし、その子が殿様になるころにまたお春を呼び戻すのも虫が良すぎる感じ。そしてクライマックス、目の前を通り過ぎる殿様になった我が子を「私はあの子の母親です。」と後を追おうとするお春の姿は演じているのが田中絹代とあって思わず「陸軍」のラストシーンがオーバーラップしてしまうが、こちらもやはり切なかった。そんなお春が年を取るごとに美しくなっていくように見えるのだが、やはり溝口監督はお春の強さを美しさと比例させて描いているのだろうか。とくに下の方も書かれているように回想を終えたお春が倒れるシーンの田中絹代の美しさは尋常ではないものがあり、すごく印象的だった。最初に書いたように久しぶりに見る溝口監督の映画だったのだが、間違いなく映画史に残る名画であり、素直に見て、いや、出会えて良かったと思えるような映画だった。
イニシャルKさん [DVD(邦画)] 9点(2020-05-11 01:08:42)
イニシャルK さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-03-28劇場版 仮面ライダー555(ファイズ) パラダイス・ロスト5レビュー5.30点
2024-03-18決算!忠臣蔵7レビュー6.17点
2024-03-10花よりもなほ5レビュー5.71点
2024-03-03小早川家の秋8レビュー7.10点
2024-02-18秋日和8レビュー7.34点
2024-01-28竜とそばかすの姫5レビュー5.30点
2023-12-07GHOSTBOOK おばけずかん6レビュー6.40点
2023-11-26BALLAD 名もなき恋のうた5レビュー5.23点
2023-10-28特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション5レビュー5.00点
2023-09-14リトル・マーメイド(1989)6レビュー6.78点
西鶴一代女のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS